特許第5821618号(P5821618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5821618-車両構造 図000002
  • 特許5821618-車両構造 図000003
  • 特許5821618-車両構造 図000004
  • 特許5821618-車両構造 図000005
  • 特許5821618-車両構造 図000006
  • 特許5821618-車両構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821618
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20151104BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   B60H1/32 621C
   B60H1/32 624H
   B60H1/32 613F
   B60H1/32 624F
   B60K11/04 H
   B60K11/04 K
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-282379(P2011-282379)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-132909(P2013-132909A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 浩史
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−131750(JP,U)
【文献】 特開2010−001767(JP,A)
【文献】 特開2002−248924(JP,A)
【文献】 特開2002−144857(JP,A)
【文献】 特開2005−263200(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0003904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却風が導入され、車輪を駆動するパワーユニットの冷却系を構成するラジエータと、
前記ラジエータの冷却風上流側に配置されるコンデンサと、
冷媒を圧縮して排出するコンプレッサ、前記コンプレッサに対して並列に接続され前記冷媒が出入する第1のエバポレータと第2のエバポレータ、前記第1のエバポレータと前記コンデンサとに接続され圧縮された前記冷媒を膨張させる第1のエキスパンションバルブ、および前記第2のエバポレータと前記コンデンサとに接続され圧縮された前記冷媒を膨張させる第2のエキスパンションバルブを含んで構成され、前記コンデンサに接続されて前記コンデンサを冷却する冷却手段と、
室内の空気または前記コンデンサを通過しない外気を吸引し、前記第1のエバポレータを通過した空気を前記ラジエータの冷却風下流側から車外に送風するブロアファンと、
前記第2のエバポレータに連結され、前記第2のエバポレータへの前記冷媒の流入を阻止する冷媒流入阻止手段と、
を有し、
前記コンプレッサ、前記第1のエバポレータ、前記第2のエバポレータ、前記第1のエキスパンションバルブ、前記第2のエキスパンションバルブ、及び前記コンデンサでヒートポンプが構成されている車両構造。
【請求項2】
前記第2のエバポレータは、蓄熱剤を備えた蓄熱式エバポレータである、請求項1に記載の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の前部には、エンジンを冷却するラジエータや、エアコンのコンデンサ等の冷却ユニットが配置されており、車両前方から車両後方に向かって流れる外気によって冷却ユニットの冷却を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−254934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラジエータの冷却が必要なエンジン高負荷時でも、コンデンサによりラジエータの冷却効率が妨げられており、改善の余地がある。
本願発明は、上記事実を考慮し、ラジエータを効率的に冷却する車両構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両構造は、冷却風が導入され、車輪を駆動するパワーユニットの冷却系を構成するラジエータと、前記ラジエータの冷却風上流側に配置されるコンデンサと、冷媒を圧縮して排出するコンプレッサ、前記コンプレッサに対して並列に接続され前記冷媒が出入する第1のエバポレータと第2のエバポレータ、前記第1のエバポレータと前記コンデンサとに接続され圧縮された前記冷媒を膨張させる第1のエキスパンションバルブ、および前記第2のエバポレータと前記コンデンサとに接続され圧縮された前記冷媒を膨張させる第2のエキスパンションバルブを含んで構成され、前記コンデンサに接続されて前記コンデンサを冷却する冷却手段と、室内の空気または前記コンデンサを通過しない外気を吸引し、前記第1のエバポレータを通過した空気を前記ラジエータの冷却風下流側から車外に送風するブロアファンと、前記第2のエバポレータに連結され、前記第2のエバポレータへの前記冷媒の流入を阻止する冷媒流入阻止手段と、を有し、前記コンプレッサ、前記第1のエバポレータ、前記第2のエバポレータ、前記第1のエキスパンションバルブ、前記第2のエキスパンションバルブ、及び前記コンデンサでヒートポンプが構成されている
【0006】
請求項1に記載の車両構造では、ラジエータの冷却風上流側に配置されるコンデンサを冷却手段で冷却することができる。
ラジエータの冷却風上流側に配置されたコンデンサが冷却されることで、ラジエータに流入する冷却風の温度が低下し、ラジエータの冷却効率を向上することができる。
【0008】
請求項1に記載の車両構造では、コンプレッサ、第1のエバポレータ、第2のエバポレータ、第1のエキスパンションバルブ、第2のエキスパンションバルブ、及びコンデンサでヒートポンプが構成されているので、コンプレッサを作動させてコンプレッサ、第1のエバポレータ、第1のエキスパンションバルブ、及びコンデンサの順、また、コンプレッサ、第2のエバポレータ、第2のエキスパンションバルブ、及びコンデンサの順に冷媒を循環させることで、コンデンサを冷却し、第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータで放熱を行うことができる。
【0009】
このようにしてラジエータの冷却風上流側に配置されたコンデンサを冷却することで、ラジエータに流入する冷却風の温度が低下し、ラジエータの冷却効率を向上することができる。なお、第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータで放熱を行うので、室内、室外の空気を吸引して第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータで暖めて室内に送ることで、室内の暖房を行うことが出来る。
【0010】
一方、コンプレッサ、コンデンサ、第1のエキスパンションバルブ、及び第1のエバポレータの順、また、コンプレッサ、コンデンサ、第2のエキスパンションバルブ、及び第2のエバポレータの順に冷媒を循環させることで、第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータを冷却し、コンデンサで放熱を行うことができる。こうすることで第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータが冷却されるので、室内、室外の空気を吸引して第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータで冷却して室内に送ることで、室内の冷房を行うことが出来る。
【0013】
また、冷媒流入阻止手段で第2のエバポレータへの冷媒の流入を阻止することができ、これにより、コンデンサを冷却し、第2のエバポレータで放熱を行わず、第1のエバポレータのみで放熱を行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両構造において、前記第2のエバポレータは、蓄熱剤を備えた蓄熱式エバポレータである。
【0015】
請求項2に記載の車両構造では、第2のエバポレータが蓄熱剤を備えた蓄熱式エバポレータであるため、例えば、第2のエバポレータを冷却した後、冷媒の流動が停止しても、蓄熱剤が冷却されているので、しばらくの間は、第2のエバポレータを低温に保つことができる。したがって、第2のエバポレータを車内冷房に用いれば、コンデンサを冷却していても、しばらくの間は冷房を効かせる事が出来る。
また、例えば、第2のエバポレータが放熱した後、冷媒の流動が停止しても、蓄熱剤が暖められているので、しばらくの間は、第2のエバポレータを高温に保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1に記載の車両構造によれば、ラジエータを効率的に冷却することができる、という優れた効果を有する。また、ラジエータを小型化することも可能となる。
【0017】
請求項1に記載の車両構造によれば、ヒートポンプにより効率的にラジエータを冷却することができる。
【0018】
また、請求項1に記載の車両構造によれば、第1のエバポレータ、及び第2のエバポレータで効率的に放熱を行うことができ、また、第2のエバポレータで放熱を行わず、第1のエバポレータのみで放熱を行うこともできる。
【0019】
請求項2に記載の車両構造によれば、冷媒の流動が停止しても、第2のエバポレータは、しばらくの間、冷媒の流動停止前の温度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両構造を示す車両前後方向に沿った縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両構造に用いられるヒートポンプの回路図である。
図3】本発明の制御系のブロック図である。
図4】(A)は、エアコンモード時の車両構造を示す車両前後方向に沿った縦断面図であり、(B)はエアコンモード時の冷媒の流れを示すヒートポンプの回路図である。
図5】(A)は、エンジン高負荷時の車両構造を示す車両前後方向に沿った縦断面図であり、(B)はエンジン高負荷時の冷媒の流れを示すヒートポンプの回路図である。
図6】(A)は、寒冷時の車両構造を示す車両前後方向に沿った縦断面図であり、(B)は寒冷時の冷媒の流れを示すヒートポンプの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る車両構造10について、図1乃至図6に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向をそれぞれ示す。
【0022】
図1に示すように、車体12の前部には、バンパリインフォースメント14の車両後方側に車輪(図示せず)を駆動するパワーユニット(本実施形態ではエンジン)16が配置されている。
バンパリインフォースメント14の車両前方側には、フロトバンパカバー18が配置されている。このフロトバンパカバー18には、後述する冷却ユニット20へ冷却風を送風するために開口22が形成されている。
【0023】
ダッシュパネル24の下方には、冷却ユニット20が配置されている。冷却ユニット20は、後述するヒートポンプ78を構成しているコンデンサ30、パワーユニット16の冷却を行うラジエータ32、電動のラジエータファン34、ファンシュラウド36等を含んで構成されている。なお、この冷却ユニット20では、車両前方向側から、コンデンサ30、ラジエータ32及びラジエータファン34の順に配置されている。
【0024】
ファンシュラウド36は、ラジエータファン34を外周側から覆っており、ラジエータ32とラジエータファン34との間に冷却風(矢印A参照)が通過する流路37を形成している。冷却風は、コンデンサ30、及びラジエータ32を介してファンシュラウド36の車両前方向側から導入され、ラジエータファン34を介してファンシュラウド36の車両後方向側に排出される。
【0025】
また、ファンシュラウド36の上壁36Aには、ラジエータ32とラジエータファン34との間に排気口ダクト38が形成されている。
【0026】
(HVAC)
ダッシュパネル24の車両後側のフロアパネル26の上方には、室内空気の環境制御ユニット(エアコンモジュール)としてのHVAC(heating and ventilating air conditioning)28が配置されている。
HVAC28は、ブロアファン40、第1のエバポレータ42、第2のエバポレータ44、ヒータコア46等を箱状に形成されたケース48の内部に備えている。なお、本実施形態の第2のエバポレータ44には蓄熱剤(図示せず)が内蔵されているタイプのものである。
【0027】
第2のエバポレータ44に内蔵する蓄熱剤の材質は特に限定されない。例えば、氷や有機化合物などの潜熱型の蓄熱剤であっても良く、金属や無機化合物などの顕熱型の蓄熱剤であっても良い。潜熱型の蓄熱剤としては、ハロゲン化炭化水素、炭素数2〜10のアルコール、ケトン、エーテル、無機塩類の水溶液などが例示される。蓄熱剤を水溶液とする場合、蓄熱剤を容器等に収容してエバポレータに組み込む。容器の材質、寸法、形状についても特に限定されない。
【0028】
ケース48には、車両前方向側の上部にデフロスタ吹出口50が形成され、車両後方向側の上部にセンターレジスタ吹出口52が形成され、車両後方向側の底部に足元吹出口54が形成され、車両前方向側の底部に外部排出口56が形成されている。
【0029】
ブロアファン40は、ケース48の車両前方向側の上側寄りに配置されている。ケース48の内部には、ブロアファン40の下側から車両後方向側へ延びて、さらに上方に向けて延びる第1通風路58が形成され、第1通風路58の上端には、デフロスタ吹出口50に向けて延びる第2通風路60が連結されると共に、センターレジスタ吹出口52に向けて延びる第3通風路62が形成されている。
【0030】
ブロアファン40は、吸引した室内の空気(外気を吸引する場合もある)を車両前方向側から第1通風路58に向けて下方向へ送風(矢印W参照)を行うことができる。
【0031】
第1通風路58の内部には、ブロアファン40の下方、即ち、送風方向下流側に、ケース48の前壁48Aと間隔を開けて第1のエバポレータ42が配置されている。第1のエバポレータ42は、上端が下端よりも車両後方向側となるように傾斜している。
【0032】
この第1のエバポレータ42の車両後方向側(送風方向下流側)には、揺動することで向きを変更可能な第1のエバポレータ用フラップ64が配置されている。
【0033】
この第1のエバポレータ用フラップ64の車両後方向側(送風方向下流側)には、第1のエバポレータ用フラップ64とは間隔を開けて第2のエバポレータ44が縦に配置されている。
【0034】
外部排出口56は、第1のエバポレータ42と第2のエバポレータ44との間のケース48の底壁48Bに形成されており、この外部排出口56には、外部排出口56を開閉する揺動可能な外部排出口用フラップ66が設けられている。
外部排出口用フラップ66は、図1に示すように、外部排出口56を閉止する第1の位置と、図5に示すように、外部排出口56を開放する第2の位置との間を揺動可能となっている。
【0035】
この外部排出口56の下方向には、ファンシュラウド36の上壁36Aに形成された排気口ダクト38が位置しており、外部排出口56から排出されたケース内の空気を排気口ダクト38、ラジエータファン34を介して車外に排出可能となっている。
【0036】
第2のエバポレータ44の車両後方向側(送風方向下流側)には、揺動することで向きを変更可能なヒータコア用フラップ68が第2のエバポレータ44とは間隔を開けて配置されており、ヒータコア用フラップ68の車両後方向側(送風方向下流側)にエンジンの冷却水(エンジン通過後の温水)が通過するヒータコア46が縦に配置されている。
【0037】
足元吹出口54には、足元吹出口54を開閉する揺動可能な足元吹出口用フラップ70が設けられている。足元吹出口54を開口させることで、第2のエバポレータ44を通過したケース内の空気を前席乗員の足元へ送風することができる。
【0038】
第1通風路58と第2通風路60との間には、揺動可能な第2通風路用フラップ72が設けられており、第2通風路60への通風を阻止する、即ち、第2通風路60の入り口を閉止する第1の位置と、第2通風路60を通風可能とする、即ち第2通風路60の入り口を開放する第2の位置との間を揺動可能となっている。第2通風路60の入り口を開放することで、デフロスタ吹出口50から室内へケース内の空気を排出することができる。
【0039】
第1通風路58と第3通風路62との間には、揺動可能な第3通風路用フラップ74が設けられており、第3通風路62への通風を阻止する、即ち、第3通風路62の入り口を閉止する第1の位置と、第3通風路62への通風を可能とする、即ち第3通風路62の入り口を開放する第2の位置との間を揺動可能となっている。第3通風路62の入り口を開放することで、センターレジスタ吹出口52から室内へケース内の空気を排出することができる。
【0040】
(ヒートポンプの回路)
次に、図2にしたがって、本実施形態の車両構造10に用いるヒートポンプ78の回路を説明する。
図2に示すように、ヒートポンプ78は、冷媒(図示せず)を圧縮するコンプレッサ80を備えている。コンプレッサ80には、入口80Aに第1の配管82の一端が接続され、出口80Bに第2の配管84の一端が接続されている。第1の配管82の他端は電磁弁である4方弁(4ポート2位置切替弁)86の第1の出入口86Aに接続されており、第2の配管84の他端は4方弁86の第2の出入口86Bに接続されている。
【0041】
4方弁86の第3の出入口86Cには第3の配管88の一端が接続され、4方弁86の第4の出入口86Dには第4の配管90の一端が接続されている。
ここで、4方弁86は、第1の配管82と第3の配管88とを連通し、且つ第2の配管84と第4の配管90とを連通する第1の位置と、第1の配管82と第4の配管90とを連通し、且つ第2の配管84と第3の配管88とを連通する第2の位置とに切り替えられる。
【0042】
第3の配管88の他端は、コンデンサ30の第1の出入口30Aに接続されている。第4の配管90の他端は、第1の分岐92に接続されており、第1の分岐92には、第5の配管94の一端、及び第6の配管96の一端が接続されている。
【0043】
第5の配管94の他端は、第1のエバポレータ42の第1の出入口42Aに接続され、第6の配管96の他端は、第2のエバポレータ44の第1の出入口44Aに接続されている。
【0044】
第1のエバポレータ42の第2の出入口42Bには第7の配管98の一端が接続されており、第7の配管98の他端は第2の分岐100に接続されている。なお、第7の配管98の途中には、第1のエキスパンションバルブ102が取り付けられている。
【0045】
第2のエバポレータ44の第2の出入口44Bには、第8の配管104の一端が接続され、第8の配管104の他端は、第2の分岐100に接続されている。なお、第8の配管104の途中には、第2のエキスパンションバルブ106、及び開閉弁(電磁弁)108が接続されている。
また、第2の分岐100には、第9の配管110の一端が接続されており、第9の配管110の他端はコンデンサ30の第2の出入口30Bに接続されている。
【0046】
図3に示すように、パワーユニット16、ブロアファン40、冷却水を循環させるウォーターポンプ114、ラジエータファン34、第1のエバポレータ用フラップ64、外部排出口用フラップ66、ヒータコア用フラップ68、足元吹出口用フラップ70、第2通風路用フラップ72、第3通風路用フラップ74は、各々制御装置116に連結されて作動が制御されるようになっている。
また、制御装置116には、冷却水の水温計118、室内温度計120、外気温度計122、エアコンスイッチ124、温度設定スイッチ126、吹出口切替スイッチ128、内外気切り替えスイッチ130等が接続されている。
【0047】
(作用)
次に、本実施形態の車両構造10の作用を説明する。
(通常時の状態)
先ず最初に、HVAC28のモードが冷房に切り替えられた通常時の動作説明を行う。
冷房運転時では、制御装置116は、コンプレッサ80から送出された冷媒が、図4(B)の矢印で示すように、コンデンサ30、第1のエキスパンションバルブ102を介して第1のエバポレータ42に流れると共に、コンデンサ30、開閉弁108、第2のエキスパンションバルブ106を介して第2のエバポレータ44に流れるように4方弁86を第2の位置に切り替える。コンプレッサ80を作動させて冷媒が循環すると、第1のエバポレータ42、及び第2のエバポレータ44は熱を吸収し、コンデンサ30は熱を放出する。
【0048】
ウォーターポンプ(図示せず)が作動し、エンジンによって温められた冷却水がラジエータ32を通ると、ラジエータ32から熱が放出される。
【0049】
車両が走行すると、図4(A)に示すように、フロトバンパカバー18の開口22(図4(A)では図示せず)から導入された走行風(点線矢印A参照)が、コンデンサ30、及びラジエータ32を通過し、コンデンサ30、及びラジエータ32で熱交換が行われる。なお、ラジエータファン34を作動させることで、ラジエータ32の車両後方向側が負圧となり、コンデンサ30、及びラジエータ32を通過する風量が増し、コンデンサ30、及びラジエータ32の熱交換効率を向上させることができる。
【0050】
HVAC28では、ブロアファン40で送風された空気が、第1のエバポレータ42、及び第2のエバポレータ44を通過(点線矢印B参照)して冷却される。例えば、第3通風路用フラップ74を切り替えて第1通風路58と第3通風路62とを連通し、足元吹出口用フラップ70を切り替えて足元吹出口54を開状態とすることで、センターレジスタ吹出口52及び足元吹出口54から室内に冷風を排出することができ、これにより室内の冷房を行うことができる。
【0051】
(エンジン高負荷時)
次に、前述した通常時からエンジンに高負荷がかかった時の動作説明を図5を用いて行う。
例えば、エンジンに高負荷がかかり、冷却水の温度が予め設定した温度よりも高くなった場合には、制御装置116はラジエータ32の熱交換効率を上げるために、以下のように制御を行う。
【0052】
先ず、ヒートポンプ78の開閉弁108を閉じて第2のエバポレータ44に冷媒が流れないようにすると共に、4方弁86を第1の位置に切り替えてコンプレッサ80から送出された冷媒が第1のエバポレータ42、第1のエキスパンションバルブ102、コンデンサ30の順に流れるようにする(冷媒の流れは図5(B)の矢印参照)。
【0053】
これにより、第1のエバポレータ42は熱を放出し、コンデンサ30は熱を吸収するようになり、コンデンサ30は外気よりも温度が低下する。一方、第2のエバポレータ44には冷媒が流れないため、第2のエバポレータ44は熱を放出しない。第2のエバポレータ44には蓄熱剤が内蔵されているので、しばらくの間は、第2のエバポレータ44は前述した通常時の状態、即ち、冷却状態を保つことができる。したがって、しばらくの間は、ブロアファン40から送り出された空気の一部を第2のエバポレータ44で冷却することができ、しばらくの間は冷却した空気を室内に排出することができる。このように、第2のエバポレータ44に蓄熱剤を内蔵することで、エンジン高負荷時においてエアコン性能の低下を抑えることができる。
【0054】
エンジン高負荷時では、走行風がコンデンサ30を通過する際に熱を吸収されて冷却され、コンデンサ30で冷却された走行風がラジエータ32を通過するので、ラジエータ32の熱交換効率を劇的に向上することができる。
なお、これにより、ラジエータ32の小型化、軽量化も可能となり、さらには、ラジエータ32の配置の自由度も向上できる。
【0055】
また、エンジン高負荷時では、HVAC28においては、図5(A)に示すように外部排出口用フラップ66を第2の位置として、第1のエバポレータ用フラップ64と一直線状に連結すると共に外部排出口56を開放する。
ブロアファン40から送り出された空気の一部は、熱を放出している第1のエバポレータ42を通過し、第1のエバポレータ42を通過して暖められた空気は、第1のエバポレータ用フラップ64と外部排出口用フラップ66とにガイドされ、外部排出口56、及び排気口ダクト38を介して車外へ排出される。
【0056】
(寒冷時)
次に、寒冷時の動作説明を行う。
寒冷時の始動時には、先ずパワーユニット16を作動させるが、冷却水が予め設定した温度に達するまでの間はウォーターポンプ114の作動は行わず、冷却水の循環は行わない。
そして、4方弁86を第1の位置とし、開閉弁108を開状態とし、図6(B)の矢印で示すように、コンプレッサ80から送出された冷媒が、第1のエバポレータ42、第1のエキスパンションバルブ102を介してコンデンサ30に流れると共に、第2のエバポレータ44、第2のエキスパンションバルブ106、開状態の開閉弁108を介してコンデンサ30の順に流れるようにする。
【0057】
また、HVAC28では、図6(A)に示すように、外部排出口用フラップ66を第1の位置として外部排出口56を閉状態とし、例えば、第3通風路用フラップ74を切り替えてセンターレジスタ吹出口52を開状態とし、足元吹出口用フラップ70を切り替えて足元吹出口54を開状態とする。
【0058】
ここで、コンプレッサ80、及びブロアファン40を作動させると、第1のエバポレータ42、及び第2のエバポレータ44は熱を放出し、コンデンサ30は熱を吸収するので、ブロアファン40から送風された空気は、第1のエバポレータ42と第2のエバポレータ44とで暖められる。
【0059】
こうして暖められた空気は、一部がヒータコア46を通過してセンターレジスタ吹出口52、及び足元吹出口54を介して室内に排出され、他の一部は、ヒータコア46を通過せずにそのままセンターレジスタ吹出口52、及び足元吹出口54を介して室内に排出される。
【0060】
寒冷時の始動時では、第1のエバポレータ42及び第2のエバポレータ44で暖められた空気がヒータコア46の内部の冷却水を温めると共に、室内を暖めることができるため、エンジンを必要以上に回転(例えば、アイドリングよりも高い回転数で回転)させてヒータコア内の冷却水を温める必要がなく、室内の快適性能を向上しつつ、燃費性能を向上することができる。
【0061】
なお、冷却水が温まったらウォーターポンプ114を作動し、冷却水の循環を行えば良い。
また、第2のエバポレータ44には蓄熱剤が内蔵されているので、蓄熱剤が温まっていれば、例えば、アイドリングストップ時にエンジンが停止しても第2のエバポレータ44の温度がしばらくの間保たれ、エアコン性能の低下を抑えることができる。
【0062】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、第2のエバポレータ44が蓄熱剤を内蔵しているタイプのものであったが、蓄熱剤を内蔵していない通常タイプのものであっても良い。
【0063】
フロントガラス112の内面が曇った場合には、第2通風路用フラップ72を第2の位置として第2通風路60を通風可能とし、デフロスタ吹出口50からケース内の空気をフロントガラス内面へ送風する。これにより、フロントガラス112の曇りを取ることができる。
【0064】
上記実施形態では、パワーユニット16がエンジンとされたエンジン車両を説明したが、パワーユニット16はエンジンとモータと含むものであっても良い(いわゆるハイブリッド車両)。
【0065】
上記実施形態の車体12は、パワーユニット16が車両前方側に配置された所謂フロントエンジン方式であったが、パワーユニット16の位置は車両前方側に限らず、車両前後方向中間部に配置されていても良く(所謂ミッドシップエンジン方式)、車両後方向側に配置されていても良い(所謂リアエンジン方式)。
【0066】
上記実施形態の車体12では、車両前部に配置されるパワーユニット16の車両後方向側にコンデンサ30、及びラジエータ32が配置されていたが、本発明はこれに限らず、コンデンサ30、及びラジエータ32はパワーユニット16の車両前方向側に配置されていても良く、その他の場所に配置されていても良い。
【0067】
上記実施形態では、エンジン高負荷時にコンデンサ30を冷却してラジエータ32の熱交換効率を高めたが、本発明はこれに限らず、エンジンの負荷状況、冷却水温等に関係なく、必要に応じてコンデンサ30を冷却してラジエータ32の熱交換効率を高めても良い。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10 車両構造
16 パワーユニット
30 コンデンサ
32 ラジエータ
42 第1のエバポレータ(冷却手段)
44 第2のエバポレータ(冷却手段)
78 ヒートポンプ
80 コンプレッサ(冷却手段)
102 第1のエキスパンションバルブ(冷却手段)
106 第2のエキスパンションバルブ(冷却手段)
108 開閉弁(冷媒流入阻止手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6