特許第5821956号(P5821956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5821956-容量素子収納ユニット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5821956
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】容量素子収納ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/10 20060101AFI20151104BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20151104BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20151104BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20151104BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20151104BHJP
【FI】
   H01G1/02 C
   H01G1/08 A
   H01G4/38 A
   H02M3/00 Y
   H02M7/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-522383(P2013-522383)
(86)(22)【出願日】2011年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2011064707
(87)【国際公開番号】WO2013001595
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 啓太郎
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−194080(JP,A)
【文献】 特開2009−044920(JP,A)
【文献】 特開2001−326131(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/032273(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/08 − 2/10
H01G 4/224
H01G 4/38
H01G 9/00
H01G 9/08
H02M 3/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が高い金属等の導電材料で構成されるバスバで接続される複数の容量素子を収納し、前記複数の容量素子の間で温度が高くなる位置にスリット部が設けられる共通パッケージと、
内部に収納される要素を冷却するための冷却部を有する筐体と、
前記共通パッケージから前記筐体へ熱を伝えるために、前記スリット部において前記共通パッケージを前記筐体の内壁に対して接続固定するための固定部と、を備え
前記固定部は、熱伝導率が高い金属等の導電材料で構成される導電部を含み、
前記バスバが前記導電部に接続固定されていること
を特徴とする容量素子収納ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の容量素子収納ユニットにおいて、
前記固定部は、前記複数の容量素子のうち前記スリット部に隣接する容量素子の中心部に対応する位置に設けられることを特徴とする容量素子収納ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容量素子収納ユニットにおいて、
前記筐体は、第1の電力変換回路と、第2の電力変換回路とを収納し、
前記複数の容量素子は、
前記第1の電力変換回路に接続される第1の容量素子と、
前記第2の電力変換回路に接続される第2の容量素子と、
を有することを特徴とする容量素子収納ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量素子収納ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、蓄電装置の出力電力を変換してモータジェネレータに電力を供給する電力変換装置を備えている。そして、電力変換装置は、インバータの入力側に接続される平滑用容量素子と、DC/DCコンバータの入力側に接続されるフィルタ用容量素子とを備えている。ここで、平滑用容量素子とフィルタ用容量素子との間で耐熱温度が異なることがあり、平滑用容量素子とフィルタ用容量素子とを共通のパッケージに収納する場合に、各容量素子間の伝熱を抑制することが求められている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、直流電源からの直流電力が入力され、該入力された直流電力を異なる電圧値の直流電力に変換して出力するDC−DCコンバータと、DC/DCコンバータからの直流電力が入力され、該入力された直流電力を交流に変換して出力するインバータと、DC/DCコンバータの入力側に設けられた第1の容量素子と、インバータの入力側に設けられた第2の容量素子と、を備える電力変換ユニットが開示されている。ここでは、第1の容量素子と第2の容量素子とが共通のパッケージ内に収納され、第1の容量素子と第2の容量素子との間の伝熱を抑制するために、第1の容量素子と第2の容量素子との間にスリットが設けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−44920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1によれば、平滑用容量素子とフィルタ用容量素子との間の伝熱を抑制することができるが、伝熱抑制効果を高めるためにはスリットの幅を大きくする必要がある。しかし、スリットの幅を大きくすると、共通のパッケージの強度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、より好適に容量素子間の伝熱抑制効果を高めることを可能とする容量素子収納ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る容量素子収納ユニットは、熱伝導率が高い金属等の導電材料で構成されるバスバで接続される複数の容量素子を収納し、前記複数の容量素子の間で温度が高くなる位置にスリット部が設けられる共通パッケージと、内部に収納される要素を冷却するための冷却部を有する筐体と、前記スリット部において前記共通パッケージを前記筐体に固定するための固定部と、を備え、前記固定部は、熱伝導率が高い金属等の導電材料で構成される導電部を含み、前記バスバが前記導電部に接続固定されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る容量素子収納ユニットにおいて、前記固定部は、前記複数の容量素子のうち前記スリット部に隣接する容量素子の中心部に対応する位置に設けられることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る容量素子収納ユニットにおいて、前記筐体は、第1の電力変換回路と、第2の電力変換回路とを収納し、前記複数の容量素子は、前記第1の電力変換回路に接続される第1の容量素子と、前記第2の電力変換回路に接続される第2の容量素子と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、複数の容量素子の間で温度が高くなる位置にスリット部が設けられ、さらに当該スリット部において、冷却部を有する筐体に固定されている。これにより、複数の容量素子の熱が共通パッケージと固定部とを介して筐体に逃がされる。したがって、より好適に伝熱抑制効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施の形態において、容量素子収納ユニットを含む電力変換装置システムの構成を示す図である。
図2】本発明に係る実施の形態において、容量素子収納ユニットを示す断面図である。
図3】本発明に係る実施の形態において、共通パッケージと固定部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、容量素子収納ユニット10を含む電力変換装置システム8の構成を示す図である。電力変換装置システム8は、蓄電装置12と、モータジェネレータ22と、電力変換装置23と、制御装置24とを備える。電力変換装置23は、容量素子収納ユニット10と、フィルタ用容量素子14と、DC/DCコンバータ16と、平滑用容量素子18と、インバータ20とを備える。なお、以下では、電力変換装置システム8は、いわゆるハイブリッド車両に搭載されているものとして説明する。
【0015】
蓄電装置12は、モータジェネレータ22に電力を供給するためのバッテリである。また、蓄電装置12は、充放電可能な直流電源であって、例えば、炭素物質で構成された負極と、リチウムイオンが移動するための電解液と、リチウムイオンを可逆的に出し入れできる正極活物質とを有するリチウムイオン二次電池を用いることができる。
【0016】
フィルタ用容量素子14は、DC/DCコンバータ16の入力側に設けられる容量素子である。フィルタ用容量素子14は、蓄電装置12に並列接続される。フィルタ用容量素子14は、DC/DCコンバータ16を構成するスイッチング素子のスイッチング動作時に発生する蓄電装置12の電力変動を抑制する機能を有する。
【0017】
DC/DCコンバータ16は、蓄電装置12の出力電力を昇圧してインバータ20側に供給する電力変換回路である。また、DC/DCコンバータ16は、インバータ20側から回生電力として供給される直流電力を降圧して、蓄電装置12に充電電力として供給する。
【0018】
平滑用容量素子18は、インバータ20の入力側に設けられる容量素子である。平滑用容量素子18は、正極母線1と負極母線2との間の電力変動を抑制する機能を有する。ここで、正極母線1は、DC/DCコンバータ16とインバータ20の正極側端子同士を接続する電力線である。負極母線2は、DC/DCコンバータ16とインバータの負極側端子同士を接続する電力線である。なお、平滑用容量素子18の耐熱温度T1は、フィルタ用容量素子14の耐熱温度T2と異なり、例えば、フィルタ用容量素子14の耐熱温度T2は平滑用容量素子18の耐熱温度T1よりも高い関係にある。
【0019】
インバータ20は、ハイブリッド車両の力行時にはDC/DCコンバータ16の出力電力である直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ22に供給するための電力変換回路である。また、インバータ20は、ハイブリッド車両の回生時にはモータジェネレータ22で発電された回生エネルギである交流電力を直流電力に変換してDC/DCコンバータ16に供給する。
【0020】
モータジェネレータ22は、それぞれU相コイルとV相コイルとW相コイルとを含んで構成される三相交流回転電機(負荷回路)である。また、モータジェネレータ22には、図示しない動力分配機構を介して、ハイブリッド車両の車輪が接続されている。
【0021】
制御装置24は、電力変換装置23全体を制御する機能を有する。例えば、インバータ20及びDC/DCコンバータ16に含まれるスイッチング素子のスイッチング制御を行う機能を有する。
【0022】
次に、容量素子収納ユニット10について説明する。図2は、容量素子収納ユニット10を示す断面図である。
【0023】
容量素子収納ユニット10は、筐体102と、共通パッケージ104と、固定部106とを備える。また、筐体102は、共通パッケージ104と、固定部106とを内部に収納し、共通パッケージ104は固定部106によって筐体102の内部壁に固定される。
【0024】
また、筐体102は、DC/DCコンバータ16と、インバータ20とを内部に収納する。ここで、筐体102は、共通パッケージ104よりも熱伝導率の高い金属等の導電材料で構成されており、内部に収納したDC/DCコンバータ16及びインバータ20と外部との間のシールド機能を有する。また、筐体102には、冷却液(冷却水)等の冷媒が流れる冷却流路108が形成されている。冷却流路108は、その内部を流れる冷却液によって筐体102を冷却する冷却部である。これにより、筐体102内に収納されるDC/DCコンバータ16及びインバータ20の冷却を行うことができる。
【0025】
図3は、共通パッケージ104と固定部106の斜視図である。共通パッケージ104は、フィルタ用容量素子14と平滑用容量素子18を一体として収納しパッケージ化されている。ここで、フィルタ用容量素子14は、2つの容量素子14a,14bを含む。そして、平滑用容量素子18は、2つの容量素子18a,18bを含む。なお、ここでは、フィルタ用容量素子14及び平滑用容量素子18の数は、それぞれ2つずつであるものとして説明するが、それ以外の数であってもよい。
【0026】
図3に示されるように、共通パッケージ104において、容量素子14a,14bと容量素子18a,18bが互いに間隔をおいて収納されている。そして、容量素子14a,14bと容量素子18a,18bは、その周囲を覆うポッティング樹脂材によって封止される。
【0027】
ここで、容量素子14a,14bと容量素子18a,18bを1つのパッケージ内に収納すると、これらの容量素子間で熱が伝わりやすくなる。一般的に、容量素子は、その耐熱温度を超えない範囲でその性能を十分に発揮することが要求されるが、複数の容量素子の耐熱温度が異なる場合は、耐熱温度の高い容量素子から耐熱温度の低い容量素子へ熱が伝わることで、耐熱温度の高い容量素子の温度も耐熱温度の低い容量素子に合わせて使用する必要がある。その場合は、耐熱温度の高い容量素子がその性能を十分に発揮できなくなる。
【0028】
これに対して共通パッケージ104では、図3に示すように、耐熱温度の異なる容量素子14bと容量素子18a間の伝熱を抑制するためにスリット部105を形成している。スリット部105は、共通パッケージ104において、温度が高くなる部分であり、耐熱温度の異なる容量素子14bと容量素子18aとの間に形成されている。そして、このスリット部105により、容量素子14bと容量素子18aとの間の伝熱が抑制される。そのため、耐熱温度の高い容量素子14bを耐熱温度の低い容量素子18aから熱的に分離することができ、容量素子14bから容量素子18aへ伝わる熱が抑制される。
【0029】
また、フィルタ用容量素子14を構成する2つの容量素子14a,14bの正電極同士及び負電極同士は、それぞれバスバ141とバスバ142によって接続される。具体的には、バスバ141は、容量素子14a,14bの正電極同士を接続する。バスバ142は、容量素子14a,14bの負電極同士を接続する。そして、バスバ141の端部は、固定部106の導電部106aに対して接続される。
【0030】
また、平滑用容量素子18を構成する2つの容量素子18a,18bの正電極同士及び負電極同士は、それぞれバスバ181とバスバ182によって接続される。具体的には、バスバ181は、容量素子18a,18bの正電極同士を接続する。バスバ182は、容量素子18a,18bの負電極同士を接続する。そして、バスバ182の端部は、固定部106の導電部106cに対して接続される。なお、バスバ141,142,181,182は、熱伝導率の高い金属等の導電材料で構成されている。
【0031】
固定部106は、スリット部105において、スリット部105に隣接する容量素子14bと容量素子18aの高さ方向(矢印h)の中央部において、共通パッケージ104を筐体102の内壁に対して接続するように取付る固定部材である。固定部106は、筐体102に対して導電するように接続固定される導電部106a,106cと、導電部106aと導電部106cを絶縁するために導電部106aと導電部106cの間に挟まれる絶縁部106bとを備える。なお、導電部106a,106cは、熱伝導率の高い金属等の導電材料で構成されている。
【0032】
続いて、上記構成の容量素子収納ユニット10の作用について、図1図3を用いて説明する。
【0033】
一般的に、平滑用容量素子18の耐熱温度T1は、フィルタ用容量素子14の耐熱温度T2とは異なる。例えば、フィルタ用容量素子14の耐熱温度T2は、平滑用容量素子18の耐熱温度T1に比べて高くなる。このため、共通パッケージ104においてスリット部105を形成することでフィルタ用容量素子14から平滑用容量素子18へ伝わる熱が抑制される。ここで、より伝熱抑制効果を高める場合には、スリット部105のスリット幅を広げる必要がある。しかし、スリット幅を広げすぎると、ハイブリッド車両の走行中等の振動等により共通パッケージ104に亀裂が生じてしまう可能性もある。そのため、ハイブリッド車両の走行中等の振動等による共通パッケージ104の損傷を抑制しつつ、伝熱抑制効果を高めることが求められる。これが本発明によって解決しようとする課題である。
【0034】
そこで、図1図3に示される容量素子収納ユニット10によれば、フィルタ用容量素子14の容量素子14bと平滑用容量素子18の容量素子18aに生じる熱を熱伝導率の高い固定部106を介して筐体102側に逃がすことができる。ここで、上記のように、筐体102の冷却流路108では、DC/DCコンバータ16及びインバータ20の冷却を行なうために冷却液が流れているため、筐体102自体も冷却されている。これにより、容量素子14bと容量素子18aに生じる熱は筐体102側に逃がされて冷却される。したがって、容量素子14bと容量素子18aとの間の伝熱抑制効果をより高めることができる。また、固定部106は、容量素子14bと容量素子18aに生じる熱の温度が最も高くなる中央部に取り付けられているため、より好適に伝熱を抑制することができる。
【0035】
さらに、容量素子収納ユニット10によれば、フィルタ用容量素子14を構成する2つの容量素子14a,14bの正電極に接続されるバスバ141の端部が固定部106の導電部106aに接続されている。これにより、容量素子14a,14bに生じる熱がバスバ141及び導電部106aを介して筐体102側に逃がされることで、容量素子14a,14b自体を冷却することができる。また、平滑用容量素子18を構成する2つの容量素子18a,18bの負電極に接続されるバスバ182の端部が固定部106の導電部106cに接続されている。これにより、容量素子18a,18bに生じる熱がバスバ182及び導電部106cを介して筐体102側に逃がされることで、容量素子18a,18b自体を冷却することができる。
【0036】
なお、上記容量素子収納ユニット10では、バスバ141及びバスバ182が固定部106に接続されるものとして説明したが、バスバ142及びバスバ181が接続されるものとしてもよい。また、絶縁部の数を増やすことで、全てのバスバが筐体102に接続されるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 正極母線、2 負極母線、8 電力変換装置システム、10 容量素子収納ユニット、12 蓄電装置、14 フィルタ用容量素子、14a,14b 容量素子、16 コンバータ、18 平滑用容量素子、18a,18b 容量素子、20 インバータ、22 モータジェネレータ、23 電力変換装置、24 制御装置、102 筐体、104 共通パッケージ、105 スリット部、106 固定部、106a,106c 導電部、106b 絶縁部、108 冷却流路、141,142,181,182 バスバ。
図1
図2
図3