(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体基板が、n型領域よりもn型不純物濃度が高く、第1埋込領域に対してコレクタ領域側から部分的に接しており、n型領域によってエミッタ領域及びコレクタ領域から分離されているストップ領域をさらに有する請求項1のバイポーラトランジスタ。
半導体基板が、第1埋込領域の下方に設けられており、n型領域によってエミッタ領域、コレクタ領域及び第1埋込領域から分離されているp型の第2埋込領域をさらに有する請求項1又は2のバイポーラトランジスタ。
半導体基板が、p型領域よりもp型不純物濃度が高く、第1埋込領域に対してエミッタ領域側から部分的に接しており、p型領域によってエミッタ領域及びコレクタ領域から分離されているストップ領域をさらに有する請求項4のバイポーラトランジスタ。
半導体基板が、第1埋込領域の下方に設けられており、p型領域によってエミッタ領域、コレクタ領域及び第1埋込領域から分離されているn型の第2埋込領域をさらに有する請求項4又は5のバイポーラトランジスタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コレクタ領域とエミッタ領域の間にベース領域を配置する構造のバイポーラトランジスタも知られている。この構造のバイポーラトランジスタでは、コレクタ領域とエミッタ領域の間の距離が長く確保されるため、耐圧を向上できるという利点がある。しかしながら、コレクタ領域とエミッタ領域の間の距離が長いため、キャリアの移動距離も長くなり、電流増幅率が低下してしまう場合がある。
【0005】
本明細書では、耐圧を向上しながら、電流増幅率を向上させることができるバイポーラトランジスタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する一つのバイポーラトランジスタは、半導体基板を有するバイポーラトランジスタである。半導体基板は、半導体基板の上面の一部に設けられたp型のエミッタ領域と、半導体基板の上面の一部に設けられたp型のコレクタ領域と、半導体基板の上面の一部であって、エミッタ領域とコレクタ領域の間に設けられたn型のベース領域と、ベース領域の下方に設けられたp型の第1埋込領域と、ベース領域よりもn型不純物濃度が低く、エミッタ領域とコレクタ領域とベース領域と第1埋込領域に接しており、エミッタ領域をベース領域及び第1埋込領域から分離しており、コレクタ領域をベース領域及び第1埋込領域から分離しているn型領域と、を有している。ベース領域は、第1埋込領域の上方に位置する第1ベース領域と、第1ベース領域よりもコレクタ領域側に位置する第2ベース領域を有している。第2ベース領域は、第1ベース領域よりもn型不純物濃度が高い。
【0007】
上記のバイポーラトランジスタでは、コレクタ領域とエミッタ領域の間にベース領域が配置されているため、コレクタ領域とエミッタ領域の間の距離を長く確保できることができ、耐圧を向上することができる。また、半導体層内のn型のベース領域の下方に、p型の第1埋込領域を有している。エミッタ‐コレクタ間でキャリア(ホール)が移動する場合、第1埋込領域内では電荷とキャリアの結合が起きず、損失が生じない。そのため、電流増幅率の低下を抑制することができる。従って、上記のバイポーラトランジスタによると、耐圧を向上しながら電流増幅率を向上させることができる。
【0008】
また、上記のバイポーラトランジスタでは、ベース領域は、第1埋込領域の上方に位置する第1ベース領域と、第1ベース領域よりもコレクタ領域側に位置する第2ベース領域を有している。第2ベース領域は、第1ベース領域よりもn型不純物濃度が高い。そのため、バイポーラトランジスタをオフした場合に、コレクタ‐ベース間に形成される空乏層が、第2ベース領域よりも第1ベース領域側に到達することが抑制される。その結果、空乏層が、第1埋込領域内まで到達することを抑制することができる。即ち、第1埋込領域の空乏化を抑制することができる。そのため、バイポーラトランジスタをオフからオンへ切り替える際に、空乏化されていた領域に供給されるホールの量が少なく済むため、ターンオン時間を短くすることができる。
【0009】
半導体基板が、n型領域よりもn型不純物濃度が高く、第1埋込領域に対してコレクタ領域側から部分的に接しており、n型領域によってエミッタ領域及びコレクタ領域から分離されているストップ領域をさらに有していてもよい。
【0010】
この構成によると、第1埋込領域に対してコレクタ領域側から部分的に接しているストップ領域が備えられるため、バイポーラトランジスタをオフした場合に、空乏層が、第1埋込領域内まで到達することをさらに抑制することができる。そのため、バイポーラトランジスタをオフからオンへ切り替える際に、オフ時に空乏化されていた領域に供給されるホールの量がさらに少なく済むため、ターンオン時間をさらに短くすることができる。
【0011】
半導体基板が、第1埋込領域の下方に設けられており、n型領域によってエミッタ領域、コレクタ領域及び第1埋込領域から分離されているp型の第2埋込領域をさらに有していてもよい。
【0012】
この構成によると、エミッタ‐コレクタ間でホールが移動する際に生じる損失をより低減することができる。このため、電流増幅率をさらに向上させることができる。
【0013】
本明細書で開示するもう一つのバイポーラトランジスタは、半導体基板を有するバイポーラトランジスタである。半導体基板は、半導体基板の上面の一部に設けられたn型のエミッタ領域と、半導体基板の上面の一部に設けられたn型のコレクタ領域と、半導体基板の上面の一部であって、エミッタ領域とコレクタ領域の間に設けられたp型のベース領域と、ベース領域の下方に設けられたn型の第1埋込領域と、ベース領域よりもp型不純物濃度が低く、エミッタ領域とコレクタ領域とベース領域と第1埋込領域に接しており、エミッタ領域をベース領域及び第1埋込領域から分離しており、コレクタ領域をベース領域及び第1埋込領域から分離しているp型領域と、を有している。ベース領域は、第1埋込領域の上方に位置する第1ベース領域と、第1ベース領域よりもエミッタ領域側に位置する第2ベース領域を有している。第2ベース領域は、第1ベース領域よりもp型不純物濃度が高い。
【0014】
上記のバイポーラトランジスタでも、耐圧を向上させながら電流増幅率を向上させることができる。なお、上記のバイポーラトランジスタでは、エミッタ‐コレクタ間で移動するキャリアは電子である。
【0015】
また、上記のバイポーラトランジスタでは、ベース領域は、第1埋込領域の上方に位置する第1ベース領域と、第1ベース領域よりもエミッタ領域側に位置する第2ベース領域を有している。第2ベース領域は、第1ベース領域よりもp型不純物濃度が高い。そのため、バイポーラトランジスタをオフした場合に、エミッタ‐ベース間に形成される空乏層が、第2ベース領域よりも第1ベース領域側に到達することが抑制される。その結果、空乏層が、第1埋込領域内まで到達することを抑制することもできる。即ち、第1埋込領域の空乏化を抑制することができる。そのため、バイポーラトランジスタをオフからオンへ切り替える際に、オフ時に空乏化されていた領域に供給される電子の量が少なく済むため、ターンオン時間を短くすることができる。
【0016】
半導体基板が、p型領域よりもp型不純物濃度が高く、第1埋込領域に対してエミッタ領域側から部分的に接しており、p型領域によってエミッタ領域及びコレクタ領域から分離されているストップ領域をさらに有していてもよい。
【0017】
この構成によると、第1埋込領域に対してエミッタ領域側から部分的に接しているストップ領域が備えられるため、バイポーラトランジスタをオフした場合に、空乏層が、第1埋込領域内まで到達することをさらに抑制することができる。そのため、バイポーラトランジスタをオフからオンへ切り替える際に、オフ時に空乏化されていた領域に供給される電子の量がさらに少なく済むため、ターンオン時間をさらに短くすることができる。
【0018】
半導体基板が、第1埋込領域の下方に設けられており、p型領域によってエミッタ領域、コレクタ領域及び第1埋込領域から分離されているn型の第2埋込領域をさらに有していてもよい。
【0019】
この構成によると、エミッタ‐コレクタ間で電子が移動する際に生じる損失をより低減することができる。このため、電流増幅率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施例)
図1に示すように、本実施例のバイポーラトランジスタ10は、主にSiからなる半導体基板11を有している。半導体基板11は、裏面層12と、裏面層12の表面側(
図1の上側)に形成されている埋込絶縁膜14と、埋込絶縁膜14の表面側に形成されている半導体層16と、を有している。また、半導体基板11の表面には、電極26、36、46と、金属配線等(図示しない)が設けられている。本実施例のバイポーラトランジスタ10は、横型のpnpトランジスタである。
【0022】
半導体層16内には、p型のエミッタ領域40、p型のコレクタ領域20、n型のベース領域30、p型の第1埋込領域50、及び、n型領域18が設けられている。エミッタ領域40、コレクタ領域20、ベース領域30は、半導体層16の表面の一部に形成されている。また、ベース領域30は、エミッタ領域40とコレクタ領域20の間に設けられている。第1埋込領域50は、ベース領域30の下方に設けられている。
【0023】
n型領域18のn型不純物濃度は、ベース領域30の低濃度領域34のn型不純物濃度よりも低い。ここで、「不純物濃度」の語は、当該領域における平均不純物濃度のことを意味する。以下、本明細書において「不純物濃度」という場合にも同様である。n型領域18は、エミッタ領域40とコレクタ領域20とベース領域30と第1埋込領域50に接している。n型領域18は、エミッタ領域40を、ベース領域30、第1埋込領域50、及び、コレクタ領域20から分離している。n型領域18は、コレクタ領域20を、ベース領域30、第1埋込領域50、及び、エミッタ領域40から分離している。
【0024】
エミッタ領域40は、p型不純物濃度が高い高濃度領域42と、高濃度領域42に比べてp型不純物濃度が低い低濃度領域44とを有している。エミッタ領域40は、半導体層16の表面に露出する範囲に島状に形成されている。エミッタ領域40の表面には、エミッタ電極46が接続されている。
【0025】
コレクタ領域20は、p型不純物濃度が高い高濃度領域22と、高濃度領域22に比べてp型不純物濃度が低い低濃度領域24とを有している。コレクタ領域20は、半導体層16の表面に露出する範囲に島状に形成されている。コレクタ領域20は、エミッタ領域40から間隔を空けて形成されている。コレクタ領域20の表面には、コレクタ電極26が接続されている。
【0026】
ベース領域30は、n型不純物濃度が高い第1高濃度領域32と、第1高濃度領域32に比べてn型不純物濃度が低い低濃度領域34と、低濃度領域34に比べてn型不純物濃度が高い第2高濃度領域35とを有している。ベース領域30も、半導体層16の表面に露出する範囲に島状に形成されている。上記の通り、ベース領域30は、コレクタ領域20とエミッタ領域40の間に配置されている。ベース領域30の表面には、ベース電極36が接続されている。
【0027】
本実施例では、低濃度領域34及び第1高濃度領域32は、第1埋込領域50の上方に位置する。第1高濃度領域32は、半導体層16の表面に露出する範囲に形成されている。低濃度領域34は、第1高濃度領域32の側方及び下方を取り囲んで形成されている。第2高濃度領域35は、低濃度領域34よりもコレクタ領域20側に位置する。第2高濃度領域35の下方には、第1埋込領域50は配置されていない。言い換えると、第2高濃度領域35は、第1埋込領域50よりもコレクタ領域20側に突出している。また、第2高濃度領域35は、半導体層16の表面からの深さ方向において、低濃度領域34とほぼ同じ深さまで形成されている。
【0028】
上記の通り、第2高濃度領域35のn型不純物濃度は、低濃度領域34のn型不純物濃度よりも高い。また、本実施例では、第2高濃度領域35のn型不純物濃度は、第1高濃度領域32のn型不純物濃度よりも高い。ただし、変形例では、第2高濃度領域35のn型不純物濃度は、第1高濃度領域32のn型不純物濃度と同じ、又は、第1高濃度領域32のn型不純物濃度よりも低くてもよい。
【0029】
第1高濃度領域32、低濃度領域34、及び、第2高濃度領域35は、いずれも、n型領域18に対してn型不純物を注入することによって形成された領域である。このため、第1高濃度領域32のn型不純物濃度、低濃度領域34のn型不純物濃度、及び、第2高濃度領域35のn型不純物濃度は、それぞれ、n型領域18のn型不純物濃度よりも高い。n型領域18ではn型不純物の濃度が略均一であるのに対し、ベース領域30はその均一なn型不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。本実施例では、n型領域18のn型不純物濃度は、1×10
15atoms/cm
3未満であり、ベース領域30のn型不純物濃度は、1×10
17atoms/cm
3以上である。
【0030】
第1埋込領域50は、上記の通り、ベース領域30のうちの低濃度領域34及び第1高濃度領域32の下方に位置する。本実施例では、第1埋込領域50は、低濃度領域34の下端部に接して形成されている。
【0031】
半導体層16には、バイポーラトランジスタ10を他の領域(図示省略)から分離するための分離トレンチ60が形成されている。分離トレンチ60は、半導体層16の表面から下方に伸び、埋込絶縁膜14の表面に達している。分離トレンチ60には、分離トレンチ60の内壁を被覆する分離絶縁層62が形成されている。分離絶縁層62の内側には、埋め込み電極64が形成されている。
図1では図示していないが、本実施例では、埋め込み電極64は、コレクタ電極26と接続されている。このため、埋め込み電極64は、コレクタ電極26と同電位を有する。
【0032】
次に、本実施例のバイポーラトランジスタ10の動作を説明する。エミッタ電極46とコレクタ電極26の間に、エミッタ電極46がプラスとなる電圧(即ち、バイポーラトランジスタ10に対する順電圧)を印加し、ベース電極36に所定のオン電位を印加すると、バイポーラトランジスタ10がオンする。即ち、電子が、コレクタ領域20からエミッタ領域40に向かってn型領域18内を移動するとともに、キャリア(ホール)が、エミッタ領域40からコレクタ領域20に向かって移動する。これにより、エミッタ電極46からコレクタ電極26に電流が流れる。多くのホールは、エミッタ領域40からコレクタ領域20に向かって移動する際、第1埋込領域50内を通過する。第1埋込領域50内では電子とホールの結合が起きず、損失が生じない。そのため、ホールはエミッタ領域40からコレクタ領域20まで移動する際に、第1埋込領域50の分だけホールの実質的な移動距離が短くなる。その結果、バイポーラトランジスタ10の電流増幅率を向上させることができる。
【0033】
また、上記の通り、本実施例のバイポーラトランジスタ10では、コレクタ領域20とエミッタ領域40との間にベース領域30が配置されているため、コレクタ領域20とエミッタ領域40の間の距離を長く確保でき、耐圧を向上させることもできる。従って、バイポーラトランジスタ10は、耐圧が高く、かつ、電流増幅率が高い。
【0034】
バイポーラトランジスタ10がオンしている間に、エミッタ電極46、及び、ベース電極36に印加する電位をともにゼロにすると、バイポーラトランジスタ10がオフする。この場合、エミッタ電極46とベース電極36の間に電位差がなく、コレクタ電極26の電位がエミッタ電極46とベース電極36の電位より低い状態(負電位が印加された状態)になる。その場合、
図2に示すように、コレクタ‐ベース間に空乏層70が形成される。空乏層70の一方の端部70aは、コレクタ領域20の低濃度領域22内まで到達する。また、空乏層70の他方の端部70bは、第2高濃度領域35まで到達する。このとき、第2高濃度領域35のn型不純物濃度が高いので、空乏層70の広がりが第2高濃度領域35内でストップする。このため、空乏層70が、第2高濃度領域35よりも低濃度領域34側に伸展することが防止される。その結果、空乏層70の端部70bが、第1埋込領域50内まで到達することもない。第1埋込領域50が空乏化されることがない。
【0035】
ここで、比較例として、バイポーラトランジスタ10において、ベース領域30が、第2高濃度領域35を有さない構成を考える。この場合、
図2中の二点鎖線に示すように、空乏層70の他方の端部70cは、低濃度領域34内まで到達するとともに、第1埋込領域50内まで到達する。即ち、第1埋込領域50の一部が空乏化される。第1埋込領域50のうち、空乏化された部分にはホールが存在しない。そのため、比較例のバイポーラトランジスタでは、ターンオン時に、空乏化されていた第1埋込領域50にホールを供給しなければならず、ターンオン時間が長くなる。
【0036】
これに対し、本実施例のバイポーラトランジスタ10は、上記の通りベース領域30が第2高濃度領域35を有するため、オフ時に第1埋込領域50が空乏化されることがない。そのため、ターンオン時に第1埋込領域50にホールを供給する必要がない。そのため、バイポーラトランジスタ10をオフからオンへ切り替える際に、オフ時に空乏化されていた領域に供給されるホールの量が少なく済むため、ターンオン時間を短くすることができる。
【0037】
以上、本実施例のバイポーラトランジスタ10の構成及び動作を説明した。本実施例における低濃度領域34が「第1ベース領域」の一例であり、第2高濃度領域35が「第2ベース領域」の一例である。
【0038】
(第1実施例の変形例)
図3のバイポーラトランジスタ10aは、第1実施例の変形例である。
図3に示すように、第1埋込領域50よりもコレクタ領域20側に突出する突出領域38の一部が、第2高濃度領域35であり、突出領域38の残りの部分が低濃度領域34であってもよい。このような構成でも、突出領域38のn型不純物濃度(より詳細には、突出領域38の平均不純物濃度)が高いので、突出領域38によって空乏層の広がりを止めることができる。従って、このような構成でも、第1実施例と同様に、ターンオン時間を短くすることができる。なお、この変形例では、突出領域38が「第2ベース領域」の一例であり、残りのベース領域30が「第1ベース領域」の一例である。
【0039】
(第2実施例)
続いて、
図4を参照して、第2実施例のバイポーラトランジスタ100について、第1実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例のバイポーラトランジスタ100は、第1埋込領域50に対してコレクタ領域20側から部分的に接しているn型のストップ領域152が備えられている点が第1実施例とは異なる。
【0040】
本実施例では、ストップ領域152のn型不純物濃度は、第2高濃度領域35のn型不純物濃度とほぼ等しい。なお、変形例では、ストップ領域152のn型不純物濃度は、n型領域18のn型不純物濃度よりも高ければ、任意の濃度とすることができる。
【0041】
本実施例でも、バイポーラトランジスタ100がオンされ、エミッタ領域40からコレクタ領域20に向かってキャリア(ホール)が移動する場合、一部のホールが、第1埋込領域50内を通過する。この際、第1埋込領域50内を通過するホールは、
図4の矢印154、156に示すように、ストップ領域152が存在しない部分を通って第1埋込領域50内を通過する。即ち、本実施例のバイポーラトランジスタ100も、第1実施例と同様に、耐圧が高く、かつ、電流増幅率も高い。
【0042】
また、本実施例のバイポーラトランジスタ100は、第1埋込領域50のコレクタ領域20側にストップ領域152を有している。そのため、バイポーラトランジスタ100をオフした場合に、コレクタ‐ベース間に形成される空乏層が、ストップ領域152まで到達することはあっても、第1埋込領域50内まで到達することは適切に防止される。そのため、バイポーラトランジスタ100をオフからオンへ切り替える際に、空乏化されていた領域に供給されるホールの量がより少なく済むため、ターンオン時間をさらに短くすることができる。
【0043】
(第3実施例)
続いて、
図5を参照して、第3実施例のバイポーラトランジスタ200について、第1実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例のバイポーラトランジスタ200は、第1埋込領域50の下方に、第1埋込領域50と間隔を空けてp型の第2埋込領域250が形成されている点が第1実施例とは異なる。
【0044】
本実施例のバイポーラトランジスタ200も、第1実施例のバイポーラトランジスタ10とほぼ同様の作用効果を発揮することができる。さらに、本実施例では、上記の通り、第1埋込領域50の下方に、第2埋込領域250が形成されている。そのため、バイポーラトランジスタ200がオンされ、エミッタ領域40からコレクタ領域20に向かってキャリア(ホール)が移動する場合、より多くのホールが、第1及び第2埋込領域50、250内を移動することとなる。即ち、より多くのホールが、第1及び第2埋込領域50、250の分だけ実質的な移動距離を短くすることができる。従って、電流増幅率をさらに向上させることができる。また、ホールが移動する経路も分散され易くなり(図中矢印254、256参照)、バイポーラトランジスタ200の発熱を抑制することもできる。
【0045】
(第4実施例)
続いて、
図6を参照して、第4実施例のバイポーラトランジスタ300について、第1実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例のバイポーラトランジスタ300は、横型のnpnトランジスタである点が第1実施例とは異なる。
【0046】
本実施例では、半導体層16内には、n型のエミッタ領域340、n型のコレクタ領域320、p型のベース領域330、n型の第1埋込領域350、及び、p型領域318が設けられている。各領域の配置は第1実施例の各領域の配置とほぼ同様である。
【0047】
本実施例では、ベース領域330の形状が第1実施例とは異なる。ベース領域330は、p型不純物濃度が高い第1高濃度領域332と、第1高濃度領域332に比べてp型不純物濃度が低い低濃度領域334と、低濃度領域334に比べてp型不純物濃度が高い第2高濃度領域335とを有している。本実施例でも、低濃度領域334及び第1高濃度領域332は、第1埋込領域350の上方に位置する。第1高濃度領域332は、半導体層16の表面に露出する範囲に島状に形成されている。低濃度領域334は、第1高濃度領域332の側方及び下方を取り囲んで形成されている。第2高濃度領域335は、低濃度領域334よりもエミッタ領域340側に位置する。第2高濃度領域335の下方には、第1埋込領域350は配置されていない。言い換えると、第2高濃度領域335は、第1埋込領域350よりもエミッタ領域340側に突出している。また、第2高濃度領域335は、半導体層16の表面からの深さ方向において、低濃度領域334とほぼ同じ深さまで形成されている。
【0048】
第2高濃度領域335のp型不純物濃度は、低濃度領域334のp型不純物濃度よりも高い。また、本実施例では、第2高濃度領域335のp型不純物濃度は、第1高濃度領域332のn型不純物濃度よりも高いが、変形例では、第2高濃度領域335のp型不純物濃度は、第1高濃度領域332のp型不純物濃度と同じ、又は、第1高濃度領域332のp型不純物濃度よりも低くてもよい。
【0049】
第1高濃度領域332、低濃度領域334、及び、第2高濃度領域335は、いずれも、p型領域318に対してp型不純物を注入することによって形成された領域である。このため、第1高濃度領域332のp型不純物濃度、低濃度領域334のp型不純物濃度、及び、第2高濃度領域335のp型不純物濃度は、それぞれ、p型領域318のp型不純物濃度よりも高い。p型領域318ではp型不純物の濃度が略均一であるのに対し、ベース領域330はその均一なp型不純物濃度よりも高い不純物濃度を有している。本実施例では、p型領域318のp型不純物濃度は、1×10
15atoms/cm
3未満であり、ベース領域330のp型不純物濃度は、1×10
17atoms/cm
3以上である。
【0050】
第1埋込領域350は、上記の通り、ベース領域330のうちの低濃度領域334及び第1高濃度領域332の下方に位置する。本実施例では、第1埋込領域350は、低濃度領域334の下端部に接して形成されている。
【0051】
エミッタ領域340は、n型不純物濃度が高い高濃度領域342と、高濃度領域342に比べてn型不純物濃度が低い低濃度領域344とを有している。コレクタ領域320は、n型不純物濃度が高い高濃度領域322と、高濃度領域322に比べてn型不純物濃度が低い低濃度領域324とを有している。
【0052】
次に、本実施例のバイポーラトランジスタ300の動作を説明する。コレクタ電極26とエミッタ電極46の間に、コレクタ電極26がプラスとなる電圧(即ち、バイポーラトランジスタ300に対する順電圧)を印加し、ベース電極36に所定のオン電位を印加すると、バイポーラトランジスタ300がオンする。即ち、ホールが、コレクタ領域320からエミッタ領域340に向かってp型領域318内を移動するとともに、キャリア(電子)が、エミッタ領域340からコレクタ領域320に向かって移動する。これにより、コレクタ電極26からエミッタ電極46に電流が流れる。多くの電子は、エミッタ領域340からコレクタ領域320に向かって移動する際、第1埋込領域350内を通過する。第1埋込領域350内では電子とホールの結合が起きず、損失が生じない。そのため、電子はエミッタ領域340からコレクタ領域320まで移動する際に、第1埋込領域350の分だけ電子の実質的な移動距離が短くなる。その結果、バイポーラトランジスタ300の電流増幅率を向上させることができる。
【0053】
また、本実施例でも、コレクタ領域320とエミッタ領域340との間にベース領域330が配置されているため、コレクタ領域320とエミッタ領域340の間の距離を長く確保でき、耐圧を向上させることもできる。従って、本実施例のバイポーラトランジスタ300も、耐圧が高く、かつ、電流増幅率が高い。
【0054】
ベース電極36に印加する電位
をゼロにすると、バイポーラトランジスタ10がオフする。この場合
、エミッタ電極46の電位がコレクタ電極2
6の電位より低い状
態になる。その場合、
図7に示すように、エミッタ−ベース間に空乏層370が形成される。空乏層370の一方の端部370aは、エミッタ領域340の低濃度領域342内まで到達する。また、空乏層370の他方の端部370bは、第2高濃度領域335まで到達する。このとき、第2高濃度領域335のp型不純物濃度が高いので、空乏層370の広がりが第2高濃度領域335内でストップする。このため、空乏層370が、第2高濃度領域335よりも低濃度領域334側に伸展することが防止される。その結果、空乏層370の他方の端部370bが、第1埋込領域350内まで到達することもない。即ち、第1埋込領域350が空乏化されることがない。そのため、本実施例でも、バイポーラトランジスタ300をオフからオンへ切り替える際に、オフ時に空乏化されていた領域に供給されるホールの量が少なく済むため、ターンオン時間を短くすることができる。
【0055】
以上、本実施例のバイポーラトランジスタ300の構成及び動作を説明した。本実施例における低濃度領域334が「第1ベース領域」の一例であり、第2高濃度領域335が「第2ベース領域」の一例である。
【0056】
(第4実施例の変形例)
図8のバイポーラトランジスタ300aは、第4実施例の変形例である。
図8に示すように、第1埋込領域350よりもエミッタ領域340側に突出する突出領域238の一部が、第2高濃度領域235であり、突出領域238の残りの部分が低濃度領域234であってもよい。このような構成でも、突出領域238のp型不純物濃度(より詳細には、突出領域38の平均不純物濃度)が高いので、突出領域338によって空乏層の広がりを止めることができる。従って、このような構成でも、第4実施例と同様に、ターンオン時間を短くすることができる。なお、この変形例では、突出領域338が「第2ベース領域」の一例であり、残りのベース領域330が「第1ベース領域」の一例である。
【0057】
(第5実施例)
続いて、
図9を参照して、第5実施例のバイポーラトランジスタ400について、第4実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例のバイポーラトランジスタ400は、第1埋込領域350に対してエミッタ領域340側から部分的に接しているp型のストップ領域452が備えられている点が第4実施例とは異なる。
【0058】
本実施例では、ストップ領域452のp型不純物濃度は、第2高濃度領域335のp型不純物濃度とほぼ等しい。変形例では、ストップ領域452のp型不純物濃度は、p型領域318のp型不純物濃度よりも高ければ、任意の濃度とすることができる。
【0059】
本実施例でも、バイポーラトランジスタ400がオンされ、エミッタ領域340からコレクタ領域320に向かってキャリア(電子)が移動する場合、一部の電子が、第1埋込領域350内を通過する。この際、第1埋込領域350内を通過する電子は、
図9の矢印454、456に示すように、ストップ領域452が存在しない部分を通って第1埋込領域350内を通過する。即ち、本実施例のバイポーラトランジスタ400も、第4実施例と同様に、耐圧が高く、かつ、電流増幅率も高い。
【0060】
また、本実施例のバイポーラトランジスタ400は、第1埋込領域350のエミッタ領域340側にストップ領域452を有している。そのため、バイポーラトランジスタ400をオフした場合に、エミッタ‐ベース間に形成される空乏層が、ストップ領域452まで到達することはあっても、第1埋込領域350内まで到達することは適切に防止される。そのため、バイポーラトランジスタ400をオフからオンへ切り替える際に、空乏化されていた領域に供給されるホールの量がより少なく済むため、ターンオン時間をさらに短くすることができる。
【0061】
(第6実施例)
続いて、
図10を参照して、第6実施例のバイポーラトランジスタ500について、第4実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例のバイポーラトランジスタ500は、第1埋込領域350の下方に、第1埋込領域350と間隔を空けてn型の第2埋込領域550が形成されている点が第4実施例とは異なる。
【0062】
本実施例のバイポーラトランジスタ500も、第4実施例のバイポーラトランジスタ300とほぼ同様の作用効果を発揮することができる。さらに、本実施例では、上記の通り、第1埋込領域350の下方に、第2埋込領域550が形成されている。そのため、バイポーラトランジスタ500がオンされ、エミッタ領域340からコレクタ領域320に向かってキャリア(電子)が移動する場合、より多くの電子が、第1及び第2埋込領域350、550内を移動することとなる。即ち、より多くの電子が、第1及び第2埋込領域350、550の分だけ実質的な移動距離を短くすることができる。従って、電流増幅率をさらに向上させることができる。また、電子が移動する経路も分散され易くなり(図中矢印554、556参照)、バイポーラトランジスタ500の発熱を抑制することもできる。
【0063】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0064】
(変形例1)上記の第3実施例では、n型のベース領域30の下方に、p型の第1及び第2埋込領域50、150を備えている。これに限られず、n型のベース領域30の下方に、p型の埋込領域を3か所以上に形成してもよい。同様に、上記の第6実施例において、p型のベース領域330の下方に、n型の埋込領域を3か所以上に形成してもよい。
【0065】
(変形例2)上記の各実施例では、ベース領域30(330)の第2高濃度領域35(335)は、半導体層16の表面からの深さ方向において、低濃度領域34(334)とほぼ同じ深さに形成されている。これには限られず、第2高濃度領域35(335)は、低濃度領域34(334)よりも浅く形成されていてもよい。
【0066】
(変形例3)上記の各実施例では、第1埋込領域50(350)は、ベース領域30(330)の低濃度領域34(334)の下端部に接して形成されている。これに限られず、第1埋込領域50(350)は、ベース領域30(330)の低濃度領域34(334)の下方であれば、低濃度領域34(334)とは間隔を空けて形成されていてもよい。
【0067】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。