(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動抑制部は、前記第2の可動部材を前記第2の固定部材に対して係止することで当該第2の可動部材の型開き方向への移動を抑制する請求項1に記載の射出成形機。
前記移動抑制部は、前記第1の型締力発生機構への電流供給を停止した後の残留磁束で前記第2の可動部材を前記第2の固定部材に接触吸着させることで前記第2の可動部材の型開き方向への移動を抑制する請求項1または2に記載の射出成形機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型閉じ時の状態を示す図である。
図2は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。
【0016】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム、Gdは該フレームFr上に敷設される2本のレールよりなるガイド、11は固定プラテン(第1の固定部材)である。固定プラテン11は、型開閉方向(図において左右方向)に延びるガイドGdに沿って移動可能な位置調整ベースBa上に設けられてよい。なお、固定プラテン11はフレームFr上に載置されてもよい。
【0017】
固定プラテン11と対向して可動プラテン(第1の可動部材)12が配設される。可動プラテン12は可動ベースBb上に固定され、可動ベースBbはガイドGd上を走行可能である。これにより、可動プラテン12は、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動可能である。
【0018】
固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と平行にリヤプラテン(第2の固定部材)13が配設される。リヤプラテン13は、脚部13aを介してフレームFrに固定される。
【0019】
固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14を介して固定プラテン11がリヤプラテン13に固定される。タイバー14に沿って可動プラテン12が進退自在に配設される。可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。なお、ガイド穴の代わりに、切欠部を形成するようにしてもよい。
【0020】
タイバー14の前端部(図において右端部)には図示されないネジ部が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0021】
固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ取り付けられ、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない溶融樹脂がキャビティ空間に充填される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0022】
吸着板22(第2の可動部材)は、可動プラテン12と平行に配設される。吸着板22は取付板27を介してスライドベースSbに固定され、スライドベースSbはガイドGd上を走行可能である。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13よりも後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。なお、取付板27はなくてもよく、この場合、吸着板22はスライドベースSbに直に固定される。
【0023】
ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進するのに伴って前進させられて可動プラテン12を前進させ、型開き時に吸着板22が後退するのに伴って後退させられて可動プラテン12を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分にロッド39を貫通させるための穴41が形成される。
【0024】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるための型開閉駆動部であって、例えば可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。なお、リニアモータ28は可動プラテン12とフレームFrとの間に配設されてもよい。
【0025】
リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備える。固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、スライドベースSbの移動範囲に対応させて形成される。可動子31は、スライドベースSbの下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0026】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。なお、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。可動子31の位置を検出する位置センサ75が配置される。
【0027】
コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられる。それに伴って、吸着板22及び可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。リニアモータ28は、可動子31の位置が設定値になるように、位置センサ75の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
【0028】
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0029】
なお、型開閉駆動部として、リニアモータ28の代わりに、回転モータおよび回転モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構などが用いられてもよい。
【0030】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13と吸着板22との間に電磁石による吸着力で型締力を生じさせる。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達する。
【0031】
なお、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39などによって型締装置10が構成される。また、電磁石ユニット37などで第1の型締力発生機構が構成される。
【0032】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。吸着部51は、吸着板22の前端面の所定の部分、例えば、吸着板22においてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、例えば、ロッド39のまわりに溝45が形成され、溝45より内側にコア46、溝45より外側にヨーク47が形成される。そして、溝45内でコア46まわりにコイル48が巻装される。
【0033】
なお、本実施形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部51を設けてもよい。
【0034】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0035】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御装置60によって制御される。制御装置60は、CPU及びメモリなどを備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給する。制御装置60には、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。荷重検出器55は、例えばタイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重は、制御装置60に送られる。
【0036】
次に、型締装置10の動作について説明する。
【0037】
制御装置60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。
図2の状態(型開きの状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給して、リニアモータ28を駆動する。可動プラテン12が前進して、
図1に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、即ち電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0038】
続いて、制御装置60の型締め処理部62は、型締め工程を制御する。型締め処理部62は、電磁石49のコイル48に電流を供給し、電磁石49に吸着部51を吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
【0039】
型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御装置60に送られ、型締力が設定値になるように型締め処理部62がコイル48に供給される電流を調整し、フィードバック制御する。この間、射出装置17において溶融させられた溶融樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充填される。
【0040】
キャビティ空間内の樹脂が冷却固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締め処理部62は、
図1の状態において、電磁石49のコイル48への電流供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退し、
図2に示すように、可動金型16が後退して型開きが行われる。
【0041】
次に、金型装置19の交換時の型厚調整について説明する。
金型装置19の交換に伴い、新しい金型装置19が取り付けられると、金型装置19の厚さが変わり、型閉じが終了した時点でリヤプラテン13と吸着板22との間に形成されるギャップδが変わる。
【0042】
そこで、射出成形機は、金型装置19の厚さに応じてギャップδを調整する型厚調整装置70を備える。型厚調整装置70は、型厚調整用モータ71、ギヤ72、ナット73、ロッド39などによって構成される。ロッド39は吸着板22の中央部分を貫通し、ロッド39の後端部にねじ43が形成される。ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持されたナット73とが螺合させられる。ナット73の外周面に図示されない大径のギヤが形成され、このギヤと、型厚調整用モータ71の出力軸71aに取り付けられた小径のギヤ72が噛合させられる。ナット73及びねじ43によって運動方向変換部が構成され、該運動方向変換部において、ナット73の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。
【0043】
金型装置19の厚さに対応させて、型厚調整用モータ71を駆動し、ナット73をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。即ち、可動プラテン12と吸着板22との間の型開閉方向(図において左右方向)における距離を変えることによって、型厚の調整が行われる。
【0044】
型厚調整用モータ71は、サーボモータであってよく、エンコーダ部71bを含んでよい。エンコーダ部71bは、型厚調整用モータ71の出力軸71aの回転量などを検出し、検出結果を制御装置60に送信する。制御装置60は、ギャップδが設定値になるように、型厚調整用モータ71をフィードバック制御する。
【0045】
また、型厚調整用モータ71は、ブレーキ付きのモータであってよい。型厚調整用モータ71のブレーキ部71cは、一般的な構成であってよく、例えば電磁石を含む電磁ブレーキで構成される。電磁ブレーキは、電磁石が通電されるとき型厚調整用モータ71の出力軸71aの回転を許容し、電磁石が通電されていないとき出力軸71aの回転を制限する。なお、ブレーキ部71cは、電磁石の代わりにエアシリンダなどを駆動源として有してもよく、電磁ブレーキに限定されない。
【0046】
次に、
図3に基づいて金型装置19の取り付けについて説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による射出成形機の金型取り付け時の状態を示し、固定プラテン11と可動プラテン12との間に所定の型締力を発生させた状態を示す。
【0047】
新しい金型装置19を取り付けるとき、金型装置19は、クレーンなどで吊持された状態で、固定プラテン11にボルトで仮止めされる。その後、可動プラテン12が前進して金型装置19に接触し、続いて、金型装置19が型締めされる。型締め状態で、固定金型15が固定プラテン11に、可動金型16が可動プラテン12にそれぞれボルトで本止めされる。ボルトの代わりに、油圧や磁力を利用したクランプ装置などが用いられてもよい。
【0048】
本止め作業は、射出成形機のカバーに設置されるドアを開けて行われるので、型締装置10(詳細には、第1の型締力発生機構)への電流供給を停止した状態(以下、「停止状態」ともいう)で行われる。制御装置60による誤作動を排除するためである。
【0049】
停止状態は、各種検出器の検出結果に基づいて動作がフィードバック制御される駆動源(例えば、電磁石49、リニアモータ28、及び型厚調整用モータ71を含む)の駆動制御が自動で停止されるサーボオフ状態であってよい。
【0050】
停止状態では、制御装置60による電磁石49のコイル48への電力供給が遮断されるので、電磁石49の吸着力を型締力として利用することができない。
【0051】
そこで、第1の型締力発生機構への電流供給を停止した状態で、所定の型締力を発生させる第2の型締力発生機構100が用いられる。
【0052】
第2の型締力発生機構100は、吸着板22の後退(型開き方向への移動)を抑制する移動抑制部110と、型厚調整装置70とを含む。この第2の型締力発生機構100は、ドアを閉めた状態で、且つ、電磁石49のコイル48への電流供給を停止した状態で、所定の型締力を発生させる。
【0053】
移動抑制部110は、例えば、吸着板22をリヤプラテン13に対して係止することで吸着板22の後退を抑制する。移動抑制部110は、吸着板22側(可動側)に設けられる係止孔111、およびリヤプラテン13側(固定側)に設けられる係止ピン112などで構成される。
【0054】
係止孔111は、例えば吸着板22と一体化されたスライドベースSbに形成される。係止孔111は、スライドベースSbの進退方向に間隔をおいて複数(
図3には1つのみ図示)形成されてよい。
【0055】
係止ピン112は、
図3に示すように係止孔111に挿入されたときスライドベースSbの進退を制限し、
図1及び
図2に示すように係止孔111から抜け出たときスライドベースSbの進退を許容する。
【0056】
なお、係止孔111は、スライドベースSbの代わりに、吸着板22や取付板27など、可動側の部材のうち、ロッド39を基準として吸着板22側に配される部材に形成されてよい。同様に、係止ピン112は、リヤプラテン13の代わりに、フレームFrなど、固定側の部材に進退不能に支持されてよい。
【0057】
なお、係止孔111と係止ピン112の配置は逆であってもよく、係止孔111を固定側の部材に設け、係止ピン112を可動側の部材に設けてもよい。
【0058】
移動抑制部110は、係止ピン112を挿抜方向に案内するガイド部113、及び係止ピン112を駆動する駆動装置114などをさらに含んでよい。ガイド部113及び駆動装置114は、例えばリヤプラテン13に固定される。駆動装置114は、少なくともスライドベースSbが進退する間、スライドベースSbから係止ピン112を離間させる。駆動装置114は、電動式でも油圧式でもよい。
【0059】
なお、吸着板22の進退を制限する方法としては、ピン止めの他にも、ネジ止め、真空吸着又は磁気吸着などがある。磁気吸着の場合、例えばマグネットクランプ、マグネットスタンドなどが用いられ、両者が組み合わせて用いられてもよい。マグネットクランプ、マグネットスタンドは、固定側に設けられてもよいし、可動側に設けられてもよい。
【0060】
次に、上記構成とした第2の型締力発生機構100の動作について説明する。この動作は、金型装置19の仮止め作業後に行われ、制御装置60に備えられる型締力印加部101によって制御される。
【0061】
先ず、型締力印加部101は、係止ピン112と係止孔111との位置合わせを行うため、リニアモータ28を駆動する。また、型締力印加部101は、位置合わせ後に係止ピン112を係止孔111に挿入する。挿入後、スライドベースSb、ひいては吸着板22が前後方向に移動不能となる。
【0062】
次いで、型締力印加部101は、型厚調整装置70を駆動して、可動プラテン12と吸着板22とを前後方向に離間させようとする。吸着板22の後退は制限されているので、可動プラテン12が前進して、可動金型16が固定金型15に押し付けられ、型締力が発生する。
【0063】
このように、型締力印加部101は、移動抑制部110によって吸着板22の後退を抑制した状態で、型厚調整装置70を駆動することにより、固定プラテン11と可動プラテン12との間に型締力を印加する。この型締力は、型厚調整装置70が停止した後も、移動抑制部110によって維持される。よって、停止状態で型締力を維持できるので、金型装置19の本止め作業を行うことができる。
【0064】
停止状態で型締力を維持するとき、型締力を解放する方向へのナット73の回転をブレーキ部71cの制動力によって制限し、型締力を維持してよい。なお、ナット73の回転は、ナット73とねじ43との摩擦力によってもある程度制限することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、係止ピン112を係止孔111に挿入した後、型厚調整装置70によって型締力を発生させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電磁石49によって型締力を発生させた状態で、係止ピン112を係止孔111に挿入してもよい。移動抑制部110は、電磁石49が停止状態となった後も、所定の型締力を維持することができる。この場合、移動抑制部110で型締力維持機構が構成され、型締力維持機構は、型厚調整装置70を含まなくてよい。また、この場合、係止孔111又は係止ピン112が、可動側の部材に配されていればよく、可動側の部材は、ロッド39を基準として、吸着板22側に配される部材であっても、可動プラテン12側に配される部材であっても、ロッド39であってもよい。
【0066】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態による射出成形機の金型取り付け時の状態を示し、固定プラテン11と可動プラテン12との間に所定の型締力を発生させた状態を示す。
【0067】
本実施形態による第2の型締力発生機構200は、型厚調整装置70の他に、吸着板22の後退(型開き方向への移動)を抑制する移動抑制部として、吸着板22を前方(型閉じ方向)に付勢するための付勢部を備える。付勢部としては、例えば
図4に示すようにバネ210などが用いられる。この第2の型締力発生機構200は、ドアを閉めた状態で、且つ、電磁石49のコイル48への電流供給を停止した状態で、所定の型締力を発生させる。
【0068】
バネ210は、新しい金型装置19の本止め作業時に用いられる。本止め作業時に、バネ210の一端部211は、フレームFrに対して固定されたバネ取り付け部220に固定される。バネ210の他端部212は、吸着板22と一体化されたスライドベースSbに固定される。
【0069】
なお、本実施形態のバネ210の一端部211は、バネ取り付け部220に固定されるが、フレームFrに固定されてもよく、固定側の部材に固定されていればよい。同様に、バネ210の他端部212は、スライドベースSbに固定されるが、吸着板22に固定されてもよく、可動側の部材のうち、ロッド39を基準として吸着板22側に配される部材に固定されていればよい。
【0070】
バネ210の端部211、212の固定方法としては、例えばピン止め、ネジ止め、真空吸着、磁気吸着などがある。磁気吸着の場合、例えばマグネットクランプ、マグネットスタンドなどが用いられ、両者が組み合わせて用いられてもよい。マグネットクランプ、マグネットスタンドは、バネ取り付け部220側やスライドベースSb側に設けられてよい。
【0071】
バネ取り付け部220は、
図4に示すようにスライドベースSbの前方に配設されてもよいし、スライドベースSbの後方に配設されてもよい。後方に配設される場合も、バネの付勢方向は前方(型閉じ方向)に設定される。
【0072】
次に、上記構成とした第2の型締力発生機構200の動作について説明する。この動作は、金型装置19の仮止め作業後に行われ、制御装置60に備えられる型締力印加部201によって制御される。
【0073】
先ず、型締力印加部201は、リニアモータ28を駆動して、可動プラテン12を前進させ、可動金型16を固定金型15に当接させる。このとき、電磁石49と吸着部51との間にギャップδが形成される。なお、ギャップδはなくてもよい。
【0074】
その後、バネ210の一端部211がバネ取り付け部220に対して固定され、バネ210の他端部212がスライドベースSbに固定される。バネ210は、スライドベースSb、ひいては吸着板22を前方(図において右方向)に付勢し、吸着板22の後退を抑制する。
【0075】
次いで、型締力印加部201は、型厚調整装置70を駆動して、可動プラテン12と吸着板22とを前後方向に離間させようとする。吸着板22の後退はバネ210によって抑制されているので、可動プラテン12が前進して、可動金型16が固定金型15に押し付けられ、型締力が発生する。型締力には、バネ210の付勢力も含まれる。
【0076】
このように、型締力印加部201は、バネ210によって吸着板22の後退を抑制した状態で、型厚調整装置70を駆動することにより、固定プラテン11と可動プラテン12との間に型締力を印加する。この型締力は、型厚調整装置70が停止した後も、バネ210によって維持される。よって、停止状態で型締力を維持できるので、金型装置19の本止め作業を行うことができる。
【0077】
停止状態で型締力を維持するとき、型締力を解放する方向へのナット73の回転をブレーキ部71cの制動力によって制限し、型締力を維持してよい。なお、ナット73の回転は、ナット73とねじ43との摩擦力によってもある程度制限することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、バネ210によって吸着板22の後退を抑制した後、型厚調整装置70によって型締力を発生させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電磁石49によって型締力を発生させた状態で、バネ210によって吸着板22の後退を抑制してもよい。バネ210は、電磁石49が停止状態となった後も、所定の型締力を維持することができる。この場合、バネ210からなる移動抑制部で型締力維持機構が構成され、型締力維持機構は、型厚調整装置70を含まなくてよい。また、この場合、バネ210の他端部212が、可動側の部材に固定されていればよく、可動側の部材は、ロッド39を基準として、吸着板22側に配される部材であっても、可動プラテン12側に配される部材であっても、ロッド39であってもよい。
【0079】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態による射出成形機の金型取り付け時の状態を示し、固定プラテン11と可動プラテン12との間に所定の型締力を発生させた状態を示す。
【0080】
本実施形態による第2の型締力発生機構300は、型厚調整装置70の他に、吸着板22の後退(型開き方向への移動)を抑制する移動抑制部を含む。移動抑制部は、電磁石の電流供給終了後の残留磁束を利用する。この第2の型締力発生機構300は、ドアを閉めた状態で、且つ、電磁石49のコイル48への電流供給を停止した状態で、所定の型締力を発生させる。
【0081】
次に、上記構成とした第2の型締力発生機構300の動作について説明する。この動作は、金型装置19の仮止め作業後に行われ、制御装置60に備えられる型締力印加部301によって制御される。型締力印加部301が移動抑制部を含んでいる。
【0082】
先ず、型締力印加部301は、電磁石49と吸着部51との間にギャップδ(
図1参照)がなくなるように、リニアモータ28及び型厚調整装置70を駆動する。また、型締力印加部301は、電磁石49のコイル48に電流を供給して、電磁石49に吸着部51を接触吸着させ、リヤプラテン13に吸着板22を接触吸着させる。
【0083】
次いで、型締力印加部301は、コイル48への電流供給を終了する。このとき、ギャップδ(
図1参照)がないので、電流供給終了後の残留磁束によって十分な吸着力が発生する。よって、吸着板22の後退(型開き方向への移動)が抑制される。このように、型締力印加部301が移動抑制部を含んでいる。
【0084】
次いで、型締力印加部301は、型厚調整装置70を駆動して、可動プラテン12と吸着板22とを前後方向に離間させようとする。吸着板22はリヤプラテン13に接触吸着されており後退しないので、可動プラテン12が前進して、可動金型16が固定金型15に押し付けられ、型締力が発生する。
【0085】
このように、型締力印加部301は、電流供給後の残留磁束によって吸着板22の後退を抑制した状態で、型厚調整装置70を駆動することにより、固定プラテン11と可動プラテン12との間に型締力を印加する。この型締力は、型厚調整装置70が停止した後も維持される。よって、停止状態で型締力を維持できるので、金型装置19の本止め作業を行うことができる。
【0086】
停止状態で型締力を維持するとき、型締力を解放する方向へのナット73の回転をブレーキ部71cの制動力によって制限し、型締力を維持してよい。なお、ナット73の回転は、ナット73とねじ43との摩擦力によってもある程度制限することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、電磁石49の残留磁束によって吸着板22をリヤプラテン13に接触吸着させた後、型厚調整装置70によって型締力を発生させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、僅かなギャップδを形成した状態(ギャップδの調整は型厚調整装置70で可能)で電磁石49に電流を供給することにより、型締力を発生させると共に、ギャップδをなくしてもよい。電磁石49が停止状態となった後も、残留磁束によって所定の型締力を維持することができる。この場合、型締力印加部301に含まれる移動抑制部で型締力維持機構が構成され、型締力維持機構は、型厚調整装置70を含まなくてよい。
【0088】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態による射出成形機の金型取り付け時の状態を示し、固定プラテン11と可動プラテン12との間に所定の型締力を発生させた状態を示す。この状態では、リヤプラテン13と吸着板22との間にギャップδが形成されている。
【0089】
第2の型締力発生機構400は、可動金型16が固定金型15に当接している状態で、可動プラテン12に対して固定された部分を、固定プラテン11に対して固定された部分に向けて引き付ける引き付け装置を備える。引き付け装置としては、例えば
図6に示すようにバネ410などが用いられる。バネ410は複数設置されてもよい。この第2の型締力発生機構400は、電磁石49のコイル48への電流供給を停止した状態で、所定の型締力を発生させる。第2の型締力発生機構400は、型厚調整装置70を含まないので、ドアの開閉状態に関係なく、所定の型締力を発生させることが可能である。
【0090】
バネ410は、新しい金型装置19の本止め作業時に用いられる。本止め作業時に、バネ410の一端部411は固定プラテン11に固定され、バネ410の他端部412は可動プラテン12に固定される。
【0091】
固定方法としては、例えばピン止め、ネジ止め、真空吸着、磁気吸着などがある。磁気吸着の場合、例えばマグネットクランプ、マグネットスタンドなどが用いられ、両者が組み合わせて用いられてもよい。マグネットクランプ、マグネットスタンドは、可動プラテン12側や固定プラテン11側に設けられてよい。
【0092】
バネ410の引き付け力によって可動プラテン12と固定プラテン11との間に型締力が発生するので、型締装置10の駆動制御を停止させた状態において、型締力が発生するので、金型装置19の本止め作業を行うことができる。
【0093】
なお、本実施形態のバネ410の一端部411は、固定プラテン11に固定されるが、フレームFr、タイバー14などに固定されてもよく、固定側の部材に固定されていればよい。同様に、バネ410の他端部412は、可動プラテン12に固定されるが、スライドベースSb、吸着板22などに固定されてもよく、可動側の部材に固定されていればよい。例えば、バネ410は、
図4に示すバネ210と同様に、一端部411がバネ取り付け部220に固定され、他端部412がスライドベースSbに固定されてもよい。
【0094】
なお、本実施形態では、停止状態で、バネ410によって型締力を発生させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電磁石49によって型締力を発生させた後、バネ410を取り付けてもよい。バネ410は、電磁石49が停止状態となった後も、所定の型締力を維持することができる。この場合、バネ410で型締力維持機構が構成される。
【0095】
なお、本実施形態の引き付け装置は、バネ410の付勢力を利用するバネ式の引き付け装置であるが、油圧や空気圧などの流体圧を利用する流体圧式の引き付け装置、ネジ式の引き付け装置などでもよい。ネジ式の引き付け装置は、固定プラテン11に固定され、可動プラテン12を貫通するシャフトと、該シャフトの後端部に形成されるネジに螺合するナットと、ナットを回転させるモータとで構成される。モータが駆動し、ナットが所定方向に回転すると、可動プラテン12が前進しようとして型締力が発生する。なお、シャフトは可動プラテン12に固定され、固定プラテン11を貫通してもよく、この場合、シャフトの前端部にネジが形成される。また、シャフトは可動プラテン12及び固定プラテン11を貫通してもよく、この場合、シャフトの前端部及び後端部にネジが形成され、各ネジにそれぞれナットが螺合され、2つのナットが相対的に反対方向に回転させられる。
【0096】
以上、本発明の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形や置換を加えることができる。
【0097】
例えば、第1〜第4実施形態の可動金型16は、可動プラテン12に取り付けられるが、可動側取付板を介して可動プラテン12に取り付けられてもよい。同様に、固定金型15は、固定側取付板を介して固定プラテン11に取り付けられてよい。この場合、例えば第4実施形態の引き付け装置は、可動側取付板を固定側取付板に向けて引き付ける装置であってもよい。
【0098】
また、第1〜第3実施形態の型締力印加部101〜301は、制御装置60に備えられるが、専用の制御装置に備えられてもよい。