(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無線システムは、複数の送信局を備え、各送信局は送信停止区間を有し、前記複数の無線局の有する各送信停止区間は、相互に同期していることを特徴とする請求項1に記載の無線局。
前記無線システムは、複数の送信局を備え、各送信局は送信停止区間を有し、前記複数の無線局の有する各送信停止区間は、それぞれ異なる時間に割り当てられることを特徴と
する請求項1または2に記載の無線局。
前記送信局は、複数の送信停止区間を有し、前記測定部は前記複数の送信停止区間のそれぞれにおいて受信レベルを測定し、測定された前記受信レベルの平均値を算出すること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線局。
前記与干渉部は、前記送信区間において測定した前記受信レベルから前記送信停止区間において測定した前記受信レベルを減ずることにより、他の無線システムへの与干渉量を
推定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線局。
前記与干渉部は、前記送信停止区間において測定した前記受信レベルから予め測定した、もしくは推定した雑音レベルを減ずることにより、他の無線システムの受信レベルを推定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無線局。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線局1の構成例を示すブロック図である。無線局1は、無線システムに属する。無線局1は、同期部2(同期手段)、測定部3(測定手段)および与干渉推定部4(与干渉推定手段)を備える。
【0022】
送信局5は、無線局1が属する無線システムに属する。他の無線システムに対して干渉となる無線信号を送信する送信局5の送信周波数帯域において、同期部2は、送信局5の送信停止区間と同期をとる。測定部3は、送信局5の無線信号の送信区間および送信停止区間における各受信レベルを測定する。与干渉推定部4は、送信区間における受信レベルから送信停止区間における受信レベルを減ずることにより、システムが他のシステムにもたらす与干渉量を推定する。
【0023】
以上説明した第1の実施形態によれば、非特許文献2と相違して、無線システム(セカンダリシステム)が他の無線システム(プライマリシステム)に与える干渉量の推定を実測によって行なう。そのため、実環境に則した与干渉量の推定を行なうことができる。
【0024】
また、第1の実施形態によれば、無線システムの他の無線システムに対する与干渉量の推定を、前記無線システム内で完結して行なうことができる。そのため、特許文献1と相違して、他の無線システムの構成に影響を与えることはない。
【0025】
また、第1の実施形態によれば、無線局1において送信区間と送信停止区間とに分離することができる。送信局5の送信信号の送信停止区間を利用することにより、与干渉量は、各区間における受信電力の差分から測定される。これにより、余分な信号(例えば、他の無線システムの送信局の信号や無線局1内部で発生する雑音)を排除できるので、与干渉量を高精度に測定できる。また、特許文献1に記載された技術を適用した無線システムと比べて、他の無線システムの周波数利用効率は、低下しない。その理由は、スペースフレームを他の無線システムの信号に挿入する構成が不要であるからである。
【0026】
さらに、上記与干渉量の推定において、無線システムが受信レベルの測定に使用する送信停止区間として、スペクトルセンシングを行なうために設定した送信停止区間を使用すれば、無線システムの元々の周波数利用効率を低下させない構成とすることができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係るコグニティブ無線システムの一例を示すブロック図である。コグニティブ無線システムは、プライマリシステムとセカンダリシステムとを備える(無線通信システム)。以下の例では、プライマリシステムがTV放送システムであり、セカンダリシステムがセルラーシステムであると想定する。もちろん、上記は単なる一例であって、プライマリシステムおよびセカンダリシステムの組み合わせは、上記に限定されない。プライマリシステムとセカンダリシステムとの組み合わせは、TVシステムとWRNシステムとの組み合わせ、あるいはTVシステムと地方自治体等の地域無線ネットワークまたは防災無線通信との組み合わせ等が挙げられる。また、プライマリシステムおよびセカンダリシステムの組み合わせは、特定用途無線(例えば、集合住宅用無線、企業内自営無線、農業用無線等)とセルラーシステムまたは無線LAN(Loacal Area Network)との組み合わせ等とすることもできる。
【0027】
図2のプライマリシステムは、
図20のプライマリシステムと同じとする。セカンダリシステムは、プライマリシステムに対して与干渉となる無線信号を送信するセカンダリ送信局30と、上記無線信号を測定する少なくとも1つのモニタリング局32とを備える。セカンダリ送信局30にて送信された信号は、プライマリ受信局11への与干渉となる。モニタリング局32は、プライマリ受信局11の周辺に位置し、セカンダリ送信局30がプライマリ受信局11に与える干渉量(与干渉量とも呼ぶ)を測定する。
【0028】
ここで、例えば、セルラーシステムの基地局、中継局または端末局は、セカンダリ送信局30およびモニタリング局32となることができる。また、モニタリングを専用に行なう局(モニタリングノード)もモニタリング局32となることができる。以下の例では、セカンダリ送信局30およびモニタリング局32は基地局であるとする。また、これらの局はコアネットワークを使用することができる。
【0029】
図3は、
図2に示すコグニティブ無線システムを構成するセカンダリシステムの構成例を示すブロック図である。セカンダリシステムは、
図2に示したセカンダリ送信局30およびモニタリング局32に加えて、地理データベース33と、スペクトルマネージャ34と、これらを接続するコアネットワーク35とを備える。セカンダリシステムは、上記以外の構成要素(例えば、他の基地局や移動端末)を含むことがありえる。しかしながら、これらの構成要素は、本実施形態と直接には関連しないので、説明を明確にするために、
図3には記載しない。
【0030】
地理データベース33は、プライマリシステムおよびセカンダリシステムに関する所定の情報(例えば、無線局の位置、無線局のカバレッジ、送信電力、アンテナ高、アンテナの指向性等に関する情報)を格納する。地理データベース33は、これらの情報を、必要に応じて、要求元(例えば、セカンダリ送信局30、モニタリング局32およびスペクトルマネージャ34)に提供する。
【0031】
スペクトルマネージャ34は、基本的には、セカンダリシステムが使用する周波数を管理する機能を有する。スペクトルマネージャ34は、例えば、プライマリシステムが使用する周波数帯域を二次使用することを要求する送信局(例えば、セカンダリ送信局30)に対し、周波数を割り当てる。さらに、スペクトルマネージャ34は、セカンダリ送信局30とモニタリング局32との間の通信の中継を行なうことができる。具体的には、スペクトルマネージャ34は、例えば、セカンダリ送信局30からの「モニタリング依頼」をモニタリング局32へ送信する。また、スペクトルマネージャ34は、モニタリング局32から受信したモニタリング結果(測定結果、判定結果、または送信出力値(例えば、送信電力設定値または送信電力増減情報)等)をセカンダリ送信局30へ送信する。なお、スペクトルマネージャ34は、単独の装置であってもよいし、セカンダリ送信局30やモニタリング局32と同様な装置内の一つの機能として備えられていてもよい。
【0032】
コアネットワーク35は、セカンダリ送信局30、モニタリング局32、地理データベース33、およびスペクトルマネージャ34が通信を行なうネットワークである。このネットワークは、通信事業者に閉じたコアネットワークであってもよいし、複数の事業者に亘るネットワークであってもよい。また、このネットワークは、有線ネットワークでもよいし、無線ネットワークでもよい。
【0033】
図4は、セカンダリ送信局30の構成例を示すブロック図である。セカンダリ送信局30は、通信用送受信部300、センシング部301、同期処理部302、ネットワーク通信部303およびモニタリング制御部304を備える。また、セカンダリ送信局30は、コアネットワーク30を介して、地理データベース33、スペクトルマネージャ34およびモニタリング局32と通信ができる。
【0034】
通信用送受信部300は、セカンダリ送信局30のカバレッジ31内に存在するセカンダリシステムの端末(セカンダリ端末、不図示)等と通信をするための機能を備える。通信用送受信部300は、具体的には、所望の周波数帯域外の電波の送受信を制限する帯域通過フィルタ、RF(Radio Frequency)帯の信号とベースバンド信号との間で周波数変換を行なう周波数変換部、D/A変換部(デジタルアナログ変換部)、A/D変換部(アナログデジタル変換部)、変復調部、符号部および復号部を備える。また、通信用送受信部300は、センシング部301がスペクトルセンシングを行なえる様に、送信停止区間(前述のQuiet Period(QP)と同じ)を送信信号内に設定し、通信を行なう。この送信停止区間に関する情報は、同期処理部302との間で交換される。また、通信用送受信部300は、スペクトルセンシングの判定結果に対応した送信制御指示をセンシング部301から受信して、送信制御を行なう。送信制御の例として、使用中の周波数帯域の継続使用、送信停止および送信電力の調整が挙げられる。また、通信用送受信部300は、モニタリング局32のモニタリング結果に対応した送信制御指示をモニタリング制御部304から受信をして、送信制御を行なう。
【0035】
センシング部301は、スペクトルセンシングによって、プライマリシステムによる周波数帯域使用状況を調べる。スペクトルセンシングを行なう周波数帯域が、セカンダリ送信局30が使用する周波数帯域である場合、スペクトルセンシングは送信停止区間において行なわれる。このセンシングにより、自身の送信による影響を受けない状態でスペクトルセンシングを行なうことができる。この送信停止区間は、同期処理部302により指定される。また、センシング部301は、スペクトルセンシングの結果に対応した送信制御を決定し、送信制御指示を通信用送受信部300に出力する。
【0036】
スペクトルセンシングを行なう周波数帯域が、セカンダリ送信局30が使用する周波数帯域でない場合、スペクトルセンシングを行なう時間は、セカンダリ送信30の送信信号の送信停止区間と同じ時間でもよいし、異なる時間でもよい。なお、スペクトルセンシングの例として、周波数帯域の電力を測定して、プライマリシステムがその周波数帯域を使用しているか否かを判断するという電力検出、またはその他の周知の技術が使用可能である。
【0037】
ネットワーク通信部303は、コアネットワーク35を介して、地理データベース33、スペクトルマネージャ34、およびモニタリング局32と通信する機能を備える。なお、ネットワーク通信部303が使用するネットワークは、コアネットワークでもよいし、無線ネットワークでもよい。
【0038】
同期処理部302は、送信停止区間に関する情報をセンシング部301に対して出力する。ここで、送信停止区間の決定について3つの場合が考えられる。第1の場合は、スペクトルマネージャ34がその区間を決定する場合である。第2の場合は、セカンダリ送信局30自身がその区間を決定する場合である。最後の場合は、予め定められている場合である。区間決定に際して、どの場合も可能である。例えば、スペクトルマネージャ34が送信停止区間を決定する場合、同期処理部302は、ネットワーク通信部303を介して、スペクトルマネージャ34と通信を行ない、送信停止区間に関する情報を受信する。この際、同期処理部302は、送信停止区間に関する情報を、センシング部301と通信用送受信部300とに出力する。通信用送受信部300は、送信停止区間を送信信号に挿入する。一方、送信停止区間をセカンダリ送信局30自身が決定する場合、送信停止区間は、通信用送受信部300によって決定される。通信用送受信部300は、自身が決定した送信停止区間を送信信号に設定し、送信停止期間を同期処理部302に出力する。同期処理部302は、取得した送信停止区間に関する情報を、センシング部301に出力する。
【0039】
モニタリング制御部304は、モニタリング依頼を、ネットワーク通信部303を経由して、モニタリング局32に送信する。この際、モニタリング依頼は、ネットワーク通信部303からモニタリング局32に直接送信されてもよいし、スペクトルマネージャ34を経由して送信されてもよい。
【0040】
なお、モニタリング依頼情報には、通信用送受信部300が使用し、且つモニタリング対象となる周波数帯域に関する情報を含めることができる。また、モニタリング依頼情報には、送信停止区間に関する情報を含めることができる。ここで、モニタリング対象となる周波数帯域に関する情報とは、例えば、セカンダリ送信局30が通信を行なうプライマリシステムの周波数帯域(チャネル)に関する情報であり、予め決められたチャネルの通し番号、チャネルの中心周波数、帯域幅などが該当する。また、送信停止区間に関する情報とは、モニタリング局32がセカンダリ送信局30の送信停止区間を把握することができる情報である。例えば、送信停止区間の開始時間、送信停止区間長、送信停止区間が周期的に挿入される場合は、その周期が挙げられる。
【0041】
また、モニタリング制御部304は、モニタリング局32のモニタリング結果を、ネットワーク通信部303を介して、受信する。受信したモニタリング結果が、送信出力値等に関する送信制御の指示である場合、モニタリング制御部304は、受信したモニタリング結果を通信用送受信部300に出力する。一方、受信したモニタリング結果が、モニタリング局32における与干渉量の測定値またはプライマリ受信局への与干渉量の推定値である場合、モニタリング制御部304は、与干渉測定値または与干渉推定値から送信制御指示を決定する。モニタリング制御部304は、制御指示を通信用送受信部300に出力する。
【0042】
また、セカンダリシステムの無線局(セカンダリ無線局)のうち、モニタリング機能を備えた無線局が複数存在する場合は、モニタリング制御部304は、これらの複数のセカンダリ無線局の中からモニタリング局を選択できる(モニタリング局32は、複数のセカンダリ無線局から選択された無線局の一つとする)。その際、モニタリング対象の周波数帯域を送信に使用していないセカンダリ無線局をモニタリング局として選択できる。以下の説明において、セカンダリ送信局30の送信による与干渉の影響を受けるプライマリシステムのカバレッジ端付近に位置するセカンダリ無線局がモニタリング局32として選択されるとする。
【0043】
図5は、
図3に示すモニタリング局32の構成例を示すブロック図である。モニタリング局32は、通信用送受信部320、センシング部321、同期処理部322(同期手段)、ネットワーク通信部323およびモニタリング帯域設定部324を備える。更に、モニタリング局32は、モニタリング用RF部325、受信レベル測定部326(測定手段)、与干渉推定部327(与干渉推定手段)およびモニタリング結果生成部328を備える。なお、これらの構成要素について以下に説明するが、説明の都合上、上記符号の順番通りには説明されない。また、モニタリング局32は、コアネットワーク35を介して、地理データベース33、スペクトルマネージャ34およびセカンダリ送信局30との通信が可能である。
【0044】
通信用送受信部320は、モニタリング局32がセカンダリ無線局として、自身のカバレッジ内に存在するセカンダリシステムの端末(セカンダリ端末、不図示)等と通信するための機能を備える。通信用送受信部320の構成は、セカンダリ送信局30の通信用送受信部300の構成と同じである。なお、
図5において、モニタリング局としての特徴的な機能を明確にするために、セカンダリ送信局30が備えるモニタリング制御部304に相当する機能は図示されていない。しかしながら、モニタリング局32も、セカンダリ送信局30と同様に、モニタリング制御部304を搭載することができる。
【0045】
センシング部321は、スペクトルセンシングにより、プライマリシステムが使用する周波数帯域の使用状況を把握する機能を有する。この機能は、セカンダリ送信局30のセンシング部301の機能と同じであり、センシング部301の機能は既に説明されているので、この機能についての説明は省略する。
【0046】
ネットワーク通信部323は、コアネットワーク35を介して、セカンダリ送信局30、地理データベース33またはスペクトルマネージャ34と通信する機能を有する。
【0047】
同期処理部322は、セカンダリ送信局30あるいはスペクトルマネージャ34から、ネットワーク通信部を介して、送信停止区間に関する情報を受信する。また、同期処理部322は、送信停止区間に関する情報を通信用送受信部320との間で交換する。この送信停止区間には二つのタイプがある。その一つは、通信用送受信部320が使用する周波数帯域に対してスペクトルセンシングを行なうための送信停止区間(すなわち、モニタリング局32の通信を停止する時間)である。他の一つは、モニタリングが行なわれる周波数帯域での送信停止区間であって、セカンダリ送信局30からモニタリング依頼とともに送られる送信停止区間(すなわち、セカンダリ送信局30が送信を停止する時間)である。同期処理部322は、前者の送信停止区間に関する情報をセンシング部321に対して出力し、後者の送信停止区間に関する情報を受信レベル測定部326に対して出力する。
【0048】
モニタリング帯域設定部324は、セカンダリ送信局30またはスペクトルマネージャ34から送信されたモニタリング依頼を、ネットワーク通信部323を介して受信する。モニタリング帯域設定部324は、モニタリング依頼に含まれる情報であって、モニタリングの対象である周波数帯域の情報をモニタリング用RF部325に対して出力する。
【0049】
モニタリング用RF部325は、モニタリング帯域設定部324から入力された周波数帯域に関する情報に基づいて、アンテナから受信したRF信号のうち、モニタリング対象である周波数帯域のRF信号をデジタルベースバンド信号に変換する。また、モニタリング用RF部325は、変換されたデジタルベースバンド信号を受信レベル測定部326に出力する。ここで、「モニタリング対象の周波数帯域」とは、セカンダリ送信局30が送信に使用する周波数帯域を意味する。なお、モニタリング局32は、セカンダリ送信局30の無線信号を測定するのであって、モニタリング局32自身が送信する無線信号を測定するものではない。
【0050】
また、この受信レベル測定部326への供給信号は、必ずしもデジタルベースバンド信号である必要はない。RF信号またはIF(Intermediate Frequency)信号を受信レベル測定部326に供給することができる。以下では、説明を明瞭にするために、モニタリング用RF部325がデジタルベースバンド信号を供給する場合についてのみ説明する。
【0051】
具体的には、モニタリング用RF部325は、まず、モニタリング用RF部325内の低雑音増幅器(不図示)に入力されたRF信号を増幅する。次いで、モニタリング用RF部325は、帯域通過フィルタ(不図示)を使用して、増幅された信号の中からモニタリングを行なうRF信号を抽出する。モニタリング用RF部325内の周波数変換部(不図示)は、抽出した所望周波数帯域のRF信号をベースバンド信号に変換する。ベースバンド信号は、モニタリング用RF部325内のA/D変換部によって標本化および量子化され、アナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0052】
受信レベル測定部326は、モニタリング対象である周波数帯域中のデジタルベースバンド信号を、モニタリング用RF部325から受信する。また、受信レベル測定部326は、同期処理部322から入力された送信停止区間と、それ以外の時間(以後、送信区間と呼ぶ)をそれぞれ測定する。
【0053】
受信レベルの測定方法として、例えば、受信したベースバンド信号の受信電力を直接測定する電力検出、またはセカンダリ送信局30の送信信号に含まれる特徴量を使用した測定が挙げられる。なお、受信レベルを測定することができる方法であれば、如何なる方法を使用してもよい。なお、上記の特徴量を使用した測定としては、例えば、セカンダリ信号に含まれるパイロット信号との相互相関値を用いる方法、OFDM信号のCP信号をオーバラップさせることによる自己相関値を使用する方法などが挙げられる。ここで、上記のOFDMは、Orthogonal Frequency Division Multiplexを略記したものである。また、CPは、Cyclic Prefixを略記したものである。特徴量の詳細について、後ほど説明する。
【0054】
以下では、受信レベル検出の例として、「電力検出」を使用した例を説明する。
【0055】
図6は、周波数帯域においてモニタリング局32の受信レベル測定部326によって受信されたモニタリング対象の受信電力の例を示す図である。
【0056】
図6において、横軸は時間を示し、縦軸は受信電力を示す。
図6は、送信停止区間(
図6において、例えば、時点t_1aからt_2aまでの時間)がセカンダリ送信局30の送信信号(すなわち、モニタリング対象の周波数帯域の信号)に周期的に挿入されていることを示す図である。この例では、
図6から判るように、送信停止区間(
図6において、時点t_1aからt_2aまでの時間)における受信電力は、プライマリ送信局10の信号電力およびモニタリング局32の内部で発生する雑音電力が重畳した電力となる。一方、送信区間(
図6において、時点t_2aからt_3aまでの時間)における受信電力は、プライマリ送信局10の信号電力およびモニタリング局32の雑音電力に加えて、さらに、セカンダリ送信局30の信号電力が重畳した電力となる。受信レベル測定部326は、「電力検出」を行なうことにより、送信停止区間と送信区間のそれぞれにおける受信電力を測定する。
【0057】
ここで、上記の受信電力の詳細は、記述される。電力検出において、デジタルベースバンド信号に対して(式1)の計算を行なうことにより、送信停止区間の受信電力Poffが計算される。また、デジタルベースバンド信号に対して(式2)の計算を行なうことにより、送信区間の受信電力Ponが計算される。
【0059】
なお、(式1)および(式2)において、y(n)は、デジタルベースバンド信号の等価的ベースバンド表現に基づくものであり、nは離散的時間のインデックスを示す。また、N1、N2およびN3は、それぞれ時点t_1a、t_2aおよびt_3a(すべて
図6参照)に対応する離散的時間のインデックスである。受信レベル測定部326は、このようにして得られた受信電力(PoffおよびPon)を与干渉推定部327に出力する。
【0060】
なお、上記の(式1)および(式2)において、送信停止区間と送信区間とにおけるデジタルベースバンド信号を用いて受信電力を算出したが、これに限定されない。例えば、セカンダリ送信局30の送信信号が伝搬遅延を伴ってモニタリング局で受信される場合がある。このような場合、受信電力を正確に測定できなくなる可能性が高まる。例えば、セカンダリ送信局30は時点t_1aにおいて送信を停止するが、時点t_1a以前の送信信号が伝搬遅延を伴った遅延波となって、モニタリング局32に到達する。この場合、セカンダリ信号は、時点t_1a以降においてもモニタリング局によって受信される。一方、セカンダリ送信局30は、時点t_2aにおいて送信を開始するが、セカンダリ信号は、伝搬遅延の影響により、時点t_2aにおいてモニタリング局32によって未だ受信されない。このような場合を考慮すれば、想定される伝搬時間に相当するオフセットを加えた開始時間から電力検出を行なうことができる。例えば、上記のオフセットをΔとした場合、時点t_1a+Δ、t_2a+Δおよびt_3a+Δに対応する離散的時間のインデックスは、それぞれ、N1、N2およびN3に設定することができる。
【0061】
また、センシング部321が使用するスペクトセンシングと同様な方法(例えば、上記の電力検出)で測定を行なう場合、受信レベル測定部326に対して共通化した回路を使用することができる。
【0062】
与干渉推定部327は、受信レベル測定部326から供給された送信停止区間における受信電力Poffおよび送信区間における受信電力Ponに基づいて、セカンダリ送信局の送信による与干渉量Pを、以下の(式3)を使用して、算出する。
【0063】
このようにして与干渉推定部327が算出した与干渉量は、モニタリング結果生成部328に入力される。
【0064】
モニタリング結果生成部328は、与干渉推定部327から供給された与干渉量を、モニタリング結果として、ネットワーク通信部323を介してセカンダリ送信局30に送信する。なお、与干渉量は、モニタリング結果の一例である。与干渉量の代わりに、CIR(Carrir to Interference Ratio)をセカンダリ送信局30に送信することができる。ここで、例えば、送信停止区間における受信電力Poffから予め測定した雑音電力を減じて、プライマリ信号の電力を算出し、プライマリ信号の電力から与干渉量を減じて、CIRを算出できる(dBで表現した場合)。
【0065】
しかしながら、モニタリング結果は、与干渉量またはCIRのようなモニタリング局32における測定結果に限定されない。モニタリング結果として、測定結果に基づいて算出された推定結果、例えば、プライマリ受信局11における与干渉量またはCIRについての推定値を使用することもできる。例えば、プライマリ受信局11における与干渉量の推定値として、モニタリング局32とプライマリ受信局11とにおけるセカンダリ信号(与干渉信号)の受信環境の相違により生じる受信電力差を補正した値を使用することができる。ここで、受信環境の相違とは、モニタリング局32とプライマリ受信局11の受信アンテナの指向性の相違から生じる受信利得差、およびモニタリング局32とプライマリ受信局11との受信アンテナ高の相違もしくは伝搬距離の相違から生じる伝搬損失差を意味する。これらの補正値は、ネットワーク通信部323を介して、地理データベース33から取得したプライマリシステムに関する情報(プライマリ送信局10の位置、プライマリ送信局10のカバレッジ、プライマリ送信局10の送信電力、プライマリ送信局10およびプライマリ受信局11のアンテナ高およびアンテナ指向性等に関する情報)に基づいて算出することができる。
【0066】
また、モニタリング結果は、測定結果や上記推定結果に限定されない。例えば、測定結果に基づいて、プライマリ受信局における許容干渉量を超過しているか否かについて判定もしくは決定した結果を、モニタリング結果として、使用することができる。また、測定結果や推定結果に基づいて算出する送信出力値(例えば、送信電力設定値または送信電力増減情報)を使用することも可能である。
【0067】
上記の通り、モニタリング結果生成部328は、与干渉量の測定結果の代わりに、生成された推定結果、決定結果または送信出力値をモニタリング結果としてセカンダリ送信局30に送信することができる。
【0068】
また、モニタリング局32から直接セカンダリ送信局30にモニタリング結果を送信する代わりに、スペクトルマネージャ34を介して、セカンダリ送信局30にモニタリング結果を送信することも可能である。この場合、スペクトルマネージャ34は、測定結果から判定結果を算出する処理、または測定結果から送信出力値を算出する処理を実行することができる。
【0069】
図7は、セカンダリ送信局30の動作例を示すフローチャートである。セカンダリ送信局30のモニタリング制御部304は、プライマリシステムの周波数帯域を共用して通信を行なう時、モニタリング依頼を生成する(ステップS10)。通信用送受信部300が使用しており且つモニタリングの対象となる周波数帯域に関する情報、または送信停止区間に関する情報を含むモニタリング依頼を送信することができるモニタリング制御部304は、生成したモニタリング依頼を、ネットワーク通信部を介して、モニタリング局32に送信する(ステップS11)。その際、モニタリング依頼を、ネットワーク通信部303からモニタリング局32に直接送信してもよいし、スペクトルマネージャ34を介して送信してもよい。セカンダリ送信局30は、プライマリシステムの周波数帯域(モニタリング依頼で指定した周波数帯域)にて通信を行なう(ステップS12)。ここで通信に使用する送信信号は、モニタリング依頼先のモニタリング局32にて測定される。
【0070】
セカンダリ送信局30のモニタリング制御部304は、セカンダリ送信局30の送信信号に関するモニタリング結果を、ネットワーク通信部303を介して、受信する(ステップ S13)。モニタリングは、モニタリング局32により行なわれる。モニタリング制御部304は、受信したモニタリング結果を通信用送受信部300に出力し、送信制御を行なう(ステップS14)。
【0071】
図8は、モニタリング局32の動作例を示すフローチャートである。モニタリング局32のモニタリング帯域設定部324は、セカンダリ送信局30(またはスペクトマネージャ34)から送信されたモニタリング依頼を、ネットワーク通信部323を介して、受信する(ステップS20)。モニタリング帯域設定部324は、モニタリング依頼に含まれるモニタリング対象の周波数帯域に関する情報を、モニタリング用RF部325に設定する。モニタリング用RF部325は、モニタリング対象である周波数帯域の無線信号を受信する(ステップS21)。モニタリング用RF部325は、受信した無線信号のうち、モニタリング対象である周波数帯域の無線信号をデジタルベースバンド信号に変換し、変換されたデジタルベースバンド信号を受信レベル測定部326に出力する。受信レベル測定部326は、入力されたデジタルベースバンド信号の受信レベルを、送信停止区間および送信区間のそれぞれについて測定する(ステップS22)。与干渉推定部327は、受信レベル測定部326によって測定された送信区間における受信電力から送信停止区間における受信電力を減ずることにより、与干渉電力を算出する(ステップS23)。モニタリング結果生成部328は、算出された与干渉電力に基づいて、モニタリング結果を生成する(ステップS24)。ここで、モニタリング結果として、例えば、与干渉電力またはCIRの測定結果、プライマリ受信局11における与干渉電力またはCIRの推定値、判定結果、または送信出力値を使用することができる。生成されたモニタリング結果は、ネットワーク通信部323を介して、セカンダリ送信局30に送信される(ステップS25)。
【0072】
以上説明した第2の実施形態によれば、非特許文献2とは異なり、セカンダリシステムがプライマリシステムに与える与干渉量の推定は、実測によって行われる。そのため、実環境に則した与干渉の推定を行なうことができる。
【0073】
また、第2の実施形態によれば、セカンダリシステムがプライマリシステムに与える与干渉量を、セカンダリシステム内において推定することができる。そのため、特許文献1と相違して、プライマリシステムの構成に影響を及ぼすことはない。
【0074】
また、第2の実施形態によれば、無線局1において送信区間と送信停止区間とに分離することができる。送信局5の送信信号の送信停止区間を使用して、各区間における受信レベルの差分から与干渉量を測定する。これにより、与干渉量を精度よく測定することができる。また、特許文献1の技術をプライマリシステムに適用した場合と比べて、プライマリシステムの周波数利用効率を低下させない。
【0075】
また、上記与干渉量の測定において、モニタリングで使用する送信停止区間として、セカンダリシステムがスペクトルセンシングを行なうために設定した送信停止区間を使用すれば、セカンダリシステムの周波数利用効率を元々の周波数利用効率より低下させない構成とすることができる。
【0076】
なお、上記の説明では、モニタリング局32が受信レベルを測定する送信停止区間は、セカンダリシステム30がスペクトルセンシングを行なうために備えた送信停止区間としたが、これに限定されない。例えば、セカンダリ送信局30がスペクトルセンシングを行なうための送信停止区間に加えて、別の送信停止区間を新たに備え、モニタリング局32の受信レベル測定の際の送信停止区間とすることができる。
【0077】
なお、以上の説明では、モニタリング局が一つの場合を説明した。しかし、モニタリング局は複数存在してもよい。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態の特徴は、複数のセカンダリ送信局が送信停止区間を相互に同期させる点にある。なお、説明を明瞭にするために、第2の実施形態と同じ構成部分については、説明を省略する。
【0078】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るコグニティブ無線システムの一例を示すブロック図である。
図9において、複数のセカンダリ送信局40−1、40−2および40−3のそれぞれがプライマリシステムの周波数帯域を共用して、通信を行なうとする。また、セカンダリシステムは、モニタリング局50(詳細については後述する。)を備える。また、
図9におけるプライマリシステムは、
図2(第2の実施形態)のそれと同じである。もちろん、本実施形態において、セカンダリ送信局の数は3局に限定されない。2局あるいは4局以上とすることは可能である。以下の例では、セカンダリ送信局が3局(40−1、40−2および40−3)の場合を示す。
【0079】
図9に示すように、複数のセカンダリ送信局がプライマリシステムの周波数帯域を使用した結果、合成された与干渉信号が形成され、プライマリ受信局11に対して与干渉を発生する。プライマリシステムの通信を保護するために、一つのセカンダリ送信局の与干渉でなく、セカンダリシステム全体が与える与干渉量(総与干渉量)を一定値以下に抑えることが必要である。また、セカンダリシステム側から見れば、総与干渉量を推定できれば、送信制御に活用できる。本実施形態は、上記の総与干渉量を推定するものである。
【0080】
本実施形態におけるセカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)と、第2の実施形態におけるセカンダリ送信局30との相違点は、送信停止区間の構成のみである。そのため、以下では、この点について説明する。従って、本実施形態におけるセカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)の構成は、第2の実施形態におけるセカンダリ送信局30(
図4)の構成と同じである。
【0081】
図10は、この実施形態におけるセカンダリ送信局が送信した信号の時間構成例を示す図である。本実施形態のセカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)は、それぞれの送信停止区間を同期させる。すなわち、各セカンダリ送信局では、同期処理部(例えば、セカンダリ送信局40−1の同期処理部302)がセンシング部(例えば、セカンダリ送信局40−1におけるセンシング部301)に対して出力する送信停止区間は、セカンダリシステム内で共通の送信停止区間となる。この送信停止区間は、スペクトルマネージャ34が決定して、セカンダリ送信局に通知することができる。また、周辺のセカンダリ送信局の中で、一番先に通信を開始したセカンダリ送信局(例えば、40−1)が、決定した送信停止区間をセカンダリシステム内の他のセカンダリ送信局(例えば、40−2および40−3)に通知することもできる。
【0082】
本実施形態におけるモニタリング局50の構成は、基本的には、第2の実施形態のモニタリング局32(
図5)の構成と同じである。ただし、与干渉推定部(モニタリング局32の与干渉推定部327)から出力される測定結果が異なる。なお、以下の記載において、
図5を用いることにより、モニタリング局50を説明する。
【0083】
図11は、モニタリング対象である周波数帯域におけるモニタリング局50が受信する受信電力の例を示す図である。
図9に示す複数のセカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)が送信停止区間を同期させた結果、モニタリング局50は、送信停止区間において、プライマリ送信局10の信号と雑音信号とが重畳された信号を受信する。一方、送信区間においては、プライマリ送信局10の信号と雑音信号に加えて、セカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)の信号が重畳される。
【0084】
まず、モニタリング局50は、セカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)からモニタリング依頼を受信しているとする。モニタリング局50の受信レベル測定部500(
図5参照)は、モニタリング局32の受信レベル測定部326と同じ動作をする(すなわち、(式1)及び(式2)の処理を行う)。また、モニタリング局50の与干渉測定部510(
図5参照)は、モニタリング局32の与干渉推定部327と同じ動作をする(すなわち、(式3)の処理を行う)。その結果、与干渉推定部510からモニタリング局50のモニタリング結果生成部520(
図5参照)に対して出力される値は、複数のセカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)の総信号電力(総与干渉量)となる。モニタリング局50のモニタリング結果生成部520(
図5参照)は、入力された総与干渉量、総与干渉量を基に算出したCIR、またはプライマリ受信局とモニタリング局との受信環境の相違を補正した推定結果(総与干渉量の推定値またはCIRの推定値)をスペクトルマネージャ34または各セカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)に送信する。また、それらを総与干渉量に基づいた判定結果または送信出力値に変換して、各セカンダリ送信局(40−1、40−2および40−3)に送信することも可能である。プライマリ受信局において許容される干渉電力から総与干渉量を減じて得られる数値を、送信出力値として、使用することが可能である(例えば、総与干渉量が与干渉電力の許容値を2dBだけ超過している場合、送信電力増減値は−2dBとなり、セカンダリ送信局40−1、40−2および40−3の送信電力を2dB低下させる指示を出す)。
【0085】
以上説明した第3の実施形態によれば、モニタリング局は、セカンダリシステム全体が与える総与干渉量を推定することができる。その理由は、プライマリシステムと同一の周波数帯域を使用するセカンダリシステム内の複数のセカンダリ送信局は、それぞれの送信停止区間を同期させ、モニタリング局は、その同期の後に、与干渉量を推定するからである。
【0086】
なお、上記の説明において、セカンダリ送信局が基地局である(すなわち、セカンダリ信号が下り信号となる)と想定したが、セカンダリ送信局がセカンダリ端末である場合でも可能である。この場合は、同一セル内に存在し、モニタリング対象の周波数帯域を使用する複数のセカンダリ端末の上り信号において、各送信停止区間は同期している。この区間を使用することにより、モニタリング局は、セル内の複数のセカンダリ端末の送信によるプライマリシステムへの総与干渉量を測定することができる。また、この上り信号における送信停止区間を、セル内のセカンダリ端末間だけでなく、複数セルのセカンダリ端末間でも同期させることにより、モニタリング局は、セカンダリシステム全体の上り信号がプライマリシステムに与える総与干渉量を測定することができる。
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、複数のセカンダリ送信局間で同期した送信停止区間を使用することにより、セカンダリシステム全体が与える与干渉量の推定を行なうことについて説明した。一方、セカンダリ送信局の個々の与干渉量を推定する必要がある場合がある。例えば、複数のセカンダリ送信局の送信電力を個別に調整する場合、または複数のセカンダリ送信局のうち与干渉量の大きいセカンダリ送信局の送信を停止させる場合などが挙げられる。
【0087】
そこで、第4の実施形態は、第3の実施形態と相違して、セカンダリ送信局ごとに与干渉量を測定するために、複数のセカンダリ送信局の送信停止区間をずらして用いることを特徴とする。
【0088】
図12は、第4の実施形態におけるセカンダリ送信局が送信した信号の時間構成の一例を示す図である。
図12では、プライマリ送信局10の信号に加え、本実施形態におけるセカンダリ送信局60−1、60−2および60−3の信号を示す。第3の実施形態における送信停止区間の配置(
図10)と相違して、各セカンダリ送信局(60−1、60−2および60−3)の送信停止区間が異なる時間に割り当てられる。具体的には、セカンダリ送信局60−1の送信停止区間は、時点t_2cから時点t_3cまでの区間である。セカンダリ送信局60−2の送信停止区間は、時点t_4cから時点t_5cまでの区間である。セカンダリ送信局60−3の送信停止区間は、時点t_6cから時点t_7cまでの区間である。なお、
図12に示された時間構成はあくまでも一例であり、これに限定されない。他の例として、各送信停止区間の開始時点は、一つ前に停止するセカンダリ送信局の送信停止区間の開始時点に所定のオフセットを加えた時点に設定される。例えば、オフセットをδとした場合、系列において2番目に停止するセカンダリ送信局60−2の送信停止開始時点を、t_4c=t_2c+δとし、系列において3番目に停止するセカンダリ送信局60−3の送信停止開始時点を、t_6c=t_4c+δとすることができる。また、各送信停止期間は、お互いに非同期とすることもできる。また、ある送信停止区間と次の送信停止区間との間に時間間隔がない状態(すなわち、t_3c=t_4c、およびt_5c=t_6c)にすることもできる。
【0089】
上述の通り、第4の実施形態におけるセカンダリ送信局は、
図12に示すように、セカンダリ送信局に異なる時間で各々整えられる送信停止期間を使用する。この場合の送信停止区間の決定は、第3の実施形態と同様に、スペクトルマネージャ34が決定して、各セカンダリ送信局に通知することができる。また、特定のセカンダリ送信局(例えば、60−1)が決定した送信停止区間をセカンダリシステム内の他のセカンダリ送信局(例えば、60−2および60−2)に通知して、他のセカンダリ送信局に使用させることもできる。また、各セカンダリ送信局に通知する送信停止区間に関する情報は、送信停止区間の開始時間、送信停止区間長、送信停止区間が周期的に設定される場合はその周期、または送信停止区間のオフセット情報等が想定される。送信停止区間に関する情報は、送信停止区間を把握できる情報である。
【0090】
本実施形態におけるモニタリング局70の構成は、基本的には、第2の実施形態のモニタリング局32の構成(
図5)と同じであるが、受信レベル測定部(モニタリング局32における受信レベル測定部326)と、与干渉推定部(モニタリング局32における与干渉推定部327)の機能が異なる。以下、モニタリング局70については、
図5を参照して説明するが、この場合、受信レベル測定部326を受信レベル測定部700と読み替え、与干渉推定部327を与干渉推定部710と読み替え、モニタリング結果生成部328をモニタリング結果生成部720と読み替える。
【0091】
受信レベル測定部700は、モニタリング対象の周波数帯域における受信電力を測定する際、全セカンダリ送信局(60−1、60−2および60−3)について送信区間と送信停止区間とに分けて、各区間の受信電力を個別に測定する。ここで、送信区間(時点t_1cから時点t_2cまで)における受信電力をP_totalとする。また、セカンダリ送信局60−1の送信停止区間(時点t_2cから時点t_3cまで)における受信電力をP_1_cとする。セカンダリ送信局60−2の送信停止区間(時点t_4cから時点t_5cまで)における受信電力をP_2_cとする。セカンダリ送信局60−3の送信停止区間(時点t_6cから時点t_7cまで)における受信電力をP_3_cとする。受信レベル測定部700は、上記のP_total、P_1_c、P_2_c、およびP_3_cを与干渉推定部710に出力する。
【0092】
与干渉推定部710は、入力された各受信電力(P_total、P_1_c、P_2_c、およびP_3_c)を使用して(式4)を実行することにより、セカンダリ送信局(60−1、60−2および60−3)のそれぞれの与干渉量P’_i_c(i=1、2、3)を計算する。
【0093】
また、CIRを算出するために、プライマリ信号の受信電力(P_primary)を求める場合は、与干渉推定部において(式5)が実行される。
【0094】
与干渉推定部710が算出した与干渉量またはCIRは、モニタリング局70のモニタリング結果生成部720に送信され、また、測定結果、推定結果または送信出力値として各セカンダリ送信局(60−1、60−2および60−3)およびスペクトルマネージャ34に送信される。
【0095】
各セカンダリ送信局(60−1、60−2および60−3)は、モニタリング局70から送信された個別の与干渉量を、セカンダリ送信局ごとの送信制御に使用することができる。また、スペクトルマネージャ34は、モニタリング局から送信された個別の与干渉量を使用することにより、与干渉量の大きなセカンダリ送信局の送信電力を低下させる(または、送信を停止させる)、あるいは与干渉量の少ないセカンダリ送信局の送信電力を増加させる(または、未だ送信を行なっていないセカンダリ送信局に送信を許可する)ような制御を行なうことができる。
【0096】
以上説明した第4の実施形態によれば、モニタリング局は、セカンダリ送信局ごとの与干渉量を推定できる。その理由は、プライマリシステムと同一の周波数帯域を使用するセカンダリシステム内の複数のセカンダリ送信局に対して割り当てられる送信停止区間が、時間領域で異なるからである。セカンダリ送信局の個別の与干渉量推定値を使用することにより、各セカンダリ送信局において有効に送信制御を行なうことができる。
【0097】
なお、上記の説明によれば、各セカンダリ送信局の送信停止区間は異なる時間に割り当てられるが、同期した送信停止区間が含まれるような時間配置とすることも可能である。例えば、送信停止区間を
図13に示す時間配置とすることができる。
図13において、時点t_2dから時点t_3dまでは、セカンダリ送信局(60−1、60−2および60−3)間で同期した送信停止区間である。一方、時点t_4dから時点t_5dまでは、セカンダリ送信局60−1の送信停止区間であり、時点t_6dから時点t_7dまでは、セカンダリ送信局60−2の送信停止区間である。この場合、モニタリング局の受信レベル測定部700は、送信区間と各送信停止区間における受信電力を測定する。ここで、時点t_1dから時点t_2d迄における受信電力をP_totalとし、時点t_2dから時点t_3d迄における受信電力をP_syncとし、時点t_4dから時点t_5d迄における受信電力をP_1_dとし、時点t_6dから時点t_7d迄における受信電力をP_2_dとする。与干渉推定部710は、各受信電力(P_total、P_sync、P_1_dおよびP_2_d)を使用して(式6)および(式7)を計算することにより、各セカンダリ局(60−1、60−2および60−3)の与干渉量P’_i_d(i=1、2、3)を計算する。
【0099】
上記の説明の通り、本実施形態によれば、セカンダリ送信局間で同期した送信停止区間を部分的に使用していても、各セカンダリ送信局の与干渉量を個別に算出することができる。また、各セカンダリ送信局での送信停止区間が一部重複する場合においても、この例と同様に、送信停止区間が重複している時間と重複していない時間とに対して個別に受信レベルを測定することにより、各セカンダリ送信局の与干渉量を個別に算出することができる。
(第5の実施形態)
上記の第2〜第4の実施形態によれば、モニタリング局の受信レベル測定部が送信停止区間と送信区間における受信レベルを測定し、与干渉推定部が受信レベル測定値を使用して与干渉量を推定する。本実施形態においては、さらに信号の受信レベルの時間変動を考慮した形態について説明する。ただし、前述の実施形態の構成と同じ構成については、説明を明瞭にするために、その説明を省略する。
【0100】
図14は、第2の実施形態のセカンダリ送信局30のように、測定区間内に一つの送信停止区間を設定した場合の信号の時間構成例を示す図である。また、
図15は、このときに、信号レベルが時間変動を伴った場合のモニタリング局における受信電力の例を示す。
図14において、受信レベル測定部の測定区間は、時点t_1eから時点t−3eまでの区間として設定される。その区間のうち、時点t_1eから時点t−2eまでの区間は送信停止区間として、また時点t_2eから時点t−3e間での区間は送信区間として設定される。このような信号の時間設定のときに、送信停止区間と送信区間のそれぞれにおいて受信レベル測定部が測定した受信電力の区間ごとの平均が
図15に示される。
【0101】
ここで、セカンダリ送信局30の信号電力およびプライマリ送信局10の信号電力の双方は、時間的に変動している。信号レベルの時間変動の原因として、例えば、フェージングが考えられる。フェージングによる信号レベルの変動がある場合、送信停止区間におけるプライマリ送信局10の信号電力と送信区間内におけるプライマリ送信局10の信号電力との間に差分が発生する可能性がある。第2〜第4の実施形態によれば、送信区間におけるプライマリ送信局10の信号電力および雑音電力が、送信停止区間におけるプライマリ送信局10の信号電力および雑音電力とそれぞれ同程度のレベルである事実を利用して、送信区間における受信電力から送信停止区間における受信電力を減ずることにより、与干渉量を算出する。しかし、上記の信号電力間の差分が大きい場合、与干渉量の推定精度が劣化する。
【0102】
本実施形態によれば、上記の時間変動の影響を抑えるように複数の送信停止区間を設定する構成を採用する。なお、以下の説明では、本実施形態におけるセカンダリ送信局をセカンダリ送信局80とする。セカンダリ送信局80の構成は、第2の実施形態のセカンダリ送信局30の構成(
図4)と同じである。従って、セカンダリ送信局80の説明は、
図4を参照して、行なう。また、以下の説明では、本実施形態におけるモニタリング局をモニタリング局90とする。モニタリング局90の構成は、第2の実施形態のモニタリング局32の構成(
図5)と同じである。従って、モニタリング局90の説明は、
図5を参照して、行なう。
【0103】
図16は、第5の実施形態におけるセカンダリ送信局80の送信信号の時間構成例を示し、具体的には測定区間内に複数の送信停止区間を設定した場合を示す。
図16において、送信停止区間として二つの区間が設定される。一つは、時点t_1fから時点t_2fまでの送信停止区間であり、他の一つは、時点t_3fから時点t_4fまでの送信停止区間である。上記のように、セカンダリ送信局80において、複数の送信停止区間が設定される。もちろん、第5の実施形態において、配置される送信停止区間は、2つに限定されず、3つ以上設定することもできる。
【0104】
図17は、
図16に示した信号の時間構成の場合に、モニタリング局90の受信電力の例を示す。モニタリング局90の受信レベル測定部900(
図5参照)は、各送信停止区間#1および#2と各送信区間#1および#2とにおいて、受信電力を測定する。
図17において、送信停止区間#1は、時点t_1fから時点t_2fまでの区間であり、送信停止区間#2は、時点t_3fから時点t_4fまでの区間である。また、
図17において、送信区間#1は、時点t_2fから時点t_3fまでの区間であり、送信区間#2は、時点t_4fから時点t_5fまでの区間である。ここで、送信停止区間#1における受信電力をP_1_OFFとし、送信停止区間#2における受信電力をP_2_OFFとし、送信区間#1における受信電力をP_1_ONとし、送信区間#2における受信電力をP_2_ONとする。受信レベル測定部900は、各受信電力を測定した後に、送信停止区間の受信電力の平均値、および送信区間の受信電力の平均値を算出する。例えば、
図17の場合、送信停止区間における平均受信電力は、(P_1_OFF+P_2_OFF)/2であり、送信区間における平均受信電力は、(P_1_ON+P_2_ON)/2である。モニタリング局90の与干渉推定部910(
図5参照)は、受信レベル測定部900が算出した送信停止区間の平均受信電力および送信区間における平均受信電力を使用して(式3)を実行することにより、平均電力の差分値を算出し、この差分値を与干渉量とする。
【0105】
以上説明した第5の実施形態では、測定区間内に複数の送信停止区間を設定し、各送信停止区間における受信電力の平均値と各送信区間における受信電力の平均値とに基づき、与干渉量を算出する。これにより、信号の受信レベルが時間変動する場合においても、複数の送信停止区間についての平均受信電力が送信区間内におけるプライマリ信号電力であると推定することにより、時間変動により発生する差分(誤差)を小さくすることができる。従って、与干渉量の推定精度を向上できる。
【0106】
以上説明した第1から第5の実施形態によれば、プライマリシステム(他の無線システム)の構成を変更せずに、セカンダリシステム(自無線システム)からプライマリシステムへの与干渉を、実環境に則して且つ精度良く把握することが、少なくとも、可能である。
【0107】
なお、以上説明した第1から第5の実施形態において、受信レベル(例えば、受信電力)を、直接測定する以外に、信号に固有な特徴量から推定することも可能である。例えば、セカンダリ送信局の送信信号にパイロット信号が含まれる場合は、パイロット信号のスライディング相関により算出した相関値を使用して推定することもできる。具体的には、実際に受信したパイロット信号と既知パイロット信号とのスライディング相関により相関値を計算して最大相関値を求め、その最大相関値からパイロット信号の受信電力を推定し、さらに総受信電力(パイロット信号とデータ信号との合計値)を推定することもできる。ここで、パイロット信号の受信電力は、最大相関値とパイロット信号の受信電力との対応関係を表すテーブルを予め備え、求めた最大相関値をキーにテーブルを検索することにより、算出することができる。
【0108】
図18は、スライディング相関を説明するための概念図である。例えば、セカンダリ送信局の送信信号がLTE(Long Term Evolution)下り信号の場合、セカンダリ送信局は、モニタリングの依頼先であるモニタリング局に対して、自分のセルID(Identification)を通知する。モニタリング局は、通知されたセルIDに対応したRS(Reference Signal:チャネル推定等に使用される既知のパイロット信号であって、セルIDに対応付けられている。)を生成し、さらに、これを時間領域に変換する。
【0109】
(式8)に示す計算式により、時間領域変換後のRS信号の複素共役(i
*p(k))と受信信号(y(n+k))とのスライディング相関から最大相関値Tmaxを算出し、最大相関値をキーとして上記テーブルを検索して、パイロット受信電力を求める。なお、(式8)において、kは時間領域のRS系列長を示す。モニタリング局は、セカンダリ送信局に対し、求めたパイロット受信電力値を送信する。また、セカンダリ送信局は、データ部まで含めた総送信電力とパイロットとの送信電力比と、モニタリング局から送信されたパイロット受信電力値とを使用して、モニタリング局における総受信電力(すなわち、与干渉量)を推定することができる。
【0110】
また、以上説明した第1から第5の実施形態において、プライマリシステムとセカンダリシステムとは、異なるRAT(Radio Access Technology)とすることもできるし、同一のRATとすることもできる。異なるRATの場合の例として、例えば、前述したTV放送システムとセルラーシステムとの組み合わせが挙げられる。同一のRATの場合の例として、例えば、プライマリシステムがマクロセル、セカンダリシステムが、その中に設定されたフェムトセルである場合が挙げられる。
【0111】
なお、以上説明した第1〜第5の実施形態は、所定のハードウェア、例えば、回路により具現化される。
【0112】
また、以上説明した第1〜第5の実施形態は、制御プログラムに基づいて、図示されないコンピュータ回路(例えば、CPU(Central Processing Unit))によって制御されて動作することができる。この場合、それらの制御プログラムは、例えば、装置またはシステム内部の記憶媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)またはハードディスク等)、あるいは、外部の記憶媒体(例えば、リムーバブル媒体、リムーバブルディスク等)に記憶され、上記コンピュータ回路により読み出されて実行される。
【0113】
前述した実施形態は、当業者が本発明を製造できるようにするために、また使用できるようにするために、提供される。また、これらの実施形態への数多くの変更は、当業者にとって明白であり、ここにおいて定義された一般原理および具体例は、発明の範囲内で他の実施形態に適用可能である。そのため、本発明は、ここに記載された実施形態に限定されず、請求の範囲およびその等価の範囲により定義される最大限広い範囲を与えられる。
【0114】
なお、発明者は、審査段階で請求の範囲が修正されたとしても、請求の範囲に記載され
た発明と等価なすべての発明を保有することを付言する。
この出願は、2010年9月22日に出願された日本出願特願2010−211486を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。