(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、液体収容体のライフサイクルにおける環境負荷を低減すると共に、落下時における耐衝撃性に優れ、しかも組付性の容易な液体収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明の一形態は、袋状に構成され内部に液体を収容可能な液体収容袋と;前記液体収容袋に収容された液体を外部に導く流路および該流路に接続された供給口を有する流路部材と;前記液体収容袋を収納する植物由来の材料からなる収容箱と;を備え;前記液体収容袋の外面を形成する層に、前記収容箱を介した外部からの衝撃を緩和する緩衝部が設けられ;前記緩衝部は、気泡室を形成する複数の気泡体を有する気泡緩衝材で構成されている。このような形態であれば、収容箱は、植物由来の材料により形成されているため、液体収容体のライフサイクルにおける環境負荷を低減することができる。本発明の他の形態によれば、液体消費装置の液体収容体ホルダーに装着される液体収容体であって、袋状に構成され内部に液体を収容可能な液体収容袋と;前記液体収容袋に収容された液体を外部に導く流路および該流路に接続された供給口を有する流路部材と;前記液体収容袋を収納する植物由来の材料からなる収容箱と;を備え;前記液体収容袋の外面を形成する層に、前記収容箱を介した外部からの衝撃を緩和する緩衝部が設けられ;前記液体収容袋は、その内部の液体収容空間に収容された液体を前記供給口に導く袋内流路を備え;前記緩衝部は、上記液体収容袋の液体収容空間に面して形成した凹部を備え、該凹部が前記袋内流路の一部を構成している。液体収容袋は、その外面が凸部となって緩衝部として作用するとともに、その内面が凹部となって液体収容袋内の流路の少なくとも一部として作用するから、袋内流路を簡略化できる。その他、本発明は、以下のような形態として実現することも可能である。
【0010】
[適用例1]
液体消費装置の液体収容体ホルダーに装着される液体収容体であって、
袋状に構成され内部に液体を収容可能な液体収容袋と、
前記液体収容袋に収容された液体を外部に導く流路および該流路に接続された供給口を有する流路部材と、
前記液体収容袋を収納する植物由来の材料からなる収容箱と、
を備え、
前記液体収容袋の外面を形成する層に、前記収容箱を介した外部からの衝撃を緩和する緩衝部が設けられている、液体収容体。
【0011】
適用例の液体収容体において、袋状に構成され内部に液体を収容可能な液体収容袋が収容箱に収容されている。収容箱は、植物由来の材料により形成されているため、液体収容体のライフサイクルにおける環境負荷を低減することができる。収容箱が植物由来の材料から形成されていると、プラスチックなどの材料で形成したものより、同じ肉厚の場合に、運搬時に落下したときの耐衝撃性が小さい。しかし、適用例では、液体収容袋の外面を形成する層に、緩衝部が設けられている。緩衝部は、例えば、運搬時などに液体収容体が誤って落下しても、収容箱に加わった衝撃を低減し、液体収容袋の損傷に至りにくい。よって、液体収容袋内に収容された液体が外部に漏れ出るのを防止することができる。
【0012】
また、緩衝部は、液体収容袋の外面を形成する層に設けられているので、液体収容体の取扱いや組付などが簡単にできる。すなわち、液体収容袋を収容箱内に収納する際に、緩衝部を液体収容袋と同時に収納でき、組付作業が容易である。しかも、緩衝部は、液体収容袋を収容箱に収納する際に、弾性変形するから、液体収容袋と収容箱の空間が狭くても、液体収容袋を容易に収納することができ、組付作業が容易である。
【0013】
[適用例2]
上記適用例において、緩衝部が液体収容袋の少なくとも角部に配置されている。この構成により、収容箱が外力を受けた場合に、液体収容袋の角部は、他の部分より大きな衝撃を受けやすいが、その衝撃を他の部分より集中的に受けることで効果的に緩和する。しかも、緩衝部は、液体収容袋の一部に設けられているから、緩衝部の材料量を低減することができ、コストの削減に有効である。ここで、液体収容袋の角部とは、液体収容袋の外面を形成する層から突出している部分をいい、液体収容袋の隅部のほか、液体収容袋の外面を形成する層から、収容箱との距離が他の部分より狭くなるように突出している箇所をいう。
【0014】
[適用例3]
上記適用例において、前記緩衝部は、気泡室を形成する複数の気泡体を有する気泡緩衝材で構成することができる。この構成により、緩衝部を構成した気泡緩衝材は、液体収容袋が収容箱から外力を受けると、気泡体の気泡室が圧縮されることで外力に起因する衝撃を低減する。ここで、気泡体は、気泡室が外部に対して密閉されている独立気泡で構成することにより、一層、衝撃を低減する作用を高めることができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例において、前記液体収容体は、可撓性材料から形成されたシート同士を接合部で接合して袋状に形成されており、前記緩衝部は、前記接合部を避けて前記可撓性材料のシートに形成されている構成をとることができる。この構成において、液体収容袋は、可撓性材料から形成されたシート同士を接合部で接合することで袋状に形成されている。このとき、緩衝部が接合部に設けられていると、接合部を溶着形成するときに、接合部が緩衝部を介在して圧着力を受けることになり、圧着力の低下や、接合状態のバラツキを生じ易い。このような圧着力の低下などを回避するために、前記緩衝部は、前記接合部を避けて前記可撓性材料のシートに形成されている。
【0016】
[適用例5]
上記適用例において、前記液体収容袋は、紙を主体とする材料からなる第1層および第2層を積層して構成し、前記第1層は、前記液体に対する耐浸透性を有する材料から形成され、前記第2層は、所定の立体構造とすることで構成された前記緩衝部を設けてなる、液体収容体である。この構成において、液体収容袋は、紙を主体とした植物由来の材料により複数の層が形成されているため、液体収容体のライフサイクルにおける環境負荷を低減することができる。
【0017】
[適用例6]
上記適用例において、前記液体収容袋は、その内部の液体収容空間に収容された液体を前記供給口に導く袋内流路を備え、前記緩衝部は、上記液体収容袋の液体収容空間に面して形成した凹部を備え、該凹部が前記袋内流路の一部を構成している、液体収容体である。この構成において、液体収容袋内に形成された袋内流路は、流路形成部材の供給口に接続されており、液体をスムーズに供給口に導いたり、液体の残量を減らしたりする。液体収容袋は、その外面が凸部となって緩衝部として作用するとともに、その内面が凹部となって液体収容袋内の流路の少なくとも一部として作用するから、袋内流路を簡略化できる。
【0018】
[適用例7]
上記適用例において、前記収容箱は、前記液体収容袋の緩衝部に対向する内壁部に、前記緩衝部の頂部が当たることで、外部からの衝撃を緩和する箱側緩衝部を備えている、液体収容体である。この構成において、液体収容袋の緩衝部の頂部は、収容箱の箱側緩衝部に当たることで、液体収容袋は、収容箱に対して位置決めされる。よって、液体収容袋は、そのガタツキを低減でき、特に、流路部材との接続箇所に加わる衝撃を緩和でき、一層、液体の漏れを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1.プリンターの構成:
図1は、本発明の第1実施例におけるプリンター20の概略構成を示す説明図である。本実施例におけるプリンター20は、複数のノズルからインクを吐出することによって印刷媒体上にインクドットを形成し、これにより印刷媒体上に文字、図形、画像等を記録するインクジェットプリンターである。プリンター20は、液体としてのインクを消費する液体消費装置の1つである。
【0021】
図1に示すように、プリンター20は、印刷ヘッド61を搭載する印刷ヘッドユニット60と、印刷ヘッドユニット60をプラテン52の軸に平行な方向に沿って往復移動させる主走査を行う印刷ヘッドユニット搬送機構40と、印刷媒体としての用紙Pを主走査方向と交差する方向(副走査方向)に搬送する副走査を行う紙搬送機構50と、印刷に関する種々の指示・設定操作を受け付ける操作パネル98と、記憶媒体としてのメモリーカードMCを接続可能なメモリーカードスロット99と、プリンター20の各部を制御する制御ユニット30と、を備えている。
【0022】
紙搬送機構50は、モーター51を有している。モーター51の回転は、ギヤトレイン(不図示)を介して用紙搬送ローラー(同)に伝達され、用紙搬送ローラーの回転により用紙Pは副走査方向に沿って搬送される。
【0023】
印刷ヘッドユニット搬送機構40は、モーター41と、モーター41との間に無端の駆動ベルト42を張設するプーリー43と、プラテン52の軸と平行に架設され印刷ヘッドユニット60を摺動可能に保持するシャフト44と、を有している。モーター41の回転は、駆動ベルト42を介して印刷ヘッドユニット60に伝達され、これにより印刷ヘッドユニット60がシャフト44に沿って往復移動する。
【0024】
印刷ヘッドユニット60のホルダー62には、それぞれ所定の色(例えば、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、ブラック(K))のインクを収容する液体収容体としての複数のインクカートリッジ70(70a−70f)が装着される。なお、以下の説明では、複数のインクカートリッジ70a−70fを単にインクカートリッジ70とも呼ぶ。本実施例では、インクカートリッジ70は、重力方向の上方からホルダー62に装着される。ホルダー62に装着されたインクカートリッジ70に収容されたインクは、印刷ヘッド61に供給される。印刷ヘッド61は、インクを吐出する複数のノズルと、各ノズルに対応して設けられたノズルアクチュエーター(例えば圧電素子)とを有している。ノズルアクチュエーターが所定の駆動信号により駆動されると、ノズルに連通するキャビティー(圧力室)内の振動板が変位してキャビティー内に圧力変化を生じさせ、その圧力変化によって対応するノズルからインクが吐出される。
【0025】
制御ユニット30は、各種演算処理を実行するCPU31と、プログラムやデータを一時的に格納・展開するRAM37と、CPU31が実行するプログラム等を格納するEEPROM38と、を含んでいる。制御ユニット30による各種の機能は、CPU31がEEPROM38に格納されたプログラムをRAM37上に展開して実行することにより実現される。なお、制御ユニット30による機能の少なくとも一部は、制御ユニット30が備える電気回路がその回路構成に基づいて動作することによって実現されてもよい。
【0026】
このような構成のプリンター20では、操作パネル98を介したユーザーからの指示に従い、制御ユニット30が、メモリーカードスロット99を介して入力された印刷対象のデータに基づく印刷を行うため、プリンター20の各部の制御を行う。これにより、ノズルからインクを吐出しつつ印刷ヘッドユニット60を往復動させる主走査と、用紙Pを副走査方向へ搬送する副走査とが繰り返し実行され、用紙Pへの画像等の記録が実現される。
【0027】
A−2.インクカートリッジの構成:
次に、本実施例におけるインクカートリッジ70の構成について説明する。上述したように、本実施例のプリンター20では、ホルダー62に6つのインクカートリッジ70(70a−70f)が搭載されるが、各インクカートリッジ70の構成は基本的に同一である。
【0028】
図2ないし
図4は、インクカートリッジ70の基本構成を示す説明図である。
図2,3には、インクカートリッジ70の外観の概略構成を示しており、
図4には、インクカートリッジ70の断面の概略構成を示している。インクカートリッジ70は、流路部材100と、収容箱200と、インク収容袋300とを備えている(
図3,4参照)。インク収容袋300は、流路部材100と収容箱200とで囲まれた空間210内に配置される(
図4参照)。なお、
図3には、インクカートリッジ70の構成をわかりやすくするために、収容箱200を流路部材100から取り外した状態を示しているが、インクカートリッジ70をプリンター20に装着して使用する際には、
図2,4に示すように収容箱200は流路部材100に固定されている。この状態において、インクカートリッジ70は略直方体形状である。
【0029】
インク収容袋300は、可撓性材料によって形成され、内部にインクを収容可能なインク収容空間310を有する袋である。
図3に示すように、インク収容袋300は、マチを有するいわゆるガゼットタイプの袋であるが、マチを有しないいわゆるピロータイプの袋であってもよい。
図5はインク収容袋300および収容箱200の詳細構成を示す部分断面図である。本実施例のインク収容袋300は、アルミ蒸着フィルム324の両面にポリエチレン層322,326が積層された3層構成の可撓性シート320によって形成され、さらに可撓性シート320の外面の最外層に、ポリエチレンなどからなる気泡緩衝材328を積層して形成されている。具体的には、インク収容袋300は、可撓性シート320同士を接合部330で溶着して袋状にすることにより製造される。アルミ蒸着フィルム324はいわゆるバリア性を有するため、液体や気体による可撓性シート320の通過が抑制され、インク収容空間310内に収容されたインクにおける溶媒量の低下(インク濃度の上昇)やインク収容空間310への空気の流入といったインク劣化の原因となる事象が抑制される。
【0030】
図6は可撓性シート320および気泡緩衝材328を一部破断して示す斜視図である。気泡緩衝材328は、ポリエチレン層322上に積層されており、緩衝部328aと、平坦部328bとを備えている。緩衝部328aは、多数の気泡体329からなり、その内側スペースを気泡室329aとしている。平坦部328bは、所定幅だけ気泡体329を設けていない部位であり、
図5の接合部330の箇所に配置されている。
【0031】
図7はインク収容袋300を製造するための袋用シート300Aの成形工程を説明する説明図である。袋用シート300Aは、シート成形機400により製造される。シート成形機400は、第1ローラー402と、第1ローラー402に対向する第2ローラー404とを備えている。第1ローラー402の外周部には、上述した気泡体329を形成するための凹凸部402aと、凹凸部402aの間であって周方向に所定間隙を隔てた平坦部328bを形成するための外周面402bとを備えている。第1ローラー402の凹凸部402aには、図示しないコンプレッサが接続され、凹凸部402aの付近を吸引している。
袋用シート300Aを形成するには、第1ローラー402と第2ローラー404とを回転駆動させつつ、第1ローラー402と第2ローラー404との間に、可撓性シート320となる第1シート材料320Aおよび気泡緩衝材328となる第2シート材料328Aを加熱した状態で搬送して、両ローラー間で圧縮する。これにより、第1シート材料320Aには、第1ローラー402の凹凸部402aの付近がエアーコンプレッサにより吸引されているので凹凸部402aに倣った多数の気泡体329(
図6)が形成されるとともに、凹凸部402aのない外周面402bに倣った平坦部328b(
図6)が形成される。これと同時に、第1シート材料320Aと第2シート材料328Aとが熱圧着して、可撓性シート320と気泡緩衝材328とが一体になった袋用シート300Aが形成される。
【0032】
収容箱200は、植物由来の材料である紙材料によって形成された略直方体形状の箱である。ただし、収容箱200の略直方体形状を規定する6面の内の1面は開口202となっている(
図3参照)。後述するように、収容箱200は、開口202が流路部材100で塞がれるように、流路部材100に対して固定されている(
図4参照)。本実施例の収容箱200は、紙224の両面にポリエチレン層222,226が積層された3層構成の紙材料220によって形成されている(
図5参照)。収容箱200は、
図8に示した1枚の紙材料220を折り曲げ、接合部230(
図4参照)で溶着して箱状に組み立てることにより製造される。収容箱200は、インク収容袋300と比較して一定の剛性を有するため、インクカートリッジ70の製品輸送時やインクカートリッジ70に装着されて使用される時に、可撓性材料によって形成されたインク収容袋300を保護することができる。なお、収容箱200は、インク収容袋300を囲っているため、インク収容袋300内に形成されたインク収容空間310を囲っているとも表現できる。本明細書において、ある物体が対象物(または対象空間)を「囲う」とは、当該物体が対象物(または対象空間)を完全に包囲する場合に限らず、当該物体が対象物(または対象空間)を包囲する面の少なくとも一部を構成することを意味する。
【0033】
図9および
図10は、流路部材100の詳細構成を示す説明図である。
図10には、流路部材100の収容箱200に対向する側の平面構成を示しており、
図9には、
図10のS1−S1の位置における流路部材100の断面構成を示している。流路部材100は、収容箱200の材料である紙材料より剛性の高い樹脂材料(例えばポリプロピレン)によって形成されている。流路部材100は、略平板形状の基部110と、基部110の周縁にわたって形成され収容箱200に対向する側(
図9における上側)に向かって突出する突出部120と、を有する形状である。突出部120の先端には、内側(基部110の中心側)に向かって基部110と略平行に伸びる鍔部122が形成されている。
【0034】
流路部材100の基部110には、インク収容袋300のインク収容空間310内に収容されたインクをプリンター20の印刷ヘッド61に供給する供給口142と、インク収容空間310と供給口142とを連通させる流路140とが形成されている。より詳細には、流路部材100にはインク収容袋300が例えば溶着により固定されており、インク収容袋300に形成された開口340を介してインク収容空間310と流路部材100の流路140とが連通しており、インク収容空間310に収容されたインクが開口340、流路140、供給口142を介して印刷ヘッド61に供給される。なお、流路部材100の供給口142には、図示しない弁が設けられている。環境負荷のさらなる低減のため、この弁として、金属材料を使用していない弁(例えば、パックプラス社のクリーン・クリック・コネクターや、バーネイラボラトリーズ社のダックビルバルブ)を用いるとしてもよい。
【0035】
流路部材100の収容箱200に対向する側とは反対側の面(
図9における下側の面)には、2つの凹部170が形成されている。インクカートリッジ70をホルダー62に装着する際には、流路部材100の各凹部170がホルダー62に形成された各凸部64と係合することにより、ホルダー62に対するインクカートリッジ70の位置決めが実現される。なお、流路部材100およびホルダー62には、インクカートリッジ70がホルダー62に装着された状態において互いに係合することにより、インクカートリッジ70のホルダー62からの離脱を阻止する係合部(流路部材100の係合部114およびホルダー62の係合部66)が形成されている。
【0036】
図11は、収容箱200と流路部材100との固定のための構成を詳細に示す説明図である。収容箱200は、開口202の周囲の一部または全部に沿って折り返し部240を有している。折り返し部240は、収容箱200の開口202側の縁部を外側に折り返すことにより形成されたフラップ状の部分である。すなわち、折り返し部240は、開口202の縁部の少なくとも一部から開口202から離れる方向に延びている。従って、収容箱200の厚さは、折り返し部240が形成された部分において他の部分より大きい。
【0037】
図11に示すように、収容箱200と流路部材100とは、折り返し部240と突出部120との係合により固定される。より詳細には、収容箱200が流路部材100から離れる方向(
図11における上方向であり、以下、「第1の方向」と呼ぶ)に沿って、流路部材100の基部110の表面と突出部120の鍔部122の表面との間の間隔は、折り返し部240の長さよりもわずかに小さくなっている。そのため、収容箱200の折り返し部240が形成された部分を流路部材100の突出部120側に押し込むと、突出部120は、折り返し部240を第1の方向に沿って圧縮するように狭持する。これにより、収容箱200が流路部材100に固定される。なお、このような固定状態において、突出部120の鍔部122は、折り返し部240との干渉によって収容箱200が流路部材100から離れる第1の方向に沿った動きを阻止している。このように、流路部材100の鍔部122を含む突出部120は、収容箱200を固定する把持部として機能し、収容箱200の折り返し部240は、把持部によって把持される被把持部として機能する。
【0038】
収容箱200と流路部材100との固定方法は前記の通りであるため、収容箱200の折り返し部240が形成された部分を流路部材100の突出部120から離すように引っ張ることにより、折り返し部240と突出部120との係合が解除され、収容箱200が流路部材100から容易に取り外される。
【0039】
図10に示すように、本実施例では、流路部材100の基部110に略直交する端面であって、互いに平行な1組の端面(
図10における上側の端面および下側の端面)の一方に凹部126が形成されており、前記1組の端面の他方には凹部126に係合する凸部124が形成されている。なお、本実施例では、前記1組の端面に、2組の凹部126および凸部124が形成されている。このような流路部材100を複数並べると、
図12に示すように、1つの流路部材100の凹部126が、隣接する他の流路部材100の凸部124と係合し、流路部材100が一体にまとまってずれが防止される。そのため、
図13に示すように、複数のインクカートリッジ70を互いの位置ずれを防止しつつ一体にまとめることができる。従って、例えば複数のインクカートリッジ70をまとめて輸送する場合に、包装を簡易化することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施例のインクカートリッジ70では、インク収容袋300を囲うことによってインク収容空間310を囲うこととなる収容箱200が植物由来の材料である紙により形成されている。そのため、本実施例のインクカートリッジ70では、ライフサイクルにおける環境負荷を低減することができる。特に、本実施例のインクカートリッジ70では、インクカートリッジ70の略直方体形状を規定する6面の内の1面のみを流路部材100により構成し、残りの5面は収容箱200により構成することによって、樹脂材料の使用を最小限に抑え、環境負荷を大きく低減することができる。
【0041】
また、本実施例のインクカートリッジ70では、インク収容空間310に収容されたインクを印刷ヘッド61に供給する供給口142と、インク収容空間310と供給口142とを連通させる流路140と、を有する流路部材100が樹脂材料により形成されている。また、収容箱200は開口202を有しており、収容箱200は、開口202が流路部材100で塞がれるように流路部材100に対して固定されている。そのため、本実施例のインクカートリッジ70では、比較的剛性の高い流路部材100にインク供給のための供給口や流路を形成してインク漏れ等の不具合の発生を抑制することができる。また、本実施例のインクカートリッジ70では、比較的剛性の高い流路部材100を介してインクカートリッジ70をプリンター20のホルダー62に安定的に固定することができ、さらに、比較的剛性の高い流路部材100によって収容箱200を安定的に固定することができる。従って、本実施例のインクカートリッジ70では、ホルダー62への装着時やホルダー62からの取り外し時に、インクカートリッジ70が撓んだり変形したりするといった不具合の発生を抑制することができる。
【0042】
また、本実施例のインクカートリッジ70では、収容箱200を流路部材100から容易に取り外すことができるため、収容箱200のリサイクルを促進することができる。また、仮にインクカートリッジ70を廃棄する場合であっても、植物由来の材料とそれ以外の材料とが分別された状態で廃棄することができる。
【0043】
また、本実施例のインクカートリッジ70では、可撓性材料によって形成されたインク収容袋300の内部のインク収容空間310にインクが収容されるため、インク漏れの発生を抑制することができる。特に、本実施例では、バリア性を有する材料によりインク収容袋300が形成されているため、インク収容空間310内に収容されたインクにおける溶媒量の低下(インク濃度の上昇)やインク収容空間310への空気の流入といったインク劣化の原因となる事象が抑制される。
【0044】
また、本実施例のインクカートリッジ70では、収容箱200が折り返し部240を有しており、収容箱200の厚さは折り返し部240が形成された部分において他の部分より大きくなっている。そのため、収容箱200の材料である紙材料220に対する簡易な加工により厚さの大きい部分を形成することができる。また、比較的剛性の高い流路部材100の突出部120が折り返し部240を第1の方向に沿って圧縮するように狭持することにより、収容箱200が流路部材100に固定される。そのため、収容箱200を安定的に流路部材100に固定することができる。また、被把持部として機能する収容箱200の折り返し部240が開口202に隣接して設けられているため、把持部としての流路部材100の突出部120の大きさを最低限に抑えることができ、環境負荷を抑制することができる。
【0045】
また、本実施例のインクカートリッジ70では、比較的剛性の高い流路部材100に、ホルダー62に形成された凸部64と係合することによりホルダー62に対するインクカートリッジ70の位置決めするための凹部170が形成されているため、位置決め精度を向上させることができる。特に、本実施例のインクカートリッジ70では、位置決めのための凹部170が流路部材100における供給口142が設けられた部分に形成されているため、供給口142の付近の位置決め精度を向上させることができ、インク漏れ等の不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
前記実施例にかかる液体収容体において、袋状に構成され内部にインクを収容可能なインク収容袋300が収容箱200に収容されている。収容箱200は、植物由来の材料により形成されているため、インクカートリッジ70のライフサイクルにおける環境負荷を低減することができる。収容箱200が植物由来の材料から形成されていると、プラスチックなどの材料で形成したものより、同じ肉厚の場合に、運搬時に落下したときの耐衝撃性が小さい。しかし、本実施例では、インク収容袋300の外面を形成する最外層に、緩衝部328aが設けられている。緩衝部328aは、例えば、運搬時などにインクカートリッジ70が誤って落下しても、収容箱200に加わった衝撃を低減し、インク収容袋300の損傷に至りにくい。よって、インク収容袋300内に収容されたインクが外部に漏れ出るのを防止することができる。
【0047】
また、緩衝部328aは、インク収容袋300の最外層に設けられているので、取扱いや組付などが簡単にできる。すなわち、インク収容袋300を収容箱200内に収納する際に、緩衝部328aをインク収容袋300と同時に収納でき、組付作業が容易である。しかも、緩衝部328aは、インク収容袋300を収容箱200の空間210に収納する際に、弾性変形するから、空間210が狭くても、インク収容袋300を容易に収納することができ、組付作業が容易である。
【0048】
しかも、
図6に示すように、緩衝部328aは、外部に対して密閉された独立気泡の気泡室329aを形成する複数の気泡体329を有する気泡緩衝材328で構成しているので、インク収容袋300が収容箱200から外力を受けると、気泡体329の気泡室329aが圧縮されることで外力に起因する衝撃を一層低減する。
【0049】
図5に示すように、緩衝部328aは、接合部330を避けて可撓性材料のシートに形成されている。これは、以下の理由による。インク収容袋300は、可撓性材料から形成されたシート同士を接合部330で袋状に形成されている。このとき、緩衝部328aが接合部330に設けられていると、接合部330を溶着形成するときに、接合部330が緩衝部328aを介在して圧着力を受けることになり、圧着力の低下や、接合状態のバラツキを生じ易い。このような圧着力の低下などを回避するために、緩衝部328aは、接合部330を避けて可撓性材料のシートに形成されている。
【0050】
B.他の実施例
B−(1)
図14は第2実施例にかかるインクカートリッジ70Bを示す断面図である。本実施例は、収容箱200Bの構成に特徴を有する。すなわち、収容箱200Bは、段ボールから形成され、その内壁に緩衝材として機能する凹凸状の箱側緩衝部250Bが形成されている。箱側緩衝部250Bは、インク収容袋300Bの緩衝部328Baの気泡体329Bの頂部に当たるように形成されている。本実施例において、インク収容袋300Bの緩衝部328Baの頂部は、収容箱200Bの箱側緩衝部250Bに当たることで、インク収容袋300Bは、収容箱200Bに対して位置決めされる。よって、インク収容袋300Bは、そのガタツキを低減でき、特に、流路部材100Bとの接続箇所に加わる衝撃を緩和でき、一層、液体の漏れを防止できる。
【0051】
B−(2)
図15は第3実施例にかかるインク収容袋300Cを一部破断した斜視図である。本実施例は、インク収容袋300Cの外形および緩衝部328Caの構成に特徴を有する。
図15において、インク収容袋300Cのインク収容空間310Cには、袋内流路350Cが設けられている。袋内流路350Cは、流路部材100Cの流路(
図9参照)に接続されており、インクをスムーズに供給口(
図9参照)に導くとともに、インクの残量を減らしたりする。また、インク収容袋300Cは、凹凸形状になっており、その外面の凸部が緩衝部328Caになっており、その内面の凹部が袋内流路350Cの一部を構成している。インク収容袋300Cの緩衝部328Caの凹部は、インク収容袋300C内の流路の一部を兼ねているから、袋内流路350Cを簡略化できる。このような、インク収容袋300Cを形成するシート材は、プレス成形してシート材に凹凸形状を形成することにより簡単に実現できる。
【0052】
B−(3) 上記実施例にかかるインク収容袋の緩衝部は、インク収容袋の一部に設けてもよい。例えば、収容箱が外力を受けた場合に、収容箱の隅部(角部)は、他の部分より大きな衝撃を受けやすく、その衝撃をインク収容袋の隅部に伝達する。本実施例におけるインク収容袋の隅部に設けた緩衝部は、その衝撃を他の部分より集中的に受けることで効果的に緩和する。しかも、緩衝部は、インク収容袋の一部に設けられているから、緩衝部の材料量を低減することができ、コストの削減に有効である。なお、緩衝部を設けるインク収容袋の角部は、インク収容袋の隅部のほか、インク収容袋の最外層から収容箱に向けて突出している部分でもよく、つまりインク収容袋の最外層から、収容箱との距離が他の部分より狭くなるように突出している部分でもよい。
【0053】
B−(4) 前記実施例にかかる緩衝部は、独立気泡の気泡体329を有する気泡緩衝材328により構成した例を説明したが、これに限らず、収容箱200からの外力に起因する衝撃を緩和する部材であれば、種々の材料を用いることができ、例えば、スポンジ、ゴムのほか、6角形や8角形などの多角形の立壁で囲まれた、いわゆるハニカム構造であってもよい。
【0054】
B−(5) 前記実施例では、インク収容袋300の材料である可撓性シート320は、アルミ蒸着フィルム324の両面にポリエチレン層322,326が配置された3層構成であるとしているが、アルミ蒸着フィルム324の代わりにバリア性を有する他の材料(例えばセラミック蒸着フィルム)が使用されるとしてもよい。また、インク収容袋300の材料である袋用シート300Aは、多層の樹脂層から形成したが、紙を主体とする複数の層で形成してもよい。この構成において、インクに接する内層は、インクに対する耐浸透性を有する材料から形成し、外面である外層は、緩衝部を所定の立体構造とすることができる。ここで、立体構造として、段ボールの構造を活かした気泡空間を形成する波形や、6角形や8角形などの多角形の立壁で囲まれた、いわゆるハニカム構造をとることができる。本実施例にかかるインク収容袋300では、複数の層が紙を主体とした植物由来の材料により形成されているため、樹脂からなる層との分離を不要とし、液体収容体のライフサイクルにおける環境負荷を一層低減することができる。
【0055】
B−(6) 前記実施例におけるプリンター20の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、前記実施例では、プリンター20は、インクカートリッジ70が印刷ヘッドユニット60と共に主走査方向に往復移動する、いわゆるオンキャリッジ方式のプリンターであるとしているが、本発明は、インクカートリッジ70を装着するホルダーが印刷ヘッドユニット60とは別の場所に設けられ、インクカートリッジ70から可撓性チューブ等を介して印刷ヘッド61にインクを供給する、いわゆるオフキャリッジ方式のプリンターにも適用することが可能である。また、前記実施例では、プリンター20は、印刷ヘッドユニット60を主走査方向に往復移動する動作(主走査)と用紙を主走査方向と交差する搬送方向に搬送する動作(副走査)とを繰り返しつつ印刷を行う、いわゆるシリアル型プリンターであるとしているが、本発明は、単票紙に印刷を行ういわゆるインパクトプリンターや、印刷ヘッドの下面に紙幅長さにわたって並んで配設されたノズル列の下を、紙幅方向と交差する方向に用紙を搬送させつつ印刷を行う、いわゆるラインヘッド型プリンターにも適用することが可能である。
【0056】
B−(7) また、本発明は、液体(機能材料の粒子が分散された液状体やジェルなどの流状体を含む)を消費する装置に装着される液体収容体であれば、インクジェットプリンター以外の液体消費装置に装着される液体収容体にも適用可能である。このような液体消費装置としては、例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、液晶ディスプレイやEL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルター等の製造に用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液体を吐出する装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を吐出する装置、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に吐出する装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を吐出する装置等が挙げられる。
【0057】
B−(8) 前記実施例では、収容箱200の材料である紙材料220は、紙224の両面にポリエチレン層222,226が配置された3層構成であるとしているが、紙材料220の一方あるいは両方のポリエチレン層はなくてもよい。また、紙材料220は、他の層を含む4層以上で構成されているとしてもよい。また、収容箱200は、他の植物由来の材料(例えば、ポリ乳酸(PLA)といったバイオプラスチック)により形成されているとしてもよい。
【0058】
B−(9) 前記実施例では、ホルダー62に6つのインクカートリッジ70が装着されるとしているが、ホルダー62に装着可能なインクカートリッジ70の数は、1つ以上であればよい。また、同一の性状のインクが収容される複数のインクカートリッジ70がホルダー62に装着されてもよい。
【0059】
なお、本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるい、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。