特許第5822408号(P5822408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5822408-小結晶ゼオライトを製造する方法 図000016
  • 特許5822408-小結晶ゼオライトを製造する方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822408
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】小結晶ゼオライトを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
   C01B39/48
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-537690(P2013-537690)
(86)(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公表番号】特表2013-541492(P2013-541492A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011057225
(87)【国際公開番号】WO2012061037
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】12/940,776
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー アイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン、ルン − テー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、トレイシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジーマー、ジェイムズ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】オジョ、アデオラ
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05053373(US,A)
【文献】 特表2010−514661(JP,A)
【文献】 特開昭59−062349(JP,A)
【文献】 特表2010−506010(JP,A)
【文献】 特表2007−511457(JP,A)
【文献】 特開平05−132310(JP,A)
【文献】 特表平11−511720(JP,A)
【文献】 特開昭63−025214(JP,A)
【文献】 特開平02−129015(JP,A)
【文献】 特表平11−502804(JP,A)
【文献】 特表2014−500215(JP,A)
【文献】 FOLLENS, L. R. A. et al.,Viscosity sensing in heated alkaline zeolite synthesis media,Phys. Chem. Chem. Phys.,2009年,Vol. 11,p. 2854-2857
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20−39/54
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜40ナノメートルの結晶子サイズを有する小結晶ゼオライトを製造する方法であって、
(a)(i)ケイ素酸化物の少なくとも1つの活性源;
(ii)アルミニウム酸化物の少なくとも1つの活性源;
(iii)アルカリ金属の少なくとも1つの活性源;
(iv)水酸化物イオン;
(v)以下の構造を有する有機テンプレート剤:
【化1】

(Rは、C〜Cアルキル基であり、Aは、ゼオライトの結晶化に不利ではないアニオンである);及び
(vi)水:
を含む反応混合物を調製することであって、
当該反応混合物が、以下の範囲内に入るモル比に関する組成物を有し、
【表1】

(Mはアルカリ金属カチオンであり;Qは有機テンプレート剤である)
;及び
(b)10〜40ナノメートルの結晶子サイズを有するゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下に当該反応混合物を維持し、しかも、当該ゼオライトはアミン成分の不存在下に調製されることであって、そして、ゼオライトの結晶を形成するのに十分な当該条件が、当該反応混合物を175℃〜190℃の第一温度で12〜48時間加熱し;そして、当該反応混合物の第一温度を、10〜40ナノメートルの結晶子サイズを有するゼオライトの結晶を形成するのに適切な時間、140℃〜170℃の第二温度に下げることを含む、
を含む、製造方法。
【請求項2】
O/SiOモル比が15〜20である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ケイ素酸化物の少なくとも1つの活性源及びアルミニウム酸化物の少なくとも1つの活性源が、共通源から誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機テンプレート剤が、N−メチル−N’−イソプロピルイミダゾリウム水酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機テンプレート剤が、N,N’−ジイソプロピルイミダゾリウム水酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ゼオライトが、その合成されたままの形態で、20以上40未満のアルミナに対するシリカのモル比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトが、12〜20ナノメートルの結晶子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ゼオライトが、その焼成された形態で、以下の表に示されているようなX線回折パターンを有する、請求項1に記載の方法。
【表2】
【請求項9】
反応混合物の少なくとも1つの粘度パラメーターを観測すること;及び終点を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応混合物の少なくとも1つの粘度パラメーターが、粘度せん断速度指数、測定粘度、またはそれらの組合せから成る群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
終点を、反応混合物の測定粘度の変化、反応混合物のpHの変化、又はそれらの組合せに基づいて決定する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、小結晶中孔径ゼオライト、特にSSZ−32、を含む触媒を製造する方法に一般的に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
標準のSSZ−32と比較して、小結晶SSZ−32(以後、SSZ−32Xと呼ぶ)は、様々な触媒プロセス用に使用される他の中孔径モレキュラーシーブよりも、低い分解活性、高い外表面積、異なるアルゴン吸着比、及び低い確定結晶性を持つ。SSZ−32X及びそれを製造する方法は、米国特許第7,390,763及び7,569,507に開示されている。両方の方法ともに、テンプレートとしてアミン成分及びイミダゾリウムカチオンの組合せを要求する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SSZ−32Xを調製する改善された方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
一側面では、本発明は、小結晶ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素酸化物の少なくとも1つの活性源;アルミニウム酸化物の少なくとも1つの活性源;アルカリ金属の少なくとも1つの活性源;水酸化物イオン;及び以下の構造を有する有機テンプレート剤:
【化1】

(Rは、C〜Cアルキル基であり、Aは、ゼオライトの結晶化に不利ではないアニオンである):を含む反応混合物を調製すること;及び、ゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下に当該反応混合物を維持し、しかも、当該ゼオライトはアミン成分の不存在下に調製されること、を含む、製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、ゼオライト合成中にオートクレーブから取った様々なせん断速度でのスラリーサンプルのpH及び見掛け粘度の変化を例証する。
【0006】
図2図2は、SSZ−32Xと標準SSZ−32との間の粉末X線回折(XRD)パターンの比較を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な記述
以下の用語は、明細書中で使用され、そして、特別の指示のない限りは以下の意味を有するであろう。
【0008】
用語「小結晶ゼオライト」とは、100ナノメートル以下の微結晶サイズ(結晶子サイズ)を有するゼオライトを呼ぶ。
【0009】
用語「微結晶サイズ」とは、結晶の最も長い寸法を呼ぶ。ゼオライトの微結晶サイズは、例えば、成型粒子を粉砕して個々の結晶を分離することによって、決定し得る。分離した結晶の高分解能電子顕微鏡写真をその後調製でき、その後に、個々のゼオライト結晶の平均サイズを、較正長さ標準を参照することにより、決定し得る。平均微結晶サイズは、その後、様々な周知のやり方で算定し得る。製造したままのゼオライト粉末における、個々の結晶及び多結晶の凝集の両方を含む、すべての粒子の平均サイズである、いくつかの製造業者が「ゼオライト粒子サイズ」と称するものと、ゼオライト微結晶サイズとは、本発明の目的では区別されることに注目することが、重要である。
【0010】
用語「活性源」とは、反応して目標のゼオライト構造の中に取り込まれ得る形態の要素を提供可能な前駆体材料又は試薬を呼ぶ。用語「源」及び「活性源」は、ここでは交替で使用される。
【0011】
用語「反応時間」とは、反応混合物が指定の又は目標の反応温度に達した時点からの経過時間を呼ぶ。例えば、周囲温度から反応温度まで8時間の傾斜を有する反応混合物では、8時間の傾斜の期間の終わりが、反応時間ゼロを意味する。用語「反応時間」及び「運転中の時間」は、ここでは、交替で及び同義的に使用され得る。
【0012】
用語「測定粘度」とは、例えばレオメーターなどの器具を使用して、記録、決定又は測定されたようなゼオライト合成用反応混合物などの流体の粘度の値を呼ぶ。所定の時間の時点で反応混合物から除かれたサンプルの測定粘度は、反応器から除かれたサンプル中の及び反応器中の微結晶凝集及び非凝集の動特性における相違に例えば起因してその場でのその時間の時点での反応混合物の実際の粘度とは異なることがある。それにもかかわらず、反応混合物のサンプルの測定粘度の時間の変化は、ゼオライト合成の終点を決定する上での予想値を有することが、出願人によって見出された。用語「測定粘度」及び「見掛け粘度」は、ここでは、交替で及び同義的に使用され得る。
【0013】
用語「終点」とは、目標の生成物が形成されて、例えば結晶サイズ、物理的性質、触媒活性、収率などに関する少なくとも1つの所望の生成物特性又は特質に達した時のプロセス又は反応の段階を呼ぶ。所定の生成物及び合成プロセスでは、終点は、生成物の用途に関連して所望の生成物特質に依存して変化し得る。
【0014】
ゼオライト合成
SSZ−32Xゼオライトは、アミン成分の不存在下に、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物(好ましくは、酸化アルミニウム源は、シリカ上に共有結合的に分散する酸化アルミニウムを提供する)、後に水酸化物の形態にイオン交換されるイミダゾリウムカチオン、及び、アルカリ金属酸化物又は水酸化物の源を含有する水溶液から、適切に調製され得る。反応混合物は、以下の範囲内に入るモル比に関する組成物を有するべきである。
【表1】
【0015】
一形態では、反応混合物は、20〜40未満のSiO/Alモル比を有する。
【0016】
反応混合物は、標準のゼオライト系調製技術を使用して調製される。二酸化ケイ素の典型的な源には、ヒュームドシリカ、沈降シリケート、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、テトラアルキルオルトシリケート、及びシリカ水酸化物が、含まれる。酸化アルミニウムの典型的な源には、アルミン酸塩、アルミナ、及び、アルミニウム被覆シリカコロイド、AlCl、Al(SO、Al(OH)、カオリンクレー、及び、モルデナイト及びフェリエライトゼオライトなどの他のゼオライトなどのアルミニウム化合物が含まれる。
【0017】
一形態では、ケイ素酸化物の少なくとも1つの活性源及びアルミニウム酸化物の少なくとも1つの活性源は、共通源から誘導される。例示される共通源は、Nalco(Naperville,IL)から市販されている1SJ612などのアルミナ被覆シリカゾルである。別のアプローチでは、より低いシリカ/アルミナ比(約10)及びペンタシル構造のゼオライトが、ゼオライトSSZ−32Xの合成用の供給原料として使用できる。シリカ及びアルミナ用の共通源を使用する利点は、ゲル形成工程の排除であり、そこでは、アルミニウム及びケイ素の源は、均一の混合物が得られるまで撹拌され、それはそれ故にゼオライト調製時間を減らす。
【0018】
一般的に、ケイ素酸化物の少なくとも1つの活性源、アルミニウム酸化物の少なくとも1つの活性源、アルカリ金属の少なくとも1つの活性源、水酸化物イオン及び有機テンプレート剤を脱イオン水に添加して、反応混合物を形成する。一形態では、当該成分は、脱イオン水溶媒の不存在下に混合されて、より濃縮した反応混合物を提供する。一形態では、反応混合物は、15〜20のHO/SiOモル比を有する。
【0019】
Mは、アルカリ金属カチオンであり、好ましくはナトリウム又はカリウムである。結晶化プロセスに不利ではないアルカリ金属含有化合物が適切である。アルカリ金属イオンの源には、アルカリ金属酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、クエン酸塩及びアセテートが含まれる。使用される第四アンモニウムイオンの源として作用する有機テンプレート剤(Q)は、水酸化物イオンを提供し得る。
【0020】
Qは、以下の構造を有する有機テンプレート剤である。
【化2】

(Rは、C〜Cアルキル基であり、Aは、ゼオライトの形成に不利ではないアニオンである。)C〜Cアルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル及びネオペンチルを含む。一形態では、Rはメチルであり、他の形態では、Rはイソプロピルである。アニオンの代表例は、水酸化物、アセテート、硫酸塩、カルボン酸塩及びハロゲン、例えばフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含む。一形態では、アニオンは水酸化物である。米国特許公報第5,053,373及び5,252,527は、有機テンプレート剤としてイミダゾリウムカチオンを使用して調製されるSSZ−32などのゼオライトを開示する。
【0021】
塩、特に塩化ナトリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物が、添加されるか又は反応混合物中で形成され得る。それらは、格子中でのシリカ吸蔵を妨げながらゼオライトの結晶化を補助するものとして、当該文献中で開示されている。
【0022】
反応混合物は、ゼオライトの結晶が形成されるまで、高温に維持する。熱水結晶化工程中の温度は、140℃〜200℃、より典型的には160℃〜190℃、及びしばしば170℃〜180℃に一般的に維持する。一形態では、ゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件は、当該反応混合物を175℃〜190℃の第一温度で12〜48時間加熱し;そして、当該反応混合物の第一温度を、ゼオライトの結晶を形成するのに適切な時間、140℃〜170℃の第二温度に下げること含む。結晶化時間は、一般的に、1日より長く、より典型的には2日〜10日である。
【0023】
水熱結晶化は、反応混合物が自動圧力にかけられているようなオートクレーブ中で通常は圧力下で実施する。成分を結晶化の間に同様に添加しながら、反応混合物を撹拌し得る。水熱結晶化工程の間に、結晶は、反応混合物から自然に核になり得る。所望でないアルミノシリケート汚染物の形成を最少にするのと同様に、結晶化を促進するために及び指揮するために、反応混合物は、SSZ−32X結晶でシードされることも可能である。一形態では、種(シード)は、反応混合物中に、0.5〜10重量%の量で存在し、当該種の重量パーセント(重量%)はSiOの重量パーセントに基づいており、他の形態では、種は1〜5重量%の量で存在する。
【0024】
一形態では、小結晶ゼオライトを製造する方法は、反応混合物の少なくとも1つの粘度パラメーターを観測すること及びゼオライト合成プロセスの終点を決定することを更に含む。反応の間に、様々な時間の時点で、反応混合物の少なくとも1つの粘度パラメーターを測定することによって、結晶化の程度が観測され得る。結晶化の間に、反応混合物のいくつかの内部特性が、合成プロセスの進行と同時に変化し、それによって、反応混合物の内部特性の測定で、ゼオライトの1以上の特性の状況を決定するための基礎を形成し得ることが、見出された。そのような特性は、ゼオライトの触媒活性に関連した特性、及び定量的な生成物収率と同様に、反応混合物の結晶化の状況(微結晶サイズ、微結晶凝集度)を含み得る。
【0025】
一形態では、当該観測工程は、反応混合物のサンプルを周期的に取り除くこと、各サンプルを所定の温度に冷却すること、及び各サンプルの少なくとも1つの粘度パラメーターを測定することを含む。反応混合物を抽出する頻度は、1時間ごとでも良いし、より多い又はより少ない頻度でも良い。例えば、サンプルは、10分〜120分ごとに1回の頻度で反応器から抜き出しても良いし、典型的には、15分〜60分ごとに1回でも良い。所定の温度への各サンプルの冷却は、一般的に5℃〜50℃の範囲、典型的に10℃〜30℃、及びしばしば15℃〜25℃でも良い。一般的に、各サンプルの粘度パラメーターは、所定の温度の±0.2℃以内で、典型的には±0.1℃以内で、及びしばしば所定の温度の0.05℃以内で、測定される。その後、モレキュラーシーブ合成プロセスの終点は、例えば、反応混合物の少なくとも1つの粘度パラメーターの変化に基づいて、決定し得る。
【0026】
一形態では、反応混合物の少なくとも1つの粘度パラメーターは、粘度せん断速度指数、測定粘度、またはそれらの組合せから成る群から選択される。
【0027】
反応混合物の各サンプルの粘度せん断速度指数は、所定の温度でサンプルを複数のせん断速度にかけて、当該複数のせん断速度の各々に対応するせん断応力値を記録し、複数のせん断応力値を提供することによって、定量化又は決定できる。典型的に、当該複数のせん断速度の各々は、100s−1〜1000s−1の範囲内にあってもよい。その後、サンプルの粘度せん断速度指数(η)は、当該複数のせん断速度及び対応する複数のせん断応力値に基づいて決定でき、しかも、せん断速度(γ)とせん断応力(σ)との間の関係は、σαγηによって与えられる。例として、粘度せん断速度指数(η)は、せん断速度値の自然対数(ln(γ),s−1;x軸)に対するせん断応力値の自然対数(ln(σ),パスカル;y軸)のプロットに、直線を適合させることによって、決定できる。このモデルを使用すると、ニュートン流体はη=1を有し、一方、弱く凝集した微結晶を持つ流体(反応混合物スラリー)は、η<1を持つ擬可塑性(又はずり減粘)挙動を典型的に示すであろう。一般的に、スラリーの粘度せん断速度指数が小さいほど、擬可塑性の程度は大きくなる。
【0028】
測定粘度は、ゼオライト合成プロセスの間に複数の時間の時点で取った反応混合物の複数のサンプルの各々について決定できる。各サンプルの測定粘度は、所定の温度でサンプルを少なくとも1つのせん断速度にかけて、当該少なくとも1つのせん断速度に対応する少なくとも1つのせん断応力を記録することによって、レオメーターを介して決定できる。その後、サンプルの測定粘度(μ)は、せん断応力(σ)を、対応するせん断速度(γ)で割算することによって、決定できる。すなわち、μ=σ/γである。典型的に、サンプルにかける少なくとも1つのせん断速度は、100s−1〜1000s−1の範囲内にあってもよい。
【0029】
例えば、ゼオライトの1個以上の特性の状況を確認する又は決定するための補足データを提示するために、反応混合物のpHを、結晶化の間に観測してもよい。結晶化を観測するためのpH測定の使用は、業界で公知である。例えば、J.L.Casci et al.,Zeolites,3,186−187(1983);B.M.Lowe,Zeolites,3,300−305(1983);S.I.Zones,Zeolites,9,458−467(1989);及びS.I.Zones et al.,Microporous Mesoporous Mater.,58,263−277(2003)を参照せよ。本発明の方法の1つの利点は、ゼオライトをアミン成分の不存在下に調製することである。従来開示の方法は、電位緩衝剤として作用し得るアミン成分の存在を必要とした。アミン成分の除去によって、結晶化に関連した変化がpHによって付随されて良好になり、それにより、反応がより高い精度でクエンチすることになる。
【0030】
従って、目標のゼオライトの結晶化の進行を観測するために、及び、反応終点を予測又は決定するために、粘度パラメーターなどの反応混合物の様々な特性を使用できる。合成プロセスの終点は、反応混合物の測定粘度の変化、反応混合物のpHの変化、又はそれらの組合せに基づいて決定できる。図1は、SSZ−32X結晶化が約65時間の終点に進んだ時の、スラリーサンプルのpH及び見掛け粘度の変化を例証する。更に、結晶化の進行を観測することにより、所望の微結晶サイズのゼオライトのより高い収率を得ることとなり、望ましくない微結晶サイズ(過少結晶化又は過大結晶化生成物)がより少なくなることとなる。
【0031】
従って、合成の間に、ゼオライトの少なくとも1つの特性、例えば結晶サイズ又は収率は、反応混合物の測定したパラメーターの1以上の値を、測定した特性とゼオライト特性との間の予め決定した関係からのデータと比較することによって、推定される。測定した特性とゼオライト特性との間の予め決定した関係は、1以上の従来の合成プロセスから、例えば、同じか実質的に同じ装置及び同じか実質的に同じ反応混合物及び条件を使用して誘導され、その間、当該シーブの少なくとも1つの特性及び少なくとも1つの測定した特性は、時間の関数として相互に関連があった。こうして、測定した反応混合物特性を、観測したゼオライト特性と相互に関連させることによって、システムが一旦較正されると、測定した反応混合物特性は、後の合成の間に、ゼオライトの1以上の特性に関して、反応の進行を決定するための基礎として働き得る。
【0032】
所望のゼオライト結晶が一旦形成されると、ろ過又は遠心分離などの標準の機械的分離技術により、反応混合物から固体生成物を分離する。結晶は水洗し、その後、例えば90℃〜150℃で8〜24時間、乾燥し、合成したままのゼオライト結晶を得る。乾燥工程は、大気圧で又は大気圧未満で実施できる。
【0033】
本発明のゼオライトは、一形態では、10〜40ナノメートルの微結晶サイズを有し、他の形態では、12〜20ナノメートルの微結晶サイズを有する。
【0034】
本発明のゼオライトは、合成されたままの形態で、一形態では、20〜72未満のアルミナに対するシリカのモル比を有し、他の形態では、20〜40未満のアルミナに対するシリカのモル比を有する。
【0035】
標準SSZ−32及びSSZ−32Xは、国際ゼオライト協会によって「MTT」と指定されたフレームワークトポロジーを有する。本発明にしたがって合成したSSZ−32Xゼオライトは、それらのX線回折(XRD)パターンによって特徴付けされ得る。標準SSZ−32及びSSZ−32Xは、XRDによって区別できる。なぜなら、微結晶のサイズが低減すると、XRDパターンは広くなるからである。図2では、SSZ−32Xのピーク発生及び相対強度を、標準SSZ−32と比較している。表2の粉末XRD線は、焼成した標準SSZ−32の代表である。表3の粉末XRD線は、本発明に従って製造した焼成SSZ−32Xの代表である。
【表2】

(a)±0.20
(b)提示された粉末XRDパターンは、X線パターンでの最も強い線を100の値に指定した相対強度スケールに基づいており:W(弱)は20未満;M(中)は20〜40;S(強)は40〜60;VS(非常に強)は60よりも大きい。
(c)これらのピークは、顕著な重なりを有していることがあり、時々シングルピークとして扱われる。
【表3】

(a)±0.20
(b)提示された粉末XRDパターンは、X線パターンでの最も強い線を100の値に指定した相対強度スケールに基づいており:W(弱)は20未満;M(中)は20〜40;S(強)は40〜60;VS(非常に強)は60よりも大きい。
【0036】
回折パターンの小さな変動は、格子定数の変化に起因する特有のサンプルのフレームワーク種のモル比の変動から生じ得る。更に、十分な小結晶は、顕著なピークのブロード化に導くピークの強度及び形状に影響を及ぼすであろう。回折パターンの小さな変動は、調製で使用される有機テンプレート剤の変動から、及び、様々な調製のSi/Alモル比の変動からも、生じ得る。焼成は、XRDパターンでの小さなシフトの原因にもなり得る。これらの小さな摂動にもかかわらず、基礎の結晶格子構造は未変化のままである。
【0037】
ここで提示した粉末X線回折パターンは、標準技術によって収集された。放射はCuK−α放射である。θがブラッグ角である2θの関数としてのピーク高さ及び位置は、(バックグラウンドのために調整している)ピークの相対強度から読み取った。そして、記録した線に対応するオングストロームでの格子面間隔dは、計算され得る。
【0038】
SSZ−32Xを、合成したままで使用し得るし、又は、熱処理(焼成)し得る。通常、イオン交換によってアルカリ金属カチオンを除去して、それを水素、アンモニウム、又はいかなる所望の金属イオンで置き換えることが望ましい。ゼオライトを、例えばEDTA又は希酸溶液などのキレート剤で浸出させて、シリカアルミナモル比を増加させることができる。SSZ−32Xを蒸気処理することもできる。蒸気処理は、酸からの攻撃に対して結晶格子を安定化させるのを助ける。
【0039】
ゼオライトに金属を含浸してもよく、又は、公知の標準方法を使用して金属をSSZ−32Xと物理的に深く混合してもよい。そして、SSZ−32Xゼオライトが調製される反応混合物中にイオンとして存在する所望の金属を有する結晶格子中に、金属は吸蔵され得る。
【0040】
典型的なイオン交換技術は、所望の交換カチオンの塩を含有する溶液と、SSZ−32Xとを接触させることを含む。多種多様の塩を使用できるが、塩化物及び他のハロゲン化物、硝酸塩、及び硫酸塩が、特に好ましい。代表的なイオン交換技術は、米国特許公報第3,140,249;3,140,251;及び3,140,253を含む多種多様の特許に開示されている。イオン交換は、SSZ−32Xを焼成する前後のどちらかで起こり得る。
【0041】
所望の交換カチオンの塩溶液との接触に続いて、SSZ−32Xを、典型的に水で洗浄して65℃〜315℃の範囲の温度で乾燥する。洗浄後、SSZ−32Xを、空気中で又は不活性ガス中で、200℃〜820℃の範囲の温度で、1〜48時間の範囲の時間、焼成して、炭化水素転化プロセスに特に有益な触媒活性な生成物を製造できる。
【0042】
上述のSSZ−32Xゼオライトを、その酸性の形態に転化してもよく、そして、その後、耐火性無機酸化物担体前駆体及び水溶液と混合して混合物を形成してもよい。当該水溶液は、好ましくは酸性である。当該溶液はペプタイザーとして作用する。担体(マトリックス又はバインダーとしても公知である)を、有機転化プロセスで使用される温度及び他の条件に耐えるものとして選択してもよい。そのようなマトリックス材料は、活性及び不活性材料及び合成又は自然発生ゼオライトはもちろん、無機材料、例えばクレー、シリカ、及び金属酸化物を含む。後者は、自然に発生し得るし、金属酸化物及びシリカの混合物を含むゼリーの沈殿、ゾル又はゲルの形態でもよい。合成SSZ−32Xと関連して、すなわちそれと組合せて、活性な材料を使用すると、ある有機転化プロセスにおける触媒の選択性及び転化を改善させる傾向がある。
【0043】
SSZ−32Xは、多孔質のマトリックス材料及び、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、チタニア−ジルコニアなどのマトリックス材料の混合物とだけでなく、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの三元組成物と、普通に複合されてもよい。当該マトリックスは、コゲルの形態でもよい。好ましいマトリックス材料は、アルミナ及びシリカである。SSZ−32Xの実際の合成の間で及び触媒調製の後の工程の間で、触媒性能の向上のために、金属を添加することが可能である。調製の方法は、塩溶液中でのスラリーの調製、金属塩溶液との噴霧乾燥、及び熱的な手段によって実現される固体状態のイオン交換を含む。スラリーをろ過して、金属が装填したSSZ−32Xを回収してもよい。
【0044】
不活性な材料は、所定のプロセス中の転化の量を制御するために希釈剤として適切に機能し得るのであり、それにより、生成物を、反応の速度を制御するための他の手段を使用することなしに、経済的に得ることができる。しばしば、ゼオライト材料は、例えばベントナイト及びカオリンなどの自然発生クレー中に取り込まれてきた。例えばクレー及び酸化物などのこれらの材料は、一部分は、触媒用のバインダーとして機能する。良好な粉砕強度を有する触媒を提供するのが望ましい。なぜなら、石油精製においては、触媒は、しばしば乱暴な取扱いを受けるからである。これは、触媒を、プロセスで問題を引き起こす粉末に破壊する傾向にある。
【0045】
本発明の合成SSZ−32Xと複合され得る自然発生クレーは、モンモリロナイト及びカオリン科を含み、当該科は、主鉱物構成物質がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトである、Dixie、McNamee、Georgia and Floridaクレー又は他のものとして普通に公知のカオリン及び亜ベントナイトを含む。セピオライト及びアタパルガイトなどの繊維質クレーは、サポートとして使用し得る。そのようなクレーは、採鉱された当初の生の状態で使用できるし、又は、焼成、酸処理又は化学変性に最初にかけてもよい。
【0046】
バインダー及びSSZ−32Xの混合物は、多種多様の物理的形状に形成され得る。一般的に言えば、当該混合物は、2.5メッシュ(Tyler)のふるいを通過して48メッシュ(Tyler)ふるい上に保持されるのに十分な粒子サイズを有する押出物などの成型生成物、又は、顆粒、粉末の形態でもよい。有機バインダーとの押出などによって触媒が成型される場合、当該混合物は、乾燥前に押出されてもよいし、乾燥又は部分的に乾燥した後に押出されてもよい。乾燥した押出物は、その後、焼成手順を使用して熱的に処理される。
【0047】
焼成温度は、199℃〜595℃の範囲でもよい。焼成は、炭化水素転化プロセスで特に有益な触媒活性な生成物を製造するために、0.5〜5時間以上の範囲の期間で起こり得る。
【0048】
当該押出物又は粒子は、水素化機能を高めるために、含浸などの技術を使用して、VIII族金属をその後更に装填してもよい。米国特許公報第4,094,821に開示されているように、変性金属及びVIII族金属を同時に共含浸することが望ましいこともある。VIII族金属は、好ましくは、ニッケル、白金、パラジウム又はそれらの組合せである。装填後、材料は、260℃〜482℃の温度で不活性ガス又は空気中で焼成され得る。
【実施例】
【0049】
実施例
以下の実施例は、本発明を例証するために記述される。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された特定の条件又は詳細に限定すべきでないことは、理解されるべきである。
【0050】
実施例1
シーディングなしでのSSZ−32X合成
SSZ−32Xの合成用の反応混合物を、以下のものを順に脱イオン水に添加することにより、調製した:48%水性KOH(M)、0.47MのN,N’−ジイソプロピルイミダゾリウム水酸化物(Q)、及びNalcoから市販のアルミナ被覆シリカゾル1SJ612(25重量%固体、SiO/Al比35、及び対イオンとしてアセテートを有するバージョン)。反応混合物成分のモル比は以下の通りであった:
【表4】
【0051】
反応混合物を170℃に8時間にわたって加熱し、そして、150rpmで170℃で135時間連続的に撹拌した。
【0052】
反応の終点を決定するために、反応の間中、反応混合物の見掛け粘度及びpHを観測した。
【0053】
円錐及び板形状を具備する制御された応力レオメーターを用い、大気圧で標準技術を用いて、測定粘度を決定した。熱スラリーサンプルを、ゼオライト合成プロセスの間、オートクレーブから1時間ごとに取り出し、そして、蒸気ロスからの組成物変化を最少にするために閉じた容器に移動する前に熱交換器を通して準沸騰温度に注意深く冷却した。閉じた容器中のサンプルを、約25℃に活性に冷却した。同じサンプルを、pH及び粘度せん断速度指数を測定するために使用してもよい。
【0054】
各冷却スラリーサンプルを、サンプルの均一性を確保するためにレオメータープレート上への装填前に、混合又は震とうした。そして、25.0℃で混合物を均衡させるために、サンプルを予備せん断速度1000s−1に少なくとも30秒間かけることによって、装填後にサンプルの均一性を維持した。その後、各サンプルを、25.0℃で100s−1、200s−1、500s−1及び1000s−1のせん断速度にかけ、それらのせん断速度を維持するのに必要な対応するせん断応力値を記録した。測定したせん断応力をその対応するせん断速度で割算することによって、各サンプルの「測定粘度」を、その後、決定した。
【0055】
反応終点を、約135時間の反応時間(温度)で、確認した。
【0056】
粉末XRD解析を介して、生成物をSSZ−32Xと決定した。
【0057】
SSZ−32Xの合成用の反応時間は、反応混合物中に種結晶を含めることにより、かなり短縮できる。
【0058】
実施例2
シーディングでのSSZ−32X合成
SSZ−32X種(SiO含有量に基づいて3.5重量%)を反応混合物中に含めたことを除き、SSZ−32Xの合成用の反応混合物を、実施例1と同じ成分を添加することにより、調製した。反応混合物成分のモル比は以下の通りであった:
【表5】
【0059】
反応混合物を170℃に8時間にわたって加熱し、そして、150rpmで170℃で約65時間連続的に撹拌した。
【0060】
反応の終点を決定するために、反応の間中、反応混合物の見掛け粘度及びpHを観測した。反応終点を、約65時間の反応時間(温度)で、確認した(図1を参照)。
【0061】
ゼオライトサンプルを、595℃に焼成し、米国特許公報第7,390,763に記載されたようなアンモニウム形態にイオン交換した。ASTM D4365に従ってミクロ細孔容積を決定する前にアンモニアを除去するためにサンプルを450℃に予備加熱した。生成物は、0.034cc/gのミクロ細孔容積を有した。それに対し、標準SSZ−32は、約0.06cc/gのミクロ細孔容積を有している。
【0062】
粉末XRD解析を介して、生成物をSSZ−32Xと確認した。
【0063】
実施例3
シーディングでのSSZ−32X合成
SSZ−32X種(SiO含有量に基づいて3.15重量%)を反応混合物中に含めたことを除き、SSZ−32Xの合成用の反応混合物を、実施例1と同じ成分を添加することにより、調製した。種結晶は、従前のSSZ−32X調製から得た。例えば、実施例1を参照せよ。反応混合物成分のモル比は以下の通りであった:
【表6】
【0064】
反応混合物を170℃に8時間にわたって加熱し、そして、150rpmで170℃で約65時間連続的に撹拌した。
【0065】
反応の終点を決定するために、反応の間中、反応混合物の見掛け粘度及びpHを観測した。反応終点を、約65時間の反応時間(温度)で、確認した。
【0066】
解析は、生成物が29のSiO/Alモル比を有していることを示した。粉末XRD解析により、生成物をSSZ−32Xと確認した。ASTM D4365によって決定されたように、生成物は0.035cc/gのミクロ細孔容積を有した。
【0067】
実施例4
二温度法を介してのSSZ−32X合成
反応混合物をより高い初期温度に一時期加熱した以外は、実施例2と同じ成分を添加することによって、SSZ−32Xの他のサンプルを合成した。種結晶は、従前のSSZ−32X調製から得た。例えば、実施例1を参照せよ。反応混合物成分のモル比は以下の通りであった:
【表7】
【0068】
反応混合物を180℃に8時間にわたって加熱し、そして、150rpmで180℃で39時間連続的に撹拌した。
【0069】
反応の終点を決定するために、反応の間中、反応混合物の見掛け粘度及びpHを観測した。反応混合物をその後170℃に1時間にわたって冷却し、その後、170℃で7.8時間保持し、その時間で、反応終点に到達した。
【0070】
粉末XRD解析により、生成物をSSZ−32Xと確認した。
【0071】
本発明の生成物はかなりのアモルファス材料及び小結晶の混合物かもしれないという懸念の中、実施例4の生成物を透過型電子顕微鏡検査(TEM)により、解析した。TEM測定法は、A.W.Burton et al.in Microporous Mesoporous Mater.117,75−90,2009に開示されている。顕微鏡検査作業により、生成物は、アモルファス材料の全くない証拠を持つSSZ−32の完全に均一な小結晶(生成物はSSZ−32Xであった)であることが例証された。TEM測定は、約8ナノメートルの平均幅及び約16ナノメートルの平均長さを有する細長い結晶を示した。それに対し、標準SSZ−32結晶は、約170ナノメートルの平均長さを有する細長である。
【0072】
実施例5
濃縮法を介するSSZ−32X合成
脱イオン水を除去してより濃縮した反応混合物を提供した以外は、実施例2と同じ成分を添加することによって、SSZ−32Xの他のサンプルを合成した。種結晶は、従前のSSZ−32X調製から得た。例えば、実施例1を参照せよ。反応混合物成分のモル比は以下の通りであった:
【表8】
【0073】
反応混合物を170℃に8時間にわたって加熱し、そして、150rpmで170℃で65時間連続的に撹拌した。
【0074】
反応の終点を決定するために、反応の間中、反応混合物の見掛け粘度及びpHを観測した。反応終点を、約65時間の反応時間(温度)で、確認した。
【0075】
粉末XRD解析により、生成物をSSZ−32Xと確認した。TEM測定は、約9ナノメートルの平均幅及び約17ナノメートルの平均長さを有する細長い結晶を示した。
【0076】
実施例6
過結晶化SSZ−32X
SSZ−32X種(SiO含有量に基づいて3.15重量%)を反応混合物中に含めたことを除き、SSZ−32Xの合成用の反応混合物を、実施例1と同じ成分を添加することにより、調製した。反応混合物成分のモル比は以下の通りであった:
【表9】
【0077】
反応混合物を170℃に8時間にわたって加熱し、そして、150rpmで170℃で約90時間連続的に撹拌した。
【0078】
反応の終点を決定するために、反応の間中、反応混合物の見掛け粘度及びpHを観測した。反応終点を、約65時間の反応時間(温度)で、確認した。しかし、反応は、追加で25時間続いて所定の終点を通り過ぎ、過結晶化SSZ−32Xを与えた。
【0079】
粉末XRD解析により、生成物をSSZ−32Xと確認した。TEM測定で決定すると、生成物は、少なくとも23ナノメートルの平均幅及び少なくとも43ナノメートルの平均長さを有する細長い結晶を示した。特に望ましいSSZ−32X結晶は、40ナノメートル以下の微結晶サイズを典型的に有する。
【0080】
特別に示されないかぎり、この明細書及び添付の特許請求の範囲の目的では、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、パーセンテージ又は比率を表すすべての数及び他の数値は、すべての場合に用語「約」によって修正されていると理解されるべきである。従って、反対に示されていない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、1つの参照に明確に及び疑義なく限定されていない限り、単数形の「1個」、「1つ」及び「当該」は、複数の参照を含むことが、注意される。ここで使用されているように、用語「含む」及びその文法上の変化は、非限定的であることを意図し、リストにおける項目の列挙は、リストされた項目に追加可能な又は置換可能な他の同様の項目を除外していない。
【0081】
この書面の記述は、最良の形態を含む本発明を開示するために、及び、当業者が本発明を実施して使用できるようにもするために、実施例を使用する。特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、そして、当業者の念頭に浮かぶ他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、もしそれらが特許請求の範囲の文言上の表現と異ならない構造上の要素を有しているならば、又は、もしそれらが特許請求の範囲の文言上の表現と実質的でない相違を持つ同等の構造上の要素を含むならば、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。これと矛盾しない範囲で、ここで言及したすべての引用は、参照としてここに取り込まれる。
図1
図2