(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化銀を10質量%以上80質量%以下、前記還元剤を1質量%以上10質量%以下、前記金属Ag粒子を0.1質量%以上45質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が溶剤とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2,3に記載されたように、金属酸化物粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化物ペーストを用いた場合には、金属酸化物粒子が還元剤によって還元されることで生成する金属粒子の粒径が小さく、焼成体自体は緻密な構造となるが、接合層(導電性焼成部)の内部に比較的大きな空隙が生じるおそれがあった。
特に最近では、半導体装置の小型化・薄肉化が進められるとともに、その使用環境も厳しくなってきており、従来にも増して半導体素子と電子部品の接合信頼性の向上が求められている。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、緻密な構造の焼成体からなり、内部において大きな空隙の発生が抑制された導電性焼成部を形成可能な導電性組成物、及び、この導電性組成物を用いた接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の導電性組成物は、導電性を有する導電性焼成部を形成するための導電性組成物であって、酸化銀と、還元剤と、金属Ag粒子と、
体積モード径が20nm以上800nm以下の微細Ag粒子と、溶剤と、を含有し、前記金属Ag粒子は、体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下とされており、前記酸化銀の
質量[Ag−O]と前記金属Ag粒子の
質量[Ag]との質量比[Ag−O]/[Ag]が、50/50≦[Ag−O]/[Ag]≦99/1の範囲内とされていることを特徴としている。
【0008】
この導電性組成物によれば、酸化銀と還元剤を含んでいるので、焼成時において酸化銀が還元されて微細な銀粒子(還元銀粒子)が生成されることになり、緻密な構造の焼成体を得ることができる。さらに、導電性組成物は、体積モード径が粒径0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子を含んでいるので、焼成体からなる導電性焼成部の内部に大きな空隙が生じることを抑制することができる。
なお、[Ag−O]/[Ag]が99/1を超える場合には、金属Ag粒子が少なすぎるために、焼成体からなる導電性焼成部の内部に空隙が多数発生してしまうおそれがある。一方、[Ag−O]/[Ag]が50/50未満である場合には、酸化銀の還元による発熱量が不足し、焼結が不十分となるおそれがある。したがって、前記酸化銀と前記金属Ag粒子との質量比[Ag−O]/[Ag]を、50/50≦[Ag−O]/[Ag]≦99/1の範囲内に設定している。
また、体積モード径が20nm以上800nm以下の微細Ag粒子を有しており、金属Ag粒子の粒子間の隙間に微細Ag粒子が充填されるので、Ag粒子の空間を占める割合が大きくなり、緻密な構造の導電性焼成部を得ることができる。
【0009】
ここで、前記酸化銀の重量[Ag−O]と前記還元剤の重量[R]との質量比[Ag−O]/[R]が、3/1≦[Ag−O]/[R]≦12/1の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、酸化銀に対して必要な還元剤が確保されているので、酸化銀を確実に還元することができるとともに、還元剤が余剰に添加されていないので、形成された導電性焼成部の内部に還元剤成分が残存することを抑制できる。
【0010】
また、
前記金属Ag粒子の質量[Ag]と前記微細Ag粒子の質量[SAg]との質量比[Ag]/[SAg]が、1/1≦[Ag]/[SAg]≦4/1の範囲内とされていても良い。
【0011】
さらに、前記酸化銀を10質量%以上80質量%以下、前記還元剤を1質量%以上10質量%以下、前記金属Ag粒子を0.1質量%以上45質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が溶剤とされていることが好ましい。
酸化銀が10質量%以上80質量%以下とされ、還元剤が1質量%以上10質量%以下とされているので、酸化銀が還元剤によって確実に還元され、緻密な構造の焼成体を得ることができる。また、金属Ag粒子が、0.1質量%以上45質量%以下とされているので、焼成体からなる導電性焼成部に比較的大きな空隙が生じることを抑制することが可能である。さらに、微細Ag粒子を含有する場合には、その含有量は15質量%以下とすることが望ましい。この場合、焼成体からなる導電性焼成部をさらに緻密にすることができる。
なお、樹脂は、導電性組成物の粘性を調整するものであり、取り扱い性を考慮して必要に応じて添加すればよい。
【0012】
本発明の接合体の製造方法は、第一部材と第二部材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、前記第一部材と前記第二部材との間に、前述の導電性組成物を介在させた状態で加熱処理を行い、前記第一部材と前記第二部材とを、前記導電性組成物の焼成体からなる接合層を介して接合することを特徴としている。
【0013】
この構成の接合体の製造方法によれば、酸化銀が還元されて生成する還元銀粒子により緻密な構造とされ、さらに0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子により内部に大きな空隙が生じることが抑制された構造の接合層(導電性焼成部)とすることができる。このような接合層(導電性焼成部)を介して第一部材と第二部材とが接合されることになり、接合信頼性に優れた接合体を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、緻密な構造の焼成体からなり、内部において大きな空隙の発生が抑制された導電性焼成部を形成可能な導電性組成物、及び、この導電性組成物を用いた接合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態である導電性組成物及びこの導電性組成物を用いた接合体の製造方法について添付した図面を参照して説明する。
【0017】
参考実施形態である導電性組成物は、酸化銀と、還元剤と、溶剤と、樹脂と、体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子と、を含有しており、酸化銀の重量[Ag−O]と金属Ag粒子の重量[Ag]との質量比[Ag−O]/[Ag]が、50/50≦[Ag−O]/[Ag]≦99/1の範囲内に設定されている。また、酸化銀の重量[Ag−O]と還元剤の重量[R]との質量比[Ag−O]/[R]が、3/1≦Ag−O/R≦12/1の範囲内に設定されている。
【0018】
具体的な組成は、酸化銀を10質量%以上80質量%以下、還元剤を1質量%以上10質量%以下、0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子を0.1質量%以上45質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が溶剤とされている。
なお、本実施形態における導電性組成物は、その粘度が10Pa・s以上400Pa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上300Pa・s以下に調整されている。
【0019】
酸化銀は、その平均粒径が0.1μm以上40μm以下とされた粉末(酸化銀粉末)を使用した。酸化銀粉末は、銀ペースト中に酸化銀として分散している。なお、このような酸化銀粉末は、市販品として入手可能なものである。
【0020】
還元剤は、還元性を有する有機物とされており、例えば、アルコール、有機酸を用いることができる。
アルコールであれば、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の1級アルコールを用いることができる。なお、これら以外にも、多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。
有機酸であれば、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナンデカン酸などの飽和脂肪酸を用いることができる。なお、これら以外にも、不飽和脂肪酸を用いてもよい。
なお、導電性組成物を焼結して得られる焼成体の内部に、残存不純物に起因する空隙の発生を抑制するために、熱分解性に優れた分子構造を有する有機物を用いることが好ましい。
【0021】
なお、酸化銀と混合した後に還元反応が容易に進行しない還元剤であれば、導電性組成物の保存安定性が向上することになる。そこで、還元剤としては、融点が室温以上のものが好ましく、具体的には、ミリスチルアルコール、1−ドデカノール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,10−デカンジオール、ミリスチン酸、デカン酸等を用いることが好ましい。
【0022】
溶剤は、導電性組成物の保存安定性、印刷性を確保する観点から、高沸点(150℃〜300℃)のものを用いることが好ましい。
具体的には、α-テルピネオール、酢酸2エチルヘキシル、酢酸3メチルブチル等を用いることができる。
【0023】
樹脂は、導電性組成物の取り扱い性(例えば印刷性)の向上を目的として添加されるものである。
例えば、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等を適用することができる。なお、本実施形態では、焼結時に樹脂が焼結温度以下で完全に酸化・分解して導電性焼成部内部に残存しないようにするため、熱分解性の良いアクリル樹脂を用いた。
【0024】
そして、
参考実施形態における金属Ag粒子としては、その体積モード径:0.8μmを超えて20μm以下、平均粒径:5μm、の金属Ag粉末を使用した。金属Ag粉末は、導電性組成物中に金属Ag粒子として分散している。金属Ag粉末(金属Ag粒子)の粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)によって約5000倍の倍率で撮影し、得られた画像から金属Ag粒子の粒子200個について一次粒径を測定して粒径分布を作成し、作成した粒径分布から得られた体積モード値を体積モード径として算出したものである。
なお、金属Ag粉末(金属Ag粒子)の形状については、特に限定するものではなく、球状でも扁平形状等であっても良い。
【0025】
上述の体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粉末(金属Ag粒子)は、導電性焼成部に大きな空隙が生じることを抑制するために導電性組成物に含有されている。酸化銀が還元されて得られる還元銀粒子は、微細なことから還元銀粒子が凝集することによって焼成体自体は緻密な構造となるが、導電性焼成部の内部に比較的大きな空隙が生じることがある。本実施形態では、導電性組成物に体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子が含有されているので、上述した比較的大きな空隙の発生が抑制される。金属Ag粒子の体積モード径が0.8μm以下の場合、導電性焼成部の内部における大きな空隙発生に対する抑制効果が得られなくなる。また、20μmを超える場合、酸化銀ペーストの塗布時において金属Ag粒子を均一に分散させることが困難となるため、上記の範囲とされている。
【0026】
さらに、本実施形態では、酸化銀の重量[Ag−O]と、金属Ag粒子の重量Agとの質量比[Ag−O]/[Ag]が、50/50≦[Ag−O]/[Ag]≦99/1の範囲内とされている。上述の範囲とする理由は、[Ag−O]/[Ag]が50/50より小さい場合には、酸化銀が少なすぎるために還元により生じる微細な還元銀粒子が不足し、所望の導電率や強度が得られなくなるからである。また、99/1より大きい場合には、金属Ag粒子が少なすぎるため、導電性焼成部の内部の空隙発生に対する抑制効果が得られなくからである。
【0027】
次に、本実施形態である導電性組成物の製造方法について、
図1に示すフロー図を参照して説明する。
本実施形態においては、酸化銀を含有する酸化銀ペーストと、金属Ag粒子を含有するAgペーストと、を混合、撹拌することで、本実施形態である導電性組成物を製造する構成とされている。
【0028】
まず、前述した酸化銀粉末と還元剤(固体粉末)とを混合し、固体成分混合物を生成する(粉末混合工程S01)。
また、樹脂と溶剤とを混合して、有機混合物を生成する(有機物混合工程S02)。
【0029】
粉末混合工程S01で得られた固体成分混合物と、有機物混合工程S02で得られた有機混合物と、を混合して撹拌する(第一撹拌工程S03)。そして、第一撹拌工程S03で得られた撹拌物を、例えば複数のロールを有するロールミル機を用いて練り込みながら混合する(混錬工程S04)。
このようにして、前述の酸化銀ペーストが製出されることになる。なお、得られた酸化銀ペーストは、冷蔵庫等によって低温(例えば5〜15℃)で保存しておくことが好ましい。
【0030】
一方、金属Ag粉末と溶剤とを混合して撹拌する(第二撹拌工程S05)。これにより、前述の体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粉末(金属Ag粒子)が分散したAgペーストが製出されることになる。
なお、溶剤は酸化銀ペーストに用いられた溶剤と同種の溶剤を用いることが望ましい。また、このAgペーストの組成は、体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子の含有量が50質量%以上80質量%以下とされ、残りが溶剤とされることが好ましい。
【0031】
そして、酸化銀ペーストとAgペーストとを、混合して撹拌する(ペースト混合工程S06)。
このようにして、本実施形態である導電性組成物が製造されることになる。
【0032】
次に、本実施形態である接合体の製造方法について、
図2及び
図3を用いて説明する。
本実施形態における接合体10は、
図3に示すように、第一部材11と第二部材12とが接合されてなるものであり、第一部材11がSi製基板とされ、第二部材12がサファイア基板とされている。
【0033】
まず、第一部材11の接合面に、本実施形態である導電性組成物20を塗布する(導電性組成物塗布工程S11)。なお、この導電性組成物塗布工程S11においては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、感光性プロセススプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、またはダイコーティング法等の種々の手段を採用することができる。本実施形態では、スクリーン印刷法を用いている。
【0034】
次に、塗布した導電性組成物20を介して、第一部材11と第二部材12とを積層する(積層工程S12)。
そして、第一部材11と第二部材12とを積層した状態で加熱炉内に装入し、導電性組成物20の焼結を行う(焼結工程S13)。このとき、加熱炉内は大気雰囲気とし、加熱温度を150℃以上300℃以下、加熱時間を0.5時間以上2時間以下とした。
【0035】
この焼結工程S13により、第一部材11と第二部材12との間に、導電性組成物20の焼成体からなる接合層15(導電性焼成部)が形成され、第一部材11と第二部材12とが互いに接合されることになる。
このようにして、第一部材11と第二部材12とが接合されてなる接合体10が製造される。
【0036】
以上のような構成とされた本実施形態である導電性組成物においては、酸化銀と還元剤を含んでいるので、焼成時において酸化銀が還元されて微細な還元銀粒子が生成され、緻密な構造の焼成体を得ることができる。そしてさらに、酸化銀と、体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子と、を含んでおり、酸化銀の重量[Ag−O]と金属Ag粒子の重量[Ag]との質量比[Ag−O]/[Ag]が、50/50≦[Ag−O]/[Ag]≦99/1の範囲内とされているので、接合層15(導電性焼成部)に大きな空隙が生じることが抑制され、空隙の少ない接合層15(導電性焼成部)を得ることができる。
【0037】
また、酸化銀の重量[Ag−O]と還元剤の重量[R]との質量比[Ag−O]/[R]が、3/1≦[Ag−O]/[R]≦12/1の範囲内とされているので、酸化銀に対して必要な還元剤が確保され、酸化銀を確実に還元することができる。さらに、還元剤が余剰に添加されていないので、形成された焼成体からなる導電性焼成部の内部に還元剤成分が残存することを抑制できる。
【0038】
また、酸化銀が10質量%以上80質量%以下とされ、還元剤が1質量%以上10質量%以下とされているので、酸化銀が還元剤によって確実に還元され、緻密な構造の焼成体を得ることができる。また、金属Ag粒子が、0.1質量%以上45質量%以下とされているので、焼成体からなる接合層15(導電性焼成部)に大きな空隙が生じることを抑制することが可能である。
【0039】
また、樹脂の含有量を調整することにより、導電性組成物の粘性が10Pa・s以上400Pa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上300Pa・s以下に調整されているので、スクリーン印刷法等によって塗布することが可能となる。よって、必要な部分のみに選択的に導電性組成物を塗布することができ、導電性組成物の使用量を削減することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態においては、導電性組成物に混合する還元剤として、室温で固体であるものを用いているので、焼結工程S13の前に還元反応が進行することを防止できる。
【0041】
また、本実施形態の接合体10の製造方法によれば、第一部材11と第二部材12との間に導電性組成物20を塗布し、この導電性組成物20を焼結して接合層15を形成しているので、緻密な構造の焼成体からなり、かつ、内部に大きな空隙の少ない接合層15(導電性焼成部)によって第一部材11と第二部材12とを強固に接合することができる。
【0042】
次に、
本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態である導電性組成物は、
参考実施形態で説明した導電性組成物に加えてさらに金属Ag粒子とは異なる体積モード径を有する微細Ag粒子を有している。具体的には、酸化銀と溶剤と、樹脂と、体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子と、体積モード径が20nm以上800nm以下の微細Ag粒子を含有している。そして、酸化銀の重量[Ag−O]と金属Ag粒子の重量[Ag]との質量比[Ag−O]/[Ag]が、50/50≦[Ag−O]/[Ag]≦99/1の範囲内に設定されている。また、酸化銀の重量[Ag−O]と還元剤の重量[R]との質量比[Ag−O]/[R]が、3/1≦[Ag−O]/[R]≦12/1の範囲内に設定されている。このような場合には、異なった体積モード径を有する二種類の体積モード径を有する二種類のAg粒子(金属Ag粒子及び微細Ag粒子)を用いていることから、Ag粒子の全体での粒度分布は、2つのピークを有することになる。
また、
本発明の実施形態においては、金属Ag粒子の重量[Ag]と微細Ag粒子の重量[SAg]との質量比[Ag]/[SAg]が、1/1≦[Ag]/[SAg]≦4/1とされている。
【0043】
この
本発明の実施形態である導電性組成物によれば、体積モード径が0.8μmを超えて20μm以下の金属Ag粒子と、体積モード径が20nm以上800nm以下の微細Ag粒子とを含有しているので、比較的粒径の大きい金属Ag粒子の粒子間に比較的粒径の小さい微細Ag粒子が充填されることとなり、導電性組成物の乾燥後のAg粒子の密度が高くなる。そのため、低荷重での焼結条件においても、緻密な導電性焼成部を得ることが可能となる。
微細Ag粒子の体積モード径が20nm未満の場合は、体積モード径が小さすぎるために微細Ag粒子を含有させたことによる緻密性の向上効果が得られなくなるため、微細Ag粒子の体積モード径は上記の範囲に設定されている。
【0044】
また、金属Ag粒子の重量[Ag]と微細Ag粒子の重量[SAg]との質量比[Ag]/[SAg]が、1/1≦[Ag]/[SAg]≦4/1とされているので、低荷重での焼結条件で導電性焼成部を作製しても、空隙の発生が抑制された導電性焼成部を得ることが可能である。[Ag]/[SAg]が1/1未満の場合には、微細Ag粒子の比率が少なすぎるために微細Ag粒子を含有させたことによる緻密性の向上効果が得られなくなり、4/1を超える場合には、金属Ag粒子の比率が少なすぎるために、導電性焼成部の内部の比較的大きな空隙の発生の抑制効果が得られなくなるため、上記の範囲に設定されている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
また、本実施形態では、酸化銀ペーストとAgペーストとを混合することで導電性組成物を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、酸化銀と金属Ag粒子とを混合した後に、溶剤や樹脂を混合してもよい。
さらに、本実施形態では、第一部材をSi製基板とし、第二部材をサファイア基板として説明したが、これに限定されることはなく、第一部材及び第二部材に限定はなく、前述の導電性組成物の焼成体によって接合されるものであればよい。
例えば、アルミニウム部材同士を接合する場合や、アルミニウム部材とセラミックス基板を接合する場合に適用してもよい。また、銅部材同士を接合する場合や、銅部材とセラミックス基板を接合する場合、アルミニウム部材と銅部材とを接合する場合に適用してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、導電性焼成部を接合層15として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、基板上に電子部品の配線を固定するためのボンディング部等であっても良い。
【0048】
また、本実施形態では、異なる体積モード径を有する金属Ag粒子と微細Ag粒子を含有する場合について説明したが、二種類のAg粒子に限定されるものではなく、異なる体積モード径を有する三種類以上のAg粒子を用いた構成であっても良い。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
本実施形態に記載された方法によって導電性組成物を製造した。このとき、表1に示すように、導電性組成物の組成、金属Ag粉末(金属Ag粒子)の体積モード径、微細Ag粒子の体積モード径、酸化銀粉末と金属Ag粉末の質量比[Ag−O]/[Ag]、金属Ag粒子と微細Ag粒子の質量比[Ag]/[SAg]、酸化銀粉末と還元剤の質量比[Ag−O]/[R]を変更して導電性組成物を製造した。なお、比較例1では、金属Ag粒子を含有しない導電性組成物を製造した。
次に、長さ5mm、幅5mm、厚さ0.2mmのサファイア基板を素子として用意した。
そして、Si製基板の表面に、表1に示す導電性組成物を塗布し、上述のサファイア基板を積層した。そして、大気中、300℃で2時間の条件で焼結を行い、接合体を製造した。
【0050】
作製した接合体の評価として、体積モード径、空隙率の測定及び接合率の測定を行った。以下に、各測定方法を説明する。
(体積モード径)
金属Ag粉末(金属Ag粒子)の粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)によって約5000倍の倍率で撮影し、得られた画像から金属Ag粒子の粒子200個について一次粒径を測定して粒径分布を作成し、作成した粒径分布から得られた体積モード値を体積モード径として算出したものである。なお、粒径は、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径で表したHeywood径を用いた
(空隙率の測定)
得られた接合体について、接合層の空隙率を測定した。作製した接合体の接合層の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察して空隙率の面積を解析し、(空隙率)=(空隙の面積)/(第2焼成層全体の面積)×100の式により空隙率を求めた。
(接合率の測定)
得られた接合体について、接合層の空隙率を測定した。接合率は、超音波探傷装置を用いて評価し、以下の式から算出した。ここで、接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち半導体素子面積とした。超音波探傷像において未接合部分は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。
(接合率)={(接合面積)−(未接合面積)}/(接合面積)×100
【0051】
【表1】
【0052】
参考例1及び本発明例2から本発明例6は、金属Ag粉末(金属Ag粒子)の粒径が0.8μmを超えて20μm以下かつ質量比[Ag−O]/[Ag]が50/50以上99/1以下の範囲内とされているので、接合層の空隙率が低く良好であった。特に、本発明例2から本発明例6については、微細Ag粒子が導電性組成物に含有されているので、接合層の空隙率が低く良好であった。
一方、比較例1は、金属Ag粉末(金属Ag粒子)を含有しないために、空隙率及び接合率が低く、本発明例と比較して劣った。また、比較例2は、金属Ag粉末(金属Ag粒子)の体積モード径が大きすぎるために、導電性組成物の塗布を均一に行うことができず、接合率が本発明例と比較して劣った。さらに、比較例3は、金属Ag粉末(金属Ag粒子)の体積モード径が小さすぎるため接合層内部の空隙発生抑制効果が得られず、空隙率が本発明例と比較して劣った。また、比較例4は、酸化銀粉末に対して金属Ag粉末の質量比が多すぎるために、空隙率が高くなるとともに接合率が低くなり、本発明例と比較して劣った。