(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
(高周波信号線路の構成)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る高周波信号線路10の外観斜視図である。
図2は、
図1の高周波信号線路10の分解図である。
図3は、高周波信号線路10を積層方向の上側から透視した図である。
図4は、高周波信号線路10の断面構造図である。
図5は、高周波信号線路10の一部を抜き出したときの等価回路図である。
図1ないし
図4において、高周波信号線路10の積層方向をz軸方向と定義する。また、高周波信号線路10の長手方向をx軸方向と定義し、x軸方向及びz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
【0020】
高周波信号線路10は、例えば、携帯電話等の電子機器内において、2つの高周波回路を接続するために用いられる。高周波信号線路10は、
図1及び
図2に示すように、誘電体素体12、保護材14、外部端子16(16a〜16d)、信号線20、グランド導体22,24、接続導体26(26a,26b)、ビアホール導体b1〜b6,B1,B2を備えている。
【0021】
誘電体素体12は、z軸方向から平面視したときに、x軸方向に延在する長方形状をなしており、
図2に示す誘電体シート(誘電体層)18(18a〜18c)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されて構成されている。
【0022】
誘電体シート18は、z軸方向から平面視したときに、x軸方向に延在する長方形状をなしており、ポリイミドや液晶ポリマー等の可撓性を有する熱可塑性樹脂により構成されている。誘電体シート18aの厚さT1は、
図4に示すように、誘電体シート18bの厚さT2よりも薄い。例えば、誘電体シート18a〜18cの積層後において、厚さT1は10〜100μmである。本実施形態では、厚さT1は50μmである。また、厚さT2は50〜300μmである。本実施形態では、厚さT2は150μmである。以下では、誘電体シート18のz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、誘電体シート18のz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
【0023】
外部端子16aは、
図1に示すように、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面において、x軸方向の負方向側の端部に設けられている長方形上の導体である。すなわち、外部端子16aは、
図2に示すように、誘電体シート18aの表面のx軸方向の負方向側の端部に設けられている。
【0024】
外部端子16bは、
図1に示すように、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面において、x軸方向の正方向側の端部に設けられている長方形上の導体である。すなわち、外部端子16bは、
図2に示すように、誘電体シート18aの表面のx軸方向の正方向側の端部に設けられている。
【0025】
外部端子16cは、
図1に示すように、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面において、x軸方向の正方向側の端部に設けられている長方形上の導体である。すなわち、外部端子16cは、
図2に示すように、誘電体シート18aの表面のx軸方向の正方向側の端部に設けられている。外部端子16cは、
図1及び
図2に示すように、外部端子16bよりもx軸方向の負方向側に設けられている。
【0026】
外部端子16dは、
図1に示すように、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面において、x軸方向の負方向側の端部に設けられている長方形上の導体である。すなわち、外部端子16dは、
図2に示すように、誘電体シート18aの表面のx軸方向の負方向側の端部に設けられている。外部端子16dは、
図1及び
図2に示すように、外部端子16aよりもx軸方向の正方向側に設けられている。
【0027】
外部端子16a〜16dは、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。なお、外部端子16(16a〜16d)のいずれかは、誘電体素体12のz軸方向の負方向側の主面(裏面)に形成されていてもよい。すなわち、外部接続を得たい主面側に配置していればよい。
【0028】
接続導体26aは、
図2に示すように、誘電体シート18bのz軸方向の正方向側の主面において、x軸方向の正方向側の端部に設けられている長方形上の導体である。接続導体26aは、z軸方向から平面視したときに、外部端子16cと重なっている。接続導体26aは、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0029】
接続導体26bは、
図2に示すように、誘電体シート18bのz軸方向の正方向側の主面において、x軸方向の負方向側の端部に設けられている長方形上の導体である。接続導体26bは、z軸方向から平面視したときに、外部端子16dと重なっている。接続導体26bは、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0030】
信号線20は、
図2に示すように、誘電体素体12内に設けられている線状導体であり、誘電体シート18bの表面をx軸方向に延在している。ただし、信号線20は、接続導体26a,26bと接触しないように、接続導体26a,26bを迂回している。そして、信号線20の両端はそれぞれ、z軸方向から平面視したときに、外部端子16a,16bと重なっている。信号線20の線幅は、例えば100〜500μmである。本実施形態では、信号線20の線幅は240μmである。信号線20は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0031】
グランド導体22(第1のグランド導体)は、
図2に示すように、誘電体素体12内において信号線20よりもz軸方向の正方向側に設けられ、より詳細には、誘電体シート18aの表面に設けられている。グランド導体22は、誘電体シート18aの表面においてx軸方向に延在する長方形状をなしており、誘電体シート18aを介して信号線20と対向している。また、グランド導体22は、外部端子16c,16dと接続されている。グランド導体22は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0032】
また、グランド導体22は、導体層が形成されていない複数の開口30と導体層が形成されている部分である複数のブリッジ部60とが交互に信号線20に沿って設けられることにより、はしご状をなしている。開口30は、
図3に示すように、z軸方向から平面視したときに、信号線20と重なっており、信号線20に関して線対称な形状をなしている。すなわち、信号線20は、開口30のy軸方向の中央を横切っている。
【0033】
更に、信号線20が延在している方向(x軸方向)における開口30の中央を通過する直線Aであって、信号線20に直交する(すなわち、y軸方向に延びる)直線Aに関して、線対称な形状をなしている。以下により詳細に説明する。
【0034】
x軸方向における開口30の中央を含む領域を領域A1と定義する。また、ブリッジ部60に対応する領域を領域A2と定義する。また、領域A1と領域A2との間に位置する領域を領域A3と称す。領域A3は、領域A1のx軸方向の両隣に位置しており、領域A1と領域A2のそれぞれに隣接している。領域A2のx軸方向の長さ(つまりブリッジ部60の長さ)は、例えば、25〜200μmである。本実施形態では、領域A2のx軸方向の長さは、100μmである。
【0035】
直線Aは、
図3に示すように、x軸方向における領域A1の中央を通過している。そして、領域A1における開口30の信号線20に直交する方向(y軸方向)の幅W1は、領域A3における開口30のy軸方向の幅W2よりも広い。すなわち、開口30は、x軸方向における開口30の中央付近において、開口30のその他の部分よりも幅が広くなる形状であって、直線Aに関して線対称な形状をなしている。そして、開口30において、y軸方向の幅が幅W1となっている領域が領域A1であり、y軸方向の幅が幅W2となっている領域が領域A3である。よって、開口30の領域A1,A3の境界には段差が存在している。幅W1は、例えば、500〜1500μmである。本実施形態では、幅W1は、900μmである。また、幅W2は、例えば、250〜750μmである。本実施形態では、幅W2は、480μmである。
【0036】
また、開口30のx軸方向の長さG1は、例えば、1〜5mmである。本実施形態では、長さG1は、3mmである。ここで、長さG1は、開口30における最大幅である幅W1よりも長い。そして、長さG1は、幅W1よりも2倍以上であることが好ましい。
【0037】
また、グランド導体22において、隣り合う開口30の間には、開口が設けられていない。より詳細には、隣り合う開口30に挟まれている領域A2内には、一様に導体層が広がっており、開口が存在しない。
【0038】
グランド導体24(第2のグランド導体)は、
図2に示すように、誘電体素体12内において信号線20よりもz軸方向の負方向側に設けられ、より詳細には、誘電体シート18cの表面に設けられている。グランド導体24は、誘電体シート18aの表面においてx軸方向に連続的に延在する長方形状をなしている、いわゆるベタ状の導体であって、誘電体シート18bを介して信号線20と対向している。なお、グランド導体22はその形成領域において信号線20を完全に覆っている必要はなく、例えば、誘電体シート18の熱可塑性樹脂が熱圧着される際に発生するガスを逃がすためにグランド導体22の所定の位置に微小な穴などが設けられるものであってもよい。グランド導体24は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0039】
以上のように、信号線20は、z軸方向の両側からグランド導体22,24によって挟まれている。すなわち、信号線20及びグランド導体22,24は、トリプレート型のストリップライン構造をなしている。また、信号線20とグランド導体22との間隔は、
図4に示すように誘電体シート18aの厚さT1と略等しく、例えば、10〜100μmである。本実施形態では、信号線20とグランド導体22との間隔は、50μmである。一方、信号線20とグランド導体24との間隔は、
図4に示すように誘電体シート18bの厚さT2と略等しく、例えば、50〜300μmである。本実施形態では、信号線20とグランド導体24との間隔は、150μmである。すなわち、厚みT2は厚みT1よりも大きくなるように設計されている。すなわち、信号線20はグランド導体24よりもグランド導体22寄りの位置に配置されている。
【0040】
ビアホール導体b1は、誘電体シート18aをz軸方向に貫通しており、外部端子16aと信号線20のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。ビアホール導体b2は、誘電体シート18aをz軸方向に貫通しており、外部端子16bと信号線20のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。これにより、信号線20は、外部端子16a,16b間に接続されている。
【0041】
ビアホール導体b3は、誘電体シート18aをz軸方向に貫通しており、外部端子16cと接続導体26aとを接続している。ビアホール導体b4は、誘電体シート18bをz軸方向に貫通しており、接続導体26aとグランド導体24とを接続している。これにより、グランド導体24は、ビアホール導体b3,b4及び接続導体26aを介して外部端子16cに接続されている。
【0042】
ビアホール導体b5は、誘電体シート18aをz軸方向に貫通しており、外部端子16dと接続導体26bとを接続している。ビアホール導体b6は、誘電体シート18bをz軸方向に貫通しており、接続導体26bとグランド導体24とを接続している。これにより、グランド導体24は、ビアホール導体b5,b6及び接続導体26bを介して外部端子16dに接続されている。ビアホール導体b1〜b5は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0043】
ビアホール導体B1,B2はそれぞれ、誘電体シート18a,18bをz軸方向に貫通しており、誘電体シート18a,18bに複数ずつ設けられている。そして、ビアホール導体B1,B2は、互いに接続されることにより1本のビアホール導体を構成しており、グランド導体22とグランド導体24とを接続している。これにより、グランド導体22は、ビアホール導体B1,B2、グランド導体24、ビアホール導体b3,b4及び接続導体26を介して、外部端子16c,16dに接続されている。
【0044】
また、ビアホール導体B1,B2は、
図3に示すように、誘電体シート18a,18bの各領域A2に2つずつ設けられている。なお、
図3では、ビアホール導体B1,B2は、領域A2から領域A3にわずかにはみ出しているが、ビアホール導体B1,B2の中心は、領域A2内に位置している。また、ビアホール導体B1,B2は、x軸方向において開口30に挟まれた領域には設けられていない。すなわち、ビアホール導体B1,B2は、開口30よりもy軸方向の正方向側及び負方向側に設けられている。ビアホール導体B1,B2は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製されている。
【0045】
保護材14は、誘電体シート18aの表面に設けられ、グランド導体22を覆っている。保護材14は、例えば、レジスト材等の可撓性樹脂からなる。
【0046】
以上のように構成された高周波信号線路10では、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において、一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に、最大値Z1、中間値Z3、最小値Z2の順に減少するように変動する。より詳細には、開口30は、領域A1において幅W1を有しており、領域A3において幅W1よりも小さな幅W2を有している。そのため、領域A1における信号線20とグランド導体22との距離は、領域A3における信号線20とグランド導体22との距離よりも大きい。これにより、領域A1における信号線20に発生する磁界の強度が、領域A3における信号線20に発生する磁界の強度よりも大きくなり、領域A1におけるインダクタンス成分が大きくなる。つまり、領域A1においてはL性が支配的になる。
【0047】
更に、領域A2には、ブリッジ部60が設けられている。そのため、領域A3における信号線20とグランド導体22との距離は、領域A2における信号線20とグランド導体22との距離よりも大きい。これにより、領域A2における信号線20に発生する静電容量が、領域A3における信号線20に発生する静電容量よりも大きくなることに加えて、信号線20の領域A2における磁界強度が領域A3における磁界強度より小さくなる。つまり、領域A2においてはC性が支配的になる。
【0048】
以上より、信号線20の特性インピーダンスは、領域A1において、最大値Z1となっている。すなわち、開口30は、信号線20の特性インピーダンスが最大値Z1となる位置において、幅W1を有している。また、信号線20の特性インピーダンスは、領域A3において、中間値Z3となっている。すなわち、開口30は、信号線20の特性インピーダンスが中間値Z3となる位置において、幅W2を有している。また、信号線20の特性インピーダンスは、領域A2において、最小値Z2となっている。
【0049】
これにより、高周波信号線路10は、
図5に示す回路構成を有する。より詳細には、領域A1では、信号線20とグランド導体22との間に殆ど静電容量が発生しないので、主に、信号線20のインダクタンスL1によって特性インピーダンスZ1が発生する。また、領域A2では、信号線20とグランド導体22との間に大きな静電容量C3が発生しているので、主に、静電容量C3によって特性インピーダンスZ2が発生する。また、領域A3では、信号線20とグランド導体22との間に静電容量C3よりも小さな静電容量C2が発生しているので、信号線20のインダクタンスL2及び静電容量C2によって特性インピーダンスZ3が発生している。また、特性インピーダンスZ3は、例えば、55Ωである。特性インピーダンスZ1は、特性インピーダンスZ3よりも高く、例えば、70Ωである。特性インピーダンスZ2は、特性インピーダンスZ3よりも低く、例えば、30Ωである。また、高周波信号線路10全体の特性インピーダンスは、50Ωである。
【0050】
高周波信号線路10は、以下に説明するようにして用いられる。具体的には、高周波信号線路10は、
図1に示すように折り曲げられた状態で電子機器内に収容され、電子機器に内蔵されている第1の高周波回路と第2の高周波回路とを接続する。例えば、第1の高周波回路はアンテナ素子であり、第2の高周波回路は給電回路である。高周波信号線路10のx軸方向の負方向側の端部は、第1の高周波回路が設けられた基板(第1の回路基板)のコネクタに接続される。この際、外部端子16aは、第1の回路基板のコネクタ内の信号端子に接触し、外部端子16dは、第1の回路基板のコネクタ内のグランド端子に接触する。また、高周波信号線路10のx軸方向の負方向側の端部は、第2の高周波回路が設けられた基板(第2の回路基板)のコネクタに接続される。この際、外部端子16bは、第2の回路基板のコネクタ内の信号端子に接触し、外部端子16cは、第2の回路基板のコネクタ内のグランド端子に接触する。これにより、外部端子16c,16dには、グランド電位が印加され、外部端子16a,16bには、高周波信号(例えば、2GHz)が印加される。
【0051】
(高周波信号線路の製造方法)
以下に、高周波信号線路10の製造方法について
図2を参照しながら説明する。以下では、一つの高周波信号線路10が作製される場合を例にとって説明するが、実際には、大判の誘電体シートが積層及びカットされることにより、同時に複数の高周波信号線路10が作製される。
【0052】
まず、表面の全面に銅箔が形成された熱可塑性樹脂からなる誘電体シート18(18a〜18c)を準備する。誘電体シート18の銅箔の表面は、例えば、防錆のための亜鉛鍍金が施されることにより、平滑化されている。誘電体シート18は、20μm〜80μmの厚みを有する液晶ポリマーである。また、銅箔の厚みは、10μm〜20μmである。
【0053】
次に、フォトリソグラフィ工程により、
図2に示す外部端子16及びグランド導体22を誘電体シート18aの表面に形成する。具体的には、誘電体シート18aの銅箔上に、
図2に示す外部端子16及びグランド導体22と同じ形状のレジストを印刷する。そして、銅箔に対してエッチング処理を施すことにより、レジストにより覆われていない部分の銅箔を除去する。その後、レジストを除去する。これにより、
図2に示すような、外部端子16及びグランド導体22が誘電体シート18aの表面に形成される。
【0054】
次に、フォトリソグラフィ工程により、
図2に示す信号線20及び接続導体26を誘電体シート18bの表面に形成する。また、フォトリソグラフィ工程により、
図2に示すグランド導体24を誘電体シート18cの表面に形成する。なお、これらのフォトリソグラフィ工程は、外部端子16及びグランド導体22を形成する際のフォトリソグラフィ工程と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
次に、誘電体シート18a,18bのビアホール導体b1〜b6,B1,B2が形成される位置に対して、裏面側からレーザービームを照射して、ビアホールを形成する。その後、誘電体シート18a,18bに形成したビアホールに対して、導電性ペーストを充填する。
【0056】
次に、グランド導体22、信号線20及びグランド導体24がストリップライン構造をなすように、誘電体シート18a〜18cをz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積み重ねる。そして、誘電体シート18a〜18cに対してz軸方向の正方向側及び負方向側から熱及び圧力を加えることにより、誘電体シート18a〜18cを軟化させて圧着・一体化するとともに、ビアホールに充填された導電性ペーストを固化して、
図2に示すビアホール導体b1〜b6,B1,B2を形成する。なお、各誘電体シート18は、熱及び圧力による圧着に代えてエポキシ系樹脂等の接着剤を用いて一体化されてもよい。また、ビアホールb1〜b6,B1,B2は、誘電体シート18を一体化した後に、貫通孔を形成し、貫通孔に導電性ペーストを充填するかめっき膜を形成することによって形成されてもよい。
【0057】
最後に、樹脂ペーストを塗布することにより、誘電体シート18a上に保護材14を形成する。これにより、
図1に示す高周波信号線路10が得られる。
【0058】
(効果)
高周波信号線路10によれば、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に最大値Z1、中間値Z3、最小値Z2の順に減少するように変動している。これにより、高周波信号線路10の薄型化が実現できるとともに、薄型であるにもかかわらず、信号線20の電極幅が広げられるので、信号線20およびグランド導体22,24において高周波電流の流れる電極部分の表面積を拡大することができ、高周波信号の伝送損失が小さくなる。また、
図3に示すように、1周期(領域A1と2つの領域A2と領域A3)の長さCが1〜5mmほどと短いので、より高周波域まで不要輻射の抑制と伝送損失の改善ができる。また、領域A1の両端に領域A3を置くことで信号線を流れる電流によって生じる強い磁界を領域A2に直接伝えないため領域A2のグランド電位が安定し、グランド導体22のシールド効果が保たれる。これにより不要輻射の発生が抑制できる。その結果、高周波信号線路10では、信号線20とグランド導体22、24との距離を小さくしたとしても信号線20の電極幅を広くでき、特性インピーダンスを保ったまま伝送損失が小さく、不要輻射の小さい高周波信号線路10の薄型化を図ることが可能となる。よって、高周波信号線路10を容易に折り曲げることが可能となり、高周波信号線路10を湾曲させて用いることが可能となる。
【0059】
また、高周波信号線路10によれば、グランド導体22におけるグランド電位の安定化にともなう伝送ロスの低減、さらにはシールド特性の向上ができる。ストリップライン構造の信号線路では、信号線に流れる高周波電流とグランドに流れる高周波電流とが、ある瞬間において、互いに逆方向に流れている。すなわち、信号線路全体の伝送ロスを小さくするためには、信号線における高周波抵抗およびグランドにおける高周波抵抗の両者を小さくしなければならない。ところが、
図17のように、グランド層604におけるブリッジ部607の幅X2を単純に狭くしただけでは、ブリッジ部602における不要インダクタンス成分が大きくなって、グランド層604としての高周波抵抗が大きくなってしまうだけでなく、ブリッジ部607と信号線路602との磁界結合による相互インダクタンス(より厳密に言うと、ブリッジ部における不要インダクタンス成分と信号線路のインダクタンス成分との磁気結合)により、ブリッジ部607における不要インダクタンス成分が更に大きく見えてしまう。
【0060】
また、
図17のフレキシブル基板600では、信号線路602において、グランド層604と重なっている部分と開口606と重なっている部分とが交互に並んでいる。信号線路602においてグランド層604と重なっていない部分の磁界エネルギーは、信号線路602において開口606と重なっている部分のグランド導体に渦電流を引き起こす。そのため、信号線路602と開口606とが重なっている部分と対向するグランド導体部分のグランド電位は磁界により変動する。そのため、信号線路602において開口602と重なっていない部分のシールド性が劣化し、不要輻射が発生してしまう。その結果、信号線路602の伝送損失が発生する。
【0061】
言い換えると、単にブリッジ部607の幅を小さくしただけでは、ブリッジ部607の不要インダクタンス成分が大きくなってしまい、しかも、グランド層604のグランド電位が浮いてしまい、そのシールド効果が無くなって、結果として、不要輻射が生じてしまう。特に、ブリッジ部607の幅X2が狭くなるとその傾向が顕著になる。
【0062】
一方、本実施形態の高周波信号線路10では、領域A1における開口30の幅W1は、領域A3における開口30の幅W2よりも広い。これにより、高周波信号線路10では、領域A1内に位置している信号線20の磁界エネルギーは、領域A3内に位置している信号線20の磁界エネルギーよりも高くなる。また、領域A2内に位置している信号線20の磁界エネルギーは、領域A3内に位置している信号線20の磁界エネルギーよりも低くなる。よって、信号線20の特性インピーダンスが、Z2、Z3、Z1、Z3、Z2・・・の順に繰り返し変動するようになる。よって、信号線20において、x軸方向に隣り合う部分における磁界エネルギーの変動が緩やかになる。その結果、単位構造(領域A1〜A3)の境界において磁界エネルギーが小さくなり、グランド導体のグランド電位の変動が抑制され、不要輻射の発生および高周波信号の伝送損失が抑制される。言い換えると、領域A3によって、ブリッジ部における不要インダクタンス成分の発生を抑制することができ、その結果、ブリッジ部と信号線との間の相互インダクタンス成分を小さくすることができ、グランド電位も安定化できる。ゆえに、薄型であって、グランド導体に比較的大きな開口部を有しているにもかかわらず、不要輻射を低減できるとともに、高周波信号の伝送損失を小さくすることができる。
【0063】
また、ブリッジ部の延伸方向にビアホール導体B1を配置することで、さらにブリッジ部における不要インダクタンス成分の発生を抑制できる。特に、開口30のX軸方向の長さG1(すなわち、ブリッジ部間の長さ)は領域A1における開口部の幅W1よりも長くすることで、開口部面積をできるだけ大きくして所定の特性インピーダンスを達成しつつも、不要輻射の発生を抑えることができる。
【0064】
また、開口30は、信号線20が延在している方向(x軸方向)に周期的に配置される構造の単位構造をなしている。これにより、開口30内における信号線20の特性インピーダンスの周波数特性を開口30のx軸方向の長さにより決定することができる。すなわち、信号線20の特性インピーダンスの周波数特性は、開口30の長さG1が短くなるほど、より高周波域まで拡大できる。開口30の長さG1が長くなるほど領域A1のW1を狭くし開口部を細くすることができる。そのため、不要輻射を小さくし、伝送損失を小さくできるので、高周波信号線路のインピーダンス特性の広帯域化、安定化が図れる。
【0065】
また、以下の理由によっても、高周波信号線路10を湾曲して用いることが可能である。高周波信号線路10では、領域A1は、開口30のy軸方向の幅が最も大きくなっているので最も撓みやすい。一方、領域A2は、開口30が設けられていないので最も撓みにくい。そのため、高周波信号線路10が折り曲げられて用いられる場合には、領域A1が折り曲げられ、領域A2が殆ど折り曲げられない。そこで、高周波信号線路10では、誘電体シート18よりも変形しにくいビアホール導体B1,B2は領域A2に設けられている。これにより、領域A1を容易に曲げることが可能となる。
【0066】
なお、高周波信号線路10では、信号線20とグランド導体22との距離T1の大きさ、及び、信号線20とグランド導体24との距離T2の大きさを調整することによっても、所望の特性インピーダンスを得ることができる。
【0067】
また、高周波信号線路10では、以下に説明する理由により、信号線20が延在している方向における開口30の長さG1は、幅W1よりも長い。すなわち、高周波信号線路10における高周波信号の伝送モードは、TEMモードである。TEMモードでは、高周波信号の伝送方向(x軸方向)に対して、電界及び磁界が直交して形成される。すなわち、磁界は、信号線20を中心に円を描くように発生し、電界は、信号線20からグランド導体22,24に向かって放射状に発生する。ここで、グランド導体22に開口30が設けられると、磁界は、円形を描くので、開口30においてわずかに半径が大きくなるように膨らむだけで、高周波信号線路10外へと大きく漏れない。一方、電界の一部は高周波信号線路10外へ放射する。したがって、高周波信号線路10の不要輻射では、電界放射が大きな割合を示している。
【0068】
ここで、電界は、高周波信号の伝送方向(x軸方向)に対して直交しているので、開口30のy軸方向の幅W1が大きくなると、開口30から放射される電界の量が多く(不要輻射が増加)なってしまう。一方で、幅W1は大きくするほど高周波伝送線路10の特性インピーダンスが高くすることができるが、高周波伝送線路10は、高周波信号の伝送方向(x軸方向)に対して直交する方向に信号線20からその線幅のおよそ3倍離れた距離で電界がほぼなくなるため、それ以上幅W1を広げても特性インピーダンスをさらに高くすることができない。したがって、幅W1が大きくなるほど不要輻射が増加することを考慮すると、必要以上に幅W1を広げることは好ましくない。さらに、幅W1が高周波信号の波長の1/2近くに達するとスロットアンテナとして電磁波が輻射されてしまい、さらに不要輻射が増加してしまう。
【0069】
一方、開口30のx軸方向の長さG1は、その長さが長くなるほど信号線20のグランド導体22との対向面積を減少させることができることから、信号線20の線幅を広くすることが可能となる。これにより、信号線20における高周波抵抗値を小さくすることができるという利点を有する。
【0070】
また、長さG1が幅W1よりも大きい場合、グランド導体22における反電流(渦電流)の高周波抵抗値が小さくなる。
【0071】
以上から、長さG1は幅W1よりも長くすることが好ましく、好ましくは2倍以上とすることが好ましい。ただし、長さG1が高周波信号の波長の1/2に近くなると、スロットアンテナとして開口30から電磁波が輻射されることから、長さG1は、波長に対して十分に短い必要があることは考慮すべきである。
【0072】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図6は、第2の実施形態に係る高周波信号線路10aの分解図である。
図7は、第2の実施形態に係る高周波信号線路10aの信号線20のインピーダンスを示したグラフである。
【0073】
高周波信号線路10aと高周波信号線路10との相違点は、開口30の形状と開口30aの形状とが異なっている点である。より詳細には、開口30のy軸方向の幅は、
図2に示すように、段階的に変化していた。これに対して、開口30aのy軸方向の幅は、連続的に変化している。より詳細には、開口30aのy軸方向の幅は、x軸方向において開口30aの中央から離れるにしたがって連続的に小さくなっている。これにより、
図7に示すように、信号線20の磁界エネルギー及び特性インピーダンスは、周期的に連続的に変化するようになる。
【0074】
なお、高周波信号線路10aでは、
図6に示すように、領域A1は、直線Aを中心として設けられており、開口30aのy軸方向の幅が幅W1となっている部分を含む領域である。したがって、信号線20の特性インピーダンスは、領域A1内において最大値Z1となっている。また、領域A2は、開口30a間に設けられており、ブリッジ部60が設けられている領域である。したがって、信号線20の特性インピーダンスは、領域A2内において最小値Z2となっている。また、領域A3は、領域A1と領域A2とに挟まれており、開口30aのy軸方向の幅が幅W2となっている部分を含む領域である。したがって、信号線20の特性インピーダンスは、領域A3内において中間値Z3となっている。
【0075】
ここで、領域A1は、開口30aのy軸方向の幅が幅W1となっている部分を含んでいればよく、領域A3は、開口30aのy軸方向の幅がW2となっている部分を含んでいればよい。よって、本実施形態では、領域A1と領域A3との境界は、特に、明確に定まっているわけではない。そこで、領域A1と領域A3との境界としては、例えば、開口30aのy軸方向の幅が、(W1+W2)/2となっている位置が挙げられる。
【0076】
以上のような構成を有する高周波信号線路10aにおいても、高周波信号線路10と同様に、湾曲して用いることができ、不要輻射を低減でき、更に、信号線20内における伝送損失を抑制できる。
【0077】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図8は、第3の実施形態に係る高周波信号線路10bの分解図である。
【0078】
高周波信号線路10bと高周波信号線路10との相違点は、グランド導体40,42の有無である。より詳細には、高周波信号線路10bでは、誘電体シート18bの表面上に、すなわち信号線が設けられている層と同じ層にグランド導体40,42が設けられている。グランド導体40は、信号線20よりもy軸方向の正方向側において、x軸方向に延在している長方形状の導体である。グランド導体40は、ビアホール導体B1,B2を介してグランド導体22,24に接続されている。また、グランド導体42は、信号線20よりもy軸方向の負方向側において、x軸方向に延在している長方形状の導体である。グランド導体42は、ビアホール導体B1,B2を介してグランド導体22,24に接続されている。
【0079】
以上のような高周波信号線路10bでは、信号線20のy軸方向の両側にもグランド導体40,42が設けられているので、信号線20からy軸方向の両側へと不要輻射が漏れることが抑制される。
【0080】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図9は、第4の実施形態に係る高周波信号線路10cの分解図である。
【0081】
高周波信号線路10cと高周波信号線路10との相違点は、開口30と同じ形状の開口31がグランド導体24に設けられている点である。開口31は、z軸方向から平面視したときに、開口30と一致した状態で重なっているが、本発明においては、開口30と開口31は異なる周期、ずれた配置、あるいはずれた形状であってもよい。
【0082】
以上のような構成を有する高周波信号線路10cにおいても、高周波信号線路10と同様に、湾曲して用いることができ、不要輻射を低減でき、更に、信号線20内における信号の反射の発生を抑制できる。
【0083】
(第5の実施形態)
以下に、第5の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図10は、第5の実施形態に係る高周波信号線路10dの分解図である。
【0084】
高周波信号線路10dと高周波信号線路10bとの相違点は、x軸方向においてグランド導体22,24が設けられていない領域A4が存在している点である。具体的には、高周波信号線路10dでは、
図10に示すように、領域A4においてグランド導体22,24が設けられていない。そのため、グランド導体22,24はそれぞれ2つに分断されている。これにより、領域A4が曲げやすくなるので、高周波信号線路10dを容易に折り曲げることが可能となる。
【0085】
グランド導体22、24が設けられていない領域A4の特性インピーダンスは高くなるので、グランド導体22において領域A4の近傍のブリッジ部の幅をその他の部分のブリッジ部の幅より広くしてインピーダンスを下げることにより領域A4の近傍の特性インピーダンスを調整することが好ましい。
【0086】
(第6の実施形態)
以下に、第6の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図11は、第6の実施形態に係る高周波信号線路10eの分解図である。
【0087】
高周波信号線路10eと高周波信号線路10との相違点は、開口30の形状と開口44a,44bの形状とが異なっている点である。より詳細には、開口44a,44bは、開口30がy軸方向の正方向側と負方向側とに2つに分断された形状をなしている。高周波信号線路10eでは、開口44a,44bの間をx軸方向に延在する線状導体46が設けられている。線状導体46は、グランド導体22の一部を構成しており、z軸方向から平面視したときに、信号線20と重なっている。
【0088】
以上のような高周波信号線路10eでは、複数の開口44aが、信号線20に沿って並ぶように設けられていると共に、複数の開口44bが、信号線20に沿って並ぶように設けられている。これにより、領域A1における信号線20の特性インピーダンスは、最大値Z1となっている。また、領域A3における信号線20の特性インピーダンスは、中間値Z3となっている。また、領域A2における信号線20の特性インピーダンスは、最小値Z2となっている。
【0089】
なお、高周波信号線路10eにおいて、線状導体46の線幅は、
図11に示すように、信号線20の線幅よりも細いものとした。そのため、信号線20は、z軸方向平面視で線状導体46からはみ出している。しかしながら、線状導体46の線幅は、信号線20よりも広くてもよい。そして、信号線20は、線状導体46からはみ出していなくてもよい。すなわち、開口44a,44bは、必ずしも、信号線20に重なっていなくてもよい。同様に、開口30,30a,31は、信号線20と重なっていなくてもよい。高周波信号線路10eでは、線状導体46およびグランド導体22,24に流れる高周波電流の向きと信号線20に流れる高周波電流の向きとは逆になるので、信号線20が線状導体46からはみ出していても不要輻射の抑制効果は高周波信号線路10より大きくなる。
【0090】
(第7の実施形態)
以下に、第7の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図12は、第7の実施形態に係る高周波信号線路10fの分解図である。
図13は、
図12の高周波信号線路10fを積層方向の上側から透視した図である。
【0091】
高周波信号線路10fと高周波信号線路10との第1の相違点は、ブリッジ部60における信号線20の線幅が、信号線20の特性インピーダンスが最大値Z1となる位置における信号線20の線幅よりも細い点である。高周波信号線路10fと高周波信号線路10との第2の相違点は、信号線20の特性インピーダンスが中間値Z3となる位置(すなわち、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置)と信号線20の特性インピーダンスが最大値Z1となる位置(すなわち、開口30のy軸方向の幅が幅W1である位置)との間において開口30がテーパー状をなしている点である。高周波信号線路10fと高周波信号線路10との第3の相違点は、信号線20の特性インピーダンスが中間値Z3となる位置(すなわち、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置)とブリッジ部60との間において開口30がテーパー状をなしている点である。
【0092】
まず、高周波信号線路10fにおける領域A1〜A3の定義について説明する。領域A1は、開口30において、y軸方向の幅が幅W1となっている領域である。領域A2は、ブリッジ部60に対応する領域である。領域A3は、領域A1と領域A2とに挟まれており、開口30において、y軸方向の幅が幅W2となっている領域を含む領域である。
【0093】
第1の相違点について説明する。
図12及び
図13に示すように、信号線20の領域A1における線幅は、線幅Wbである。一方、信号線20の領域A1における信号線20の線幅は、線幅Wbよりも太い線幅Waである。線幅Waは、例えば、100〜500μmである。本実施形態では、線幅Waは、350μmである。線幅Wbは、例えば、25〜250μmである。本実施形態では、線幅Wbは、100μmである。このように、領域A2における信号線20の線幅が、領域A1における信号線20の線幅よりも細くなることにより、信号線20とブリッジ部60とが重なる面積が小さくなる。その結果、信号線20とブリッジ部60との間に発生する浮遊容量が低減されるようになる。更に、開口部30と重なっている部分の信号線20の線幅は、線幅Waであるので、かかる部分の信号線20のインダクタンス値の増加が抑制される。更に、信号線20の全体の線幅が細くなっているのではなく、信号線20の線幅が部分的に細くなっているので、信号線20の抵抗値の増加が抑制される。
【0094】
また、信号線20は、線幅が変化する部分においてテーパー状をなしている。これにより、信号線20の線幅が変化する部分における抵抗値の変動が緩やかになり、信号線20の線幅が変化する部分において高周波信号の反射が発生することが抑制される。
【0095】
第2の相違点について説明する。開口30は、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置と開口30のy軸方向の幅が幅W1である位置との間においてテーパー状をなしている。すなわち、領域A3のx軸方向の両端がテーパー状をなしている。これにより、グランド導体22に流れる電流の損失が低減される。
【0096】
第3の相違点について説明する。開口30は、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置とブリッジ部60との間において開口30がテーパー状をなしている。これにより、ブリッジ部60のy軸方向の両端がテーパー状をなすようになる。よって、ブリッジ部60のx軸方向の線幅は、信号線20と重なっている部分においてその他の部分よりも細くなる。その結果、ブリッジ部60と信号線20との間に発生する浮遊容量が低減される。また、ブリッジ部60の全体の線幅が細くなっているのではなく、ブリッジ部60の線幅が部分的に細くなっているので、ブリッジ部60の抵抗値及びインダクタンス値の増加が抑制される。
【0097】
(第8の実施形態)
以下に、第8の実施形態に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。
図14は、第8の実施形態に係る高周波信号線路10gの分解図である。
図15は、
図14の高周波信号線路10gを積層方向の上側から透視した図である。
【0098】
高周波信号線路10gと高周波信号線路10cとの相違点は、浮遊導体50,52が設けられている点である。より詳細には、高周波信号線路10gは、誘電体シート18d,18e及び浮遊導体50,52を更に備えている。誘電体シート18dは、誘電体シート18aのz軸方向の正方向側に積層される。誘電体シート18eは、誘電体シート18cのz軸方向の負方向側に積層される。
【0099】
浮遊導体50は、
図14及び
図15に示すように、長方形状をなす導体層であって、誘電体シート18dの表面上に設けられている。これにより、浮遊導体50は、グランド導体22に関して信号線20の反対側に設けられている。
【0100】
また、浮遊導体50は、z軸方向から平面視したときに、信号線20及びグランド導体22に対向している。浮遊導体50のy軸方向の幅W3は、
図15に示すように、領域A1における開口30の幅W1よりも細く、領域A3における開口30の幅W2よりも太い。これにより、ブリッジ部60は、浮遊導体50により覆われている。
【0101】
また、浮遊導体50は、信号線20やグランド導体22等の導体層と電気的に接続されておらず、浮遊電位となっている。浮遊電位は、信号線20とグランド導体22との間の電位である。
【0102】
また、浮遊導体50のz軸方向の正方向側の面は、保護材14によって覆われている。
【0103】
浮遊導体52は、
図14及び
図15に示すように、長方形状をなす導体層であって、誘電体シート18eの表面上に設けられている。これにより、浮遊導体52は、グランド導体24に関して信号線20の反対側に設けられている。
【0104】
また、浮遊導体52は、z軸方向から平面視したときに、信号線20及びグランド導体24に対向している。浮遊導体52のy軸方向の幅W3は、領域A1における開口31の幅W1よりも細く、領域A3における開口31の幅W2よりも太い。これにより、ブリッジ部60は、浮遊導体52により覆われている。
【0105】
また、浮遊導体52は、信号線20やグランド導体24等の導体層と電気的に接続されておらず、浮遊電位となっている。浮遊電位は、信号線20とグランド導体24との間の電位である。
【0106】
浮遊導体50,52が設けられることにより、信号線20の特性インピーダンスが変動することを抑制できる。より詳細には、高周波信号線路10gは、例えば、携帯電話機の内部に用いられる。この場合、高周波信号線路10gの近傍には、誘電体や金属等が配置される。そのため、信号線20の特性インピーダンスが変動してしまうおそれがある。特に、開口30,31を介して誘電体や金属等と信号線20とが対向すると、信号線20の特性インピーダンスは大きく変動してしまう。
【0107】
そこで、高周波信号線路10gでは、浮遊導体50,52が設けられている。これにより、信号線20が誘電体や金属等と直接に対向することが防止される。その結果、信号線20の特性インピーダンスの変動が抑制される。
【0108】
ところで、高周波信号線路10gでは、浮遊導体50,52が信号線20と対向することによって、信号線20と浮遊導体50,52との間に浮遊容量が発生しても、信号線20の特性インピーダンスが変動しにくい。より詳細には、浮遊導体50,52は、信号線20やグランド導体22,24と電気的に接続されていないため、浮遊電位となっている。そのため、信号線20と浮遊導体50との間の浮遊容量と、浮遊導体50,52とグランド導体22,24との間の浮遊容量とは、直列接続されていることになる。
【0109】
ここで、浮遊導体50,52の幅W3は、領域A1における開口30,31の幅W1よりも細く、領域A3における開口30,31の幅W2よりも太い。そのため、グランド導体22,24と浮遊導体50,52とが対向する面積は小さく、グランド導体22,24と浮遊導体50,52との間の浮遊容量も小さい。したがって、直列接続されている信号線20と浮遊導体50との間の浮遊容量と、浮遊導体50,52とグランド導体22,24との間の浮遊容量との合成容量は、小さくなる。したがって、浮遊導体50,52が設けられることによって、信号線20の特性インピーダンスに発生する変動も小さい。
【0110】
(その他の実施形態)
本発明に係る高周波信号線路は、前記実施形態に係る高周波信号線路10,10a〜10gに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0111】
なお、高周波信号線路10,10a〜10gでは、複数の開口30,31,44a,44bは、同じ形状を有している。しかしながら、複数の開口30,31,44a,44bの一部の形状が、その他の複数の開口30,31,44a,44bの形状と異なっていてもよい。例えば、複数の開口30,31,44a,44bの内の所定の開口30,31,44a,44b以外の開口30,31,44a,44bのx軸方向における長さは、該所定の開口30,31,44a,44bのx軸方向における長さよりも長くてもよい。これにより、所定の開口30,31,44a,44bが設けられている領域において、高周波信号線路10,10a〜10gを容易に曲げることが可能となる。
【0112】
なお、高周波信号線路10,10a〜10gに示した構成を組み合わせてもよい。
【0113】
また、各実施形態ではストリップライン構造の高周波伝送線路を用いて説明したが、第2のグランド導体は、必ずしも必要ではなく、第2のグランド導体を備えないマイクロストリップライン構造の高周波伝送線路であってもよい。また、誘電体素体は、単層の基板の一方主面に信号線を有し、他方主面に第1のグランド導体を有した構造であってもよい。
【0114】
また、高周波信号線路10,10a〜10gでは、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において、一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に、最大値Z1、中間値Z3、最小値Z2の順に減少するように変動していた。しかしながら、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において、一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に、最大値Z1、中間値Z4、最小値Z2の順に減少するように変動してもよい。すなわち、中間値Z3と中間値Z4とが異なっていてもよい。例えば、開口30,31,44a,44bは直線Aを介して線対称ではない形状であってもよい。ただし、中間値Z4は、最小値Z2よりも大きくかつ、最大値Z1よりも小さい必要がある。
【0115】
また、隣り合う2つのブリッジ部60間において、最小値Z2の値は異なっていてもよい。すなわち、高周波信号線路10,10a〜10gが全体として所定の特性インピーダンスに合わせられていれば全ての最小値Z2の値が同じである必要はない。ただし、一方のブリッジ部60側の最小値Z2は中間値Z3よりも低い必要があり、他方のブリッジ部60側の最小値Z2は中間値Z4よりも低い必要がある。
なお、第1の実施形態ないし第4の実施形態及び第6の実施形態ないし第8の実施形態に係る高周波信号線路10,10a〜10c,10e〜10gは、参考例である。