【文献】
Proc Natl Acad Sci USA,2005年11月30日,102(50),18153−18158
【文献】
Genbank Accession no.DQ208272,Human herpesvirus 5 isolate 10J UL128 gene, complete cds, 16−OCT−2005[retrieved on 17 Jan.2015],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ208272
【文献】
Genbank Accession no.DQ208273,Human herpesvirus 5 isolate 12M UL128 gene, complete cds, 16−OCT−2005[retrieved on 17 Jan.2015],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ208273
【文献】
Genbank Accession no.DQ208274,Human herpesvirus 5 isolate 13J UL128 gene, complete cds, 16−OCT−2005[retrieved on 17 Jan.2015],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ208274
【文献】
Genbank Accession no.DQ208254,Human herpesvirus 5 isolate 12M UL130 gene, complete cds, 16−OCT−2005[retrieved on 17 Jan.2015],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ208254
【文献】
Genbank Accession no.DQ208255,Human herpesvirus 5 isolate 16M UL130 gene, complete cds, 16−OCT−2005[retrieved on 17 Jan.2015],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ208255
【文献】
Genbank Accession no.DQ208256,Human herpesvirus 5 isolate 17M UL130 gene, complete cds, 16−OCT−2005[retrieved on 17 Jan.2015],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ208256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
特許、公開出願、技術論文および学術論文を含む様々な刊行物が、本明細書全体に引用されている。これらの引用刊行物は、各々、本明細書にそのままの状態で参照することにより援用される。
【0005】
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科β亜科の一員として分類されるヘルペスウイルスである。疾病管理予防センターによると、CMV感染はヒト集団においてかなり普遍的に見られ、米国の成人人口の40〜80%が感染していると推定される。該ウイルスは、主に体液を通じて伝染し、高い頻度で妊婦から胎児または新生児に感染する。ウイルスが活性化されると、高熱、悪寒、倦怠感、頭痛、吐き気、および脾臓肥大症を引き起こすけれども、ほとんどの個体においてCMV感染は潜在的である。
【0006】
ほとんどのヒトCMV感染は無症状であるけれども、免疫機能が低下した個体におけるCMV感染(例えば、新生児、HIV陽性患者、同種移植患者およびガン患者など)は、大いに問題となり得る。かかる個体におけるCMV感染は、肺炎、肝炎、脳炎、大腸炎、ブドウ膜炎、網膜炎、失明、およびニューロパシー、その他の有害な症状を含む深刻な疾病を引き起こす。加えて、CMVは出生異常の主要原因である(Britt WJ ら、1996, Fields Virology, 3rd ed. 2493-2523)。今のところ、CMV感染に対する治療法または予防ワクチンはない。
【0007】
CMVは、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、平滑筋細胞、肝細胞、および間質細胞を含む、様々な細胞に感染する(Plachter B ら、1996, Adv. Virus Res. 46:195-261)。上皮細胞は宿主内でのウイルスの蔓延を促進することから、上皮細胞の感染は深刻である(Britt & Alford, 1996, supra)。内皮細胞の感染は重大である。なぜなら、内皮細胞はヒトCMVの持続および潜伏の場であり、白血球感染への入り口であると考えられており、内皮細胞は母親から胎児/新生児への伝染を促進し得、特に血管内皮細胞の感染は様々な血管病変の一因となると考えられているからである(Jarvis MA ら、2002, Curr. Opin. Microbiol. 5:403-7; Gerna G ら、2002, J. Virol. 74:5629-38; Hengel ら、2000, Trends Microbiol. 8:294-6; および、Patrone M ら、2005, J. Virol. 79:8361-73)。
【0008】
免疫機能が低下した個体において、CMVは、多数の器官系に感染し、全ての主要な細胞型で複製する。臨床分離株は様々な細胞型において複製するけれども、実験室株(例えば、AD169(Elek, S. D. & Stern, H. 1974, Lancet 1, 1-5)およびTowne (Plotkin, S. A., ら、1975, Infect. Immun. 12, 521-527)など)は、ほぼ例外なく線維芽細胞においてのみ複製する(Hahn G ら、2004, J. Virol. 78:10023-33)。線維芽細胞におけるウイルスの連続継代により生じる指向性(tropism)の制限は、弱毒化の指標である(Gerna ら、2002, supra)。ヒトCMV実験室株における、上皮細胞、内皮細胞、多形核白血球および樹状細胞指向性の欠損を引き起こす変異は、3つのオープンリーディングフレーム(ORF):UL128、UL130およびUL131にマップされた(Hahn ら、2004, supra; Gerna, G., ら、2005, J. Gen. Virol. 86, 275-284)。ヒトCMVのFIX臨床分離株におけるこれらのORFのいずれか一つの変異は、内皮細胞指向性を阻害した(Hahn ら、2004, supra)。
【0009】
CMV粒子は3つの主要な糖タンパク質複合体を含み、その全てがヒトCMV感染性に必要とされる。該gCI複合体は、2つの分子のUL55-コードgBを含む。各々160kDaモノマーが切断され、ジスルフィド結合により55kDaの膜貫通成分に結合した116-kDaの表面ユニットが生じる。gBに対して免疫特異的ないくつかの抗体は、ビリオンの細胞への結合を阻害する一方、他の抗体は感染した細胞の融合を阻害する。このことは、タンパク質が感染の開始時に多数の機能を遂行し得ることを示唆する。いくつかの細胞膜タンパク質はgBと相互作用し、これらの相互作用により、細胞内シグナル伝達経路の参入および活性化が促進されると思われる。該gCII複合体は、UL100-コードgMおよびUL73-コードgNを含み、糖タンパク質複合体が最も豊富である。該複合体はへパラン硫酸プロテオグリカンに結合し、このことは、それがビリオンと細胞表面の初期相互作用に寄与し得ることを示唆する。それはまた、いくつかのα-ヘルペスウイルスで見られるgM-gN複合体と同様に、ビリオンの集合(assembly)/包囲(envelopment)の間に構造的役割も担うかもしれない。該gCIII複合体は、UL75-コードgH、UL115-コードgL、およびUL74-コードgOを含む。全ての既知のヘルペスウイルスはgH-gLヘテロダイマーをコードし(Spear, P. G. & Longnecker, R. 2003, J. Virol. 77, 10179-10185)、ビリオンエンベロープと細胞膜の融合を仲介する。ヒトCMV gHに対して免疫特異的な抗体は、ウイルスの結合に影響を与えないが、侵入および細胞から細胞への拡散を阻害する(Rasmussen, L. E. ら、1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 876-880; Keay, S. & Baldwin, B. 1991, J. Virol. 65, 5124-5128)。無感染状態でのgH-gLの発現は合胞体の誘導に十分であり、アッセイにgOを加えると、融合を促進または阻害しなかった(Kinzler, E. R. & Compton, T. 2005, J. Virol. 79, 7827-7837)。AD169のgO-欠損突然変異体は、著しい増殖不良を示す(Hobom, U. ら、2000, J. Virol. 74, 7720-7729)。最近、gHがインテグリンαvβ3に結合することが報告された(Wang, X. ら、2005, Nat. Med. 11, 515-521)。しかしながら、これまで、UL131-UL128によりコードされるタンパク質は、どんなウイルス性の糖タンパク質との結合も報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CMVワクチン、および、ウイルスの拡散および活性化(特に免疫機能が低下した個体および妊婦において)を制御する効果的な方法が必要とされている。また、サイトメガロウイルスの感染性を阻害する抗ウイルス化合物のスクリーニング方法も必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明の一態様は、医薬的に許容可能な担体、および、pUL128またはpUL130と適宜少なくとも一つの他のウイルスまたはCMVビリオン複合体の細胞成分を含有するサイトメガロウイルス(CMV)タンパク質の複合体を含有する免疫原性組成物を特徴とする。様々な態様において、該CMVタンパク質は、例えばヒト、チンパンジーまたはアカゲザルのCMVといった、霊長類CMV由来である。
【0012】
様々な態様において、他のウイルスまたはビリオン複合体の細胞成分は、pUL131、gH、gL、またはgBのうちの1つ以上である。例えば、該複合体はpUL128およびpUL130を含むことができるか、あるいは、UL128またはpUL130をそれぞれ単独で含むことができる。または、該複合体は、pUL128およびgHまたはgL、あるいはpUL130およびgHまたはgL、あるいはpUL128、pUL130およびgHまたはgL、あるいは4つのタンパク質全てを含むことができる。また、例えば、該複合体は、pUL128、gHおよびgLまたはpUL30、gHおよびgLを含むことができる。
【0013】
一態様において、pUL128のマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合している。あるいは、pUL130のマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合している。別の態様において、pUL128およびpUL130のマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合し、または、pUL128、pUL130およびgHまたはgLのマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合している。さらに別の態様において、pUL128および糖タンパク質Bのマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合し、または、pUL130および糖タンパク質Bのマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合している。別の態様において、pUL128、pUL130および糖タンパク質Bのマルチフラグメントが1つのポリペプチド鎖に結合している。
【0014】
本発明のこの態様において、該複合体は、CMVタンパク質をコードする1以上のポリヌクレオチドの発現により生成される。例えば、該複合体は弱毒化CMVをコードするCMVゲノムの発現により生成され、その場合、弱毒化は複合体の形成には影響しない。
【0015】
本発明の別の態様は、医薬的に許容可能な担体、およびpUL128、pUL130、あるいはpUL128またはpUL130を含む複合体から選択される少なくとも1つのサイトメガロウイルス(CMV)タンパク質またはそのフラグメント、および、適宜少なくとも1つの他のウイルスまたはCMVビリオン複合体の細胞成分を含む複合体を有するサブユニットワクチンであることを特徴とし、該ワクチンはレシピエント(recipient)においてCMVに対する免疫反応を誘導する。様々な態様において、該CMVタンパク質またはそのフラグメントは、例えばヒト、チンパンジーまたはアカゲザルのCMVといった、霊長類CMV由来である。該サブユニットワクチンは、さらにアジュバントを含むことができる。
【0016】
ある態様において、該複合体の少なくとも1つのタンパク質は担体タンパク質に結合している。好ましいキャリアタンパク質として、アルブミン、オボアルブミン、緑膿菌外毒素、破傷風毒素、リシン毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素、易熱性エンテロトキシン、キーホールリンペットヘモシアニン、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフェリン、血小板由来増殖因子、ポリ-L-リジン、ポリ-L-グルタミン、またはマンノース-6-ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
一態様において、該タンパク質、タンパク質フラグメントまたは複合体は、弱毒化CMVウイルス粒子の表面で発現する。別の態様において、該タンパク質またはそのフラグメントは、CMVウイルス粒子の表面に存在する1以上の他のタンパク質またはそのフラグメントに融合する。別の態様において、該タンパク質またはそのフラグメントは、ヒトCMVウイルス粒子の表面で発現するように改変された少なくとも1つの非-ヒトCMVタンパク質に融合する。
【0018】
本発明の別の態様は、医薬的に許容可能な担体、および、pUL128、pUL130、あるいはpUL128またはpUL130を含む複合体から選択されるCMVタンパク質またはそのフラグメントをコードする少なくとも1つの核酸分子を含有するベクターを含む核酸ワクチンを特徴とし、該少なくとも1つの核酸分子がワクチンレシピエントで発現し、該発現産物がレシピエントにおいてCMVに対する免疫反応を誘導する。
【0019】
該核酸ワクチンは、pUL128-pUL130-含有複合体に含まれる1以上のタンパク質、および/または他のビリオンタンパク質を発現するように構築される。一態様において、該CMVタンパク質は非CMVベクターに含まれる。例えば、非CMVベクターは、pUL128、またはpUL130、またはpUL128およびpUL130の両方を発現可能である。あるいは、非CMVベクターは、pUL128、pUL130およびgH、gLあるいはgHとgLの両方を発現可能である。他の態様において、該核酸ワクチンは、pUL128、pUL130、pUL131、gH、gL、またはgBの1つ以上の、1以上のフラグメントを発現する非CMVベクターを含有できる。特定の態様において、そのようなフラグメントの2つ以上は単一のポリペプチドで発現する。
【0020】
本発明の別の態様は、pUL128またはpUL130を含むCMVビリオン複合体由来のウイルス-コードタンパク質に特異的に結合する抗体またはそのエピトープ-結合フラグメントを特徴とし、該抗体またはそのエピトープ-結合フラグメントは、CMVビリオン複合体の細胞受容体への結合、または細胞のCMV感染、あるいはその両方を阻害する。様々な態様において、該ビリオンは霊長類CMV(例;ヒト、チンパンジーまたはアカゲザルのCMV)由来である。
【0021】
該抗体は、組み換えDNA法により作製されるモノクローナル抗体または一本鎖抗体であり得る。ある態様において、それらはヒト抗体またはヒト化抗体である。
【0022】
ある態様において、該抗体はpUL128に特異的に結合する。一態様において、該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8474]の抗血清のポリクローナル抗体と同等以上のpUL128に対する結合親和性を有する。このタイプの典型的な抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8474]の抗血清のポリクローナル抗体である。別の態様において、該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8473]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同等以上のpUL128に対する結合親和性を有する。別の態様において、該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8473]のハイブリドーマ細胞株から産生されるモノクローナル抗体により認識されるpUL128のエピトープに競い合って結合する。該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8473]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同一のpUL128のエピトープに結合し得る。このタイプの典型的なモノクローナル抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8473]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体である。別の態様は、pUL128を含有するCMVビリオン複合体の結合パートナーを中和することを特徴とし、
ATCC寄託番号[PTA-8473]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体に存在する1以上の相補性決定領域(CDR)と70%以上の同一性(identity)を有する1以上のビリオン結合配列を含む。
【0023】
ある態様において、該抗体はpUL130に特的に結合する。一態様において、該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8472]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同等以上のpUL130に対する結合親和性を有する。別の態様において、該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8472]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体により認識されるpUL130のエピトープに競い合って結合する。該抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8472]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体と同一のpUL130のエピトープに結合し得る。このタイプの典型的なモノクローナル抗体は、
ATCC寄託番号[PTA-8472]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体。別の態様は、pUL130を含有するCMVビリオン複合体の結合パートナーを中和することを特徴とし、
ATCC寄託番号[PTA-8472]のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体に存在する1以上の相補性決定領域(CDR)と70%以上の同一性を有する1以上のビリオン結合配列を含む。
【0024】
前述の抗体のいずれかは、さらに、タンパク質へのグリカン構造の付加に関与する酵母細胞における発現により改変されたグリコシル化を含み得る。さらに、前述の抗体のいずれかは、医薬組成物に編成され得る。
【0025】
様々な態様において、前述の抗体は免疫正常者をpUL128またはpUL130および少なくとも1つの他のウイルスまたはビリオン複合体の細胞成分を含有するCMVビリオン複合体に暴露することにより作製され、該抗体はpUL128またはpUL130を含有するCMVビリオン複合体に対して免疫特異的であるが、その他のCMVビリオン複合体に対しては免疫特異的ではない。そのような抗体は、pUL128またはpUL130に結合する成分を有するポリクローナル抗体であり得る。特定の態様において、それらはpUL128に結合する成分、およびpUL130に結合する成分を有するポリクローナル抗体であり、該抗体はpUL128の少なくとも2倍の量のpUL130を結合する能力がある。
【0026】
本発明の別の態様は、pUL128またはpUL130を含有するCMVビリオン複合体の細胞への結合を阻害し、それによりCMV感染を阻害することを含む、内皮または上皮細胞のCMV感染を阻害する方法を特徴とする。一態様において、結合阻害は、細胞を、CMVビリオン複合体、特にpUL128またはpUL130に対して免疫特異的な抗体で処理することによりなされる。該方法は、培養細胞または生体の細胞内のin situにて行うことができる。
【0027】
本発明の別の態様は、:(a)試験化合物の存在または非存在下において、宿主細胞、または1以上の宿主細胞の細胞受容体を、(i)pUL128またはそのフラグメント、(ii)pUL130またはそのフラグメント、あるいは(iii)pUL128またはpUL130、および、適宜少なくとも1つの他のウイルスまたはCMVビリオン複合体の細胞成分を含む複合体、から選択されるCMVビリオンまたはそれらの成分に暴露すること;および(b)CMVビリオンまたはその成分が宿主細胞または細胞受容体へ結合するのを、該試験化合物が妨げるかどうか決定すること、該結合の妨害がCMVの宿主細胞への侵入を阻害する試験化合物の能力の指標であること、
を含む、CMVの宿主細胞へ侵入を阻害する能力を有する化合物のスクリーニング方法を特徴とする。
【0028】
該方法のある態様において、該宿主細胞は上皮細胞または内皮細胞である。一態様において、該細胞受容体は膜フラグメント内に位置している。該細胞受容体は固体支持体に固定できる。一態様において、該CMV成分はpUL128またはそのフラグメント、あるいはpUL130またはそのフラグメントである。また、該CMV成分は固体支持体に固定できる。該CMVビリオンはまた、ポリヌクレオチドを含むベクターによりトランスフェクトした細胞内でポリヌクレオチドをコードするビリオンを発現することにより産生できる。典型的な態様において、該ベクターはBADrUL131である。該試験化合物は、生体分子、有機化学物質(organic chemical)、無機化学物質(inorganic chemical)、またはフラグメント、アナログ、ホモログ、複合体(conjugate)、またはその誘導体であり得る。
【0029】
別の態様において、前述の方法により、CMVまたはその成分が宿主細胞または細胞受容体に結合するのを阻害する能力を有することが分かった、選択された試験化合物を:(a)選択した化合物の存在下または非存在下において、宿主細胞をCMVビリオンに暴露すること;および、(b)選択した試験化合物が、(i)宿主細胞内におけるCMVタンパク質の産生;(ii)CMV感染による細胞変性効果;または(iii)ウイルスタンパク質の細胞から細胞への拡散、のうちの1つ以上を阻害するかどうか(さらに該阻害は、CMV感染を阻害する能力を該試験化合物が有することの指標である)を決定すること、を特徴とする二次スクリーニングにかけた。
【0030】
本発明の別の態様は、化合物が内皮または上皮細胞におけるヒトCMV感染性の中和能力に関する化合物のスクリーニング方法を特徴とする。該方法は:(a)試験化合物の存在下または非存在下において、上皮または内皮細胞を、pUL128またはpUL130を含むビリオン複合体を含有するCMVビリオンに暴露すること;および(b)試験化合物がCMVの宿主細胞への侵入を阻害するかどうか(該阻害は、内皮または上皮細胞のヒトCMV感染性の中和能力を該試験化合物が有することの指標である)を決定すること、を含む。特定の態様において、該試験化合物は、抗体またはそのエピトープ-結合フラグメント、またはpUL130またはpUL128を含有するCMVビリオン複合体の中和結合パートナーである。該CMVビリオンは、ポリヌクレオチドを含むベクターによりトランスフェクトした細胞内でポリヌクレオチドをコードするビリオンを発現することにより、産生できる。一態様において、該ベクターはCMVの臨床分離株のゲノムを含む。別の態様において、該ベクターは、機能的UL131-128遺伝子座を含むか、含むように構築されたCMVの実験室株のゲノムを有する。典型的な態様において、該ベクターはBADrUL131である。
【0031】
本発明の別の態様は、患者が免疫原性組成物に対する免疫反応を発現できる条件下において、医薬的に許容可能な担体、および、pUL128またはpUL130、および適宜少なくとも1つの他のウイルスまたはCMVビリオン複合体の細胞成分を含有するサイトメガロウイルス(CMV)タンパク質の複合体を有する免疫原性組成物を患者に投与することにより、患者にCMV感染に対する免疫力をつけさせる方法を特徴とする。
【0032】
本発明の別の態様は、患者がサブユニットワクチンに対する免疫反応を発現できる条件下において、医薬的に許容可能な担体、ならびに、pUL128、pUL130、またはpUL128もしくはpUL130を含む複合体から選択される少なくとも1つのサイトメガロウイルス(CMV)タンパク質またはそのフラグメント、および適宜他のウイルスまたはCMVビリオン複合体の細胞成分の少なくとも1つを含有するサブユニットワクチンを患者に投与することにより、患者にCMV感染に対する免疫力をつけさせる方法を特徴とする。
【0033】
本発明のさらに別の態様は、患者が核酸ワクチンによりコードされるタンパク質に対する免疫反応を進行できる条件下において、医薬的に許容可能な担体、および、pUL128、pUL130、あるいはpUL128またはpUL130を含む複合体から選択されるCMVタンパク質またはそのフラグメントをコードする少なくとも1つの核酸分子を含有するベクターを含む核酸ワクチンであって、該少なくとも1つの核酸分子が患者において発現する該核酸ワクチンを患者に投与することにより、患者にCMV感染に対する免疫力をつけさせる方法を特徴とする。
【0034】
本発明のさらに他の態様は、pUL128またはpUL130を有するCMVビリオン複合体中のウイルス-コードタンパク質を特異的に結合する抗体またはそのエピトープ-結合フラグメントを患者に投与し、それによって、該抗体またはそのエピトープ-結合フラグメントが、ヒトCMVビリオン複合体の細胞受容体への結合、または細胞のCMV感染、あるいはその両方を阻害して患者におけるCMV感染を軽減させることを特徴とする、患者におけるCMV感染を軽減させる方法である。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例の参照により理解されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(実施形態の詳細な説明)
本明細書および請求項中に、本発明の方法および他の態様に関する様々な用語が用いられる。他に定義のない限り、ここに用いる全ての技術的および科学的用語は、本発明分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。ここに記載のものと類似または同等のいくつかの方法および物質を本発明の試験の実施に用いることができるけれども、望ましい物質および方法をここに記載する。本発明の記載および請求項において、以下の専門用語が用いられる。
【0047】
また、ここで用いられる専門用語は特定の態様を説明することのみが目的であり、制限されることを意図しないと解される。本明細書および付属の請求項で用いられるように、単数形“a”、“an”および“the”は、内容から明らかに別象でない限り、複数形のものも含む。従って、例えば、“細胞”と言えば、2以上の細胞の組み合わせなどを含む。
【0048】
“抗体”または“免疫グロブリン”は、抗体分子および様々な抗体由来分子について言及するために広く用いられ、高等哺乳動物で生じ、免疫系の主要な要素である糖タンパク質グループのいくつかの要素を含む。用語“抗体”は最も広い意味で用いられ、具体的には、それらが望ましい生物活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物(antibody composition)、二重特異性抗体、ダイアボディ(diabodies;ダイマー)、1本鎖分子、並びに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)
2、およびFv)に及ぶ。免疫グロブリン分子は、それぞれ軽鎖および重鎖の末端部を含む抗原結合領域、および様々な機能に必要(例えば補体結合など)なFc領域を含む。5種類の免疫グロブリンがあり、Fc領域における該重鎖の一次構造が免疫グロブリンの種類を決定する。具体的には、α、δ、ε、γ、およびμ鎖は、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに対応する。免疫グロブリンおよび抗体はα、δ、ε、γ、およびμの全てのサブクラスを含むと考えられ、いかなる天然マルチマー(例えば、IgAおよびIgM)または4-鎖免疫グロブリン構造の合成マルチマーについても言及する。抗体は、非-共有で、特異的、可逆的に抗原に結合する。該抗原結合活性は抗体のV(可変)領域に認められる一方、補体結合性およびIg受容体結合活性はC領域に認められる。V領域において可能な配列変異の量に構造的な制限がある。事実、該変異は、ほとんどが重鎖(H)および軽鎖(L)両方のN-末端領域内の3つの領域に制限されている。3次構造において、これらの領域はループを形成し、抗体と抗原間に結合表面をもたらす。これらの領域は抗体と抗原間の’フィット(fit)’を決定するので、それらは“相補性決定領域”または“CDRs”と呼ばれる。
【0049】
“モノクローナル抗体”は実質的に均一の抗体の集団から得られた抗体である。すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る自然に生じた突然変異の可能性を除いて、同一である。例えば、モノクローナル抗体は抗体産生細胞の単一のクローンにより調製される。ポリクローナル抗体とは異なり、モノクローナル抗体は単一特異的である(例えば、単一のエピトープに特異的、など)。該修飾語句“モノクローナル”は実質的に均一の抗体の集団から得られたものとしての抗体の特徴を示し、特別な方法によってその抗体を産生することを要するとは解釈されない。抗体の結合特異性を決定するためのスクリーニング解析は本分野では周知であり、日常的に実施されている。そのような解析の包括的な考察については、Harlow ら、(Eds.), 抗体 A LABORATORY MANUAL; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, NY (1988), Chapter 6を参照のこと。
【0050】
用語“中和抗体”は、ウイルスなどの感染性因子と相互作用して、その宿主への感染能力を減衰または阻害する抗体の1種を言う。
【0051】
“生体分子”には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖、単糖、および全てのフラグメント、アナログ、ホモログ、複合体、およびその誘導体が含まれる。
【0052】
量、時間などの測定値に関してここで用いる“およそ”は特定の値から±20%または±10%、より望ましくは±5%、さらに望ましくは±1%、もっと望ましくは±0.1%、記載した方法を実施するのに適切な変動を含むことを意味する。
【0053】
遺伝子の“コード領域”は遺伝子のコード鎖ヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドを含み、各々、遺伝子の転写により生じるmRNA分子のコード領域と相同または相補的である。
【0054】
mRNA分子の“コード領域”はまた、mRNA分子のヌクレオチド残基を含み、それはmRNA分子の翻訳中に運搬RNA分子のアンチコドン領域と適合する、または停止コドンをコードする。従って、該コード領域は、mRNA分子によりコードされる成熟タンパク質に存在しないアミノ酸残基に対応するヌクレオチド残基を含むことができる(例えば、タンパク質移行シグナル(protein export signal)配列中のアミノ酸残基)。
【0055】
“コードする”とは、特定配列のヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または特定配列のアミノ酸のいずれか、およびそれらから得られる生物学的特性を有するバイオプロセスにおいて他のポリマーおよび高分子の合成鋳型としての役割を果たす、ポリヌクレオチド中の特定の配列のヌクレオチド(例えば遺伝子、cDNA、またはmRNAなど)の固有の特性のことを言う。従って、細胞または他の生体系において、転写およびその遺伝子に対応するmRNAの翻訳がタンパク質を産生する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。コード鎖(mRNA配列に同一で一般的に配列表に供されるヌクレオチド配列)、および非-コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として用いられる)の両方とも、タンパク質または遺伝子またはcDNAの他の産物をコードすると言及できる。特別の定めのない限り、“アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列”には、互いの縮重形であり、同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含む場合がある。
【0056】
“有効量”または“治療効果のある量”はここでは交互に用いられ、ここに記載の特定の生物学的結果(biological result)を得るのに有効な、化合物、処方、物質、または組成物の量のことを言う。そのような結果としては、本分野において好ましい意味でのウイルス感染の阻害が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
ここで用いる“内因性”とは、生命体、細胞、組織、系の内部由来の物質、またはその内部で産生される物質のことを言う。“外因性”は、生命体、細胞、組織、系の外部から導入される物質、またはその外部で産生される物質のことを言う。
【0058】
ここで用いる用語“発現”は、そのプロモーターにより開始される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0059】
ここで用いられ、核酸に適用される用語“フラグメント”は、連続したより大きな核酸のことを言う。核酸の“フラグメント”は、少なくともおよそ15ヌクレオチド長;例えば、少なくともおよそ50ヌクレオチドからおよそ100ヌクレオチド;少なくともおよそ100からおよそ500ヌクレオチド、少なくともおよそ500からおよそ1000ヌクレオチド、少なくともおよそ1000ヌクレオチドからおよそ1500ヌクレオチド;またはおよそ1500ヌクレオチドからおよそ2500ヌクレオチド;またはおよそ2500ヌクレオチド(およびその間のいずれかの整数値)であり得る。
【0060】
ここで用いられ、タンパク質またはペプチドに適用される用語“フラグメント”は、連続したより大きなタンパク質またはペプチドのことを言う。タンパク質またはペプチドの“フラグメント”は、少なくともおよそ10アミノ酸長(例えば、単独の直線状エピトープに関して);例えば、少なくともおよそ20アミノ酸長;少なくともおよそ50アミノ酸長;少なくともおよそ100アミノ酸長、少なくともおよそ200アミノ酸長、少なくともおよそ300アミノ酸長、および少なくともおよそ400アミノ酸長(およびその間のいずれかの整数値)であり得る。
【0061】
ここで用いる“相同の、相同性”または“同一の、同一性”は、2つの高分子間、例えば、2つの核酸分子間(例えば2つのDNA分子または2つのRNA分子など)、または2つのポリペプチド分子間におけるサブユニット配列の同一性のことを言う。2つの分子の両方におけるサブユニットのポジションが同一のモノマーサブユニットにより占められる場合;例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおけるポジションがアデニンにより占められる場合、それらはそのポジションにおいて相同である。2つの配列間における相同性は、一致または相同なポジションの数の一次関数である;例えば、2つの配列におけるポジションの半分(例えば、10サブユニット長のポリマーにおいては5ポジション)が相同である場合、該2つの配列は50%相同であり;90%のポジション(例えば、10のうち9)が一致または相同である場合、2つの配列は90%相同である。一例として、該DNA配列3’ATTGCC5’および3’TATGGCは50%相同である。
【0062】
ここで用いる“免疫付与”または“ワクチン接種”は、予防的または治療的な免疫付与またはワクチン接種を意図する。“治療的ワクチン接種”は、CMV感染した患者へのワクチン接種を意味する。
【0063】
“単離された”とは、天然状態から改変または取り出すことを意味する。例えば、動物生体に天然に存在する核酸またはペプチドは“単離された”でないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同一の核酸またはペプチドは“単離された”である。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された状態、または非天然環境(例えば、宿主細胞など)において存在し得る。他に特別に特定されない限り、本発明の目的物を形成するタンパク質、ビリオン複合体、抗体および他の生体分子は、単離されたものまたは単離可能なものである。
【0064】
用語“患者”、“対象”、“個体”などは、ここでは交互に用いられ、CMVに感染し得る動物またはその細胞(in vitro、in situにかかわらず)のことを言う。特定の非限定的態様において、患者、対象または個体はヒトである。
【0065】
免疫原性組成物の“非経口”投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内投与、または注入技術が含まれる。
【0066】
ここで用いる用語“ポリヌクレオチド”は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。従って、ここで用いる核酸およびポリヌクレオチドは代替可能である。核酸はポリヌクレオチドであり、モノマー“ヌクレオチド”に加水分解され得ることは当業者の間では周知のことである。該モノマーヌクレオチドはヌクレオシドに加水分解され得る。ここで用いるポリヌクレオチドとしては、当分野で利用可能な、例えばリコンビナント法(即ち、一般的なクローニングおよび増幅技術を用いた、リコンビナントライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列クローニングなど)などのいずれかの手法および合成的手法により得られる全ての核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
ここで用いる用語“ペプチド”、“ポリペプチド”および“タンパク質”は代替可能であり、ペプチド結合により共有結合しているアミノ酸残基を含む化合物のことを言う。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列に含まれるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、互いにペプチド結合により結合している2以上のアミノ酸を含むいくつかのペプチドまたはタンパク質を含む。ここで用いる用語は、例えば、当分野では一般的にペプチドとも呼ばれる短鎖であるオリゴペプチドおよびオリゴマーの両方、および、当分野では一般的にタンパク質と呼ばれるより長い鎖のことを言い、多くの種類が存在する。“ポリペプチド”には、例えば、生物活性フラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質、その他が含まれる。該ポリペプチドには、天然ペプチド、リコンビナントペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
“医薬的に許容される”とは、薬理学的/毒性学的観点において患者に、および組成、製剤、安定性、患者の受容性および生物学的利用可能性に関する物理学的/化学的観点において製薬化学者に、受け入れられる特性および/または物質について言う。“医薬的に許容される担体”とは、有効成分の生物活性の効果を妨げず、投与された宿主に対して毒性を持たない媒体のことを言う。
【0069】
ここで用いる“試験化合物”は、精製された分子、実質的に生成された分子、化合物の混合物の1以上の成分である分子、または本発明の方法を用いて分析可能なその他の物質と化合物の混合物、のことを言う。試験化合物は、有機または無機化学物質、または生体分子、および全てのフラグメント、アナログ、ホモログ、複合体、およびその誘導体であり得る。生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、脂質、多糖、および全てのフラグメント、アナログ、ホモログ、複合体、およびその誘導体が含まれる。試験化合物は、天然起源または合成起源であることができ、その天然資源から単離または精製することもでき、または新たに合成することもできる。試験化合物は、構造または組成の観点において特定されているか、未特定であり得る。該化合物は、未知の構造の単離生成物、いくつかの既知の生成物の混合物、または1以上の化合物を有する未定義の組成であることができる。未特定組成物の例として、細胞および組織抽出物、原核生物、真核生物、および古細菌の細胞を培養する培地、発酵液、タンパク質発現ライブラリーなどが含まれる。
【0070】
ここで用いる用語“治療の”は、治療および/または予防を意味する。治療効果は、CMV感染に関連した病状の抑制、緩和(remission)、または根絶により得られる。
【0071】
本発明の意図する範囲内で用いる用語“治療”は、病気または疾病(disorder)の治療療法並びに予防法、または抑制法を含むことを意味する。従って、例えば、治療という用語には、病気または疾病の発症の前または後における薬剤の投与、それによる病気または疾病の全ての兆候を防ぐまたは取り除くことが含まれる。別の例としては、病気の症状と闘うために、病気の臨床症状の発症後に薬剤を投与することが病気の“治療”に含まれる。これには例えば、生命体の未感染細胞へのCMV伝播の防止が含まれる。ここでたまに用いられるフレーズ“CMV感染の軽減”は、CMVに感染した患者の感染レベルを低下させることを含み、臨床医に周知の方法により決定される、治療方法のことを言う。
【0072】
ここで用いられる用語としての“変異”とは、基準の核酸配列またはペプチド配列からの配列にそれぞれ差違を有するが、基準の分子の本質的特性は残している核酸配列またはペプチド配列である。核酸変異の配列における変化は、基準の核酸によりコードされるペプチドのアミノ酸配列を変化させない、またはアミノ酸置換、付加、欠失、融合および切断をもたらす場合がある。ペプチド変異の配列における変化は、基準のペプチドの配列および変異が、全体的に非常に類似し、多領域において同一であるように、通常は制限または保守されている。変異および基準のペプチドは、いずれかの組み合わせにおける1以上の置換、付加、欠失により、アミノ酸配列に差異を有し得る。核酸またはペプチドの変異は、例えばアレル変異体といった天然に発生するものや、または天然に発生するか不明な変異もあり得る。核酸およびペプチドの非天然発生的変異体は、突然変異誘発技術または直接合成により作製される。
【0073】
“ベクター”は、別の核酸セグメントがセグメントの複製または発現を引き起こすように組み込まれたレプリコン(例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、並びに他の細菌性、酵母性およびウイルス性ベクターなど)である。“発現ベクター”は、発現されるようにヌクレオチド配列に結合した発現調節配列を有するベクターのことを言う。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用エレメントを含み;発現のための他の要素は、宿主細胞により与えられるか、またはin vitro発現系に存在し得る。発現ベクターには、当分野では周知の、例えばコスミド、プラスミド(例えば、リポソーム中にむき出し(naked)または含有されている)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)といった、リコンビナントポリヌクレオチドに組み込むものが含まれる。
【0074】
サイトメガロウイルスは、上皮細胞、内皮細胞、および線維芽細胞を含む多くの異なる細胞種において複製する。しかしながら、線維芽細胞において連続継代により弱毒化ワクチンの候補として開発されたウイルスの実験室株の多くは、上皮および内皮細胞に感染する能力がない。UL131(一部の研究者によりUL131Aとも呼ばれる)、UL130およびUL128遺伝子を含む、UL131-UL128遺伝子座における突然変異により、それらの生育は主に線維芽細胞に制限されている。以前の研究において、UL131-UL128遺伝子座はヒトCMV内皮細胞宿主域の一次決定因子であることが証明され、さらに、機能的UL131-128遺伝子座は上皮細胞指向性に必須であることが、本発明者により見いだされた。しかしながら、この機能の性質は分かっておらず、実際にはUL131-UL128遺伝子産物うちの1つ以上が分泌型サイトカインであると考えられた(Akter PC ら、2003, J. Gen. Virol. 84, 1117-1122; Hahn ら、2004, supra)。
【0075】
本発明によれば、UL131-UL128遺伝子座、pUL130およびpUL128の2つの生成物は、gHおよびgLと複合体を形成するが、gOとは形成しないことが証明された。該AD169実験室株は、機能的UL131タンパク質を欠き、gH-gL-gO複合体のみを含むビリオンを作り出す。UL131 ORFが修復された上皮および内皮細胞指向性AD169変異株は、BADrUL131と呼ばれ、gH-gL-gOおよびgH-gL-pUL128-pUL130複合体の両方を担持するビリオンを生成する。pUL130またはpUL128に対する抗体は、BADrUL131およびその融合-誘導因子X(FIX)ヒトサイトメガロウイルス臨床分離株による上皮および内皮細胞の感染を阻止するが、線維芽細胞に感染する能力には影響を与えない。
【0076】
本発明によれば、細胞表面抗原CD46は、CMVが上皮および内皮細胞への侵入を可能にする受容体であることも見いだされた。ここに記載のより詳細な説明のとおり、CD46に特異的なモノクローナル抗体が上皮および内皮細胞へのCMV感染性を濃度依存的に阻止することが示された。それ故に、CD46は抗ウイルス薬の開発の新しい細胞標的である。
【0077】
従って、本発明の一態様は、免疫原性組成物およびCMV感染の予防または治療用ワクチン、および、そのような組成物を用いて個体に免疫を付与する方法を特徴とする。そのようなワクチンは、CMVとその細胞受容体の間の相互作用(とりわけ、gH、gL、pUL128、pUL130、場合によってはその他のウイルスまたは細胞をコードするタンパク質を含むビリオン膜複合体を通じた)を標的とする。本発明の別の態様は、pUL130-pUL128-含有複合体により提示されるエピトープに免疫特異的であるか、あるいは、pUL130-pUL128-含有複合体を通じてCMVがCD46または別の細胞表面受容体に結合するのを防ぐことができる、抗体またはその抗原結合部位を特徴とする。本発明の別の態様は、前述の抗体のうちの1つ以上をCMVに感染した患者に投与することにより、CMV感染を軽減する方法を特徴とする。本発明の別の態様は、線維芽細胞以外の細胞(例えば、上皮および内皮細胞など)のCMV感染を中和することが可能な抗体のアッセイを特徴とする。本発明の別の態様は、CMVおよびその細胞受容体のpUL130-pUL128-含有複合体と、複合体が相互作用するCD46または他の細胞表面受容体との間の相互作用を標的とする抗ウイルス化合物の同定方法を特徴とする。
【0078】
免疫原性化合物およびワクチン、および使用方法:
本発明の一態様は、医薬的に許容される担体、ならびに、pUL128またはpUL130を含むサイトメガロウイルス(CMV)タンパク質複合体および他のウイルスまたはpUL128またはpUL130を含むビリオン複合体の細胞成分の少なくとも1つ、を含有する免疫原性組成物である。一態様において、該ビリオン複合体は、pUL128またはpUL130を単独で有する。別の態様において、該ビリオン複合体はpUL128およびpUL130を含む。別の態様において、該ビリオン複合体は糖タンパク質gLおよび/またはgH、あるいはその両方を含む。別の態様において、該ビリオン複合体はpUL128、pUL130、gLおよびgHを含む。別の態様において、該ビリオン複合体はpUL131を含むか、またはpUL131に関連する。さらに別の態様において、上記のタンパク質のフラグメントが、単一のポリペプチドか融合産物のいずれかとして用いられる。
【0079】
そのゲノムが機能的であるか遺伝子操作により機能的になり得るUL131-128遺伝子座を含むCMVが、前述のビリオン複合体またはその成分の原料として用いるのに好ましい。一態様において、該CMVはヒトCMVである。別の態様において、該CMVは別の霊長類(例としてチンパンジー(Davison, AJ ら、2003, J. Gen. Virol. 84: 17-28)およびアカゲザル(Hansen, SG ら、2003, J. Virol. 77:6620-36; Rivailler, P ら、2006, J. Virol. 80:4179-82)が挙げられるが、これに限定されない)由来である。該免疫原性組成物は、全て同一のCMV(例えば、全てヒトCMV由来)由来の成分を有するビリオン複合体であるか、または該成分は異なる種(例えば、ヒトCMV由来のpUL128、チンパンジーCMV由来のpUL130、および他のそのような組み合わせ)のCMVから選択され得る。
【0080】
該CMVビリオン複合体またはその成分は、当分野において周知の方法に従って、様々な方法で作製される。例えば、それらはウイルス粒子の表面から単離され、一緒にまたは別々で様々な成分に用いられる。ある態様において、該複合体は、1つ以上の、CMVタンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現、これらのタンパク質のフラグメント、または融合分子(fused molecule)により作製される。ある態様において、当業者においては当然のことであるように、CMVタンパク質および/またはCMVタンパク質フラグメントに加えて、融合分子には非-CMVタンパク質、非-CMVタンパク質フラグメント、および/またはアミノ酸配列の合成フラグメントが含まれ得る。
【0081】
pUL128およびpUL130タンパク質をコードする核酸配列は、当業者においては周知であり、全体または一部が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のような公開データベースにおいて提供される。一例として、制限はないが、UL128配列はGenBank登録No. DQ208272−DQ208294、およびUL130配列はGenBank登録No. DQ208254−208270、およびDQ011966−DQ011969で提供される。ヒトCMV UL128のオープンリーディングフレームはおよそ506−526ヌクレオチド長であり、望ましくは516ヌクレオチド長である。該オープンリーディングフレームは、およそ162からおよそ182アミノ酸長のタンパク質をコードする。望ましいコード配列は172アミノ酸長である。ヒトCMV UL130のオープンリーディングフレームはおよそ635−655ヌクレオチド長であり、望ましくは645ヌクレオチド長である。該オープンリーディングフレームはおよそ205からおよそ225アミノ酸長のタンパク質をコードする。望ましいコード配列は215アミノ酸長である。
【0082】
少なくとも6株(strain)のヒトCMVを、感染性の細菌人工染色体(BAC)としてクローニングし、配列を決定した(Murphy, E ら、2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 14976-14981)。該BAC配列は、GenBank登録No. AC146999(ここに記載のBADrUL131変異体から作製された実験室株 AD169); AC146851(実験室株 Towne); AC146904 (臨床分離株 PH); AC146905 (臨床-様分離株 Toledo); AC146906 (臨床分離株 TR);およびAC146907 (臨床分離株 FIX)で入手可能である。少なくとも2株のヒトCMVの配列を、BACクローニングなしに決定し、それはGenBank登録 No. BK000394 (実験室株 AD169)およびAY446894 (臨床分離株 Merlin)で入手可能である。チンパンジーCMV株の全ゲノムは、GenBank登録 No. AF480884で入手可能である。本出願の技術を利用することで、当業者は前述の配列のいずれか、または他の公的に入手可能なCMV配列のいずれかを用いて、ここに記載のビリオン、pUL130および/またはpUL128-含有ビリオン複合体またはその成分を調製することができるだろう。
【0083】
本発明の別の態様は、CMV感染に対する個体の治療用サブユニットワクチンを特徴とする。該サブユニットワクチンは、医薬的に許容される担体、および、pUL128および/またはpUL130、あるいはpUL128および/またはpUL130のフラグメントを含む、免疫原性CMVタンパク質またはタンパク質複合体(例えば上記に記載のビリオン複合体など)を含む。一態様において、該CMVタンパク質またはタンパク質複合体はpUL28を含む。別の態様において、該CMVタンパク質またはタンパク質複合体はpUL130を含む。別の態様において、該CMVタンパク質またはタンパク質複合体はpUL130およびpUL128を含む。別の態様において、該CMVタンパク質またはタンパク質複合体は、他のビリオン複合体成分またはビリオン-関連タンパク質(例えば、1以上のgL、gHまたはpUL131など)を含む。これらのタンパク質、タンパク質フラグメント、融合タンパク質、融合タンパク質フラグメントおよび成分は、先の免疫原性組成物の説明に記載の当分野では周知の方法により調製することができる。当業者にとっては当然のことながら、有効なワクチンは、上記の完全なpUL128/pUL130 ビリオン複合体を含む必要はない。CMVへの暴露におけるCMV感染からレシピエントを守るのに十分な免疫反応をレシピエント中で誘導する効果を有する複合体の要素を含む必要があるだけである。
【0084】
機能的であるか、または遺伝子操作により機能的になり得るUL131-128遺伝子座をゲノムに含むいずれかのCMVが、前述のサブユニットワクチンの成分の源として用いるのに好ましい。一態様において、該CMVはヒトCMVである。別の態様において、該CMVは別の霊長類(例えばチンパンジー(Davison, AJ ら、2003, J. Gen. Virol. 84: 17-28)およびアカゲザル(Hansen, SG ら、2003, J. Virol. 77:6620-36; Rivailler, P ら、2006, J. Virol. 80:4179-82)が挙げられるがこれに限定されない)由来である。該ワクチンが全て同一のCMV由来(例えば、全てヒトCMV由来など)の成分を含む、あるいは該成分が異なる種のCMV(例えば、ヒトCMV由来のpUL128、チンパンジーCMV由来のpUL130、および他のそのような組み合わせ)から選択される場合がある。
【0085】
該サブユニットワクチンはさらにアジュバントを含むことができる。アジュバントはワクチンにおいて抗原に対する免疫反応を高める物質であり得る。本発明における利用に好ましいアジュバントの例として、フロイントアジュバント(Freund’s adjuvant)、不完全フロイントアジュバント、サポニン、界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、デメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N-ジオクタデシル-N’-N-ビス(2-ヒドロキシエチルプロパンジアミン)、メトキシヘキサ-デシル-グリセロール、プルロニックポリオールなど)、ポリアニオン(例えば、ピラン、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン、硫酸デキストラン、ポリブレン、ポリIC、ポリアクリル酸、カーボポール、エチレンマレイン酸、水酸化アルミニウム)およびリン酸アルミニウムペプチド、油脂または炭化水素エマルジョン、などが挙げられるが、これに限定されない。
【0086】
pUL128および/またはpUL130、あるいはpUL128および/またはpUL130のフラグメントを含むタンパク質またはタンパク質複合体はキャリアタンパク質に結合し得る。当技術分野の範囲内において、CMVタンパク質複合体に結合するように、好ましいキャリアタンパク質を選択する。好ましいキャリアタンパク質の例としては、アルブミン、オボアルブミン、緑膿菌外毒素、破傷風毒素、リシン毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素、易熱性エンテロトキシン、キーホールリンペットヘモシアニン、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフェリン、血小板由来増殖因子、ポリ-L-リジン、ポリ-L-グルタミン、マンノース-6-ホスフェート、並びに細胞表面タンパク質および膜タンパク質などが挙げられるが、これに限定されない。
【0087】
いくつかの態様において、pUL128および/またはpUL130、あるいはpUL128および/またはpUL130のフラグメントを含むタンパク質またはタンパク質複合体は弱毒化CMVウイルス粒子の表面で発現する。当分野において、ウイルスを弱毒化する方法が知られている。例えば、線維芽細胞中での連続継代を用いてCMVを弱毒化することができる。ウイルス感染した宿主細胞をin vitroで繰り返し継代することにより、ウイルスを十分に弱毒化することができる。継代は、特異的な環境条件下(例えば、温度、pH、湿度が調節されているなど)で実施され、それにより感染性または病原性が低下したウイルスを選定する。突然変異誘発もまた用いられ得る。例えば、当分野において既知の方法に従って、CMVビリオンを紫外線またはイオン化放射線または化学的突然変異誘発因子に暴露するなどが可能である。組み換え技術も弱毒化CMVビリオンの作製に用いることができる。例えば、部位特異的突然変異誘発、遺伝子置換、または遺伝子ノックアウト技術を用いて、感染性または病原性を弱めたウイルス株を誘導することができる。弱毒化CMVは感染力および/または病原性の低下を示すが、CMV感染に対抗して宿主を治療または保護する免疫反応の誘導能力を残していることが望ましい。弱毒化CMV株の例としては、ほぼ線維芽細胞の中だけで複製する実験室株(例えば、AD169およびTowneなど)が挙げられるが、これに限定されない。pUL128および/またはpUL130あるいはpUL128および/またはpUL130のフラグメントを含有する表面タンパク質またはタンパク質複合体の生成に携わる、そのような弱毒化株は、線維芽細胞または他の細胞種(例えば上皮細胞など)において増殖させてワクチンとして用いることができる。
いくつかの態様において、ここに記載のpUL128および/またはpUL130タンパク質またはタンパク質複合体、およびその誘導体は、付加的なCMV遺伝子産物を含むより大きな複合体ワクチンの成分として投与される。これらの付加的なCMV遺伝子産物は、完全タンパク質および/またはタンパク質のフラグメントであり得る。一態様において、pUL128および/またはpUL130の免疫原性フラグメントは単独で存在するか、あるいはpUL128-pUL130ビリオン複合体の付加的な成分(例えば、gH)の免疫原性フラグメント、および/またはビリオンの付加的な成分(例えば、gBなど)を含む1つのポリペプチド鎖に結合し得る。そのような複合的免疫原性フラグメントを含むポリペプチドは、非-CMVおよび/または合成アミノ酸配列もまた有し得る。
いくつかの態様において、ここに記載のpUL128および/またはpUL130タンパク質またはタンパク質複合体、およびその誘導体はワクチンベクターの成分として投与され得る。ワクチンベクターには、改変ウイルス、バクテリアおよび他の微生物が含まれる。例えば、1以上のアデノウイルス遺伝子または遺伝子フラグメントを欠き、その代わりに、pUL128および/またはpUL130タンパク質またはタンパク質複合体およびその誘導体をコードする核酸を含む、アデノウイルス誘導体を産生することができる。
【0088】
ワクチンは、水性溶液(例えば、水またはアルコールなど)または生理的適合緩衝液(例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩緩衝液、PBSなど)中に組成できる。ワクチン製剤は、固形製剤としても調製でき、それは、使用前に好ましい媒体(例えば、滅菌水、食塩水、またはアルコール)と一緒にすることにより、使用直前に対象への投与に好ましい液体製剤に変換されるものである。
【0089】
該ワクチン組成物は、持続放出性賦形剤または持続性製剤を用いても形成できる。そのような長時間作用型製剤は、移植(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与される。従って、例えば、該ワクチンは、好ましいポリマー材料または疎水性材料(例えば、エマルジョン/許容可能な油脂中など)またはイオン交換樹脂、または難溶性誘導体(例えば、難溶性の塩として)で組成される。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性製剤との使用に好ましいデリバリー媒体として用いられる。持続放出性賦形剤は、それらの化学的性質に依存して、数時間から数日そして数ヶ月にわたって抗原を放出し得る。
【0090】
該ワクチン組成物は、さらに1以上の抗酸化物質も含む。典型的な還元剤としては、メルカプトプロピオニルグリシン、N-アセチルシステイン、β-メルカプトエチルアミン、グルタチオン、アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸塩、またはメタ重亜硫酸ナトリウム、または類似種が含まれる。加えて、抗酸化物質はまた、天然の抗酸化物質(ビタミンE、C、ルテイン、キサンチン、βカロテン)およびミネラル(例えば亜鉛およびセレニウムなど)も含む。
【0091】
ワクチン組成物はさらに、安定化剤、保存料、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤として機能する添加物質、および浸透圧バランスの変動のための単糖、多糖および塩を組込むことができる。該ワクチンは、さらにワクチンの効果を高める免疫刺激分子を含む。そのような分子は、免疫反応を促進し、炎症を誘導することができ、さらにリンフォカインまたはサイトカインであり得る。サイトカインの非限定的な例としては、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、マクロファージ炎症性因子などが挙げられる。
【0092】
サブユニットワクチンは、点滴または注射用に組成され、点滴または注射により投与することができる(静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、髄腔内、十二指腸内、腹腔内、など)。該ワクチンはまた、鼻腔内、経膣的、直腸内、経口、局所、口腔、粘膜経由(transmucosally)、または経皮投与が可能である。
【0093】
CMV感染の治療に有効な抗原の投与量は、当分野において確立された方法により、実験で決定される。ワクチンの有効量は、大きさ、身長、重量、年齢、性別、対象の全般的な健康状態、製剤のタイプ、投与の形態または方法、ウイルスが活性化潜在性か、患者が二次感染または他の関連疾患に罹っているかどうか、などのいくつかの条件に依存する。
【0094】
ワクチン投与計画もまた、上記の因子に基づく。ワクチン接種は胎児から成人期への成長を含む、対象の一生中のいつでも可能である。追加投与または追加免疫が、完全予防には必要とされる。十分な免疫防御がなされたかどうかを確認するために、ワクチン接種の後、患者においてセロコンバージョンおよび抗体力価が測定され得る。
【0095】
本発明はまた、CMV感染の治療用核酸ワクチンを特徴とする。一般的に、核酸ワクチンはまた、目的の抗原をコードするDNAまたはRNAを用いた遺伝子ワクチンとして見なされ、コードするポリペプチドに対する免疫反応を刺激する遺伝子の宿主発現に依存する(Leitner WW ら、(2000) ワクチン 18:765-77)。本発明の核酸ワクチンは、医薬的に許容される担体、および、免疫原性CMVタンパク質もしくはpUL128および/またはpUL130を含むCMVタンパク質複合体および場合によってはウイルスおよび/または細胞がコードされたタンパク質をコードする核酸分子、またはフラグメントを含み、それらは免疫反応を誘導する。該核酸分子はワクチンレシピエントの宿主細胞で発現し、該発現産物はpUL128および/またはpUL130を有するCMVタンパク質複合体に対する免疫反応を誘導する。該免疫反応はCMV感染を治癒する。上に詳述のとおり、様々なCMVをコードする核酸配列およびその成分は当分野おいて周知である。
【0096】
核酸ワクチンは、特異的な細胞または細胞種を標的として作製できる。例えば、樹状細胞、単球、マクロファージ、B細胞などといった抗原提示細胞を標的とすることが望ましい。
【0097】
抗体および使用方法:
本発明はまた、pUL128またはpUL130内のエピトープまたは、ウイルス粒子においてpUL128およびpUL130を含む複合体の成分を特異的に認識する抗体についても特徴とする。これらは、1以上の糖タンパク質gH、糖タンパク質gLまたはpUL131を含む。望ましい態様において、該抗体は、ウイルスが細胞表面の受容体に結合できなくすることにより細胞のCMV感染を阻害する。そのような抗体は、当分野で認識されている定義に従って、ときに中和抗体と呼ばれる。
【0098】
pUL128またはpUL130、あるいはビリオン中にこれらのタンパク質を含むタンパク質複合体の成分に特異的に結合する抗体が、本発明において用いられ得る。CD46に特異的に結合する抗体もまた、本発明において用いられ得る。リコンビナント抗体(例えば、一本鎖抗体およびファージ提示抗体など)、および抗体の抗原結合フラグメント(例えば、FabまたはFv)もまた用いることができるけれども、モノクローナル(単一の抗体または抗体の混合)および/またはポリクローナル抗体を用いることができ、どんな原料から作られたものでもよい。pUL128、pUL130、pUL128およびpUL130を有するCMVタンパク質複合体のいずれかの成分、およびCD46を認識する抗体を、本発明において用いることができる。一態様において、該抗体は、複合体に存在するためpUL128、pUL130、またはビリオン複合体の他の成分のエピトープを認識するが、溶液中またはビリオン複合体から離れたその他の場所ではpUL128、pUL130またはビリオン複合体の他の成分を認識しない。別の態様においては、該抗体は溶液中またはビリオン複合体から離れたその他の場所でpUL128、pUL130またはビリオン複合体の他の成分を認識する。該抗体がどのように作製されるかにかかわらず、本発明の望ましい態様は、中和抗体を利用、または対象とする。実際に、以下に説明する本発明の別の態様は、目的とする中和抗体の同定アッセイを特徴とする。抗体の作製、精製方法は、当分野において周知である。さらに、モノクローナル抗体は、最初にKohlerおよびMilsteinにより開発された技術(1975) Nature 256:495-497を含む、当分野において周知の非常に多くの技術により調製できる。
【0099】
本発明の方法での使用に好ましい抗体として、例えば、完全ヒト抗体、一本鎖抗体、ヒト抗体ホモログ、ヒト化抗体ホモログ、キメラ抗体、キメラ抗体ホモログ、および抗体重鎖または軽鎖またはその混合のモノマーまたはダイマーが挙げられる。本発明の抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(並びにその全てのサブタイプおよびイディオタイプを含む)いずれかのアイソタイプのインタクト免疫グロブリンであり得る。該免疫グロブリンの軽鎖はκまたはλである。該抗体は、抗原結合特異性を保持しているインタクト抗体(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、F(v)フラグメント、重鎖モノマーまたはダイマー、軽鎖モノマーまたはダイマー、1つの重鎖および1つの軽鎖から成るダイマーなど)の一部であり得る。リコンビナント抗体(例えば一本鎖抗体およびファージ提示抗体、ダイアボディー、並びに個々の抗体軽鎖、個々の抗体重鎖、抗体鎖と他の分子間のキメラ融合、重鎖モノマーまたはダイマー、軽鎖モノマーまたはダイマー、1つの重鎖および1つの軽鎖から成るダイマーなど)も用いられる。
【0100】
本発明の抗体は修飾され得る(例えば、共有結合が抗体のエピトープ結合を妨げないように、いくつかのタイプの分子が抗体に共有結合することにより)。好ましい誘導体の例としては、グリコシル化抗体およびフラグメント、アセチル化抗体およびフラグメント、PEG抗体およびフラグメント、リン酸化抗体およびフラグメント、およびアミド化抗体およびフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施例において、抗体またはフラグメントの機能的特性、特異的なグリコシル化構造を有する抗体の生成を仲介する酵母発現ヒト経路におけるそれらの調製により修飾される(Li, H. ら、2006, Nat. Biotech. 24:210-5)。本発明の抗体その誘導体はそれ自体が、既知の保護基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などであり得る。さらに、本発明の抗体およびその誘導体は1以上の非古典的(non-classical)アミノ酸を含む場合がある。
【0101】
本発明の抗体は、単一または多数のアミノ酸置換、欠失、添加、あるいは本発明の抗体生物学的特性(例えば、内在化、結合親和性または親和力、あるいは免疫エフェクター活性)を保持した置換を有する変異体であり得る。当業者は、単一または多数のアミノ酸置換、欠失、添加または置換を有する変異体を作製できる。これらの変異体としては、その他のもの(a)1以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸と置換している変異体、(b)1以上のアミノ酸がポリペプチドに付加またはポリペプチドから欠失している変異体、(c)1以上のアミノ酸が置換基を含む変異体、および(d)ポリペプチドが、別のペプチドまたはポリペプチド(例えば融合パートナー)、タンパク質タグまたはポリペプチドに有用な特性を与える他の化学的成分(例えば、抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン成分など)と融合している変異体、が含まれる。
【0102】
抗体は、検出可能成分および薬剤/毒素などの様々な成分に標識/複合され得る。薬剤/毒素成分として、例えば、バクテリア毒素、ウイスル毒素、有機化学物質、無機化学物質、放射性同位体、などが挙げられる。抗体を標識して生物学的検定に用いることにより(例えば、放射性同位体標識、蛍光標識など)、抗体の検出を容易にした。抗体はまた、毒素と複合されて免疫毒素を生成する(Kreitman RJ (1998). Adv. Drug Del. Rev., 31:53を参照)。本発明で用いられる検出成分としては、放射性同位体、蛍光染料 such as フルオレセイン、phyocoerythrin、Cy-3、Cy5、アロフィコシアニン、DAPI、テキサスレッド(Texas red)、ローダミン、オレゴングリーン(Oregon green)、ルシファーイエロー(lucifer yellow)など、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、Cerianthusオレンジ蛍光タンパク質、アルカリフォスファターゼ、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、アデノシン・デアミナーゼ、アミノグリコシド(aminoglycoside)ホスホトランスフェラーゼ(neo
r、G418
r)、ジヒドロ葉酸還元酵素、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、lacZ(β-ガラクトシダーゼをコード)、およびキサンチングアニンホスホリボシル トランスフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、胎盤型アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(secreted embryonic alkaline phosphatase)、あるいは蛍またはバクテリアルシフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。関連基質とともに酵素標識が用いられる。本発明の実施に関する他の標準方法と同様に、当業者は追加標識が可能であることを認識するであろう。いくつかの態様において、該抗体はビオチンに結合し、続いて検出成分標識を有するアビジンまたはストレプトアビジンに接触する。
【0103】
実施例2に記載のとおり、pUL130(3E3および3C5)およびpUL128(4B10)に特異的なマウスモノクローナル抗体(mAbs)、並びにウサギ抗pUL128ポリクローナル抗体(R551A)を、免疫原としてGST融合タンパク質を用いて作製した。ポリクローナル抗体R551A含有抗血清、並びにmAb 3E3および4B10産生ハイブリドーマ細胞株を、それぞれ、2007年6月5日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)の特許寄託機関(patent depository)に寄託し、以下のATCC番号を付与された: 抗血清R551Aには
ATCC寄託番号 [PTA-8474];
mAB 3E3産生用ハイブリドーマにはATCC寄託番号 [PTA-8472];および
mAb 4B10産生用ハイブリドーマにはATCC寄託番号 [PTA-8473]。これらの抗体またはそのフラグメントは、ここに記載した本発明の多くの態様の実施に用いられる。
【0104】
さらに、当業者の範囲内で、寄託した抗体の変異体および/または誘導体(例えば、競合的結合アッセイまたは遺伝子操作により)を容易に得られ、または設計でき、それはpUL128またはpUL130、あるいはpUL128またはpUL130を有する複合体に結合できる。競合阻害(competitive inhibition)による抗体特異性および親和性の測定方法が、Harlow, ら、抗体: A Laboratory Manual, 1988; supra; Colligan ら、eds., 1992, 1993, Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc および Wiley Interscience, N.Y.,およびMuller, 1983, Meth. Enzymol. 92:589-601 において見いだされる。
【0105】
例えば、寄託mAbsにより認識されるpUL128またはpUL130上のエピトープに競い合って結合する抗体、または寄託mAbsと同一のエピトープに結合する抗体が、本発明の使用に好ましい。加えて、寄託mAbsに存在するCDRと70%以上の同一性を有する1以上の相補性決定領域(CDR)を含み、pUL128またはpUL130を有するCMVビリオン複合体の中和結合パートナーもまた、本発明における使用が意図される。望ましくは、該中和結合パートナーは必要な同一度を有する2または3のCDRを有する。望ましくは、1以上のCDRにおける類似率は75%、80%、85%、90%、95%または1以上の寄託mAbsのCDRとさらに同一である。そのような中和結合パートナーの作製方法と同様に、抗体CDRの配列の決定方法は当業者には周知である。
【0106】
本発明の別の態様は、CMV感染体においてCMVがそのpUL128-pUL130-含有複合体を通じて宿主細胞に結合するのを阻止する抗体の導入により、CMV感染を軽減させる方法を特徴とする(例えば、pUL128-pUL130-含有複合体の標的であるCD46といった細胞受容体を通じて)。様々な態様において該抗体は、該タンパク質が複合体として、ウイルス粒子の表面に、またはキャリアタンパク質に、あるいは溶液中でフリーに結合するように、pUL130-pUL128-含有複合体の成分の1以上のエピトープに免疫学的に特異的である。一態様において、該抗体はpUL130の1以上のエピトープに免疫特異的であり、一方、別の態様においてはpUL128の1以上のエピトープに免疫特異的である。
【0107】
アッセイ:
本発明はまた、CMV pUL130-pUL128-含有表面複合体と細胞受容体の間の相互作用、または宿主細胞の表面におけるウイルス侵入媒体を阻害する化合物のスクリーニング方法も特徴とする。一態様において、該スクリーニング試験には、CMV粒子の試験化合物への接触、および試験化合物-処理CMV粒子のCD46またはCD46を有する細胞または膜フラグメントへの接触、および試験化合物がCMV粒子のCD46への結合を阻害するかどうかの確認が含まれる。本発明の方法により試される候補化合物には、精製された分子、実質的に精製された分子、1以上の成分の混合化合物である分子、あるいは他の物質との混合化合物が含まれる。試験化合物は、有機または無機化学物質または生体分子、および全てのフラグメント、アナログ、ホモログ、複合体、およびその誘導体であり得る。試験化合物は、天然または合成起源であり得、それらの天然資源から単離または精製でき、あるいはde novoで合成できる。試験化合物は、構造または組成に関して特定または未特定であり得る。該化合物は、未知の構造の単離生成物、いくつかの既知の生成物の混合、または1以上の化合物を有する未特定の組成物であり得る。未特定の組成物の例としては、細胞および組織抽出物、原核生物、真核生物、および古細菌細胞を培養する増殖培地(、発酵もろみ液、タンパク質発現ライブラリー、などが含まれる。本発明の一態様において、該試験化合物は、pUL128-pUL130-含有複合体の成分に対応するアミノ酸配列を含有する小さいペプチドである。該ペプチドは天然のアミノ酸、化学修飾アミノ酸および/またはアミノ酸の合成誘導体を含む。本発明の望ましい態様において、該ペプチドは8から20アミノ酸ユニット長である。
【0108】
一態様において、該スクリーニング試験には、pUL128および/またはpUL130あるいはpUL128および/またはpUL130のフラグメントを含有するCMVタンパク質またはタンパク質複合体を試験化合物に接触させること、および、該試験化合物-処理タンパク質またはタンパク質複合体を宿主細胞、pUL128および/またはpUL130複合体が結合する1以上の細胞受容体を有する細胞膜または膜フラクションに接触させること、そして該試験化合物がタンパク質またはタンパク質複合体の細胞または細胞膜への結合を阻害するかどうかを確認すること、が含まれる。別の態様において、該スクリーニング試験は、まず細胞または膜フラクションを試験化合物に接触させ、次いで、該細胞または膜フラクションをpUL128および/またはpUL130含有CMVタンパク質またはタンパク質複合体に接触させ、そして、該試験化合物が、UL128およびUL130CMV含有タンパク質またはタンパク質複合体の細胞または膜フラクションへの結合を阻害するかどうかを確認することを含む。
【0109】
いくつかの態様において、CD46といった受容体を有する該宿主細胞または膜フラクションは、固体支持体に固定されている。他の望ましい態様において、pUL128および/またはpUL30を含有する該CMVタンパク質またはタンパク質複合体は固体支持体に固定されている。好ましい固体支持体の例としては、ガラス、プラスチック、金属、ラテックス、ゴム、セラミック、ポリマー(例えば、ポリプロピレン、ジフッ化ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、ニトロセルロース、pvdf、ナイロン、アミラーゼ)などが挙げられるが、これらに限定はされない。固体支持体は、平坦、凹形、または凸形、球形、シリンダー形などであり、また、粒子、ビーズ、膜、ストランド、沈殿物、ゲル、シート、コンテナー、ウェル、毛細管、フィルム、プレート、スライドなどである。該固体支持体は、磁性体またはカラムである得る。
【0110】
スクリーニング試験において、宿主細胞および細胞膜フラクション、CMV、あるいはUL128および/またはUL130を含有するCMVタンパク質またはタンパク質複合体は、当分野において好ましい資源から得られ、当分野で周知の方法に従って調製される。例えば、ここに例示するBADrUL131株はgH-gL-pUL130-pUL128複合体を含有するビリオンを産生する。記載の通り、CD46は精製されるか、あるいは細胞膜または膜フラグメントに結合され得る。精製CD46、またはそのサブユニットは、de novoで合成できるか、あるいは天然でCD46を発現する哺乳類細胞から得ることができる。宿主細胞には、内皮細胞および上皮細胞を含まれる。pUL130-pUL128複合体の成分は、CMVビリオンから精製できる。精製ウイルスタンパク質または融合pUL130-128複合体はまた、リコンビナント発現系(例えば、細菌、酵母、昆虫細胞系など)から産生される。組み換えクローニングおよびタンパク質発現および精製技術は、当分野で確立されている。
【0111】
別の態様において、pUL130-128-含有複合体の宿主細胞、細胞膜または細胞受容体への結合に効果を示す、候補の抗ウイルス化合物はさらに、感染性を低下させる能力が見込める。これは、当分野で周知の様々な方法、例えば、実施例に記載のプラーク減少アッセイ、またはウイルスゲノムからコードされるde novo合成タンパク質の発現のモニタリングにより得られる。候補の抗ウイルス化合物はまた、膜融合を測定するために考案されたアッセイにおいて、望ましくはウイルス細胞および細胞-細胞感染拡散の両方のレベルで試験される。感染の誘発および細胞-細胞拡散は、細胞変性効果の観察、または免疫蛍光によるウイルスタンパク質またはウイルスゲノムに組み込んだマーカータンパク質の拡散の観察など、多くの方法で観察できる。
【0112】
本発明の別の態様は、ワクチン候補での免疫付与後に生じたCMV中和活性の同定と定量を行う細胞培養アッセイを特徴とする。この中和アッセイは、ワクチンの前臨床動物モデルへの潜在的有効性を観察するのに用いられ;ヒトCMVは非-ヒト動物モデルに感染せず、ヒトでの試験に先だった動物モデルにおけるヒトCMV免疫付与-負荷実験の実施は実現可能ではないことから、有用である。このアッセイはまた、臨床試験中のワクチン機能の重大な側面(すなわち、中和抗体の生成)の定量的尺度を与えるために用いることができる。本発明の本態様の重要な基盤は、機能的pUL128-pUL130-含有複合体を有するヒトCMVによってのみ感染する細胞種(例えば、上皮細胞)の使用である。正常で、未処理のヒト線維芽細胞、一般的にヒトCMV感染性の分析に用いられる細胞は、pUL128-pUL130-含有ビリオンは線維芽細胞にあまり感染しないので、このアッセイにおいては効果がないと思われる(実施例参照)。当分野における通常の技術により、適当な細胞へのヒトCMV感染性の中和に関するアッセイを実施できる。非限定的な例として、pUL128-pUL130-含有複合体を表面に有す特定量の伝染性ヒトCMVを、動物またはヒト血清または血清由来の抗体の希釈物と混合し、次いで該混合物を上皮細胞(例えばARPE-19細胞など)の単分子層に添加し、ウイルスの細胞への侵入を観察する。侵入は、ウイルス遺伝子産物またはウイルスゲノムに組み込まれたマーカー遺伝子のde novo発現などの多くの方法、あるいは実施例に記載のプラーク減少アッセイにより観察できる。未処理ウイルスにより感染した細胞の数と血清サンプルに暴露後にウイルスにより感染した細胞の数との比較により、サンプル中の抗体によってもたらされる感染性の低下または中和を推定することが可能である。
【0113】
本発明をより詳細に説明するために、以下の実施例を提供する。それらは本発明の例示目的であり、限定されない。
【実施例1】
【0114】
(実施例1)
上皮細胞指向性(Tropism)にはヒトサイトメガロウイルス UL131 ORFが必要である。
本実施例は、異なる器官及び組織由来の培養細胞集団(a panel of)を用いた、上皮細胞のヒトCMV感染の体系的調査(systematic investigation)について説明する。培養上皮細胞は、野生型 UL131-UL128 遺伝子座を有するヒトCMV株により、効率的に感染し得ることが見いだされた。該AD169 実験室株は、そのUL131 ORFにおける突然変異が修復される場合、上皮および内皮細胞の両方を効率的に感染させ得る。
【0115】
(材料と方法)
細胞とウイルス。10から15継代の初期(Primary)ヒト包皮線維芽細胞(HFFs)を、10%ウシ新生仔血清添加Dulbecco’s minimal essential medium(DMEM)中で維持した。2つの型の内皮細胞、不死化ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)および肺大血管内皮細胞(LMVECs)、は私的な供給源から得たが、他からも利用可能または入手可能である。該内皮細胞を、EGM-2 培地(Combrex、East Rutherford、NJ)で培養した。ヒーラ細胞、初期ヒトMRC-5胚性肺線維芽細胞およびARPE-19 網膜色素上皮細胞をATCCから購入した。MRC-5細胞およびARPE-19細胞の両方を24から30継代で用いた。該MRC-5細胞を10%ウシ胎仔血清(fetal bovine medium)添加DMEM培地中で培養し、ARPE-19細胞を10%ウシ胎仔血清含有DMEM/Ham’s F12 (1:1)培地中で増殖させた。SW480、HCT116、H1299、MCF-7、SK-N-SH、SK-N-AS、IMR-32細胞を10%ウシ胎仔血清添加DMEM中で増殖させた。
【0116】
GFPマーカー(BADwt)を有するヒトCMVのAD169株の誘導体(Yu, D ら、2002, J Virol 76: 2316-2328)を親AD169ウイルスとして用いた。本変異体において、該ウイルスのUL21.5領域を、SV40プロモーターの制御下で、GFPコード領域含有マーカーカセット、続いて内部リボソーム導入部位(internal ribosome entry site)およびピューロマイシン耐性遺伝子で置換した(Wang, D ら、2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 16642-166427)。該AD169 UL131コード配列を修復するために、線状組み換え(linear recombination) (Borst, EMS ら、2001, J. Virol. 75:1450-1458)により、BADwtゲノムを有する(carrying)感染性BACクローン中で、塩基対176685から176794のヒトCMV配列(Chee, MS ら、1990, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 154: 125-169に記載の配列番号)をカナマイシン耐性遺伝子およびLacZ遺伝子含有マーカーカセットに置き換えた。次いで、このクローンをE.coli GS500に形質転換し、UL131 ORFを有しヒトCMV臨床TR株に隣接する配列のpGS284(Smith, GA and LW Enquist, 1999, J. Virol. 73: 6405-6414)誘導体と対立遺伝子交換を行った(Smith, IL ら、1998, Arch. Ophthalmol. 116: 178-185)。BACクローンとシャトルプラスミド(shuttle plasmid)間の組み換え部位を決定するため、該UL131-UL128遺伝子座をシークエンスした。異なるN末端タンパク質配列を有する2つの修復UL131 BACクローンを対立遺伝子交換により作製した(
図1)。修復BACクローンから回収した該ウイルスをBADrUL131-Y4およびBADrUL131-C4とした。
【0117】
野生型ウイルス株を、ヒトCMV実験室株および臨床分離株のBACクローンから調製した: Towne (BTNwt) (Marchini, A ら、2001, J. Virol. 75: 1870-1878)、Toledo (BLTwt) (Murphy, E ら、2003, supra)、VR1814-FIX (BFXwt) (Hahn G ら、2004, supra)およびTR (BTRwt) ((Murphy, E ら、2003, supra)。BACクローニングの結果として、BTNwtはUS1-US12を欠き、BLTwtはUS2-US11を欠き、BFXwtはIRS1-US6を欠き、BTRwtはUS2-US5を欠く((Murphy, E ら、2003, supra)。ウイルスを、ウイルスのUL82-コードpp71タンパク質を発現するプラスミドと一緒に、BAC DNAのHFFsへのエレクトロポレーションにより再構築し、ヒトCMV DNA感染性を高める。ウイルス株をHFF細胞において調製し、各ウイルスの第一継代を細胞指向性研究に用いた。
【0118】
ウイルスの感染および複製に関するアッセイ。感染効率を確認するため、上皮細胞、内皮細胞または線維芽細胞を12-ウェルプレートに移し入れ、一晩培養して半融合培養物を得た(subconfluent culture)。単分子層を無血清RPMI-1640で一回洗浄し、多重度 1 pfu/cellで、同じ培地で希釈したウイルスに感染させた。吸着の間、まず、該プレートを25℃で30分間、1,000 x gで遠心処理し、次いで、37℃で1時間インキュベートした。該接種物を除去し、細胞種に応じた血清を有する新鮮な培地を加えた。感染後48時間で、培養物を2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton-X100で透過性にし、GFP発現およびモノクローナル抗体 1B10 およびAlexa 546-結合二次抗体を用いた免疫蛍光によるIE1により感染細胞を同定した。細胞の核を、4’, 6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。総細胞数はDAPI-染色核の数により決定され、感染効率は総細胞数におけるGFPおよびIE1発現細胞の割合として算出された。
【0119】
ウイルス成長機構の解析のため、ヒーラ細胞を除いて、細胞を多重度 0.01 または 1 pfu/cell でBADwt (実験室親株)またはBADrUL131ウイルス(修復UL131 ORF)に感染させ、ヒーラ細胞培養物は低多重度感染の解析に必要な長期間の維持ができないため、ヒーラ細胞は 1 pfu/cellの多重度感染でのみ感染させた。感染後の様々な時間において、感染培養物から培地を採取することにより無細胞ウイルスを回収し、細胞結合ウイルスを、培地中の感染細胞の凍結融解3サイクルにより3回で回収した。ウイルス力価を、MRC-5 細胞におけるTCID50アッセイにより確認した。親AD169と対照的に、該UL131-修復ウイルスは合胞体を誘導し、プラーク形成能を低下させた。それ故に、突然変異体およびそれらの野生型親(wild-type parent)の増殖を比較するため、TCID50アッセイにおいては細胞変性効果よりもむしろGFP遺伝子発現を利用して感染細胞を同定した。GFPマーカーを有するウイルスの使用により、アッセイの感度および精度を顕著に増大させた。
【0120】
(結果)
修復UL131 ORFを有するAD169変異体の構築および特性解析。共通のpolyA付加部位を有する2つの挿入転写産物(spliced transcript)がUL131-UL128遺伝子座により生じることが示されたが(Akter PC ら、2003, supra; Hahn G ら、2004, supra)、それらの5’末端は配置されなかった。この遺伝子座による転写産物をさらに特徴づけるため、5’-RACE解析を用いて2つの開始部位(
図1A)をマップし、RNaseプロテクションアッセイを用いて結果を裏付けた(データ未提示)。該5’末端は、配列位置176835(UL131のちょうど上流)、および176207(UL130内)(Chee, MS ら、1990, supraに従って番号付与)に位置する。UL131 コード領域の上流に5’末端を有するmRNAは全3つのORFによりコードされるポリペプチドをコードする能力を有する一方、5’末端がUL130内にマップされる該RNAはUL130およびUL128の一部をコードする能力を有する。この5’マッピングは、AD169のUL131 ORFに存在する該1塩基対挿入(
図1A)が、実際には、この遺伝子座にマップされたmRNA内に存在することを裏付ける。
【0121】
AD169中のフレームシフトUL131 ORFは、実験室株(BADrUL131)の誘導体の構築により修復され、その変異UL131 ORFは、ヒトCMV TR臨床株(
図1A)由来の野生型ORFで置換されていた。BACクローンとシャトルプラスミドの間の2つの異なる部位での組み換え現象により、修復UL131 ORFを有する2つの異なるウイルスが生成された。新しく生成されたウイルスからのUL131 ORFsの配列を、Towne、Toledo、FIXおよびTR株からのUL131 ORFsと比較した(
図1B)。ポジション2および4のアミノ酸を除けば、異なる臨床ヒトCMV株からのUL131 ORFsの配列は同一である。BADrUL131-Y4のUL131配列は全てがTR株から由来する一方、BADrUL131-C4配列はFIXおよびToledo株のものと同一である(
図1B)。
【0122】
臨床分離株FIXのUL131 欠失変異体、VR1814のBAC-クローン誘導体(Grazia Revello, M ら、2001, J. Gen. Virol. 82:.1429-1438)は、もはや内皮細胞中で複製できないことが以前に示された(Hahn ら、2004, supra)。AD169においてUL131遺伝子の修復により内皮細胞指向性が回復されたことを確認するため、2つの内皮細胞系統、HUVECsおよびLMVECsを多重度 1 pfu/cellで感染させ、48時間後に、該培養物をウイルスによるGFPマーカー発現について解析した。ほんのわずかな(<1%)GFP-発現HUVECsがBADwt感染培養物において認められた;対照的に、GFPは両方のBADrUL131ウイルスにより感染させられたほとんど全てのHUVECsにおいて検出され、このことは修復AD169変異体が内皮細胞を感染させる能力を再獲得したことを示す。LMVECsは、より効率的にBADwt(12%)により感染されるが、該感染率はBADrUL131-Y4 (96%)およびBADrUL131-C4 (98%)において顕著に高かった。UL131-欠損親(deficient parent)と対照的に、該修復BADrUL131ウイルスは、線維芽細胞および内皮細胞の両方の感染培養物において合胞体を誘導した。
【0123】
修復ウイルスの増殖特性を評価するために、MRC-5 線維芽細胞およびHUVECsをBADwtまたはBADrUL131変異体に感染させ、一段階増殖または複数段階増殖における、無細胞および細胞結合ウイルスの産生解析を行った。線維芽細胞において、該修復ウイルスの増殖はそれらの親AD169(AD169 parent)よりも悪く、無細胞および細胞結合ウイルスの両方とも産生量が10〜100倍減少した。細胞融合により線維芽細胞におけるウイルス複製効率が悪化することは明らかではないけれども、産生量の減少は、修復ウイルスによりもたらされた大規模な細胞間融合に関連する。線維芽細胞と対照的に、内皮細胞において、該修復ウイルスはそれらの実験室株親よりも効率的に増殖し、およそ20倍の無細胞ウイルスおよび300倍の細胞結合ウイルスを産生した。
【0124】
まとめると、これらのデータは、AD169における変異UL131遺伝子の修復が線維芽細胞においてウイルス複製を低下させ、内皮細胞においては増殖を促進することを示す。
【0125】
UL128-
131 遺伝子座-
依存 上皮細胞感染。上皮細胞におけるヒトCMV複製におけるUL131の重要性を、上皮細胞系統の一団のBADwtおよびBADrUL131-Y4に対する感受性を調べることにより評価した。感染に対する感受性は、該2つのウイルスにより伝搬されるUL123-コード IE1タンパク質の発現およびGFPマーカー遺伝子の発現を観察することにより解析した。上皮細胞株を様々な組織から作製した: 網膜(ARPE-19)、頸部(HeLa)、結腸(SW480およびHCT116)、肺(H1299)および胸部(MCF-7)。HeLaおよびMCF-7細胞はBADrUL131により効率的に感染し、また、親AD169、BADwtにおける感染発生率は非常に低いことから、該感染はUL131に大きく依存することが見いだされた。ヒーラ細胞培養物ではなくMCF-7上皮細胞において、細胞間融合が、BADrUL131-Y4での感染後に認められた。このことにより、ヒトCMV UL123-コード IE1タンパク質がより多くの割合の細胞において検出されたことから、GFP発現は感染した細胞の割合の過小評価を引き起こし得ることも示された。おそらくこれは、ヒトCMV前初期プロモーター(immediate-early promoter)に対する、これらのウイルスにおけるGFPの発現を制御するSV40初期プロモーター(early promoter)の活性における差違を反映している。
【0126】
上皮細胞系統の相対的感受性を定量するために、親ウイルスまたは修復ウイルスによる同一の入力多重度での感染後の、異なる上皮細胞集団におけるウイルスゲノムからのGFPを発現する細胞の割合から計算した。修復UL131 ORFは、ARPE-19、HeLa、SW480、HCT116およびMCF-7上皮細胞の感染に必須であった。該修復ORFは、H1299細胞における感染効率を劇的に高めたけれども、必須ではなかった。線維芽細胞および内皮細胞を対照とした。MRC-5またはHFF線維芽細胞において、BADrUL131-Y4による感染への感受性に対するBADwtによる感染への感受性の差違は認められなかったけれども、HUVECおよびLMVEC内皮細胞におけるGFP発現を劇的に増大させた。最後に、いくつかの神経細胞由来細胞系統を検査した。 該SK-N-AS、SK-N-SHおよびIMR-32神経芽腫細胞系統は感染に対して可変的な感受性を示したが、GFP発現はUL131遺伝子に依存しなかった。
【0127】
BADrUL131修復ウイルスによる感染性産物の産生を、ARPE-19細胞で調べた。該上皮細胞を多重度 0.01 または 1 pfu/cellで感染させ、細胞結合ウイルスおよび無細胞ウイルスの産生を、線維芽細胞におけるTCID50アッセイにより観察した。上皮細胞においてBADrUL131-Y4およびBADrUL131-C4は、線維芽細胞におけるよりも≧10倍量多く、また内皮細胞におけるよりも〜100倍量多く産生した。さらに、BADrUL131は、線維芽細胞および内皮細胞におけるように、上皮細胞培養物において大規模な細胞間融合を誘導した。
【0128】
2つのBADrUL131修復ウイルスの複製もまた、ヒーラ細胞、上皮腫瘍細胞株において観察した。ヒーラ細胞の感染は、APRE-19細胞からの産生量と比較して〜1000倍減少した量の無細胞ウイルスを生じた。特筆すべきことに、98%のヒーラ細胞および77%のARPE-19細胞が、線維芽細胞でのTCID50アッセイにより決定された多重度 1 pfu/cellでのBADrUL131-Y4による感染後に、GFPマーカーを発現した。ヒーラ細胞で発現するマーカーはより高い効率であるにもかかわらず、感染性産物の量はARPE-19細胞における方が多かった。明らかに、ARPE-19細胞における複製の効率に比べて、ヒーラ細胞においてはヒトCMVの効率的な複製の阻害が存在し、それはゲノムが核に到達してマーカー遺伝子を発現した後に生じる。ARPE-19細胞と対照的にヒーラ細胞は、早ければ感染後24時間で特徴的な細胞円形化(cell rounding)を伴う顕著な細胞変性効果が認められるけれども、BADrUL131ウイルスでの感染後は融合できない。このことは、該ウイルスが複製周期の後期段階まで効率的に進めないことを反映しているのかもしれない。これにより、後期の間中発現しているUL131 ORFの発現が阻害されるだろう。
【0129】
UL131における変異は、上皮細胞における効率的な複製に対するAD169の無能性(inability)に関与する。ヒトCMV上皮細胞指向性におけるUL131-128遺伝子座の役割をさらに明らかにするために、4つのさらなるヒトCMV株、Towne、Toledo、FIXおよびTRによる感染に関する解析を行った。UL130はTowneにおいて変異し、UL128はToledoにおいて破壊される一方、FIXおよびTRは野生型UL128、130および131 ORFsを含む。全てのウイルス株はMRC-5 線維芽細胞に感染し、それらのIE1タンパク質を同等によく発現するが、TRおよびFIXだけがHUVEC内皮細胞またはARPE-19およびHeLa上皮細胞を効率的に感染させる。この結果は、TowneおよびToledo株は上皮細胞に効率的に侵入せず、またそれらのIE1遺伝子を効率的に発現しないことを示し、そして、その結果は、内皮細胞における複製について示されているように(Hahn ら、2004, supra)、該欠損がUL130およびUL128 ORFsにおける変異により生じ得る可能性を高める。
【0130】
最終的に、感染性産物の収量は一連のヒトCMV株を有するARPE-19上皮細胞の感染後に決定された。該修復AD169株、BADrUL131-Y4は上皮細胞において最大の収量で産生した(1 x 107 pfu/ml)。それぞれのUL131-128遺伝子座に欠損を有するAD169、TowneおよびToledoは上皮細胞におけるそれらのIE1遺伝子の効率的な発現能力の無さと一致して、感染性産物(〜1.5 x 101 pfu/ml)をほとんど生じなかった。野生型UL131-128遺伝子座を有するFIXおよびTRは、中間の収量をもたらした(それぞれ、7 x 103および3 x 103 pfu/ml)。
【実施例2】
【0131】
(実施例2)
ヒトサイトメガロウイルスビリオンタンパク質複合体は上皮および内皮細胞指向性に必要である。
【0132】
本実施例は、pUL128およびpUL130がビリオンに組み込まれたgH/gLと複合体を形成することを証明する根拠を示す。該複合体は内皮および上皮細胞の感染に必要であるが、線維芽細胞の感染には必要でない。
【0133】
(材料と方法)
細胞培養。 ヒトMRC-5 胚性肺線維芽細胞(American Type Culture Collection)を10%FBSを添加したDMEMで培養し、ARPE-19網膜色素上皮細胞(ATCC)を10% FBSを添加したDMEM/Ham’s F-12 培地(1:1)で培養した。各細胞種を24〜30継代で用いた。
【0134】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を臍帯静脈のコラゲナーゼ消化により得て、ゼラチンコートプレートにおいて、10%FBS、内皮細胞増殖サプリメント(50 μg/ml, Biomedical Technologies, Stroughton, MA)およびヘパリン(75 μg/ml)を添加したRPMI 1640中で増殖させ、継代3〜6で用いた。ウイルス吸着の間、およびウイルス感染後、HUVECを内皮増殖サプリメントまたはヘパリン無添加で維持した。ヒト包皮線維芽細胞を、10%ウシ新生仔血清を添加したDMEMで増殖させ、継代10〜15で用いた。
【0135】
ウイルス調製。ヒトCMVのAD169株は、UL131遺伝子にフレームシフト突然変異を有す。BADwtをAD169の細菌人工染色体(BAC)クローンから作製した。BADrUL131は、ORFがTRヒトCMV臨床分離株のものと同一であるようにUL131突然変異が修復されたBADwtの誘導体である。BADdlUL131-128はBADwtの誘導体であり、線形組み換え(linear recombination)を用いて、UL131-UL128遺伝子座(塩基対174865〜176806)をカナマイシン耐性遺伝子およびLacZ遺伝子を有するマーカーカセットで置き換えることにより構築した。ヒトCMVのVR1814臨床分離株のBAC-クローニング誘導体はFIXと呼ばれ、そのクローンから再構成されたウイルスをBFXwtと呼んだ。ウイルスを、線維芽細胞へのBAC DNAsのエレクトロポレーションにより調製し、ウイルスの第一継代を本検討に用いた。ウイルス保存用のソルビトール緩衝液(cushion)を用いた遠心分離により、ビリオンを部分精製した。
【0136】
抗体。 抗-gB 7-17、抗gM IMP91-3/1、抗gH 14-4b、およびAP86 モノクローナル抗体は、W. Britt (University of Alabama, Birmingham)より寄贈された。ウサギポリクローナル抗gO抗体は、T. Compton (University of Wisconsin, Madison)より寄贈された。pUL130 (3E3 and 3C5)およびpUL128 (4B10)に特異的なマウスモノクローナル抗体、ならびにウサギ抗pUL128ポリクローナル抗体 (R551A)は、免疫原としてGST融合タンパク質を用いて作製した。
【0137】
タンパク質解析。 パルス追跡分析(pulse-chase analysis)のため、MRC-5細胞を3プラーク形成単位/細胞の多重度での感染後72時間目から1時間、メチオニンおよびシステイン欠損培地で維持した。200μCi/ml (1 Ci = 37 GBq)の35S Express Protein Labeling Mix (PerkinElmer)を1時間添加し、放射能を除去し、次いで細胞を、過剰な量の非標識メチオニンおよびシステイン、および10%FBSを添加した培地で、20または120分間、維持した。細胞を採集し、protease inhibitor mixture (Roche Applied Science, Indianapolis)を含むRIPAバッファー(50 mM Tris、pH 7.4/150 mM NaCl 11 mM EDTA/1% Nonidet P-40/0.1% SDS/0.5% デオキシコール酸塩)に溶解した。
【0138】
免疫沈降の前に、溶解物を免疫前マウス血清または免疫前ウサギ血清とともに4℃で終夜インキュベートし、次いで、protein A Sepharose (Amersham Pharmacia Biosciences)またはプロテインG-アガロース(Roche Applied Science)を用いて前処理(precleared)を行い、ビーズと非特異的に相互作用するタンパク質を除去した。抗体を、前処理した溶解物に添加して4℃で終夜インキュベートし、次いで、protein A Sepharoseまたはprotein G-agaroseを4℃で4時間添加した。免疫複合体を遠心分離により回収してRIPAバッファーで洗浄し、還元サンプルバッファー(reducing sample buffer)(50 mM Tris、pH 6.8/10% glycerol/2% SDS/1% 2-メルカプトエタノール)に懸濁して5分間ボイルし、SDS-含有ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によりタンパク質を分離した。該gM-gN複合体を、尿素-含有ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動により分析した。
【0139】
ビリオンタンパク質の分析のため、グリセロール-酒石酸塩グラジエントを介した遠心分離により、非感染粒子からビリオンを分離した。該精製ビリオンを還元または非還元サンプルバッファーでボイルし、タンパク質をウエスタンブロット法により分析した。
【0140】
中和試験(Neutralization Assay)。 抗-pUL130 モノクローナル抗体をプロテインG-アガロースのアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。ウサギ抗pUL128 ポリクローナル抗体を精製するために、抗血清を、まずGST結合セファロースに通し、免疫原としてpUL128-GST 融合タンパク質を使用することにより生じる抗GST抗体を除去した。この工程に続き、プロテインAセファロースでアフィニティー精製を行った。BADrUL131の中和は、プラーク減少アッセイにより定量した。精製抗体を補体不活化FBSを5%添加したDMEMで希釈し、等量のウイルスと混合した。サンプルを室温で1時間インキュベートした。インキュベートの後、300μlのアリコート(100 プラーク形成単位)により細胞単層を感染させた。吸着の後、該イオンカラムを除去し、細胞を1%アガロース添加培地に付加した。2〜3週間後に、GFP発現細胞の数を計測した。FIXウイルスの中和を、マイクロ中和試験を用いて定量した。
【0141】
(結果)
pUL128およびpUL130はgHとの複合体中に存在する。tUL131-128 遺伝子座によりコードされるタンパク質が、1以上のウイルスコード融合糖タンパク質と協働して機能することを証明するため、UL131-UL128-コードタンパク質についてビリオン糖タンパク質複合体を調査した。線維芽細胞を3つのウイルスに感染させた:(1)BADwt、非機能的UL131 ORFを有するヒトCMVのAD169株の分離株;(2)BADdIUL131-128、UL131-UL128遺伝子座を欠くBADwt誘導体;および(3)BADrUL131、修復UL131 ORFを有するBADwt誘導体。感染後72時間で、細胞を35S-標識メチオニンおよびシステインで1時間処理し、該標識を20分または120分間追跡し、次いでウイルス糖タンパク質複合体を免疫沈降により検査した(
図2)。
【0142】
;
gBが標識後20分で合成およびグリコシル化されて160-kDaのタンパク質を生成することを認め、また、120分で部分的に切断されて成熟gp55-gp116 gB複合体(
図2A)を生成した。該gM分子が、見かけの分子量 38 kDaのタンパク質として合成され、合成後120分に、移動度が38-から46-kDaの拡散バンドとなるように改変した(
図2B)。以前に、gMと共沈した〜60kDaタンパク質がgNとして同定された(Mach M ら、(2000) J. Virol. 74:11881-92)。AD169変異体間で、gBまたはgM-gNにおいて差がないことが観察された。
【0143】
対照的にgH免疫沈降物は、異なるウイルスでの感染後、別個の複合体を示した(
図2C)。gLおよびgOを、3つのウイルスで感染した線維芽細胞からのgHと共沈した。さらに、16-kDaタンパク質がBADwt-およびBADrUL131-感染細胞の抽出物から共沈したが、BADdIUL131-128による感染細胞からは共沈しなかった。また、33-kDaタンパク質(20分)、および33-と35-kDaの二重線 (120分)が、BADrUL131 gH共沈物で検出された。見かけの大きさに基づいて、該16kDaおよび33から35kDaタンパク質が、pUL128およびpUL130であると推測された。これを確認するため、逐次免疫沈降アッセイを行った。免疫沈降アッセイにおいて、BADrUL131感染溶解物からタンパク質を共沈させるgHが、抗pUL130または抗pUL128抗体と共沈した(
図2D、中央および右のパネル)。該33から35kDaタンパク質および16kDaタンパク質がこられの抗体と特異的に共沈し、pUL130およびpUL128としての固有性が確認された。gHに対する抗体もまた、BADrUL131溶解物からのgOを共沈した(
図2D、パネル左)。
【0144】
pUL128-
pUL130およびgOは、gHと別個の複合体を形成する。該gH相互作用をさらに特徴づけるため、gO-特異抗体を用いて免疫共沈降実験を行った(
図3A)。この抗体は、gH抗体と同様に、gH-gL-gO複合体をとらえ、該3つの成分が免疫沈降物に現れていた。pUL128およびpUL130のいずれも、検出可能なレベルでgO抗体と共沈せず、これによりgOおよびpUL128-pUL130がgHと別個の複合体を形成することが示唆された。このことに一致して、該pUL128-特異抗体はBADrUL131溶解物からのgH、gL、およびpUL130を沈殿させるが、gOは検出されなかった(
図3B)。さらに、抗pUL130抗体はBADrUL131-感染細胞溶解物からのgH、gL、およびpUL128を沈殿させるが、gOは沈殿させない(
図3C)。gOは検出されなかったけれども、抗pUL128 免疫沈降物におけるgHおよびpUL130の同一物がウエスタンブロットにより確認された(
図3D)。これらのデータは、pUL128-pUL130およびgOがgHと別個の複合体を形成することを示唆する。
【0145】
pUL128およびpUL130がビリオンに存在する。該pUL128およびpUL130複合体がビリオンに組み込まれることができるか調べるため、精製BADwtおよびBADrUL131ビリオンを、gH、pUL128およびpUL130について、ウエスタンブロットにより解析した(
図4A)。gHは両方のビリオン調製品において存在が認められた。BADwt-感染細胞溶解物におけるgHとのpUL130相互作用不全に一致して、BADwtビリオンではなくBADrUL131はpUL130を有することが認められた(
図2C)。とりわけ、pUL128はまた、BADwt-感染細胞の抽出物内でpUL130およびpUL13とは関係なくgHと相互作用したにもかかわらず、BADrUL131ビリオンにのみ存在した(
図2C)。これらのデータは、完全なgH-gL-pUL130-pUL128複合体のみがビリオンに組み込まれることを示唆する。
【0146】
ビリオン中でpUL128がgHと結合することを確かめるために、BADrUL131 ビリオンタンパク質をpUL128-特異抗体で免疫沈降させ、抗gH抗体または抗-pUL130抗体でのウエスタンブロットにより解析した(
図4B)。gHおよびpUL130 タンパク質の両方とも抗pUL128抗体にとらえられたことから、該3つのタンパク質は、細胞抽出物中と同様に、ビリオン中で複合していることが確認された。
【0147】
gH複合体の特性解析。ジスルフィド結合はgHをgOおよびgLに結合する。この所見に基づいて、同じ方法によりgHがpUL128およびpUL130と相互作用することができるかを検討した。BADrUL131ビリオンタンパク質を還元または非還元ゲルにおける電気泳動により分離し、膜に転写し、抗pUL130抗体または抗pUL128抗体でプローブした。
図5A、左のパネルに示す通り、該還元剤はpUL130の移動度を変化させなかったことから、ジスルフィド結合を介して他のタンパク質に結合していないことが示唆される。対照的に、2-メルカプトエタノール処理をしない場合、抗pUL128抗体は135-kDaタンパク質を認識し、還元剤での処理によりモノマー pUL128を放出した(
図5A、右のパネル)。gHおよびgLは両方とも感染細胞の抽出物からpUL128特異抗体により沈殿されることから、該複合体は恐らくpUL128に加えてgHおよびgLを含む(
図3B)。135-kDaというサイズは、gH(86 kDa)、gL(31 kDa)、およびpUL128(16 kDa)をそれぞれ1分子含むという説明と一致する。
【0148】
pUL128およびgOはgHと、別個のジスルフィド結合した複合体を形成することから、BADwtに存在する該gH-gL-gOおよびgH-gL-pUL128複合体を、BADrUL131ビリオンに存在するそれと比較した。還元状態下において、(
図5B、左のパネル、β2-メルカプトエタノール)、モノマー、86-kDa gHのみが観察された。しかしながら、還元剤未処理の場合、より遅い移動度のバンドが現れ(
図5B、左のパネル、β2-メルカプトエタノール)、それは恐らくジスルフィド結合した複合体を示す。BADwtにおいて、主要なgH含有複合体は300および220 kDaまで移動した。該220-kDaの成分は部分的改変gH-gL-gO複合体であり、300kDaの成分は成熟gH-gL-gO(gCIII)複合体に相当する(Huber MT ら、(1998) J. Virol. 72:8191-7; Huber MT ら、(1999) J. Virol. 73:3886-92;および、Huber MT ら、(1997) J. Virol. 71:5391-8)。さらなるgH-含有複合体が、BADwtビリオンではなく、BADrUL131に存在する。該複合体は、pUL128に対する抗体により認識される(
図5A)複合体と同じ移動度である見かけの分子量135 kDaに移動したことから、gH-gL-pUL128複合体であるかもしれないことが示唆される。還元剤未処理の場合、モノマーgHがビリオン中で認められたことから、一部が他の糖タンパク質に共有結合していないことが示唆される。
【0149】
さらなるウエスタンブロットを、同じ一連のビリオンサンプルにおいて実施した。gO-特異抗体は、300-および220-kDa複合体は認識するが、135-kDa複合体を認識しないことが認められた(
図5B、中央のパネル)。対照的に、抗pUL128抗体は135-kDa成分に反応するが、それより大きい複合体には反応しなかった(
図5B、右のパネル)。これらのデータは、2つのgH複合体がBADrUL131ビリオンにあることが示唆する: gH-gL-pUL128-pUL130およびgH-gL-gO。BADwtビリオンは1つのgH複合体、gH-gL-gOのみを含む。
【0150】
pUL128およびpUL130抗体は、上皮および内皮細胞の感染を阻害する。BADrUL131 ビリオンはgHgL-pUL128-pUL130複合体を含み、内皮細胞、上皮細胞、および線維芽細胞を効率よく感染させることができる(Wang D ら、(2005) J. Virol. 79:10330-8)。BADwtは複合体を欠き、線維芽細胞に限られている。同様に、中和アッセイを行って、この複合体が上皮または内皮細胞の感染に必要かどうか確認した。
【0151】
アフィニティー精製抗体を用い、相補体はアッセイに添加しなかった。
図6Aに示すとおり、pUL130-特異的3E3 モノクローナル抗体は、ARPE-19またはHUVEC細胞のBADrUL131感染を抑制するが、MRC-5細胞の感染は抑制しなかった。該3C5抗体は、異なるpUL130エピトープを認識するけれども、感染は阻害しなかった。pUL128に対するウサギポリクローナル抗体もまた、BADrUL131のARPE-19およびHUVEC細胞への感染能力を中和するが、MRC-5細胞への感染能力は中和しないことが認められた。抑制のパターンは内皮および上皮細胞と同一であったことから、BADrUL131は同じメカニズムを利用して2つの細胞種を感染させることが示唆される。pUL128に対する抗体もまた、ヒトCMVのB FXwt 臨床株によるARPE-19およびHUVEC細胞の感染を阻害し、この場合もやはりMRC-5細胞の感染をほとんど抑制しなかった(
図6B)。
【実施例3】
【0152】
(実施例3)
抗CD46抗体を用いた上皮細胞のヒトCMV感染の阻害
【0153】
抗CD46抗体を商業的供給源から購入した(J4.48抗体、Chemicon International)。BADrUL131は、機能的pUL128-pUL130-含有複合体を有し、線維芽細胞および上皮細胞の両方を感染させることができるヒトCMVウイルスである。規定のBADrUL131をCD46に対する抗体の希釈物を混合し、該混合物を用いてARPE-19細胞またはヒト包皮線維芽細胞(HFF)を感染させた。感染後24時間で、細胞を固定し、ウイルスコードタンパク質、IE1の発現を免疫蛍光により解析した。これは、感染の成功度の指標として行った。ポジティブ細胞の割合を測定し、感染率の指標として用いた。
【0154】
図7に示すとおり、APRE-19上皮細胞のヒトCMV感染性のおよそ77%の抑制が、抗CD46抗体の最高検討濃度で観察され、この量の抗体は、コントロールHFF細胞に対する該ウイルスの感染能力に効果を有しなかった。このことは、ウイルスはCD46を利用して上皮細胞には侵入するが、線維芽細胞には侵入しないことを示唆する。受容体相互作用への結合および阻害により感染を抑制する抗体で予期されるように、ARPE-19細胞の感染抑制は用量依存的である。
【実施例4】
【0155】
(実施例4)
ヒトCMV疾病の治療に有用なヒトCMV-
特異抗体の混合物の解析
【0156】
本実施例を説明する情報はさらに、ヒトCMV感染を予防または治療するヒトCMV-特異的ワクチンおよび薬剤(抗体医薬を含む)の開発における、ヒトCMV UL128およびUL130タンパク質(pUL128およびpUL130)、およびウイルス粒子中でそれらと結合する複合体の有用性を支持する。該実験には、ヒトCMV-特異抗体含有ヒト免疫グロブリンである市販の抗体調製品(CYTOGAM(登録商標))を用いた。それは同種移植関連CMV疾病の予防のための静脈内療法として用いられる。妊娠中におけるかかる抗体調製品の投与が安全で、先天性感染(およそ1/2000新生児が中等度から重度のCMV感染の影響に苦しむ)からの防御が示唆される証拠も文献にある(Nigro, G ら、2005, N. Engl. J. Med. 353:1350-62)。
【0157】
実験の論理的根拠は以下である:pUL128および/またはpUL130含有ビリオン糖タンパク質複合体がヒトCMVの発症と拡散に関与する細胞の感染に重要である場合、ヒト免疫グロブリン調製品を用いてヒトCMV疾病を治療する、すなわちCYTOGAM(登録商標)は、より多くのpUL128/pUL130複合体の成分の1つに対する抗体を含み、これらの抗体は培養上皮細胞のヒトCMV感染を中和するであろう。
【0158】
初めに、ウエスタンブロット解析を実施して、CYTOGAM(登録商標)におけるpUL128、pUL130およびpUL131に対して特異的な抗体の存在を調べた(
図8)。部分精製したグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を解析に用いた(
図8、最上部パネル)。一方で、CYTOGAM(登録商標)の抗体は、実験に用いた感度ではGST融合パートナーを認識しなかったが、該抗体はpUL130含有タンパク質を非常に強く認識し、ウエスタンブロット解析において、それほどではないがpUL128およびpUL131 融合タンパク質と反応した(
図8、下部パネル)。この結果から、CYTOGAM(登録商標)はウエスタンブロット解析において、gH-gL-pUL128-pUL130-pUL131複合体のpUL128-pUL130-pUL131成分を認識する抗体を有することが示唆される。さらに、該アッセイにより、CYTOGAM(登録商標)はpUL128またはpUL131よりもpUL130に対してさらに強い反応性を有することが明らかになった。
【0159】
次に、gB特異的および、pUL128-pUL130-pUL131特異抗体の混合物をCYTOGAM(登録商標)から単離した(
図9)。次いで、2つの調製品からの等量のIgGを、それらの上皮細胞のヒトCMV感染中和能力について解析した(
図10)。その結果、gBおよびpUL128-pUL130-pUL131に特異的なCYTOGAM(登録商標)抗体は両者ともヒトCMV感染性を中和できることが示唆された。また、同一濃度において、部分精製したpUL128/pUL130/pUL131抗体は、CYTOGAM(登録商標)からの部分精製したgB抗体よりも強い中和活性を有することも示唆される。
【0160】
要約すると、CYTOGAM(登録商標)はヒトCMV疾病の治療に有用なヒトCMV-特異抗体の混合物を含むことが分かっている。我々は、CYTOGAM(登録商標)がpUL128-pUL130-pUL131複合体に対する抗体を有し、これらの抗体はヒトCMVの感染性を中和することができることを証明した。実際に、pUL128-pUL130-pUL131抗体は、中和アッセイにおいてCYTOGAM(登録商標)からのgB抗体よりも高い能力を有したようである。これらの結果は抗ヒトCMV治療と密接な関係を有する。例えば、pUL128-pUL130-pUl131に結合する抗体または抗体の混合物は、ヒトCMV疾病の治療に有用であろう。さらにpUL130は、CYTOGAM(登録商標)により認識されるpUL128-pUL130-pUL131複合体内の、基本ターゲットおよび主ターゲットであると思われる。それ故に、pUL130に対する抗体は、単独または他の糖タンパク質に対する抗体と結合してCYTOGAM(登録商標)の代わりとなることができる。CYTOGAM(登録商標)の所見はさらに、pUL128-pUL130-pUL131複合体およびその個々の成分が、免疫付与用の抗原として有用であることを実証する。CYTOGAM(登録商標)はプールヒト供血からの免疫グロブリンを含み、pUL128-pUL130-pUL131複合体のpUL130に対する優れた反応性を有するので、pUL130は、単独または他の糖タンパク質と結合して有効な抗ヒトCMVサブユニットワクチンとしての機能を果たすであろう。
【0161】
本発明は、上に記載および例示した態様に限定されないが、添付した特許請求の範囲内で変異および修飾が可能である。