特許第5821910号(P5821910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000002
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000003
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000004
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000005
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000006
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000007
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000008
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000009
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000010
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000011
  • 特許5821910-ダクト構成部材の製造方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821910
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】ダクト構成部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20151104BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20151104BHJP
   B29C 51/00 20060101ALI20151104BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20151104BHJP
【FI】
   B60H1/00 102L
   B29C49/04
   B29C51/00
   B29K105:04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-161295(P2013-161295)
(22)【出願日】2013年8月2日
(62)【分割の表示】特願2009-180170(P2009-180170)の分割
【原出願日】2009年7月31日
(65)【公開番号】特開2013-227019(P2013-227019A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2013年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】玉田 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 正明
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−103244(JP,A)
【文献】 特開平01−154725(JP,A)
【文献】 特開平11−333867(JP,A)
【文献】 実開昭56−004928(JP,U)
【文献】 特開2007−253444(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0043719(US,A1)
【文献】 特開平07−001568(JP,A)
【文献】 米国特許第05000805(US,A)
【文献】 特開平09−109733(JP,A)
【文献】 特開2005−349994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B29C 49/04
B29C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構成部材の内壁面に接着することで通風流路を形成するダクト構成部材であって、起立壁および片側壁からなる半殻形状をなし、前記起立壁の端末に、前記車両構成部材の内壁面に接着するフランジ部が前記ダクト構成部材の長手方向に沿って形成されてなる前記ダクト構成部材の製造方法であって、
押出機から溶融状態の熱可塑性発泡樹脂シートを押し出して分割金型間に配置する工程と、
前記分割金型を型締めして前記熱可塑性発泡樹脂シートを前記分割金型のキャビティに密着させて前記起立壁および前記片側壁を成形すると共に、前記分割金型の型締めにより前記分割金型の合わせ面で前記熱可塑性発泡樹脂シートの気泡を押し潰して前記フランジ部を前記長手方向に沿って成形し、前記フランジ部の見掛け密度をDfと定義し、前記起立壁および前記片側壁の見掛け密度をDwと定義した場合に、1.5Dw<Df<5.0Dwの条件を満足する前記ダクト構成部材を成形する工程と、を有することを特徴とするダクト構成部材の製造方法。
【請求項2】
前記分割金型の合わせ面は、前記フランジ部に前記長手方向に沿って突条または凹溝を形成する成形面を有し、前記成形面により、前記熱可塑性発泡樹脂シートの気泡を押し潰して前記フランジ部の前記車両構成部材の内壁面に接着する側の面に、前記突条または前記凹溝を前記長手方向に沿って形成することを特徴とする請求項1記載のダクト構成部材の製造方法。
【請求項3】
前記分割金型の合わせ面は、前記フランジ部の外周に薄肉溝状のバリ切り取り案内溝を形成するピンチオフ部を有し、前記ピンチオフ部により、前記熱可塑性発泡樹脂シートを押し潰して、前記バリ切り取り案内溝を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載のダクト構成部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるルーフサイド等の車両内装部材に取り付けてダクトを構成する車両用空調ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるルーフパネルに取り付けてダクトを構成する発泡樹脂からなるダクト部材、およびそのダクト部材を発泡樹脂シートを用いて真空成形する方法は、特開2005−112199号公報に記載されている。また、ルーフダクトについては特開2001−196111号公報に、インストルメントパネルダクトについては特開平9−109733号公報にそれぞれ記載されている。
【0003】
前掲のダクト部材を発泡樹脂シートを用いて真空成形する方法にあっては、予め所定の大きさに裁断された熱可塑性樹脂シートの端部を把持したもとで電熱ヒータ等により加熱して軟化状態とし、この軟化した熱可塑性樹脂シートを金型の成形面に吸引密着させて成形する方法である。
【0004】
ところがこの成形方法を用いた場合、予め用意した常温の熱可塑性樹脂シートは成形時に電熱ヒータ等の輻射熱を照射して軟化状態とするため、特に発泡樹脂の場合にはシートの内部まで均一に溶融状態とすることが困難であり、溶融状態で押し出しされたシートと比べて熱量が小さく、金型キャビティへの追随性が悪く、車両用ルーフダクト部材のように成形形態が複雑でしかも形状が大なるものの場合には成形精度の低下が避けられないなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112199号公報
【特許文献2】特開2001−196111号公報
【特許文献3】特開平9−109733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、形態が複雑で形状が大きいダクトを高い精度で容易に成形すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るダクト構成部材の製造方法は、
車両構成部材の内壁面に接着することで通風流路を形成するダクト構成部材であって、起立壁および片側壁からなる半殻形状をなし、前記起立壁の端末に、前記車両構成部材の内壁面に接着するフランジ部が前記ダクト構成部材の長手方向に沿って形成されてなる前記ダクト構成部材の製造方法であって、
押出機から溶融状態の熱可塑性発泡樹脂シートを押し出して分割金型間に配置する工程と、
前記分割金型を型締めして前記熱可塑性発泡樹脂シートを前記分割金型のキャビティに密着させて前記起立壁および前記片側壁を成形すると共に、前記分割金型の型締めにより前記分割金型の合わせ面で前記熱可塑性発泡樹脂シートの気泡を押し潰して前記フランジ部を前記長手方向に沿って成形し、前記フランジ部の見掛け密度をDfと定義し、前記起立壁および前記片側壁の見掛け密度をDwと定義した場合に、1.5Dw<Df<5.0Dwの条件を満足する前記ダクト構成部材を成形する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、形態が複雑で形状が大きいダクトを高い精度で容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る車両用空調ダクトの一部を示す斜視図である。
図2】本発明に係る車両用空調ダクトを車両のルーフに備えた態様を一部破断して示す自動車の側面図である。
図3】本発明に係る車両用空調ダクトを車両のルーフに備えるものとした態様の斜視図および破断線円内の拡大断面図である。
図4】本発明に係る車両用空調ダクトを車両のルーフに備えた態様を示す斜視図である。
図5図4のA−A断面図である。
図6図4のB−B断面図である。
図7】本発明に係る車両用空調ダクトの製造方法の一例を示す断面図および破線円内の拡大図であって、分割金型内に熱可塑性発泡樹脂シートを配置した工程を示している。
図8図7に示す次工程であって、分割金型を閉じた工程を示す断面図である。
図9図8に示す次工程であって、熱可塑性発泡樹脂シートを一方の金型のキャビティに真空吸引させるとともに他方の金型のキャビティから圧力流体を導入して車両用空調ダクトを真空・圧空成形する工程を示す断面図である。
図10図9に示す次工程であって、分割金型を開いて成形された車両用空調ダクトを取り出す工程を示す断面図および破線楕円内の拡大図である。
図11】本発明に係る車両用空調ダクトの製造方法の他の成形態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1ないし図6において、1は車両用空調ダクトである。この車両用空調ダクト1は車両構成部材2の内壁面に接着することで通風流路3を形成する断面が略コ字状のダクト構成部材4を備えてなるものであり、ダクト構成部材4は起立壁5および片側壁6からなる半殻形状をなしている。そして、起立壁5の端末には、ルーフトリム、ピラートリム、インストルメントパネル等の車両構成部材2の内壁面に接着するフランジ部7が長手方向に沿って形成されている。ダクト構成部材4は発泡状態の熱可塑性樹脂からなり、フランジ部7の見掛け密度を起立壁5および片側壁6の見掛け密度より高くし成形してあるものである。また、フランジ部7には、その車両構成部材2の内壁面に接着する面に長手方向に沿って複数の凹溝8が形成されている。この凹溝8は図3において破線矢印で指し示すように突条8aであってもよい。
【0011】
図2図3図4および図6には、本発明に係る車両用空調ダクトを車両のルーフパネルに備えた態様を例示している。すなわち、ダクト構成部材4は、車両におけるルーフパネル9のルーフトリム10の内面の所定位置に取り付けてルーフにおける空調ダクト11を構成するが、ダクト構成部材4はそのフランジ部7の接着面をホットメルト接着剤によってルーフパネル9のルーフトリム10に接着する。フランジ部7の接着面は凹溝8を形成した凹凸面をなしているので、それに沿ってホットメルト接着剤を塗布しやすく、高い接着強度および気密性をもってルーフパネル9のルーフトリム10に対してダクト構成部材4が取り付けられる。なお、12は空調空気吹き出し口である。
【0012】
図7ないし図10において、13、14は分割金型であって、13はその一方の金型、14は他方の金型である。15は一方の金型13のキャビティ、16は他方の金型14のキャビティである。17は真空吸引室、18は吸引孔、19は圧力導入孔である。一方の金型13のキャビティ15は吸引孔18により真空吸引室17に通じている。他方の金型14のキャビティ16には圧力導入孔19が開口している。20はフランジ成形部、21はピンチオフ部である。23は熱可塑性発泡樹脂シートである。フランジ成形部20は、その車両内装部材に対する接着面を成形する側に接着強度および気密性を高めるための凹凸形状に形成する凹凸部24を設けてある。
【0013】
熱可塑性発泡樹脂シート23は、Tダイ(図示せず)より溶融状態で押し出された熱可塑性発泡樹脂を一対のローラ25、25によって挟圧されて形成され、分割金型13、14内に垂下させた状態で配置される(図7)。この工程においては熱可塑性発泡樹脂シート23の厚み、肉厚分布などを調整することができる。次いで分割金型13、14を閉じて熱可塑性発泡樹脂シート23をフランジ成形部20、ピンチオフ部21、凹凸部24を有する金型合わせ面で挟み(図8)、気泡を除去するとともに一方の金型13のキャビティ15から吸引孔18を通じて真空吸引室17に真空吸引することにより、熱可塑性発泡樹脂シート23を一方の金型13のキャビティ15に吸着させてそのキャビティ15の形状に沿った形状に成形するとともに、他方の金型14のキャビティ16に圧力導入孔19から圧力流体を導入してダクト構成部材4を成形する(図9)。また、フランジ成形部20で押し潰して気泡を除去する場合、金型の型締め力を調節することで気泡を除去する割合を調整することが可能であり、これによりダクト構成部材4のフランジ部7の見かけ密度を調整することができる。ここで、見かけ密度は起立壁5、片側壁6、フランジ部7の各3点からサンプル片を切り出し、各サンプル片の重量をサンプル片の体積で除した値を各々算術平均して各部位の見かけ密度とする。
【0014】
次いで分割金型13、14内でダクト構成部材4の冷却後、分割金型13、14を開いてダクト構成部材4を離型して外周のバリ26を切除するが、ダクト構成部材4のフランジ部7、7の外周には薄肉溝状のバリ切り取り案内溝27が分割金型13、14のピンチオフ部21によって形成されるので、バリ26の切除を容易かつ的確に行うことができる(図10)。
【0015】
本発明に係る車両用ルーフダクト部材の成形方法は、図11に示すように、熱可塑性発泡樹脂を溶融状態で押出ヘッド28から筒状に押し出した熱可塑性発泡樹脂パリソン29を分割金型30、30間に配置し、次いで、分割金型30、30を閉じてダクト構成部材をブロー成形することができる。なお、ブロー成形によりダクト構成部材を成形すると、それを閉じるように片側壁6と対向する不要な壁面が形成されるので、後工程でそのバリを切除して完成した態様のダクト構成部材とする。
【0016】
本発明の車両用空調ダクトの製造方法においては、Tダイから押し出される溶融状態の熱可塑性発泡樹脂シート23、または押出ヘッド28から押し出される溶融状態の熱可塑性発泡樹脂パリソン29の押出速度が設定される。すなわち、アキュムレータに接続される押出機の押出能力は樹脂成形品の大きさにより適宜選択することが可能であるが、100kg/時以上であることが成形サイクルを短縮させる観点から好ましい。また、ドローダウンの発生を防止する観点からTダイからの熱可塑性発泡樹脂シート23、または押出ヘッド28からの熱可塑性発泡樹脂パリソン29の押出し工程は40秒以内、さらに好ましくは30秒以内に完了する必要がある。このため、アキュムレータのアキュム室に貯留された熱可塑性樹脂はTダイまたは押出ヘッド28のスリットの開口から1cm2当り50kg/時以上、好ましくは60kg/時以上で押し出されるようにする。
【0017】
本発明は、車両構成部材の内壁面に接着することで通風流路を形成するダクト構成部材で起立壁および片側壁からなる半殻形状をなし、起立壁の端末に、車両構成部材の内壁面に接着するフランジ部を長手方向に沿って形成してなる車両用空調ダクトであって、ダクト構成部材は発泡状態の熱可塑性樹脂からなり、フランジ部の見掛け密度を起立壁および片側壁の見掛け密度より高くしたことを特徴とする車両用空調ダクトである。
【0018】
また、本発明は、車両構成部材の内壁面に接着することで通風流路を形成するダクト構成部材で起立壁および片側壁からなる半殻形状をなし、起立壁の端末に、車両構成部材の内壁面に接着するフランジ部を長手方向に沿って形成してなる車両用空調ダクトの製造方法であって、押出機から溶融状態の熱可塑性発泡樹脂を押し出して分割金型間に配置し、次いで、分割金型を型締めして熱可塑性発泡樹脂を金型のキャビティに密着させて起立壁および片側壁を成形するとともに、分割金型の型締めにより金型の合わせ面で熱可塑性発泡樹脂を押し潰して気泡を押し潰して気泡が除去されたフランジ部を成形することを特徴とする車両用空調ダクトの製造方法である。
【0019】
本発明においては、フランジ部の車両構成部材の内壁面に接着する面に長手方向に沿って突条または凹溝を形成することが好適である。金型の合わせ面で熱可塑性発泡樹脂を押し潰して形成されるフランジ部は、発泡倍率を低下させて起立壁および片側壁より見掛け密度を高くする。起立壁および片側壁の見掛け密度は、空調ダクトとして機能と強度、形状保持のための剛性を考慮すると0.18〜0.35g/cm3とするのが適切である。そして、フランジ部の見掛け密度をDf、起立壁および片側壁の見掛け密度をDwとすれば、1.5Dw<Df<5.0Dwとするのが、フランジ部の気密性、平滑性、寸法安定性および強度性の向上に大きく寄与するものとなる。
【0020】
本発明によれば、形態が複雑で形状が大きいものであっても、高い精度をもって容易に成形することができ、軽量性、断熱性、剛性、耐衝撃性、温度および湿度の変化に対する耐久性に優れ、加えてフランジ部の見掛け密度を起立壁および片側壁の見掛け密度より高く形成して車両構成部材の内壁面に対する接着性を向上させた車両用空調ダクトを得ることができるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 車両用空調ダクト
2 車両構成部材
3 通風流路
4 ダクト構成部材
5 起立壁
6 片側壁
7 フランジ部
8 凹溝
8a 突条
9 ルーフパネル
10 ルーフトリム
11 空調ダクト
12 空調空気吹き出し口
13 分割金型
14 分割金型
15 キャビティ
16 キャビティ
17 真空吸引室
18 吸引孔
19 圧力導入孔
20 フランジ成形部
21 ピンチオフ部
23 熱可塑性発泡脂シート
24 凹凸部
25 一対のローラ
26 バリ
27 バリ切り取り案内溝
28 押出ヘッド
29 熱可塑性発泡樹脂パリソン
30 分割金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11