(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二次電池において、電極板の集電箔にアルミニウム箔を、集電部材にアルミニウム材を用いる場合などでは、この集電箔と集電部材とを抵抗溶接で確実に溶接するのは難しいため、超音波溶接がしばしば用いられる。
【0005】
一方、圧力型の電流遮断機構は、電池ケースの内圧が上昇した際に、破断して電流を遮断する構造とされた弁部位を有している。このため、超音波溶接を用いて、電極板の集電箔と集電部材とを接続すると、超音波振動によって、集電部材のみならず、これに接続する電流遮断機構の弁部位をなす部材が、大きく振動してしまう場合がある。すると、超音波振動により、上述の弁部位に破断が生じて、電流遮断機構が誤って作動してしまい、電池製造の歩留りが悪くなる虞があった。また、製造時に弁部位をなす部材が破断しなかった電池についても、超音波振動の影響を受けている虞があり、遮断特性がばらつくなど製品(電池)における信頼性の点でも問題があった。加えて、車両に搭載する電池のように、インバータ制御によって電池を使用する場合には、電池使用時に流れるリップル電流により、電極体に微小振動が発生し、これが電流遮断機構へと伝わる場合がある。すると、この微小振動により、電流遮断機構の耐久性が悪化する虞もあった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電流遮断機構を備える二次電池において、製造時の超音波溶接による超音波振動により、電流遮断機構が誤って作動することを防止し、歩留りを良くした二次電池の製造方法、及び、電流遮断機構について高い信頼性を有する二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明の一態様は、集電箔を含む電極板を有する電極体と、上記電極板の上記集電箔に自身の超音波溶接部で超音波溶接により接続された集電部材と、上記集電部材に導通接続された圧力型の電流遮断機構とを、電池ケース内に気密に収容してなり、上記電流遮断機構は、上記集電部材と一体にされた第1弁体と第2弁体とが連結部で連結され、上記第1弁体及び上記第2弁体の少なくともいずれかは、上記電池ケースの内圧の上昇により、互いの結合が破断する方向に移動する構成とされてなり、
前記集電箔、前記集電部材、前記第1弁体、及び前記第2弁体は、いずれも同一の金属元素を含有する金属材料からなり、上記集電部材、上記第1弁体及び上記第2弁体のうち、少なくとも、上記超音波溶接部と上記連結部との間の一部が、
上記金属元素及びこれとは異なる異種金属元素との合金である制振性金属
の金属材料からなる二次電池の製造方法であって、上記集電部材と一体にされた上記第1弁体と上記第2弁体とを上記連結部で連結した構造体を形成する構造体形成工程と、上記構造体形成工程の後に、上記電極板の上記集電箔と上記集電部材の上記超音波溶接部とを超音波溶接する超音波溶接工程と、を備える二次電池の製造方法である。
【0008】
この製造方法に係る二次電池は、電池ケースの内圧の上昇により、連結部を通じて連結された第1弁体と第2弁体の少なくともいずれかが、互いの結合が破断する方向に移動する構成とされた圧力型の電流遮断機構を備える。そして、この電池の製造方法では、集電部材と一体にされた第1弁体と第2弁体とを連結部で連結した構造体を形成した後に、電極板の集電箔と集電部材とを、超音波溶接で接続する。すると、電極板の集電箔と集電部材とを超音波溶接する際に、超音波振動により、第1弁体と第2弁体との結合(連結部あるいは破断予定部)が破断してしまう虞がある。
【0009】
しかるに、この電池の製造方法では、集電部材、第1弁体及び第2弁体のうち、少なくとも、超音波溶接部と連結部との間の一部を、制振性金属で構成している。このため、電極板の集電箔と集電部材とを超音波溶接しても、超音波溶接部から連結部に向けて進む超音波振動は、少なくともこの間に存在する制振性金属で吸収されるので、伝わってきた超音波振動により、連結部あるいは破断予定部において、第1弁体と第2弁体との結合が破断してしまうことが抑えられる。従って、超音波溶接時に、電流遮断機構が誤って作動することを防止でき、歩留り良く二次電池を製造することができる。また、超音波振動による、連結部や刻印部などの破断予定部への影響も抑えられ、電流遮断機構について、特性ばらつきが少なく信頼性の高い二次電池となる。
さらにこの電池の製造方法では、集電箔、集電部材、第1弁体、及び第2弁体は、同一の金属元素を含有する金属材料からなる。加えて、制振性金属は、この同一の金属元素とこれとは異なる異種金属元素との合金を用いている。これにより、集電箔と集電部材の超音波溶接部との間の超音波溶接を容易に行うことができる。また、第1弁体と第2弁体との互いの連結(連結部の構成)も、同一金属元素を含む金属材料同士で良好に行うことができる。このため、超音波溶接や連結部の形成について、信頼性の高い二次電池が得られる。
【0010】
なお、この二次電池では、集電部材、第1弁体及び第2弁体のうち、少なくとも、超音波溶接部と連結部との間の一部を、制振性金属で構成していれば良いが、集電部材、第1弁体及び第2弁体の三者を、同じ制振性金属で構成するのがより好ましい。また、第1弁体と集電部材とを、制振性金属の一体材で形成しても良い。
【0011】
なお、制振性金属としては、鉄−アルミニウム合金や、マンガンをベースに銅・ニッケル・鉄を添加したM2052制振合金、鋳鉄、マグネシウム合金、フェライト系ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金などが挙げられる。
【0012】
また、連結部としては、第1弁体と第2弁体とを溶接等の接続手法で結合させた部位が挙げられる。また、破断予定部は、第1弁体あるいは第2弁体に設けられ、内圧の上昇によって、破断によって、第1弁体と第2弁体との結合が解除されるように構成された部位を指す。例えば、前述の連結部や、第1弁体あるいは第2弁体に形成された刻印部,薄肉部など他の部位よりも脆弱に形成された部位等が挙げられる。
【0015】
さらに、上述の二次電池の製造方法であって、前記第1弁体及び前記第2弁体は、同一の前記制振性金属からなり、前記構造体形成工程は、上記第1弁体と上記第2弁体とを溶接により結合して前記連結部を構成する溶接工程を含む二次電池の製造方法とすると良い。
【0016】
この電池の製造方法の構造体形成工程は、同一の制振性金属からなる第1弁体及び第2弁体を溶接する工程を含んでいる。このように溶接を同一材間で行うので、溶接の信頼性が良好にできる。また、超音波溶接時に、超音波振動を第1弁体で吸収できるのみならず、第1弁体から連結部を通じてさらに第2弁体へと伝わる経路においても、超音波振動を吸収することができる。従って、第1弁体と第2弁体を連結部で確実に結合できると共に、超音波溶接時の超音波振動により、電流遮断機構の第1弁体と第2弁体との連結部あるいは破断予定部が破断してしまうのをさらに抑え、さらに歩留り良く二次電池を製造することができる。また、超音波振動による連結部や刻印部などの破断予定部への影響をさらに抑えることができ、電流遮断機構について、さらに信頼性の高い二次電池となる。
【0017】
さらに、上述のいずれかに記載の二次電池の製造方法であって、前記第1弁体及び前記集電部材は、前記制振性金属の一体材からなる二次電池の製造方法とすると良い。
【0018】
この電池の製造方法では、制振性金属の一体材からなる第1弁体及び集電部材を用いている。これにより、第1弁体と集電部材を溶接等で結合する必要がなく、コストダウンを図りうる。加えて、超音波振動を第1弁体で吸収できるのみならず、集電部材においても、超音波振動を吸収することができる。従って、超音波溶接時の超音波振動により、連結部あるいは破断予定部において、電流遮断機構の第1弁体と第2弁体との結合が破断するのをより確実に抑制して、さらに歩留り良く二次電池を製造することができる。また、超音波振動による連結部や破断予定部への影響をさらに抑えることができ、電流遮断機構について、さらに信頼性の高い二次電池となる。
【0019】
上記課題を解決するための、本発明の他の態様は、集電箔を含む電極板を有する電極体と、上記電極板の上記集電箔に自身の超音波溶接部で超音波溶接により接続された集電部材と、上記集電部材に導通接続された圧力型の電流遮断機構とを、電池ケース内に気密に収容してなり、上記電流遮断機構は、上記集電部材と一体にされた第1弁体と第2弁体とが連結部で連結され、上記第1弁体及び上記第2弁体の少なくともいずれかは、上記電池ケースの内圧の上昇により、互いの結合が破断する方向に移動する構成とされてなり、
前記集電箔、前記集電部材、前記第1弁体、及び前記第2弁体は、いずれも同一の金属元素を含有する金属材料からなり、上記集電部材、上記第1弁体及び上記第2弁体のうち、少なくとも、上記超音波溶接部と上記連結部との間の一部が、
上記金属元素及びこれとは異なる異種金属元素との合金である制振性金属
の金属材料からなる二次電池である。
【0020】
この電池は、集電部材、第1弁体及び第2弁体のうち、少なくとも超音波溶接部と連結部との間の一部を制振性金属で構成した上で、電極板の集電箔と集電部材とを、超音波溶接で接続してある。このため、電極板の集電箔と集電部材との超音波溶接時に、超音波溶接部から連結部に向けて伝わる超音波振動は、少なくともこの間で吸収される。従って、超音波溶接時に、連結部あるいは破断予定部において、第1弁体と第2弁体との結合が破断することが抑えられるのみならず、超音波振動による連結部や破断予定部への影響も抑制でき、電流遮断機構の特性ばらつきが少なく信頼性の高い二次電池となる。
【0021】
ところで、電池をインバータ制御で使用する場合には、電池を流れるリップル電流により、電極体に微小振動が発生する場合がある。しかるに、この電池では、リップル電流による微小振動も、少なくとも超音波溶接部と連結部との間で吸収することができる。これにより、この微小振動による電流遮断機構の耐久性への影響も抑制することができる。従って、この点からも、電流遮断機構について、高い信頼性を有する二次電池となる。
【0023】
さらにこの電池は、集電箔、集電部材、第1弁体、及び第2弁体は、同一の金属元素を含有する金属材料からなる。加えて、制振性金属は、この同一の金属元素とこれとは異なる異種金属元素との合金となっている。これにより、集電箔と集電部材の超音波溶接部との間の超音波溶接や、第1弁体と第2弁体との互いの連結(連結部の構成)が、同一金属元素を含む金属材料同士で行われており、信頼性が良好である。このため、超音波溶接や連結部の形成について、信頼性の高い二次電池となる。
【0024】
更に、上述の二次電池であって、前記第1弁体及び前記第2弁体は、同一の前記制振性金属からなり、溶接により結合して前記連結部を構成してなる二次電池とすると良い。
【0025】
この電池は、第1弁体と第2弁体を同一の制振性金属とし、両者を溶接により結合して連結部を構成している。このように溶接が同一材間で行われているので、溶接の信頼性が良好である。さらに、電池使用時にリップル電流等による微小振動が生じても、これを第1弁体で吸収できるのみならず、第2弁体へと伝わる経路においても、吸収することができる。このため、電流遮断機構について、さらに高い信頼性を有する二次電池となる。
【0026】
更に、上述のいずれかに記載の二次電池であって、前記第1弁体及び前記集電部材は、前記制振性金属の一体材からなる二次電池とすると良い。
【0027】
この電池は、第1弁体及び集電部材を、制振性金属の一体材で構成している。このため、電池使用時にリップル電流等による微小振動が生じても、第1弁体で吸収できるのみならず、集電部材においても、吸収することができる。従って、電流遮断機構について、さらに高い信頼性を有する二次電池となる。
【0028】
更に、上述の二次電池であって、前記集電箔は、アルミニウム箔であり、前記制振金属は、制振性鉄−アルミニウム合金である二次電池とすると良い。
【0029】
この電池は、第1弁体と集電部材の一体材をなす制振性金属として、制振性鉄−アルミニウム合金を用いている。この制振性鉄−アルミニウム合金は、アルミニウムと良好に超音波溶接することが可能である。このため、集電箔をなすアルミニウム箔に、この制振性鉄−アルミニウム合金からなる集電部材を適切に超音波溶接することができる。かくして、この電池は、集電部材に制振性金属を用いながらも、これと集電箔とを良好に超音波溶接した二次電池となる。
【0030】
更に、上述の二次電池であって、前記制振性鉄−アルミニウム合金は、アルミニウムを6〜10重量%含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる二次電池とすると良い。
【0031】
鉄−アルミニウム合金のうちでも、アルミニウムを6〜10重量%含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる合金は、制振性合金として、特に良好な制振性を有する。従って、電流遮断機構について、より高い信頼性を有する二次電池となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池1(以下、単に電池1ともいう)の斜視図を示す。まず、電池1の構成の概略について説明する。なお、以下では、各図面における上方を電池1の上側UW(上方UW)、下方を電池1の下側DW(下方DW)として説明する。この電池1は、正極板21及び負極板22を有する電極体20と、非水系の電解液30と、これら電極体20及び電解液30を気密に収容してなる角型の電池ケース10と、正極板21に接続して電池ケース10外に延出する正極端子60と、負極板22に接続して電池ケース10外に延出する負極端子70とを有する。
【0034】
このうち、電池ケース10は、開口を含むケース本体部材11及び封口蓋12を有する。このうち封口蓋12は、矩形板状であり、ケース本体部材11の開口を閉塞して、このケース本体部材11に溶接されている。また、封口蓋12には、電解液30を注液するための注液孔12Hが設けられており、さらに、正極端子60の一部である正極外部端子61及び負極端子70の一部である負極外部端子71が、それぞれ電池ケース10外に固設されている。このうち、正極外部端子61は、ボルト62及びクランク状(Z字状)に屈曲されたアルミニウム板からなる正極外部端子部材63により構成され、樹脂からなる外部ガスケット80を介して、封口蓋12に固設されている。また、負極外部端子71は、ボルト72及びクランク状(Z字状)に屈曲された銅板からなる負極外部端子部材73により構成され、樹脂からなる外部ガスケット90を介して、封口蓋12に固設されている。
【0035】
電極体20は、絶縁フィルムを袋状に形成した絶縁フィルム包囲体(図示しない)内に収容され、横倒しにした状態で電池ケース10内に収容されている。この電極体20は、帯状の正極板21と帯状の負極板22とを、帯状のセパレータ(図示しない)を介して互いに重ねて捲回し、扁平状に圧縮したものである。
【0036】
このうち、正極板21は、芯材として、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔21sを有する。この正極集電箔21sには、その両面に正極活物質、導電剤及び結着剤からなる正極活物質層(図示しない)が帯状に設けられており、その一方辺は、この正極活物質層が存在しない正極リード部21fとされている。即ち、正極リード部21fは、正極板21のうち、アルミニウム箔の正極集電箔21sが露出した部位となっている。
【0037】
また、負極板22は、芯材として、帯状の銅箔からなる負極集電箔22sを有する。この負極集電箔22sには、その両面に負極活物質、結着剤及び増粘剤からなる負極活物質層(図示しない)が帯状に設けられており、その一方辺は、この負極活物質層が存在しない負極リード部22fとされている。即ち、負極リード部22fは、負極板22のうち、銅箔の負極集電箔22sが露出した部位となっている。
【0038】
電極体20のうち、正極板21の正極リード部21f(正極集電箔21s)には、正極端子60が接続されている(
図1,
図3,
図4参照)。この正極端子60は、電池ケース10外に配置された前述の正極外部端子61のほか、電池ケース10内に位置する電流遮断機構2、及び正極集電部材64Bからなる。なお、正極集電部材64Bは、後述する正極内部導通部材64の一部であり、この正極内部導通部材64は、制振性鉄−アルミニウム合金からなる。そして、正極集電部材64Bは、クランク状に屈曲されて、正極板21の正極リード部21f(正極集電箔21s)と、超音波溶接されている。
【0039】
また、電流遮断機構2は、電池ケース10内に配置され、正極集電部材64Bと正極外部端子61(正極外部端子部材63)との間に介在して、両者間を導通し、電池ケース10の内圧Piが作動圧力Pfを超えた場合に、自身を流れる電池の充放電電流Idを遮断する圧力型の安全機構である。
【0040】
一方、負極板22の負極リード部22f(負極集電箔22s)には、負極端子70が接続されている(
図1,
図2参照)。この負極端子70は、電池ケース10外に配置された前述の負極外部端子71のほか、電池ケース10内に位置する負極集電部材74Bからなる。なお、負極集電部材74Bは、後述する負極内部導通部材74の一部であり、この負極内部導通部材74は、銅からなる。そして、、負極集電部材74Bは、クランク状に屈曲されて、負極板22の負極リード部22f(負極集電箔22s)と、抵抗溶接されている。
【0041】
次いで、正極端子60の構造について、より詳細に説明する(
図1,
図3,
図4,
図5参照)。電池ケース10の封口蓋12は、正極貫通孔12Cを有し、この正極貫通孔12Cに、前述したように、ボルト62及び正極外部端子部材63により構成される正極外部端子61が、外部ガスケット80を介して固設されている。
【0042】
このうち、外部ガスケット80は、概略L字状に形成され、六角柱状の凹部をなすボルト保持孔80Hと貫通孔80Cを有する。また、正極外部端子部材63は、2つの貫通孔63B,63Cを有する。そして、ボルト62は、その六角柱状の頭部62Aが、外部ガスケット80のボルト保持孔80Hに嵌挿されると共に、ネジ部62Bが、正極外部端子部材63の一方の貫通孔63Bを挿通している。また、正極外部端子部材63のもう一方の貫通孔63Cは、外部ガスケット80の貫通孔80Cと共に、封口蓋12の正極貫通孔12Cに同軸に位置合わせされている。
【0043】
一方、正極貫通孔12Cの図中下側DWの電池ケース10内には、電流遮断機構2が配置されている。この電流遮断機構2は、円環板状のシールゴム81、樹脂からなる第1内部ガスケット82、封栓67、空間形成部材66、板状の第2弁体65、樹脂からなる第2内部ガスケット83、及び正極内部導通部材64により構成されている。なお、正極内部導通部材64は、第1弁体64A及び正極集電部材64Bとからなる。
【0044】
このうち、空間形成部材66は、アルミニウムからなり、図中下側DWに開口66Hを有する有底四角筒状の空間形成部66Bと、この空間形成部66Bの図中上側UWの底部66BTから上方UWに延びる円筒状のカシメ部66Aとからなる。また、カシメ部66A内は、筒孔66Cとされており、空間形成部66B内まで貫通している。なお、この筒孔66Cは、後述するように、アルミニウムからなる封栓67により封孔される。
【0045】
また、樹脂からなる第1内部ガスケット82は、図中下側DWに開口82Hを有する有底四角筒状をなす。その図中上側UWの底部82Tには、その中央にシールゴム81の外径よりも径大な円孔82Cを有し、この円孔82C内にシールゴム81を収容可能とされている。そして、図中下側DWの開口82Hを通じて、空間形成部材66の空間形成部66Bに外嵌可能とされている。さらに、第1内部ガスケット82の側面の対向する2面に、第2内部ガスケット83との嵌合に用いる凸状の嵌合凸部82Dが、各々3個ずつ設けられている。
【0046】
一方、第2内部ガスケット83は、図中下側DWの平面視、矩形状の本体部83Aと、この本体部83Aの2つの側縁からそれぞれ図中上側UWに立ち上がる側壁83Bを有する。このうち、本体部83Aには、後述する第1弁体64Aを挿入可能な矩形状の空間をなして貫通する保持溝83Cを有する。加えて、この本体部83Aの平面視、中央部分には、保持溝83Cを隔てて、図中上側UW及び下側DWのそれぞれに円孔83E,83Fが貫通形成されている(
図5参照)。2つの側壁83Bには、それぞれ側壁83Bを貫通する嵌合孔83Dが、各々3箇所設けられている。そして、この嵌合孔83Dを第1内部ガスケット82の嵌合凸部82Dに嵌合させることにより、第2内部ガスケット83は、第1内部ガスケット82に係止可能とされている。
【0047】
そして、空間形成部材66の空間形成部66Bに、第1内部ガスケット82が外嵌されると共に、空間形成部材66のカシメ部66Aは、第1内部ガスケット82及びこれに収容されたシールゴム81を介して、封口蓋12の正極貫通孔12C、外部ガスケット80の貫通孔80C及び正極外部端子部材63の貫通孔63Cに挿通されている。さらに、カシメ部66Aの先端部分66ASは、拡径されて正極外部端子部材63に加締められた後に、レーザ溶接されている。これにより、空間形成部材66は、封口蓋12に固設される。
【0048】
空間形成部材66の空間形成部66Bのうち、開口66Hの開口端66HEはレーザ溶接により、第2弁体65で気密に封止されて、空間形成部材66と第2弁体65とで、内部空間Cを形成している。この内部空間Cは、真空とされ、空間形成部材66のカシメ部66Aの筒孔66Cは、封栓67で封孔されている。さらに、この封栓67は、カシメ部66Aの先端部分66ASにレーザ溶接されている。第2弁体65は、概略矩形板状で、Fe−8wt%Alの制振性鉄−アルミニウム合金からなる。
【0049】
この第2弁体65は、その中央に図中下向きに突出した凸部65Aを有し、この凸部65Aには、後述する正極内部導通部材64の第1弁体64Aが、溶接により連結されている。また、空間形成部材66及び第2弁体65のうち、空間形成部材66には、前述の通り、図中上側UWから第1内部ガスケット82が外嵌されている。これに、さらに図中下側DWから第2内部ガスケット83が外嵌され、第1内部ガスケット82の嵌合凸部82Dに第2内部ガスケット83の嵌合孔83Dが嵌合されている。これにより、空間形成部材66及び第2弁体65を、第1内部ガスケット
82及び第2内部ガスケット83で挟むと共に、第2内部ガスケット83は、第1内部ガスケット82に吊下、保持されている。
【0050】
正極内部導通部材64は、図中上側UWに位置する矩形板状の第1弁体64Aと、この第1弁体64Aの一辺縁64AEからクランク状に屈曲しつつ、図中下方DWに延びる正極集電部材64Bとを一体に有する。なお、この正極内部導通部材64も、Fe−8wt%Alの制振性鉄−アルミニウム合金の一体材からなる。従って、この正極内部導通部材64と第2弁体
65とは、同一の制振性鉄−アルミニウム合金で構成されている。この制振性鉄−アルミニウム合金は、特に良好な制振性を有すると共に、アルミニウムと良好に超音波溶接可能である。
【0051】
正極内部導通部材64は、その第1弁体64Aが、第2内部ガスケット83の保持溝83Cに挿入されて、第2内部ガスケット83に吊下、保持されている。また、第1弁体64Aの円形状の中央部64Cは、その厚みが周囲よりも薄くされると共に、第2弁体65の凸部65Aにレーザ溶接により連結されて連結部KGとされている。加えて、第1弁体64Aの中央部64Cの周縁には、次述するように破断することが予定されている破断予定部であるV溝状の刻印部64Kが円環状に設けてある。
【0052】
空間形成部材66と第2弁体65とで形成された内部空間Cは、真空とされて、空間形成部材66のカシメ部66Aの筒孔66Cが、封栓67で封孔された後、封栓67は、カシメ部66Aの先端部分66ASにレーザ溶接されている。このため、電池ケース10の内圧Piが上昇すると、第2弁体65が凹状に変形して、凸部65Aが図中上方UWに移動する。そして、内圧Piが作動圧力Pfを超えると、第1弁体64Aの刻印部64Kが破断して、第1弁体64Aと第2弁体65との結合が解除される。このようにして、第1弁体64A、第2弁体65及び空間形成部材66を主たる構成部材として、圧力型の電流遮断機構2が構成される。また、正極外部端子61、電流遮断機構2及び正極内部導通部材64が、封口蓋12に固設され、これらで正極端子60をなす。なお、正極内部導通部材64は、正極集電部材64Bの先端部64BS(超音波溶接部)で、正極板21の正極リード部21f(正極集電箔21s)に超音波溶接されている。
【0053】
次いで、負極端子70の構造について、詳細に説明する(
図1,
図2参照)。電池ケース10の封口蓋12は、負極貫通孔12Dを有し、この負極貫通孔12Dに、前述したように、ボルト72及び負極外部端子部材73により構成される負極外部端子71が、外部ガスケット90を介して固設されている。
【0054】
このうち、概略L字状の外部ガスケット90は、六角柱状の凹部をなすボルト保持孔90Hと貫通孔90Cを有し、負極外部端子部材73は、2つの貫通孔73B,73Cを有する。ボルト72のうち、六角柱状の頭部72Aは、ボルト保持孔90Hに嵌挿され、ネジ部72Bは、負極外部端子部材73の貫通孔73Bを挿通している。また、貫通孔73Cは、外部ガスケット90の貫通孔90Cと共に、封口蓋12の負極貫通孔12Dに同軸に位置合わせされている。
【0055】
一方、負極貫通孔12Dの図中下側DWの電池ケース10内には、円環板状のシールゴム91、樹脂からなる内部ガスケット92及び負極内部導通部材74が配置されている。負極内部導通部材74は、矩形板状の板状基部74Cと、この板状基部74Cから図中上方UWに延びる円筒状のカシメ部74Aと、板状基部74Cの一辺縁74CEからクランク状に屈曲しつつ、図中下方DWに延びる負極集電部材74Bとを一体に有する。また、内部ガスケット92は、矩形板状をなし、その中央にシールゴム91の外径よりも径大な円孔92Cを有し、この円孔92C内にシールゴム91を収容可能とされている。
【0056】
負極内部導通部材74の板状基部74Cは、内部ガスケット92及びこれに収容されたシールゴム91に当接し、これらを介して、カシメ部74Aが、封口蓋12の負極貫通孔12D、外部ガスケット90の貫通孔90C及び負極外部端子部材73の貫通孔73Cに挿通されている。さらに、カシメ部74Aの先端部分74ASは、拡径されて負極外部端子部材73に加締められた後に、レーザ溶接されている。これにより、負極内部導通部材74は、封口蓋12に固設されている。また、負極外部端子71及び負極内部導通部材74が、封口蓋12に固設され、これらで負極端子70をなす。なお、負極内部導通部材74は、負極集電部材74Bの先端部74BSで、負極板22の負極リード部22f(負極集電箔22s)に抵抗溶接されている。
【0057】
以上で述べたように、この電池1は、正極集電部材64Bと第1弁体64Aとの一体材である正極内部導通部材64を制振性鉄−アルミニウム合金で構成した上で、正極板21の正極集電箔21sと正極集電部材64Bとを、超音波溶接で接続してある。このため、正極板21の正極集電体21sと正極集電部材64Bとの超音波溶接時に、正極集電部材64Bの先端部64BS(超音波溶接部)から連結部KGに向けて伝わる超音波振動は、一体材である正極内部導通部材64で吸収される。従って、超音波溶接時に、連結部KGあるいは刻印部64Kにおいて、第1弁体64Aと第2弁体65との結合が破断することが抑えられるのみならず、超音波振動による連結部KGあるいは刻印部64Kへの影響も抑制でき、電流遮断機構2の特性ばらつきが少なく信頼性の高い電池1となる。
【0058】
ところで、電池1をハイブリッド自動車や電気自動車に車載して、モータ駆動に使用する場合などでは、電池1をインバータ制御で使用することがある。この場合、電池1を流れるリップル電流により、電極体20に微小振動が発生する場合がある。しかるに、この電池1では、リップル電流による微小振動も、正極内部導通部材64で吸収することができる。これにより、この微小振動による電流遮断機構2の耐久性への影響も抑制することができる。従って、この点からも、電流遮断機構2について、高い信頼性を有する電池1となる。
【0059】
さらに、この電池1は、第1弁体64Aと第2弁体65を同一の制振性金属とし、両者を溶接により結合して連結部KGを構成している。このように溶接が同一材間で行われているので、溶接の信頼性が良好である。さらに、電池1の使用時にリップル電流等による微小振動が生じても、これを正極内部導通部材64で吸収できるのみならず、第2弁体65へと伝わる経路においても、吸収することができる。このため、電流遮断機構2について、さらに高い信頼性を有する電池1となる。
【0060】
さらに、この電池1は、第1弁体64Aと正極集電部材64Bの一体材である正極内部導通部材64をなす制振性金属として、Fe−8wt%Alの制振性鉄−アルミニウム合金を用いている。この鉄−アルミニウム合金は、特に良好な制振性を有すると共に、アルミニウムと良好に超音波溶接することが可能である。このため、正極集電箔21sをなすアルミニウム箔に、この鉄−アルミニウム合金からなる正極集電部材64Bと第1弁体64Aとの一体材である正極内部導通部材64を適切に超音波溶接することができる。かくして、この電池1は、正極内部導通部材64に制振性金属を用いて、電流遮断機構2について、より高い信頼性を有しながらも、正極集電部材64Bと正極集電箔21sとを良好に超音波溶接した電池1となる。
【0061】
次いで、本実施形態1に係る電池1の製造方法について説明する。まず、電極体20の形成について説明する。まず、アルミニウム箔(正極集電箔21s)の両面に、一方辺の正極リード部21fを残して、リチウム複合酸化物からなる正極活物質粒子(図示しない)を含む正極ペーストを塗布し、その後に乾燥させ、これをプレスして、正極板21を形成する。一方、銅箔(負極集電箔22s)の両面に、一方辺の負極リード部22fを残して、天然黒鉛からなる負極活物質粒子(図示しない)を含む負極ペーストを塗布し、その後乾燥、プレスして、負極板22を形成する。次いで、正極板21と負極板22とを、セパレータ(図示しない)を介在して捲回し、扁平状に圧縮して電極体20とする。
【0062】
また別途、電池ケース10の封口蓋12に、正極外部端子61、電流遮断機構2及び正極内部導通部材64で構成される正極端子60を、また、負極外部端子71及び負極内部導通部材74で構成される負極端子70を、それぞれ固設する。
【0063】
まず、負極端子70をなす各部材の固設について説明する。まず、ボルト72の頭部72Aを、外部ガスケット90のボルト保持孔90Hに嵌挿すると共に、ネジ部72Bを、負極外部端子部材73の一方の貫通孔73Bに挿通する。また、負極外部端子部材73のもう一方の貫通孔73Cを、外部ガスケット90の貫通孔90Cと共に、封口蓋12の負極貫通孔12Dに同軸に位置合わせする。そして、負極内部導通部材74の円筒状のカシメ部74Aを、内部ガスケット92及びシールゴム91に挿通し、さらに上述の封口蓋12の負極貫通孔12D、外部ガスケット90の貫通孔90C及び負極外部端子部材73の貫通孔73Cに挿通する。さらに、カシメ部74Aの先端部分74ASを、拡径して負極外部端子部材73に加締めた後に、レーザ溶接する。以上により、封口蓋12に、負極端子70をなす各部材を固設する。
【0064】
次に、電流遮断機構2を含む正極端子60をなす各部材の固設について説明する。まず、空間形成部材66の空間形成部66Bのうち、開口66Hの開口端66HEに、第2弁体65の周縁部65Eをレーザ溶接で気密に接合する。さらに、溶接した空間形成部材66及び第2弁体65のうち、空間形成部材66に第1内部ガスケット82を図中上側UWから外嵌する。さらに、これらに第2内部ガスケット83を図中下側DWから外嵌して、空間形成部材66及び第2弁体65を第1内部ガスケット82と第2内部ガスケット83とで挟み、第2内部ガスケット83の嵌合孔83Dを第1内部ガスケット82の嵌合凸部82Dに嵌合させる。
【0065】
さらに、第2内部ガスケット83の保持溝83Cに、正極内部導通部材64の第1弁体64Aを挿入して、第1弁体64Aの中央部64Cを、第2弁体65の凸部65Aに当接させ、レーザ溶接(溶接工程)で連結させて連結部KGを形成する。これにより、正極集電部材64Bと第1弁体64Aとが一体とされた正極内部導通部材64、第2弁体65のほか、空間形成部材66、第1内部ガスケット82及び第2内部ガスケット83からなる構造体60Kが形成される(構造体形成工程)。
【0066】
次に、ボルト62の頭部62Aを、外部ガスケット80のボルト保持孔80Hに嵌挿すると共に、ネジ部62Bを、正極外部端子部材63の一方の貫通孔63Bに挿通する。また、正極外部端子部材63のもう一方の貫通孔63Cを、外部ガスケット80の貫通孔80Cと共に、封口蓋12の正極貫通孔12Cに同軸に位置合わせする。そして、構造体60Kのうち空間形成部材66のカシメ部66Aを、シールゴム81に挿通して、さらに封口蓋12の正極貫通孔12C、外部ガスケット80の貫通孔80C及び正極外部端子部材63の貫通孔63Cに挿通する。さらに、カシメ部66Aの先端部分66ASを拡径し加締めた後、正極外部端子部材63とカシメ部66Aの先端部分66ASとをレーザ溶接する。
【0067】
構造体60Kのうち空間形成部材66と第2弁体65とで形成された内部空間Cを真空とした後、空間形成部材66のカシメ部66Aの筒孔66Cを、封栓67で封孔する。さらに、レーザ溶接で、封栓67をカシメ部66Aの先端部分66ASに結合する。かくして、封口蓋12に、正極端子60をなす各部材が固設される。
【0068】
次いで、封口蓋12と一体とされた正極内部導通部材64の正極集電部材64B、及び負極内部導通部材74の負極集電部材74Bと、電極体20とを接続する。具体的には、銅からなる負極集電部材74Bを負極板22の負極リード部22f(負極集電箔22s)に、抵抗溶接する。一方、正極集電部材64Bを正極板21の正極リード部21f(正極集電箔21s)に、超音波溶接する(超音波溶接工程)。ここで、正極集電部材64B及び第1弁体64Aをなす正極内部導通部材64と、第2弁体65とは、前述したように、いずれもFe−8wt%Alからなる制振性鉄−アルミニウム合金で構成されている。このため、超音波溶接時の超音波振動は、正極内部導通部材64B、第1弁体64Aのほか、第2弁体65で吸収される。これにより、超音波振動によって、第1弁体64Aと第2弁体65との連結部KGあるいは刻印部64Kが、破断してしまうのを防止できる。
【0069】
次いで、電極体20をケース本体部材11内に収容し、封口蓋12でケース本体部材11を封口し、封口蓋12をケース本体部材11にレーザ溶接する。その後、封口蓋12の注液孔12Hから電解液30を注液し、注入後、注液孔12Hを封止する。次いで、この電池1の初期充放電を行う。かくして、電池1が完成する。
【0070】
以上で述べたように、正極集電部材64B、第1弁体64A及び第2弁体65のうち、少なくとも、正極集電部材64Bの先端部64BS(超音波溶接部)と連結部KGとの間の一部(本実施形態1では、正極集電部材64Bと第1弁体64Aとの一体材である正極内部導通部材64及び第2弁体65)を、制振性金属(制振性鉄−アルミニウム合金)で構成している。このため、正極板21の正極集電箔21sと正極集電部材64Bとを超音波溶接しても、正極集電部材64Bの先端部64BSから連結部KGに向けて進む超音波振動は、少なくともこの間(本実施形態1では、正極内部導通部材64)で吸収されるので、伝わってきた超音波振動により、連結部KGあるいは刻印部64Kにおいて、第1弁体64Aと第2弁体65との結合が破断してしまうのを防止できる。従って、超音波溶接時に、電流遮断機構2が誤って作動することを防止でき、歩留り良く電池1を製造することができる。また、超音波振動による連結部KGあるいは刻印部64Kへの影響も抑えられ、電流遮断機構2について、特性ばらつきが少なく信頼性の高い電池1となる。
【0071】
加えて、この電池1の製造方法では、正極板21の正極集電箔21sにアルミニウム箔を用い、正極集電部材64Bと第1弁体64Aとの一体材である正極内部導通部材64及び第2弁体65に制振性鉄−アルミニウム合金を用いており、これらは全て同一の金属元素であるアルミニウムを含有している。これにより、正極集電箔21sと正極集電部材64Bの先端部64BSとの超音波溶接や、第1弁体64Aと第2弁体65との連結部KGのレーザ溶接が良好に行えるので、これらについて、信頼性の高い電池1が得られる。
【0072】
さらに、この電池1の製造方法の構造体形成工程は、同一の制振性鉄−アルミニウム合金からなる正極内部導通部材64の第1弁体64A及び第2弁体65を溶接する工程を含んでいる。ここでは、溶接を同一材間で行うので、溶接の信頼性が良好にできる。また、超音波溶接時に、超音波振動を第1弁体64A(正極内部導通部材64)で吸収できるのみならず、第1弁体64A(正極内部導通部材64)から連結部KGを通じてさらに第2弁体65へと伝わる経路においても、超音波振動を吸収することができる。従って、第1弁体64Aと第2弁体65を連結部KGで確実に結合できると共に、超音波溶接時の超音波振動により、電流遮断機構2の第1弁体64Aと第2弁体65との連結部KGあるいは刻印部64Kが破断してしまうのをさらに抑え、さらに歩留り良く電池1を製造することができる。また、超音波振動による連結部KGあるいは刻印部64Kへの影響をさらに抑えることができ、電流遮断機構2について、さらに信頼性の高い電池1となる。
【0073】
さらに、この電池1の製造方法では、制振性金属の一体材からなる第1弁体64A及び正極集電部材64B(正極内部導通部材64)を用いている。これにより、第1弁体64Aと正極集電部材64Bを溶接等によって結合する必要がなく、コストダウンを図りうる。加えて、超音波振動を第1弁体64Aで吸収できるのみならず、正極集電部材64Bにおいても、超音波振動を吸収することができる。従って、超音波溶接時の超音波振動により、連結部KGあるいは刻印部64Kにおいて、電流遮断機構2の第1弁体64Aと第2弁体65との結合が破断するのをより確実に抑制して、さらに歩留り良く電池1を製造することができる。また、超音波振動による連結部KGあるいは刻印部64Kへの影響をさらに抑えることができ、電流遮断機構2について、さらに信頼性の高い電池1となる。
【0074】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2に係るハイブリッド自動車(車両)700(以下、単に自動車700とも言う)は、実施形態1に係る電池1を搭載し、この電池1に蓄えた電気エネルギーを、駆動源の駆動エネルギーの全部または一部として使用するものである(
図6参照)。
【0075】
この自動車700は、電池1を複数組み合わせた組電池710を搭載し、エンジン740、フロントモータ720及びリアモータ730を併用して駆動するハイブリッド自動車である。具体的には、この自動車700は、その車体790に、エンジン740と、フロントモータ720及びリアモータ730と、組電池710(電池1)と、ケーブル750と、インバータ760とを搭載する。そして、この自動車700は、組電池710(電池1)に蓄えられた電気エネルギを用いて、フロントモータ720及びリアモータ730を駆動できるように構成されている。
【0076】
この自動車700では、フロントモータ720及びリアモータ730の駆動に際して、組電池710(電池1)を、インバータ760によるインバータ制御で使用する。このため、電池1には、リップル電流による微小振動が発生する場合がある。しかるに、前述したように、この電池1では、リップル電流による微小振動を、正極内部導通部材64で吸収することができる。従って、電池1は、微小振動による電流遮断機構2の耐久性への影響を抑制し、高い信頼性を有するので、この電池1を搭載する自動車700の信頼性を高くできる。
【0077】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1及び2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0078】
例えば、実施形態1では、制振性金属として、制振性鉄−アルミニウム合金を用いたが、他の制振性金属、例えば、M2052制振合金、ニッケル−チタン合金などを用いても良い。また、実施形態1では、正極集電部材64B及び第1弁体64Aを一体材(正極内部導通部材64)とし、第2弁体
65と合わせて、同じ制振性鉄−アルミニウム合金を用いたが、正極集電部材64B、第1弁体64A及び第2弁体
65のうち、少なくとも第1弁体64Aを、制振性金属で構成していれば良い。また、実施形態1では、電流遮断機構2を正極端子60内に設けたが、負極端子70内に設けても良い。
【0079】
また、実施形態1では、電池1の形状を角型としたが、円筒型の電池で同様に構成しても良く、電池形状は限定されない。また、実施形態1では、正極板21と負極板22とをセパレータを介して互いに重ねて捲回した電極体20を用いたが、電極体の形態はこれに限られない。例えば、複数の正極板及び負極板をセパレータを介して交互に積層してなる積層型としても良い。
【0080】
また、実施形態2では、本発明に係る電池1を搭載する車両として、ハイブリッド自動車700を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する車両としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータなどが挙げられる。