特許第5823337号(P5823337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823337
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】折曲げ式クレーン用高さ制限装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20151105BHJP
【FI】
   B66C23/88 D
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-87610(P2012-87610)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-216432(P2013-216432A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−335889(JP,A)
【文献】 特開平11−217198(JP,A)
【文献】 実開平03−099651(JP,U)
【文献】 特開2000−203792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 − 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベース上に水平回転可能に立設されたコラムと、該コラムの先端に起伏可能に設けられたインナブームと、該インナブームの先端に起伏および伸縮可能に設けられたアウタブームとを備え、前記アウタブームの伸縮機構が複数のブームから構成され、該複数のブームのうち、基端側の第一アウタブームが筒状をなすとともに、該第一アウタブームに沿って第二アウタブームが伸縮可能に内嵌されており、縮小時には当該第二アウタブームの後端が前記第一アウタブームの後端よりも後方に突出する構成となっている折曲げ式クレーンに用いられる高さ制限装置であって、
前記インナブームの対地傾斜角度を検出する第一角度検出器と、前記アウタブームの対地傾斜角度を検出する第二角度検出器と、前記アウタブームの長さを検出するブーム長検出器と、これら3つの検出器の検出情報に基づいて、前記折曲げ式クレーンのブームの高さを制御する高さ制限部とを有し、
前記高さ制限部は、前記3つの検出器の検出情報に基づいて、前記アウタブームを構成する複数のブームのうちの最先端の上部および前記第一アウタブームの後端上部、並びに縮小時における前記第二アウタブームの後端上部および後端下部の4箇所の高さを監視して、該4箇所の監視部のいずれかの高さが、限界となる高さよりも低い所定の高さを超えたときに、警報の出力または前記アウタブームの限界となる高さ側への移動を規制することを特徴とする折曲げ式クレーン用高さ制限装置。
【請求項2】
前記高さ制限部は、前記4箇所の監視部のいずれかの高さが、前記所定の高さとして、所定の制限高さを超えたときには、限界警報を出力し且つ少なくとも前記アウタブームの限界となる高さ側への移動を停止させ、前記所定の制限高さよりも低い予告高さを超えたときには、予告警報を出力することを特徴とする請求項1に記載の折曲げ式クレーン用高さ制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナブームとアウタブームの2つのブームを有する折曲げ式クレーンに用いられる高さ制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の折曲げ式クレーンは、図6に例示する折曲げ式クレーン100のように、シャシフレーム23上に設けられるベース2と、このベース2上に水平回転可能に立設されたコラム3と、このコラム3の先端に起伏可能に設けられたインナブーム4と、このインナブーム4の先端に起伏および伸縮可能に設けられたアウタブーム10とを備えている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、この特許文献1には、アウタブームの伸縮機構を構成する複数のブームのうちの最先端の上部の高さ(以下、単に「アウタブームの先端の高さ」ともいう)を検出し、限界となる高さ(例えば天井や架線等)を超えないようにアウタブームの先端の高さを規制する高さ制限装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−335889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の高さ制限装置は、アウタブームの先端の高さを検出可能なものの、この種の折曲げ式クレーンは、起伏および伸縮可能な一つのブームのみを有するクレーンと比べてブームが複雑な動きをする。つまり、この種の折曲げ式クレーンは、図6に例示するように、インナブーム4、および伸縮可能なアウタブーム10の2つのブーム4,10を備える構造となっている。そのため、2つのブーム4,10の姿勢によっては、アウタブーム10の先端に限らず、アウタブーム10の他の部分であってもアウタブーム10の先端よりも高く位置する場合がある。
【0006】
具体的には、図7に示すように、特許文献1同様に、アウタブーム10の伸縮機構を構成する複数のブームのうちの最先端の上部13fが限界となる高さRに達する場合のほか、図8に示すように、アウタブーム10(第一アウタブーム11)の後端上部11rが限界となる高さRに達する場合がある。
さらに、この種の折曲げ式クレーンでは、アウタブーム10の伸縮構造として、複数のブームの組(この例では、第一から第三アウタブーム11,12,13)によりアウタブーム10が構成される。つまり、このアウタブーム10は、基端部の第一アウタブーム11が筒状をなし、この第一アウタブーム11に他のブーム(この例では、第二および第三アウタブーム12,13)が伸縮可能に内嵌されている。そして、第二アウタブーム12を縮小させたときに、第一アウタブーム11の後端から第二アウタブーム12の後端が突出する構成となっている。
【0007】
そのため、この種の折曲げ式クレーンでは、図9に示すように、縮小時における第二アウタブーム12の後端上部12tが限界となる高さRに達する場合があり、さらには、図10に示すように、縮小時におけるアウタブーム10をインナブーム4側に折曲げた姿勢にあっては、第二アウタブーム12の後端下部12bが限界となる高さRに達する場合もある。このように、特許文献1記載の高さ制限装置は、この種の折曲げ式クレーン用の高さ制限装置として未だ検討の余地が残されている。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、上述したようなインナブームおよびアウタブームの2つのブームを有する折曲げ式クレーンにおいて、アウタブームの如何なる姿勢においてもアウタブームが限界となる高さを超えることを未然に防止または防止するようにオペレータに通知し得る折曲げ式クレーン用高さ制限装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る折曲げ式クレーン用高さ制限装置は、ベースと、該ベース上に水平回転可能に立設されたコラムと、該コラムの先端に起伏可能に設けられたインナブームと、該インナブームの先端に起伏および伸縮可能に設けられたアウタブームとを備え、前記アウタブームの伸縮機構が複数のブームから構成され、該複数のブームのうち、基端側の第一アウタブームが筒状をなすとともに、該第一アウタブームに沿って第二アウタブームが伸縮可能に内嵌されており、縮小時には当該第二アウタブームの後端が前記第一アウタブームの後端よりも後方に突出する構成となっている折曲げ式クレーンに用いられる高さ制限装置であって、前記インナブームの対地傾斜角度を検出する第一角度検出器と、前記アウタブームの対地傾斜角度を検出する第二角度検出器と、前記アウタブームの長さを検出するブーム長検出器と、これら3つの検出器の検出情報に基づいて、前記折曲げ式クレーンのブームの高さを制御する高さ制限部とを有し、前記高さ制限部は、前記3つの検出器の検出情報に基づいて、前記アウタブームを構成する複数のブームのうちの最先端の上部および前記第一アウタブームの後端上部、並びに縮小時における前記第二アウタブームの後端上部および後端下部の4箇所の高さを監視して、該4箇所の監視部のいずれかの高さが、限界となる高さよりも低い所定の高さを超えたときに、警報の出力または前記アウタブームの限界となる高さ側への移動を規制することを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明の一態様に係る折曲げ式クレーン用高さ制限装置において、前記高さ制限部は、前記4箇所の監視部のいずれかの高さが、前記所定の高さとして、所定の制限高さを超えたときには、限界警報を出力し且つ少なくとも前記アウタブームの限界となる高さ側への移動を停止させ、前記所定の制限高さよりも低い予告高さを超えたときには、予告警報を出力することは好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る折曲げ式クレーンの高さ制限装置によれば、インナブームおよびアウタブームの2つのブームを有する折曲げ式クレーンにおいて、インナブームの対地傾斜角度を検出可能な第一角度検出器、アウタブームの対地傾斜角度を検出可能な第二角度検出器、アウタブームの長さを検出可能なブーム長検出器の3つの検出器を備え、高さ制限部は、前記3つの検出器の検出情報に基づいて、アウタブームを構成する複数のブームのうちの最先端の上部および第一アウタブームの後端上部、並びに縮小時における第二アウタブームの後端上部および後端下部の計4箇所を監視し、これら監視部のいずれかが、アウタブームの限界となる高さよりも低い所定の高さを超えたときに、警報の出力またはアウタブームの限界となる高さ側への移動を規制するので、アウタブームの如何なる姿勢においてもアウタブームが限界となる高さを超えることを未然に防止または防止するようにオペレータに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様に係る高さ制限装置を備える折曲げ式クレーンの一実施形態を説明する図である。
図2】コントローラで実行される高さ制限処理のフローチャートである。
図3】高さ制限処理で監視する4箇所の監視部A〜Dを説明するための模式図である。
図4】4箇所の監視部A〜Dの高さh〜hの演算に必要な定数について説明するための模式図である。
図5】4箇所の監視部A〜Dの高さh〜hの演算に必要な変数について説明するための模式図である。
図6】インナブームおよびアウタブームの2つのブームを有する折曲げ式クレーンの一例を説明する図である。
図7】折曲げ式クレーンのアウタブーム(アウタブームを構成する複数のブームのうちの最先端の上部)が制限高さを超える姿勢(第一の例)を説明する図である。
図8】折曲げ式クレーンのアウタブーム(第一アウタブームの後端上部)が制限高さを超える姿勢(第二の例)を説明する図である。
図9】折曲げ式クレーンのアウタブーム(縮小時における第二アウタブームの後端上部)が制限高さを超える姿勢(第三の例)を説明する図である。
図10】折曲げ式クレーンのアウタブーム(縮小時における第二アウタブームの後端下部)が制限高さを超える姿勢(第四の例)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、高さ制限装置以外の折曲げ式クレーン本体については、上記背景技術で説明した折曲げ式クレーンと同様の構成なので、対応する構成には同一の符号を付して説明する。
図1に示すように、この折曲げ式クレーン1は、トラック等の車両20に搭載されるものであり、車両20の運転席21と荷台22との間の位置に搭載される。車両20のシャシフレーム23上にベース2が設けられる。このベース2には、車両20の幅方向に張り出す一対のアウトリガ9が付設されている。
【0014】
そして、このベース2上にコラム3が水平回転可能に立設され、このコラム3の先端に、インナブーム4が枢支されるとともに、第一起伏シリンダ5がコラム3とインナブーム4の略中央を繋いでいる。これにより、インナブーム4は、第一起伏シリンダ5の伸縮駆動によって起伏可能になっている。また、このインナブーム4の先端には、アウタブーム10(後述する第一アウタブーム11)が枢支されるとともに、起伏リンク機構7を介して上記インナブーム4に繋がれている。さらに、インナブーム4の略中央と起伏リンク機構7とが第二起伏シリンダ6によって繋がれている。これにより、アウタブーム10は、第二起伏シリンダ6の伸縮駆動によって起伏可能になっている。
【0015】
さらに、このアウタブーム10は伸縮構造を有している。つまり、このアウタブーム10は、複数のブーム(この例では、第一から第三アウタブーム11,12,13)により構成されている。そして、このアウタブーム10は、基端部の第一アウタブーム11が筒状をなし、この第一アウタブーム11に第二アウタブーム12が内嵌され、さらに、第二アウタブーム12に第三アウタブーム13が内嵌されている。そして、各ブーム相互が、伸縮用シリンダ8によって伸縮可能に連結されている。
【0016】
この例では、伸縮用シリンダ8は、そのシリンダチューブの両端が伸縮ロッドになっており、一端(同図の左端)の伸縮ロッドの先端が第一アウタブーム11の後端に固定され、シリンダチューブが第二アウタブーム12の先端に固定され、さらに、他端(同図の右端)の伸縮ロッドの先端が第三アウタブーム13の先端に固定されている。これにより、このアウタブーム10は、伸縮用シリンダ8を縮小側に駆動して第二アウタブーム12を縮小させたときに、第一アウタブーム11の後端から第二アウタブーム12の後端が突出する構成となっている。なお、上記説明したインナブーム4およびアウタブーム10の各クレーン動作の操作は、ベース2近傍に設けられた操作器(入力装置)によって操作が可能になっている。
【0017】
ここで、この折曲げ式クレーン1は、図1に示すように、インナブーム4には、インナブーム4の対地傾斜角度を検出する第一角度検出器31が付設されている。また、アウタブーム10には、アウタブーム10の対地傾斜角度を検出する第二角度検出器32が付設されている。これら角度検出器としては、振り子式傾斜角センサ(対地角センサ)が好適である。具体的には、例えば株式会社緑測器製の型番WR−7UH相当品等を採用することができる。
【0018】
さらに、アウタブーム10には、アウタブーム10の長さを検出することのできるブーム長検出器33が付設されている。そして、ベース2内には、この折曲げ式クレーン1のアウタブーム10の高さを制御する高さ制限部としてコントローラ30を備えている。このコントローラ30は、上記3つの検出器31,32,33からの信号(検出情報)に基づいて、アウタブーム10の所定の4箇所の位置を演算可能である(後述する)。そして、その演算の結果から、アウタブーム10が制限高さを超えることを未然に防止、および防止するようにオペレータに通知するようになっている。
【0019】
以下、このコントローラ30について詳しく説明する。
コントローラ30は、ベース2内に備えられ、所定の制御プログラムに基づいて、以下いずれも図示しない、CPUと、所定領域に予めCPUの制御プログラム等を格納しているROMと、ROM等から読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAMとをコントローラ30内に備えるとともに、上記3つの検出器31,32,33や、警報用のブザー(音声警報装置)、高さ制限設定の表示灯、警告灯、高さ制限の設定解除スイッチ、および高さ制限の警報解除スイッチ等を有している。
【0020】
次に、このコントローラ30で実行される高さ制限処理について図2図5を適宜参照しつつ説明する。
この高さ制限処理のプログラムは、タイマ割り込み処理となっており、プログラムが開始されると、図2に示すように、まず、ステップS1に移行して、上記3つの検出器31,32,33からの検出情報を読み込んでステップS2に移行する。
【0021】
ステップS2では、上記3つの検出器31,32,33の検出情報に基づいて、アウタブーム10の4箇所の所定の監視部A〜Dを監視するために、アウタブーム10を構成する複数のブーム11,12,13のうち最先端に位置する第三アウタブーム13の先端上部13fの高さhおよび第一アウタブームの後端上部11rの高さh、並びに第二アウタブーム12の後端上部12tの高さhおよび後端下部12bの高さhの4箇所の高さをそれぞれ演算してステップS3に移行する。
【0022】
ここで、上記4箇所の監視部A〜Dの各高さh〜hの演算内容について詳しく説明する。
図3に模式図を示すように、アウタブーム10の4箇所の監視部A〜Dには、上述した図7図10に示す各部位13f、11r、12t、12bがそれぞれ対応している。つまり、アウタブーム10のうち最も先端のブームである第三アウタブーム13の最先端の上面の一点をアウタブーム10の先端上部13fの中央の一点(監視部A)として監視する。また、アウタブーム10のうち基端部のブームである第一アウタブーム11の最基端の上面の一点をアウタブーム10の後端上部11rの中央の一点(監視部B)として監視する。
【0023】
さらに、このアウタブーム10の伸縮構造として、第一アウタブーム11に内嵌される第二アウタブーム12について、この第二アウタブーム12を縮小させたときには、図9に示したように、第一アウタブーム11の後端から第二アウタブーム12の後端が突出する構造であるため、この第二アウタブーム12の後端上部12tの中央の一点(監視部C)を監視する。また、図10に示したように、アウタブーム10をインナブーム4側に折曲げた姿勢にあっては、第二アウタブーム12の後端下部12bが制限高さRに達する場合もあるため、この後端下部12bの中央の一点(監視部D)を監視する。
【0024】
そして、上述した各監視部A〜Dの高さh〜hを演算するために、図3に示すように、コラム3にインナブーム4を枢支するピンをインナブーム枢支ピン14とし、インナブーム4にアウタブーム10を枢支するピンをアウタブーム枢支ピン15として、これら枢支ピン14、15の地面からの鉛直方向高さをそれぞれ図4のh,hとし、監視部A〜Dの地面からの鉛直方向高さをそれぞれh〜hとして、これらを基にして高さ制限の制御を行う。
【0025】
図4にこの演算に使用する定数の定義を示す。なお、以下の説明で、「最縮時」とは、アウタブーム10の第二アウタブーム12が最も縮小されたときを意味し、「長尺方向」とは、アウタブーム10の長尺方向での長さを意味する。また、「オフセット長さ」とは、「長尺方向」に対して直交する方向での長さを意味する。
【0026】
ここで、同図において、Lは、インナブーム枢支ピン14からアウタブーム枢支ピン15間の距離、
は、最縮時における監視部Aのアウタブーム枢支ピン15からの長尺方向長さ、
は、監視部Bのアウタブーム枢支ピン15からの長尺方向長さ、
は、最縮時における監視部Cのアウタブーム枢支ピン15からの長尺方向長さ、
は、最縮時における監視部Dのアウタブーム枢支ピン15からの長尺方向長さ、
は、監視部Aのアウタブーム枢支ピン15とのオフセット長さ、
は、監視部Bのアウタブーム枢支ピン15とのオフセット長さ、
は、監視部Cのアウタブーム枢支ピン15とのオフセット長さ、
は、監視部Dのアウタブーム枢支ピン15とのオフセット長さ、
outは、接地面に対するアウトリガ上面の高さ、
columnは、アウトリガ上面に対するインナブーム枢支ピン14の高さ、である。
【0027】
また、図5に、この演算に使用する変数の定義を示す。なお、以下の変数のうち、θは上記第一角度検出器31によって計測し、θは上記第二角度検出器32によって計測し、dは上記ブーム長検出器33によって計測される値(検出情報)である。すなわち、同図において、θは、インナブーム4と水平面とのなす角度(対地角)、
θは、アウタブーム10と水平面とのなす角度(対地角)、
は、監視部Aのアウタブーム枢支ピン15との長尺方向における距離、
は、監視部Cのアウタブーム枢支ピン15との長尺方向における距離であり、
=L+L−d (式1)
また、d4は、監視部Dのアウタブーム枢支ピン15との長尺方向における距離であり、
=L+L−d (式2)
【0028】
以上の定義に基づき4箇所の監視部A〜Dの高さh〜hを表す式は以下の(式3)から(式8)となる。
=Hout+Hcolumn (式3)
=h+Lsinθ (式4)
=h+dsinθ+Dcosθ (式5)
=h−Lsinθ+Dcosθ (式6)
=h−dsinθ+Dcosθ (式7)
=h−dsinθ−Dcosθ (式8)
【0029】
そして、上記(式5)〜(式8)を展開すると、以下の(式9)から(式12)となる。
=Hout+Hcolumn+Lsinθ+dsinθ+Dcosθ
(式9)
=Hout+Hcolumn+Lsinθ−Lsinθ+Dcosθ
(式10)
=Hout+Hcolumn+Lsinθ−(L+L−d)sinθ+Dcosθ (式11)
=Hout+Hcolumn+Lsinθ−(L+L4−d)sinθ−Dcosθ (式12)
以上により、4箇所の監視部A〜Dの高さh〜hが求められる。
【0030】
次いで、ステップS3に移行して、上記演算で求めた監視部A〜Dの高さh〜hのうち最高地点の高さである最大値hmaxを抽出してステップS4に移行する。ステップS4では、最高地点の高さの上昇率Vとして最大値hmaxとこの最大値hmaxよりも所定時間だけ前に抽出された最大値hmaxである最大値hmax oldとの差を求める(以下の式13)。
=hmax−hmax old (式13)、
続くステップS5では、現時点の最大値hmaxを、所定時間だけ前に抽出された最大値hmax oldと入れ替える処理をしてステップS6に移行する。
【0031】
ステップS6では、最大値hmaxが、限界となる高さRよりも低い所定の高さである予告高さ(第一の所定の高さ)Hpreを超えているか否か、あるいは最高地点の高さの上昇率Vhに定数Nを乗じた値を最大値hmaxに加えた値が予告高さHpreを超えているか否かを判定する。つまり、最大値hmaxが、予告高さHpreを超えていれば(Yes)または最高地点の高さの上昇率Vに定数Nを乗じた値を最大値hmaxに加えた値が予告高さHpreを超えていればステップS7に移行し、そうでなければ(No)ステップS12に移行する。
【0032】
ステップS7では、上記最大値hmaxが、上記限界となる高さRよりも低い所定の高さであって且つ上記予告高さよりも高い制限高さ(第二の所定の高さ)Hlimを超えているか否か、あるいは最高地点の高さの上昇率Vに定数Nを乗じた値を最大値hmaxに加えた値が制限高さHlimを超えているか否かを判定する。つまり、最大値hmaxが、制限高さHlimを超えていれば(Yes)または最高地点の高さの上昇率Vに定数Nを乗じた値を最大値hmaxに加えた値が制限高さHlimを超えていればステップS8に移行し、そうでなければ(No)ステップS11に移行する。
【0033】
ステップS8では、コントローラ30の警報解除スイッチによる警報解除が入力されたか否かを判断する。つまり、警報解除が入力されていなければ(OFF)ステップS9に移行し、警報解除が入力されていれば(ON)ステップS10に移行する。
ステップS9では、限界警報を「ON」として処理をステップS1に戻す。限界警報をONとすることで、ブザー(音声警報装置)を連続鳴動させるとともにクレーンの停止命令を出力し、アウタブームの限界となる高さ側への移動を停止させる。なお、この停止動作においては、不図示の油圧回路のアンロード弁を作動させて、上記2つのブーム4,10を動作させるアクチュエータ(第一起伏シリンダ5、第二起伏シリンダ6および伸縮用シリンダ8)を停止させている。
【0034】
ステップS10では、限界警報を解除して処理をステップS1に戻す。
ステップS11では、予告警報を「ON」として処理をステップS1に戻す。予告警報を「ON」とすることで、ブザーを断続的に鳴動させる。また、ステップS12では、予告警報を解除して処理をステップS1に戻す。ここで、本実施形態の例では、予告警報時には、クレーンの動作自体には規制をかけないが、予告警報時に、例えばクレーン動作をゆっくり動作させるような作動速度制御処理を施してもよい。
【0035】
なお、本実施形態においては、上記予告高さ(第一の所定の高さ)Hpreは、上記制限高さ(第二の所定の高さ)Hlimよりも0.2m低く設定しており、制限高さ(第二の所定の高さ)Hlimは、限界となる高さRよりも僅かに低い高さとして、4.0mに設定した。これら所定の高さの設定値は、上記コントローラ30からの数値入力の操作によって設定変更可能である。
【0036】
次に、上記高さ制限装置の作用・効果について説明する。
上述の折曲げ式クレーン1の高さ制限装置によれば、インナブーム4およびアウタブーム10の2つのブーム4,10を有する折曲げ式クレーン1において、インナブーム4の対地傾斜角度を検出可能な第一角度検出器31、アウタブーム10の対地傾斜角度を検出可能な第二角度検出器32、アウタブーム10の長さを検出可能なブーム長検出器33の3つの検出器31,32,33を備え、コントローラ30は、前記3つの検出器31,32,33の検出情報θ、θ、dに基づいて、アウタブーム10の先端上部13f(監視部A)および後端上部11r(監視部B)、並びに第二アウタブーム12の後端上部12t(監視部C)および後端下部12b(監視部D)の計4箇所の高さh〜hを監視し、これら監視部A〜Dの高さh〜hのいずれかが、アウタブーム10の限界となる高さRよりも低い所定の高さ(所定の制限高さHlim、予告高さHpre)を超えたときに、警報(限界警報、予告警報)の出力またはアウタブーム10の限界となる高さR側への移動を規制(限界警報時のクレーン停止)するので、アウタブーム10が如何なる姿勢においてもアウタブーム10が限界となる高さRを超えることを未然に防止または防止するようにオペレータに通知することができる。
【0037】
特に、この高さ制限装置においては、コントローラ30は、4箇所の監視部A〜Dのいずれかの高さh〜hが、所定の制限高さHlimを超えたときには、限界警報を出力し且つアウタブーム10の限界となる高さR側への移動を停止させ、所定の制限高さHlimよりも低い予告高さHpreを超えたときには、予告警報を出力するので、予告警報によりオペレータに予め通知可能であり、その後も限界となる高さR側への移動がなされてもアウタブーム10が限界となる高さRを超えることを未然に防止可能な二段階の制御がなされる。よって、如何なる姿勢においてもアウタブーム10が限界となる高さRを超えることを未然に防止または防止するようにオペレータに通知する上で好適である。
【0038】
なお、本発明の一態様に係る折曲げ式クレーン用高さ制限装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、コントローラ30が、アウタブーム10が限界となる高さRを超えることを未然に防止する制御を行う例を中心に説明したが、高さの監視に限定されず、更に演算ポイントを増やすことで、アウタブーム10と地面との接触回避をもさせることも可能である。
【0039】
また、上記コントローラ30は、3つの検出器31,32,33からの信号(検出情報)により、アウタブーム10の所定の4箇所の位置を認識し、アウタブーム10が限界となる高さを超えることを未然に防止および防止するようにオペレータに通知する例で説明したが、これに限らず、例えば上記予告警報については発令せずに、限界警報を出力し且つアウタブーム10の限界となる高さ側への移動を停止させることによっても、アウタブーム10が限界となる高さを超えることを未然に防止可能である。また、予告警報に限って発令をする仕様としてもよい。この場合には、アウタブーム10が限界となる高さを超えることを未然に防止するようにオペレータに通知することができる。
【0040】
しかし、アウタブーム10が如何なる姿勢においてもアウタブーム10が限界となる高さRを超えることを未然に防止および防止するようにオペレータに通知する上では、上記実施形態で説明したように、所定の高さとして、所定の制限高さを超えたときには、限界警報を出力し且つ少なくともアウタブームの限界となる高さ側への移動を停止させるとともに、所定の制限高さよりも低い予告高さを超えたときには、予告警報を出力する構成とすることは好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 折曲げ式クレーン
2 ベース
3 コラム
4 インナブーム
5 第一起伏シリンダ
6 第二起伏シリンダ
7 起伏リンク機構
8 伸縮用シリンダ
9 アウトリガ
10 アウタブーム
11 第一アウタブーム
12 第二アウタブーム
13 第三アウタブーム
14 インナブーム枢支ピン
15 アウタブーム枢支ピン
20 車両
21 運転席
22 荷台
23 シャシフレーム
30 コントローラ(高さ制限部)
31 第一角度検出器
32 第二角度検出器
33 ブーム長検出器
R 高さ制限対象(限界となる高さ)
図1
図2
図3
図4
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図10