特許第5822195号(P5822195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822195
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】基礎杭ピン結合構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20151104BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   E02D27/12 Z
   E02D27/34 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-257947(P2011-257947)
(22)【出願日】2011年11月25日
(65)【公開番号】特開2013-112945(P2013-112945A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】輿石 正己
(72)【発明者】
【氏名】井上 啓明
(72)【発明者】
【氏名】時弘 みどり
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−020960(JP,A)
【文献】 特開2005−344388(JP,A)
【文献】 特開2001−34885(JP,A)
【文献】 特開2001−73390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎杭の杭頭の表面が基礎杭の軸線中心側から側面に向かうに従い下方に傾斜する断面凸円弧状の傾斜面を備えて断面略台形状あるいは断面略円弧状に形成され、
該基礎杭の杭頭に結合して構築される上部構造に、下面から上方に向けて凹み、前記表面の上端部を下方を向く内面に当接させて前記上部構造の荷重を前記基礎杭に伝達させるように、前記基礎杭の杭頭が挿入配置される杭頭挿入凹所が設けられ、
前記基礎杭の杭頭を前記上部構造の杭頭挿入凹所に挿入配置した状態で、一端側を前記基礎杭に、他端側を前記上部構造にそれぞれ接続してアンカーボルトが前記基礎杭の軸線上に配設され、
前記杭頭挿入凹所と前記基礎杭の杭頭の隙間に弾性変形可能な充填材が充填され
前記隙間に前記充填材を充填するための注入口及び排出口を備えた円管状の鋼管パイプが前記基礎杭の杭頭の周囲を囲繞するように、且つ前記充填材を充填する前記隙間を密閉するように配設されていることを特徴とする基礎杭ピン結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭の杭頭と上部構造をピン結合して、上部構造と基礎杭の間で応力を伝達させる基礎杭ピン結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物を構築する場合に、場所打ち杭などの基礎杭を支持地盤まで到達させて構築し、この基礎杭に支持させて上部構造を構築することが行なわれている。また、従来、基礎杭の杭頭を上部構造に剛に結合するようにしており、この場合には、地震が発生し、水平力を受けた際に、杭頭が破壊するおそれがあるため、杭頭鉄筋を密に配置した上、フーチング内に十分な定着長を確保するなどの対策が必要であった。
【0003】
これに対し、上部構造と基礎杭の杭頭の間に基礎杭ピン結合装置(基礎杭ピン結合構造)を設け、上部構造と基礎杭の杭頭を相対回転可能にピン結合することで、杭頭に生じる曲げモーメントを低減し、耐震性能を向上させることが提案、実用化されている。
【0004】
この種の基礎杭ピン結合装置には、基礎杭の杭頭に設置された杭頭部材と、上部構造に固定され、杭頭部材に対向配置される構造物支持部材と、これら杭頭部材及び構造物支持部材に取り付けられたPC鋼棒とを備えて構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。この基礎杭ピン結合装置においては、杭頭部材に球座を設け、構造物支持部材に曲面状の凹面を設けて形成し、球座と凹面を当接させ、杭頭部材と構造物支持部材とを相対的に滑動可能に設置する。これにより、地震が発生した際に、上部構造に対して杭頭が相対回転し、杭頭に生じる曲げモーメントを低減させることができる。すなわち、耐震性能を向上させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−70038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の基礎杭ピン結合装置においては、優れた耐震性能を付与することが可能である反面、杭頭部材と構造物支持部材が、ダクタイル鋳鉄製などで、球座や凹面を備えて形成することが必要であるため、非常に高価であり、また、施工に多大な労力が必要で、広く普及するに至っていないのが現状である。このため、より低コストで且つ容易に施工することを可能にしつつ、基礎杭の杭頭と上部構造をピン結合できる手法が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、より低コストで容易に施工することを可能にしつつ、基礎杭の杭頭と上部構造をピン結合する基礎杭ピン結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の基礎杭ピン結合構造は、基礎杭の杭頭の表面が基礎杭の軸線中心側から側面に向かうに従い下方に傾斜する断面凸円弧状の傾斜面を備えて断面略台形状あるいは断面略円弧状に形成され、該基礎杭の杭頭に結合して構築される上部構造に、下面から上方に向けて凹み、前記表面の上端部を下方を向く内面に当接させて前記上部構造の荷重を前記基礎杭に伝達させるように、前記基礎杭の杭頭が挿入配置される杭頭挿入凹所が設けられ、前記基礎杭の杭頭を前記上部構造の杭頭挿入凹所に挿入配置した状態で、一端側を前記基礎杭に、他端側を前記上部構造にそれぞれ接続してアンカーボルトが前記基礎杭の軸線上に配設され、前記杭頭挿入凹所と前記基礎杭の杭頭の隙間に弾性変形可能な充填材が充填され、前記隙間に前記充填材を充填するための注入口及び排出口を備えた円管状の鋼管パイプが前記基礎杭の杭頭の周囲を囲繞するように、且つ前記充填材を充填する前記隙間を密閉するように配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の基礎杭ピン結合構造においては、基礎杭の杭頭の表面を軸線中心側から基礎杭の側面に向かうに従い下方に傾斜する傾斜面を備えて形成し、上部構造に形成した杭頭挿入凹所に杭頭を挿入配置し、杭頭挿入凹所と杭頭(杭頭部)の間を発泡ウレタンなどの弾性変形可能な充填材で充填しているため、地震が発生した際に、充填材を変形させつつ、上部構造に対して杭頭を相対回転させて変位させることができる。すなわち、このような簡易な構成で基礎杭と上部構造をピン結合し、耐震性能を向上させることができ、地震時に杭頭に生じる曲げモーメントを低減させることが可能になる。
【0011】
また、従来のように、球座や凹面を備えたダクタイル鋳鉄製などの杭頭部材と構造物支持部材を用いる場合と比較し、低コストの基礎杭ピン結合構造を実現することができる。
【0012】
なお、基礎杭の杭頭と上部構造をピン結合した場合には、剛結合する場合と比較し、設計の省力化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る基礎杭ピン結合構造を示す図である。
図2図1のS部を拡大した図である。
図3図1のX1−X1線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態に係る基礎杭ピン結合構造について説明する。
【0015】
はじめに、本実施形態の基礎杭ピン結合構造Aは、図1に示すように、支持層まで到達させて地盤G内に構築した場所打ち杭などの基礎杭1の杭頭(杭頭部)1aと、この基礎杭1に支持させて構築する上部構造2とをピン結合するための構造である。
【0016】
この基礎杭ピン結合構造Aでは、図1から図3に示すように、基礎杭1の杭頭1aの表面1bが基礎杭1の軸線O1中心側から側面1cに向かうに従い下方に傾斜する傾斜面1eを備えて断面略台形状(断面略円弧状)に形成され、この基礎杭1の杭頭1aに結合して構築される上部構造2に、下面から上方に向けて凹み、基礎杭1の杭頭1aが挿入配置される杭頭挿入凹所2aが設けられている。また、基礎杭1の杭頭1aを上部構造2の杭頭挿入凹所2aに挿入配置した状態で、一端側を基礎杭1に、他端側を上部構造2にそれぞれ接続してアンカーボルト3が基礎杭1の軸線O1(軸線O1の延長線)上に配設されている。さらに、杭頭挿入凹所2aと基礎杭1の杭頭1aの隙間に弾性変形可能な充填材4が充填されている。
【0017】
そして、このように構成した本実施形態の基礎杭ピン結合構造Aを施工する際には、まず、場所打ち杭を所定の長さのカットし、杭頭1aの表面1bを台形に整形する。このとき、本実施形態では、杭頭1aの基礎杭1の軸線O1中心の上端部に円形状の水平面1dを形成し、この水平面1dの周端から基礎杭1の側面1cまでの部分に、水平面1dの周端から基礎杭1の側面1cに向かうに従い漸次下方に傾斜する傾斜面1eを形成して、杭頭1aの表面1bを断面略台形状に整形する。また、本実施形態では、傾斜面1eを断面凸円弧状に形成している。
【0018】
次に、基礎杭1の杭頭1aに、水平面1dから軸線O1中心で且つ軸線O1に沿ってアンカーボルト挿入孔1fを穿設し、このアンカーボルト挿入孔1fにアンカーボルト3の一端側を挿入するとともにグラウトして、アンカーボルト3を杭頭1aに設置する。
【0019】
次に、基礎杭1の杭頭1aの周長を実測し、円管状の鋼管パイプ5を製作し、杭頭1aの周囲を囲繞するようにスペーサー8等で高さを調整して設置する。また、この鋼管パイプ5には、注入口5aと排出口5b、それらに接続する注入パイプ6、排出パイプ7がそれぞれ設けられている。
【0020】
そして、鋼管パイプ5上に充填材4をせき止めるためのせき板等を設置して、杭1の上面1b、側面1c、杭1とスペーサーの間に発泡ウレタン等の充填材4(弾性変形可能な充填材)を打設、注入する。充填材4の厚さは、設計で求めた基礎杭1の相対回転量から求めた隙間δの大きさや、上部構造構築時の充填材4の沈下量等を考慮して、上部構造2の杭頭挿入凹所2aの内面(上面及び側面)と基礎杭1の天端角部1gとの間隔が隙間δとなるように決定する。
【0021】
次に、鋼管パイプ5の注入口5aから鋼管パイプ5の内部にグラウトを充填する。グラウトの充填管理は、排出パイプ7からのグラウトの排出の確認によって行なう。
【0022】
最後に、上部構造2を構築する。上部構造2はアンカーボルト3の上端側(他端側)が埋設され、このアンカーボルト3が上部構造2と基礎杭1に接続されるとともに、杭頭1aの水平面1d上に上部構造2の杭頭挿入凹所2aの下方を向く内面が当接して、上部構造2の荷重が基礎杭1に伝達支持される。以上で、本実施形態の基礎杭ピン結合構造Aの施工が完了する。
【0023】
そして、上記構成からなる本実施形態の基礎杭ピン結合構造Aにおいては、地震が発生した際に、上部構造2の杭頭挿入凹所2aの内面と基礎杭1の杭頭1aの天端角部1gとの間の隙間δの大きさに応じた量で、上部構造2に対して杭頭1aが相対回転する。これにより、地震時に杭頭1aに生じる応力が低減され、耐震性能の向上が図られる。なお、本実施形態において、上部構造2の杭頭挿入凹所2aの内面と基礎杭1の杭頭1aの天端角部1gとの間の隙間δの大きさは、レベル2地震動の地震が発生した際に上部構造2に対して基礎杭1の杭頭1aが回転する杭頭回転角に基づいて設定される。
【0024】
したがって、本実施形態の基礎杭ピン結合構造Aにおいては、基礎杭1の杭頭1aの表面1bを軸線O1中心側から基礎杭1の側面1cに向かうに従い下方に傾斜する傾斜面1eを備えて形成し、上部構造2に形成した杭頭挿入凹所2aに杭頭1aを挿入配置し、杭頭挿入凹所2aと杭頭(杭頭部)1aの間を発泡ウレタンなどの弾性変形可能な充填材4で充填しているため、地震が発生した際に、充填材4を変形させつつ、上部構造2に対して杭頭1aを相対回転させて変位させることができる。すなわち、このような簡易な構成で基礎杭1と上部構造2をピン結合し、耐震性能を向上させることができ、地震時に杭頭1aに生じる曲げモーメントを低減させることが可能になる。
【0025】
また、従来のように、球座や凹面を備えたダクタイル鋳鉄製などの杭頭部材と構造物支持部材を用いる場合と比較し、低コストの基礎杭ピン結合構造Aを構築(実現)することができる。
【0026】
さらに、基礎杭1の杭頭1aと上部構造2をピン結合したことで、剛結合する場合と比較し、設計の省力化を図ることが可能になる。
【0027】
以上、本発明に係る基礎杭ピン結合構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、最後に上部構造2を構築することとしたが、何らかの方法で杭頭1aの傾斜面1e及び側面1cと上部構造2との隙間を確保した上で先に上部構造2を構築し、あらかじめ設置しておいた注入口から充填材4の注入を行なってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 基礎杭
1a 杭頭
1b 表面
1c 側面
1d 水平面
1e 傾斜面
1f アンカーボルト挿入孔
1g 天端角部
2 上部構造
2a 杭頭挿入凹所
3 アンカーボルト
4 充填材
5 鋼管パイプ
6 注入パイプ
7 排出パイプ
8 スペーサー
A 基礎杭ピン結合構造
G 地盤
O1 軸線
図1
図2
図3