(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5822912
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】増幅器のためのアクティブミュート方式
(51)【国際特許分類】
H03G 3/10 20060101AFI20151105BHJP
【FI】
H03G3/10 D
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-502558(P2013-502558)
(86)(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公表番号】特表2013-524623(P2013-524623A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2010061431
(87)【国際公開番号】WO2011126525
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年11月22日
(31)【優先権主張番号】12/750,431
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】アラン エヌ ニールセン
(72)【発明者】
【氏名】キム エヌ マドスン
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−051609(JP,A)
【文献】
特開平05−075364(JP,A)
【文献】
米国特許第05642074(US,A)
【文献】
特開平09−064666(JP,A)
【文献】
特開2000−068766(JP,A)
【文献】
特開2009−055351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 1/00−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1のピンと、
第2のピンと、
第3のピンと、
第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する増幅器であって、前記出力端子が前記第3のピンに結合される、前記増幅器と、
前記第1のピンと前記増幅器の前記第1の入力端子との間に結合されると共に、前記第2のピンと前記増幅器の前記第2の入力端子との間に結合され、第1の制御信号に応答して前記第1及び第2のピンの少なくとも1つと前記増幅器との間に信号パスを形成する、第1のスイッチネットワークと、
前記増幅器の前記第1の入力端子と、前記増幅器の前記第2の入力端子と、前記増幅器の前記出力端子とに結合され、第2の制御信号に応答して前記増幅器の第1及び第2の入力端子を固定電位にクランプする、第2のスイッチネットワークと、
前記第1の制御信号を前記第1のスイッチネットワークに提供するように結合され、前記第2の制御信号を前記第2のスイッチネットワークに提供するように結合されるコントローラであって、増幅モード及び遷移モードの間に前記第1の制御信号が前記第1のスイッチネットワーク内の各スイッチをアクティベートし、ミュートモード及び前記遷移モードの間に前記第2の制御信号が前記第2のスイッチネットワーク内の各スイッチをアクティベートし、前記ミュートモードの間に前記増幅器を介するフィードバックが前記増幅器の出力をミュートする、前記コントローラと、
を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記増幅器がAB級オーディオアンプを更に含む、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
第1のスイッチネットワークが、
前記第1のピンと前記増幅器の前記第1の入力端子との間に結合され、前記第1の制御信号により制御される第1のスイッチと、
前記第2のピンと前記増幅器の前記第2の入力端子との間に結合され、前記第1の制御信号により制御される第2のスイッチと、
を更に含む、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記第1及び第2のスイッチがMOSFETスイッチを更に含む、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記第1の制御信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が約30μsである、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記第2のスイッチネットワークが、
前記増幅器の前記出力端子と前記増幅器の前記第1の入力端子との間に結合され、前記第2の制御信号により制御される第1のスイッチと、
前記増幅器の前記第2の入力端子と接地との間に結合され、前記第2の制御信号により制御される第2のスイッチと、
を更に含む、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
前記第2のスイッチネットワークが、前記第1のスイッチと前記増幅器の前記第1の入力端子との間に結合されるレジスタを更に含む、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
前記レジスタが第1のレジスタを更に含み、
前記第2のスイッチネットワークが、前記増幅器の前記第1の入力端子に結合され、前記第2の制御信号により制御される第3のスイッチと、前記第3のスイッチと接地との間に結合される第2のレジスタとを更に含む、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、
前記第1及び第2のレジスタが各々約10kΩの抵抗を有する、装置。
【請求項10】
請求項8に記載の装置であって、
前記第1、第2及び第3のスイッチがMOSFETスイッチを更に含む、装置。
【請求項11】
請求項4に記載の装置であって、
前記第2の制御信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が約30μsである、装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、
前記遷移モードの長さが少なくとも約100μsである、装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1のスイッチネットワークが、前記第1のピンと前記増幅器の前記第1の入力端子との間に結合される第1のスイッチと、前記第2のピンと前記増幅器の前記第2の入力端子との間に結合される第2のスイッチとを有し、
前記第2のスイッチネットワークが、前記増幅器の前記出力端子に結合される第3のスイッチと、前記増幅器の前記第2の入力端子と接地との間に結合される第4のスイッチと、前記第1のスイッチと前記増幅器の前記第1の入力端子との間に結合される第1のレジスタと、前記増幅器の前記第1の入力端子に結合される第5のスイッチと、前記第3のスイッチと接地との間に結合される第2のレジスタとを有し、
前記コントローラが、前記第1の制御信号を前記第1及び第2のスイッチに提供するように結合され、前記第2の制御信号を前記第3、第4、及び第5のスイッチに提供するように結合され、
前記増幅モード及び前記遷移モードの間に、前記第1の制御信号が前記第1のスイッチネットワーク内の前記第1及び第2のスイッチの各々をアクティベートし、更に、
前記ミュートモード及び前記遷移モードの間に、前記第2の制御信号が前記第2のスイッチネットワーク内の前記第3、第4及び第5のスイッチの各々をアクティベートする、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置であって、
前記増幅器がAB級オーディオアンプを更に含む、装置。
【請求項15】
方法であって、
信号源からの信号を増幅器で増幅するようにアクティブモードの間に第1の制御信号で第1のスイッチネットワーク内の複数のスイッチをアクティベートする工程であって、前記第1のスイッチネットワークが第1のピンと前記増幅器の第1の入力端子との間に結合されると共に、第2のピンと前記増幅器の第2の入力端子との間に結合され、前記増幅器の出力端子が第3のピンに結合され、前記第1のスイッチネットワークが前記第1の制御信号に応答して前記信号源と前記増幅器との間に信号パスを形成する、前記工程と、
前記増幅器の閉ループオペレーションを保持するために遷移モードの間に第2の制御信号で第2のスイッチネットワーク内の複数のスイッチをアクティベートする工程であって、前記第2のスイッチネットワークが前記増幅器の前記第1の入力端子と前記増幅器の前記第2の入力端子と前記増幅器の前記出力端子とに結合され、前記第2のスイッチネットワークが前記第2の制御信号に応答して前記増幅器の第1及び第2の入力端子を固定電位にクランプする、前記工程と、
ミュートモードの間に前記第1の制御信号で前記第1のスイッチネットワーク内の前記複数のスイッチをディアクティベートする工程であって、それにより前記増幅器を介するフィードバックが前記増幅器の出力をミュートするようにし、前記ミュートモードが前記遷移モードに続く、前記工程と、
を含み、
増幅モード及び前記遷移モードの間に前記第1の制御信号が前記第1のスイッチネットワーク内の各スイッチをアクティベートし、前記ミュートモード及び前記遷移モードの間に前記第2の制御信号が前記第2のスイッチネットワーク内の各スイッチをアクティベートする、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記第1及び第2の制御信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が約30μsであり、前記遷移モードの長さが約100μsである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に増幅器に関し、更に特定して言えば、増幅器のためのアクティブミュート方式に関連する。
【背景技術】
【0002】
ミュート回路は、オーディオ及び他の増幅器と共に通常用いられる。典型的に、クランプが(増幅器の入力又は出力端子のいずれかに)用いられてこの機能を提供する。しかし、これらの従来のミュート回路は、通常、約20〜30dBの減衰しか提供しない。そのため、一層大きな減衰を備えたミュート回路が求められている。従来の回路の例の幾つかが、米国特許番号第5,166,983号、第7,102,400号、及び第7,102,414号に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の例示の実施例は、或る装置を提供する。この装置は、第1のピン、第2のピン、第3のピン、第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する増幅器であって、出力端子が第3のピンに結合される増幅器、第1のピンと増幅器の第1の入力端子との間に結合され、第2のピンと増幅器の第2の入力端子との間に結合される第1のスイッチネットワーク、増幅器の第1の入力端子と増幅器の第2の入力端子と増幅器の出力端子とに結合される第2のスイッチネットワーク、及び第1の制御信号を第1のスイッチネットワークに提供するように結合され、第2の制御信号を第2のスイッチネットワークに提供するように結合されるコントローラであって、増幅モード及び遷移モードの間第1の制御信号が第1のスイッチネットワーク内の各スイッチをアクティベートし、ミュートモード及び遷移モードの間第2の制御信号が第2のスイッチネットワーク内の各スイッチをアクティベートし、ミュートモードの間増幅器を介するフィードバックが増幅器をアクティブにミュートする、コントローラを含む。
【0004】
本発明の例示の一実施例に従って、この増幅器がAB級オーディオアンプを更に含む。
【0005】
本発明の例示の一実施例に従って、第1のスイッチネットワークが、第1のピンと増幅器の第1の入力端子との間に結合され、第1の制御信号により制御される第1のスイッチ、及び第2のピンと増幅器の第2の入力端子との間に結合され、第1の制御信号により制御される第2のスイッチを更に含む。
【0006】
本発明の例示の一実施例に従って、第1及び第2のスイッチがMOSFETスイッチを更に含む。
【0007】
本発明の例示の一実施例に従って、第1の制御信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が約30μsである。
【0008】
本発明の例示の一実施例に従って、第2のスイッチネットワークが、増幅器の出力端子と増幅器の第1の入力端子との間に結合され、第2の制御信号により制御される第1のスイッチ、及び増幅器の第2の入力端子と接地との間に結合され、第2の制御信号により制御される第2のスイッチを更に含む。
【0009】
本発明の例示の一実施例に従って、第2のスイッチネットワークが、第1のスイッチと増幅器の第1の入力端子との間に結合されるレジスタを更に含む。
【0010】
本発明の例示の一実施例に従って、このレジスタが第1のレジスタを更に含み、第2のスイッチネットワークが、増幅器の第1の入力端子に結合され第2の制御信号により制御される第3のスイッチ、及び第3のスイッチと接地との間に結合される第2のレジスタを更に含む。
【0011】
本発明の例示の一実施例に従って、第1及び第2のレジスタが各々約10kΩの抵抗を有する。
【0012】
本発明の例示の一実施例に従って、第1、第2、及び第3のスイッチがMOSFETスイッチを更に含む。
【0013】
本発明の例示の一実施例に従って、第2の制御信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が約30μsである。
【0014】
本発明の例示の一実施例に従って、遷移モードの長さが少なくとも約100μsである。
【0015】
本発明の例示の一実施例に従って、或る装置が提供される。この装置は、第1のピン、第2のピン、第3のピン、第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する増幅器であって、出力端子が第3のピンに結合される増幅器、第1のピンと増幅器の第1の入力端子との間に結合される第1のスイッチと、第2のピンと増幅器の第2の入力端子との間に結合される第2のスイッチとを有する第1のスイッチネットワーク、増幅器の出力端子に結合される第3のスイッチと、増幅器の第2の入力端子と接地との間に結合される第4のスイッチと、第1のスイッチと増幅器の第1の入力端子との間に結合される第1のレジスタと、増幅器の第1の入力端子に結合される第5のスイッチと、第3のスイッチと接地との間に結合される第2のレジスタとを有する第2のスイッチネットワーク、及び第1の制御信号を第1及び第2のスイッチに提供するように結合され、第2の制御信号を第3、第4、及び第5のスイッチに提供するように結合されるコントローラを含み、増幅モード及び遷移モードの間、第1の制御信号が、第1のスイッチネットワーク内の第1及び第2のスイッチの各々をアクティベートし、ミュートモード及び遷移モードの間、第2の制御信号が、第2のスイッチネットワーク内の第3、第4、及び第5のスイッチの各々をアクティベートし、ミュートモードの間増幅器を介するフィードバックが増幅器をアクティブにミュートする。
【0016】
本発明の例示の一実施例に従って、或る方法が提供される。この方法は、信号源からの信号を増幅器で増幅するようにアクティブモードの間第1の制御信号で第1のスイッチネットワーク内の複数のスイッチをアクティベートすること、増幅器の閉ループオペレーションを保持するため遷移モードの間第2の制御信号で第2のスイッチネットワーク内の複数のスイッチをアクティベートすること、及びミュートモードの間第1の制御信号で第1のスイッチネットワーク内の複数のスイッチをディアクティベートすることであって、それによって増幅器を介するフィードバックが増幅器をアクティブにミュートするようにし、ミュートモードが遷移モードに続くことを含む。
【0017】
添付の図面を参照して例示の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の例示の一実施例に従った回路の一例のブロック図である。
【0019】
【
図2】
図2は、
図1の回路の制御信号のためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、参照符号100は全般的に、本発明の例示の一実施例に従った回路を示す。回路100は全体として、集積回路(IC)102、及びレジスタR3、R4、R5、及びR6を含む。レジスタR3、R4、R5、及びR6は、入力信号AINを増幅して出力信号OUTを生成するためにIC102のピン108、110、及び112に結合される。IC102は全体として、スイッチネットワーク、増幅器104(これは、典型的にAB級オーディオアンプである)、及びコントローラ106を含む。
【0021】
動作において、IC102は全般的に、アクティブモード、遷移モード、及びミュートモードの3つのモードで増幅器104を動作させる。これらのモードの各々は
図2で見ることができる。アクティブモード(これは、
図2の時間t0とt1の間で示す)の間、(スイッチネットワークの一つの)スイッチS1及びS2がアクティベートされるように、コントローラ106により制御信号CNTL2がアサートされる。スイッチS1及びS2がアクティベートされると、増幅器104は、入力信号AINを通常通り増幅する。遷移モード(これは、
図2の時間t1とt4の間に示す)の間、コントローラ106により制御信号CNTL1及びCNTL2両方がアサートされ、(スイッチネットワークの全ての)スイッチS1からS5をアクティベートする。遷移モード(これは、一般的に長さが少なくとも約100μsである)は、増幅器104の閉ループオペレーションを維持するように提供され、遷移モードがない場合、増幅器104は、開ループオペレーションに関連する(オーディオアプリケーションのための)可聴アーティファクトを生成し得る。最後に、ミュートモードにおいて、制御信号CNTL1がアサートされて(スイッチネットワークの一つの)スイッチS3、S4、及びS5をアクティベートする。スイッチS3、S4、及びS5は、増幅器104の正の入力端子を接地させ、一方、増幅器104の出力端子からのフィードバックは、レジスタRl及びR2(これらは一般に各々約10kΩである)を介して増幅器104の負の入力端子に供給され得る。このフィードバックは、出力信号OUTをヌル又は接地に駆動することにより、約70〜80dB又はそれより高い減衰で増幅器104をアクティブにミュートする。
【0022】
特にスイッチS1からS5を具体的にみると、各スイッチS1からS5は一般的にMOSFETスイッチである。これは、これらのスイッチS1からS5からの電荷注入は、スイッチS1からS5の相対的寸法及び制御信号CNTL1及びCNTL2の立ち上がり/立ち下がり時間で考えられるべきであることを意味する。典型的に、制御信号CNTL1及びCNTL2の立ち上がり時間及び立ち下がり時間(図示するように、
図2の時間t1からt2と時間t3からt4の間)は約30μsである。また、ダミースイッチをスイッチ注入キャンセルに用いることができる。
【0023】
例示の実施例の文脈で説明したような特徴又は工程のすべて又はその幾つかを有する例示の実施例の文脈で説明した1つ又はそれ以上の特徴又は工程の異なる組み合わせを有する実施例も、本明細書に包含されることも意図している。当業者であれば、他の多くの実施例及び変形も特許請求の範囲に包含されることが理解されるであろう。