(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822512
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月24日
(54)【発明の名称】改良したパーキング用ブレーキを有するフレーム回転型油圧モータ
(51)【国際特許分類】
F03C 2/08 20060101AFI20151104BHJP
【FI】
F03C2/08 B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-89605(P2011-89605)
(22)【出願日】2011年4月13日
(65)【公開番号】特開2011-220341(P2011-220341A)
(43)【公開日】2011年11月4日
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】12/759052
(32)【優先日】2010年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】サクライ ヒサトシ
(72)【発明者】
【氏名】ミシマ ヤスカズ
【審査官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−523651(JP,A)
【文献】
特開2005−048839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(22)と、
該ハウジング(22)に取り付けられ、長手軸(36)に沿って延在する内部室(34)を形成し、前記内部室(34)の半径方向内方に延在する複数の内側歯(38)を含むリングギヤ(28)と、
前記長手軸(36)の回りに軌道運動するため前記リングギヤ(28)の前記内部室(34)内に前記長手軸(36)に対して偏心して配置され、前記リングギヤ(28)の内側歯(38)に係合するように、半径方向外方に延在する複数の外側歯(44)を含み、内側開口(46)を形成するスターギヤ(30)と、
前記スターギヤ(30)に取り付けられ、スターギヤ(30)の端部表面(56)に隣接する前記スターギヤ(30)の前記内側開口(46)内に配置されて、前記長手軸(36)の回りに前記スターギヤ(30)と軌道運動するスペーサーリング(58)と、
前記ハウジング(22)に結合され、前記スペーサーリング(58)とインターロック係合してロック位置と非ロック位置の間で、前記長手軸(36)に沿って長手方向に移動可能となり、前記ロック位置のとき、前記スペーサーリング(58)と前記スターギヤ(30)の軌道運動を抑止し、前記非ロック位置のとき、前記スペーサーリング(58)と前記スターギヤ(30)の軌道運動を可能にするブレーキピン(60)と、
該ブレーキピン(60)に結合され、前記ロック位置に前記ブレーキピン(60)を付勢するように構成された付勢装置(78)とを含み、
前記スペーサーリング(58)は、前記ブレーキピン(60)に向かう截頭状のテーパー開口を形成するために、所定のテーパー角度(80)で、前記長手軸(36)に対して角度を有しかつ前記長手軸に沿って延在する内側表面(66)を含み、
前記ブレーキピン(60)は、前記スペーサーリング(58)に向かって狭くなる截頭状表面を形成して、前記スペーサーリング(58)の内側表面(66)とテーパー係合するために、前記長手軸(36)に向けて内方に前記テーパー角度(80)で角度付けされ、かつ前記長手軸(36)に沿って延在する外側表面(62)を含み、
前記テーパー係合は、前記付勢装置(78)を押圧するために、十分に前記長手軸(36)に沿う軸方向力を発生させて、前記スターギヤ(30)に加えられかつ予め設定された値よりも大きな値を有するトルクに応答して、前記非ロック位置に前記ブレーキピン(60)を移動させ、
前記スターギヤ(30)は、スプライン径(52)を形成する複数の内側スプライン(48)を含み、前記ブレーキピン(60)の前記外側表面(62)が前記長手軸(36)に対して前記スターギヤ(30)の前記内側スプライン(48)から半径方向に離れるように、前記ブレーキピン(60)の前記外側表面(62)は、前記スプライン径(52)より小さいことを特徴とする回転流体圧力装置。
【請求項2】
前記テーパー角度(80)は、前記長手軸(36)に対して、5°〜15°の間の範囲であることを特徴とする請求項1記載の回転流体圧力装置。
【請求項3】
前記スペーサーリング(58)の前記内側表面(66)は、前記スプライン径(52)よりも小さい内径(68)を形成することを特徴とする請求項1記載の回転流体圧力装置。
【請求項4】
前記スターギヤ(30)の前記内側スプラインと噛み合い係合する複数の外側スプラインを有するシャフト(32)を更に含むことを特徴とする請求項1記載の回転流体圧力装置。
【請求項5】
前記シャフト(32)は、長手方向に延在する貫通孔(70)を形成することを特徴とする請求項4記載の回転流体圧力装置。
【請求項6】
前記貫通孔(70)内に移動可能に配置され、かつ前記ブレーキピン(60)内に密接して係合する端部を含むブレーキロッド(72)をさらに含み、該ブレーキロッド(72)は、前記ロック位置と前記非ロック位置の間で前記ブレーキピン(60)を移動させるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の回転流体圧力装置。
【請求項7】
前記ハウジング(22)に取り付けられ、かつ前記シャフト(32)と前記ブレーキロッド(72)の作動を制御するように構成された弁本体(26)をさらに含むことを特徴とする請求項6記載の回転流体圧力装置。
【請求項8】
前記リングギヤ(28)に結合され、かつ前記リングギヤ(28)と前記スターギヤ(30)を前記ハウジング(22)に固定するように構成されたギヤカバー(74)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の回転流体圧力装置。
【請求項9】
前記ギヤカバー(74)に取り付けられたブレーキピン(60)のカバーをさらに含み、該カバーは、前記付勢装置(78)が前記ブレーキピン(60)のカバーに対して付勢することにより、前記ブレーキピン(60)に対して前記付勢装置(78)を固定することを特徴とする請求項8記載の回転流体圧力装置。
【請求項10】
前記スターギヤ(30)の前記内側開口(46)は、前記スターギヤ(30)の前記端部表面(56)に隣接配置された環状ノッチ(54)を形成し、前記スペーサーリング(58)は、前記環状ノッチ(54)内に配置され、かつ前記スターギヤ(30)の複数の前記内側スプライン(48)と前記ギヤカバー(74)との間に固定されることを特徴とする請求項9記載の回転流体圧力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に回転流体圧力装置に関し、特に、ジェロータギア組を含む回転流体圧力装置のためのブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧モータ又は油圧ポンプ等の多くの回転流体圧力装置は、ジェロータギア組を含んでいる。一般的に、回転流体圧力装置は、トルク伝達のロック、すなわち、ジェロータギア組の回転を防止するために、パーキング用ブレーキを含んでいる。
【0003】
ジェロータギア組のためのパーキング用ブレーキには種々の形式があるが、パーキング用ブレーキの1つの特別の形式は、ジェロータギア組のスターギアとインターロック係合するために、長手軸に沿って長手方向に移動可能なブレーキピンを含んでいる。このブレーキピンは、スターギアの内側開口内にスライドする円筒部分を含み、長手軸の回りのスターギアの軌道運動を抑止する。ブレーキピンの円筒部分は、長手軸に沿って平行に配置されたスターギアの内側開口に係合する。スターギアに加えられるトルクは、長手軸に向かって内方に向かう径方向力を発生させる。ブレーキピンは、この径方向力に対抗し、スターギアの移動を防止する。しかし、スターギアに過負荷が加わると、すなわち、許容可能なトルク以上のトルクがかかる場合、ブレーキピンの円筒部分とスターギアとの間の界面、すなわち、
ブレーキピンの表面とスターギアの表面が損傷されることになる。過負荷が十分大きい場合、
ブレーキピンおよび/またはスターギアは破砕する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記事情に鑑みて、スターギアに加わる過負荷によるブレーキピン及びスターギアの損傷を防止する回転流体圧力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
回転流体圧力装置が開示される。回転流体圧力装置は、ハウジングと、このハウジングに取り付けられるリングギアを含んでいる。リングギアは、長手軸に沿って延在する複数の内側歯を含む。回転流体圧力装置は、更にスターギアを含んでいる。スターギアは、長手軸に対して偏心して配置され、リングギアの内側で、長手軸の回りに軌道運動する。
【0006】
スターギアは、リングギアの内側歯と係合して半径方向外方に延在する複数の外側歯を含む。スターギアは、内側開口を形成する。回転流体圧力装置は、さらに、スペーサーリングを含む。スペーサーリングは、スターギアに取り付けられる。スペーサーリングは、このスターギアの端部表面に隣接するスターギアの内側開口内に配置されて、スターギアと長手軸回りに軌道運動する。回転流体圧力装置は、さらに、ハウジングに結合したブレーキピンを含む。ブレーキピンは、ロック位置と非ロック位置の間で、長手軸に沿って長手方向に移動可能である。
【0007】
ブレーキピンは、スペーサーリングとインターロック係合して、ロック位置にあるとき、スペーサーリングとスターギアの軌道運動を抑止する。ブレーキピンは、非ロック位置にあるとき、スペーサーリングから離脱され、スペーサーリングとスターギアの軌道運動を可能にする。
【0008】
回転流体圧力装置は、さらに、付勢装置を含んでいる。付勢装置は、
ブレーキピンに結合され、そして、ブレーキピンをロック位置に付勢するように構成されている。スペーサーリングは、長手軸に沿って延在し、かつ長手軸に対してテーパー角度で角度付けされた内側表面を含む。スペーサーリングの内側表面は、ブレーキピンに向かって截頭状のテーパー開口を形成する。ブレーキピンは、長手軸に沿って延在し、かつ長手軸に向かって内方にテーパー角度で角度付けされた外側表面を含む。ブレーキピンの外側表面は、スペーザーリングに向かって狭くなる截頭表面を形成し、テーパー係合でスペーサーリングの内側表面に係合する。このテーパー係合は、長手軸に沿って付勢装置を押圧するのに十分な軸方向力を発生させ、そして、予め設定された値より大きい値を有するスターギアに加えられたトルクに応答して非ロック位置にブレーキピンを移動させる。
【0009】
したがって、開示された回転流体圧力装置は、スターギアに加えられた過負荷、すなわち、予め設定された許容可能なレベルよりも大きい値を有するトルクによって、ロック位置から非ロック位置に移動して、係合を解除することができる。
【0010】
スターギアに過負荷が加えられる場合、テーパー
係合は、長手軸に向かって作用する径方向力と、長手軸に沿って作用する軸方向力の両方を発生させる。過負荷トルクによって発生した力の軸方向成分は、付勢装置から与えられた抵抗力よりも大きいとき、軸方向力は、ブレーキピンを非ロック位置へ移動させる。これにより、スターギアを回転させることができ、さらに、ブレーキピンおよび/またはスターギアのいずれかに生じる損傷を防止する。
【0011】
本発明の上記特徴及び利点並びに他の特徴と利点は、添付の図面と関連付けるとき、本発明を実施するための最良のモードにおいて、以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、回転流体圧力装置の長手軸方向に見た概略的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した切断線2−2に沿って見た回転流体圧力装置の概略的な横断面図である。
【
図3】
図3は、ブレーキピンがロック位置にあることを示す回転流体圧力装置の拡大した概略部分断面図である。
【
図4】
図4は、ブレーキピンが非ロック位置にあることを示す回転流体圧力装置の拡大した概略部分断面図である。
【
図5】
図5は、力関係図を示す回転流体圧力装置の拡大した概略部分断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照すると、いくつかの図において、同等の参照番号は、同様の構成部品を示しており、回転流体圧力装置は、一般的に20で示されている。各図に示すように、回転流体圧力装置20は、油圧モータを含んでいる。しかし、回転流体圧力装置20は、油圧ポンプまたはここに示されてかつ記載されていない、いくつかの他の装置を含むことができる。
【0014】
図1、
図2に示すように、回転流体圧力装置20は、ハウジング22、ジェロータギア組24、及び弁本体26を含む。ハウジング22は、意図した目的に適した適当な大きさおよび/または形状を含むことができる。ジェロータギア組24は、従来知られているように作動し、互いにかみ合う状態にあるリングギア28及びスターギア30を含む。ハウジング22は、スターギア30と噛み合い係合するシャフト32を支持している。スターギア30とシャフト32は、トルクを伝達、すなわち、これらの間で回転する。
【0015】
リングギア28は、ハウジング22に取り付けられる。リングギア28は、適当な方法で、限定するものではないが、リングギア28を介して延在する複数の取付具によって取り付けることができ、リングギア28をハウジング22にネジ嵌合する。リングギア28は、長手軸36に沿って伸びる内部室34を形成する。このリングギア28は、長手軸36に向けて内部室内に径方向内方に延在する複数の内側歯38を含む。
【0016】
従来公知のように、複数の歯は、複数のローラ40を含むことができ、ローラ40の組各々は、半円筒状の凹部42によって回転可能に支持される。代わりに、複数の歯は、リングギア28と一体に形成されるものであっても良い。
【0017】
スターギア30は、リングギア28の内部室34内に長手軸36に対して偏心して配置されている。スターギア30は、長手軸36の回りを周回、すなわち、公知の軌道運動を行う。スターギア30は、長手軸36から半径方向に離れて、半径方向外方に延在する複数の外側歯44を含み、外側歯は、リングギア28の内側歯38と噛み合い係合する。スターギア30は、その中心を貫通する内側開口46を形成する。
【0018】
スターギア30は、複数の内側スプライン48を含む。内側スプライン48は、スターギア30の内側開口46内に配置される。内側スプライン48は、シャフト32上の複数の外側スプラインと噛み合い、スターギア30とシャフト32とを相互に連結する。内側スプリン48は、各々内側スプラインの遠方端50に向けて内方に内側開口46から延在している。内側スプライン48は、内側スプライン48の遠方端50の間で、内側開口46を横切って延在するスプライン径52を形成する。
【0019】
スターギア30の内側開口46は、スターギア30の端部表面56に隣接配置された環状ノッチ54を形成する。環状ノッチ54は、長手軸36に沿ってスターギア30内に延在する。
【0020】
スターギア30は、スペーサーリング58を含み、このスペーサーリングは、スターギアに取り付けられる。スペーサーリング58は、スターギア30の端部表面56に隣接するスターギア30の内側開口内に配置される。特に、環状リングは、スターギア30の環状ノッチ54内に配置される。環状リングは、周回り移動し、すなわち、スターギア30
と共に長手軸36の回りに軌道運動
する。
【0021】
回転流体圧力装置20は、更に、ブレーキピン60を含む。このブレーキピン60は、ハウジング22に結合され、
図3に示すロック位置の間と図4に示す非ロック位置との間で、長手軸36に沿って長手方向に移動可能で、スターギア30の内側開口46内を出入する。ロック位置にあるとき、ブレーキピン60は、スペーサーリング58とインターロック係合し、スペーサーリング58
及びスター
ギア30の軌道運動を抑止する。非ロック位置にあるとき、ブレーキピン60は、スペーサーリング58から離脱し、スペーサーリング58
及びスター
ギア30の軌道運動を可能にする。
【0022】
ブレーキピン60は、外径を形成する外側表面62を含み、かつスペーサーリング58は、内径68を形成する内側表面66を含む。スペーサーリング58の内側表面66の内径68は、スターギア30のスプライン径52よりも小さい。したがって、ブレーキピン60の外側表面62は、スプライン径52よりも小さい。この結果、ブレーキピン60は、スターギア30の内側スプライン48から離間しており、ブレーキピン60がスターギア30の内側開口46と係合及び離脱するように移動するとき、内側スプライン48への損傷を防止する。
【0023】
図示するように、シャフト32は、シャフト32を長手方向に貫通する孔70を形成する。ブレーキロッド72は、この貫通孔70内に移動可能に配置される。ブレーキロッド72は、ブレーキピン60内で密着係合する端部を含む。ブレーキロッド72は、ロック位置と非ロック位置との間でブレーキピンを移動させるように構成される。
【0024】
弁本体26がハウジング22に取り付けられ、そしてシャフト32とブレーキロッド72の作動を制御するように構成される。弁本体26は、流体の流れを制御するための制御システムを含む。弁本体26は、限定するものではないが、1つまたはそれ以上のスプール弁又は同等物を含むことができ、弁本体26からハウジング22への流体の流れを制御する。弁本体26の特別の形式および作動は、本発明の特徴部分の作動に重要ではなく、それゆえ、以下に記載しない。
【0025】
シャフト32とブレーキピン60の運動は、従来公知のように弁本体からの流体の流れによって制御される。したがって、弁本体26によって信号が送られると、ブレーキロッド72は、ブレーキピン60を押して、ブレーキピン60を非ロック位置に移動させ、スペーサーリング58とのインターロック係合を解除する。これにより、リングギア28に対する長手軸36の回りのスターギア30の軌道運動を可能にする。同様に、弁本体26によって信号が送られると、ブレーキロッド72は、シャフト32の貫通孔70内で後退し、スペーサーリング58とインターロック係合するようにブレーキピンを移動させることを可能にする。これにより、リングギア28に対して長手軸36回りにスターギア30が軌道運動するのを抑止する。
【0026】
回転流体圧力装置20は、さらに、ギアカバー74を含む。このギアカバー74は、リングギア28と結合される。ギアカバー74は、リングギア28と結合することができ、例えば、ギアカバー74を貫通し、そして、リングギア28および/またはハウジング22とネジ嵌合する複数の取付具によって結合することができる。しかし、ギアカバー74は、ここに記載しない、いくつかの他の方法でリングギア28に取り付けることができる。ギアカバー74は、リングギア28とスターギア30をハウジング22に固定するように構成される。
【0027】
回転流体圧力装置20は、さらに、ギアカバー74に取り付けたブレーキピンカバー76を含む。スペーサーリング58は、スターギア30の複数の内側スプライン48とギアカバー74との間に固定される。
【0028】
回転流体圧力装置20は、さらに、付勢装置78を含む。付勢装置78は、ブレーキピン60に結合され、そして、ブレーキピン
60をロック位置に付勢するように構成される。ブレーキピンカバー76は、付勢装置78がブレーキピンカバー76に対して付勢することによって、ブレーキピン60に対して付勢装置78を固定する。好ましくは、付勢装置78は、ブレーキピンカバー76とブレーキピン60の間に配置された少なくとも1つのばねを含む。しかし、付勢装置78は、ブレーキピン
60をロック位置に付勢することができる他のいくつかの形式の装置を含むことができる。
【0029】
上述したように、スペーサーリング58は、内側表面66を含む。スペーサーリング58の内側表面66は、長手軸36に対して角度を有し、長手軸に沿って延在している。スペーサーリング58の内側表面66は、長手軸36に対してテーパー角度80(
図5に図示)で角度付けられ、ブレーキピン60に向けて開口する截頭状のテーパーを形成する。したがって、スペーサーリング58の截頭状テーパーは、ブレーキピン60に向けて移動する方向に長手軸36に沿ってその寸法を増加する。
【0030】
上述したように、ブレーキピン60は、外側表面62を含む。外側表面62は、長手軸36に向かって内方にテーパー角度80で角度付けられて、長手方向に沿って延在している。ブレーキピン60の外側表面62は、テーパー角度80に角度付けられ、スペーサーリング58に向かって狭くなる截頭状表面を形成する。したがって、ブレーキピン60の截頭状表面は、スペーサーリング58に向かって移動する方向に長手軸36に沿ってその寸法を減少する。ブレーキピン60の外側表面62は、スペーサーリング58の内側表面66とテーパー
係合で係合する。ブレーキピン60の外側表面62とスペーサーリング58の内側表面66との間のテーパー係合は、ブレーキピン60の外側表面62および/またはスペーサーリング58の内側表面66を形作ることによって達成され、この構造は、限定するものではないが、球面形状等の他の形式を含む。
【0031】
好ましくは、長手軸36に対するテーパー角度80は、5°〜15°の範囲である。更に特定すると、テーパー角度80は、10°近くとすることができる。しかし、このテーパー角度80は、特別の設計要求に合致するように開示されたものから変更することができる。
【0032】
図5において、ブレーキピン60とスペーサーリング58との間のテーパー係合は、予め設定した値よりも大きな値を有する、スターギア30に加えられたトルクに応答して、付勢装置78を長手軸に沿って押圧し、そして、ブレーキピン60を非ロック位置に移動させるのに十分な軸方向力を発生させる。したがって、スターギア30に加えられた作動トルクは、スペーサーリング58に対して加えられ、かつ長手軸36に向けて半径方向内方に向かう径方向力82を発生させる。スペーサーリング58は、テーパー係合を介してブレーキピン60に径方向力82を伝達する。ブレーキピン60とスペーサーリング58の間のテーパー係合は、スターギア30からの径方向力82を、合成軸方向力成分84と合成径方向力成分86に分ける。前記合成軸方向力成分84は、長手軸36に沿う、すなわち、平行に向かい、前記合成径方向力成分は、長手軸36に向かって半径方向内方に向かう力である。
【0033】
合成軸方向力成分84が、付勢装置78によって供給される抵抗力よりも大きくなると、合成軸方向力成分84は、ブレーキピン60を非ロック位置に移動させる。したがって、スターギア30に加えられたトルクが、あるレベルに達すると、ブレーキピン60は、自動的に非ロック位置に移動することになる。これにより、スターギア30の過負荷によって、すなわち、許容の作動トルクよりも大きなスターギア30へのトルクを与えることによって、ブレーキピン60またはスペーサーリング58のいずれかに起こる損傷を防止する。
【0034】
テーパー角度80の角度は、合成軸方向力成分84と合成径方向力成分86との間の比率を決定する。このテーパー角度80は、限定されるものではないが、予想外部付加、最大モータトルク、種々の部品等の材料特性を含むいくつかの要因によって決定される。テーパー角度80の増加により、合成軸方向力成分84が増加し、かつ合成径方向負荷分86が減少する。この結果、テーパー角度80が増加すると、最大過負荷レベルが減少する。同様に、テーパー角度80が減少すると、合成軸方向力成分84が減少し、そして、合成径方向力成分が増加する。その結果、テーパー角度80を減少させると、最大過負荷レベルが増加する。
【0035】
上述したように、テーパー角度80は、トルクレベルを制御し、この過負荷トルクは、自動的にブレーキピン60を非ロック位置に移動させる。その結果、過負荷トルクが自動的にブレーキピン60を移動させるトルクレベルは、現在のブレーキピン60および現在のスペーサーリング58を、異なるテーパー角度を形成する新しいブレーキピン60と新しいスペーサーリング58に置き換えることによって容易に変えることができる。
【0036】
本発明を実施するための最適な形態を詳細に記載してきたが、本発明が関係するに技術に習熟する当業者であれば、添付する特許請求の範囲において、種々の代替の設計及び実施形態を認めることができるであろう。