(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラズマガンが、前記反応室内に収容された前記基材を間に挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ配置され、該基材を間に挟んだ一方側に配置された該プラズマガンが、該基材の表面のうち、該一方側に配置されたプラズマガンと対応する一方の面の一部に向かって、前記成膜用プラズマを吹き出すと共に、該プラズマガンの成膜用プラズマ吹出部分が、前記移動手段によって、該基材の表面の一方の面に対して接近する方向と離隔する方向とに変位するように、該成膜用プラズマの吹出方向に移動させられるようになっている一方、該基材を間に挟んだ他方側に配置された該プラズマガンが、該基材の表面のうち、該他方側に配置されたプラズマガンと対応する他方の面の一部に向かって、該成膜用プラズマを吹き出すと共に、該プラズマガンの成膜用プラズマ吹出部分が、前記移動手段によって、該基材の表面の他方の面に対して接近する方向と離隔する方向とに変位するように、該成膜用プラズマの吹出方向に移動させられるようになっている請求項1又は請求項2に記載のプラズマCVD装置。
前記搬送手段にて搬送される前記基材の表面の形状を検出して、該基材表面の形状データを含む検出信号を出力する形状検出手段が、前記プラズマガンの前記成膜用プラズマ吹出部分の配置位置よりも、該搬送手段による前記基材の搬送方向の上流側に配置されていると共に、前記制御手段が、該形状検出手段の検出信号に基づいて、前記移動手段による該プラズマガンの移動方向と移動距離とを制御するようになっている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載のプラズマCVD装置。
前記基材が通過可能な連通口を通じて、前記反応室と連通する、該基材を収容可能な検出室と、該連通口を開閉し得るように構成されて、該連通口の閉鎖により該反応室と該検出室とを気密に遮断するシャッタ部材と、前記基材を、該検出室から該反応室内に、該連通孔を通じて移送する移送手段とが、更に設けられていると共に、前記形状検出手段が、該検出室内に配置されている請求項4に記載のプラズマCVD装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の材質からなる基材の表面上に薄膜を形成する手法の一つとして、プラズマを利用するプラズマCVD法が知られている。そして、このプラズマCVD法を実施して、基板表面に薄膜状のプラズマCVD膜を形成する装置も、様々な構造のものがある。例えば、特開2009−120881号公報(特許文献1)等に開示される平行平板型のプラズマCVD装置や、特開2005−248327号公報等に明らかにされる誘導結合型のプラズマCVD装置等が、それである。
【0003】
よく知られているように、平行平板型のプラズマCVD装置は、基板が収容される反応室と、かかる反応室内に、互いに平行に延びるように対向配置された一対の平板状のプラズマ発生電極とを有して、構成されている。一方、誘導結合型のプラズマCVD装置は、基板が収容される反応室と、その反応室の外部に配置された高周波誘導用のアンテナとを有して、構成されている。そして、それら平行平板型のプラズマCVD装置と誘導結合型のプラズマCVD装置は、成膜用ガスが反応室内に供給された状態下で、一対のプラズマ発生電極間や高周波誘導用のアンテナに高周波電源からの電力を印加することにより、反応室内で、成膜用ガスに含まれる原料ガスのプラズマと反応ガスのプラズマを発生させ、更に、それらのプラズマを反応させることで、所定の生成物を生成し、それを基板の表面上に堆積させることによって、かかる生成物からなるプラズマCVD膜を積層形成するようになっている。
【0004】
このような平行平板型のプラズマCVD装置と誘導結合型のプラズマCVD装置にあっては、プラズマ化された成膜用ガス(原料ガスと反応ガス)が、反応室内の全体に分散するため、プラズマCVD膜を、大面積の基板の表面の全体に対して、一度の成膜工程で一挙に積層形成することができるといった利点がある。しかしながら、その反面、成膜用ガスのプラズマのプラズマCVD法による反応によって生成された生成物が、反応室の内面や、反応室内に配置された電極、或いは基板を支持する支持部材等に付着することが避けられず、それ故、基板表面へのプラズマCVD膜の形成操作の後に、支持部材等の付着した生成物を除去するための余分な作業を行う必要があった。
【0005】
かかる状況下、例えば、特開2001−220680号公報(特許文献3)には、基板表面以外の生成物(プラズマCVD膜)の付着を抑制可能なプラズマCVD装置が、明らかにされている。
【0006】
このプラズマCVD装置は、基材を収容する反応室と、プラズマを生成するプラズマ生成部と、プラズマ生成部で生成したプラズマを反応室内に吹き出させる吹出口とを有して、構成されている。このようなプラズマCVD装置を用いて、基材の表面にプラズマCVD膜を形成する際には、例えば、先ず、基材を収容する反応室内を真空状態とする一方、アルゴンガス等の不活性ガスや、プラズマ状態で成膜用ガスと反応しないガスをプラズマ生成部に導入して、プラズマ生成部でプラズマを生成する。そして、かかるプラズマを、プラズマ生成部から吹出口を通じて、真空状態とされた反応室内に吹き出させる一方、プラズマCVD膜を形成するための原料ガスや反応ガスを含む成膜用ガスを、吹出口から吹き出されるプラズマに吹き付けて、かかる成膜用ガスをプラズマに接触させる。これにより、成膜用ガスがプラズマ化した成膜用プラズマを生成して、この成膜用プラズマを、吹出口からのプラズマの吹出圧力にて、基材の表面に向かって吹き出させると共に、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応を生じさせる。そうして、そのような反応により生成した生成物を基材の表面上に堆積させて、基材表面にプラズマCVD膜を積層形成するのである。
【0007】
また、かかるプラズマCVD装置を用いて、プラズマCVD膜を形成する際には、不活性ガスや成膜用ガスと反応しないガスに代えて、成膜用ガスに含まれる一部のガス成分を、プラズマ生成部に導入する場合もある。この場合には、成膜用ガスに含まれる一部のガス成分を、プラズマ生成部にてプラズマ化して、かかるプラズマを、プラズマ生成部から吹出口を通じて反応室内に吹き出させる一方、成膜用ガスに含まれる他のガス成分を、吹出口から吹き出されるプラズマに吹き付けて、接触させる。これにより、成膜用ガスに含まれる全てのガス成分をプラズマ化して、成膜用プラズマを生成する。そして、そのような成膜用プラズマを、吹出口からのプラズマの吹出圧力にて、基材の表面に向かって吹き出させると共に、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応を生じさせる。以て、反応室内の基材の表面上にプラズマCVD膜を形成するのである。
【0008】
このように、前記公報に開示される従来のプラズマCVD装置は、吹出口を通じて、プラズマ生成部から反応室内に吹き出されるプラズマ(不活性ガスや成膜用ガスと反応しないガスのプラズマ、或いは成膜用ガスに含まれるガス成分のプラズマ等)を利用して、反応室内に収容される基材の表面上に、プラズマCVD膜を形成するようになっている。そして、そのようなプラズマCVD装置では、成膜用プラズマが基板表面に向かって吹き出されるため、成膜用ガスのプラズマの反応室内全体への分散が有利に抑制されて、プラズマCVD法による反応により生成した生成物が、基板表面に集中的に堆積するようになる。その結果、反応室の内面や基板を支持する支持部材等への生成物の付着が可及的に防止され得ることとなるのである。
【0009】
ところが、かくの如き構造とされた、プラズマ生成部からプラズマを吹き出させる、所謂プラズマ吹出型プラズマCVD装置では、基材表面への成膜用プラズマの吹出範囲が限られたものとなるため、プラズマCVD膜を、大面積の基板の表面の全体に均一な厚さで形成することが困難であった。そのような欠点を解消するには、成膜用プラズマが基材表面の全体に均一に吹き付けられるように、基材を反応室内で搬送するための構造を、従来のプラズマCVD装置に付与することが考えられる。しかしながら、たとえ、そのような構造を従来のプラズマCVD装置に付与したとしても、基材表面に、高品質のプラズマCVD膜を安定して形成することが難しかった。
【0010】
すなわち、従来のプラズマ吹出型プラズマCVD装置では、一般に、プラズマ生成部の吹出口と、かかる吹出口から吹き出されるプラズマに対して、成膜用ガスの少なくとも一部のガス成分を吹き付ける吹付口とが、基材表面から所定距離だけ隔てた位置に、それぞれ固定的に配置されて、成膜用プラズマが、反応室内の予め設定された高さ位置から、基材表面に向かって吹き出されるようになっている。それ故、そのようなプラズマCVD装置に対して、基材を搬送させるための構造を付与したとしても、基材の表面が、平坦面ではなく、例えば、凸状乃至は凹状湾曲面とされている場合や、基材表面の一部に凹部や凸部が設けられている場合には、反応室内での成膜用プラズマの吹出位置から基材表面までの距離にバラツキが生ずることが避けられなかった。そして、それによって、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応生成物の基材表面への堆積量にもバラツキが発生し、その結果、基材表面のプラズマCVD膜の厚さが不均一なものとなってしまう可能性があったのである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0023】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有するプラズマCVD装置を用いて得られた樹脂製品として、自動車のリヤウインドウ用の樹脂ガラス10が、その部分縦断面形態において示されている。かかる
図1から明らかなように、樹脂ガラス10は、基材としての基板12を有している。この基板12は、ポリカーボネートを用いて射出成形された透明な樹脂成形品からなり、湾曲板状形態を有している。即ち、基板12の表面のうちの厚さ方向一方の表側面14(
図1での上面)が、
図1において上方に向かって凸となる凸状湾曲面とされている一方、厚さ方向他方の裏側面16(
図1での下面)が、
図1において下方に向かって凹陥する凹状湾曲面とされている。なお、基板12は、射出成形以外の手法で成形されたものであっても良い。
【0024】
そして、かかる基板12の表側面14と裏側面16には、アンダーコート層18が、それぞれ積層形成されている。また、基板12の表側面14に形成されたアンダーコート層18上と、裏側面16に形成されたアンダーコート層18上とには、トップコート層20が、それぞれ積層形成されている。なお、
図1においては、樹脂ガラス10の積層構造の理解を容易とするために、アンダーコート層18の厚さとトップコート層20の厚さとが、基板12の厚さに比して、実際よりも大きな寸法で、誇張して示されていることが理解されるべきである。
【0025】
アンダーコート層18は、樹脂ガラス10に対して、紫外線耐性等に基づいた耐候性を付与すること等を目的として、基板12の表側面14と裏側面16とに対して、それらの全面を被覆するように、それぞれ直接に積層形成されるもので、薄膜形態を呈している。このようなアンダーコート層18は、一般に、液状のアクリル樹脂やポリウレタン樹脂を基板12の表側及び裏側面14,16上に塗布して、塗膜を成膜した後、加熱操作や紫外線照射を行って、かかる塗膜を硬化させることにより形成される。なお、かかるアンダーコート層18は、形成工程の簡略化や迅速化、更には形成に要する設備コストの低減等を図る上において、紫外線硬化膜にて構成されていることが、望ましい。また、アンダーコート層18は、耐候性を有するものであれば、上記例示以外の樹脂材料や硬化手法を採用して、形成することもできる。更に、かかるアンダーコート層18は、単層構造であっても、複数層が積層された複層構造であっても良い。
【0026】
トップコート層20は、樹脂ガラス10に対して、耐摩傷性(耐摩耗性と耐擦傷性)を付与するために、基板12の表側面14上と裏側面16上にそれぞれ形成されたアンダーコート層18,18の基板12側とは反対側の面に対して、それぞれの全面を覆うように積層形成されるもので、薄膜形態を呈している。そして、ここでは、かかるトップコート層20が、優れた耐摩傷性を発揮するSiO
2のプラズマCVD膜にて構成されている。なお、トップコート層20の形成材料は、樹脂ガラス10に対して十分な耐摩傷性を付与し得るものであれば、特に限定されるものではないものの、一般に、SiO
2の他、SiON やSi
3N
4 等の珪素化合物が用いられる。また、トップコート層20は、単層構造であっても、複数層が積層された複層構造であっても良い。
【0027】
そして、かくの如き優れた特徴を有する樹脂ガラス10は、例えば、ポリカーボネート製の基板12の表側面14上と裏側面16上とにアンダーコート層18をそれぞれ形成して、中間製品22(
図2参照)を作製し、その後、この中間製品22の各アンダーコート層18上にトップコート層20をそれぞれ形成することで作製されるが、それらのトップコート層20,20の形成に際して、本発明に従う構造を有するプラズマCVD装置が有利に用いられるのである。
【0028】
図2及び
図3には、本発明に従う構造を有するプラズマCVD装置の一実施形態が、その縦断面形態と横断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それら
図2及び
図3から明らかなように、本実施形態のプラズマCVD装置24は、真空チャンバ26を有している。また、真空チャンバ26には、プラズマCVD膜からなるトップコート層20を形成するための成膜用ガスのプラズマからなる成膜用プラズマを吹き出すプラズマガン28が、複数個(ここでは、6個)配設されている。そして、かかるプラズマCVD装置24にあっては、複数のプラズマガン28から吹き出される成膜用プラズマを利用して、真空チャンバ26に収容された中間製品22のアンダーコート層18,18上に、プラズマCVD膜からなるトップコート層20をそれぞれ積層形成するようになっているのである。
【0029】
より具体的には、真空チャンバ26は、全体として、長手の矩形形状を呈する筐体からなり、上側底壁部30と下側底壁部32と四つの側壁部34a,34b,34c,34dとを一体的に有している。この真空チャンバ26の四つの側壁部34a,34b,34c,34dのうち、真空チャンバ26の長手方向(
図2及び
図3の左右方向)に対向する二つの側壁部34a,34bには、それらを厚さ方向に貫通する透孔36a,36bが、それぞれ形成されている。それらの透孔36a,36bは、中間製品22が通過可能な同一の大きさを有している。また、下側底壁部32は、真空チャンバ26の外側に向かって、真空チャンバ26の長手方向に延びる延長壁部33,33を、それぞれ一体的に有している。
【0030】
真空チャンバ26の長手方向の中間部には、真空チャンバ26の内側空間を長手方向に二つに仕切る仕切壁38が、二つの側壁部34a,34bと所定距離を隔てて対向位置するように一体形成されている。そして、かかる仕切壁38にて真空チャンバ26内に画成された二つの空間のうちの一方が、反応室40とされている一方、それらのうちの他方が、検出室42とされている。これら反応室40と検出室42は、仕切壁38に設けられた連通孔44を通じて、互いに連通している。また、検出室42は、側壁部34aに設けられた透孔36aを通じて、真空チャンバ26外に連通している。一方、反応室40は、側壁部34bに設けられた透孔36bを通じて、真空チャンバ26外に連通している。なお、反応室40と検出室42は、何れも、中間製品22を収容可能な大きさを有し、また、仕切壁38の連通孔44と側壁部34a,34bの透孔36a,36bは、何れも、中間製品22が通過可能な大きさを有している。
【0031】
そして、反応室40と検出室42とを真空チャンバ26外に連通する二つの透孔36a,36bは、開閉シャッタ46a,46bにて、それぞれ開閉可能とされている。
【0032】
すなわち、二つの側壁部34a,34bの外面上には、開閉シャッタ46a,46bが、側壁部34a,34bの外面と接触して、それぞれ配置されている。それらの開閉シャッタ46a,46bは、何れも、透孔36a,36bを閉鎖可能な大きさを有している。また、側壁部34a,34bの外面には、透孔36a,36bを間に挟んだ真空チャンバ26の幅方向(
図2の紙面に垂直な方向で、
図3の上下方向)両側に、案内溝48が、底面を互いに対向させて上下方向に延びるように、それぞれ設けられている。また、側壁部34a,34bの上方には、上下方向に突出乃至引込作動するピストンロッド50を備えた油圧シリンダ52が、一つずつ設置されている。そして、開閉シャッタ46a,46bのそれぞれが、幅方向両端部において、側壁部34a,34bの外面側に各々設けられた二つの案内溝48,48内に遊嵌されていると共に、上端部において、油圧シリンダ52のピストンロッド50に固定されている。
【0033】
かくして、各油圧シリンダ52によるピストンロッド50の引込乃至突出作動に伴って、開閉シャッタ46a,46bが、それぞれ、二つの案内溝48,48に案内されつつ、上下動し、それによって、側壁部34a,34bの透孔36a,36bが開閉させられるようになっている。そして、そのような開閉シャッタ46a,46bによる透孔36a,36bの閉鎖により、真空チャンバ26内が、外部から気密に遮断されるようになっているのである。
【0034】
一方、仕切壁38に設けられた連通孔44も、開閉シャッタ46cにて開閉可能とされている。即ち、真空チャンバ26の幅方向両側に位置する連通孔44の内周面部分には、上下方向に延びる案内溝48,48が設けられている。また、仕切壁38の上端部には、連通孔44を上方に向かって開口させる挿通孔54が設けられている。そして、開閉シャッタ46cが、かかる挿通孔54内に挿通されて、幅方向両端部を案内溝48,48内に遊嵌させた状態で配置されている。また、仕切壁38の上方には、上下方向に突出乃至引込作動するピストンロッド50を備えた油圧シリンダ52が設置され、この油圧シリンダ52のピストンロッド50の先端部に、開閉シャッタ46cの上端部が固定されている。
【0035】
これにより、各油圧シリンダ52によるピストンロッド50の引込乃至突出作動に伴って、連通孔44の開閉シャッタ46cによる開閉が行われるようになっている。そして、そのような開閉シャッタ46cによる連通孔44の閉鎖によって、反応室40と検出室42とが、互いに気密に遮断されるようになっている。
【0036】
また、真空チャンバ26の上側底壁部30には、検出室42内と真空チャンバ26外に向かってそれぞれ開口する排気パイプ56aと、反応室40内と真空チャンバ26外に向かって開口する排気パイプ56bとが、それぞれ設けられている。それら二つの排気パイプ56a,56bには、その途中に、真空ポンプ(図示せず)が、それぞれ設けられている。なお、二つの排気パイプ56a,56bに設けられた二つの真空ポンプは、互いに独立して作動するようになっている。
【0037】
かくして、かかる真空チャンバ26においては、開閉シャッタ46a,46cによる透孔36aと連通孔44の閉鎖によって、検出室42が、真空チャンバ26外及び反応室40と気密に遮断された状態で、排気パイプ56a上の真空ポンプを作動させることにより、検出室42内が、減圧されて、所定の真空度を有する真空状態とされるようになっている。また、開閉シャッタ46b,46cによる透孔36bと連通孔44の閉鎖によって、反応室40が、真空チャンバ26外及び検出室42と気密に遮断された状態で、排気パイプ56b上の真空ポンプを作動させることにより、反応室40内が、減圧されて、所定の真空度を有する真空状態とされるようになっている。即ち、ここでは、反応室40と検出室42とが、互いに独立して、真空状態とされ得るようになっているのである。
【0038】
また、真空チャンバ26の検出室42と反応室40のそれぞれの内部と、真空チャンバ26を間に挟んだ真空チャンバ26の長手方向両側には、中間製品22を水平方向に搬送する搬送手段としての搬送装置58が、それぞれ、一つずつ直列的に並んで設置されている。それら四つの搬送装置58,58,58,58は、何れも同一の基本構造を有している。
【0039】
すなわち、搬送装置58は、支持壁部60を有している。この支持壁部60は、真空チャンバ26の下側底壁部32や延長壁部33に対して、鉛直上方に突出し、且つ真空チャンバ26の長手方向に真っ直ぐに延びる厚肉平板形態を有して、一体的に立設されている。また、かかる支持壁部60の厚さ方向一方の面の上部部位には、ガイドレール62が一体形成されている。このガイドレール62は、支持壁部60の厚さ方向一方の面から一定の高さで水平方向に突出し、且つ支持壁部60の延出方向(真空チャンバ26の長手方向)に連続して水平に延びる突条形態を有している。
【0040】
支持壁部60のガイドレール62形成面におけるガイドレール62の延出方向両端部には、プーリ64が、ガイドレール62の直下に位置するように、それぞれ一つずつ配設されている。そして、それら二つのプーリ64,64間には、無端の搬送ベルト66が架け渡されている。また、図示されてはいないものの、搬送ベルト66の周上の一箇所には、係合突起が、一体的に突設されている。
【0041】
一方、支持壁部60のガイドレール62形成面とは反対側の面には、電動モータ68が固設されている。この電動モータ66は、真空チャンバ26の外部に設置された第一コントローラ70に対して電気的に接続されており、かかる第一コントローラ70による駆動制御により、任意の方向に所望の量だけ回転駆動するようになっている。そして、電動モータ68の駆動軸(図示せず)が、支持壁部60を貫通して、プーリ64の配設側の面に突出していると共に、かかる駆動軸の突出先端部に対して、二つのプーリ64,64のうちの一方が、固定されている。
【0042】
これにより、第一コントローラ70による駆動制御の下での電動モータ68の回転駆動に伴って、搬送ベルト66が、任意の方向に、所望の量だけ走行するようになっている。そして、ここでは、搬送ベルト66が、係合突起を、上方に突出させた状態で、支持壁部60におけるガイドレール62の延出方向の一端部から他端部までの可動範囲内で往復移動させながら走行するようになっている。なお、このような第一コントローラ70による電動モータ68の駆動制御は、例えば、電動モータ68としてサーボモータ等を用いて、一般的なサーボ機構等を構成することによって、容易に実現される。
【0043】
また、支持壁部60のガイドレール62には、可動チャック72が配設されている。この可動チャック72は、可動部74と、可動部74から水平に延び出したチャック部76とを一体的に有している。この可動チャック72の可動部74は、ガイドレール62に案内されつつ、ガイドレール62の延出方向に移動し得るように、ガイドレール62に嵌合されていると共に、搬送装置58の搬送ベルト66に突設された係合突起に係合して、搬送ベルト66に固定されている。一方、チャック部76は、図示しない正逆方向に回転可能な電動モータを含む公知のチャック機構により、中間製品22の基板12に対して、それの射出成形時に突設されたゲート部78をチャックし得るようになっている。
【0044】
かくして、可動チャック72が、搬送装置58の搬送ベルト66の走行に伴って、ガイドレール62の延出方向の一端部から他端部までの間を往復移動するようになっている。また、ここでは、可動チャック72が、ガイドレール62の延出方向における
図3の左側端部にまで移動したときに、図示しない電動モータの正方向への回転駆動により、チャック部76が、中間製品22の基板12のゲート部78を自動的にチャックする一方、可動チャック72が、ガイドレール62の延出方向における
図3の右側端部にまで移動したときに、電動モータの逆方向への回転駆動により、チャック部76によるゲート部78のチャックが自動的に解消されるようになっている。そして、隣り合う二つの搬送装置58,58のうちの一方の搬送装置58において、可動チャック72のチャック部76による中間製品22のゲート部78のチャックが自動的に解消されたときに、それらのうちの他方の搬送装置58における可動チャック72のチャック部76が、中間製品22のゲート部78をチャックするようになっている。
【0045】
これにより、
図3に二点鎖線と実線で示されるように、中間製品22が、四つの搬送装置58,58,58,58にて、真空チャンバ26の外部から真空チャンバ26の検出室42内へ、また、検出室42内から反応室40内へ、更に、反応室40内から再び真空チャンバ26外へと、
図3の左側から右側に向かって、
図3に白抜きの矢印で示されるように、一定の高さ位置で、水平方向に搬送されるようになっているのである。更に、ここでは、検出室42外に位置する搬送装置58の可動チャック72が、透孔36aを通じて、検出室42内に突入可能とされている。また、検出室42内に位置する搬送装置58の可動チャック72と、反応室40外に位置する搬送装置58の可動チャック72とが、連通孔44と透孔36bを通じて、反応室40内に突入可能とされている。これによって、検出室42内外にそれぞれ位置する搬送装置58,58の間での中間製品22の受け渡しや、検出室42内と反応室40内にそれぞれ位置する搬送装置58,58の間での中間製品22の受け渡し、更には、反応室40内外にそれぞれ位置する搬送装置58,58の間での中間製品22の受け渡しが、検出室42内や反応室40内で、それぞれ、スムーズに行われるようになっている。
【0046】
そして、本実施形態のプラズマCVD装置24では、真空チャンバ26の検出室42内に、形状検出手段としての二つのスマートカメラ80,80が、設置されている。このスマートカメラ80は、マシンビジョンシステムの構成要素等として、従来より一般に使用されるもので、中間製品22の表面の形状を検出して、かかる表面形状のデータを含む検出信号を出力する公知の構造を有している。そして、そのようなスマートカメラ80が、検出室42内における仕切壁38の設置側に位置する上側底壁部30部分と下側底壁部32部分とに、それぞれ固設されている。これにより、二つのスマートカメラ80,80が、検出室42内に設置された搬送装置58にて検出室42内を搬送される中間製品22を間に挟んで上側と下側とに位置して、レンズを中間製品22の表側面14と裏側面16とにそれぞれ向けるように配置されている。
【0047】
かくして、本実施形態のプラズマCVD装置24では、中間製品22が搬送装置58にて検出室42内を搬送される際に、かかる中間製品22の表側面14の形状が、上側底壁部30部分に固設されたスマートカメラ80にて検出される一方、その裏側面16の形状が、下側底壁部32部分に固設されたスマートカメラ80にて検出されるようになっている。そして、それら二つのスマートカメラ80,80にて検出された中間製品22の表側面14と裏側面16のそれぞれの形状データが、二つのスマートカメラ80,80から、真空チャンバ26外に設置された、制御手段としての二つの第二コントローラ82,82にそれぞれに出力されて、それらの形状データが、二つの第二コントローラ82,82において、それぞれ別個に記憶されるようになっている。
【0048】
また、本実施形態のプラズマCVD装置24においては、真空チャンバ26の反応室40内に、プラズマガン28が、六つ設置されている。それら六つのプラズマガン28,28,28,28,28,28は、何れも同一の構造を有し、それらのうちの三つのものが、真空チャンバ26の反応室40の周壁部の一部を構成する上側底壁部30部分に固設されている一方、別の三つのものが、反応室40の周壁部の別の一部を構成する下側底壁部32部分に固設されている。
【0049】
より詳細には、
図2及び
図4に示されるように、各プラズマガン28は、片側有底の四角筒形状を呈するケーシング84と、全体として四角柱形状を呈し、ケーシング84内に、軸方向に摺動可能に且つ軸心回りに回転不能に収容配置されたプラズマガン本体86とを有している。
【0050】
そして、三つのプラズマガン28,28,28の各ケーシング84が、真空チャンバ26の反応室40内に向かって、鉛直下方に開口する状態で、上側底壁部30に対して、真空チャンバ26の長手方向に一列に並んで固定されている。また、別の三つのプラズマガン28,28,28の各ケーシング84が、真空チャンバ26の反応室40内に向かって、鉛直上方に開口する状態で、下側底壁部32に対して、真空チャンバ26の長手方向に一列に並んで固定されている。なお、下側底壁部32に固定された三つのケーシング84,84,84と、上側底壁部30に固定された三つのケーシング84,84,84とは、鉛直方向において、それぞれ一つずつ、互いに対応位置している。
【0051】
一方、プラズマガン本体86においては、ケーシング84内への収容下でケーシング84の底壁部と対向する端面とは反対側の端面に、吹出口92が形成されている。また、かかる吹出口92には、ケーシング84の底壁部を貫通して、プラズマガン本体86に挿通された二つのガス供給パイプ94,94の開口部がそれぞれ連通している。更に、それらのガス供給パイプ94,94は、アルゴンガスが大気圧以上の圧力で充填されたガスボンベ(図示せず)にそれぞれ接続されている。そして、
図2及び
図4には明示されてはいないものの、プラズマガン本体86は、ガス供給パイプ94,94を通じて供給されるアルゴンガスをプラズマ化するための公知の構造を有している。これにより、プラズマガン本体86は、アルゴンガスをプラズマ化して、吹出口92からアルゴンプラズマを吹き出すようになっている。なお、
図2及び
図4中、96は、プラズマガン本体86を冷却する冷却水が流通する冷却パイプである。
【0052】
また、プラズマガン本体86の吹出口92が形成される端面上には、支持筒部98が、吹出口92の周りを取り囲んで、プラズマガン本体86と同軸的に延びるように一体的に立設されている。更に、この支持筒部98の軸方向の中間部と先端部とには、環状を呈する二つのリングパイプ100,102が、同軸的に配置された状態で支持されている。これによって、プラズマガン本体86の吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマが、支持筒部98と二つのリングパイプ100,102のそれぞれの内側を、それらの内側の面にて案内されつつ、通過するようになっている。
【0053】
そして、それら二つのリングパイプ100,102において、アルゴンプラズマを案内する内側の面を与える内側筒壁部には、かかる内側筒壁部を貫通する吹付け口104が、周方向に所定距離を隔てて、それぞれ、複数個ずつ配設されている。また、二つのリングパイプ100,102には、それぞれ、ガス導入パイプ106,108が接続されている。更に、それら二つのガス導入パイプ106,108は、リングパイプ100,102との接続側とは反対側の端部において、図示しないガスボンベにそれぞれ接続されている。そして、ガス導入パイプ106に接続されたガスボンベ内には、SiO
2のプラズマCVD膜からなるトップコート層20を形成するための成膜用ガスに原料ガスとして含まれるモノシランガスが、大気圧を超える圧力で収容されている。また、ガス導入パイプ108に接続されたガスボンベ内には、かかる成膜用ガスに反応ガスとして含まれる酸素ガスが、大気圧を超える圧力で収容されている。
【0054】
かくして、プラズマガン28においては、ガス導入パイプ106にてリングパイプ100に導入されたモノシランガスが、吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマに対して、各吹付け口104を通じて吹き付けられて、接触するようになっている。また、ガス導入パイプ108にてリングパイプ102に導入された酸素ガスが、吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマに対して、各吹付け口104を通じて吹き付けられて、接触するようになっている。これにより、リングパイプ100,102の各吹付け口104からアルゴンプラズマに吹き付けられたモノシランガスと酸素ガスとが、それぞれプラズマ化されて、モノシランガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとが生成される。そして、そのようなモノシランガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとが、アルゴンプラズマの吹出口92から吹出圧力に基づいて、支持筒部98の先端開口部99から吹き出されるようになっている。換言すれば、プラズマガン28では、プラズマガン本体86の先端に設けられた支持筒部98内で、成膜用ガスが、吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマと接触して、成膜用ガスのプラズマが生成され、そして、この成膜用プラズマが、支持筒部98の先端開口部99から、アルゴンプラズマと共に吹き出されるようになっているのである。このことから明らかなように、本実施形態では、支持筒部98の先端開口部99にて、成膜用プラズマの吹出部分が構成されている。
【0055】
なお、ガス供給パイプ94を通じて、プラズマガン本体86内に供給されるガスは、アルゴンガスに限定されるものではない。アルゴンの他に、例えば、ヘリウムやネオン、キセノン、クリプトン等の不活性ガスや、不活性ガス以外のガスであって、プラズマ状態で成膜用ガスのプラズマと反応しないガス等が、適宜に用いられる。また、プラズマ発生装置24内に導入されるガスは、成膜用ガスに含まれる一部のガス成分であっても良い。
【0056】
また、ガス導入パイプ106,108を通じてリングパイプ100,102内にそれぞれ導入されて、各吹付け口104からアルゴンプラズマに吹き付けられる成膜用ガスに含まれるガス成分としての原料ガスや反応ガスは、トップコート層20を構成する化合物に応じて、適宜に変更可能である。ここでは、トップコート層20が珪素化合物にて構成されているため、かかるトップコート層20を形成するための成膜用ガスに含まれる原料ガスとしては、モノシランガス以外に、例えば、ジシランガス等の無機珪素化合物ガスや、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等のシロキサン類や、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシジメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシラン類、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン類等の有機珪素化合物のガス等が、それぞれ単独で、或いはそれらが適宜に組み合わされて使用される。一方、珪素化合物からなるトップコート層20を形成するための成膜用ガスに含まれる反応ガスとしては、酸素ガス以外に、例えば、窒素ガスやアンモニアガス等が使用され得る。
【0057】
また、上記のようにして成膜用プラズマを生成するプラズマガン本体86には、雌ねじ穴89が、吹出口92の形成面とは反対側の端面の中心部において開口して、軸方向に所定長さで延びるように形成されている。一方、ケーシング84の底壁部の中心部には、雄ねじ88が、ケーシング84の内側において軸方向に延び、且つ中心軸回りに回転可能な状態で立設されている。また、ケーシング84の底壁部の外面上には、雄ねじ88を正逆方向の任意の方向に任意の量だけ回転させる電動モータ90が設置されている。この電動モータ90は、前記第二コントローラ82に対して電気的に接続されて、かかる第二コントローラ82にて駆動制御されるようになっている。
【0058】
そして、プラズマガン本体86の六つのものが、真空チャンバ26の反応室40の周壁部を構成する上側底壁部30部分と下側底壁部32部分とにそれぞれ三つずつ固定された六つのケーシング84,84,84,84,84,84内に、各ケーシング84の底壁部に対して雌ねじ穴89の開口側端面を対向させた状態で、それぞれ、一つずつ収容されている。また、そのような収容状態下で、各ケーシング84の底壁部に立設された雄ねじ88が、各プラズマガン本体86の雌ねじ穴89内に螺入されている。
【0059】
これにより、ケーシング84の雄ねじ88とプラズマガン本体86とにてねじ送り機構が構成されて、電動モータ90の回転駆動に伴う雄ねじ88の回転によって、プラズマガン本体86が、ケーシング84内の軸方向に移動して、ケーシング84の先端開口部を通じて突出乃至引込移動するようになっている。また、それに伴って、プラズマガン本体86の吹出口92の開口側端面に設けられた支持筒部98の先端開口部99が、反応室40内での高さ位置が変動するようになっている。そして、ここでは、第二コントローラ82の駆動制御の下で電動モータ90が回転駆動するようになっていることで、プラズマガン本体86のケーシング84の先端開口部を通じての突出乃至引込移動の方向と移動量、ひいては支持筒部98の先端開口部99の反応室40内での高さ位置の変動方向と変動量とが、第二コントローラ82によって制御されるようになっているのである。なお、このような第二コントローラ82による電動モータ90の駆動制御は、例えば、電動モータ90としてサーボモータ等を用いて、一般的なサーボ機構等を構成することによって、容易に実現される。
【0060】
かくして、本実施形態のプラズマCVD装置24にあっては、
図2に示されるように、反応室40内での中間製品22の搬送装置58による搬送状態下において、プラズマガン28が、中間製品22を間に挟んだ上側と下側とに、それぞれ三つずつ設置されている。そうして、中間製品22の上側に設置された三つのプラズマガン28,28,28が、各プラズマガン本体86に設けられた吹出口92と支持筒部98の先端開口部99を、中間製品22の表側面14に向かって、鉛直下方に開口させるように配置されている。また、それら三つのプラズマガン28,28,28の各プラズマガン本体86が、支持筒部98の先端開口部99を、中間製品22の表側面14に対して接近する方向と離隔する方向に変位させるように、上下方向に移動可能とされている。
【0061】
一方、中間製品22の下側に設置された三つのプラズマガン28,28,28は、各プラズマガン本体86に設けられた吹出口92と支持筒部98の先端開口部99を、中間製品22の裏側面16に向かって、鉛直上方に開口させるように配置されている。また、それら三つのプラズマガン28,28,28の各プラズマガン本体86が、支持筒部98の先端開口部99を、中間製品22の裏側面16に対して接近する方向と離隔する方向に変位させるように、上下方向に移動可能とされている。このことから明らかなように、ここでは、電動モータ90と雄ねじ88と雌ねじ穴89とにて移動手段が構成されている。
【0062】
そして、検出室42内で表側面14と裏側面16のそれぞれの形状が二つのスマートカメラ80,80にて検出された中間製品22が、検出室42内と反応室40内の搬送装置58,58にて反応室40内に搬送されたときに、かかる中間製品22の形状に応じて、各プラズマガン28のプラズマガン本体86が、上下方向に移動させられるようになっている。
【0063】
すなわち、中間製品22の上側に設置された三つのプラズマガン28,28,28の各プラズマガン本体86が、支持筒部98の先端開口部99と中間製品22の表側面14との間の距離を常に一定と為すように、第二コントローラ82に記憶された中間製品22の表側面14の形状データに基づいて、第二コントローラ82による各電動モータ90の駆動制御により、ケーシング84の先端開口部を通じて突出乃至引込移動されるようになっている。また、中間製品22の下側に設置された三つのプラズマガン28,28,28,28の各プラズマガン本体86が、支持筒部98の先端開口部99と中間製品22の裏側面16との間の距離を常に一定と為すように、第二コントローラ82に記憶された中間製品22の裏側面16の形状データに基づいて、第二コントローラ82による各電動モータ90の駆動制御により、ケーシング84の先端開口部を通じて突出乃至引込移動されるようになっているのである。
【0064】
これにより、本実施形態のプラズマCVD装置24においては、反応室40内を搬送装置58にて搬送される中間製品22の表側面14に積層形成されたアンダーコート層18の一部と、その裏側面16に積層形成されたアンダーコート層18の一部とに対して、各プラズマガン28から吹き出された成膜用プラズマが、常に一定の高さから、それぞれ吹き付けられるようになっている。そして、搬送装置58による中間製品22の搬送に伴って、中間製品22の表側面14と裏側面16に積層形成されたアンダーコート層18,18において成膜用プラズマが吹き付けられる箇所が移動するようになっているのである。
【0065】
ところで、かくの如き構造を有するプラズマCVD装置24を用いて、
図1に示されるような構造の樹脂ガラス10を製造する際には、以下の手順に従って、その操作が進められる。
【0066】
すなわち、先ず、ポリカーボネート製の基板12を射出成形等により成形して、準備する。この基板12の成形方法は、射出成形に限定されるものではなく、公知の方法が適宜に採用可能である。
【0067】
その後、準備された基板12の表側面14と裏側面16に、アクリル樹脂やポリウレタン樹脂等の塗膜層を、公知のスプレー塗装やディッピング等により形成した後、かかる塗膜層を加熱したり、或いは紫外線に当てたりして硬化させる。これによって、基板12の表側面14と裏側面16にアンダーコート層18をそれぞれ積層形成して、中間製品22(
図2参照)を得る。
【0068】
次いで、
図2乃至
図4に示される如き構造を有するプラズマCVD装置24を用いて、中間製品22におけるアンダーコート層18,18の各表面上に、トップコート層20をそれぞれ積層形成する。
【0069】
具体的には、先ず、
図2及び
図3に二点鎖線と実線で示されるように、検出室42内を真空チャンバ26外に連通させる透孔36aを開閉する開閉シャッタ46aを開作動させて、透孔36aを真空チャンバ26外に連通させる一方、検出室42と反応室40とを連通する連通孔44を開閉シャッタ46cにて閉鎖する。その後、中間製品22を、検出室42の内外に設置された搬送装置58,58により、透孔36aを通じて、真空チャンバ26外から大気圧下の検出室42内に搬送して、収容した後、透孔36aを開閉シャッタ46aにて閉鎖する。
【0070】
次いで、検出室42の内外を連通する排気パイプ56a上の真空ポンプ(図示せず)を作動させて、検出室42内を減圧する。この減圧操作によって、検出室42内の圧力は、例えば10
-5〜10
-3Pa程度とされる。
【0071】
その一方で、反応室40内を真空チャンバ26外に連通させる透孔36bを開閉シャッタ46bにて閉鎖した状態で、反応室40の内外を連通する排気パイプ56b上の真空ポンプ(図示せず)を作動させて、反応室40内を減圧する。このときの反応室40内の圧力は、減圧された検出室42内の圧力と同程度とされる。
【0072】
そして、検出室42内と反応室40内とが、それぞれ、所定の圧力にまで減圧されたら、連通孔44の開閉シャッタ46cを開作動させて、検出室42内と反応室40内とを互いに連通させる。
【0073】
その後、
図3に示されるように、検出室42内に収容された中間製品22を、検出室42内と反応室40内とにそれぞれ設置された二つの搬送装置58,58にて、検出室42内から反応室40内に搬送する。
【0074】
そして、中間製品22が、搬送装置58による搬送によって、二つのスマートカメラ80,80の間を通過する際に、中間製品22の表側面14の形状と裏側面16の形状とを、二つのスマートカメラ80,80にて検出させる。また、それら二つのスマートカメラ80,80にて検出された中間製品22の表側面14と裏側面16のそれぞれの形状データを、第二コントローラ82に出力して、第二コントローラ82で記憶させる。
【0075】
引き続いて、
図2に示されるように、反応室40内に搬送された中間製品22が、上側底壁部30に固定された三つのプラズマガン28,28,28と、下側底壁部32に固定された三つのプラズマガン28,28,28との間に到達したときに、或いはその前に、第二コントローラ82に記憶された中間製品22の表側面14と裏側面16のそれぞれの形状データに基づいた第二コントローラ82による各電動モータ90の駆動制御により、各プラズマガン28のプラズマガン本体86を、ケーシング84の先端開口部を通じて突出乃至引込移動させる。
【0076】
すなわち、六つのプラズマガン28,28,28,28,28,28の間に位置する中間製品22部分の表側面14と、上側底壁部30に固定された各プラズマガン28のプラズマガン本体86における支持筒部98の先端開口部99との間の距離が全て一定の大きさとなるように、それら各プラズマガン28のプラズマガン本体86を上下動させて、位置決めする。また、かかる中間製品22部分の裏側面16と、下側底壁部32に固定された各プラズマガン28のプラズマガン本体86における支持筒部98の先端開口部99との間の距離が全て一定の大きさとなるように、それら各プラズマガン28のプラズマガン本体86を上下動させて、位置決めする。
【0077】
そして、各プラズマガン28のプラズマガン本体86を上記の位置にそれぞれ位置決めした状態下で、各プラズマガン28において、成膜用ガスのアルゴンプラズマとを接触させて、成膜用プラズマを生成すると共に、かかる成膜用プラズマを、各プラズマガン28におけるプラズマガン本体86の支持筒部98の先端開口部99から吹き出させる。これにより、成膜用プラズマを中間製品22の表側面14と裏側面16とにそれぞれ積層形成されたアンダーコート層18,18のうち、各プラズマガン28と上下方向に対応位置する部分に対して、成膜用プラズマをそれぞれ吹き付ける。
【0078】
そうして、中間製品22の表側面14と裏側面16とにそれぞれ積層形成されたアンダーコート層18,18上において、或いはそれらのアンダーコート層18,18と各プラズマガン28との間の空間内で、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応、即ち、モノシランガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとの反応を生じさせる。そして、そのような反応によりSiO
2を生成して、かかる反応生成物たるSiO
2を、成膜用プラズマが吹き付けられる中間製品22の表側面14上と裏側面16上のアンダーコート層18部分に、それぞれ堆積させる。かくして、搬送装置58による搬送により、六つのプラズマガン28,28,28,28,28,28の間に位置させられた中間製品22の表側面14上と裏側面16上のアンダーコート層18部分に対して、トップコート層20をそれぞれ積層形成する。
【0079】
引き続き、各プラズマガン28から成膜用プラズマを継続的に吹き出させつつ、中間製品22を、搬送装置58にて、透孔36b側に向かって更に搬送して、中間製品22の表側面14と裏側面16とにおいて、各プラズマガン28から吹き出される成膜用プラズマが吹き付けられる箇所を移動させる。それによって、かかる中間製品22の表側面14上と裏側面16上のアンダーコート層18に対して、トップコート層20を次々と積層形成していく。このとき、搬送装置58による搬送によって、六つのプラズマガン28,28,28,28,28,28の間に位置する中間製品22部分の表側面14と裏側面16の形状が随時変化していくが、そのような表側面14と裏側面16の形状の変化に追従して、各プラズマガン28のプラズマガン本体86を上下動させる。それによって、各プラズマガン本体86における支持筒部98の先端開口部99と、中間製品22の表側面14との間の距離や裏側面16との間の距離を、常に一定の大きさに維持する。
【0080】
かくして、
図1に示される如き構造を有する、目的とする樹脂ガラス10を得る。その後、透孔36bを開閉する開閉シャッタ46bを開作動させて、透孔36bを真空チャンバ26外に連通させ、この透孔36bを通じて、得られた樹脂ガラス10を、反応室40内と真空チャンバ26外にて設置された搬送装置58,58にて、真空チャンバ26外に搬送する。
【0081】
なお、ここでは、中間製品22のアンダーコート層18,18上にトップコート層20をそれぞれ積層形成する操作を行う一方で、別の中間製品22の表側面14と裏側面16の形状を検出する操作が行われる。
【0082】
すなわち、中間製品22を反応室40内に搬送して、中間製品22全体を反応室40内に収容したら、連通孔44を開閉シャッタ46cにて閉鎖する。その後、透孔36aを開閉する開閉シャッタ46aの開作動により、透孔36aを真空チャンバ26外に連通する。そして、新たな中間製品22を、検出室42の内外に設置された二つの搬送装置58,58にて、検出室42内に搬送した後、透孔36aを閉鎖する。その後、検出室42内を減圧すると共に、前記した中間製品22の表側面14と裏側面16の形状を、二つのスマートカメラ80,80にて検出するのである。
【0083】
そして、反応室40内でトップコート層20が形成されて得られた樹脂ガラス10を透孔36bから真空チャンバ26外に搬送したら、透孔36bを開閉シャッタ46bにて閉鎖した後、反応室40内を減圧する。その後、検出室42内の中間製品22を反応室40内に搬送して、かかる中間製品22に対するトップコート層20の形成操作を再び実施する。そうして、複数の樹脂ガラス10を連続的に作製するのである。
【0084】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のプラズマCVD装置24を用いれば、成膜用プラズマが、各プラズマガン28から、反応室40内に収容された中間製品22の表側面14の一部と裏側面16の一部とに向かって吹き出される。そのため、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応により生成したSiO
2が、反応室40を構成する上側及び下側底壁部30,32と側壁部34b,34c,34dと仕切壁38や搬送装置58等に付着することが、可及的に防止され得る。それによって、中間製品22のアンダーコート層18,18上にトップコート層20をそれぞれ積層形成して、樹脂ガラス10を製造した後に、反応室40内に位置する部位や部材からSiO
2膜を除去するための面倒な作業から開放されるか、或いはそのような作業の実施頻度を著しく低下させることができる。
【0085】
また、かかるプラズマCVD装置24では、反応室40内に設置された複数のプラズマガン28から、成膜用プラズマが、中間製品22の表側面14と裏側面16のそれぞれ一部に吹き付けられると共に、搬送装置58による中間製品22の搬送により、かかる中間製品22の表側面14と裏側面16において、成膜用プラズマが吹き付けられる箇所が移動するようになっている。それ故、例えば、中間製品22の表側面14と裏側面16のそれぞれの全体に対して、成膜用プラズマを一挙に吹き付けるように構成された従来装置とは異なって、中間製品22の表側面14と裏側面16とがそれぞれ大面積であっても、そのような中間製品22の表側面14と裏側面16の全面に対して、成膜用プラズマを満遍なく均等に吹き付けることができる。
【0086】
しかも、本実施形態のプラズマCVD装置24においては、各プラズマガン28のプラズマガン本体86が、中間製品22の表側面14や裏側面16に対して接近乃至離隔移動可能とされて、成膜用プラズマを吹き出すプラズマガン本体86の支持筒部98の先端開口部99と、中間製品22の表側面14や裏側面16との間の距離が、それら表側面14や裏側面16の形状に拘わらず、常に一定とされる。それ故、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応によって生成したSiO
2を、中間製品22の表側面14や裏側面16の全面に対して、可及的に均一の量で堆積させることができる。
【0087】
従って、かくの如き本実施形態のプラズマCVD装置24を用いれば、中間製品22や、それを与える基板12の表側面14及び裏側面16の大きさや形状に拘わらず、それら表側面14上や裏側面16上に形成されるアンダーコート層18,18上の全面に、SiO
2のプラズマCVD膜からなるトップコート層20を、それぞれ可及的に均一な厚さで有利に積層形成することができるのである。
【0088】
また、かかるプラズマCVD装置24では、プラズマガン本体86の吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマに対して、成膜用ガスが、プラズマガン本体86の先端部に配設された吹付け口104,104から吹き付けられて、成膜用プラズマが生成されると共に、そのような成膜用プラズマが、吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマの吹出圧力によって、プラズマガン本体86から反応室40内に吹き出されるようになっている。それ故、成膜用ガスが、アルゴンプラズマに対して、より確実に接触させられて、成膜用プラズマが安定的且つ効率的に生成される。また、成膜用プラズマを反応室40内に吹き出すための特別な構造を何等付与することなく、簡略な構造において、成膜用プラズマを、反応室40内に、ひいては反応室40内に収容される中間製品22の表側面14や裏側面16に向かって吹き出すことができる。
【0089】
さらに、本実施形態のプラズマCVD装置24においては、中間製品22を間に挟んだ両側に、プラズマガン28が、それぞれ配置されて、それらのプラズマガン28のプラズマガン本体86が、中間製品22の表側面14や裏側面16に対して、それぞれ接近乃至離隔移動可能とされている。それ故、中間製品22の表側面14上と裏側面16上にそれぞれ形成されたアンダーコート層18,18の両方に対して、トップコート層20をそれぞれ一挙に積層形成することができる。
【0090】
しかも、そのようなプラズマCVD装置24では、例えば、中間製品22を間に挟んだ両側にそれぞれ位置するプラズマガン28を固定する一方、中間製品22を各プラズマガン28に対して相対移動させる構造を採用する場合とは異なって、中間製品22の表側面14と裏側面16の厚さ方向において互いに対応する部位同士がそれぞれ異なる形状とされていても、中間製品22の表側面14から、かかる表側面14に向かって成膜用プラズマを吹き出すプラズマガン本体86の成膜用プラズマ吹出部分(ここでは、支持筒部98の先端開口部99)までの距離と、中間製品22の裏側面16から、かかる裏側面16に向かって成膜用プラズマを吹き出すプラズマガン本体86の成膜用プラズマ吹出部分(ここでは、支持筒部98の先端開口部99)までの距離とを、容易に且つ確実に一定の大きさと為すことができる。従って、中間製品22や基板12の表側面14や裏側面16の形状に拘わらず、それら表側面14上や裏側面16上に形成されるアンダーコート層18,18に積層形成されるトップコート層20の厚さの均一化が、更に一層確実に且つ容易に実現され得るのである。
【0091】
また、本実施形態では、中間製品22を真空チャンバ26内で搬送する途中において、かかる中間製品22の表側面14と裏側面16の形状が、検出室42内に設置された二つのスマートカメラ80,80にて検出されて、その検出データに基づいて、反応室40内に設置された複数のプラズマガン28のプラズマガン本体86が、中間製品22の表側面14と裏側面16に対して接近乃至離隔移動させられるようになっている。それ故、中間製品22を真空チャンバ26内で搬送する前に、中間製品22の表側面14と裏側面16の形状を予め把握しておく必要がなく、それによって、目的とする樹脂ガラス10の製造工程の簡略化が、有利に図られ得る。
【0092】
さらに、本実施形態のプラズマCVD装置24においては、中間製品22の表側面14と裏側面16の形状を検出する二つのスマートカメラ80,80が、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応が行われる反応室40とは遮断可能な検出室42内に設置されている。そのため、各スマートカメラ80のレンズ等に、プラズマCVD法による成膜用プラズマの反応生成物が付着することがない。従って、各スマートカメラ80のレンズへの反応生成物の付着により、中間製品22の表側面14と裏側面16の形状の検出性能が低下するようなことが皆無とされ、以て、中間製品22の表側面14上や裏側面16上のアンダーコート層18,18に積層形成されるトップコート層20の厚さの均一化が、更に一層効果的に達成され得るのである。
【0093】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0094】
例えば、中間製品22を搬送する搬送手段として、例示のものに代えて、ロボットアーム等の公知の構造のものを採用することも可能である。
【0095】
また、プラズマガン28の成膜用プラズマ吹出部分であるプラズマガン本体86の支持筒部98の先端開口部99を移動させる移動手段も、公知の種々の構造が採用され得る。例えば、例示したねじ送り機構に代えて、ラックとピニオンからなるギヤ機構やシリンダ機構等を利用して、移動手段を構成することもできる。
【0096】
さらに、形状検出手段としては、中間製品22(基板12)の表側面14や裏側面16の形状をそれぞれ検出して、それらの形状データを含む検出信号を出力可能な構造を有するものであれば、例示のスマートカメラ80に代えて、種々の公知の構造のものが採用可能である。
【0097】
また、中間製品22(基板12)の表側面14や裏側面16の形状のデータを、予めコントローラ82,82に記憶させ、そのような形状データに基づいて、プラズマガン本体86の支持筒部98の先端開口部99を移動させるように為すこともできる。その場合には、形状検出手段を省略することが可能となる。
【0098】
さらに、プラズマガン28の構造も、例示のものに、何等限定されるものではない。例えば、プラズマガン本体86の先端面に、アルゴンプラズマを吹き出す吹出口92に加えて、吹出口92から吹き出されるアルゴンプラズマに成膜用ガスを吹き付ける吹付け口104を設けてなる構造のものや、或いはプラズマガン本体86内で、成膜用プラズマを生成して、それを吹出口92から吹き出すようにした構造のもの等が、適宜に採用され得る。
【0099】
更にまた、プラズマガン28の反応室40内への設置個数や設置位置等も、例えば、中間製品22(基板12)の表側面14や裏側面16の大きさや形状等に応じて、適宜に変更可能である。
【0100】
また、反応室40内に、中間製品22の表側面14に向かって成膜用プラズマを吹き出すプラズマガン28だけを、或いはその裏側面16に向かって成膜用プラズマを吹き出すプラズマガン28だけを、それぞれ設けるようにしても、何等差し支えない。
【0101】
さらに、例えば、長尺な基板が巻き付けられたロールから巻き出された基板部分を巻き掛ける成膜用ローラが、真空チャンバ26内に設けられて、かかる成膜用ローラに巻き掛けられた基板部分の表面に対して、プラズマCVD膜を連続的に形成するようにした構造をもって、プラズマCVD装置を構成することも可能である。
【0102】
また、前記実施形態では、プラズマガン28の吹出口92から吹き出される、例えばアルゴンプラズマに対して、プラズマガン本体86の支持筒部98に設けられたリングパイプ100,100の吹付け口104,104から吹き出された成膜用ガス(例えば、モノシランガスと酸素ガス)が接触することにより、成膜用ガスのプラズマが、プラズマガン28にて生成されて、かかる成膜用ガスのプラズマが、支持筒部98の先端開口部99(成膜用プラズマの吹出部分)から中間製品22(基材)に向かって吹き出されるようになっていた。しかしながら、プラズマガン28による成膜用ガスのプラズマの生成構造は、何等これに限定されるものではない。
【0103】
例えば、
図5に示されるように、プラズマガン本体86から支持筒部98と導入パイプ106,108を省略して、成膜用ガスを真空チャンバ26内に供給する供給パイプ110,112を、その先端開口部が各プラズマガン28の吹出口92付近において開口するように、真空チャンバ26の上側底壁部30や下側底壁部32を貫通して設置する。そして、供給パイプ110,112の先端開口部から供給される成膜用ガス(例えば、モノシランガスと酸素ガスを、プラズマガン本体86の吹出口92から吹き出される、例えばアルゴンプラズマ等と接触させて、プラズマ化することにより、プラズマガン28にて、成膜用ガスのプラズマを生成するように為す。そして、かかる成膜用ガスのプラズマを、アルゴンプラズマの吹出圧力にて、アルゴンプラズマと共に、吹出口92から中間製品22(基材)に向かって吹き出すように為すことも可能なのである。
【0104】
加えて、前記実施形態では、本発明を、樹脂ガラスの表面に、プラズマCVD膜からなるトップコート層を形成するのに用いられるプラズマCVD装置に適用したものの具体例を示したが、本発明は、基板の表面上にプラズマCVD膜を形成するのに用いられるプラズマCVD装置の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0105】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。