特許第5821764号(P5821764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821764
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
   G01D5/20 110Q
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-92952(P2012-92952)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-221826(P2013-221826A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100155789
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】大和田 崇文
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−141207(JP,A)
【文献】 特開2007−315856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の励磁信号(Sc)が位置検出対象(10a)の位置情報に応じて振幅変調された被変調波(Sin,Cos)を入力とし、前記励磁信号の一周期の間に前記被変調波の複数のサンプリング値を用いて前記位置情報を復調する復調手段(40)を備え、
前記復調手段は、
前記入力された前記被変調波に基づき前記位置情報を復調するに際して、前記励磁信号を入力とし、前記位置情報から前記励磁信号の符号の影響を除去する除去処理を行なう検波手段を備えて且つ、
前記位置情報を、前記復調に用いる前記被変調波のサンプリング値よりも過去においてサンプリングされた前記励磁信号を用いて復調し、
前記検波手段は、
前記励磁信号が正であるか負であるかに応じて2値化された2値化信号を算出する2値化信号算出手段(70)と
前記2値化信号のエッジを基点として、前記励磁信号の周期情報に基づき定まる時間が経過したタイミングを前記励磁信号が変動中心となるタイミングとし、該タイミングを前記除去処理に用いる検波信号の反転タイミングとするエッジ設定手段(74)と、
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記2値化信号のいずれか一方の値の継続時間およびいずれか他方の値の継続時間の少なくとも一方を計時する計時手段を備え、
前記エッジ設定手段は、前記計時された時間を前記周期情報として用いることを特徴とする請求項記載の位置検出装置。
【請求項3】
交流の励磁信号(Sc)が位置検出対象(10a)の位置情報に応じて振幅変調された被変調波(Sin,Cos)を入力とし、前記励磁信号の一周期の間に前記被変調波の複数のサンプリング値を用いて前記位置情報を復調する復調手段(40)を備え、
前記復調手段は、前記入力された前記被変調波に基づき前記位置情報を復調するに際して、前記励磁信号を入力とし、前記位置情報から前記励磁信号の符号の影響を除去する除去処理を行なう検波手段を備えて且つ、前記位置情報を、前記復調に用いる前記被変調波のサンプリング値よりも過去においてサンプリングされた前記励磁信号を用いて復調し、
前記検波手段の入力となる現在の励磁信号を、過去の励磁信号によって補正する補正手段(50)を備え、
前記補正手段は、前記励磁信号の所定の位相における現在のサンプリング値を、該所定の位相における過去のサンプリング値によって補正するサンプリング値補正手段(S16)を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
前記サンプリング値補正手段は、前記現在のサンプリング値と、前記過去のサンプリング値との平均値を補正後のサンプリング値とする平均処理手段(S14)を備えることを特徴とする請求項記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記励磁信号に不定期の変動が生じたか否かを判断する判断手段(S30)と、
該判断手段によって前記不定期の変動が生じたと判断される場合、前記平均処理手段による平均値の採用を回避する回避手段(S32)を備えることを特徴とする請求項記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記回避手段は、前記判断手段によって前記不定期の変動が生じたと判断される場合、前記平均処理手段による過去のサンプリング値の寄与率を低下させた平均値を採用することで、前記変動があると判断されない場合において採用される平均値の採用を回避することを特徴とする請求項記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記検波手段は、前記励磁信号が正であるか負であるかに応じて2値化された検波信号を算出する2値検波信号算出手段を備え、
前記所定の位相は、前記検波手段の入力となる励磁信号のサンプリング値のうち、前記励磁信号が小さいものに対応する位相を含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記所定の位相は、前記励磁信号のN周期(N:自然数)の整数分の1の間隔の各位相であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記補正手段は、
前記励磁信号のサンプリング結果に基づき、前記励磁信号の変動中心とゼロとの間の乖離量であるオフセット量を算出するオフセット量算出手段(S20)と、
該オフセット量算出手段によって算出されたオフセット量に基づき、前記検波手段の入力となる前記励磁信号を補正するオフセット補正手段(S16)と、
を備えることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記励磁信号の周期を計時する周期計時手段(S72)と、
該周期計時手段によって計時された周期に基づき、前記励磁信号のサンプリングの周期を変更する周期変更手段(S76)と、
を備えることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記補正手段は、
前記励磁信号の変動中心とゼロとの間の乖離量であるオフセット量、前記励磁信号の振幅、前記励磁信号の角速度、および前記励磁信号の位相の少なくとも1つを推定対象とし、前記励磁信号の複数のサンプリング値に基づき、該推定対象の値を推定する推定手段(S46)を備え、
該推定手段による推定値に基づき、前記検波手段の入力となる前記励磁信号を補正することを特徴とする請求項記載の位置検出装置。
【請求項12】
交流の励磁信号(Sc)が位置検出対象(10a)の位置情報に応じて振幅変調された被変調波(Sin,Cos)を入力とし、前記励磁信号の一周期の間に前記被変調波の複数のサンプリング値を用いて前記位置情報を復調する復調手段(40)を備え、
前記復調手段は、前記入力された前記被変調波に基づき前記位置情報を復調するに際して、前記励磁信号を入力とし、前記位置情報から前記励磁信号の符号の影響を除去する除去処理を行なう検波手段を備えて且つ、前記位置情報を、前記復調に用いる前記被変調波のサンプリング値よりも過去においてサンプリングされた前記励磁信号を用いて復調し、
前記検波手段の入力となる現在の励磁信号を、過去の励磁信号によって補正する補正手段(50)を備え、
前記励磁信号が正であるか負であるかに応じて2値化された2値化信号を生成する2値化信号算出手段を備え、
前記補正手段は、
前記2値化信号のいずれか一方の値の継続時間と前記励磁信号の半周期との差、および前記2値化信号のいずれか他方の値の継続時間と前記励磁信号の半周期との差の少なくとも一方に基づき、前記励磁信号の変動中心とゼロとの間の乖離量であるオフセット量を算出するオフセット量算出手段(78)と、
該オフセット量算出手段によって算出されたオフセット量に基づき、前記検波手段の入力となる前記励磁信号を補正するオフセット補正手段(78)と、
を備えることを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流の励磁信号が位置検出対象の位置情報に応じて振幅変調された被変調波を入力とし、前記励磁信号の一周期の間に前記被変調波の複数のサンプリング値を用いて前記位置情報を復調する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の位置検出装置としては、たとえば下記特許文献1に見られるように、レゾルバによって回転体の回転角度に応じて励磁信号が振幅変調された被変調波に基づき、回転角度情報をデジタルデータにて表現するレゾルバデジタル変換器が周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3442416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、上記位置検出装置を、たとえば動作速度が比較的小さいソフトウェア処理手段を用いて構成する場合、ノイズに対する耐性が顕著に低下することが発明者らによって見出された。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、交流の励磁信号が位置検出対象の位置情報に応じて振幅変調された被変調波を入力として、前記励磁信号の一周期の間に前記被変調波の複数のサンプリング値を用いて前記位置情報を復調する新たな位置検出装置について、これを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
第1の発明は、交流の励磁信号(Sc)が位置検出対象(10a)の位置情報に応じて振幅変調された被変調波(Sin,Cos)を入力とし、前記励磁信号の一周期の間に前記被変調波の複数のサンプリング値を用いて前記位置情報を復調する復調手段(40)を備え、前記復調手段は、前記入力された前記被変調波に基づき前記位置情報を復調するに際して、前記励磁信号を入力とし、前記位置情報から前記励磁信号の符号の影響を除去する除去処理を行なう検波手段を備えて且つ、前記位置情報を、前記復調に用いる前記被変調波のサンプリング値よりも過去においてサンプリングされた前記励磁信号を用いて復調することを特徴とする。
【0008】
上記発明では、過去においてサンプリングされた励磁信号を用いることで、現在の励磁信号にノイズが重畳した場合であっても、これに対処することができる。
【0009】
なお、第4〜11のいずれかに記載の発明は、前記補正手段は、前記励磁信号の極大値および極小値に基づき、前記励磁信号の振幅を算出する振幅算出手段と、該振幅算出手段によって算出された振幅に基づき、前記検波手段の入力となる前記励磁信号を補正する振幅補正手段と、を備えることを特徴としてもよい。
【0010】
なお、第3の発明は、前記計時手段によって計時された時間が閾値以下である場合、その時間を、前記検波信号の反転タイミングの設定に用いることを禁止する禁止手段を備えることを特徴としてもよい。
【0011】
また、第11,14の発明は、前記復調手段に入力される前記励磁信号と前記被変調波は、いずれも電源電圧を共通とする差動増幅回路の出力信号であり、前記オフセット量算出手段によって算出されるオフセット量に基づき、前記被変調波を補正する手段を備えることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明にかかる以下の代表的な実施形態に関する概念の拡張については、代表的な実施形態の後の「その他の実施形態」の欄に記載してある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
図2】同実施形態における励磁信号のサンプリングタイミングを示すタイムチャート。
図3】同実施形態にかかるレファレンスの補正処理の手順を示す流れ図。
図4】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
図5】第2の実施形態の解決課題を示すタイムチャート。
図6】同実施形態にかかるレファレンスの補正処理の手順を示す流れ図。
図7】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
図8】同実施形態にかかるレファレンスの補正処理の手順を示す流れ図。
図9】第4の実施形態にかかる励磁信号パラメータの推定処理の手順を示す流れ図。
図10】第5の実施形態にかかるシステム構成図。
図11】同実施形態にかかる検波信号の生成処理を示すタイムチャート。
図12】同実施形態にかかる検波信号の生成処理の手順を示す流れ図。
図13】上記生成処理の技術的意義を説明するためのタイムチャート。
図14】第6の実施形態にかかる2値化信号RSの生成手法を示すタイムチャート。
図15】同実施形態にかかる検波信号の生成処理の手順を示す流れ図。
図16】第7の実施形態にかかるシステム構成図。
図17】同実施形態にかかるサンプリング周期の変更処理を示すタイムチャート。
図18】第8の実施形態にかかるシステム構成図。
図19】同実施形態にかかる入力側励磁信号SCのオフセット補正手法を示すタイムチャート。
図20】第9の実施形態にかかるシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる位置検出装置をレゾルバのデジタルコンバータに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示されるモータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。インバータINVは、モータジェネレータ10と図示しないバッテリとの間の電力の授受を仲介する。モータジェネレータ10の回転子10aには、レゾルバ20の1次側コイル22が機械的に連結されている。
【0016】
1次側コイル22は、マイクロコンピュータ(マイコン40)内蔵の発振器42から出力される正弦波状の交流信号(励磁信号Sc)によって励磁される。詳しくは、励磁信号Scは、増幅回路30に入力され、ここでその振幅値が増幅された後、1次側コイル22に入力される。これにより、励磁信号Scによって1次側コイル22に生じた磁束は、一対の2次側コイル24,26を鎖交する。ここで、2次側コイル24,26のそれぞれと1次側コイル22との相互インダクタンスは、回転子10aの回転角度θに応じて周期的に変化するように構成されている。これにより、2次側コイル24,26を鎖交する磁束数は、周期的に変化する。特に、本実施形態では、2次側コイル24,26のそれぞれに生じる電圧の位相が互いに「π/2」だけずれるようになっている。これにより、2次側コイル24,26のそれぞれの出力電圧は、励磁信号Scを、変調波sinθ、cosθのそれぞれによって変調した被変調波となる。すなわち、励磁信号Scを「sinωt」とすると、被変調波は、それぞれ「sinθsinωt」と「cosθsinωt」となる。
【0017】
上記増幅回路30の出力は、差動増幅回路32によって電圧変換され、入力側励磁信号SCとされる。一方、2次側コイル24の出力電圧は、差動増幅回路34によって電圧変換され、被変調波Sinとされる。また、2次側コイル26の出力電圧は、差動増幅回路36によって電圧変換され、被変調波Cosとされる。これら入力側励磁信号SCと、被変調波Sinと被変調波Cosとのそれぞれは、マイコン40に入力され、マイコン40内のセレクタ44によって、アナログデジタル変換器46に時分割で入力される。
【0018】
アナログデジタル変換器46では、入力側励磁信号SCが入力されることで、これをデジタルデータに変換する(励磁信号Scをサンプリングする)。このデジタルデータがレファレンスREFである。また、被変調波Sinが入力されることで、これをデジタルデータに変換する(被変調波Sinをサンプリングする)。このデジタルデータが被変調波SINである。また、被変調波Cosが入力されることで、これをデジタルデータに変換する(被変調波Cosをサンプリングする)。このデジタルデータが被変調波COSである。
【0019】
アナログデジタル変換器46の出力信号は、中央処理装置(CPU50)に入力され、ここで、ソフトウェア処理される。図では、CPU50によって行われるソフトウェア処理のうち、特に、回転角度θの算出処理等について、ブロック図で示してある。
【0020】
すなわち、乗算器52では、回転角度θの算出値(算出角度φ)を独立変数とする余弦関数cosφを、被変調波SINに乗算する。一方、乗算器54では、算出角度φを独立変数とする正弦関数sinφを、被変調波COSに乗算する。誤差相関量算出部56では、乗算器52の出力値から乗算器54の出力値を減算することで、誤差相関量εを算出する。
【0021】
この誤差相関量εは、差動増幅回路32,34,36や増幅回路30のゲインによって定まる比例定数を無視すると、以下の式(c1)によって表現される。
ε=sinωt・sinθ・cosφ−sinωt・cosθ・sinφ
=sinωt・sin(θ―φ)…(c1)
誤差相関量εは、実際の回転角度θと算出角度φとの差がゼロとなることで、ゼロとなる。また、励磁信号Scの大きさの影響を除く場合、算出角度φと実際の回転角度θとの差に応じて絶対値が変化するものであって且つ、差の絶対値が同一であれば、符号にかかわらず絶対値が同一となるものである。さらに、励磁信号Scの符号(sinωtの符号)の影響を除く場合、算出角度φが実際の回転角度θよりも進角側の値であるか遅角側の値であるかを示す量でもある。誤差相関量εから、励磁信号Scの符号の影響を除く除去処理は、同期検波によってなされる。
【0022】
すなわち、レファレンスREFは、後述する補正部57によって補正された後、2値検波信号算出手段(検波信号生成部58)に入力され、ここで、レファレンスREFの符号に応じて「1」または「−1」となる信号である検波信号Rdに加工される。詳しくは、検波信号生成部58では、レファレンスREF(補正部57の出力信号)がゼロ以上である場合に検波信号Rdを「1」として且つ、ゼロ未満である場合に検波信号Rdを「−1」とする。一方、同期検波部60では、誤差相関量εに検波信号Rdを乗算することで、被検波量εcを算出する。
【0023】
被検波量εcは、実際の回転角度θと算出角度φとの差がゼロとなることで、ゼロとなって且つ、その符号によって、算出角度φが実際の回転角度θよりも進角側の値であるか遅角側の値であるかを示す量である。
【0024】
被検波量εcは、角度算出部62に入力される。角度算出部62は、ローパスフィルタや積分要素を備えて構成される。本実施形態では、特に、2重積分要素と位相補償フィルタ「(bs+1)/(as+1)」とを備えるものを例示した。ここで、2重積分要素を用いたのは、回転角度θが一定速度で変化する場合に算出角度φに定常偏差をゼロとすることを狙ったものである。
【0025】
上記算出角度φは、上記乗算器52,54に加えて、操作量算出処理部64に入力される。操作量算出処理部64では、モータジェネレータ10を流れる電流を検出する図示しない電流センサの検出値や、算出角度φ等に基づき、インバータINVの操作信号を生成してインバータINVに出力する。これにより、モータジェネレータ10の制御量(例えば出力トルク)がその指令値(例えば指令トルク)に制御される。
【0026】
ところで、上記マイコン40(おもにCPU50)によって算出角度φの算出処理手段を構成すると、その動作速度を特に高速のものとしない場合には、次に示す不都合が生じることが発明者らによって見出された。
【0027】
まず第1に、検波信号Rdの符号が、被変調波SIN,COSに含まれる励磁信号Scの符号と相違する検波エラーである。これは、アナログデジタル変換器46によって、入力側励磁信号SCや被変調波Sin,Cosを時分割でサンプリングするために、レファレンスREFと被変調波SIN,COSとのサンプリングタイミングにずれが生じることがその要因となるものである。
【0028】
第2に、ノイズに対する耐性が非常に低いことである。これは、励磁信号Scの1周期におけるレファレンスREFのサンプリング回数のうち、レファレンスREFが正となるものと負となるものとが相違する不均衡に起因して生じる。すなわち、上記被検波量εcは、差動増幅回路32,34,36のゲイン等によって定まる比例定数K(>0)を用いることで、「K・|sinωt|・sin(θ−φ)」となるものである。このため、ノイズが混入しない限り、レファレンスREFが正となるもののサンプリング回数と負となるもののサンプリング回数との不均衡は算出角度φの算出になんら影響しない。しかし、たとえば差動増幅回路36にノイズが混入する場合、このノイズをオフセット量Nofと表現すると、被検波量εcは、以下の式(c2)となる。
【0029】
εc=
K・|sinωt|・sin(θ−φ)−sinφ・Nof・Rd/|Rd|
…(c2)
上記の式(c2)の右辺第2項は、検波信号Rdに応じた符号を有する量となる。このため、ノイズの重畳期間において検波信号Rdの符号が正のものと負のものとの数が等しいなら、上記右辺第2項の平均値は、ゼロとなる。しかし、正となるものと負となるものとの数に差が生じる場合には、右辺第2項の平均値がゼロとならないため、算出角度φの算出精度に影響しやすい。特に、本実施形態のように、角度算出部62を2重積分要素を備えて構成する場合にあっては、上記正となるものと負となるものとの数に差が生じることで、その影響が増幅される。
【0030】
ここでたとえば、算出角度φの算出周期(レファレンスREF等のサンプリング周期)を固定する場合、検波信号Rdのうち正となるものの数が負となるものの数よりも多くなる現象が生じると、しばらくして負となるものの数が正となるものの数よりも多くなる現象が生じる。このため、より長いタイムスケールにおいては正となるものの数と負となるものの数との間に不均衡が生じていないこととなる。このことは、不均衡を定義する上で算出角度φの算出精度に寄与するタイムスケールが存在することを意味する。ちなみに、このタイムスケールにおけるノイズを除去するように上記位相補償フィルタのローパスフィルタ成分の時定数を設定することも可能ではある。しかしこの場合には、応答性の低下が大きくなる。このため、特に車載用途のように、高い応答性が求められるものにあっては、その要求を満足する設計が極めて困難である。
【0031】
ここで、不均衡に起因してノイズに対する耐性が低下する現象は、算出角度φの算出周期(励磁信号Sc等のサンプリング周期)が長くなることで顕著となる。換言すれば、算出周期等が十分に短ければ、上記の式(c2)の右辺第2項の影響が算出角度φに目だった影響を及ぼさない。すなわち、たとえば、励磁信号Scの周期が「100μs」であり、算出周期が「6μs」である場合、励磁信号Scの半周期におけるサンプリング回数は、8回または9回となる。これに対し、励磁信号Scの周期が「100μs」であり、算出周期が「0.6μs」である場合、励磁信号Scの半周期におけるサンプリング回数は、83回または84回となる。いずれの場合であっても、レファレンスREFが正となるものの数と負となるもの数との間に生じうる差自体は、「1」である。しかし、この1回が算出角度φの算出に寄与する度合いは大きく相違するものとなる。
【0032】
実際、上記不均衡現象自体は、従来のレゾルバデジタルエンコーダによっても生じていたものと考えられる。この不均衡によってノイズに対する耐性が低下するという課題は、本実施形態のように算出角度φの算出処理をソフトウェア処理とするなどすることで、上記算出周期を低周波(たとえば、200kHz以下)とすることで顕在化したものである。
【0033】
こうした課題を解決すべく、本実施形態では、入力側励磁信号SCのサンプリングタイミングを図2に示すものとする。図示されるように、ここでは、サンプリングの周期Tsを、基準サンプリング周期Tsrefに固定しつつ、その位相(サンプリングタイミングにおける励磁信号Scの位相)の設定等によって、次の条件を満たすようにする。
【0034】
条件1.入力側励磁信号SCが正である期間と負である期間とでサンプリング回数が同一となる旨の条件。すなわち、正である期間におけるサンプリング(位相PH1〜PH5におけるサンプリング)の回数と、負である期間におけるサンプリング(位相PH6〜PH10におけるサンプリング)の回数とを、同一とする。
【0035】
条件2.サンプリングされる入力側励磁信号SCの絶対値が規定値ΔS以下とならない旨の条件。これは、検波エラーを回避するための条件である。規定値ΔSは、アナログデジタル変換器46による入力側励磁信号SCのサンプリングタイミングと、被変調波Sin,Cosのサンプリングタイミングとの時間差における入力側励磁信号SCの変化量よりも大きい値に設定されている。これは、基準サンプリング周期Tsrefやサンプリング位相の設定によって、励磁信号Scの一周期毎にサンプリングタイミングにおける励磁信号Scの位相が等しくなる設定とすることで実現することができる。すなわち、この条件を満たさない場合には、時間の経過とともにサンプリング位相(サンプリングタイミングにおける励磁信号Scの位相)が変化し、条件2を満たさなくなるおそれがある。
【0036】
なお、この条件2を満たす設定によって、上記不均衡を回避することや、不均衡以外の要因によるノイズに対する耐性を高めることもできる。すなわち、励磁信号Scがゼロの場合には上記検波信号Rdが「1」となるため、入力側励磁信号SCがゼロとなるときにサンプリングすることで不均衡が生じやすくなる。これに対し、上記条件2を満たす設定によれば、入力側励磁信号SCがゼロとなるときにこれをサンプリングすることが禁止される。また、ノイズによってレファレンスREFの符号が励磁信号Scのものと逆となることも考えられるが、こうした事態は、入力側励磁信号SCの値が大きいほど生じにくくなる。このため、上記条件2を満たす設定によれば、ノイズに対する耐性が向上する。
【0037】
さらに、本実施形態では、入力側励磁信号SCの最新のサンプリング値(レファレンスREF)を、過去のサンプリング値に基づき補正する処理を行なう。これは、ノイズに対する耐性をいっそう向上させることを狙ったものである。すなわちたとえば、入力側励磁信号SCにノイズが重畳する場合、その符号が反転し、ひいては先の図2に示した設定に反して、不均衡が生じるおそれがある。またたとえば、入力側励磁信号SCの変動中心がゼロからずれるオフセットが生じる場合、先の図2に示した設定の狙いとする効果が得られず、検波エラーが生じるおそれがある。
【0038】
図3に、上記補正処理の手順を示す。この処理は、先の図1に示した補正部57によって行われる。
【0039】
この一連の処理では、まずステップS10において、入力側励磁信号SCをサンプリングする。続くステップS12においては、今回のサンプリングタイミングが、先の図2に示したいずれの位相PHiに対応するかを判定する。そして、ステップS14においては、位相PHiに対応する平均レファレンスRi(n)を、前回の平均レファレンスRi(n−1)と、今回のレファレンスri(n)との指数移動平均処理値とする。ここで、前回の平均レファレンスRi(n−1)の重み係数w1と、今回のレファレンスri(n)の重み係数w2との間には、「w1>w2」の関係を持たせることが望ましい。なお、この処理は、本実施形態において、平均処理手段を構成する。
【0040】
続くステップS16においては、前回算出された平均オフセット量O(n−1)によって、平均レファレンスRi(n)を補正したものを最終的なレファレンスREF(補正部57の出力信号)とする。この処理は、本実施形態において、オフセット補正手段を構成する。
【0041】
こうした処理は、現在の位相PHiが位相PH10となるまで行われる(ステップS18)。そして、ステップS18において肯定判断される場合、ステップS20において、平均オフセット量O(n)を算出する。
【0042】
ここでは、まず、瞬時オフセット量offset(n)を、この一周期におけるレファレンスr1(n)〜r10(n)の単純移動平均処理値とする。ここで、位相PHiは、励磁信号Scの周期を10等分に等分割したものであるため、任意の位相PHiに対し、πだけずれた位相が存在する。このため、それらπだけ位相のずれた組の加算値は、オフセット誤差がない場合には、ゼロとなるはずである。これに対し、オフセット誤差がある場合には、上記加算値がそのオフセット誤差の値をとることとなる。このため、上記単純移動平均処理値によって、オフセット量を算出することができる。なお、先の図2に示したサンプリングタイミングの設定は、本実施形態において、オフセット用サンプリング手段を構成する。
【0043】
次に、今回の平均オフセット量O(n)を、前回の平均オフセット量O(n−1)と、瞬時オフセット量offset(n)との指数移動平均処理値とする。ここで、前回の平均オフセット量O(n−1)の重み係数wo1と、今回の瞬時オフセット量offset(n)の重み係数wo2との間には、「wo1>wo2」の関係を持たせることが望ましい。この処理は、本実施形態において、オフセット量算出手段を構成する。
【0044】
そして、ステップS20の処理が完了する場合、ステップS22において、変数nをデクリメントし、この一連の処理を一旦終了する。ちなみに、ステップS22における変数nのデクリメント処理は、上記ステップS14,S16,S20の処理における前回の値を「n−1」と表現するための処理を簡易に表現したものに過ぎず、これを実現するための実際の処理がデクリメントである必要はない。
【0045】
こうした処理を行なうことで、図4(a)に示すように、検波信号Rdのノイズに対する耐性を高めることができる。これに対し、図4(b)には、補正部57を備えない場合を示している。この場合、入力側励磁信号SCにノイズが重畳することで、検波信号Rdの符号が反転する。この相違は、先の図3のステップS14の処理にある。すなわち、この処理によれば、検波信号生成部58の入力信号となるレファレンスREFが、過去の同位相のレファレンスREFに応じて定まるため、突発的なノイズに対する耐性が向上する。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0046】
本実施形態では、励磁信号Scの不定期な変動に対処する制御を行なう。すなわち、たとえば図5に例示する位相ずれが生じる場合、今回のレファレンスREFに対する平均レファレンスRi(n−1)の寄与度を大きくすることで、かえって不均衡や検波エラー等が生じやすくなるおそれがある。
【0047】
図6に、本実施形態にかかる補正処理の手順を示す。この処理は、補正部67によって、たとえば所定周期でくり返し実行される。なお、図6に示す処理において、先の図3に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0048】
この一連の処理では、ステップS14の処理が完了する場合、ステップS30において、今回の平均レファレンスR(n)と暫定レファレンスRi0(n)との差の絶対値が規定値ΔR以上であるか否かを判断する。ここで、暫定レファレンスRi0(n)は、前回の瞬時レファレンスRi0(n−1)と、今回のレファレンスri(n)との指数移動平均処理値とする。ただし、前回の瞬時レファレンスRi0(n−1)の重み係数w10に対する今回のレファレンスri(n)の重み係数w20の比W20/w10は、平均レファレンスRi(n)のものよりも大きくなっている。これは、平均レファレンスRi(n)よりも暫定レファレンスRi0(n)の方が過去のレファレンスREFの寄与度を小さくするための設定である。
【0049】
ステップS30の処理は、励磁信号Scに不定期の変動が生じたか否かを判断するためのものである。これは、不定期の変動が生じない場合には、上記絶対値は略ゼロとなると考えられることに基づくものである。なお、この処理は、本実施形態において、判断手段を構成する。
【0050】
ステップS30において肯定判断される場合には、ステップS32において、今回の平均レファレンスRi(n)を暫定レファレンスRi0(n)とする。すなわち、検波信号生成部58の入力信号として、平均レファレンスRi(n)が採用されることを回避する。この処理は、本実施形態において、回避手段を構成する。
【0051】
また、ステップS20の処理が完了する場合、ステップS34において、今回の平均オフセット量O(n)と暫定オフセット量O0(n)との差の絶対値が規定値ΔO以上であるか否かを判断する。ここで、暫定オフセット量O0(n)は、瞬時オフセット量offsetの平均値である。ただし、ここでは、瞬時オフセット量offsetの平均化処理を行なう期間(サンプリング数l)の設定によって、平均オフセット量O(n)よりも暫定オフセット量O0(n)の方が過去のレファレンスREFの寄与度を小さくする。
【0052】
ステップS34の処理も、励磁信号Scに不定期の変動が生じたか否かを判断するためのものである。これは、不定期の変動が生じない場合には、上記絶対値は略ゼロとなると考えられることに基づくものである。
【0053】
ステップS34において肯定判断される場合には、ステップS36において、今回の平均オフセット量O(n)を暫定オフセット量O0(n)とする。すなわち、検波信号生成部58の入力信号として、平均オフセット量O(n)が採用されることを回避する。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0054】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図7において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0055】
図示されるように、本実施形態では、同期検波部60において、誤差相関量εに、レファレンスREF(補正部57の出力信号)を乗算することで、被検波量εcを算出する。この場合、レファレンスREFの振幅が変動することで、角度算出部62のゲインが変動した場合と等価な現象が生じうる。そこで本実施形態では、レファレンスREFの振幅を補正する処理をも行なう。
【0056】
図8に、本実施形態にかかる補正処理の手順を示す。この処理は、補正部67によって、たとえば所定周期でくり返し実行される。なお、図8に示す処理において、先の図3に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0057】
この一連の処理では、ステップS14の処理が完了すると、ステップS16aに移行する。ステップS16aにおいては、平均レファレンスRi(n)から平均オフセット量O(n−1)を減算した値に、後述する処理によって算出される平均振幅Amp(n−1)で基準振幅Arefを除算した値を乗算することで、レファレンスREFを算出する。ここで、基準振幅Arefは、先の図2に示した設定をするに際して想定した基準となるレファレンスREFの振幅である。ちなみに、ステップS16aの処理は、本実施形態において、振幅補正手段を構成する。
【0058】
一方、ステップS18において肯定判断される場合、ステップS20aにおいて、平均オフセット量O(n)の算出処理に加えて、平均振幅Amp(n)の算出処理を行なう。ここで、平均振幅Amp(n)の算出に際しては、まず、先の図2に示した位相PH3,PH8に対応するレファレンスr3(n),r8(n)を用いて、瞬時振幅amp(n)を、「{r3(n)−r8(n)}/2」と算出する。次に、今回の平均振幅Amp(n)を、前回の平均振幅Amp(n−1)と、今回の瞬時振幅amp(n)との指数移動平均処理値とする。ここで、前回の平均振幅Amp(n−1)の重み係数wa1と、今回の瞬時振幅amp(n)の重み係数wa2との間には、「wa1>wa2」の関係を持たせることが望ましい。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
図9に、本実施形態にかかる補正処理の手順を示す。この処理は、補正部67によって、たとえば所定周期でくり返し実行される。なお、図9に示す処理において、先の図3に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0060】
この一連の処理では、ステップS12の処理が完了する場合、ステップS38に移行する。ステップS38では、今回のレファレンスREFについて、振幅およびオフセット補正を行なう。詳しくは、先の図2に示した位相設定を行なうに際して想定した振幅(基準振幅Aref)を後述する処理によって算出された振幅Aによって除算した値と、レファレンスREFからオフセット量Oを減算した値とを乗算することで行なう。
【0061】
続くステップS40においては、レファレンスREFのサン数をカウントする変数jをインクリメントする。そして、ステップS42においては、変数jが閾値jth以上であるか否かを判断する。この処理は、入力側励磁信号SCを回帰分析にて求めることができるのに十分なサンプリング数が確保できたか否かを判断するためのものである。そして、閾値以上であると判断される場合、ステップS46において、閾値jth個の入力側励磁信号SCのサンプリング値(レファレンスREF)に基づき、回帰分析によって、励磁信号SCを推定する。ここでは、入力側励磁信号SCを、「A・sin(ω0+δ)+O」として、振幅A,オフセット量O、角速度ω0、および位相δを求める。
【0062】
続くステップS48においては、変数jを初期化するとともに、サンプリングタイミングを更新する。すなわち、角速度ω0が想定されていたものからずれていた場合や、位相δが想定されていたものからずれていた場合、入力側励磁信号SCのサンプリングタイミングにおける位相が、先の図2に示した位相からずれるおそれがある。このため、角速度ω0や位相δに基づき、サンプリングタイミングを更新する。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0063】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0064】
図示されるように、本実施形態では、差動増幅回路32の出力電圧が、2値化信号算出手段(2値化回路70)に入力され、2値化された2値化信号RSに波形整形される。2値化信号RSは、マイコン40内のタイマ72に入力され、ここで、その立ち上がり時間Th(2値のうち励磁信号Scの正に対応する値の継続時間)が算出される。
【0065】
そして、立ち上がり時間Thは、2値化信号RSとともに、CPU50の検波信号生成部74の入力となり、ここで、検波信号Rdが生成される。検波信号生成部74では、図11に示すように、2値化信号RSの立ち上がり期間の中央のタイミングが、入力側励磁信号SCの極大値となるタイミングであるとして、入力側励磁信号SCの変動中心において極性が反転する検波信号Rdを生成する。ここで、2値化信号RSの立ち上がり期間の中央のタイミングを入力側励磁信号SCの極大値となるタイミングとすることは、入力側励磁信号SCのオフセットの影響を排除することを狙ったものである。
【0066】
詳しくは、入力側励磁信号SCの周期(基準励磁周期Tpref)を用いると、上記中央のタイミングから「3・Tpref/4」だけ経過したタイミングが、入力側励磁信号SCの値が上昇する過程でその変動中心を横切るタイミングとなる。したがって、2値化信号RSの立ち下がりタイミングから、「(3・Tpref/4)−Th/2」だけ経過したタイミングが、入力側励磁信号SCの値が上昇する過程でその変動中心を横切るタイミングとなる。
【0067】
図12に、本実施形態にかかる検波信号Rdの生成処理の手順を示す。この処理は、検波信号生成部74とタイマ72との協働で、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0068】
この一連の処理では、まずステップS60において、2値化信号RSが負から正に反転したタイミングであるか否かを判断する。そして、ステップS60において肯定判断される場合、ステップS62において、2値化信号RSの立ち上がり時間を計時するカウンタT1をインクリメントする。この処理は、2値化信号RSが正から負に反転することと、カウンタT1が閾値T1thを超えることとの論理積が真となるまで継続される(ステップS64,S65)。ここで、カウンタT1が閾値T1thを超えるまでとの条件を設けたのは、ノイズに対する耐性を高めるためである。すなわち、図13に示すように、入力側励磁信号SCにノイズが重畳することで、2値化信号RSに短いパルスが生じた場合、ステップS65の処理によれば、このパルスの立ち上がり時間を2値化信号RSの立ち上がり時間とすることを回避することができる。なお、この処理は、本実施形態において禁止手段を構成する。
【0069】
ステップS65において肯定判断される場合、ステップS66において、カウンタT1の値を立ち上がり時間Thとした後、カウンタT1を初期化する。
【0070】
続くステップS68においては、タイマT2をインクリメントする。そして、タイマT2が「(3・Tpref/4)−Th/2」となることで、ステップS72に移行し、検波信号Rdを負から正に反転させる。また、タイマT2が「(5・Tpref/4)−Th/2」となることで(ステップS74:YES)、ステップS76に移行し、検波信号Rdを正から負に反転させ、タイマT2を初期化する。
【0071】
なお、上記ステップS72,S76の処理は、本実施形態において、エッジ設定手段を構成する。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第5の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0072】
図14に、本実施形態にかかる2値化回路70による2値化信号RSの生成手法を示す。図示されるように、本実施形態では、入力側励磁信号SCが立ち上がり閾値Rth以上となることで2値化信号RSを負から正に反転させ、入力側励磁信号SCがゼロ以下となることで2値化信号RSを正から負に反転させる。
【0073】
この場合、2値化信号RSの立ち上がり期間のうちの中央となるタイミングは、入力側励磁信号SCの極大値となるタイミングからずれる。そこで本実施形態では、上記閾値Rthと入力側励磁信号SCの振幅とに基づき、立ち上がり期間のうちのどのタイミングが入力側励磁信号SCの極大となるタイミングかを特定して検波信号Rdを生成する。
【0074】
図15に、本実施形態にかかる検波信号Rdの生成処理の手順を示す。この処理は、検波信号生成部74とタイマ72との協働で、たとえば所定周期で繰り返し実行される。なお、図15において、先の図12に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0075】
この一連の処理では、タイマT2が「(3・Tpref/4)−Th/2−Δ」となることで(ステップS70a:YES)、ステップS72に移行し、検波信号Rdを負から正に反転させる。また、タイマT2が「(5・Tpref/4)−Th/2−Δ」となることで(ステップS74a:YES)、ステップS76に移行し、検波信号Rdを正から負に反転させる。ここでは、2値化信号RSの立ち上がり時間と立ち下がり時間との差を補償する補償量Δを用いていることが、先の図12に示した処理と相違する。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
図16に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図16において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0077】
本実施形態では、励磁信号Scの周期である励磁周期Tpが基準励磁周期Tprefから変動した場合にサンプリングタイミングを補正する手段を搭載する。すなわち、差動増幅回路32の出力電圧が、2値化信号算出手段(2値化回路70)に入力され、2値化された2値化信号RSに波形整形される。2値化信号RSは、マイコン40内のタイマ72に入力され、ここで、その立ち上がり時間Thが算出される。立ち上がり時間Thは、周期変更手段(周期補正部76)に入力される。周期補正部76では、図17に示すように、立ち上がり時間Thの2倍の時間を励磁周期Tp(n)とし、先の図2に示した設定において想定された基準サンプリング周期Tsrefに対し実際のサンプリング周期Ts(n)を以下の式(c3)に基づき補正する。
【0078】
Ts(n)=Tsref・Tp(n−1)/Tpref …(c3)
これにより、発振器42の温度特性等によって励磁信号Scの周期が変動したとしても、先の図3に示した処理の効果を好適に奏することができる。
<第8の実施形態>
以下、第8の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
図18に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図18において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0080】
本実施形態では、差動増幅回路32,34,36を構成するオペアンプの電源電圧を共通とする。また、本実施形態では、入力側励磁信号SCがオフセットした場合に、上記オペアンプの電源電圧を変更することで、オフセットを解消(低減)する機能を搭載する。詳しくは、差動増幅回路32の出力電圧が、2値化信号算出手段(2値化回路70)に入力され、2値化された2値化信号RSに波形整形される。2値化信号RSは、マイコン40内のタイマ72に入力され、ここで、その立ち上がり時間Thが算出される。立ち上がり時間Thは、オフセット補正部78に入力される。オフセット補正部78では、図19に示すように、立ち上がり時間Thと基準励磁周期Tprefの2分の1との差がオフセット量に比例するとして、オフセット量Oを算出する。詳しくは、予め定められたゲインGを用いて、オフセット量Oを「G・{Th−(Tpref/2)}」とする。そして、オフセット量Oに基づき、上記オペアンプの電源電圧を操作する。
【0081】
こうした処理によれば、入力側励磁信号SCのオフセットを解消できるのみならず、被変調波Sin,Cosのオフセットをも解消することができる。これは、差動増幅回路32,34,36のオフセット誤差の要因としては上記電源電圧の誤差が主であるためである。すなわち、差動増幅回路32,34,36を構成するオペアンプの電源電圧が共通の場合、入力側励磁信号SCにオフセット誤差があると、被変調波Sin,Cosにもオフセット誤差が生じる傾向がある。
【0082】
なお、このオフセット補正部78は、本実施形態において、オフセット量算出手段およびオフセット補正手段を構成する。
<第9の実施形態>
以下、第9の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0083】
図20に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図20において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0084】
本実施形態では、レファレンスREFがバンドパスフィルタ80によってフィルタ処理されたものが、同期検波部60の入力とされる。ここで、バンドパスフィルタ80は、励磁信号Scの基準励磁周期Tprefの逆数の周波数帯域の信号を選択的に透過させるものである。これによっても、同期検波部60の入力信号のノイズに対する耐性を高めることができる。なお、バンドパスフィルタ80は、今回のサンプリング値(レファレンスREF)に加えて、過去のサンプリング値に基づき今回の出力値を算出する手段である。すなわち、本実施形態でも、同期検波部60の入力信号は、復調に用いる誤差相関量εに含まれる被変調波SIN,COSと比較して過去においてサンプリングされたレファレンスREFが用いられている。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0085】
「計時手段(72)について」
上記第5の実施形態(図10)では、2値化信号RSの立ち上がり期間を計時したが、立ち下がり期間を計時してもよい。この場合、先の図12において、計時処理の完了後、まず第1に、検波信号Rdの立ち下がりエッジを設定する処理を行えばよい。また、2値化信号RSの立ち上がり期間と、立ち下がり期間との双方であってもよい。この場合、たとえば、立ち上がり期間に基づき、次回の検波信号Rdの立ち上がりエッジを設定して且つ、立ち下がり期間に基づき、次回の検波信号Rdの立ち下がりエッジを設定すればよい。
【0086】
「2値化信号算出手段(70)について」
マイコン40の外に設けられた2値化回路に限らず、マイコン40内に搭載されるものであってもよい。
【0087】
「エッジ設定手段(74)について」
上記第5の実施形態(図12)では、立ち上がり時間T1の計時後、半周期後および1周期後に対応する検波信号Rdのエッジを設定したが、これに限らない。たとえば、1.5周期後および2周期後に対応する検波信号Rdのエッジを設定してもよい。
【0088】
「禁止手段(S65)について」
CPU50の外にあるタイマ72に搭載されるものに限らない。たとえば、タイマ72としてこの機能を備えないものを用いて且つ、CPU50によるソフトウェア処理として、禁止手段を構成してもよい。こうしたものにあっては、CPU50において、タイマ72によって計時された立ち上がり時間Thが短い場合、これを採用することなく、前回値を採用するなどすればよい。
【0089】
「平均処理手段について」
指数移動平均処理を行なうものに限らない。たとえば、今回のサンプリング値ri(n)と、過去N(>1)回のサンプリング値ri(n−1),ri(n−2),…との単純移動平均処理を行なうものであってもよい。
【0090】
「回避手段について」
暫定オフセット量O0(n)の算出手法としては、上記第2の実施形態(図6)において例示したものに限らない。たとえば、上記第2の実施形態における暫定レファレンスRi0(n)の算出処理と同様の処理によって算出してもよい。
【0091】
また、暫定レファレンスRi0(n)の算出手法としては、上記第2の実施形態(図6)において例示したものに限らない。たとえば、上記第2の実施形態における暫定オフセット量O0(n)の算出処理と同様の処理によって算出してもよい。
【0092】
「判断手段について」
暫定レファレンスRi0(n)と平均レファレンスRi(n)との差や、暫定オフセット量O0(n)と平均オフセット量O(n)との差に基づき判断を行なうものに限らない。たとえば、励磁信号Scの周期を計時するタイマを備え、タイマによって計時される時間の時系列データに基づき、それらに変化があることで変動が生じたと判断するものであってもよい。
【0093】
「所定の位相について」
上記第1の実施形態(図3)等では、入力側励磁信号SCの位相PH1〜PH10の全てについて、これを所定の位相として、平均レファレンスR1(n)〜R10(n)を算出したが、これに限らない。たとえば、先の図2に示した位相PH1〜PH10でサンプリングを行いつつも、平均レファレンスRi(n)については、位相PH1,PH5,PH6,PH10に限って算出してもよい。これは、励磁信号Scが変動中心に近い値となるタイミングほど、ノイズに対する耐性が低下することに鑑みたものである。
【0094】
「オフセット量算出用のサンプリングについて」
先の図2に示したように、励磁信号Scの一周期の整数分の1を、サンプリング周期とするものに限らない。要は、互いに逆位相となる一対のタイミング(位相がπだけずれた一対のタイミング)を、サンプリングタイミングとするものであるなら、それら一対のサンプリングタイミングの1または複数組におけるレファレンスREFの単純移動平均値として瞬時オフセット量offsetを算出することができる。
【0095】
もっとも、これに限らず、たとえば1周期の整数倍の期間におけるレファレンスREFの単純移動平均値をオフセットに応じた量として算出するものであってもよい。さらにこれに限らず、所定のサンプリングパターンにおけるレファレンスREFの合計値と、オフセットがない場合における上記合計値の基準値との差に基づき、オフセット量を算出するものであってもよい。
【0096】
「オフセット量算出手段について」
上記第1の実施形態(図3)において、たとえば「平均処理手段について」の欄に記載したものに準じた変更をしてもよい。
【0097】
上記第8の実施形態(図18)では、タイマ72の立ち上がり時間T1の計時結果に基づき、オフセット量Oを算出したが、これに限らない。たとえば、立ち下がり期間の計時結果に基づき、オフセット量を算出してもよく、またこれら双方であってもよい。ちなみに、双方とする場合、たとえば、立ち上がり時間に基づくオフセット量の算出値と、立ち下がり時間に基づくオフセット量の算出値との単純移動平均値を最終的なオフセット量とすればよい。
【0098】
「オフセット補正手段について」
上記第1の実施形態(図3)において、平均オフセット量O(n)によって都度のレファレンスREF(サンプリング値ri(n))を補正する代わりに、上記第8の実施形態(図18)に例示されるように、入力側励磁信号SCを補正するようにしてもよい。
【0099】
上記第8の実施形態(図18)において、上記第1の実施形態(図3)のように、レファレンスREFを補正してもよい。
【0100】
「被変調波Sin,Cos等のオフセット補正について」
上記第1の実施形態(図3)において、差動増幅回路32,34,36を構成するオペアンプの電源電圧を共通として且つ、上記第8の実施形態(図18)の要領で、被変調波SIN,COSのオフセット補正をしてもよい。もっとも、被変調波Sin,Cosのオフセットの要因が上記電源電圧の誤差に限らないことに鑑み、差動増幅回路32,34,36を構成するオペアンプの電源電圧を共通とする場合であっても、レファレンスREFのみをオフセット補正してもよい。すなわち、入力側励磁信号SCのオフセットが検出された場合であっても、被変調波SIN,COSのオフセット補正を行わないものであってもよい。
【0101】
「周期計時手段(72)について」
上記第8の実施形態(図18)では、タイマ72によって立ち上がり時間T1を計時したが、これに限らず、立ち下がり時間を計時してもよく、立ち上がり時間および立ち下がり時間の合計値を計時してもよい。
【0102】
ちなみに、2値化信号RSが先の図14に例示されるものである場合等にあっては、立ち上がり時間Thの2倍を励磁周期Tp(n)とすることは適切でない。このため、立ち上がり時間および立ち下がり時間の合計値を計時することが望ましい。また、これに代えて、先の図14に示した立ち上がり閾値Rthに基づき、立ち上がり時間Thを補正することで、励磁信号Scの半周期を算出する処理を加えてもよい。
【0103】
「周期変更手段(76)について」
周期変更手段としては、ハードウェア処理によってアナログデジタル変換器46のサンプリング周期を変更する手段に限らず、CPU50を用いたソフトウェア処理を含むものであってもよい。
【0104】
なお、周期が変動する場合、サンプリング位相PHi自体も変動前のものからずれることとなる。このため、サンプリング位相を併せ変更することが望ましい。
【0105】
「推定手段について」
上記第4の実施形態(図9)では、振幅A、オフセット量O、角速度ω0および位相δを推定対象としたが、これに限らない。たとえば、先の図18等に例示されるように、励磁信号Scの周期を計時する機能を有する場合、それに基づき算出される角速度を用いることで、角速度については推定対象からはずしてもよい。また、振幅についてはこれを推定対象からはずすなどすることも可能である。
【0106】
「フィルタについて」
上記第9の実施形態(図20)においては、バンドパスフィルタ80をソフトウェアによって構成したが、これに限らない。
【0107】
「2値検波信号算出手段(58)について」
励磁信号Sc(レファレンスREF)が0以上であるか否かに応じた2値の検波信号Rdを算出するものに限らない。たとえば、0よりも大きいか否かに応じた2値の検波信号Rdを算出するものであってもよい。
【0108】
「検波手段について」
上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば、レファレンスREFを0と、正の値、および負の値の3つの値を有する3つの閾値で4段階に区分することで、4値化された検波信号Rdを生成するものであってもよい。
【0109】
「アナログデジタル変換器について」
被変調波Sin,Cosおよび入力側励磁信号SCをデジタルデータに変換する手段としては、単一のアナログデジタル変換器46に限らない。たとえば、被変調波Sin,Cosと、入力側励磁信号SCとで各別の変換器を備えてもよく、またたとえば、被変調波Sin,被変調波Cos、および入力側励磁信号SCのそれぞれで、各別の変換器を備えてもよい。
【0110】
「復調手段について」
a)誤差相関量εについて
励磁信号Scの符号の影響を除くことで、回転角度θに対する算出角度φのずれの方向に応じた符号を有する量としては、上記第1の実施形態(図1)において例示した誤差相関量εに限らない。たとえば、被変調波COSに「cos(φ−π/2)」を乗算したものと、被変調波SINに「sin(φ−π/2)」を乗算したものとの和であってもよい。この場合、誤差相関量εは、「sinωtcos(θ―φ+π/2)」に比例した量となり、励磁信号sinωtの符号の影響を除くことで、回転角度θに対して算出角度φが進角している場合に正、遅角している場合に負となる。
【0111】
もっとも、励磁信号Scの符号の影響を除くことで、誤差相関量ε自体が回転角度θに対する算出角度φのずれの方向に応じた符号を有する量であることは必須ではない。たとえば、被変調波COSに「cos(φ−π/4)」を乗算したものと、被変調波SINに「sin(φ−π/4)」を乗算したものとの和であってもよい。この場合、誤差相関量εは、「sinωtcos(θ―φ+π/4)」に比例した量となり、誤差相関量εから励磁信号Scの符号の影響を除いたとしても、回転角度θに対する算出角度φのずれの方向に応じた符号を有する量とはならない。しかし、励磁信号Scの符号の影響を除いた被検波量εcと「K/√2:Kは、差動増幅回路34等のゲインによって定まる被変調波の振幅」との差を制御誤差とするなら、制御誤差は、回転角度θに対する算出角度φのずれの方向に応じた符号を有する量となる。このため、これをゼロにフィードバック制御するための操作量として算出角度φを算出することができる。そしてこの場合であっても、ノイズに対する耐性を高める上では、本発明を適用することが有効である。
【0112】
ただし、これは誤差相関量εの定義の仕方の問題に過ぎない。すなわち、「ε−Ksinωt/√2」を誤差相関量と定義するなら、これは、励磁信号Scの符号の影響を除くことで、回転角度θに対する算出角度φのずれの方向に応じた符号を有する量となる。ちなみに、「ε−Ksinωt/√2」から励磁信号Scの絶対値の影響を除いたものは、回転角度θと算出角度φとの差に応じた値を有するとはいえ、算出角度φのずれが進角側であるか遅角側であるかに応じて、上記差の絶対値が同一であっても絶対値が相違する。このため、進角側と遅角側とで算出角度φのフィードバック制御のゲインに差が生じるため、この差を許容できるシステムに適用することが望ましい。
【0113】
b)算出角度φの算出処理
被検波量εcを入力とし、算出角度φを算出する処理としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば積分要素を3つ(3重積分)以上有するものであってもよい。
【0114】
また、積分要素を1つのみ有するものであってもよい。この場合であっても、たとえば、励磁信号Scの値の絶対値が規定値ΔS以下となることで検波エラーが生じた際の算出角度φの算出精度は、サンプリング頻度が低いほど低下する。なぜなら、サンプリング頻度が低いほど積分間隔が長くなるため、ノイズが算出角度φに及ぼす影響の度合い(ノイズに対する算出角度φのゲイン)が大きくなるからである。
【0115】
c)構成について
ソフトウェア処理手段として構成されるものに限らない。ハードウェア処理手段であっても、復調に用いられる入力側励磁信号SC等のサンプリング頻度が低くなるにつれて、ノイズに対する耐性を低下させる事情についてはなんら変わりがないと考えられる。
【0116】
「位置検出対象について」
回転機のロータに限らない。要は、位置情報に応じて励磁信号を振幅変調可能なものであるなら、本発明の適用は有効である。
【符号の説明】
【0117】
10a…回転子(位置検出対象の一実施形態)、20…レゾルバ、40…マイコン、50…CPU。
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