(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記把持ユニットは、前記間隔枠体の軸中心から電線軸方向両側に突出している突出量を非対称比率としてなると共に、複数個の把持ユニット全てが略同じ非対称比率で形成されてなることを特徴とする請求項1記載の多導体用スペーサの把持ユニット。
【実施例】
【0017】
図1乃至
図3は本発明に係る把持ユニットを適用した多導体用スペーサの一実施例を示すもので、
図1はその正面図、
図2はその右側面図、
図3はその左側面図である。同図において、多導体用スペーサ10は、矩形状をした間隔枠体11の左右の軸対称の位置にそれぞれ把持ユニット12を設けた4導体用のスペーサである。
【0018】
また、全ての前記把持ユニット12,12,12,12は、
図2及び
図3に示すように、
前記多導体用スペーサ10の前記間隔枠体11の軸中心線をXとした場合、その把持ユニット12,12,12,12の電線軸長手方向において、軸中心線Xから一側方向に突出し
ている量aに対して他側方向に突出している量bが大となるように、各把持ユニット12における比率をそれぞれ同じにして非対称とし、全ての前記把持ユニット12,12,12,12の重心が他方側(b)で、かつ、前記軸中心線Xから略同じ距離だけ離れた位置とな
るようにして設定されている。
【0019】
この点について更に詳述すると、従来のスペーサでは、対称と非対称の把持ユニットを混在させていたが、このように対称と非対称の把持ユニットを混在させた場合、短絡時にその電磁吸引力は間隔枠体に曲げモーメントが加わる。したがって、従来の間隔枠体では、この曲げモーメントも考慮した強度で設計しなければならない。しかし、この実施例のように全ての前記把持ユニット12,12,12,12が、電線軸長手方向に対して、前記
間隔枠体11の軸中心線Xから見て長手方向での非対称比率を同じにした場合では、短絡時の荷重で間隔枠体11に生じる曲げモーメントが無くなる。このため、強度面から軽量化が可能になるとともに、安価な材料を使用してコストダウンを図ることが可能となる。
【0020】
前記把持ユニット12の構造を更に説明すると、前記各把持ユニット12は、
図7〜
図9に示す後述するルーズロック金具30を取り付けることによりルーズ形把持ユニットから固定形把持ユニットに切り替えでき、反対に該ルーズロック金具30を取り外すと固定形把持ユニットからルーズ形把持ユニットに切り替えできるようになっている。
図4〜
図6ではそのルーズロック金具30を取り付けて固定形把持ユニットとして使用している状態を示している。
【0021】
図4及び
図6に示す把持ユニット12は、ルーズ用クランプ本体13と連結部材14と前記ルーズロック金具30等で構成されている。
【0022】
前記ルーズ用クランプ本体13は、電線Wを両側から把持できるように把持半体13aと把持半体13bに2分割されて筒状に形成されており、一端側は電線Wの中心軸と平行するヒンジピン15a,15bを支点として回動し、他端側が回動自在となっている。ま
た、該把持半体13aと該把持半体13bの対向し合う面には、それぞれ断面半円状をした電線受け溝16,16が設けられ、該把持半体13aと該把持半体13bが互いに閉じられたとき、該両方の電線受け溝16,16が電線Wの外径と略一致するように形成されている。
【0023】
従って、前記ルーズ用クランプ本体13は、前記電線受け溝16,16内に電線Wを受け入れて前記把持半体13aと前記把持半体13bを互いに閉じると、該把持半体13aと該把持半体13bとで電線Wを把持できる。また、前記把持半体13aと前記把持半体13bとで電線Wを把持した後は、該把持半体13aと該把持半体13bの他端側が、締め付けナット17により互いに締め付け固定される。なお、本実施例での前記締め付けナット17の取付位置は、
図1に示すように各把持ユニット12,12,12,12で同じ時計回り方向を向いており、該各把持ユニット12,12,12,12における前記締め付けナット17の締め付け作業を各把持ユニットに対し同じ方向から行うことができるようにしている。
【0024】
前記連結部材14は、中間に首部14aを有する。また、該首部14aの一端側にT字状突起部14bを、他端側にクレビス形取付部14cをそれぞれ一体に設けている。そして、前記クレビス形取付部14cは、前記間隔枠体11側のターミナル19に電線長手方向に揺動自在に連結される。一方、
図5に示すように前記T字状突起部14bは、前記首部14aがルーズ用クランプ本体13に形成されたスリット20を貫通することにより該ルーズ用クランプ本体13内に収容され、該ルーズ用クランプ本体13内で環状の隙間部18内に配設される。また、前記隙間部18内に配設された該T字状突起部14bは、前記スリット内を移動する首部14aと共に前記隙間部18内を軸回りに予め設定された角度の範囲で揺動できるようになっており、この揺動でルーズ動作が得られるようになっている。
【0025】
なお、前記把持半体13aと前記把持半体13bには、
図4及び
図6に示すように、前記連結部材14に対応して、上下方向に延びる溝状をした係合凹部21,21が左右対称
に形成されており、該係合凹部21,21に前記ルーズロック金具30の一部(後述するロック脚部33a,33b)が嵌合可能になっている。
【0026】
前記ルーズロック金具30は、
図7〜
図9に示すように、左右1対の金具半体30a,
30bと該金具半体30a,30bを連結固定する2本の締め付けボルト31,31を備えている。
【0027】
前記金具半体30aと前記金具半体30bはそれぞれ、取付部32a,32bと該取付
部32a,32bの下面略中央から下方に向かって垂下されたロック脚部33a,33bを一体に有し、ほぼ左右対称形にして形成されている。また、該取付部32aと該取付部32bの対向し合う面には、それぞれコ字状をした凹部34,34と、取付孔35,36が設けられている。なお、前記金具半体30aに形成された前記取付孔35は前記締め付けボルト31が貫通する孔であり、前記金具半体30bに形成された前記取付孔36は該金具半体30aの該取付孔35を通って挿入されて来る該締め付けボルト31が螺合するねじ孔である。
【0028】
そして、前記金具半体30aと前記金具半体30bは、前記該取付部32aと前記取付部32bが互いに突き合わされたとき、前記凹部34,34が前記連結部材14の前記首
部14aの外形と略一致する矩形状の開口を形成する。また、前記各ロック脚部33a,
33bが前記把持半体13aの前記係合凹部21と前記把持半体13bの前記係合凹部21の位置と略一致し、更に前記取付孔35と前記取付孔36が互いに対応するようになっている。
【0029】
従って、前記凹部34,34内に前記連結部材14の前記首部14aを受け入れると共に、前記把持半体13aの前記係合凹部21と前記把持半体13bの前記係合凹部21にそれぞれ前記各ロック脚部33a,33bを嵌合させ、更に前記締め付けボルト31を前
記金具半体30aの取付孔35を通って前記金具半体30bの取付孔36に締め付けて取り付けると、前記金具半体30aと前記金具半体30bが前記把持ユニット12に取り付けられる。すなわち、前記ルーズロック金具30が前記把持ユニット12に取り付けられる。また、このようにして前記ルーズロック金具30が前記把持ユニット12に取り付けられると、前記ルーズ用クランプ本体13が前記連結部材14に対して軸回りに回転しようとする前記ルーズ動作を、前記ルーズ用クランプ本体13と前記ロック脚部33a,3
3bの当接によりロックし、このロックにより該把持ユニット12がルーズ形把持ユニット12から固定形把持ユニットに切り替わる。
図4〜
図6は、このようにして前記ルーズロック金具30が取り付けられた固定形の把持ユニット12を示している。
【0030】
一方、固定形把持ユニット12からルーズ形把持ユニット12に切り替えたいときには、前記締め付けボルト31,31を取り除くと、前記金具半体30a,30bを取り外すことができ、これにより再びルーズ形把持ユニット12に戻すことができる。
【0031】
以上説明したように、本実施例による把持ユニット12によれば、前記連結部材14と前記ルーズ用クランプ本体13の間に前記ルーズロック金具30を取り付けると電線Wを固定把持する固定形把持ユニットとして使用できる。反対に、該ルーズロック金具30を取り外すと電線Wをルーズに把持するルーズ形把持ユニットとして使用できる。従って、スペーサ取付後でも、前記ルーズロック金具30の着脱により、固定形把持ユニット、ルーズ形把持ユニットのどちらにも切り替えることができるので、送電線の架線条件(耐張
〜懸垂変更)等に対してもギャロッピング抑制に効果的な把持部配置変更が可能になる。
また、ルーズロック金具30だけを用意しておけば、固定形把持ユニットはルーズ形把持ユニットと同じ構造にして使用することができる。
【0032】
なお、上記実施例では、締め付けナット17の取付位置を、各把持ユニット12,12,12,12で同じ時計回り方向に向けて設けてなる構成を示したが、これに限らず例えば
図10に示すように締め付けナット17の取付位置が同じ上方向を向くようにして形成してもよいものである。
【0033】
また、更に本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。