(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記形状データと前記指定形状とが交わる点を交点として抽出し、前記形状データにおける前記指定形状に対して余盛りされた前記溶接ビードの谷部の頂点を変曲点として抽出する変曲点・交点抽出部をさらに備え、
前記パスシーケンス選択部は、前記交点の数が2より大きい場合隣接する交点間の距離を算出し、前記距離が所定値より大きい場合前記ガウジングの軌跡を分割し、前記距離が所定値以下である場合前記ガウジングの軌跡を分割しない請求項1記載の溶接ビード整形装置。
前記形状データと前記指定形状とが交わる点を交点として抽出し、前記形状データにおける前記指定形状に対して余盛りされた前記溶接ビードの谷部の頂点を変曲点として抽出する変曲点・交点抽出部をさらに備え、
前記余盛形状抽出・除去深さ算出部は、隣り合う前記交点または前記変曲点間における前記形状データと前記指定形状との差に基づいて前記余盛形状を算出し、各前記余盛形状における最大余盛を算出し、各前記最大余盛の平均値を少なくとも用いて前記除去深さを算出する請求項1〜2のいずれか一項記載の溶接ビード整形装置。
前記ガウジング用トーチは、前記溶接ビードをガウジングするプラズマ用ガスと、ガウジングにより発生するノロを除去するクーリングガスとを噴射するノズルを有する請求項1記載の溶接ビード整形装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る溶接ビード整形装置およびその整形方法の各実施形態を添付図面に基づいて説明する。以下に説明する各実施形態においては、溶接ビード整形装置およびその整形方法は、大型かつ複雑な構造を有する水力発電装置の水車ランナの羽根溶接部に形成された溶接ビードを整形する例を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
本発明に係る溶接ビード整形装置およびその整形方法の第1実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態における溶接ビード整形装置1の構成図である。
【0015】
溶接ビード整形装置1は、スライダ装置11、多関節ロボット12、プラズマガウジング用トーチ13、形状センサ14、画像処理装置16およびロボット制御装置17を有する。
【0016】
スライダ装置11は、台座21、支柱22、昇降スライド23、サイドアーム24およびベース25を有する。台座21は、スライダ装置11の設置面2上に設置され、スライダ装置11を支持する。支柱22は、台座21上から上方向に伸び、上下方向軸を中心に回転する(
図1における矢印A方向)。昇降スライド23は、支柱22に設けられ、支柱22に対して上下方向(
図1における矢印B方向)にスライドする。サイドアーム24は、昇降スライド23に設けられ、昇降スライド23に対して水平一軸方向(
図1における矢印C方向)に移動する。ベース25は、サイドアーム24の一端(先端)に設けられる。
【0017】
多関節ロボット12は、ベース25に取り付けられ、多関節で多軸回転するアームを有する。多関節ロボット12は、例えば6個の関節を有し、6軸周りに回転する。多関節ロボット12が6個の関節を有する場合、第1〜6の関節にそれぞれ第1〜6のリンクが配置される。また、第1の関節はベース25に配置され、第6のリンクの先端はアームの先端に対応する。
【0018】
スライダ装置11および多関節ロボット12は、プラズマガウジング用トーチ13および形状センサ14を駆動する駆動装置である。
【0019】
プラズマガウジング用トーチ13は、多関節ロボット12のアーム先端に設けられ、溶接ビードが形成された整形対象物のガウジングを行う。プラズマガウジング用トーチ13は、多関節ロボット12の多関節機構と、スライダ装置11の上下・水平方向の移動および上下方向軸周りの回転による位置調整により、位置・姿勢が調整される。プラズマガウジング用トーチ13は、ノズル29を有する。ノズル29は、溶接ビードをガウジングするためのプラズマ用ガスと、ガウジングしたノロを除去するためのクーリングガスを噴射する。クーリングガスの圧力の変更により、ノロの除去量は増減する。
【0020】
形状センサ14は、多関節ロボット12のアーム先端に設けられる。形状センサ14は、例えばレーザや超音波により整形対象物の3次元形状を計測するセンサである。
【0021】
これらプラズマガウジング用トーチ13および形状センサ14は、多関節ロボット12のアーム先端に互いの相対的位置が固定されて取り付けられる。
【0022】
画像処理装置16は、形状センサ14で計測され出力された計測データを受信し、処理する。画像処理装置16は、計測データに基づいて得られるガウジング教示データをロボット制御装置17に送信する。
【0023】
ロボット制御装置17(制御装置)は、動作軸制御装置31および教示データ記憶装置32を有する。動作軸制御装置31は、スライダ装置11および多関節ロボット12へ指令信号を送信し、スライダ装置11および多関節ロボット12を所定量を駆動する。教示データ記憶装置32は、計測教示データを記憶し、画像処理装置16へ送信する。また、ロボット制御装置17は、操作員によりスライダ装置11および多関節ロボット12を操作するための操作装置を有する。また、ロボット制御装置17は、ガウジング用トーチ13のガウジング電源などを制御する。
【0024】
次に、第1実施形態における溶接ビード整形装置1の作用および溶接ビード整形方法について説明する。
【0025】
図2は、第1実施形態の溶接ビード整形装置1により実施される溶接ビード整形前処理を説明するフローチャートである。
【0026】
図3は、第1実施形態における溶接ビード整形装置1が、水車ランナ3の羽根溶接部の溶接ビード整形を行う場合の説明図である。
【0027】
溶接ビード整形装置1により行われる溶接ビード整形前処理は、ロボット制御装置17により実施される処理工程(工程S1、S2およびS12)と、画像処理装置16により実施される処理工程(工程S3〜S11)とに区分される。
【0028】
溶接ビード整形前処理が行われる前に、溶接ビード整形装置1および整形対象物となる水車ランナ3の設置作業が行われる。水車ランナ3はクレーンで起立状態に吊り上げられ、
図3に示すようにターニングローラ4上に設置される。水車ランナ3は、ターニングローラ4の回転に連動して回転する。水車ランナ3は、クラウン5およびバンド6と羽根7との溶接部(整形対象箇所)が溶接ビード整形装置1の前方に位置する角度で停止される。
【0029】
溶接ビード整形装置1は、水車ランナ3の開口の横に設置される。その後、ロボット制御装置17の動作軸制御装置31によってスライダ装置11および多関節ロボット12が操作される。
【0030】
ここで、水車ランナ3のクラウン5およびバンド6と羽根7との溶接部である整形対象箇所は流路となるため、滑らかなr形状に仕上げなければならない。この整形対象物の仕上がり時の理想的な形状であるr形状は、予め設定された整形対象物の指定形状として与えられる。
【0031】
教示データ記憶工程S1において、教示データ記憶装置32は、教示データを記憶する。教示データは、例えば操作員の操作により教示データ記憶装置32に記憶される。操作員は、ロボット制御装置17の操作装置を用いてスライダ装置11および多関節ロボット12を駆動させる。形状センサ14(またはプラズマガウジング用トーチ13)は、ガウジング予定軌跡上の教示点に移動する。操作員により教示操作が選択されると、スライダ装置11の位置と多関節ロボット12の姿勢とが教示データとして教示データ記憶装置32に記憶される。
【0032】
教示データは、形状センサ14およびプラズマガウジング用トーチ13のねらい位置およびトーチ姿勢を示す位置・姿勢データと、ガウジング条件とを含む動作命令である。ガウジング条件は、教示点間毎に与えられ、ガウジング速度、ウィービング周波数、電流などである。また、教示データは、形状センサ14による形状計測に用いられる計測教示データと、プラズマガウジング用トーチ13によるガウジングに用いられるガウジング教示データとに区分される。
【0033】
動作軸制御工程S2において、動作軸制御装置31は、教示データ記憶工程S1で記憶された計測教示データに基づいて、スライダ装置11および多関節ロボット12の動作軸を制御する。形状センサ14は、スライダ装置11および多関節ロボット12の動作後、溶接ビードの形状を計測する。多関節ロボット12のアーム先端に取り付けられた形状センサ14で溶接部の形状が計測される。
【0034】
形状データ抽出工程S3において、画像処理装置16(形状データ抽出部)は、形状センサ14から出力される計測データを2値化・ノイズ除去し、溶接ビードの形状データを抽出する。
【0035】
変曲点・交点抽出工程S4において、画像処理装置16(変曲点・交点抽出部)は、形状データ抽出工程S3で抽出された形状データと指定形状とを画像上で重ね合わせる。画像処理装置16は、形状データと指定形状とが交わる点を交点として抽出する。また、画像処理装置16は、形状データにおける指定形状より中心点側、すなわち指定形状に対して余盛りされた溶接ビードの谷部の頂点を変曲点として抽出する。なお、画像処理装置16は、指定形状の中心点に向く溶接ビードの頂点を山部とし、指定形状の中心点とは逆方向に向く溶接ビードの頂点を谷部とする。
【0036】
図4(a)〜(e)は、溶接ビードの形状データB、指定形状Rおよびクラウン5、バンド6、羽根7表面の関係を説明する説明図である。
【0037】
図4(後述する
図13においても同様)においては、形状データ抽出工程S3で抽出された形状データB(溶接ビード)、クラウン5表面、バンド6表面および羽根7表面を実線で、クラウン5表面、バンド6表面および羽根7表面の延長線である仮想線Eを点線で、指定形状Rを一点鎖線で示す。また、
図4の左右方向をX軸、上下方向をY軸と定義する。
【0038】
図4(a)に示すように、指定形状Rは、クラウン5表面またはバンド6表面と羽根7表面との延長線Eに接する、所定半径を有する円(弧)で定義される。画像処理装置16は、形状データ抽出工程S3で抽出した形状データBと、指定形状Rとの交点である、交点i1および交点iNを抽出する。画像処理装置16は、形状データBで指定形状Rより中心点O側であり、かつ谷部の頂点である変曲点i2〜i(N−1)を抽出する。
【0039】
このとき抽出した交点および変曲点には、形状データB内でX軸の値が最も小さいものからi1、i2、i3・・・i(N−1)、iN(N:抽出した変曲点および交点の総数)の番号が振り分けられる。
【0040】
パスシーケンス選択工程S5において、画像処理装置16(パスシーケンス選択部)は、形状データと指定形状とを比較し、溶接ビードの余盛が足りない部分があり(溶接ビードが指定形状よりも小さく)、かつ余盛が足りない部分の距離が所定値より大きい場合、連続して行われるガウジングの軌跡(パスシーケンス)を分割する。これにより、余盛が足りない部分をさらにガウジングしてしまうことを防止する。画像処理装置16は、求めた交点の数が2より大きい場合、余盛が足りない部分があると判断する。また、画像処理装置16は、隣接する交点間の距離を算出することにより、余盛が足りない部分の距離を算出することができる。
【0041】
例えば、
図4(a)に示すように、形状データBにおける交点の数が2である場合、画像処理装置16は交点i1〜交点iN間においてガウジングを一括で行うことを選択する。
【0042】
一方、画像処理装置16は、交点の数が2より多い場合、交点i1、交点iN以外で隣り合う交点の距離dを算出する。例えば
図4(b)に示すように、画像処理装置16は、交点i1、交点iN以外の交点i2、交点i3間の距離dが所定値D
1以下である場合、交点i1〜交点iNにおけるガウジングを一括で行うことを選択する。すなわち、画像処理装置16は、交点i1〜交点iNを一のパスシーケンスとする。
【0043】
例えば
図4(c)に示すように、画像処理装置16は、交点i1、交点iN以外の交点i2、交点i3間の距離dが所定値D
1より大きい場合、交点i2、交点i3間の前後でガウジングを分割することを選択する。すなわち、画像処理装置16は、交点i1〜交点i2をパスシーケンス1とし、交点i3〜交点iNをパスシーケンス2とする。
【0044】
余盛形状抽出・除去深さ算出工程S6において、画像処理装置16(余盛形状抽出・除去深さ算出部)は、形状データと指定形状との差を余盛形状として算出する。画像処理装置16は、隣り合う交点または変曲点間の余盛形状における最大余盛を算出し、その平均値から後に手仕上げで削る余盛量を差し引いた値を除去深さとする。
【0045】
例えば
図4(d)に示すように、画像処理装置16は、形状データと指定形状Rとの差を算出して、余盛形状を求める。画像処理装置16は、変曲点・交点抽出工程S4で抽出した隣り合う交点または変曲点間における、形状データBと指定形状Rとの差の最大値を余盛として求める。例えば、画像処理装置16は、交点i1と交点i2との間における余盛形状を複数点(点1〜点M)で求める。画像処理装置16は、点3の余盛形状を最大余盛として算出する。画像処理装置16は、隣接する交点i〜交点N間で求めた各最大余盛の平均値を求め、この平均値から手仕上げで削る余盛量を差し引いた値を除去深さとする。
【0046】
図4(c)に示すようにパスシーケンスが分割された場合には、パスシーケンス毎に余盛形状の抽出および除去深さの算出が行われる。
【0047】
ウィービング幅・角度算出工程S7において、画像処理装置16は、パスシーケンスの選択工程S5で求めた一のパスシーケンス(ガウジング範囲)内の両端の交点の距離をプラズマガウジング用トーチ13のウィービング幅とする。また、指定形状の中心点と両端の交点とをそれぞれ結ぶ2直線の成す角をウィービング角とする。
【0048】
例えば
図4(e)に示すように、画像処理装置16は、変曲点・交点抽出工程S4で抽出した交点i1と交点iNとの間の距離をプラズマガウジング用トーチ13のウィービング幅Wとする。また、画像処理装置16は、指定形状Rの中心点Oと両端の交点i1と交点iNとをそれぞれ結ぶ2直線の成す振り角をウィービング角θ
1とする。
【0049】
ねらい位置・トーチ姿勢算出工程S8において、画像処理装置16(ねらい位置・トーチ姿勢算出部)は、ウィービング幅・角度算出工程S7で求めたウィービング幅の中点(
図4(e)における中点M)をねらい位置として算出する。ねらい位置は、プラズマガウジング用トーチ13先端から所定のチップ・母材間距離D
2を離した点の教示位置である。また、画像処理装置16は、トーチ前後角が加工面に対して常に一定であり、トーチ傾斜角がウィービング時においてプラズマガウジング用トーチ13が指定形状に対して常に鉛直となるようなトーチ姿勢を算出する。
【0050】
ここで、
図5は、トーチ前後角およびトーチ傾斜角を示す説明図である。
図6は、ガウジング方向およびウィービング幅Wなどを示す説明図である。
【0051】
トーチ前後角θ
2は、下板8(例えばクラウン5、バンド6)とプラズマガウジング用トーチ13の軸とが成す角である。トーチ傾斜角θ
3は、下板8に対して略直交する立板9(例えば羽根7)とプラズマガウジング用トーチ13との軸とが成す角である。また、トーチの前後はガウジング方向であり、ウィービング幅Wはガウジング方向に直交する方向に対応する幅である。
【0052】
ガウジング条件算出工程S9において、画像処理装置16(ガウジング条件算出部)は、ガウジングの除去深さの式を用いてガウジング条件としてのガウジング速度、ウィービング周波数、電流を算出する。
【0053】
図6に示すように、ウィービング速度はガウジング方向に対して鉛直方向の速度であり、ガウジング速度はガウジング方向の速度である。ウィービング速度をVw、ガウジング速度をV、入熱量をQとすると、ガウジング除去深さyは以下の式(1)で表される。C1、C2、C3は、実験から求められた定数である。
【0054】
[数1]
y=C1+C2*Vw/V+C3*Q・・・・・・式(1)
【0055】
次に、画像処理装置16は、ウィービング幅・角度算出工程S7で求めたウィービング幅と、式(1)から求めたウィービング速度からウィービング周波数を求める。
【0056】
画像処理装置16は、上記で求めたガウジング速度、ウィービング周波数・幅、電流で構成されるガウジング条件と、ねらい位置・トーチ姿勢算出工程S8で算出した位置・姿勢データとを、ガウジング教示データとして教示データ記憶装置32に記憶する。
【0057】
なお、余盛形状抽出・除去深さ算出工程S6において、算出された除去深さが一定の値以下である場合、すなわちガウジングを行う必要がない場合、画像処理装置16はガウジング条件算出工程S9に進み、除去深さを最小にするためのガウジング条件を設定する。画像処理装置16は、電流を所定値まで下げ、ガウジング速度を所定値まで上げるガウジング条件を設定する。このようなガウジング条件を設定することにより、後のガウジング作業においては、プラズマガウジング用トーチ13はガウジングを行わず(最小限のガウジングを行い)、かつアークを切らさない条件で動作する。
【0058】
パス分割判定工程S10において、画像処理装置16は、パスシーケンス選択工程S5においてパスシーケンスの分割がされたか否かの判定を行う。画像処理装置16はパスシーケンスが分割されたと判定した場合(工程S10のNO)、余盛形状抽出・除去深さ算出工程S6に戻り、余盛形状抽出・除去深さ算出工程S6〜ガウジング条件算出工程S9が行われていないパスシーケンスに対し、工程S6〜工程S9を行う。
【0059】
一方、画像処理装置16はパスシーケンスの分割がされていないと判定した場合(工程10のYES)、教示点判定工程S11において、他の教示点が存在するか否かの判定を行う。画像処理装置16は、他の教示点が存在すると判定した場合(工程S11のNO)、動作軸制御工程S2に戻り、全ての教示点に対し工程S2〜工程S10を行う。
【0060】
一方、画像処理装置16は他の教示点が存在しないと判定した場合(工程11のYES)、ロボット制御工程S12において、ロボット制御装置17は、教示データ記憶装置32に記憶されたガウジング教示データなどに従って多関節ロボット12およびスライダ装置11の各軸動作と、ガウジング電源を制御して自動でガウジングを行う。
【0061】
一実施例として、
図7に示す条件を用いて水車ランナ3の羽根溶接部に対してビード整形を行った。また、
図8(a)は、羽根溶接部のガウジング前の断面形状(実線)および指定形状(点線)を示し、(b)はガウジング後の断面形状(実線)および指定形状(点線)を示すグラフである。
【0062】
図7に示す固定条件と、式(1)で求められたガウジング条件とを用いて
図8(a)に示す溶接ビードにプラズマガウジングを行った。この結果、
図8(b)に示すように、余盛部分が好適に整形された。
【0063】
このような第1実施形態における溶接ビード整形装置1および溶接ビード整形方法は、整形対象物の大きさや構造の複雑さによらず、自動で高精度な溶接ビードの整形を実現することができる。すなわち、溶接ビード整形装置1は、形状センサ14により精度よく整形対象物の形状を測定し、ガウジング条件やねらい位置・トーチ姿勢などのガウジング教示データを取得することができる。また、溶接ビード整形装置1は、動作軸制御装置31により、自動で一定範囲内を連続的にガウジングすることができる。
【0064】
また、溶接ビード整形装置1およびその整形方法は、溶接ビードの形状から隣接する交点・変曲点間の最大余盛を算出し、その平均を除去深さとするため、余盛を過度に削ることなく好適に整形することができる。また、溶接ビード整形装置1およびその整形方法は、算出された好適なガウジング条件で連続して整形することができるため、作業工程や作業時間を低減させることができる。
【0065】
さらに、溶接ビード整形装置1およびその整形方法は、余盛が足りない部分については、その部分の距離を算出し、距離が所定値以上である場合にはガウジング範囲を分割する。これにより、溶接ビード整形装置1およびその整形方法は、余盛が足りない部分においては除去し過ぎることなく、好適に整形することができる。
【0066】
[第2実施形態]
本発明に係る溶接ビード整形装置およびその整形方法の第2実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0067】
図9は、第2実施形態における溶接ビード整形装置41の構成図である。
【0068】
第2実施形態における溶接ビード整形装置41が第1実施形態と異なる点は、教示データ記憶工程で教示データ記憶装置32に記憶される教示データを、オフライン・ティーチング・システム42から取得する点である。第1実施形態と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
溶接ビード整形装置41は、スライダ装置11、多関節ロボット12、プラズマガウジング用トーチ13、形状センサ14、画像処理装置16、ロボット制御装置17、製品設計用3次元CAD43およびオフライン・ティーチング・システム42を有する。
【0070】
製品設計用3次元CAD43は、水車ランナ3などの整形対象物の3次元形状データを作成する。オフライン・ティーチング・システム42は、スライダ装置11および多関節ロボット12への教示をコンピュータ画面上の仮想空間で行うシステム(数値化装置)である。
【0071】
次に、第2実施形態における溶接ビード整形装置41の作用および溶接ビード整形方法について説明する。
【0072】
図10は、第2実施形態の溶接ビード整形装置41により実施される溶接ビード整形前処理を説明するフローチャートである。
【0073】
溶接ビード整形装置41により行われる溶接ビード整形前処理は、オフライン・ティーチング・システム42により実施される処理工程(工程S21)、ロボット制御装置17により実施される処理工程(工程S22、S23およびS33)と、画像処理装置16により実施される処理工程(工程S24〜S32)とに区分される。
【0074】
計測教示工程S21において、オフライン・ティーチング・システム42は、整形対象物の3次元形状データに基づいて整形対象物の計測教示データを作成する。3次元形状データは、製品設計用3次元CAD43を用いて作成され、オフライン・ティーチング・システム42に入力される。
【0075】
オフライン・ティーチング・システム42は、入力された整形対象物の3次元形状データを、溶接ビード整形装置41(スライダ装置11、多関節ロボット12、形状センサ14、プラズマガウジング用トーチ13)の予め作成された3次元モデルとともに、コンピュータ上の仮想空間に配置する。オフライン・ティーチング・システム42は、3次元形状データで表される整形対象物の溶接部のガウジング線の鉛直面上、クラウン5またはバンド6表面と羽根7表面との角度の中心を通る位置および方向(姿勢)に形状センサ14(およびプラズマガウジング用トーチ13)が配置されるように、計測教示データを算出する。
【0076】
また、オフライン・ティーチング・システム42は、算出された位置および姿勢へのアプローチ動作および退避動作の教示データを追加する。このように、オフライン・ティーチング・システム42は、各々の教示点に動作命令を付加することで、計測教示データを作成する。
【0077】
教示データ記憶工程S22において、教示データ記憶装置32は、計測教示工程S21において作成された教示データを記憶する。動作軸制御工程S23〜ロボット制御工程S33は、第1実施形態における溶接ビード整形前処理(
図2)の動作軸制御工程S2〜ロボット制御工程S12とほぼ同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0078】
上述した第1実施形態における溶接ビード整形装置1および溶接その整形方法においては、ロボット制御装置17に設けられた操作装置を用いて操作員が多関節ロボット12およびスライダ装置11を操作して教示データを入力した。これに対し、第2実施形態における溶接ビード整形装置41および溶接その整形方法は、製品設計用3次元CAD43、オフライン・ティーチング・システム42を用いて、数値化されたデータを教示データとして用い、多関節ロボット12に入力する。
【0079】
この結果、溶接ビード整形装置41およびその整形方法は、第1実施形態が奏する効果に加え、実際の整形対象物および装置を用いた教示作業を不要とし、溶接ビード整形のための作業量や作業時間を軽減できる。
【0080】
[第3実施形態]
本発明に係る溶接ビード整形装置およびその整形方法の第3実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0081】
図11は、第3実施形態における溶接ビード整形装置51の構成図である。
【0082】
第3実施形態における溶接ビード整形装置51が第1実施形態と異なる点は、溶接用トーチ52をさらに備え、ガウジングのみならず溶接をも行う点である。第1実施形態と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
溶接ビード整形装置51は、スライダ装置11、多関節ロボット12、プラズマガウジング用トーチ13、形状センサ14、画像処理装置16、ロボット制御装置17および溶接用トーチ52を有する。
【0084】
溶接用トーチ52は、多関節ロボット12の多関節機構と、スライダ装置11の上下・水平方向の移動および上下方向軸周りの回転による位置調整により、位置・姿勢が調整される。プラズマガウジング用トーチ13と溶接用トーチ52とは、溶接ビード整形装置51が実施する作業に応じて適宜選択され、使用される。
【0085】
次に、第3実施形態における溶接ビード整形装置51の作用および溶接ビード整形方法について説明する。
【0086】
図12は、第3実施形態の溶接ビード整形装置51により実施される溶接ビード整形前処理を説明するフローチャートである。
【0087】
溶接ビード整形装置51により行われる溶接ビード整形前処理は、ロボット制御装置17により実施される処理工程(工程S41、S42、S48、S49、S55およびS56)と、画像処理装置16により実施される処理工程(工程S43〜S47およびS50〜S54)とに区分される。
【0088】
教示データ記憶工程S41〜形状データ抽出工程S43は、第1実施形態における溶接ビード整形前処理(
図2)の教示データ工程S1〜形状データ抽出工程S3とほぼ同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0089】
変曲点・交点抽出工程S44において、画像処理装置16は、形状データ抽出工程S43で抽出された形状データと指定形状とを画像上で重ね合わせる。画像処理装置16は、形状データと指定形状とが交わる点を交点として抽出する。また、画像処理装置16は、形状データにおける溶接ビードの谷部の頂点を変曲点として抽出する。
【0090】
図13は、溶接ビードの形状データB、指定形状Rおよびクラウン5、バンド6、羽根7表面の関係を説明する説明図である。
【0091】
画像処理装置16は、形状データ抽出工程S43で抽出した形状データBと、指定形状Rとの交点である、交点i1、交点i2、交点i6および交点iNを抽出する。画像処理装置16は、形状データBにおける溶接ビードの谷部の頂点(指定形状Rの中心点Oとは逆方向に凸)を変曲点i3〜変曲点i5、変曲点i(N−1)として抽出する。画像処理装置16は、指定形状Rに対して内側であるか、外側であるかに関わらず谷部の頂点を変曲点として抽出する。
【0092】
このとき抽出した交点および変曲点には、形状データB内でX軸の値が最も小さいものからi1、i2、i3・・・i(N−1)、iN(N:抽出した変曲点および交点の総数)の番号が振り分けられる。
【0093】
モード切替工程S45において、画像処理装置16(モード切替部)は、ガウジングを行うか、溶接を行うかを決定する。具体的には、画像処理装置16は、指定形状と形状データ抽出工程S43で抽出した形状データとを比べる。画像処理装置16は、変曲点が指定形状より外側にある場合、すなわち溶接ビードが指定形状に満たない場合、溶接を行うと決定する。画像処理装置16は、変曲点が指定形状より内側にある場合、すなわち余盛量が十分である場合、ガウジングを行うと決定する。
【0094】
例えば
図13に示す場合、画像処理装置16は、溶接ビード(形状データB)が指定形状に満たない変曲点i3〜変曲点i5が存在するため、溶接を行うと決定する。
【0095】
画像処理装置16は溶接を行うと決定した場合、ねらい位置算出工程S46において、変曲点・交点抽出工程S44で抽出した変曲点の中で、指定形状の外側の変曲点をねらい位置とする。指定形状の外側に変曲点が複数存在する場合、画像処理装置16は、ねらい位置算出工程S46〜ロボット制御工程S49の工程を各変曲点に対して行う。
【0096】
溶接条件算出工程S47において、画像処理装置16は、ねらい位置に溶け込み不良の原因となるオーバーラップ形状にならないように選択された溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ウィービング周波数・振幅を含む溶接条件、ねらい位置およびトーチ姿勢を決定する。画像処理装置16は、算出した溶接条件、ねらい位置、およびトーチ姿勢を溶接教示データとして教示データ記憶装置32に記憶する。
【0097】
溶接用トーチ選択工程S48において、ロボット制御装置17は、多関節ロボット12の先端に取り付けるトーチとして、溶接用トーチ52を選択し切り替える。ロボット制御工程S49において、ロボット制御装置17は、教示データ記憶装置32に記憶された溶接教示データに基づき、多関節ロボット12などの動作および溶接電源を制御して溶接を行う。算出された溶接教示データに基づき溶接が行われた後、再び教示データ記憶工程S41に戻り、再度動作軸制御工程S42〜モード切替工程S45を行う。
【0098】
画像処理装置16は、モード切替工程S45においてガウジングを行うと決定した場合、パスシーケンス選択工程S50へ進む。パスシーケンス選択工程S50〜ガウジング条件算出工程S54は、第1実施形態における溶接ビード整形前処理(
図2)のパスケーシング選択工程S5〜ガウジング条件算出工程S9とほぼ同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0099】
ガウジング用トーチ選択工程S55において、ロボット制御装置17は、多関節ロボット12の先端に取り付けるトーチとして、プラズマガウジング用トーチ13を選択し切り替える。ロボット制御工程S56において、ロボット制御装置17は、教示データ記憶装置32に記憶されたガウジング教示データに基づき、多関節ロボット12などの動作およびガウジング電源を制御してガウジングを行う。
【0100】
このような第3実施形態における溶接ビード整形装置51およびその整形方法は、第1実施形態が奏する効果に加え、ガウジングのみならず余盛が不十分な箇所においては溶接をも行うことができる。このため、溶接ビード整形装置51およびその整形方法は、整形対象物の大きさや構造の複雑さによらずに、自動で高精度な溶接ビードの整形を実現することができる。
【0101】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。