特許第5821510号(P5821510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821510
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】密閉型電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/36 20060101AFI20151104BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   H01M2/36 101D
   H01M2/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-226969(P2011-226969)
(22)【出願日】2011年10月14日
(65)【公開番号】特開2013-89359(P2013-89359A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124730
【弁理士】
【氏名又は名称】正津 秀明
(72)【発明者】
【氏名】原山 貴司
(72)【発明者】
【氏名】中山 博之
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−277936(JP,A)
【文献】 特開2003−229118(JP,A)
【文献】 特開2010−015867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36
H01M 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池容器と、
前記電池容器に開口形成され、電解液を注液するための注液孔と、
前記注液孔周囲に配置される環状の樹脂部材と、
前記注液孔を封止する封止部材と、を備えた密閉型電池であって、
前記電池容器は、前記注液孔の周縁において前記電池容器の外側に向けて突出するように形成されたバーリング部を有し、
前記バーリング部の外周部に前記樹脂部材を配置した状態で、前記封止部材により前記樹脂部材を圧縮して前記注液孔を封止する際に、前記圧縮方向における前記封止部材と前記バーリング部との互いに対向する面が当接することで、前記バーリング部の高さ寸法により前記樹脂部材の圧縮寸法を規定して、前記注液孔を封止することを特徴とする密閉型電池。
【請求項2】
前記封止部材は、ブラインドリベットであることを特徴とする請求項1に記載の密閉型電池。
【請求項3】
電池容器と、
前記電池容器に開口形成され、電解液を注液するための注液孔と、
前記注液孔周囲に配置される環状の樹脂部材と、
前記注液孔を封止する封止部材と、を備えた密閉型電池の製造方法であって、
前記電池容器には、前記注液孔の周縁において前記電池容器の外側に向かって突出するバーリング部が形成され、
前記バーリング部の外周部に前記樹脂部材を配置した状態で、前記封止部材により前記樹脂部材を圧縮して前記注液孔を封止する際に、前記圧縮方向における前記封止部材と前記バーリング部との互いに対向する面が当接することで、前記バーリング部の高さ寸法により前記樹脂部材の圧縮寸法を規定して、前記注液孔を封止することを特徴とする密閉型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電池及びその製造方法に関し、より詳細には、電池容器の注液孔を封止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等の密閉型電池においては、充放電要素(正極、負極、セパレータ等)を電池容器内に収容し、電解液を注液した後に注液孔を封止した構造が知られている。このような密閉型電池を製造する工程では、注液孔を介して電池容器内に電解液を注液した後に、内部の電解液が漏れないように電池を密閉するため、電池容器の注液孔の封止が行われる。
【0003】
電池容器の注液孔を封止する技術として、例えば、特許文献1には、注液孔周縁部に環状凸部(バーリングともいう)を有し、注液孔の開口部の周囲及び環状凸部の表面を被覆するように、注液孔のシール性を高めるための環状の樹脂部材(樹脂ワッシャー)を配置し、封止部材であるブラインドリベットにより注液孔を封止した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−76865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように注液孔の開口部の周囲及び環状凸部の表面を被覆するように樹脂部材を配置して、注液孔を封止した構造では、その構造上、ブラインドリベットの鍔部により樹脂部材全体が均一に圧縮されず、樹脂部材の圧縮率がばらつくことによるシール不良が発生する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、封止部材により封止された注液孔におけるシール不良の発生を抑制した密閉型電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、
電池容器と、
前記電池容器に開口形成され、電解液を注液するための注液孔と、
前記注液孔周囲に配置される環状の樹脂部材と、
前記注液孔を封止する封止部材と、を備えた密閉型電池であって、
前記電池容器は、前記注液孔の周縁において前記電池容器の外側に向けて突出するように形成されたバーリング部を有し、
前記バーリング部の外周部に前記樹脂部材を配置した状態で、前記封止部材により前記樹脂部材を圧縮して前記注液孔を封止する際に、前記圧縮方向における前記封止部材と前記バーリング部との互いに対向する面が当接することで、前記バーリング部の高さ寸法により前記樹脂部材の圧縮寸法を規定して、前記注液孔を封止する密閉型電池である。
【0009】
請求項2においては、
前記封止部材は、ブラインドリベットである密閉型電池である。
【0010】
請求項3においては、
電池容器と、
前記電池容器に開口形成され、電解液を注液するための注液孔と、
前記注液孔周囲に配置される環状の樹脂部材と、
前記注液孔を封止する封止部材と、を備えた密閉型電池の製造方法であって、
前記電池容器には、前記注液孔の周縁において前記電池容器の外側に向かって突出するバーリング部が形成され、
前記バーリング部の外周部に前記樹脂部材を配置した状態で、前記封止部材により前記樹脂部材を圧縮して前記注液孔を封止する際に、前記圧縮方向における前記封止部材と前記バーリング部との互いに対向する面が当接することで、前記バーリング部の高さ寸法により前記樹脂部材の圧縮寸法を規定して、前記注液孔を封止する密閉型電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止部材で注液孔を封止した際に、バーリング部により樹脂部材の圧縮寸法が定寸となるため、樹脂部材の圧縮率がばらつくことがなく、注液孔のシール不良発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電池の概略構成を示す模式断面図。
図2】ブラインドリベットのかしめ前後を示す模式断面図であり、(a)はブラインドリベットかしめ前を示す模式断面図、(b)は図1におけるA−A矢視断面図であり、ブラインドリベットかしめ後を示す模式断面図。
図3】ガスケットの位置決めについて説明する説明図であり、(a)は本実施形態に係る電池におけるガスケットの位置決めを示す図、(b)は従来の電池におけるガスケットの位置決めを示す図。
図4】ガスケットのへたりについて説明する説明図であり、(a)は本実施形態に係る電池におけるガスケットのへたる方向を示す図、(b)は従来の電池におけるガスケットのへたる方向を示す図。
図5】ガスケットが斜めにかしめられて、蓋体が変形する状態を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
先ず、本発明に係る密閉型電池の一実施形態である電池10の構成について図1及び図2を用いて説明する。なお、電池10は、充放電可能に構成される密閉型電池(例えば、リチウムイオン二次電池)である。
【0014】
電池10は、図1に示すように、充放電要素1と、充放電要素1を内部に収容する電池容器2と、電池容器2の上面から突出する一対の外部端子3・3と、電池容器2に開口形成され、電解液を注液するための注液孔4と、注液孔4の周縁に形成されるバーリング部5と、注液孔4を封止する封止部材であるブラインドリベット6と、注液孔4周囲に配置される環状の樹脂部材であるガスケット7と、を備える。
【0015】
充放電要素1は、正極、負極とをセパレータを介して積層し、複数回巻回されてなる電極体である。正極及び負極の積層部分には、それぞれ正極活物質又は負極活物質を含む合材が担持されている。充放電要素1は、積層部分における正極・負極間の化学反応により充放電が行われる。
【0016】
電池容器2は、充放電要素1を内部に収容する直方体形状の金属製の部材である。電池容器2は、容器本体2a及び蓋体2b等により角型の電池容器として形成される。
【0017】
容器本体2aは、一面(図1では、上面)が開口された有底の角筒状の部材であり、内部に充放電要素1が収納される。
【0018】
蓋体2bは、容器本体2aの開口面に応じた形状(本実施形態では、平面視略矩形状)を有する平板状部材であり、容器本体2aの開口面を閉塞するための部材である。蓋体2bには、蓋体2bの両側部に設けられた外部端子3・3を挿通するための挿通孔8・8及び、挿通孔8・8の間に注液孔4が形成されている。蓋体2bは、容器本体2aの開口面を閉塞した状態で、レーザ溶接等により容器本体2aと接合される。当該接合により、蓋体2bと容器本体2aとの接合部である封缶溶接部11が形成される。容器本体2a及び蓋体2bの材料としては、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等が挙げられる。
なお、本実施形態の電池10は、容器本体2aが有底の角筒状に形成された角型電池に構成しているが、これに限定するものではなく、例えば、容器本体が有底の円筒状に形成された円筒型電池に適用することも可能である。
【0019】
外部端子3・3は、一方が正極端子であり、他方が負極端子である。外部端子3・3は、電池10の外部との充放電のための接続経路となる電極端子である。外部端子3・3は、当該外部端子3・3が貫通可能かつ固定可能な挿通孔8・8を介して、外部端子3・3の一部が電池容器2から外側に向けて突出される。外部端子3・3は、集電端子(図示せず)を介して充放電要素1の正極又は負極に電気的に接続される。外部端子3・3は、絶縁部材(図示せず)を介して蓋体2bに固定される。
【0020】
注液孔4は、蓋体2bの厚さ方向に蓋体2bを貫通する貫通孔であり、所定の内径を有する。注液孔4は、蓋体2bにおいて外部端子3・3の間に位置するように開口形成されている。注液孔4は、予め充放電要素1が収容された電池容器2の内部に電解液を注液するために用いられる。注液孔4の周囲には、ガスケット7が取り付けられる。また、注液孔4には、ブラインドリベット6が取り付けられる。
なお、本実施形態においては、注液孔4を蓋体2bに設ける構成としているが、特に限定するものではなく、電池容器2内に電解液を注液可能な位置に注液孔を設ける構成であればよい。例えば、容器本体2a上部に注液孔を設ける構成とすることも可能である。
【0021】
バーリング部5は、注液孔4の周縁において電池容器2の外側に向けて突出するように形成された平面視環状で凸部状の厚肉部位である。バーリング部5は、蓋体2bと一体的に形成されている。バーリング部5は、蓋体2bの一部を塑性加工して形成される厚肉部位であり、公知のバーリング処理、深絞り法、寄せ肉法等、又はこれらの組み合わせによって適宜形成される。バーリング部5は、その上端に平面視環状の平坦な面である上端面部5a(図2(a)参照)を有する。バーリング部5は、蓋体2b表面から上端面部5aまでの間隔(図2においては、上下高さ方向の間隔)として、所定の高さ寸法を有する。バーリング部5は、その高さ寸法が圧縮前のガスケット7の厚さ寸法よりも小さくなるように形成されている(図2(a)参照)。バーリング部5の外周部には、ガスケット7が配置される。
【0022】
ブラインドリベット6は、ブラインドリベット6による注液孔4の封止後(ブラインドリベット6のかしめ後)において、図2(b)に示すように、鍔状のフランジ部6aと、注液孔4に挿通された筒状のリベット本体部6bと、当該リベット本体部6bから延出されるとともにリベット本体部6bより大径の膨径頭部6cと、から形成される。ブラインドリベット6は、フランジ部6aと蓋体2bとの間に環状のガスケット7を挟持した状態で、蓋体2bにかしめられる。すなわち、ブラインドリベット6は、注液孔4の周縁に形成されたバーリング部5の外周部とブラインドリベット6との間に環状のガスケット7を圧縮した状態で封止するとともに、注液孔4を閉塞している。具体的には、図2(b)に示すように、フランジ部6aの一側面(図2では、下面)におけるリベット本体部6b近傍側は、バーリング部5の上端面部5aに当接している。一方、フランジ部6aの一側面における外周側は、ガスケット7の上端面部7a(シール面)に当接し、かつガスケット7の上端面部7aを全体的に蓋体2b側に押圧してガスケット7の厚さ方向にガスケット7を圧縮している。つまり、ブラインドリベット6は、ブラインドリベット6のかしめ後のかしめ量がバーリング部5の高さ寸法により規定され、ガスケット7をバーリング部5の高さ寸法と同じ高さ寸法にて圧縮している。こうして、ガスケット7は、ブラインドリベット6でかしめられることにより、ガスケット7の上端面部7aが所定の圧力(シール面圧)で圧縮される。
【0023】
なお、ブラインドリベット6は、図2(a)に示すように、ブラインドリベット6をかしめる前は、鍔状のフランジ部6aと、注液孔4に挿通可能な筒状のリベット本体部6bと、当該リベット本体部6bの頭部6dと、リベット本体部6b内に収容されてフランジ部6aから延出されるマンドレル9とから形成される。マンドレル9は、その一端部がフランジ部6a側から一定長さ延出されるとともに、マンドレル9の他端部には一端部より大径の頭部9aが形成されている。ブラインドリベット用締結工具等によって、フランジ部6aから延出されたマンドレル9をフランジ部6aから引き抜くことによってマンドレル9の頭部9aがリベット本体部6bの頭部6dを膨径するとともに蓋体2bの内面に圧接するように塑性変形し、一定の大きさの膨径頭部6cを形成した後、フランジ部6a側のマンドレル9が破断して排出される。そうして、ブラインドリベット6は、リベット本体部6bを注液孔4に挿入した状態で、フランジ部6aと膨径頭部6cとの間にバーリング部5及びガスケット7を挟持することによって、注液孔4を封止する。
【0024】
ガスケット7は、円環板状で弾性変形可能な樹脂部材であり、注液孔4をシールするシール部材である。ガスケット7は、その上端に平面視環状の平坦な面である上端面部7a(図2(a)参照)を有する。ガスケット7は、その中央にバーリング部5を挿通するためのバーリング挿通孔7bを有する。ガスケット7は、バーリング挿通孔7bにバーリング部5を挿通した状態で、バーリング部5の外周部に配置される。ガスケット7は、その厚さ寸法がバーリング部5の高さ寸法よりも大きい寸法になるように形成されており、ガスケット7をブラインドリベット6によってかしめた際の所定の撓み代を有している。ここで、撓み代とは、ガスケット7が厚さ方向に圧縮されて撓む厚さのことをいう。ガスケット7は、ブラインドリベット6をかしめた際には、フランジ部6aの一側面(図2では、下面)とバーリング部5の外周部(蓋体2bの表面部)との間に狭持される。ガスケット7は、ブラインドリベット6をかしめた際には、バーリング部5の高さ寸法と同じ厚さ寸法まで圧縮され、所定の撓み代に応じて撓むことで、所要のシール性能を得ることができる。
【0025】
以上のように構成された電池10では、バーリング部5の外周部にガスケット7を配置した状態で、ブラインドリベット6によりガスケット7を圧縮して注液孔4を封止する際に、バーリング部5の高さ寸法によりガスケット7の圧縮寸法を規定して、注液孔4が封止される封止構造を有する。すなわち、電池10では、蓋体2bが有する注液孔4周縁に電池容器2の外側に向かって延出されるバーリング部5を設け、バーリング部5の外周側にガスケット7を配置して、注液孔4に挿入したブラインドリベット6をかしめることで、注液孔4を封止する封止構造となっている。当該封止構造では、ブラインドリベット6の一側面(図2では、下面)はバーリング部5の上端面部5aに当接することでブラインドリベット6のかしめ量が規定されるため、ブラインドリベット6かしめ後のガスケット7の厚さ寸法はバーリング部5の高さ寸法と同一になる。つまり、ブラインドリベット6を用いて注液孔4を封止した際に、バーリング部5によりガスケット7の圧縮寸法が定寸となるため、ガスケット7の圧縮率がばらつくことがなく、注液孔4のシール不良発生を抑制できる。
なお、図1及び図2において、バーリング部5の高さ寸法は、蓋体2bの厚さ寸法より小さい寸法で図示しているが特に限定するものではない。例えば、バーリング部5の高さ寸法を蓋体2bの厚さ寸法よりも大きい寸法となるように構成することも可能である。
【0026】
次に、上記電池10の製造方法について図2を用いて説明する。
【0027】
先ず、予め蓋体2bに結合された充放電要素1を容器本体2aの上面開口部から内部に収容し、上面開口部を蓋体2bにて閉塞し、蓋体2bと容器本体2aとの合わせ目部分の全周をレーザ溶接により接合し、封止する。
【0028】
続いて、注液孔4を介して電池容器2内に電解液を注液する。具体的には、蓋体2bに開口形成された注液孔4を介して所定量の電解液が電池容器2内に充填され、電極体である充放電要素1に電解液を浸透させる。
【0029】
その後、バーリング部5の外周部にガスケット7を配置した状態で、ブラインドリベット6によりガスケット7を圧縮して注液孔4を封止する。ブラインドリベット6により注液孔4を封止する際には、バーリング部5の高さ寸法によりガスケット7の圧縮寸法を規定して、注液孔4を封止する。すなわち、バーリング部5の外周部にガスケット7を配置した状態で、注液孔4にブラインドリベット6のリベット本体部6bを挿入配置して、ブラインドリベット6をかしめることにより注液孔4を封止する。具体的には、注液孔4にリベット本体部6bを挿入配置して、フランジ部6aを注液孔4の周囲のバーリング部5の上端面部5aに押し当て、ブラインドリベット用締結工具等によって、フランジ部6aから延出されたマンドレル9をフランジ部6aから引き抜くことによってマンドレル9の頭部9aがリベット本体部6bの頭部6dを膨径するとともに蓋体2bの内面に圧接するように塑性変形し、一定の大きさの膨径頭部5cを形成した後、フランジ部6a側のマンドレル9が破断して排出される。そうして、ブラインドリベット6は、リベット本体部6bが注液孔4に挿入された状態で、フランジ部6aと膨径頭部5cとの間にバーリング部5及びガスケット7を挟持することによって、注液孔4を封止する。こうして、電池容器2を密閉状態として電池10を製造することができる。
【0030】
以上の電池10の製造方法によれば、ブラインドリベット6で注液孔4を封止した際に、バーリング部5によりガスケット7の圧縮寸法が定寸となるため、ガスケット7の圧縮率がばらつくことがなく、注液孔4のシール不良発生を抑制できる電池を製造することができる。
【0031】
従来技術(特許文献1)のように、注液孔の開口部の周囲及びバーリング部(環状凸部)の表面にガスケットを配置した状態で、ブラインドリベットでかしめて注液孔を封止する封止構造の場合、その構造上、ブラインドリベット6によるガスケットの圧縮率がばらつき、図5に示すように、ガスケットが斜めにかしめられることになり、蓋体が変形してシール不良が発生することが考えられる。一方、本実施形態に係る電池10によれば、ブラインドリベット6をかしめる際に、最も応力(軸力)のかかる注液孔4周縁部でバーリング部5とブラインドリベット6が直接接触するため、かしめ位置が安定し、かつガスケット7に対する圧縮率がバーリング部5で決定されるため、ガスケット7を均一にかしめることができる。そのため、本実施形態に係る電池10によれば、従来技術のように、ガスケットが斜めに圧縮される虞がない。
【0032】
本実施形態に係る電池10の如く、注液孔4周縁に蓋体2bの厚さ寸法よりも厚いバーリング部5を設けることで、ブラインドリベット6のかしめに対する強度を保持することができる。そのため、バーリング部5を除く蓋体2b部分をより薄く構成することが可能となり、電池の軽量化を計ることができる。また、アルミニウム材の1000系のような強度の弱い材料に対して、これより強度のある材質からなるブラインドリベットを用いた場合でも、蓋体2bの強度を確保できるため、ブラインドリベット6をかしめた際の応力により蓋体2bが変形することなく、かしめることが可能となる。つまり、図2(b)に示す部位(点線の楕円で示す部分)にかしめ時の応力が加わるため、ブラインドリベット6をかしめる時に、かしめ部位の蓋体2bの厚さをバーリング部5として局所的に増加(厚く)することで、かしめ部位の強度増加が可能となり、蓋体2bのバーリング部5を除く部位を薄くすることができて、電池容器2の軽量化が可能になるとともに、アルミニウム材の1000系材料も使用可能となる。
【0033】
図3(b)に示す従来の電池において、所定の内径を有する注液孔を中心として、その周囲に凹部を形成し、当該凹部によってガスケット7の位置決めをするガスケット7の位置決め構造がある。当該位置決め構造の場合、ガスケット7が左右にずれて、ブラインドリベット6の注液孔への挿入が阻害される場合がある。一方、図3(a)に示すように、本実施形態に係る電池10では、ガスケット7が有するバーリング挿通孔7bにバーリング部5を挿通することで、ガスケット7の位置決めをしているため、次の製造工程にアッシーを移動した場合でも、ガスケット7の位置ずれが生じることがなく、ブラインドリベット6の注液孔への挿入を阻害することがない。つまり、本実施形態に係る電池10のように、バーリング部5の外周側にガスケット7が位置する注液孔4の封止構造とすることで、電池製造時のガスケット7の位置決めや位置の固定が容易に可能となる。
【0034】
図4(b)に示すバーリング部5が形成されていない従来の電池では、ブラインドリベット6かしめ後に、ガスケット7が内側方向及び外側方向の両方にへたるため、ガスケット7のへたり量が大きくなる。その結果として、ガスケット7として必要とされる所定の弾性力が失われてしまい、ガスケット7のシール性が悪化する。一方、図4(a)に示すように、本実施形態に係る電池10では、注液孔4周縁にバーリング部5を形成したことで、当該バーリング部5の外周面により、ガスケット7の内周面を保持することで、ガスケット7内側方向のへたりは規制され、ガスケット7は外側方向のみへたるため、ガスケット7のへたり量を少なくすることができる。そのため、ガスケット7が圧縮されたときの耐クリープ性が向上する。つまり、本実施形態に係る電池10のように、バーリング部5の外周側にガスケット7が位置する注液孔4の封止構造では、ガスケット7のへたるスペースを外側のみに有することでガスケット7のへたり量を抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
2 電池容器
2a 容器本体
2b 蓋体
4 注液孔
5 バーリング部
6 ブラインドリベット(封止部材)
7 ガスケット(樹脂部材)
10 電池
図1
図2
図3
図4
図5