特許第5821870号(P5821870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821870
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】パーキングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 1/06 20060101AFI20151104BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20151104BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20151104BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   B60T1/06 G
   F16F15/02 C
   F16F15/08 E
   F16H63/34
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-29238(P2013-29238)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156230(P2014-156230A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 治郎
(72)【発明者】
【氏名】武川 浩士
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−124068(JP,U)
【文献】 特開2009−208568(JP,A)
【文献】 特開2006−308018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/06
F16F 15/02
F16F 15/08
F16H 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機に備えられたパーキングロック装置であって、
周方向に複数の歯が配列された歯車要素と、
歯車要素の歯の間である歯溝に係合可能な爪を有し、爪が歯溝に係合して歯車要素の動きをロックする係合位置と、爪が歯溝に係合しない退避位置との間で移動可能なロック要素と、
変速機のケースに対して固定された位置に配置された受け要素と、
受け要素とロック要素の間隙に対し進退可能なカム要素であって、前記間隙に進入したときにロック要素をその係合位置に保持する、カム要素と、
受け要素に設けられ、受け要素に作用して受け要素の振動を抑制する重りと、
を有する、パーキングロック装置。
【請求項2】
車両の変速機に備えられたパーキングロック装置であって、
周方向に複数の歯が配列された歯車要素と、
歯車要素の歯の間である歯溝に係合可能な爪を有し、爪が歯溝に係合して歯車要素の動きをロックする係合位置と、爪が歯溝に係合しない退避位置との間で移動可能なロック要素と、
変速機のケースに対して固定された位置に配置された受け要素と、
受け要素とロック要素の間隙に対し進退可能なカム要素であって、前記間隙に進入したときにロック要素をその係合位置に保持する、カム要素と、
受け要素に設けられ、受け要素に作用して受け要素の振動を抑制するダイナミックダンパと、
を有する、パーキングロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパーキングロック装置であって、歯車要素は、前記車両に搭載された内燃機関の出力軸に常時接続された軸に設けられる、パーキングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時において、車輪に繋がる軸をロックして車両が動かないようにするパーキングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のパーキングロック装置は、車輪に繋がる軸に固定された歯車要素と、歯車要素の歯溝に係合して歯車要素をロックするロック要素を有する。ここで、車輪に繋がる軸とは、車輪と常時固定された関係を有して回転する軸を言う。歯車要素をロックすることにより車輪がロックされ、駐車時に車両が動くことが防止される。
【0003】
パーキングロック装置は、車両の変速機内に設けられる。変速機は、車両に搭載された内燃機関や電動機などの原動機の出力を、その回転速度およびトルクを変換して車輪へと送出する機能を有する装置である。速度およびトルク変換を行う変速機構と共に、左右の駆動輪の回転速度差を許容するための差動装置を備えた装置も知られている。変速機は、例えば手動多段変速機、自動多段変速機および無段変速機を含む。また、変速機構に加え、車両を駆動する電動機も内蔵する、ハイブリッド車両用の変速機も知られている。
【0004】
下記特許文献には、車両のパーキングロック装置の構成の一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−131109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯車要素とロック要素の間にはバックラッシュが存在する。歯車要素が回転変動すると、歯車要素とロック要素がバックラッシュの範囲で相対移動し衝突する。この衝突時の衝撃が変速機のケースに伝わり、外部に音となって放射される。
【0007】
本発明は、歯車要素とロック要素の衝突により生じる音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパーキングロック装置は、歯車要素と、歯車要素をロック可能なロック要素と、ロック要素の動作を制御するカム要素とを含む。歯車要素は、周方向に複数の歯が配列されている。ロック要素は、歯車要素の歯の間である歯溝に係合可能な爪を有し、爪が歯溝に係合する係合位置と、爪が歯溝に係合しない退避位置との間で移動可能である。カム要素は、ロック要素の動きを制御し、ロック要素を係合位置に保持する。具体的には、カム要素は、変速機のケースに対して固定された位置に配置された受け要素とロック要素の間隙に対し進退可能であり、この間隙に進入することによりロック要素を係合位置へと移動させてこの位置に保持する。カム要素が、受け要素とロック要素の間隙から後退するとロック要素の退避位置への動きが許容される。または、カム要素が受け要素とロック要素の間隙から後退するとき、カム要素がロック要素を退避位置へ退避させてもよい。歯車要素とロック要素の衝突により生じた振動は、ロック要素、カム要素、受け要素を介して変速機のケースに伝達される。ケースに伝わった振動はケースを伝わり、例えば変速機の内外を隔てる外壁に達し、ここから音が放射される。この振動伝達経路上に、当該経路を伝わる振動を抑制する制振要素が設けられる。
【0009】
上記の振動伝達経路上に制振要素を設けたことにより、歯車要素とロック要素の衝突に起因する変速機のケース表面からの放射音を低減することができる。
【0010】
制振要素は、受け要素に設けることができる。受け要素は、変速機のケースと別体の部品とすることができる。
【0011】
制振要素は、重りとすることができる。重りは、その質量によって、その重りが設けられた部分の振動を抑えるマスダンパとして機能する。また、重りは、上記の振動伝達経路を構成する部材に直接設けることができ、また伝達経路を構成する部材から離れる方向に延びる腕を介して設けることもできる。重りは、受け要素に設けることができ、受け要素と一体に形成することも、受け要素とは別体にして後からこれに固定することもできる。
【0012】
制振要素は、ダイナミックダンパとすることができる。ダイナミックダンパは、質量要素と、質量要素と受け要素の間に介在する弾性要素とを含む。ダイナミックダンパは、質量要素と弾性要素により定まる固有振動数付近の振動伝達を抑制する。ダイナミックダンパは受け要素に設けることができ、受け要素と一体に形成することも、受け要素とは別体にして後からこれに固定することもできる。
【0013】
制振要素は、変速機のケースと受け要素の間に介在する弾性部材とすることができる。この場合、受け要素は、変速機のケースと別体の部品として構成される。弾性部材はゴムを用いることができる。
【0014】
歯車要素は、車両に搭載された内燃機関の出力軸に常時接続された軸に設けることができる。内燃機関の出力軸の回転変動を受けて歯車要素が振動する際に生じる音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
パーキングロック機構の歯車要素とロック要素の衝突に起因する放射音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る動力装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態のパーキングロック装置の概略構成を示す斜視図である。
図3図2に示すパーキングロック装置の側方断面図である。
図4図2に示すパーキングロック装置の正面図である。
図5】パーキングロック装置で発生した振動の伝達経路を示す図である。
図6】他の実施形態のパーキングロック装置の要部を示す斜視図である。
図7図6に示すパーキングロック装置の側方断面図である。
図8】更に他のパーキングロック装置の側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態に係る車両の動力装置10の概略構成を示す骨格図である。動力装置10は、車両を駆動する原動機として1機の内燃機関12と2機の電動機14,16を有する。内燃機関12は、オットー機関、ディーゼル機関等の往復ピストン機関とすることができる。2機の電動機を第1電動機14、第2電動機16と記す。2機の電動機は、発電機としても機能する。例えば、第1電動機14は内燃機関12に駆動されることにより発電することができる。第2電動機16は車両の慣性により駆動されることにより発電することができる。
【0018】
動力装置10は、原動機12,14,16の出力を速度変換して駆動輪18に送り出す変速機20を有する。変速機20は、左右の駆動輪18の速度差を許容するための差動装置22を含む。このような変速機20は、トランスアクスルと称されることがある。さらに、変速機20は、第1および第2電動機14,16を内蔵している。変速機20は、歯車、軸などの可動構造物を変速機ケース24に収めて構成される。変速機ケース24は、変速機20の内外を隔てる外壁と、収められた各可動構造物を支持する部分を含む。以下では、前記の外壁、可動構造物を支持する部分およびこれらに固定的に設けられた部分全体を変速機ケース24として説明する。
【0019】
変速機20は、遊星歯車機構26を含み、遊星歯車機構26のサンギア28に第1電動機14の出力軸が、またプラネタリキャリア30にねじりダンパを介して内燃機関12の出力軸が接続されている。リングギア34は、出力スリーブ36上に設けられている。プラネタリキャリア30は、サンギア28とリングギア34に噛み合うプラネタリピニオン38を回転可能に支持している。遊星歯車機構26の3要素であるサンギア28、プラネタリキャリア30およびリングギア34は、いずれか2要素の回転速度が決まると残り1要素の回転速度が自ずと決定される関係を有する。出力スリーブ36上には第1出力ギア40が設けられ、第1出力ギア40はカウンタシャフト42上のカウンタドリブンギア44と噛み合っている。カウンタドリブンギア44は、また第2電動機16の出力軸に結合された第2出力ギア46と噛み合っている。カウンタシャフト42上にはファイナルドライブギア48が設けられ、このファイナルドライブギア48は差動装置22のデフケースに固定されたファイナルドリブンギア50と噛み合っている。差動装置22は、周知の差動装置を採用することができ、ここではその説明を省略する。
【0020】
この変速機20のパーキングロック装置52は、出力スリーブ36および変速機ケース24の出力スリーブ36に対向する部分に設けられる。出力スリーブ36の外周面にパーキングギア54が設けられ、パーキングギア54に噛み合うように、変速機ケース24側にパーキングポール56が設けられる。パーキングロック装置52の詳細は後述する。
【0021】
第1出力ギア40から駆動輪18までの動力伝達経路は、常時噛み合った歯車対およびシャフトから構成され、この結果、駆動輪18と第1出力ギア40は、動力伝達経路の歯車のギア比に対応した一定の関係をもって回転する。つまり、第1出力ギア40の回転を止めれば、駆動輪18の回転も止まる。パーキングギア54は第1出力ギア40と共に出力スリーブ36上に設けられているから、パーキングギア54の回転を止めることにより、駆動輪18をロックすることができる。
【0022】
また、出力スリーブ36にはリングギア34も設けられており、パーキングギア54は、リングギア34、プラネタリピニオン38、プラネタリキャリア30、ねじりダンパ32を介して内燃機関12の出力軸に常時接続されている。このため、内燃機関14の出力軸が回転変動を起こすと、この回転変動がパーキングギア54に伝わる。特に、この変速機20においては、内燃機関14の出力軸にねじりダンパ32を設けているために、このねじりダンパ32を含む振動系の共振周波数付近で、パーキングギア54の回転振動の振幅が大きくなる場合がある。例えば、内燃機関14が往復ピストン機関である場合、ピストンの往復運動、間欠的な燃焼などにより内燃機関14の出力軸には回転変動が生じている。この回転変動の周波数が上記共振周波数近傍となると、振動系に共振が生じる。例えば、内燃機関12の始動には、内燃機関12の回転速度が上昇する過程で、上記振動系の共振周波数を通過することが起こりえる。このとき、パーキングロック装置52がロック状態となっていると、パーキングギア54と、これに噛み合うパーキングポール56が衝突して、これが音となって車両の搭乗者に聞こえることがある。本実施形態のパーキングロック装置52は、内燃機関14の回転変動を受けて、またはこれ以外の原因によりパーキングギア54が回転振動するとき、これが音とならないようにする構造を備えている。以下、パーキングロック装置52について説明する。
【0023】
図2から図4は、パーキングロック装置52の詳細を示す図である。パーキングギア(歯車要素)54は、出力スリーブ36の外周に周方向に配列された複数の歯58で構成される。パーキングポール(ロック要素)56は、パーキングギアの歯58の間の部分である歯溝60に係合可能な爪62を有し、変速機ケース24に固定された支持軸64に回動可能に支持される。パーキングポール56は、回動することにより、爪62が歯溝60に係合する係合位置と、爪62が歯溝60から出た退避位置との間で移動可能となっている。また、パーキングポール56は、不図示の付勢手段、例えばばねにより、退避位置となる向きに付勢されている。
【0024】
変速機ケース24には、カム受け(受け要素)66が固定されている。このカム受け66とパーキングポール56の間隙に進退可能なカム(カム要素)68が配置されている。以下、カム68が、カム受け66とパーキングポール56の間隙に向かう方向を進出方向、間隙から離れる方向を後退方向と記す。カム68は、これを貫通するパーキングロッド70上にスライド可能に配置されている。カム68は、概略円筒形状であり、円筒の内側空洞を貫くパーキングロッド70と同軸配置されている。カム68の、進出方向前面にはテーパ面が形成され、また、このカム68のテーパ面に対向するようにカム受け66とパーキングポール56の一方または両方にテーパ面が形成される。パーキングポール56には、カム68を、進出方向に付勢する付勢手段が設けられている。付勢手段は、例えばばね72、好適にはコイルばねである。このばね72は、パーキングロッド70に固定的に設けられたばね受け74とカム68の間に位置し、カム68を進出方向に付勢している。パーキングロッド70上には、カム68の進出方向の移動の限界位置を決めるストッパ75が設けられている。カム68は、自由状態において、ストッパ75に突き当たる位置までばね72によって移動される。
【0025】
変速機ケース24の端面には押さえ板76が固定されている。押さえ板76は、カム受け66の変速機ケース24からの脱落を防止すると共に、パーキングポール56を側方より支持している。この側方からの支持により、カム68の進出によってパーキングポール56が力を受けたとき、この力によりパーキングポール56が大きく変位することを防止している。
【0026】
カム受け66は、カム68の進退による摩耗を考慮して、鋼、鋳鉄などの耐摩耗性の高い材料により形成されることが好ましい。特に、変速機ケース24がアルミ合金製などの比較的摩耗しやすい材料である場合には、カム受け66を変速機ケース24を別体の部品として鋼製等とすることが好ましい。変速機ケース24の材質が耐摩耗性に優れた材料であるか、または摩耗が問題とならない場合には、カム受け66は変速機ケース24と別部品とせず、変速機ケース24の一部とすることもできる。
【0027】
次に、パーキングロック装置52の動作について説明する。ロック動作時、まずパーキングロッド70が進出方向に移動される。この移動により、ばね72が圧縮されカム68に作用するばね力が増加する。パーキングポールの爪62とパーキングギアの歯溝60が対向する位置関係にあるときには、ばね72により付勢されたカム68がパーキングポール56を押し、これをパーキングギア54に向けて回動させる。この結果、パーキングポール56が係合位置に移動してパーキングギア54と噛み合い、車両がロックされた状態となる。一方、パーキングポールの爪62がパーキングギアの歯58と対向する位置にある場合、カム68がばね72によって付勢されても、パーキングポール56の回動は阻止される。この状態から車両がわずかに動くなどしてパーキングギア54が回転し、パーキングポールの爪62が歯溝60に対向するようになると、パーキングポール56はカム68に押されて回動する。これにより、パーキングポール56が係合位置に移動してパーキングギア54と噛み合い、車両がロックされた状態になる。
【0028】
ロックを解除するには、パーキングロッド70を後退方向に移動させる。この移動により、ストッパ75がカム68に掛かり、カム68はパーキングロッド70と共に後退方向に移動して、パーキングポール56とカム受け66の間隙から抜ける。支えを失ったパーキングポール56は、不図示の付勢手段の付勢力によりパーキングギア54から離れる方向に回動して退避位置に移動し、ロックが解除される。
【0029】
パーキングロック装置52がロック状態のとき、パーキングギア54が、図4の矢印で示すように回転方向に振動すると、パーキングギア62はバックラッシュの分だけ回動し、パーキングギアの歯58とパーキングポールの爪62が繰り返し衝突する。この衝突の衝撃が、パーキングポール56、カム68、カム受け66を介して変速機ケース24に伝わり、変速機ケース24を振動させる。
【0030】
図5は、パーキングギア54とパーキングポール56の衝突に起因する振動の伝達経路の概略を示す図である。パーキングポール56が衝突により、例えば図5の矢印のように振動すると、この振動がカム68、カム受け66を介して変速機ケース24に伝わる。さらに変速機ケース24内を伝わって変速機ケース24の外壁等を振動させる。この振動が音となって放射される。パーキングロック装置52は、この振動伝達を抑制するために、振動伝達経路にマスダンパを有している。より具体的は、パーキングロック装置52は、カム受け66から延びる腕部78と、腕部78の端に設けられた重り(制振要素)80を有する。腕部78はパーキングロッド70の延びる方向に並行して延び、重り80はパーキングロッド70の先端の先の位置に配置される。重り80および腕部78とカム受け66は一体の部品として構成することができる。また、重り80(または重り80と腕部78)は、カム受け66と別体の部品とし、後から固定するようにしてもよい。カム受け66以外の部分に重りを設けるようにしてもよい。重り80の質量で振動が押さえられ振動伝達が抑制される。つまり、重り80がマスダンパとして機能する。
【0031】
重り、つまりマスダンパを設ける位置は、振動伝達経路上のどの位置に設けてもよい。しかし、変速機ケース24への振動の入力点であるカム受け66、またはこの近傍に設けることがより効果的である。
【0032】
図6および図7は、パーキングロック装置82の概略構成を示す図である。パーキングロック装置82が前述のパーキングロック装置52と異なる部分は、振動抑制のための構成である。振動抑制のための構成が、パーキングロック装置52はマスダンパであったのに対し、パーキングロック装置82はダイナミックダンパである。他の部分についてはパーキングロック装置52と同一の構成を有する。パーキングロック装置52と同一の構成については図示を省略するか、または同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
パーキングロック装置82は、カム受け66から延びる腕部78と、腕部78の端に設けられたダンパ受け部84を有する。腕部78はパーキングロッド70の延びる方向に並行して延び、ダンパ受け部84はパーキングロッド70の先端の先に配置される。ダンパ受け部84および腕部78とカム受け66は一体の部品として構成することができる。また、ダンパ受け部84(またはダンパ受け部84と腕部78)は、カム受け66と別体の部品とし、後から固定するようにしてもよい。
【0034】
ダンパ受け部84にダンパ部(制振要素)86が結合される。例えば、ダンパ受け部84に設けられたねじ穴に、ダンパ部86の貫通孔を通したボルトをねじ結合して結合することができる。ダンパ部86は、円筒の一端にフランジが設けられた基部88と、基部88の円筒部分の周囲を取り囲む環状の重り部90を有する。基部88と重り部90の間には、ゴムなどの弾性材料で構成された弾性層92が設けられている。弾性層92は、基部88の円筒外周面とフランジ部の側面の一方または両方に設けることができる。弾性層92をばね要素、重り部90を質量要素としたダイナミックダンパが形成される。このダイナミックダンパによって弾性層92のばね定数と重り部90の質量で定まる固有振動数付近の振動伝達を抑制することができる。固有振動数は、振動伝達が顕著な周波数、または車室内に放射され搭乗者が聞き取る音の周波数に調整することが好ましい。また、ダンパ受け部84およびダンパ部86の質量が重りとして作用するのでマスダンパとしての効果、つまり限定された振動数範囲でなく、広い範囲での減衰効果も期待できる。
【0035】
ダイナミックダンパを設ける位置は、振動伝達経路上のどの位置に設けてもよい。しかし、変速機ケース24への振動の入力点であるカム受け66、またはこの近傍に設けることがより効果的である。また、腕部78およびダンパ受け部78を設けず、カム受け66に直接結合してもよい。具体的には、例えばカム受け66にねじ穴を設け、これにダンパ部86の貫通項を通したボルトをねじ結合するようにできる。
【0036】
図8は、パーキングロック装置94の概略構成を示す図である。パーキングロック装置94が、前述のパーキングロック装置52,82と異なる部分は、振動抑制のための構成である。振動抑制のための構成が、パーキングロック装置52,82はマスダンパまたはダイナミックダンパであったのに対し、パーキングロック装置94は振動伝達経路に介在する振動遮断層である。他の部分についてはパーキングロック装置52と同一の構成を有する。パーキングロック装置52と同一の構成については図示を省略するか、または同一の符号を付し、説明を省略する。
【0037】
パーキングロック装置94において、カム受け66は、ゴムなどの弾性部材からなる振動遮断層(制振要素)96を介して変速機ケース24に固定される。振動遮断層96をゴムで構成する場合には、例えば焼き付けによりゴムとカム受け66および変速機ケース24を結合することができる。また、接着剤を用いて結合することもできる。カム受け66が振動しても、この振動は、弾性部材からなる振動遮断層96により減衰されて変速機ケース24に伝わる。振動遮断層96を設ける位置は、変速機ケース24への振動の入力位置となるカム受け66の近傍であることが好ましい。また、振動遮断層96は、前述のマスダンパまたはダイナミックダンパと組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 動力装置、12 内燃機関、20 変速機、24 変速機ケース、52 パーキングロック装置、54 パーキングギア(歯車要素)、56 パーキングポール(ロック要素)、58 パーキングギアの歯、60 歯溝、62 パーキングポールの爪、66 カム受け(受け要素)、68 カム、70 パーキングロッド、72 ばね、74 ばね受け、75 ストッパ、78 腕部、80 重り(制振要素)、82 パーキングロック装置、84 ダンパ受け部、86 ダンパ部(制振要素)、94 パーキングロック装置、96 振動遮断層(制振要素)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8