(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電動工具等の電池駆動機器は、充電できる電池を内蔵している電池パックを脱着自在に装着することで、コードレス方式として建築現場等において便利に使用できる。また、電池駆動機器から電池パックを取り外し式とすることで、取り外した電池パックを充電して繰り返し使用できる。内蔵する電池パックの残容量が少なくなった電池パックは、電池パック用の充電器にセットして充電される。
【0003】
図28〜
図34に、このような電池パックの一例を示す。これらの図において、
図28は電池パックの外観斜視図、
図29は
図28の電池パックの分解斜視図、
図30は
図29の電池ホルダ70Xの斜視図、
図31は
図30の電池ホルダ70Xからパック基板74Xを外した分解斜視図、
図32は
図30の電池ホルダ70XのXXXII−XXXII線における垂直断面図、
図33は
図32の拡大断面図、
図34はリード線の斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、電池パックの内部には、複数の二次電池を連結した電池ホルダ70Xと、これを監視する電子回路を実装したパック基板74Xが収納されている。パック基板74Xと二次電池の配線には、リード線や電池リード板80Xが利用されている。一般には、二次電池の端面同士を電池リード板80Xで接続し、電池リード板80Xとパック基板74Xとの配線にはリード線が利用されている。特に、高電圧の出力ラインの配線には、径の太い動力リード線85Xが用いられている。
【0004】
しかしながら、限られたスペース内で太い動力リード線85Xを配線し、半田付けを行うことは容易でなかった。特に
図33、
図34において実線矢印で示すように、動力リード線85Xを省スペース内で曲げ加工を行うことは困難となる。また動力リード線85Xの半田付けができたとしても、動力リード線85Xは配線後も自由に動くことができる。例えば
図33においては、破線矢印で示す方向にリード線が動くことがある。このため、電池パックに振動や衝撃が加わると動力リード線85Xが電池パック内部で暴れて、摩擦によって擦り切れてリード線が露出したり、断線したり、あるいは電圧の異なる他の部材と接触して短絡する等の可能性があった。
【0005】
これに対して、金属製の配線リード板を用いて、パック基板に対して配線を行うことが考えられる。しかしながら、配線リード板では基板上に配置する構成が取られるため、配置スペースがそれなりに必要となることに加え、厚さが薄いため導電率の面でも不利となる。特に電池パックの小型化が強く求められる今日においては、配線スペースを極力小さくでき、かつ信頼性も要求されるところ、このような要求に見合う配線構造は実現されていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0014】
図1〜
図4に、本発明の実施例1に係る電池パックとして、電動工具用の電池パックを示す。これらの図において、
図1は電池パック30を示す斜視図、
図2は
図1の電池パック30を背面から見た図を示す斜視図、
図3は
図1の姿勢における電池パック30の分解斜視図、
図4は
図2の姿勢における電池パック30の分解斜視図を、それぞれ示している。なお、以下では電動工具用の電池パックを説明するが、本発明の電池パックは電動工具用の電池パックに限定されるものでなく、他の電池駆動機器にも適宜利用可能であることはいうまでもない。
【0015】
これらの図に示す電池パック30は、外形を箱形とし、内部に二次電池1を内蔵している。具体的には、電池パック30は、充電可能な複数の二次電池1を保持する電池ホルダ70と、二次電池1同士を端面で接続する電池リード板80と、二次電池1の保護回路を実装したパック基板74と、電池駆動機器や電池パック用充電器と接続する複数の外部接続端子33と、電池ホルダ70及びパック基板74を収納する電池ケース31とを備える。
(電池ケース31)
【0016】
電池ケース31は、
図1〜
図2に示すように、外観を箱状に形成されており、隅部を面取りすると共に、表面に電池駆動機器や電池パック用充電器の接続端子と接続するための外部接続端子33を表出させている。また電池パック30を電池駆動機器や電池パック用充電器に装着する際に、装着状態を保持するためのラッチ部50を備える。この電池ケース31は、絶縁性と強度に優れた樹脂等により成型される。
【0017】
また電池ケース31は、
図3〜
図4の分解斜視図に示すように上ケーシング31Aと下ケーシング31Bに二分割されている。電池ケース31の内部には収納空間を構成しており、ここに電池ホルダ70とパック基板74、及びラッチ部50を収納する。さらに電池ケース31の側面は、側面カバー31Cで被覆している。側面カバー31Cは上ケーシング31Aと下ケーシング31Bと別部材で構成している。側面カバー31Cは、上ケーシング31Aと下ケーシング31Bにそれぞれ設けられた溝部に、端縁を挿入して、上ケーシング31Aと下ケーシング31Bで挟持されて固定される。
(電池ホルダ70)
【0018】
電池ホルダ70は、
図3〜
図5に示すように、二次電池1と、パック基板74と、電池リード板80と、各種リード線とを備えている。またこの電池ホルダ70は、下面に二次電池1を収納する電池収納空間と、上面にパック基板74を固定する基板固定部75とを設けている。二次電池1同士は、電池ホルダ70の端面に開口された表出部71から表出する二次電池1の端面同士を、電池リード板80で電気接続され、さらに電池ホルダ70に二次電池1を収納した電池コアの出力を、出力リード板や出力リード線等を介してパック基板74に接続している。また電池リード板80は、信号リード線84を介してパック基板74と接続されている。
(外部接続端子33)
【0019】
また電池パック30は、電池駆動機器や電池パック用充電器と接続するための外部接続端子33を複数備えている。外部接続端子33は、パック基板74上に固定されており、二次電池1の出力の他、接続先の外部の電池パック用充電器や電池駆動機器との間で信号のやりとりを行うための信号端子等を設けることができる。この外部接続端子33は、金属板を折曲して形成される。各外部接続端子33は、
図6、
図9等に示すように、後端縁を上面視コ字状に折曲されると共に、電池パック用充電器や電池駆動機器といった外部接続機器の接続端子と電気的に接続される先端側においては、コ字状の開口端が徐々に狭くなるように、テーパ状に折曲されている。このように折曲された2枚の金属板の間に、外部接続機器の接続端子が挿入され、金属板同士の間で挟持されることによって電気接続が確立される。
(ラッチ部50)
【0020】
一方で電池パック30に設けられたラッチ部50は、
図1〜
図4に示すように部分的に電池ケース31から表出させるようにして、電池ケース31内に可動自在に収納される。ラッチ部50は、ユーザが手で操作するための着脱操作部52を前面に形成すると共に、図において上部には、電池パック30の装着時の進行方向に面して傾斜させた傾斜面と、傾斜面から連続して形成された垂直面とを有する係止フック54を設けている。この係止フック54は着脱操作部52と一体成型されている。上ケーシング31Aには、ラッチ部50の係止フック54を突出させるフック突出窓15を開口している。また装着部2には、この係止フック54と対応する位置に保持凹部17を形成している。この保持凹部17も、傾斜面と一致する凹部傾斜面と、水直面と一致する凹部垂直面とを有している。
(保護回路)
【0021】
またパック基板74上には、二次電池1の保護回路が実装されている。保護回路は、各電池リード板80と信号リード線を介して接続されており、例えば各二次電池1の電池電圧を検出する。さらにパック基板74は、外部接続端子33として、充放電端子に加え、保護回路の出力や電池情報等を出力する信号端子も備えている。これら充放電端子や信号端子は、
図2等に示すように、電池ケース31の表面から表出される。
(二次電池1)
【0022】
電池ケース31は、内部に二次電池1を内蔵できる形状に形成される。ここでは、二次電池1として外装缶を長手方向に延長された円筒状とした円筒形二次電池を使用している。この電池ケース31は、
図4等に示すように電池ケース31内に複数本の二次電池1を互いにほぼ平行姿勢で、同一平面上に横並びに隣接するように配置している。電池パック30に内蔵される二次電池1は、リチウムイオン電池である。ただ、二次電池は、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池、ポリマー電池等の充電できる他の全ての電池とすることもできる。複数の二次電池は、複数本を直列に接続して出力電圧を高くし、また複数本を並列に接続して出力電流を大きくできる。この例では、二次電池1をリチウムイオン電池とし、2本を並列にして5組を直列に接続して出力電圧を18Vとしている。ただ電池パックは、内蔵する二次電池の本数や接続状態を特定しない。電池パックは、使用する電池駆動機器の種類や用途に応じて内蔵する二次電池の本数と出力電圧を種々に設計できる。
(電池収納空間)
【0023】
電池ホルダ70の電池収納空間は、
図5の分解斜視図に示すように第一サブホルダ71A、第二サブホルダ71Bに二分割されており、これら第一サブホルダ71A、第二サブホルダ71Bの間に二次電池1が挟持される。この例では、電池ホルダは10本の二次電池1を収納している。この電池ホルダ70は、二次電池1を電池収納空間に収納した状態で、表出部71から表出される端面同士を電池リード板80で接続する。
(電池リード板80)
【0024】
電池リード板80は
図5の分解斜視図などに示すように、導電性に優れた平板状の金属板であり、電池収納空間に収納できる大きさに形成される。この電池リード板80はスポット溶接のため、溶接スリットを形成しており、電池収納空間に収納された状態で隣接する二次電池1の端面同士に固定される。
(基板固定部75)
【0025】
電池ホルダ70の上面には、パック基板74を固定するための基板固定部75が設けられる。
図6〜
図7に、基板固定部75にパック基板74を装着する様子を示す。これらの図において、
図6は電池ホルダ70の斜視図、
図7は
図6の電池ホルダ70からパック基板74を外した状態を示す斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池ホルダ70は、パック基板74を支承するボス72を設けている。一方、パック基板74は、ボス72と対応する位置にボス穴76を開口している。このボス穴76は、パック基板74の裏面側からボス72の先端を挿入して、ねじ止めなどにより固定される。この例では上ケーシング31Aの内面に、図示しないがボス72と対応する位置に、パック基板74に向かって突出させた円柱部と、その先端に挿入ピンを設けている。また円柱部の挿入ピンは、ねじを挿入するねじ穴を貫通させ、上ケーシング31Aの上面に開口されたねじ穴37と連通している。この上ケーシング31Aに対して、
図3及び
図4に示すように、ねじ穴37からねじ38を螺合して、パック基板74を上ケーシング31Aに固定できる。
(電気接続線85)
【0026】
このパック基板74は、電池ホルダ70に収納された二次電池1の出力と接続するために、動力リード線に代えて、電気接続線85を使用している。この様子を、
図8〜
図13に示す。これらの図において、
図8は
図7の電池ホルダ70から電気接続線85を外した状態を示す斜視図、
図9は
図6の電池ホルダ70を左側面から見た斜視図、
図10は
図9の電池ホルダ70の平面図、
図11は
図10の電池ホルダ70の側面図、
図12は
図10の電池ホルダ70のXII−XII線における垂直断面図、
図13は電気接続線85の外観斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電気接続線85は、金属線を折曲して構成される。金属製の電気接続線85は、
図13に示すように両端縁をそれぞれ折曲して、
図9に示すように一方をパック基板74に、他方を電池リード板80に、それぞれ挿入して半田付けなどにより固定される。端縁の折曲方向は、
図13に示すように異なる方向とすることができ、柔軟な接続経路に設定できる。またパック基板74には、電気接続線85の端縁を挿入する接続穴74cが開口されている。電気接続線85は端縁を接続穴74cに挿入して、半田付けなどによりパック基板74上に固定される。
【0027】
電気接続線85を構成する金属線は、電気導電率に優れた金属製とでき、例えばニッケルや錫、銅などとする。また、リード板のような板状の金属板でなく円柱状の金属線とすることで、抵抗率を抑えてジュール熱を抑制できる。加えて、リード線やリード板のようにパック基板74の表面を這わせるのでなく、端縁を折曲してパック基板74の表面から浮かせるように配置することも容易となる。このように空間的にパック基板74の表面と離間できることは、絶縁性や放熱性の点からも有利となる。加えて、リード線のような可撓性がないため、機械振動や衝撃によって線が移動する、いわゆる暴れる状態となることもなく、摩擦による擦り切れや断線の虞も極減できる。さらに加えて、単に金属線を折曲することで構成できるので、製造コストも抑えることができ、さらに折曲が容易なことなら加工性にも優れる。このように金属線を折曲した電気接続線85を利用することで、従来のリード線やリード板による配線に比べて、信頼性や作業性、加工の容易性等の面において優れた効果を発揮できる。
(保持リブ78)
【0028】
電気接続線85は、
図8の分解斜視図に示すように、電池ホルダ70の上面に保持され、さらに
図7の分解斜視図に示すようにパック基板74と固定される。電池ホルダ70の上面には、電気接続線85を保持する保持リブ78が複数設けられている。
(折曲部85a)
【0029】
また電気接続線85は、
図13の斜視図に示すように中間部分にコ字状(U字状)に折曲された折曲部85aを形成することができる。この折曲部分を利用して、
図8の分解斜視図に示すように、高さの異なる保持リブ78によって所定の姿勢に保持できる。すなわち、電池ホルダ70の上面に設けられた複数の保持リブ78の内、折曲部85aを保持する一対の中間保持リブ78bは、折曲部85aの深さに応じて高さを高くしている。この結果、線状で本来的に回転しやすい電気接続線85の位置決めが図られ、その端縁を正確にパック基板74や電池リード板80に挿入できるようになる。特に、組立時において電気接続線85の端縁をパック基板74の接続穴74cに挿入する際に、電気金属線が転倒するのを中間保持リブ78bによって防止する。また、一対の中間保持リブ78bでもってコ字状の折曲部85aの両側を保持することで、電気接続線85の長手方向における位置決めも行える。さらに、このように複数の保持リブで電気接続線85を
支持することで、外部から衝撃力が印加された場合の、電気接続線85の変形量の緩和も実現される。
【0030】
折曲部85aは、好ましくは電気接続線85の中央近傍に設ける。これにより、安定的な位置決めを図ることができる。また、外部から強い衝撃を受けた場合等に、硬質な金属線では可撓性のあるリード線と比べて衝撃を伝えやすく、接続部分に衝撃力が伝搬されて破損される可能性があるところ、このような折曲部85aを設けておくことで、折曲部85aを変形させて衝撃力を吸収し、このような接続部分の破損リスクを低減できる効果も期待できる。
【0031】
上記の例では、電気接続線85を二次電池の出力線としたが、これに限らず信号線も、金属線を折曲した電気接続線85とすることもできる。
(中間電位の測定)
【0032】
一方で、二次電池1を複数接続した電池パック30においては、各二次電池1の状態を把握するため、中間電位を測定することが行われている。特に二次電池1としてリチウムイオン電池を使用する場合は、二次電池毎のセル電圧の測定が行われている。そこで、二次電池同士を接続する電池リード板80毎に電圧を測定して、この電圧値をパック基板74側に伝達する構成が採用されている。具体的には、電池ホルダ70の上面に固定されたパック基板74は、電池リード板80と電気的に接続されており、このパック基板74に実装された保護回路が、電池の状態を監視している。また電池リード板80は、電池ホルダ70の側面において二次電池1と固定されており、パック基板74でもって二次電池1の状態を監視している。また電池リード板80の側面には、各電池リード板80を固定するためのリード板固定枠86が設けられている。
(リードピン90)
【0033】
パック基板と各電池リード板とは、リードピンを介して接続されている。この様子を
図14に示す電池ホルダ70Xの側面図、及び
図14の破線で示す部分を拡大した
図15の要部拡大図に基づいて説明する。これらの図に示すように、リードピン90は、細い金属線を折曲して構成されている。リードピン90は一端をパック基板74X上に設けられたピン固定穴74aに挿入されて固定される。またリードピン90の他端は、電池リード板80Xに係止されて固定される。このためリードピン90の他端は、
図15の拡大図に示すように折曲された係止端91としている。また電池リード板80Xには、その上端にリードピン90の係止端91を係止するための切り込み80aを設けている。切り込み80aは、パック基板74から見て電池リード板80Xの遠い側の縁部に開口されている。これにより、リードピン90の他端を切り込み80aに係止すると、リードピン90が抜けないように保持される。さらに必要に応じてリードピン90と電池リード板80Xとを半田付けなどによって固定する。
【0034】
このような構成においては、作業者がリードピン90の先端を電池リード板80Xの切り込みに手動で係止する必要がある。作業者はリードピン90の他端を切り込みに案内するため、一旦リードピン90を引き出すと共に切り込みの奥側に押し込んで、さらに逆向きに跳ね上げるようにして係止させる。このような係止動作を実現するためには、
図15の拡大図に示すように、電池リード板80Xの切り込みを設けた端縁と、電池ホルダ70Xのリード板固定枠86との間にdで示す空間を予め設けておく必要がある。このような空間は電池パックの組立時にのみ必要となるに過ぎず、組立終了後には余剰空間として残ることとなり、スペース効率が悪い上、電池リード板80Xにとっても、複雑な形状の切り込みを設けるための加工費が嵩む上、電池リード板80X上部の幅を狭くすることで、電池リード板80Xとリードピン90との固定部分の強度が低下するといった問題もあった。
(リード開口81)
【0035】
これに対して本実施例に係る電池パック30では、
図11、
図16等に示すように、電池リード板80の上端部分に、リードピン90の係止端91を挿入するためのリード開口81を設けている。このリード開口81は、閉じた周囲としている。いいかえると、リード開口81が電池リード板80の端縁と連通した切り込みを有しないことで、電池リード板80の強度を増すことができる。また、
図15及び
図16との対比から明らかなとおり、従来の電池リード板80のような誘い込み用の切り込みを設けないことから、その分電池リード板80の上端を幅広とできる。このことは、電池リード板80の機械強度を増すことに加え、リード開口幅をリードピン90の長さ方向に延長できる、いいかえるとリード開口81を広く開口できることにも繋がり、リード係止端91をリード開口81に挿入し易くして、組立時の作業性向上にも寄与する。加えて、電池リード板80の加工に際してもリード開口81として閉じた穴を開口すれば足りるので、複雑な切り込みを設ける作業を不要として、電極リード板の製造、加工コストも削減できる。
【0036】
一方リードピン90は、他端が予めパック基板74上に開口されたピン固定穴74aに固定されている。このリードピン90は、
図10の平面図などに示すように、一端のリード係止端91が、リード開口81側に突出するように配置されている。またリードピン90の、ピン固定穴74aからリード係止端91までの長さが、ピン固定穴74aから電池リード板80までの距離とほぼ等しくなるよう設計されている。これにより、リード係止端91をリード開口81に挿入する際、ピン固定穴74aを支点としてリード係止端91を、
図16において一点鎖線で示すように電池リード板80の上方から押し下げることで、リード係止端91が弾性変形して、リード開口81から突出できる。この工程は、
図15に示すように一旦リード係止端91を引き延ばした上で切り込み部分に押し戻すような複雑な工程が不要となって、単にリード係止端91を押し下げるようにすれば足り、リード係止端91をリード開口81に挿入する作業を簡便とでき、作業性が高まる利点が得られる。またリード係止端91の長さを、リード開口81の開口幅よりも短くすることで、リード係止端91をリード開口81に弾性的に押し込みやすくできる。
(誘い込みリブ79)
【0037】
加えて、電池リード板80のリード開口81にリード係止端91を案内しやすくするために誘い込みリブ79を設けることができる。この様子を、
図17〜
図20に基づいて説明する。これらの図において、
図17は
図10のリードピン90を電池リード板80のリード穴に挿入した部分を示す拡大図、
図18は
図10の電池ホルダ70のXVIII−XVIII線における垂直断面図、
図19は
図18の誘い込みリブ79を示す拡大断面図、
図20は
図10の誘い込みリブ79を用いてリードピン90をリード穴に挿入した部分を示す拡大斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、電池ホルダ70は、電池リード板80のリード開口81に向けて傾斜面を設けた誘い込みリブ79を設けている。誘い込みリブ79は、
図19の断面図に示すように、傾斜面を外側、すなわち電池リード板80側に向かって下り勾配となるようにしている。また
図17の平面図に示すように、誘い込みタブは各リード開口81に対して2連設けられている。このようにすることで、
図20の斜視図及び
図16の側面図に示すように、誘い込みリブ79によってリードピン90をリード開口81に案内でき、この挿入作業をより迅速にかつ確実に行える。
(パック基板74とリードピン90の位置決め)
【0038】
一方でリードピン90とパック基板74との固定構造を、
図21〜
図27に基づいて説明する。これらの図において、
図21は
図11の電池ホルダ70のXXI−XXI線における垂直断面図、
図22は
図21のリードピン90をピン固定穴74aに固定した部分を示す拡大断面図、
図23は従来の電池ホルダ70Yを示す平面図、
図24は
図23のリードピン90Yをピン固定穴74xに固定した部分を示す拡大図、
図25は
図24のリードピン90Yをピン固定穴74xに固定する様子を示す分解斜視図、
図26は
図10のリードピン90をピン固定穴74aに固定した部分を示す拡大図、
図27は
図26のリードピン90をピン固定穴74aに固定する様子を示す分解斜視図を、それぞれ示している。
【0039】
従来は、
図25のように複雑な方向に折曲したリードピン90Yと、
図24のようにパック基板74Yに開口されたピン固定穴74xとピン固定スリット74yとを用いて、
図23のように固定していた。すなわち、単にリードピンの一端をパック基板に固定するのみでは、姿勢や方向性が定まらないため、パック基板74Yにピン固定スリット74yを開口し、このピン固定スリット74yに挿入できるような形状にリードピン90Yの一部を折曲していた。この構成では、パック基板74Yにピン固定スリット74yを開口させる加工が必要となり、またこのピン固定スリット74yに応じてリードピン90Yの一部を折曲する加工も必要となって、加工の手間がかかっていた。
【0040】
そこで、より簡易な構造で、リードピン90を所定の姿勢で位置決めして固定できるよう、本実施例では
図26〜
図27に示すようなパック基板74及びリードピン90を採用している。まず
図26に示すように、パック基板74は、ピン固定穴74aと近接したパック基板74の端縁にピン係止部74bを形成している。一方リードピン90は、
図27に示すようにリード係止端91を設けた端部とは反対側の端部を、端縁とほぼ平行になるように折り返してコ字状(U字状)に折曲したピン固定端92としている。ピン固定端92の折り返し部分の幅は、パック基板74のピン固定穴74aとピン係止部74bとの幅と一致させる。このようにすることで、
図22に示すようにピン固定端92の端部をピン固定穴74aに挿入して固定すると共に、このコ字状の折曲部分をピン係止部74bに係止して、リードピン90を折り返すことができる。このようにすることで、リードピン90はピン固定端92でピン固定穴74aとピン係止部74bとの間を橋渡しすることにより位置決めでき、またリードピン90をパック基板74に挿入する作業も行いやすくなる。またパック基板側の加工においても、パック基板にピン固定スリットを開口させる必要が無く、単に端縁の一部にピン係止部74bを形成すれば足りるので、加工工程を大幅に簡素化できる。またリードピン90の折曲もより簡単となって、製造コストの低減を図ることが可能となる。