特許第5821954号(P5821954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821954
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】電子機器、構造体、及び、ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20151104BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20151104BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20151104BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20151104BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   H05K9/00 P
   H05K7/20 B
   H05K9/00 U
   H05K3/46 Z
   H05K3/46 Q
   H05K3/46 U
   H05K3/46 N
   H01L23/36 Z
   H01L23/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-519352(P2013-519352)
(86)(22)【出願日】2012年4月11日
(86)【国際出願番号】JP2012002516
(87)【国際公開番号】WO2012169104
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-130358(P2011-130358)
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「マイクロ波帯、ミリ波帯の利用拡大のための機器雑音抑制技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】笠原 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋尾 博
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−283768(JP,A)
【文献】 特開2009−100168(JP,A)
【文献】 特開2010−199881(JP,A)
【文献】 特開2011−040742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01L 23/00
H01L 23/36
H05K 3/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の内層、または、表面に設けられた導体プレーンと、
前記基板に実装された電子回路と、
前記電子回路の上面に取り付けられ、平面視で前記電子回路と重ならない部分を有し、前記導体プレーンと対峙する、導電性の材料で構成されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクの前記電子回路と接する面で前記ヒートシンクと接続するとともに、前記導体プレーンに向かって延伸する導体ビアと、
前記導体ビアと接続し、前記導体プレーンと対峙して延伸するスタブと
を有する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ヒートシンクの前記電子回路と接する面上であって、前記電子回路と接する領域を除く領域に形成された誘電体層を有し、
前記導体ビアは、前記誘電体層の内部に形成され、
前記スタブは、前記誘電体層の内部又は表面に形成される電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
1つの前記導体ビアに、当該導体ビアを起点として延伸する複数の前記スタブが接続している電子機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記導体ビアは複数設けられ、
第1の前記導体ビアと接続する第1の前記スタブの長さと、第2の前記導体ビアと接続する第2の前記スタブの長さは異なる電子機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器において、
放射ノイズを抑制したい電磁波の周波数に対する波長をλとした場合、
平面視で、前記ヒートシンクの外縁部からの距離がλ/4未満である前記導体ビアを複数有し、
平面視で、第1の前記導体ビアからλ/2未満の距離に、前記ヒートシンクの外縁部からの距離がλ/4未満である他の前記導体ビアが存在する電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器において、
前記放射ノイズを抑制したい電磁波の周波数は、2.4GHz帯及び/又は5GHz帯である電子機器。
【請求項7】
内層、または、表面に導体プレーンを有する基板に実装された電子回路の上面に取り付けられるヒートシンクの前記電子回路と接する面における前記電子回路と接する領域を除く領域に取り付けられる構造体であって、
前記ヒートシンクに取り付けられた状態で、前記ヒートシンクの前記電子回路と接する面で前記ヒートシンクと接続する導体ビアと、
前記導体ビアと接続し、前記ヒートシンクが前記基板に実装された前記電子回路の上面に取り付けられた状態で、前記導体プレーンと対峙するように延伸しているスタブと、
を有する構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の構造体において、
誘電体層をさらに有し、
前記導体ビアは、前記誘電体層の内部に設けられ、
前記スタブは、前記誘電体層の内部又は表面に設けられている構造体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の構造体において、
1つの前記導体ビアに、当該導体ビアを起点として延伸する複数の前記スタブが接続している構造体。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の構造体において、
前記導体ビアは複数設けられており、
第1の前記導体ビアと接続する第1の前記スタブの長さと、第2の前記導体ビアと接続する第2の前記スタブの長さは異なる構造体。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の構造体において、
放射ノイズを抑制したい電磁波の周波数に対する波長をλとした場合、
前記ヒートシンクに取り付けられた状態における平面視で、
前記ヒートシンクの外縁部からの距離がλ/4未満となる前記導体ビアを複数有し、
第1の前記導体ビアからλ/2未満の距離に、前記ヒートシンクの外縁部からの距離がλ/4未満である他の前記導体ビアが存在する構造体。
【請求項12】
請求項11に記載の構造体において、
前記放射ノイズを抑制したい電磁波の周波数は、2.4GHz帯及び/又は5GHz帯である構造体。
【請求項13】
内層、または、表面に導体プレーンを有する基板に実装された電子回路の上面に取り付けられるヒートシンクであって、
前記電子回路と接する面における前記電子回路と接する領域を除く領域に、請求項7から12のいずれか1項に記載の構造体が取り付けられたヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、構造体、及び、ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に搭載されるIC・LSI等の電子回路は、高速・高機能化を実現するために高集積化が進んでおり、そのため、大電流を消費する。この大電流による発熱により、電子回路が許容温度を超えるのを防止するため、しばしば電子回路上にヒートシンクが設けられる。ヒートシンクは、例えば金属で構成され、電子回路で発生した熱を効率よく大気中に放熱し、電子回路の温度上昇を抑える。
【0003】
こうしたヒートシンクを備えた場合、電子回路で発生した電磁波の高周波成分がヒートシンクと結合し、ヒートシンクが共振状態となるときに、特に強い電磁放射ノイズ(以下、「放射ノイズ」)が大気中に放射される問題がある。放射ノイズは、機器の無線性能の低下をもたらすため、放射ノイズを抑制する手段が望まれる。
【0004】
上記放射ノイズの問題を解決するために、電子回路とヒートシンクの間に電磁波吸収材料を挿入する手法がある。しかし、従来の電磁波吸収材料で十分な電磁波吸収効果を得るためには、電磁波吸収材料をある程度の厚みにしなくてはならなかった。そのため、電子回路とヒートシンクとの間の熱的接触の低下が起こり、電子回路を十分に冷却できないという課題があった。
【0005】
特許文献1には、上記問題の影響を緩和する電磁波吸収材料が記載されている。図24に示すように、この電磁波吸収材料1はシート状の形状をなしており、比透磁率の高い複合磁性材料よりなる第1層11と、比誘電率の高い複合誘電材料よりなる第2層12とを積層した構造になっている。
【0006】
特許文献1には、当該電磁波吸収材料1によれば、シートを薄型化しても十分な電磁波対策効果を得られると記載されている。そして、シートを薄型化できるため、熱的接触の低下を低減できると記載されている。また、電磁波の吸収周波数の調整は、複合磁性材料を構成する磁性材料の配合比調整による比透磁率制御と、複合誘電材料を構成する誘電材料の配合比調整による比誘電率制御により行われることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、放射ノイズの問題を解決する別の手法が記載されている。すなわち、図25に示すように、共通電位の内層パターン121とヒートシンク3を接続することにより、内層パターン121、取り付けパターン13、取り付けスタッド14、ヒートシンク3を等電位にすることが可能になり、静電シールド(遮蔽)効果により放射ノイズを減衰することのできるヒートシンク装置が得られるとしている。また、取り付けパターン13のパッド直径と取り付けスタッド14の直径をほぼ同等にすることにより、省スペース化を実現し、高密度実装に適したヒートシンク装置が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−221064号公報
【特許文献2】特開2007−258385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、及び、特許文献2の技術には、以下の課題が存在する。
【0010】
まず、特許文献1の技術の課題を述べる。第一の課題は、ヒートシンクと電子回路の間に電磁波吸収材料を挿入する特許文献1の技術の場合、電磁波吸収材料がヒートシンク−電子回路間の熱的接触の低下を引き起こすという問題を、本質的には解決していないことである。すなわち、電磁波吸収材料の厚さを薄くすることで熱的接触の低下を軽減できたとしても、ヒートシンク−電子回路間には電磁波吸収材料が存在するため、依然、電磁波吸収材料に起因した熱的接触の低下は残存する。
【0011】
第二の課題は、電磁波抑制効果のある周波数を自由に制御できないことである。特許文献1に記載の電磁波吸収シートでは、上述の通り、各層を構成する磁性材料配合比、誘電材料配合比を制御することにより適用周波数の制御が可能であるとしている。しかし、磁性材料の配合比、誘電体材料の配合比は十分な柔軟性、電磁波減衰効果を得る目的から制限を受ける。そのため、実際に利用可能な周波数は700MHzから900MHz程度と考えられ、例えば近年無線通信で用いられているGHz帯のような高周波数帯には対応できない。
【0012】
次に、特許文献2の技術の課題を述べる。特許文献2では、省スペース化を実現できるとしている。しかし、取り付けスタッド14が内層までのスルーホールを備える取り付けパターン13を必要とすることが原因となり、多層プリント基板11の内層にまで取り付けスペースが必要となる。通常、基板内層の信号層には高密度に配線が配設される層が存在するため、このことは望ましくない。
【0013】
本発明は、基板とヒートシンクとを備える電子機器であって、ヒートシンクと電子回路間の熱的接触の低下を引き起こすことなく、任意の周波数の放射ノイズを抑制可能な電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、基板と、前記基板の内層、または、表面に設けられた導体プレーンと、前記基板に実装された電子回路と、前記電子回路の上面に取り付けられ、平面視で前記電子回路と重ならない部分を有し、前記導体プレーンと対峙する、導電性の材料で構成されたヒートシンクと、前記ヒートシンクの前記電子回路と接する面で前記ヒートシンクと接続するとともに、前記導体プレーンに向かって延伸する導体ビアと、前記導体ビアと接続し、前記導体プレーンと対峙して延伸するスタブとを有する電子機器が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、内層、または、表面に導体プレーンを有する基板に実装された電子回路の上面に取り付けられるヒートシンクの前記電子回路と接する面における前記電子回路と接する領域を除く領域に取り付けられる構造体であって、前記ヒートシンクに取り付けられた状態で、前記ヒートシンクの前記電子回路と接する面で前記ヒートシンクと接続する導体ビアと、前記導体ビアと接続し、前記ヒートシンクが前記基板に実装された前記電子回路の上面に取り付けられた状態で、前記導体プレーンと対峙するように延伸しているスタブと、を有する構造体が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、内層、または、表面に導体プレーンを有する基板に実装された電子回路の上面に取り付けられるヒートシンクであって、前記電子回路と接する面における前記電子回路と接する領域を除く領域に、上記構造体が取り付けられたヒートシンクが提供される。
【0017】
従来の電子機器の場合、ヒートシンクと導体プレーンが平行平板導波路となり端部開放の空洞共振器として振る舞うことで、放射ノイズが生じる可能性がある。
【0018】
上記問題を解決するため、本発明では、スタブが導体プレーンをリターンパスとするマイクロストリップラインを形成し、オープンスタブとして動作する。また、等価回路モデルにおいて、平行平板導波路は、直列インピーダンス部であるインダクタンスと、並列アドミタンス部であるキャパシタンスとで記述される。
【0019】
本発明の電子機器は、平行平板導波路に、オープンスタブと、導体ビアによるインダクタンスとを直列に並列アドミタンスとして付加した単位構造を有する。つまり、当該単位構造は、直列インピーダンス部(平行平板導波路のインダクタンス成分)と、並列アドミタンス部(「平行平板線路のキャパシタンス成分」と、「導体ビアのインダクタンス及びオープンスタブが直列に接続された成分」と、が並列に接続されたもの)を含んだ等価回路で記述される。このような等価回路中を伝搬する電磁波は、並列アドミタンス部がインダクタンス性となる周波数帯において進行するにつれて振幅が減衰していく。つまり、並列アドミタンス部がインダクタンス性となる周波数において、本構造は電磁バンドギャップ(EBG)構造として振る舞う。これより、電子回路からの電磁ノイズによる空洞共振器の共振現象は、単位構造を配置することにより抑制され、ヒートシンクからの放射ノイズを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板とヒートシンクとを備える電子機器であって、ヒートシンクと基板間の熱的接触の低下を引き起こすことなく、任意の周波数の放射ノイズを抑制可能な電子機器が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
上述した目的、および、その他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、および、それに付随する以下の図面によって、さらに明らかになる。
図1】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図3】本実施形態のスタブの平面形状の一例を示す平面図である。
図4】本実施形態のスタブの平面形状の一例を示す平面図である。
図5】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図6】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図7】本実施形態の電子機器の効果を説明するための図である。
図8】本実施形態の電子機器の製造方法の一例を示す断面工程図である。
図9】本実施形態の単位構造の等価回路図である。
図10】本実施形態の電子機器の効果を説明するための図である。
図11】本実施形態のスタブの平面形状の一例を示す平面図である。
図12】本実施形態のスタブの平面形状の一例を示す平面図である。
図13】本実施形態の単位構造の等価回路図である。
図14】本実施形態の単位構造の等価回路図である。
図15】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図16】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図17】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図18】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図19】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図20】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図21】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図22】本実施形態の電子機器の一例を示す断面図である。
図23】本実施形態の単位構造の等価回路図である。
図24】従来例の図である。
図25】従来例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態である電子機器の断面図である。図1図2のB−B´間の断面図であり、図2図1のA−A´間の断面図である。なお、図1及び図2に示すようにx、y及びz軸を定義する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の電子機器は、基板101と、電子回路102と、ヒートシンク103とを有する。IC・LSI等の電子回路102は基板101上に実装され、ヒートシンク103は電子回路102上に取り付けられる。
【0026】
基板101は、電子回路102が実装される側の表面、又は、内層に、例えば銅、アルミ等で構成される導体プレーン104を備える。導体プレーン104は、ヒートシンク103と対峙するように設けられる。図示する例の場合、導体プレーン104は、x−y平面と平行に設けられている。なお、導体プレーン104を基板101の内層に設ける場合、導体プレーン104を基板101内のどの層に形成するかは特段制限されない。例えば、基板101の表層付近に導体プレーン104を形成することもできる。具体的には、基板101の表面に形成されたレジスト層の直下の層に導体プレーン104の層を形成してもよい。その他、当該例よりも、基板101内のより下位層に導体プレーン104を形成することもできる。すなわち、基板101内に形成された信号線の層等よりも下位層に導体プレーン104の層を形成してもよい。このように、基板101の積層構造は特段制限されないが、以下で説明するスタブ106付近に、配線等の導電材料で構成された層が位置しないようにするのが好ましい。
【0027】
ヒートシンク103は金属等の導電性の材料で構成される。ヒートシンク103は、平面視で電子回路102と重ならない部分を有し、当該部分は、導体プレーン104と対峙する。
【0028】
ヒートシンク103の電子回路102と接する側の面(以下、「第1の面」)には、電子回路102と接する領域以外の領域の少なくとも一部に、誘電体の層107(以下、「誘電体層107」)が形成されている。なお、銅等で構成される導電層(図示せず)を介して、第1の面に誘電体層107が形成されてもよい。このようにすれば、以下で説明する導体ビア105とヒートシンク103との接続が十分に確保される。ヒートシンク103の第1面の形状は特段制限されず、図2に示す正方形の他、長方形、その他の多角形、円形などあらゆる形状とすることができる。
【0029】
誘電体層107の内部には、ヒートシンク103と接続する導体ビア105が少なくとも1つ存在する。ヒートシンク103と誘電体層107の間に導電層(図示せず)が存在する場合には、導体ビア105は当該導電層を介して、ヒートシンク103と接続される。すなわち、導体ビア105は、ヒートシンク103の電子回路102と接する面で、ヒートシンク103と接続する。そして、導体ビア105は、導体プレーン104に向かって延伸する。なお、導体ビア105の一端が導体プレーン104と接することはない。
【0030】
誘電体層107のヒートシンク103と接する面と反対側の面(図1中、下側の面)、又は、誘電体層107の内部には、導体プレーン104と対峙するように少なくとも1つのスタブ106が形成されている。
【0031】
スタブ106は、導電性の材料で構成され、一端側を介して導体ビア105と接続し、導体プレーン104と対峙して延伸している。図2に示すスタブ106は、一端を介して導体ビア105と接続し、x−y平面と平行に直線状に延伸している。
【0032】
なお、スタブ106の形状は直線状に限定されず、以下で説明する本実施形態の本質的な効果に影響を与えない範囲で、あらゆる形状を選択できる。例えば、図3に示すようなスパイラル形状であってもよいし、図4に示すようなミアンダ形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、スタブ106を複数設ける場合、複数のスタブ106の平面形状はすべて同じでもよいし、異なるものが混在してもよい。このようにしても、以下で説明する本実施形態の本質的な効果に影響を与えない。かかる場合、スタブ106の配置の自由度が増すので、スタブ106を配置する領域がどのような形状・大きさであっても、より多くのスタブ106を配置することが可能となる。例えば、図5に示すように、基板101の表面上に電子部品110が存在し、かつ、当該電子部品110がスタブ106を配置する高さにまで到達しており、スタブ106の配置の妨げになるような場合であっても、このような電子部品110を避けてスタブ106を配置できる。
【0033】
図1及び図2に戻り、本実施形態の電子機器は、スタブ106と、当該スタブ106と接続する導体ビア105と、導体プレーン104の当該スタブ106と対峙する領域を含む一部領域と、ヒートシンク103の当該スタブ106と対峙する領域を含む一部領域とを有する単位構造109を少なくとも1つ有する。なお、電子機器が単位構造109を複数有する場合、単位構造109は、一定の規則性を持って繰り返し(例えば周期的に)配置されてもよいが、このような配置に限定されない。
【0034】
ここで、第1の面をz軸方向へ平行に導体プレーン104まで移動させたときに当該面が通過する領域を領域(i)108と名付ける(図1参照)。
【0035】
図6は、図2のC−C´間の断面図の一部(単位構造109付近)を示している。本実施形態においては、スタブ106の幅wと、スタブ106と導体プレーン104間の距離hの比(h/w)を小さくするのが好ましく、具体的には、h/wを1以下とするのが好ましい。ここで、図7に、電磁バンドギャップ周波数帯のh/w依存性を等価回路をもとにプロットしたグラフの一例を示す。図7よりわかる通り、本実施形態の電子機器は、h/wが小さくなると電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯域が広くなる。つまり、h/wが小さい値になるように設計することにより、広い周波数帯域で放射ノイズを抑制できる。
【0036】
次に、本実施形態の電子機器の製造方法の一例について、図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態の製造工程の一例を示す断面図である。
【0037】
まず、(a)に示すように、両面に銅箔111及び112が形成された誘電体層107(誘電体基板)を用意する。次に、(b)に示すように、ドリルを用いて、銅箔111及び112、及び、誘電体層107を貫通する貫通穴を形成し、当該貫通穴の内部に銅をメッキして導体ビア105を形成することで、(c)に示す状態を得る。なお、導体ビア105は、銅箔111及び112と接続している。
【0038】
その後、エッチングにより銅箔112に所望のパターンを形成することで、スタブ106を形成する。次に、電子回路102とヒートシンク103とが接触する領域を確保するために、銅箔111、スタブ106、及び、誘電体層107の一部領域をくりぬき、(d)の状態を得る。その後、(e)に示すように、(d)に示す構造体を、ヒートシンク103の底面に貼り付ける。当該貼付は、導電性の接着剤、テープ等を用いて行うことで、銅箔111を介した導体ビア105とヒートシンク103との接続が確保される。
【0039】
その後、(f)に示すように、基板101を準備する。基板101は、電子回路102が実装される側の表面、又は、内層に導体プレーン104を備え、所定位置に電子回路102が搭載されている。当該電子回路102に、(e)に示す構造体を取り付けることにより、本実施形態の電子機器が得られる。
【0040】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0041】
図9に、本実施形態の電子機器が有する単位構造の等価回路図を示す。本実施形態の電子機器は、ヒートシンク103の第1の面と、基板101に設けられた導体プレーン104とが、平行平板導波路を形成する。また、スタブ106は、導体プレーン104をリターンパスとするマイクロストリップラインを形成し、オープンスタブとして機能する。等価回路の直列インピーダンス、並列アドミタンスは、それぞれ次式(1)、(2)で表される。なお、式(2)に含まれるβは、式(3)で表わされる。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
【数3】
【0045】
j: 虚数単位
ω: 角周波数
ppw: 平行平板導波路インダクタンス
ppw: 平行平板導波路キャパシタンス
os: オープンスタブ特性インピーダンス
β: オープンスタブの位相定数
l: オープンスタブのスタブ長
via: 導体ビアインダクタンス
εeff: オープンスタブの実効比誘電率
ε: 真空中の誘電率
μ: 真空中の透磁率
Z: 伝送線路の直列インピーダンス
Y: 伝送線路の並列アドミタンス
【0046】
また、一次元伝送線路の電磁波の電場成分の伝搬は、電磁波の進行方向をx軸方向とし、時間依存因子を除いて次式(4)で表される。なお、式(4)に含まれるγは、式(5)で表わされる。
【0047】
【数4】
【0048】
【数5】
【0049】
E: 一次元伝送線路の電磁波の電場成分
: 一次元伝送線路の電磁波の電場成分の振幅
γ: 一次元伝送線路中の伝搬定数
【0050】
式(1)から(5)より、式(2)がインダクタンス性(Im[Y]<0)である周波数では、式(4)はx軸正方向に進行するにつれて減衰する電場となり、本構造が電磁バンドギャップとしての特性を持つことが分かる。つまり、本構造は、式(2)がインダクタンス性となる周波数帯にて電磁バンドギャップ構造として振る舞う。電磁バンドギャップ構造中では、電磁波の伝搬が禁止されるため、共振現象を抑える用途に用いることができる。これより、ヒートシンク103からの放射ノイズを抑えるのに利用できる。
【0051】
また、電磁バンドギャップ構造となる周波数帯は、式(2)より、並列アドミタンス部を構成するスタブ106のスタブ長を調整することにより調整可能であることが分かる。つまり、スタブ長の調整により、本構造が電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯を制御できる。
【0052】
図10に、本実施形態の電子機器と、比較例の電子機器とを電磁界解析により解析し、放射ノイズ量を比較したグラフを示す。「比較例1」は、本実施形態が有する上記単位構造を有さない点を除いて、本実施形態の電子機器と同様の構成となっている。「比較例2」は、本実施形態が有する誘電体層107、導体ビア105及びスタブ106を有さない点を除いて、本実施形態の電子機器と同様の構成となっている。
【0053】
グラフから分かる通り、本実施形態の電子機器(図中実線)が電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯(図中網掛け部)では、本実施形態の電子機器からの放射ノイズ量は、比較例1及び2の電子機器からの放射ノイズ量よりも少ないことが分かる。すなわち、本実施形態の電子機器によれば、放射ノイズ量を減らせることが分かる。
【0054】
以上説明した本実施形態の電子機器によれば、領域(i)108内における電磁波の伝搬を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態の場合、電子回路102とヒートシンク103の間に特別な材料を挿入する必要がないため、本質的にヒートシンク103の放熱性能を妨げることはない。
【0056】
また、本実施形態の場合、スタブ106の長さを調整することで、放射ノイズ抑制効果のある周波数を調整することができる。このため、任意周波数の放射ノイズ抑制に適用可能である。
【0057】
さらに、本実施形態の場合、基板101の内層に、特許文献2に記載の技術のような取り付けスペースを設ける必要がないので、省スペースで放射ノイズ抑制効果を実現可能である。
【0058】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、スタブと導体ビアとの関係が第1の実施形態と異なる。その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
図11及び図12は、本実施形態のスタブと導体ビアの関係を示す平面図である。第1の実施形態では、1つの導体ビア105に1つのスタブ106が接続していた(図2乃至図5参照)。これに対し、本実施形態では、1つの導体ビア105に、例えば2つのスタブ106及び106´を接続することができる(図11参照)。また、本実施形態では、1つの導体ビア105に、例えば3つのスタブ106、106´及び106´´を接続することもできる(図12参照)。さらに、本実施形態では、1つの導体ビア105に、4つ以上のスタブを接続することもできる。各スタブの平面形状は特段制限されず、あらゆる形状を選択することができる。
【0060】
なお、本実施形態の電子機器が複数の導体ビア105を備える場合、各導体ビア105に接続するスタブの数はすべて同じであってもよいし、異なる数が混在してもよい。また、1つのスタブのみが接続した導体ビア105が存在してもよい。
【0061】
また、1つの導体ビア105に接続する複数のスタブの中には、長さ(スタブ長)が異なるものが混在してもよい。例えば、1つの導体ビア105に接続する複数のスタブのすべての長さが異なってもよい。その他、1つの導体ビア105に接続する複数のスタブのすべての長さを同じにすることもできる。
【0062】
このような本実施形態の電子機器の製造方法は、第1の実施形態と同様にして実現することができる。すなわち、図8(c)に示す状態から銅箔112をエッチングしてスタブを形成する際のパターンを本実施形態に合わせて変更し、その他の工程は第1の実施形態と同様にすることで、本実施形態の電子機器を製造することができる。
【0063】
本実施形態の電子機器によれば、第1の実施形態と同様の作用効果に加えて、以下のような作用効果が実現される。
【0064】
本実施形態の単位構造109は、導体ビア105と、当該導体ビア105と接続する1つ以上のスタブと、導体プレーン104の当該1つ以上のスタブと対峙する領域を含む一部領域と、ヒートシンク103の当該1つ以上のスタブと対峙する領域を含む一部領域とを含んで構成される。
【0065】
ここで、図13に、図11に示すように1つの導体ビア105に2つのスタブ106及び106´が接続した単位構造の等価回路図を示す。また、図14に、図12に示すように1つの導体ビア105に3つのスタブ106、106´及び106´´が接続した単位構造109の等価回路図を示す。
【0066】
第1の実施の形態で説明した通り、本実施形態の構造が電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯は、スタブのスタブ長により調整可能である。本実施形態の場合、単位構造109の中に長さの異なるスタブを複数設けることができる。かかる場合、各スタブ長に対応した周波数帯において、電磁バンドギャップ構造として振る舞う。このような単位構造109により伝搬を抑制可能な放射ノイズの周波数帯は、各スタブ長に対応した周波数帯すべてを含んだ周波数帯となる。すなわち、本実施形態によれば、伝搬を抑制可能な放射ノイズの周波数帯が広くなる。なお、このような本実施形態の場合、伝播を抑制可能な放射ノイズの周波数帯は、連続的な範囲(例:1GHz〜5GHz)となる場合もあれば、間欠的な範囲(例:1GHz〜2.5GHzかつ3.5GHz〜5GHz)となる場合もある。
【0067】
また、単位構造内にスタブ長が同一のスタブが複数ある場合は、それらのスタブは、そのスタブ長に対応する電磁バンドギャップの帯域を広げる効果を持つ。つまり、より広い周波数帯において放射ノイズを抑制することが可能となる。
【0068】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、導体プレーン104を備えた基板101と、導体ビア105及びスタブ106が形成された誘電体層107とで挟まれた空間における構成が、第1及び第2の実施形態と異なる。その他の構成は第1又は第2の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
図15は、本実施形態の電子機器の一部を抽出した断面図である。第1及び第2の実施形態においては、導体プレーン104を備えた基板101と、導体ビア105及びスタブ106が形成された誘電体層107とで挟まれた空間に、空気で満たされた空隙が存在していた(図1参照)。これに対し、本実施形態では、当該空隙の一部又は全部を誘電体の層113で埋めている。
【0070】
このような本実施形態の電気機器の製造方法としては、例えば、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様にして図8(f)の状態を得た後、導体プレーン104とスタブ106との間に存在する空隙に、流動性を有する誘電体材料を流し込み、その後、固めることで形成してもよい。
【0071】
又は、図8(a)に示す両面に銅箔111及び112が形成された誘電体層107の厚さを、電子回路102の厚さと同等の厚さにすることで、図8(f)に示すように電子回路102上にヒートシンク103を取り付けると、上記空隙がなくなるように設計してもよい(図16参照)。かかる場合、図16に示すように、銅箔112をパターニングして形成されるスタブ106と、スタブ106が形成されていない領域との間に、スタブ106の厚さ分の段差が形成される。そして、当該段差の近傍には、わずかな空隙が残ることとなる。しかし当該空隙は十分に小さいものとなるので、以下で説明する本実施形態の作用効果を十分に実現することができる。
【0072】
なお、図16に示す例の場合、導体プレーン104は基板101の内部に形成され、導体プレーン104とスタブ106との間には、基板101の一部である誘電体の層が存在することとなる。すなわち、導体プレーン104とスタブ106とが接することはない。
【0073】
本実施形態の電子機器によれば、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果に加えて、以下のような作用効果が実現される。
【0074】
式(3)によれば、スタブが形成するオープンスタブの入力インピーダンスの周波数依存性は、オープンスタブの実効比誘電率が大きいほど、強くなる。つまり、図15に示した誘電体の層113に用いる物質として比誘電率の高い物質(例:LTCC(Low Temperature Cofired Ceramics)用誘電体セラミックス)を用いることにより、スタブ長lを長くすることなく電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯を低周波化することが可能になる。
【0075】
また、図16に示した構造においても、オープンスタブの実効誘電率は、空隙の占める体積が減少することにより真空の誘電率よりも大きくなる。これより、本実施形態の場合、第1及び第2の実施形態に示した単位構造の小型化が可能となる。結果、単位面積あたりに配置できる単位構造の数を増やすことが可能となる。
【0076】
<第4の実施形態>
以下、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、伝搬を抑制できる放射ノイズの周波数帯が異なる複数種類の単位構造109が配置されている点で、第1乃至第3の実施形態と異なる。その他の構成は第1、第2又は第3の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
図17及び図18は、本実施形態の電子機器の断面図であり、第1の実施形態の説明で利用した図2に相当する。なお、図17及び図18においては、単位構造109を簡易的に正方形で示している。
【0078】
図17に示す例の場合、第2の単位構造109´が電子回路102を囲むようにドーナツ状に配置され、その外周に、第1の単位構造109が電子回路102を囲むようにドーナツ状に配置されている。
【0079】
第1の単位構造109と第2の単位構造109´は、伝搬を抑制できる放射ノイズの周波数帯が異なる。このような構成を実現する手段としては、第1の単位構造109が有するスタブ106の長さと、第2の単位構造109´が有するスタブ106の長さを異なるものにする手段が考えられる。その他、各単位構造に含まれるスタブ106の数を異なるものにする手段も考えられる。なお、「伝搬を抑制できる放射ノイズの周波数帯が異なる」とは、完全に一致しないことを意味し、一部の周波数帯が重なってもよい。
【0080】
図18に示す例の場合、第1の単位構造109と第2の単位構造109´が交互に一列に、電子回路102を囲むようにドーナツ状に配置されている。
【0081】
なお、図17及び図18に示す例の場合、2種類の単位構造が配置されているが、3種類以上の単位構造を配置することも可能である。また、各種単位構造を配置する数は特段制限されず、1つ又は複数配置することができる。さらに、配置する単位構造の数は、種類ごとに異なっていてもよい。さらに、図17及び図18に示すように規則正しく単位構造を配置してもよいし、規則性を有さないようにランダムに単位構造を配置してもよい。
【0082】
本実施形態の電子機器の製造方法は、第1乃至第3の実施形態で説明した製造方法に準じて実現することができる。
【0083】
本実施形態の電子機器によれば、第1乃至第3の実施形態と同様の作用効果に加えて、以下のような作用効果が実現される。
【0084】
第1の実施形態で説明した通り、本実施形態の構造が電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯は、スタブのスタブ長により調整可能である。つまり、例えば、本実施形態の電子機器が有する複数種類の単位構造のスタブ長を単位構造ごとに異なるものとした場合、各単位構造は各々のスタブ長に対応した各々の電磁バンドギャップ特性を持つ。また、各単位構造が有するスタブの数を異なるものとした場合、各単位構造は各々のスタブの数及び長さに対応した各々の電磁バンドギャップ特性を持つ。
【0085】
このような異なる電磁バンドギャップ特性を有する複数種類の単位構造を有する本実施形態の電子機器によれば、複数種類の単位構造全体として、広い周波数帯を網羅した電磁バンドギャップ特性を実現することができる。結果、広い周波数帯において放射ノイズを抑制することが可能となる。なお、このような本実施形態の場合、伝播を抑制可能な放射ノイズの周波数帯は、連続的な範囲(例:1GHz〜5GHz)となる場合もあれば、間欠的な範囲(例:1GHz〜2.5GHzかつ3.5GHz〜5GHz)となる場合もある。
【0086】
<第5の実施形態>
以下、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、単位構造109の配置方法が、第1乃至第4の実施形態と異なる。その他の構成は第1、第2、第3又は第4の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
図19は、本実施形態の電子機器の断面図であり、第1の実施形態の説明で利用した図2に相当する。放射ノイズ抑制効果を得たい電磁波の周波数に対する波長をλとしたとき、ヒートシンク端部からの距離がλ/4未満の領域、好ましくはλ/8以下の領域を、領域(ii)114と名付ける。
【0088】
本実施形態では、領域(ii)114内に導体ビア105を有する単位構造109を複数有し、これら複数の単位構造109は以下のような関係を有して配置される。すなわち、領域(ii)114内に導体ビア105を有する複数の単位構造109の中の任意の1つを選んだ際、その単位構造109の導体ビア105から距離λ/2未満、好ましくはλ/4以内に、別の単位構造109に含まれる少なくとも1つの導体ビア105が位置する。当該導体ビア105は、領域(ii)114内に位置する。なお、図示するように、本実施形態では、領域(ii)114内に導体ビア105を有さない単位構造109も併せて有することもできる。
【0089】
図20に、本実施形態の電子機器の他の例を示す。当該電子機器は、図19を用いて説明したものと同様に構成されている。
【0090】
本実施形態の電子機器の製造方法は、第1乃至第4の実施形態と同様にして実現することができる。
【0091】
本実施形態の電子機器によれば、第1乃至第4の実施形態と同様の作用効果に加えて、以下のような作用効果が実現される。
【0092】
本実施形態によれば、領域(ii)114内に導体ビア105を有する単位構造により、導体ビア105を短絡端、ヒートシンク103の端部を開放端とする、λ/4共振を抑制できる。また、領域(ii)114内に導体ビア105を有する複数の単位構造の位置関係を、1つの導体ビア105からλ/2未満、好ましくはλ/4以内に他の導体ビア105を配置するように構成することで、導体ビア105を短絡端とするλ/2共振がヒートシンク103の端部付近で生じるのを抑制できる。
【0093】
つまり、本実施形態によれば、ヒートシンク103の端部付近において、波長λの電磁波を放射する原因となる共振を抑制できることになるため、大きな放射ノイズ抑制効果を得ることができる。
【0094】
なお、放射ノイズ抑制効果を得たい電磁波の周波数は設計的事項であるが、例えば2.4GHz帯、及び/又は、5GHz帯などが考えられる。
【0095】
<第6の実施形態>
以下、本発明の第6の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、ヒートシンク103の構造、及び、単位構造109の配置の仕方が、第1乃至第5の実施形態と異なる。その他の構成は第1、第2、第3、第4又は第5の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
図21は、本実施形態の電子機器の断面図であり、第1の実施形態の説明で利用した図2に相当する。本実施形態のヒートシンク103は、放射ノイズ抑制効果を得たい電磁波の周波数に対する波長をλとした時、ヒートシンク103の第1の面の外周の任意の2点を結ぶ線分の長さが、λ/2未満であるような底面を有する。例えば、ヒートシンク103の第1の面の形状が図21に示すような四角形である場合、対角線の長さはλ/2未満である。また、ヒートシンク103の第1の面の形状が円形である場合、当該円の直径はλ/2未満である。
【0097】
そして、本実施形態の電子機器は、ただ1つの単位構造を有する。
【0098】
本実施形態の電子機器の製造方法は、第1乃至第5の実施形態と同様にして実現することができる。
【0099】
本実施形態の電子機器によれば、第1乃至第5の実施形態と同様の作用効果が実現される。
【0100】
すなわち、本実施形態のヒートシンク103に設けられた単位構造は、必ず導体ビア105を短絡端とし、ヒートシンク103の端部を開放端とするλ/4共振を抑えるように動作する。そのため、ただ1つの単位構造で放射ノイズ抑制効果を実現することができる。
【0101】
<第7の実施形態>
以下、本発明の第7の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、単位構造109の構成が、第1乃至第6の実施形態と異なる。その他の構成は第1、第2、第3、第4、第5又は第6の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
図22は、本実施形態の電子機器の断面図であり、本実施形態の説明に必要な部分を抽出して示している。本実施形態の単位構造109は、スタブ106に代えて島状導体115を形成している点で、第1乃至第6の実施形態と異なる。単位構造109のその他の構成は、第1乃至第6の実施形態と同様である。
【0103】
島状導体115は、導体ビア105と接続し、導体プレーン104及びヒートシンク103と対峙している。島状導体115の平面形状は特段制限されず、正方形、長方形、その他の四角形、円形の他、あらゆる形状とすることができる。なお、複数の島状導体115を有する場合、それらの平面形状はすべて同一であってもよいし、異なる平面形状が混在していてもよい。
【0104】
本実施形態の電子機器の製造方法は、第1乃至第6の実施形態と同様にして実現することができる。
【0105】
本実施形態の電子機器によれば、第1乃至第6の実施形態と同様の作用効果が実現される。なお、図23に、本実施形態の単位構造の等価回路図を示す。 本実施形態の電子機器は、ヒートシンク103の第1の面と、基板101に設けられた導体プレーン104とが、平行平板導波路を形成する。また、島状導体115は、導体プレーン104と平行平板キャパシタンスを形成する。等価回路の直列インピーダンス、並列アドミタンスは、それぞれ次式(6)、(7)で表される。
【0106】
【数6】
【0107】
【数7】
【0108】
j: 虚数単位
ω: 角周波数
Lppw: 平行平板導波路インダクタンス
Cppw: 平行平板導波路キャパシタンス
Zos: オープンスタブ特性インピーダンス
Lvia: 導体ビアインダクタンス
Cpatch: 島状導体と導体プレーン間のキャパシタンス
Z: 伝送線路の直列インピーダンス
Y: 伝送線路の並列アドミタンス
【0109】
段落[0041]と同様の議論により、式(7)がインダクタンス性(Im[Y]<0)である周波数では、電磁バンドギャップ構造として振る舞うことが分かる。つまり、本実施形態の単位構造によれば、電磁バンドギャップ構造として振る舞う周波数帯は、島状導体115の大きさ、及び/又は、導体ビア105の長さ等を調整し、式(7)中のLvia、Cpatchを調整することで、調整可能である。
【0110】
この出願は、2011年6月10日に出願された日本特許出願特願2011−130358号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
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