(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のエジェクタでは、例えば冷凍サイクルの低負荷時において、高圧側と低圧側との冷媒圧力差が小さいときに、第1ノズルによって冷媒圧力差分の大半が減圧されてしまう形となり、第2ノズルにおいてはディフューザ部によって昇圧させるための圧力エネルギがほとんど得られなくなってしまうという問題があった。つまり、冷凍サイクルの負荷に見合った充分なエジェクタの作動が得られないものとなっていた。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ノズル効率を向上させると共に、冷凍サイクルの負荷に見合った作動が可能となるエジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10、10A、10B)に適用されて、
冷凍サイクル(10、10A、10B)の高圧側から流入する高圧冷媒を減圧膨張させるノズル部(110)と、
高圧冷媒よりも低圧である低圧冷媒を、ノズル部(110)から噴出される噴出冷媒の吸引力によって吸引する吸引部(120)と、
ノズル部(110)の下流側に配設されて、流路断面積が下流側に向けて徐々に拡大され、ノズル部(110)から噴出される噴出冷媒と吸引部(120)から吸引される低圧冷媒とが混合された混合冷媒を減速して圧力上昇させるディフューザ部(130)と、を備えるエジェクタにおいて、
ノズル部(110)の上流側に配設されて、高圧冷媒を旋回させ、仮想される旋回中心線の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、気液混相状態の冷媒をノズル部(110)に流入させる旋回流路(140)と、
旋回流路(140)の上流側に設けられて、旋回流路(140)に流入する高圧冷媒の流量を変更可能とする流量可変機構(150、150A)とを設け
、
高圧冷媒は、液相冷媒であることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、旋回流路(140)は、高圧冷媒を旋回させ、旋回中心線の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにする。実際には、旋回流路(140)において、旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態となる。この「二相分離状態により生成する気液界面」での液冷媒の沸騰(ガス化)促進により、ノズル部(110)の最小流路面積部近傍においては、流れが二相噴霧状態となり、二相音速まで加速する。さらに、二相音速まで加速した冷媒は、そのノズル部(110)の最小流路面積部から末広流路部出口にかけて理想的な二相噴霧流れを継続でき、末広流路部出口で噴射される冷媒の流速を増大させることができる。よって、ノズル部(110)のノズル効率を向上させることができ、その結果、エジェクタ効率を向上させることができる。
【0010】
また、旋回流路(140)に流入する液相冷媒の流量を変更可能とする流量可変機構(150、150A)を設けているので、冷凍サイクル(10、10A、10B)の負荷に応じて冷媒流量を変更することで、冷凍サイクル(10、10A、10B)の負荷に見合った冷媒量を流すことが可能となり、効果的なエジェクタの作動を引き出すことができる。
【0011】
尚、冷凍サイクル(10、10A、10B)の負荷が高い時に流量可変機構(150、150A)によって液相冷媒の流量を増大させると、流量可変機構(150、150A)の流路が大きく開かれて、エジェクタ(100)としては、ノズル部(110)による単段膨張のエジェクタとして作用する。逆に、冷凍サイクル(10、10A、10B)の負荷が低い時に流量可変機構(150、150A)によって液相冷媒の流量を低下させると、流量可変機構(150、150A)の流路が絞りのように閉じられて、エジェクタ(100)としては、絞りのように閉じられた流路と、本来のノズル部(110)とによる二段膨張のエジェクタとして作用することになる。
【0012】
このように低負荷時において、二段膨張のエジェクタとして作用する場合は、従来技術のエジェクタと類似するものとなる。しかしながら、本発明では、上記で説明した旋回流路(140)によって、ノズル部(110)の末広流路部出口で噴射される冷媒の流速を増大させることで、ノズル効率を向上することができるため、従来技術のように、第1ノズルでの減圧により、第2ノズルにおいてはディフューザ部によって昇圧させるための圧力エネルギがほとんど得られなくなってしまうものに比べて、良好なエジェクタの作動が得られるものとなる。
【0014】
また、高圧冷媒が液相冷媒であると、上記のように冷媒は旋回流路(140)において、旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とされるので、この「二相分離状態により生成される気液界面」での液冷媒の沸騰(ガス化)促進により、ノズル部(110)の最小流路面積部から末広流路部出口にかけての流れが二相噴霧状態となり、末広流路部出口における冷媒流速増大の効果を確実に得られる。この効果は、高圧冷媒が気液二相である場合に比べより大きい。
【0015】
請求項2に記載の発明では、流量可変機構(150A)への高圧冷媒の流入方向は、ノズル部(110)の軸線(111)と同一方向となっていることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、旋回流路(140)と流量可変機構(150A)とを旋回流路(140)の軸線(142)方向に接続することができ、旋回流路(140)の軸線(142)方向と交差する方向に、流量可変機構(150A)が張出すようなことが無く、搭載性に優れるエジェクタとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、流量可変機構(150A)は、流入された高圧冷媒を旋回方向にガイドする一対のガイド部材(154、155)を備え、
一対のガイド部材(154、155)間の隙間を変更することで、高圧冷媒の流量を変更可能とすることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、高圧冷媒の流量を調整しつつ、流入した冷媒に対して旋回流を持たせるような流量可変機構(150A)とすることができ、コンパクトな流量可変機構(150A)とすることができる。
【0019】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0022】
(第1実施形態)
図1、
図2は、第1実施形態のエジェクタ100を蒸気圧縮式冷凍サイクル(以下、冷凍サイクル)10に適用したものを示している。この冷凍サイクル10は、空調装置用として車両に搭載されるものであって、圧縮機11、凝縮器12、エジェクタ100、気液分離器13、および蒸発器14が、冷媒配管によって接続されて形成されている。圧縮機11およびエジェクタ100(流量可変機構150)は、図示しない制御装置によってその作動が制御されるようになっている。
【0023】
圧縮機11は、気液分離器13(貯液部)内の気相冷媒を吸入し、高温高圧に圧縮して凝縮器12側へ吐出する流体機械であり、図示しない電磁クラッチおよびベルトを介して車両走行用エンジンにより回転駆動されるようになっている。圧縮機11は、例えば、電磁式容量制御弁に制御装置からの制御信号が入力されることにより、吐出容量が可変される斜板式可変容量型圧縮機となっている。尚、圧縮機11は、電動モータによって回転駆動される電動圧縮機としても良い。電動圧縮機の場合は、電動モータの回転数によって吐出容量が可変される。
【0024】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、図示しない冷却ファンにより強制的に送風される車室外空気(以下、外気)との間で熱交換を行うことにより、高圧冷媒の熱を外気に放出(冷却)させて、冷媒を凝縮液化する熱交換器である。尚、圧縮機11によって圧縮された冷媒の圧力が臨界圧力を超える場合は、冷媒は冷却されても凝縮液化することはなく、この場合は、凝縮器12は高圧冷媒を冷却する放熱器として機能する。凝縮器12の冷媒流出側は、エジェクタ100の流入部151(詳細後述)に接続されている。
【0025】
エジェクタ100は、凝縮器12から流出される液相冷媒(高圧冷媒)を減圧する減圧手段であると共に、高速で噴出する冷媒流の吸引作用(巻き込み作用)によって冷媒の循環を行う流体輸送用の冷媒循環手段でもある。
図2に示すように、エジェクタ100は、ノズル部110、吸引部120、ディフューザ部130、旋回流路140、および流量可変機構150を備えている。
【0026】
ノズル部110は、凝縮器12から流出される液相冷媒を、後述する流量可変機構150および旋回流路140を介して取り入れ、冷媒流れの下流側に向けて通路面積を小さく絞って冷媒の圧力エネルギを速度エネルギに変換して等エントロピ的に減圧膨張させるものである。ノズル部110は、下流側に向かうほど流路が先細りとなる先細部と、この先細部の下流側に配設されて下流側に向かうほど流路が拡大する末広部とを備えている。先細部と末広部とが接続される部位が、最も流路面積が縮小されたノズル喉部となっている。尚、ノズル部110の冷媒流れ方向に沿う仮想軸線を、軸線111と定義する。
【0027】
吸引部120は、ノズル部110に対して交差する方向に形成された流路であり、エジェクタ100の外部からノズル部110の冷媒噴出口(末広部の出口部)と連通するように配置されている。吸引部120は、蒸発器14の冷媒流出側と接続されている。
【0028】
ディフューザ部130は、ノズル部110および吸引部120の下流側で、ノズル部110から噴出される高速度の冷媒(噴出冷媒)と、吸引部120(蒸発器14)からの気相冷媒(低圧冷媒)とを混合すると共に、混合された混合冷媒の流れを減速し、速度エネルギを圧力エネルギに変換して昇圧させるものである。ディフューザ部130は、冷媒の通路断面積を下流側に向けて徐々に大きくする形状(いわゆるディフューザ形状)に形成されることで、上記の昇圧機能を有するようになっている。ディフューザ部130は、気液分離器13と接続されている。
【0029】
旋回流路140は、ノズル部110の上流側に配設されており、凝縮器12から流出される液相冷媒を旋回させ、仮想される旋回流の中心線(以下、旋回中心線)の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、気液混相状態の冷媒をノズル部110に流入させる流路である。旋回流路140は、例えば、扁平円筒状の内部空間を有する流路として形成されている。そして、旋回流路140には、円筒状の外周に対して接線方向から接続されて、旋回流路140内部に連通するパイプ状の流入部141が設けられている。ここで、旋回流路140の円筒状の仮想軸線を軸線142と定義したとき、軸線142は、軸線111と平行となるように、さらに具体的には、軸線142と軸線114とが一致するように、ノズル部110に対して旋回流路140が配置されて、旋回流路140は、ノズル部110に連通するように接続されている。
【0030】
ここで、旋回流路140において、旋回中心線の内周側に気相冷媒が多く存在するようにするためには、冷媒の旋回流速を充分に増速させることが必要となる。そのために、ノズル喉部の流路断面積に対する流入部141の流路断面積の比率A、およびノズル喉部の流路断面積に対する旋回流路140の流路断面積の比率Bが、予め定めた所定値となるように設定されている。
【0031】
流量可変機構150は、旋回流路140に流入する液相冷媒の流量を変更可能とする機構部であり、旋回流路140の上流側に配設されている。具体的には、流量可変機構150は、流入部141の先端側で流入部141の流路方向(軸線142と交差する方向)に並ぶように配置されている。流量可変機構150は、流入部151と、流入部151および流入部141との間に形成される空間内に設けられた弁体部152とを備えている。流入部151は、流量可変部150の最上流部に設けられて、流路方向が軸線111、142と平行となるように配設されている。流入部151の上流側は、凝縮器12の冷媒流出側と接続されて、凝縮器12から流出される液相冷媒が流入するようになっている。
【0032】
弁体部152は、旋回流路140の流入部141の開口面積を調節するものあり、図示しない制御装置によって流入部141の流路方向に摺動されることで、流入部141の開口面積を変更することが可能となっている。弁体部152は、例えば、傘状の弁と、弁に接続される作動棒と、作動棒を摺動させるアクチュエータとを備え、作動棒が流入部141の流路方向と同一の方向を向くように配設されている。
【0033】
図1に戻って、気液分離器13は、エジェクタ100のディフューザ部130から流出される冷媒を気液二相に分離する分離器である。気液分離機13は、分離された気液二相の冷媒を内部に貯留する貯液部が一体的に形成された円筒状の容器体となっている。気液二相に分離された冷媒のうち、液相冷媒は貯液部内の下側に溜められ、また、気相冷媒は貯液部内において液相冷媒の上側に溜められるようになっている。貯液部の液相冷媒が溜まる部位は、冷媒配管によって蒸発器14の冷媒流入側に接続されている。また、貯液部の気相冷媒が溜まる部位は、冷媒配管によって圧縮機11の吸入側に接続されている。
【0034】
蒸発器14は、送風機によって空調装置の空調ケース内に導入された外気、あるいは車室内空気(以下、内気)からの吸熱作用によって、内部を流通する冷媒を蒸発させる熱交換器である。蒸発器14の冷媒流出側は、冷媒配管によってエジェクタ100の吸引部120に接続されている。
【0035】
図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。この制御装置には、乗員による操作パネル(図示せず)からの各種操作信号(空調作動スイッチ、設定温度スイッチ等)、各種センサ群からの検出信号等が入力されるようになっており、制御装置は、これらの入力信号を用いてROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って各種機器(主に圧縮機11および流量可変機構150)の作動を制御する。
【0036】
次に、上述構成に基づく本実施形態の作動について説明する。
【0037】
乗員からの空調作動スイッチ、設定温度スイッチ等が入力されると、制御装置から出力される制御信号が圧縮機11の電磁クラッチに通電され電磁クラッチが接続状態となり、圧縮機11に車両走行用エンジンから回転駆動力が伝達される。尚、圧縮機11が電動圧縮機の場合は、電動モータが作動され、圧縮機11に電動モータから回転駆動力が伝達される。
【0038】
そして、制御装置から圧縮機11の電磁式容量制御弁に制御プログラムに基づいて制御電流In(制御信号)が出力されると、圧縮機11の吐出容量が調節され、圧縮機11は気液分離器13(貯液部)から気相冷媒を吸入、圧縮して吐出する。
【0039】
圧縮機11から圧縮吐出された高温高圧の気相冷媒は凝縮器12に流入する。凝縮器12では高温高圧の冷媒が外気により冷却されて凝縮液化する。凝縮器12から流出された液相冷媒は、エジェクタ100の流入部151から流量可変機構150内に流入する。
【0040】
流量可変機構150においては、制御装置によって、冷凍サイクル10の負荷に応じて弁体部152の位置(流入部141の開口面積)が調節され、旋回流路140内に流入する冷媒量が調整される。つまり、冷凍サイクル10の負荷がより高いときは、弁体部152が
図2中の下側に移動され、旋回流路140の流入部141の開口面積がより大きくなるように変更され、旋回流路140内に流入する冷媒量が増加される。逆に、冷凍サイクル10の負荷がより低いときは、弁体部152が
図2中の上側に移動され、流入部141の開口面積がより小さくなるように変更され、旋回流路140内に流入する冷媒量が減少される。
【0041】
そして、上記のように流量可変機構150によって流量調整されて流入部141から旋回流路140内に流入した液相冷媒は、流入部141が旋回流路140の円筒状の外周に対して接線方向を向くように接続されていることから、旋回流路140内において軸線142に対して旋回する旋回流となる。この場合、旋回流中心線は、ほぼ、軸線142に一致する。このような旋回流においては、遠心力の作用によって、旋回中心線の近傍の圧力を、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生ずる)圧力まで低下させることで、旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態にできる。そして、旋回流路140の軸線142とノズル部110の軸線111とが一致するように配置されていることから、ガス単相および液単相の冷媒は、気液混相状態の冷媒としてノズル部110内に流入していく。
【0042】
ノズル部110においては、冷媒は減圧膨張される。この減圧膨張時に冷媒の圧力エネルギが速度エネルギに変換されるので、気液混相状態の冷媒はノズル部110から高速度となって噴出される。そして、この冷媒噴出流の冷媒吸引作用により、気液分離器13(貯液部)内の液相冷媒が蒸発器14内を流通して、気相冷媒となって吸引部120に吸引されることになる。
【0043】
ここで、上記のように旋回流路140において、旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とされるので、この「二相分離状態により生成される気液界面」での液冷媒の沸騰(ガス化)促進により、ノズル部110の先細部から末広部の出口にかけての流れが二相噴霧状態となり、末広部の出口から噴射される冷媒の流速は増大されることになる。
【0044】
ノズル部110から噴出された冷媒と吸引部120に吸引された冷媒は、混合冷媒となってノズル部110の下流側のディフューザ部130に流入する。このディフューザ部130では下流側に向かう通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
【0045】
そして、ディフューザ部130から流出された冷媒は気液分離器13に流入する。気液分離機13にて気液二相に分離された冷媒は、貯液部に流入する。貯液部内の気相冷媒は、圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。このとき、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力は、エジェクタ100のディフューザ部130によって上昇されているので、圧縮機11の駆動動力を低減することが可能となる。
【0046】
また、気液分離器13にて気液二相に分離された冷媒のうち、液相冷媒は、エジェクタ100の冷媒吸引作用により、貯液部から蒸発器14に流入される。蒸発器14では、低圧の液相冷媒が空調ケース内の空調用空気(外気あるいは内気)から吸熱して蒸発気化する。つまり、空調ケース内の空調用空気が冷却されることになる。そして、蒸発器14を通過した後の気相冷媒はエジェクタ100に吸引され、ディフューザ部130から流出される。
【0047】
以上のように、本実施形態では、エジェクタ100に旋回流路140を設けているので、液相冷媒を旋回させ、旋回流路140において、旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とされるので、この「二相分離状態により生成される気液界面」での液冷媒の沸騰(ガス化)促進により、ノズル部110の先細部(最小流路面積部)から末広部(末広流路部)の出口にかけての流れが二相噴霧状態となり、末広部の出口から噴射される冷媒の流速は増大されることになる。エジェクタ100のノズル部110の効率(ノズル効率)は、噴出される冷媒の速度に比例するため、その結果、ノズル部110のノズル効率を向上させることができ、ひいては、エジェクタ効率を向上させることができる。
【0048】
また、旋回流路140の上流側に、旋回流路140に流入する液相冷媒の流量を変更可能とする流量可変機構150を設けているので、冷凍サイクル10の負荷に応じて冷媒量を変更することができ、冷凍サイクル10の負荷に見合った冷媒量を流すことが可能となり、効果的なエジェクタ100の作動を引き出すことができる。
【0049】
尚、冷凍サイクル10の負荷が高い時に流量可変機構150によって液相冷媒の流量を増大させると、流量可変機構150の弁体部152における流路(流入部141)が大きく開かれて、エジェクタ(100)としては、ノズル部110による単段膨張のエジェクタとして作用する。逆に、冷凍サイクル10の負荷が低い時に流量可変機構150によって液相冷媒の流量を低下させると、流量可変機構150の弁体部152における流路(流入部141)が絞りのように閉じられて、エジェクタ100としては、絞りのように閉じられた流路と、本来のノズル部110とによる二段膨張のエジェクタとして作用することになる。
【0050】
このように低負荷時において、二段膨張のエジェクタとして作用する場合は、従来技術のエジェクタと類似するものとなる。しかしながら、本実施形態では、上記で説明した旋回流路(140)によって、ノズル部(110)の末広部の出口で噴射される冷媒の流速を増大させることで、ノズル効率を向上することができるため、従来技術のように、第1ノズルでの減圧により、第2ノズルにおいてはディフューザ部によって昇圧させるための圧力エネルギがほとんど得られなくなってしまうものに比べて、良好なエジェクタの作動が得られるものとなる。
【0051】
また、エジェクタ100(旋回流路140)に流入される高圧冷媒は、本実施形態では液相冷媒となっている。高圧冷媒が液相冷媒であると、上記のように冷媒は旋回流路140において、旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とされるので、この「二相分離状態により生成される気液界面」での液冷媒の沸騰(ガス化)促進により、ノズル部110の先細部111から末広部112の出口にかけての流れが二相噴霧状態となり、末広部112の出口から噴射される冷媒の流速は増大されることになる。この結果、高圧冷媒が気液二相である場合に比べて、ノズル効率の向上がより大きく得られる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態におけるエジェクタ100Aを
図3、
図4に示す。第2実施形態のエジェクタ100Aは、上記第1実施形態のエジェクタ100に対して、旋回流路140に接続される流量可変機構150の構造を変更して、流量可変機構150Aとしたものである。
【0053】
旋回流路140は、扁平円筒状の上流側が開口されて形成されている。この開口部が旋回流路140における流入部となっている。
【0054】
流量可変機構150Aは、基板153と弁体ガイド154、155とを備えている。基板153は、円板状の板部材であり、旋回流路140の上流側の開口部を塞ぐように配設されている。基板153には、冷媒が流入する流入部としての流入孔153aが複数、穿設されており、流入孔153aは旋回流路140内に連通している。複数の流入孔153aは、例えば、基板153の外径側で周方向に2つ設けられている。複数の流入孔153aは、基板153の径方向に対向するように配置されている。
【0055】
弁体ガイド154は、ある程度の板厚を有する四角状の板部材であり、円弧状に湾曲するように形成されて、旋回流路140内に挿入されている。弁体ガイド154の湾曲した面を構成する四角形の4辺のうち、1つの湾曲した辺が基板153に当接して、湾曲した面が基板153に対して立設されるように配設されている。また、立設された弁体ガイド154は、複数の流入孔153aの位置に対応するように配設されている。弁体ガイド154は、2つの流入孔153aに対応して2つ設けられている。そして、弁体ガイド154は、湾曲した面の外側の面(凸側の面)の一端側が旋回流路140の内周面に当接して、湾曲した面が旋回流路140の内周面に沿うようにして、湾曲した面の他端側が旋回流路140の中心側にずれた形で配設されている。弁体ガイド154は、上記の位置関係となるように、旋回流路140内で固定されている。
【0056】
一方、弁体ガイド155は、上記弁体ガイド154と同様の湾曲した板部材であり、弁体ガイド154と対を成して旋回流路140内に挿入されている。弁体ガイド154が2つ設定されていることから、対を成す弁体ガイド154、155は、ここでは2組設けられている。弁体ガイド155は、弁体ガイド154と共に流入孔153aを挟み、両弁体ガイド154、155の間に隙間ができるように基板153から立設されるように配設されている。そして、弁体ガイド154と同様に、弁体ガイド155の湾曲した面の外側の面(凸側の面)の一端側が旋回流路140の内周面に当接して、湾曲した面が旋回流路140の内周面に沿うようにして、湾曲した面の他端側が旋回流路140の中心側にずれた形で配設されている。両弁体ガイド154、155間に形成される隙間は流入孔153aから流入する液相冷媒の流路となる。そして、弁体ガイド155は、旋回流路140および基板153に対して、図示しない制御装置によって周方向に移動可能となっている。
【0057】
つまり、弁体ガイド155が、制御装置によって冷凍サイクル10の熱負荷に応じて、弁体ガイド154から離れるように周方向に移動されると両弁体ガイド154、155間の隙間が拡がり、流入孔153aから流入する液相冷媒の流路面積が拡大するようになっている。逆に、弁体ガイド155が、弁体ガイド154に近づくように周方向に移動されると両弁体ガイド154、155間の隙間が狭くなって、流入孔153aから流入する液相冷媒の流路面積が縮小するようになっている。
【0058】
上記第2実施形態のエジェクタ100Aにおいては、凝縮器12から流出された液相冷媒は、軸線111、114と同一方向から流入孔153aを介して流量可変機構150A、更には旋回流路140内に流入する。このとき、制御装置によって、冷凍サイクル10の熱負荷に応じて弁体ガイド155の位置が移動されることで両弁体ガイド154、155間の流路面積が調節され、流量可変機構150Aから旋回流路140内に流入する冷媒量が調整される。つまり、冷凍サイクル10の負荷がより高いときは、弁体ガイド155によって両弁体ガイド154、155間の流路面積がより大きくなるように変更され、旋回流路140内に流入する冷媒量が増加される。逆に、冷凍サイクル10の負荷がより低いときは、弁体ガイド155によって両弁体ガイド154、155間の流路面積がより小さくなるように変更され、旋回流路140内に流入する冷媒量が減少される。
【0059】
そして、上記のように流量可変機構150A(弁体ガイド154、155)によって流量調整されて流入孔153aから旋回流路140内に流入した液相冷媒は、弁体ガイド154、155の湾曲した面に沿って流れ、軸線142に対して旋回する旋回流となる。このように、弁体ガイド154、155は、流量可変機構150Aにおいて流入孔153aの開口面積を調節して流量を可変させる機能と、旋回流路140において冷媒流れを旋回流にする機能とを有している。以下、旋回流路140からノズル部110、ディフューザ部130に至る冷媒の流れは、上記第1実施形態と同じである。
【0060】
本実施形態では、流量可変機構150Aへの液相冷媒の流入方向は、旋回流路140、およびノズル部110の各軸線142、111と同一方向となるようにしているので、旋回流路140と流量可変機構150Aとを軸線142方向に接続することができ、旋回流路140の軸線142方向と交差する方向に、流量可変機構150Aが張出すようなことが無く、搭載性に優れるエジェクタ100Aとすることができる。
【0061】
また、流量可変機構150Aは、流入された液相冷媒を旋回方向にガイドする一対のガイド部材154、155間の隙間(流路面積)を変更することで、液相冷媒の流量を変更可能とするようにしている。これにより、液相冷媒の流量を調整しつつ、流入した冷媒に対して旋回流を持たせるような流量可変機構150Aとすることができ、コンパクトな流量可変機構150Aとすることができる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態の冷凍サイクル10Aを
図5に示す。第3実施形態の冷凍サイクル10Aは、上記第1実施形態の冷凍サイクル10に対して、気液分離器13を廃止し、蒸発器14を第1蒸発器14a、および第2蒸発器14bとし、分岐流路15に減圧器16を設けたものとしている。この冷凍サイクル10Aに、上記第1実施形態のエジェクタ100が使用されている。
【0063】
エジェクタ100のディフューザ部130は、第1蒸発器14aの冷媒流入側に接続され、第1蒸発器14aの冷媒流出側は、圧縮機11の吸入側に接続されている。また、分岐流路15は、凝縮器12の冷媒流出側とエジェクタ100の流入部151との間から分岐して、エジェクタ100の吸引部120に接続される流路として形成されている。そして、この分岐流路15には、上流側から下流側に向けて冷媒の減圧手段としての減圧器16と第2蒸発器14bとが設けられている。
【0064】
第1蒸発器14aは送風される空調用空気の上流側に配置され、第2蒸発器14bは空調用空気の下流側に配置されている。
【0065】
本実施形態においては、凝縮器12から流出される液相冷媒の一部は、エジェクタ100の流量可変機構150によって流量が調整され、旋回流路140によって旋回され、ノズル部110によって減圧され、さらにディフューザ部130によって昇圧されて流出される。ディフューザ部130から流出される冷媒は、第1蒸発器14aに流入し、空調用空気から吸熱して蒸発気化する。つまり、空調ケース内の空調用空気が冷却されることになる。そして、第1蒸発器14aを通過した冷媒は、圧縮機11に吸入される。
【0066】
また、凝縮器12から流出される液相冷媒の残りは、分岐流路15を流通して、減圧器16によって減圧され、第2蒸発器14bに流入する。第2蒸発器14bでは、第1蒸発器14aによって冷却された空調用空気が更に冷却される。そして、第2蒸発器14bを通過した冷媒は、吸引部120に吸引される。
【0067】
ここで、第1蒸発器14aの冷媒蒸発圧力はディフューザ部130で昇圧した後の圧力であり、一方、第2蒸発器14bの出口側はエジェクタ100の吸引部120に接続されているから、ノズル部110での減圧直後の最も低い圧力を第2蒸発器14bに作用させることが可能となる。
【0068】
よって、第1蒸発器14aの冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)よりも第2蒸発器14bの冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)を低くすることができる。従って、第1蒸発器14aにおける冷媒と空調用空気との温度差に対して、第2蒸発器14bにおける冷媒と第1蒸発器14aで冷却された空調用空気との温度差を同様に確保することができるので、効率的な空調用空気の冷却が可能となる。
【0069】
尚、第1蒸発器14aと第2蒸発器14bとで、冷媒蒸発圧力(冷媒蒸発温度)が異なるように設定できることから、両蒸発器14a、14bでの冷却対象を異なるものとしても良い。例えば、第1蒸発器14aで通常の空調用空気の冷却を行い、第2蒸発器14bで冷凍庫、冷蔵庫等内の空気を冷却するようにしても良い。
【0070】
(第4実施形態)
第4実施形態の冷凍サイクル10Bを
図6に示す。第4実施形態の冷凍サイクル10Bは、上記第1実施形態の冷凍サイクル10に対して、気液分離器13を廃止し、分岐流路15に減圧器16と蒸発器14とを設けると共に、内部熱交換器17を追加したものとしている。この冷凍サイクル10Bに、上記第1実施形態のエジェクタ100が使用されている。
【0071】
エジェクタ100のディフューザ部130は、圧縮機11の吸入側に直接、接続されている。また、分岐流路15は、凝縮器12の冷媒流出側とエジェクタ100の流入部151との間から分岐して、エジェクタ100の吸引部120に接続される流路として形成されている。そして、この分岐流路15には、上流側から下流側に向けて冷媒の減圧手段としての減圧器16と蒸発器14とが設けられている。
【0072】
内部熱交換器17は、分岐流路15において減圧器16よりも上流側となる高圧冷媒と、ディフューザ部130から流出される低圧冷媒との間で熱交換する熱交換器であり、例えば2重管式の熱交換器が採用されている。2重管式の内部熱交換器17は、外管と、外管内に挿入される内管とから形成されて、例えば、外管と内管との間を高圧冷媒が流通し、内管内を低圧冷媒が流通するようになっている。
【0073】
本実施形態においては、凝縮器12から流出される液相冷媒の一部は、エジェクタ100の流量可変機構150によって流量が調整され、旋回流路140によって旋回され、ノズル部110によって減圧され、さらにディフューザ部130によって昇圧されて流出される。ディフューザ部130から流出される冷媒は、圧縮機11に吸入される。
【0074】
また、凝縮器12から流出される液相冷媒の残りは、分岐流路15を流通して、減圧器16によって減圧され、蒸発器14に流入する。蒸発器14では、空調用空気が冷却される。そして、蒸発器14を通過した冷媒は、吸引部120に吸引される。
【0075】
内部熱交換器17においては、高圧冷媒と低圧冷媒との間において熱交換が成され、高圧冷媒は冷却され、低圧冷媒は過熱されることになる。即ち、分岐流路15において凝縮器12から流出された液相冷媒は、内部熱交換器17によって更に過冷却されて低温化が促進される(サブクール)。また、ディフューザ部130から流出された冷媒は、内部熱交換器17によって過熱されて過熱度を持ったガス冷媒となる(スーパーヒート)。
【0076】
よって、蒸発器14に流入する冷媒の低温化が促進されることから、蒸発器14におけるエンタルピ差を大きくすることができ、蒸発器14における空調用空気との熱交換性能(冷房性能)を向上させることができる。そして、ディフューザ部130から流出される冷媒は、内部熱交換器17での熱交換により過熱度が与えられて完全なガス冷媒(気相冷媒)とされるので、圧縮機11に対する液圧縮を防止することができる。
【0077】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0078】
上記各実施形態では、旋回流路140に流入される高圧冷媒は、液相冷媒である場合を説明したが、これに限らず、気液二相冷媒の場合であっても良い。旋回流路140に流入される冷媒が気液二相状態であっても、旋回流路140においては、冷媒の旋回流によって旋回中心線の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにすることができ、ノズル効率向上について同様の効果が得られる。
【0079】
また、第2実施形態におけるエジェクタ100Aを、第3、第4実施形態の冷凍サイクル10A、10Bに適用しても良い。
【0080】
また、上記各実施形態における冷凍サイクル10、10A、10Bは、上記のような車両用空調装置に代えて、車両用冷凍車、あるいは家庭用の給湯器用または室内空調用のヒートポンプサイクルに適用することができる。
【0081】
また、上記各実施形態においては、特に冷媒の種類を特定していないが、フロン系冷媒、HC系冷媒、二酸化炭素冷媒等を用いるものであって、通常サイクルに加えて超臨界サイクルおよび亜臨界サイクルに適用されるものとすることができる。