特許第5822404号(P5822404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822404
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】真空積層装置および真空積層方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20151104BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20151104BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20151104BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20151104BHJP
【FI】
   B29C43/58
   B29C43/18
   B29C43/56
   B29C63/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-93399(P2013-93399)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213547(P2014-213547A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智章
(72)【発明者】
【氏名】小林 良彰
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−276542(JP,A)
【文献】 特開2002−144429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
51/00−51/46
63/00−63/48
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧されたチャンバ内において加圧膜の裏面側に加圧空気を供給し被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する真空積層装置において、
始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定が可能な設定装置を備えたことを特徴とする真空積層装置。
【請求項2】
始端の設定圧力と終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力と終端の設定圧力の差圧と時間との関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定と、
所定の設定圧力と時間の関係による加圧膜の段階制御の設定とを、
設定画面において選択可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の真空積層装置。
【請求項3】
減圧されたチャンバ内において加圧膜の裏面側に加圧空気を供給し被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する真空積層方法において、
始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定を可能としたことを特徴とする真空積層方法。
【請求項4】
始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のクローズドループ制御によるスロープ制御の設定を用いて、最高圧による加圧設定から加圧終了までの制御のうちの少なくとも一部の制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の真空積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内において被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する真空積層装置および真空積層方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空チャンバ内において被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する真空積層装置の加圧制御については、一般的には一つの設定圧力により加圧制御が行われていた。即ち設定圧力と昇圧されるまで加圧機構であるコンプレッサから加圧膜の裏面側に加圧空気を供給し、設定圧力まで昇圧されたら前記設定圧力を所定時間維持し、その後に大気圧まで減圧させる制御が行われてきた。しかしこのような制御では、特に昇圧の際に問題があるとして特許文献1、特許文献2に記載されたような改良も行われている。
【0003】
特許文献1では、空圧源よりも低い圧力により積層成形する場合に、増圧弁を通過することにより空圧の流量が減少してしまい、設定圧力まで上昇するのに時間がかかるという問題を解決するために、前記増圧弁の回避回路を設けたものである。また特許文献1には、電磁比例弁式の圧力調整弁を用いて、制御装置により設定圧力を数値で入力することも記載されている。また特許文献2は、加圧時に加圧膜が跳ね上がって積層材を不均一に押圧するという問題を解決するために、一旦大気に連通される工程を設けて、空気圧を段階的に変化させることが記載されている。また特許文献2には、複数の空気圧制御弁を並列に設けて、それらを切り換えて段階的に加圧膜内に送られる空気圧を制御することなども記載されている。
【0004】
しかしながら真空積層装置の実際の成形においては、加圧膜の加圧設定は多段に昇圧するだけでは、各種の成形に応じることはできない場合もある。時間との関係においてどのように加圧力を昇圧させるかということは製品によっては非常に重要であるが、前記特許文献1および特許文献2ではそのような点は伺い知ることはできない。また加圧膜の加圧設定を行う際に、時間との関係において圧力の上昇、所定圧に維持、および圧力の下降等の設定入力することが容易ではないが、これらの設定入力方法についても前記特許文献1および特許文献2にはまったく記載がされていない。更にまた、前記特許文献1および特許文献2は、主に昇圧時の制御について記載しているが、減圧時の制御については何ら記載されていない。従来の真空積層装置の減圧時の制御は、一度に加圧膜の圧抜きを行っていたので、積層材の積層される基板に対して貼着されたフィルムが剥がれてしまう場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−144429号公報(請求項1、0016、0017、0021、図1
【特許文献2】特開2002−225061号公報(請求項1、0003、0004、008、0011、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1、特許文献2では、加圧、減圧ともに各段階において時間との関係においてどのように加圧膜に及ぼす圧力を上昇または下降させるかという設定を行うことはできなかった。また複数の段階にわたって加圧膜に及ぼす圧力を上昇、所定圧に維持、および圧力を下降等の設定入力を行うことはできなかった。そしてまた特には加圧膜に及ぼす圧力を減圧する際の制御については一度に圧抜きがなされるため、被積層材と積層材の接着に不良が発生する場合があった。
【0007】
そこで本発明の真空積層装置および真空積層方法は、前記問題を解決するために、各段階において時間との関係において加圧膜に及ぼす圧力をある度合いにより昇圧または減圧させる設定が可能、または複数の段階にわたって加圧膜に及ぼす圧力の昇圧・所定圧に維持・圧力の降圧等の設定が自在に可能、または加圧膜の圧抜き時の制御を良好に行うことが可能、の少なくとも一つを実現可能とした真空積層装置および真空積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の真空積層装置は、減圧されたチャンバ内において加圧膜の裏面側に加圧空気を供給し被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する真空積層装置において、始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定が可能な設定装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の真空積層装置は、請求項1において、始端の設定圧力と終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力と終端の設定圧力の差圧と時間との関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定と、所定の設定圧力と時間の関係による加圧膜の段階制御の設定とを、設定画面において選択可能にしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の真空積層方法は、減圧されたチャンバ内において加圧膜の裏面側に加圧空気を供給し被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する真空積層方法において、始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定を可能としたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載の真空積層方法は、請求項3において始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のクローズドループ制御によるスロープ制御の設定を用いて、最高圧による加圧設定から加圧終了までの制御のうちの少なくとも一部の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空積層装置および真空積層方法は、減圧されたチャンバ内において加圧膜の裏面側に加圧空気を供給し被積層材および積層材を加圧膜により加圧して積層する際に、始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間の関係、または始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から演算した結果に基づいて導き出される加圧膜のスロープ制御の設定を可能としたので、時間との関係において加圧膜に及ぼす圧力をどのように昇圧または減圧させるかという設定が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の真空積層装置の概略説明図である。
図2】本実施形態の真空積層装置の設定画面を示す図である。
図3】本実施形態の真空積層装置による加圧工程の実測値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の真空積層装置11は、図1に示されるように一方の盤である上盤12に対して他方の盤である下盤の13が図示しない昇降機構により昇降し、上盤12と下盤13の間に成形空間であるチャンバ14が形成されるようになっている。そして上盤12の下面の中央には図示しないヒータによって加熱される熱板15が取付けられ、熱板15の下面の全面にはシリコンまたはフッ素ゴムといった耐熱ゴムからなる弾性を有するゴム膜16が貼付けられている。また上盤12の熱板15が取付けられていない部分には、外界との連通孔17が形成され、前記連通孔17は管路18と三方切換弁19を介して減圧源である真空ポンプ20に接続されている。
【0015】
下盤13の上面の中央には、図示しないヒータによって加熱される熱板21が取付けられている。下盤13にはシリコンまたはフッ素ゴムといった耐熱ゴムからなり弾性を有する加圧膜(ダイアフラム)22が形成されている。加圧膜22は、その周囲が枠体23とボルトを用いて下盤13に固定され、熱板21の上面を覆うように取付けられる。そして下盤13に取付けられる加圧膜22の裏面側であって、熱板21が取付けられていない部分には外界との連通孔24が形成され、前記連通孔24は、管路25と開閉弁(電磁開閉弁)26等を介して減圧源である真空ポンプ20に接続されている。また連通孔24は、管路25から分岐した管路27に設けられた開閉弁(電磁開閉弁)28等を介して加圧源であるコンプレッサ29に接続されている。従って加圧膜22は、コンプレッサ22と連通されることにより、加圧膜22(裏面側)と下盤13との間の閉鎖空間に加圧空気が送られて膨出させるようになっている。
【0016】
枠体23の上面にはシール部材30が設けられ、下盤13が上昇してシール部材30が上盤12の周辺部12aの下面と当接した際に、上盤12と下盤13(枠体23を含む)の間にチャンバ14が形成されるようになっている。なお真空積層装置11は、加圧膜22が取付けられる側の盤や、昇降される側の盤は、上盤12または下盤13のいずれでもよい。また真空積層装置11へ被積層材である基板Wや積層材である接着用フィルムF等の搬入は、上下に設けられた連続式のキャリアフィルムCを図示しない一方のロールから他方のロールへ送ることにより行われる。しかし被積層材が連続した帯状のフレキシブル基板や、積層材のフィルムが連続式の帯状のフィルムであってもよい。また被積層材等をロボットや人手により真空積層装置11内に載置するものでもよい。
【0017】
次に真空積層装置11の減圧機構31と加圧機構32を構成する回路について説明する。減圧機構31を構成する回路は、前記したように減圧源の真空ポンプ20からは三方切換弁(電磁三方切換弁)19を介して、チャンバ14に接続される連通孔17へは、管路18が設けられている。そして三方切換弁19のもう一方のポートは別の管路とサイレンサ33を介して外界に接続されている。従って三方切換弁19によりチャンバ14と真空ポンプ20、チャンバ14と外界が切り換えて接続されるようになっている。そして管路18の三方切換弁19よりも上流側(真空ポンプ側)には、真空度を測定する真空センサ34が設けられている。
【0018】
加圧機構32を構成する回路は、加圧源であるコンプレッサ29から接続される管路27にはコンプレッサ29の側から順に、安全弁35、圧力制御弁であるレギュレータ(電空レギュレータ)36、開閉弁28が設けられている。安全弁35は、管路27の下流側(真空積層装置側)の空気圧力を設定以下に保つ。またレギュレータ36は、電気信号に比例して管路27内および加圧膜の裏面側の空気圧力を無段階または所定段階ごとに制御可能である。
【0019】
更には開閉弁28の下流側の管路27は、前記した真空ポンプ20からの管路25と接続されている。そして管路25は、加圧膜22の裏面側(空間が形成される部分)へ接続される連通孔24に接続されている。また管路27の途中からは圧抜き用の管路37が設けられ、途中には開閉弁38が設けられ、その外気側にはサイレンサ39が取付けられている。圧抜き用の管路37、開閉弁38、サイレンサ39は、急速に圧抜きを行う際にのみ使用するが、本実施形態の所定時間かけて制御して減圧を行うスロープ制御の際には使用しない。更には管路27には管路27内の空気圧を測定するための圧力センサ(空気圧センサ)40が設けられている。なお真空積層装置11の減圧機構31や加圧機構32を構成する回路については、その他にもフィルタや弁等が存在する。また弁やセンサ等は同様の機能を達成できる別のものであってもよく、弁やセンサ等の配置位置も同様の機能を達成できるものであれば限定されない。
【0020】
真空積層装置11には制御装置41が設けられている。制御装置41は、タイマ機能を備えており、真空積層装置11を所定の手順に沿ってシーケンス制御する。更に具体的には制御装置41は、チャンバ14内の真空と常圧の切り替え、加圧膜22の裏面側に及ぼす空気圧の制御、下盤13の開閉、上下の盤の温度コントロール、キャリアフィルムCの搬送装置の制御などを行う。また制御装置41は、設定装置である設定画面42に接続され、設定装置から各種の成形に関する設定値(成形条件)を取り込んで制御装置41の記憶部に記憶可能となっている。更には真空積層装置11にて積層成形が行われた際の実測値も各センサを介して記憶部に記憶可能となっている。特に本発明に関しては、制御装置41は、管路27に設けられた圧力センサ40に接続され、前記圧力センサ40の検出値は信号として制御装置41に送られる。また制御装置41はレギュレータ36に接続され、制御装置41からの指令によりレギュレータ36の下流側の管路27(加圧膜22の裏面側)の空気圧力が制御される。また制御装置41は、各種弁のソレノイド等を制御する。
【0021】
次に真空積層装置11の設定装置である設定画面42について図2により説明する。本実施形態の設定装置は、タッチパネル式の設定画面42であり、画面上で設定入力が行えるとともに設定値や実測値も同時に表示されるようになっている。しかし設定装置については、設定ボタンと表示部(画面)がまったく別個に設けられたものでもよい。設定装置の設定画面については、温度制御画面やフィルム送り画面等の複数の画面から構成され、それぞれの画面に切替えられるようになっている。ここでは、積層材と被積層材の積層成形に関係する加圧膜22の加圧制御に関する設定画面42について説明する。
【0022】
加圧膜22の加圧制御に関する設定画面42について上段の左側から順に説明すると、「エア制御ON、OFFボタン」43があり、通常の加圧膜の加圧制御を行う場合はONが選択される。前記「エア制御ON、OFFボタン」43の右側には1〜6段目の段表示部44のセルが横一列に並んでおり、本実施形態では6段までの設定が可能となっている。なお段数については、これに限定されるものではない。そして前記段表示部44の上側のセルには、この段における加圧制御が、昇圧(増圧)に相当するのか、保持(所定圧に維持)に相当するのか、減圧(降圧)に相当するのかが一目見ただけで判るように、昇圧、保持、減圧のいずれかを表示する状態表示部45のセルが横一列に設けられている。
【0023】
「エア制御ON、OFFボタン」43の下側の行は、「エア制御モード」選択部46の行である。「エア制御モード」選択部46には、1段目から6段目までに対応するセルが横一列に設けられ、それぞれのセルには「STEP」選択ボタン47と「SLOPE」選択ボタン48が上下に設けられている。ここにおいて「STEP」とは、一つの設定圧力と時間の関係から加圧膜22の段階制御(等圧制御)の設定を指す。また「SLOPE」とは各段の始端(スタート時)の設定圧力および終端(終了時)の設定圧力と時間の関係、または各段の始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間の関係から導き出され、ある度合いにより昇圧または減圧を行う加圧膜のスロープ加圧制御の設定を指す。従って時間軸を横軸、加圧設定値を縦軸にして「SLOPE」(スロープ加圧制御)をグラフ表示すると、傾斜線として描画される。なお前記スロープ制御の傾斜線は、短時間ごとに所定値づつ上昇または下降する階段状ものを含む。「STEP」選択ボタン47と「SLOPE」選択ボタン48は、選択されているほうの字が濃く(または太く)なるか、またはボタン全体変色させるか、選択されていないほうの字が消えるか薄く(細く)なる等、区別可能となっている。
【0024】
「エア制御モード」選択部46の下側の行は、設定圧力を設定入力するための「エア圧力(MPa)」設定部49の行である。「エア圧力(MPa)」設定部49には、1段目から6段目までに対応するセルが横一列に設けられ、それぞれのセルに各段の設定圧力が入力可能となっている。より詳しくは、対応する段について前記「STEP」選択ボタン47が選択入力されている場合は、その段階設定の設定圧力をそのまま入力する。また「SLOPE」選択ボタン48が選択入力された場合は、その段における始端の設定圧力と終端の設定圧力の差圧を入力することにより設定入力が行われる。なお「SLOPE」選択ボタン48の入力については、始端の設定圧力と終端の設定入力の双方を設定入力することにより自動的に演算するようにしてもよい。その場合は、「SLOPE」選択ボタン48を選択すると各段ごとに始端側、終端側の入力ボックスが設けられるようにするなどすることが望ましい。また「SLOPE」選択ボタン38が選択されている両側の段の設定が「STEP」の場合、時間のみを入力することにより、差圧を入力しないでも「SLOPE」選択ボタン48の設定が行えるようにしてもよい。その場合も「始端の設定圧力と終端の設定圧力と時間の関係」に含まれる。更には「SLOPE」選択ボタン48は、傾きを表わす一次関数式等を入力するようにしてもよい。その場合についても、演算した結果に基づいてそれぞれ「始端の設定圧力と終端の設定圧力と時間の関係から導き出される加圧膜のスロープ制御の概念に含まれる。なお他の間数式を用いる場合は昇圧や減圧の程度がグラフ上では曲線として表わされる場合も有り得る。
【0025】
「エア圧力(MPa)」設定部49の行の下側の行は、それぞれの段の時間を設定入力するための「エア制御時間(秒)」設定部50の行である。「エア制御時間(秒)」設定部50には、1段目から6段目までに対応するセルが横一列に設けられ、それぞれのセルに各段の設定時間が入力可能となっている。より詳しくは、ある段について「STEP」選択ボタン47が選択入力されている場合は、一つの設定圧力を維持する時間であり、「SLOPE」選択ボタン48が選択入力されていた場合は、その段の開始時の圧力から終了時の圧力となるまでの時間が入力される。そして開始時の設定圧力と終了時の設定圧力の差と時間との関係から、圧力の昇圧や減圧の程度(傾き)が定まる。
【0026】
「エア制御時間(秒)」設定部50の行の下側の行は、それぞれの段の実際の経過時間を表示するための「経過時間(秒)」表示部51の行である。「経過時間(秒)」表示部51には、1段目から6段目までに対応するセルが横一列に設けられ、それぞれのセルに各段の実際の経過時間が表示される。なおこの図2においては、加圧工程が開始されてから10秒が経過した状態を示している。また「経過時間(秒)」表示部51の行の下側の「トータル時間」表示部52のセルは、加圧工程全体の設定時間と実際の経過時間が表示される。加圧工程全体の設定時間は、上記の「エア制御時間(秒)」設定部50の各段のセルに設定入力された時間の合計が自動的に表示される。また前記の「トータル時間」表示部52のセルの右側または下方には数字の入力キーと実行キーからなるテンキーのボックス53が設けられている。なおこれ以外に、同じ設定画面42内に、各段の設定値および/または積層成形時の各段の実測値をグラフにより表示可能としてもよい。
【0027】
次に真空積層装置11を用いた真空積層方法について説明する。真空積層装置11においては、積層される被積層材W(基板等の積層される層)と積層材F(フィルム等)の種類によって加圧工程の成形条件は多彩である。従って前記の各段において、一定の圧力により所定時間の加圧を行う段階制御(「STEP」選択ボタン47の選択入力)と、その段の最初の圧力と最後の圧力と、その段の所要時間の関係か、またはその段の最初の圧力および最後圧力の差圧と時間の関係から導き出される加圧膜のスロープ制御(「SLOPE」選択ボタン48の選択入力)をそれぞれ自由に使い分けて、それらを組み合わせることにより多彩な成形条件を組み立てることができる。
【0028】
一例であるが、ここでは「エア制御モード」設定部46の1段目に対応するセルの「SLOPE」選択ボタン48を選択入力する。次の行の「エア圧力(MPa)」設定部49の1段目に対応するセルに、0MPaから0.9MPaまで昇圧させる際の差圧:0.9MPaを「0.9」と設定入力する。次の行の「エア制御時間(秒)」設定部50の1段目に対応するセルに、制御時間10秒に対応して「10」と設定入力を行う。また2段目については、「STEP」選択ボタン47を選択入力して0.9MPa、制御時間20秒の設定入力を行う。3段目は、「SLOPE」選択ボタン48を選択入力して0.9MPaから0MPaまで減圧(差圧:−0.9MPa)、制御時間20秒の設定入力を行う。4段目は、「STEP」選択ボタン47を選択入力して0MPa、制御時間5秒の設定入力を行う。するとトータル時間は自動的に演算されて「トータル加圧時間」表示部52に、55秒と表示される。なおこの例においては、設定値も実測値すべて大気圧を0MPaとするゲージ圧により行われるが、設定値と実測値に絶対圧を用いるようにしてもよい。
【0029】
次に実際の積層成形を開始する。まずキャリアフィルムCにより被積層材Wである基板と積層材Fである基板と接着されるフィルムが真空積層装置11の下盤13と上盤12の間に搬送され停止されると、下盤13が上昇して、上盤12と下盤13の間にチャンバ14が形成される。この際被積層材Wと積層材FはキャリアフィルムCに保持されてチャンバ14内で上盤12(熱板15やゴム膜16を含む)および下盤13(熱板21や加圧膜22を含む)とは直接に接触しない状態に保たれる。
【0030】
次に三方切換弁19を切換えてチャンバ14と真空ポンプ20を連通させてチャンバ14内を真空化(所定値まで減圧)する。この際に被積層材Fである接着されるフィルムは上盤12の熱板15と下盤13の熱板21からの輻射熱により溶融または軟化が進行する。この際、開閉弁26はソレノイドが励磁され開放されており、真空ポンプ20と加圧膜22の裏面側に接続される連通孔24は接続されており、加圧膜22自体が下盤13に向けて吸引されていて膨出するのが防止されている。
【0031】
次にチャンバ14内の真空度を真空センサ34により検出して真空度が設定値まで減圧されるか、またはチャンバ形成から所定時間が経過すると、開閉弁26が閉鎖されるとともに、加圧源であるコンプレッサ29に接続される管路27の開閉弁28が励磁されて開放される。そのことにより加圧膜22(ダイアフラム)の裏面側に連通孔24を介して加圧空気が供給される。なおチャンバ14内は減圧されて真空化されているから加圧膜22の裏面側に送られる空気圧が大気圧に到達しない状態でも相対的な圧力差により加圧膜22は上方に向けて膨出し、被積層材Wと積層材Fを上盤12のゴム膜16に押し付けて加圧が開始される。
【0032】
本実施形態の加圧工程は、圧力センサ40の値が大気圧を示す0MPa(ゲージ圧=以後の値も全てゲージ圧)に到達した時点から開始される。なお加圧工程は、開閉弁28の開放から開始されるように設定されるものでもよい。圧力センサ40の大気圧に到達したことが圧力センサ40から制御装置41に送られると、制御装置41ではレギュレータ36の値を時間と差圧との関係から演算された昇圧度に対応するように無段階に制御して加圧膜22の裏面側に供給する加圧空気の昇圧を図る。本実施形態では、1段目として10秒をかけて0.9MPaまで上昇させる。本実施形態では、レギュレータ(電空レギュレータ)36の制御は、スロープ制御、段階制御ともに、圧力センサ40の値をフィードバックして制御装置41からレギュレータ36に指令を送る形でのクローズドループ制御により行われる。特にクローズドループ制御によりスロープ制御を行って昇圧することにより、段階制御のときのような加圧膜22の跳ね上がりを防止することができる。
【0033】
なお本発明の「SLOPE」選択ボタン47(スロープ制御)の設定は、各段ごとの始端の設定圧力および終端の設定圧力の差圧と時間、または各段ごとの始端の設定圧力および終端の設定圧力と時間から導き出される制御であれば、レギュレータ等により無段階に昇圧(または減圧)されるものに限定されない。より具体的には前記設定に伴い、前記各段内(期間内)の時間を細分化し、各時間ごとに一定圧力づつ昇圧(または減圧)させることにより細かいステップを刻んで昇圧(または減圧)させるものについても、無段階の昇圧ではないもののスロープ制御に含まれる。またレギュレータ等の空気圧の圧力制御機器の実際の制御がどのようであろうとも、設定方法において前記のスロープ制御の条件を満たすものであれば、スロープ制御に含まれる。
【0034】
そして図3に実測値が示されるように1段目で、始端1aから終端1bまで、10秒かけて0.9MPaに昇圧されると、次の2段目では、始端2aから終端2bまで、0.9MPaの空気圧を保持して20秒かけて段階制御(ステップ制御)により積層材Fおよび被積層材Wの加圧を継続する。次の3段目では、始端3aから終端3bまで、今回の最高圧の0.9MPaから0MPaまで20秒かけてスロープ制御による減圧制御を行う。この際、従来の圧抜き方法では最高圧から大気圧まで、一気に減圧していたので、積層材または被積層材の種類によっては剥離等の不良が発生する場合があった。本発明では、それぞれの積層材に応じた減圧条件を設定することができる。特にクローズドループ制御によるスロープ制御により最適な時間(または最適な減圧比率)により、減圧を行うことにより、従来のような圧抜き時に加圧膜22のコントロールができず、急速な加圧膜22の収縮により積層材が被積層材から剥がれる等の不良はほとんど発生しなくなる。昇圧時および降圧時にクローズドループ制御によるスロープ制御を行うことにより、加圧膜22のゴムの弾性力の差をそれほど意識することなく成形を行うことができる。なおスロープ制御による減圧に途中で0MPaよりも降圧である所定圧でステップ制御(段階制御)を行い、その後に再度スロープ制御による減圧を行って0MPaに到達されるものでもよい。
【0035】
次の4段目では、始端4aから終端4bまで、0MPaにて5秒間の段階制御による保持を行う。前記したようにチャンバ14内は減圧されて真空状態が保たれているから、この状態でも加圧膜22により積層材Fと被積層材Wへの加圧は継続される。そして本実施形態では、4段目が終了すると加圧工程は終了し、コンプレッサ29に接続される開閉弁28を閉鎖するともに、真空ポンプ20に接続される開閉弁26が開放されて加圧膜22は下盤13に向けて吸引される。なお本実施形態では、一例として最高圧による加圧設定から加圧終了までの制御のうちの少なくとも一部の制御をスロープ制御により行うことが望ましい。なお図3はゲージ圧による実測値を示しているが、設定値も同様に設定画面と同時にまたは別画面にグラフ表示するようにしてもよく、設定値と実測値を重ねて表示するようにしてもよい。
【0036】
前記により加圧膜22の膨出は終了し、加圧膜22による積層材Fと被積層材W(積層成形品)の加圧も終了する。次に三方切換弁19を切換えて、減圧されているチャンバ14内を大気開放する。そしてチャンバ14内が大気圧となったら、下盤13を下降させてチャンバ14を開放し、キャリアフィルムCを移動させて積層成形の完了した積層成形品を真空積層装置11から送り出す。この際同時に次の被積層材Wと積層材Fが真空積層装置11に供給され、再び次のサイクルが開始される。なお真空積層装置11の後工程に別のプレス装置や別の加圧膜を有する真空積層装置が設けられることもある。
【0037】
また上記の本実施形態では、レギュレータ36はクローズドループ制御されるが、予め定めた条件に従ってオープン制御するようにしてもよい。またクローズドループ制御とオープン制御を組合せてもよい。オープンループ制御のスロープ制御であっても、昇圧値と時間、または降圧値と時間の関係を最適に設定することにより、従来の1圧による加圧膜の制御と比較してオーバーシュートによる加圧膜の急速な膨出や収縮を防止することができる。更には昇圧または減圧時のスロープ制御には、他の可変流量制御弁等を用いたり流量制御弁とレギュレータと組合せるようにしてもよく、設定圧の異なる制御弁やオリフィス等が設けられた管路を複数並列状態に設け、設定圧に応じて前記複数並列状態の管路の中から空気を流通させる管路を選択切換えして圧力を変更するものなどでもよい。更には低圧下での制御を良好にする回路において昇圧を早くするため、コンプレッサに接続される管路に特許文献1に示されるような増圧弁と増圧弁を迂回する回避回路を設けてもよい。
【0038】
また成形条件について本実施形態では、昇圧と減圧にスロープ制御を用い、その中間の最高圧の部分に段階制御を用い、スロープ制御と段階制御の両方を組合せたものであったが、スロープ制御のみまたは段階制御のみのものでもよい。またスロープ制御または段階制御が2段階以上連続して継続されるものでもよい。段階制御を連続させて圧力を変化させる場合、空気圧の制御は油圧と比較して応答性に劣るので、空気圧力の実測値は、各段の接続部において完全な多段状にはならず、曲線状になる。また加圧膜へ及ぼされる圧力のピークは2つ以上あってもよい。具体的には、一旦、最高圧まで昇圧した後、大気圧より高い圧力または大気圧まで減圧した後、最高圧と同じまたは最高圧よりも低い圧力まで再昇圧し、その後大気圧へ減圧するものでもよい。また前記の関連で、最高圧は最初のピークではなく、後のピークに設定されるようにしてもよい。これらの多段圧制御においても、各段はそれぞれ一定圧力による段階制御、昇圧または減圧を行うスロープ制御のいずれかを選択でき、その組合せは自在である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の真空積層装置および真空積層方法により成形される積層成形品としては、回路基板の他、半導体、太陽電池、光導波路等、フィルム等の接着層を積層するもの全般に用いられ、積層成形品の種類は限定されない。また加圧膜22としては、ゴム膜の他に、他の材質のものでもよい。具体的には加圧膜は、ゴム膜に織布や繊維を混ぜたものでもよく、樹脂フィルムを加圧膜として使用するものでもよい。樹脂フィルムを加圧膜として使用する場合、加圧用の樹脂フィルムも積層成形品とともに送られることが一般的であり、その場合、積層成形時に加圧膜である樹脂フィルムに付着物が付いても次の積層成形に影響を与えることがない。更には加圧膜22の加圧に用いられる媒体は大気が最も一般的に用いられるが、窒素ガス等の他の気体や液体であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
11 真空積層装置
12 上盤
13 下盤
14 チャンバ
20 真空ポンプ
22 加圧膜
29 コンプレッサ
31 減圧機構
32 加圧機構
36 レギュレータ
41 制御装置
42 設定画面
44 段階表示部
46 「エア制御モード」選択部
47 「STEP」選択ボタン
48 「SLOPE」選択ボタン
W 被積層材
F 積層材
図1
図2
図3