(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記散気孔は、前記一方の列の散気孔と前記散気管の軸心とを通る直線と前記散気孔と対向する他方の列の散気孔と前記軸心とを通る直線とで成す角度が180度未満となるように形成されたこと
を特徴とする請求項8に記載の膜分離装置。
【背景技術】
【0002】
膜分離技術は、従来から海水淡水化、浄水処理、ガス分離、血液浄化等で使用されてきたが、最近では環境保全の観点から、廃水処理にも膜分離技術を適用しようとする研究が進められている。
【0003】
従来、浄水処理、下排水処理、或いは産業排水の処理等、濁度の高い被処理水の固液分離を行う方法として、砂濾過や重力沈殿等が行われている。しかしながら、これら方法による固液分離は、得られる処理水の水質が不充分となる場合が生じることや、固液分離のために広大な用地を必要とするといった課題を有している。
【0004】
この課題を解決する方法として、近年精密濾過膜、限外濾過膜等の分離膜を配設した膜モジュールを被処理水に浸漬させて固液分離を行う方法が種々検討されている。分離膜を用いて被処理水の濾過処理を行うと、高い水質の処理水を得ることができる(例えば、非特許文献1)。
【0005】
分離膜を用いて被処理水の固液分離を行う場合、濾過処理を継続するにしたがって懸濁物質による分離膜表面の目詰まりが進行するため、濾過流量の低下、或いは膜間差圧の上昇が生じる。このような状態を回復させるため、膜モジュールの下方に散気装置を配設し、散気装置から気泡の散気を行い、気泡の上昇することによって生まれる気液混合流を膜モジュールの膜面に接触させること(スクラビング)により分離膜表面の懸濁物質を剥離させる方法が採られている。
【0006】
この膜面を空気洗浄する方法における留意点は、洗浄用気泡を如何に膜全面(水平断面にて)に均等に供給するかである。すなわち、膜面の洗浄において気泡の散気によって生じる気液混合流を膜面に接触させることにより洗浄を行うため、散気管から発生した気泡を均等に分散させる手段が重要となる。そこで、気泡の分散方法を改良させた膜分離装置として例えば特許文献1〜4に開示された装置が知られている。
【0007】
特許文献1に記載の膜分離装置の散気管は円筒状の散気管の下部周壁部においてスリット状の散気孔が当該散気管の軸線に対して略垂直に配置されるように複数形成されている。
【0008】
特許文献2〜4に記載の膜分離装置はスクラビングするための気泡を分離膜全体に均等に、かつ十分に作用させるために分離膜ごとに散気装置(散気管)を配設している。さらに、被処理水に対するスクラビングエアの溶解効率を向上させるために前記散気装置の上方に格子状または網目状の分散部材を配置させ、当該装置から供された気泡よりも小径の気泡を発生させている。
【0009】
特許文献1の膜分離装置は散気管の各散気孔からの散気量を一定に維持することで効果がある。各散気孔の微妙な高低差は膜分離装置の設置時や散気エネルギーによる散気管の固定状態変化や流入中の水圧のため(静水圧ではなく動水圧が働くため)、散気管の構造を工夫してもその効果には限界がある。
【0010】
また、散気装置の散気孔がスリット形状を成しているので散気孔の閉塞により散気装置からの気体供給が不十分な状態となることはない。しかしながら、散気状態が平面的にみて不均等となって分離膜の膜面の洗浄むらが生じやすくなる。
【0011】
膜モジュールの膜面の洗浄むらにより膜面にて汚れの偏りや分布が生じると実質的には「洗浄されやすい膜面」のみでろ過を行うようになるので利用可能な有効膜面積が減少する。さらに、この「洗浄されやすい膜面」が集中してろ過に利用されるので該当部分にて膜の目詰まりである膜ファイリングが進行しやすくなり、ろ過継続不可能に至る前に薬液を使った洗浄や物理的な洗浄などを行って膜の透過性能を再生させる作業が必要となる。そのため、この膜性能の再生作業の間隔期間が短くなり、この作業実施の期間間での全ろ過量の低下、この作業での膜分離操作の停止などにより、膜分離の総合効率が低下する。
【0012】
特許文献2〜4の膜分離装置に係る分散手段は気泡の分散効果と目詰まりの抑制の二つを同時に達成するために、金網や多孔板、パイプ、ワイヤー、格子等から選ばれるいずれかのものを水平に配置したものが適用されている。分散手段の開口率は20〜70%、目幅は2〜10mm程度に設定されている。散気気泡の形状の観点からは、開口を有する挿入物により粗大気泡の細分化を図り、気泡の分散効果による溶解効率の向上と、その際の気泡の分散効果により膜部へ均一に気泡を導入することを目的とする。これは気泡の粗大化による酸素の溶解効率の著しい低下及び膜間への気泡導入の偏りによる部分的な膜汚染を改善させるためである。
【0013】
しかしながら、酸素供給と膜洗浄を兼ねた散気装置に要求される気泡径の仕様は、酸素供給の場合は微細気泡が必要である一方で膜洗浄時の場合は粗大気泡が必要であり各効果を達成するには相反する要求に基づき散気方法を選択しなければならない。特許文献4の膜分離装置は、散気手段から供された気泡群が網目状または格子状の分散手段によって細分化されてしまうので、分離膜の膜面の洗浄むらが生じやすくなり、膜洗浄機能が劣るものとなる。さらに、分散手段の下面の広さに応じて複数の散気管を設置また増設しなければならない。この複数の散気管の設置または増設により散気点が多数となるが、散気状態が平面的にみて不均等となり分離膜の膜面の洗浄むらが生じやすくなる。これは、膜全体としての分離の効率が低下、さらには膜分離処理の信頼性の低下につながる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1に示された本実施形態の膜分離装置1はMBR方式の生物反応槽10内の膜モジュール3に対して散気部材4から散気された膜洗浄用の空気の気泡群401を気泡群分割部材5によって複数の気泡群402に分割させることで膜モジュールの洗浄効果の均一化を図る。すなわち、本実施形態に係る気泡群の分割は、活性汚泥の活性化を高めるために気泡を微細化させて酸素の溶解効率の向上を目的とするものではなく、散気部材から供された気泡群を気泡群分割部材と衝突させて分割して多方向に振分けることを目的とする。
【0024】
(膜分離装置1の構成)
膜分離装置1は、膜モジュール2を生物反応槽10の深さ方向に複数積重して構成される膜ユニット3と、膜ユニット3に対して曝気用及び膜洗浄用の空気の気泡群を散気させる散気部材4と、前記気泡群を複数の気泡群に分割させる気泡群分割部材5とから成る。膜分離装置1はMBRの生物反応槽10内の液相11に浸漬されるように設置される。
【0025】
膜モジュール2は、
図7に例示されたように、並列に複数配置される平型の分離膜21と、この分離膜21の両端部を支持する一対の支持部22と、この一対の支持部22の両端付近の間隙を閉塞する一対のガイド23とから成る。この支持部22とガイド23により上下に開口部を有する筺体が構成される。
【0026】
分離膜21は平型を成しているが、発明に係る分離膜はこの態様に限定されない。例えば、MBRに適用される周知の分離膜である、有機中空糸膜、有機平膜、無機平膜、無機単管膜等を適用してもよい。尚、分離膜21の材質としては、セルロ−ス、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライト)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、セラミックス等が例示される。また、膜モジュール2に複数配列される分離膜21は、分離膜21内の集水路211が縦方向に配置されるように設置して、集水路211と連通する集水部を分離膜21の端部(上下のどちらか一方か両方の端部)に設けてもよい。
【0027】
支持部22の内部には分離膜21内部の集水路211と連通する集水部(図示省略)が形成されている。前記集水部は支持部22に形成された濾過吸引口24と連通している。この濾過吸引口24は図示省略の濾過液を吸引するポンプの配管が接続される。
【0028】
ガイド23は膜モジュール2の上部開口端断面積が下部開口端断面積より小さくなるように支持部22に取り付けられることで、分離膜21による濾過効率の向上が図られている。すなわち、膜モジュール2を積重させた際に、膜モジュール2の上部開口端とこの膜モジュール2上に積重される他の膜モジュール(図示省略)の下部開口端の間に形成される空隙25から膜モジュール2の外周部の被処理水を流入させることで、膜モジュール2内を流通する被処理水の活性汚泥濃度の上昇を抑制させる。また、散気部材4から供された
図1に記載の気泡群402は膜ユニット3の外部への拡散がガイド23によって抑制されるので、分離膜21の表面に対して気泡群402を有効に作用させることができる。
【0029】
生物反応槽10の水深は、一般的に4m程度である場合が多いので、生物反応槽10の水深と保守性を考慮した重量や外形から、積重する膜モジュール2の個数が選定される。例えば、膜ユニット3の高さが2m〜3m程度となるように膜モジュール2の個数が選定される。この膜ユニット3内部での被処理水の流れは、膜ユニット3の下部の開口部から上部の開口部へ向かう流れとなる。膜ユニット3内の液相は分離膜21で濾過されるので、膜ユニット3の上部になればなるほど当該液相の活性汚泥濃度が上昇する。膜ユニット3においては
図1に示したように積重された各膜モジュール2の空隙25から被処理水が膜ユニット3内に吸引されるので、膜ユニット3内部での活性汚泥濃度の大きな上昇を抑制することができる。その結果、濾過に対しての負荷が低減し、膜閉塞の緩和、及び消費エネルギーの低減につながる。尚、被処理水を膜ユニット3の内部に吸引する吸引力は、気泡群401,402の上昇流により生じるため、特に被処理水を吸引するための動力源を備える必要はない。
【0030】
散気部材4は膜ユニット3に対して膜洗浄用の空気を供給するための部材である。また、曝気用散気部材12は活性汚泥による生物処理に対して必要な酸素を供給するための部材である。前記空気および前記酸素は生物反応槽10外のブロワーやコンプレッサ(図示省略)から供給される。散気部材4には周知の仕様のものを適用すればよい。具体的には散気管タイプ、ノズルタイプのものが例示される。
【0031】
図2(a)に例示された散気部材4は複数の散気孔42が形成された散気管41からなる。散気管41は
図2(b)に示したように膜ユニット3の下方にて水平に配置されている。複数の散気孔42は散気管41の下面にて当該管41の軸線に対して平行に配置されるように形成されている。散気孔42は空気散気速度が10m/秒以上となるように直径5〜10mm及び100〜200mmピッチで散気管41の下面に複数形成される。このように散気管41の下面にて散気孔42を形成すると、コンプレッサー等の送気圧変動の影響等によって散気量に脈動が生ずる場合でも、圧低下時に散気に支障となるような散気管41内への槽内液の侵入が起こりにくくなるので、安定した散気を継続できる。
【0032】
散気管41に形成する散気孔42の径と個数の設定方法について説明する。経験的に、全散気風量Dm
3/分は、生物反応槽10の設計処理量Qm
3/日の3、6、9倍数として3Q、6Q、9Qなどの数値から選択される。
【0033】
生物反応槽10には、計画処理能力に応じて複数の膜分離装置1を設置するが、上記設定方法は単位膜ユニット3基準で計算を行う。
【0034】
散気孔42の径Bmm及び個数Cに基づき単位膜ユニット3当たりの散気孔42の総計面積を算出する。次に、全散気風量Dを単位膜ユニット3の数で除して、単位膜ユニット3当たりの散気風量を算出し、さらに前記総計面積で除する計算に基づき散気孔42からの散気流速Em/秒が算出される。そして、この算出されたEの値が空気散気速度10m/秒以上である場合、散気孔径Bmm及び散気孔個数Cの値が適切な仕様として設定される。
【0035】
散気孔42の径と個数の設定の具体例を説明する。設計処理量Qが0.6m
3/m
2・日(19.8m
3/日)、全散気風量Dm
3/分が6Qである場合の散気孔の径と個数の設定の事例について説明する。全散気風量6×Qm
3/分で、散気管全長200mm、孔径5mm、ピッチ56mmで3個の散気孔を形成させると、散気孔からの散気流速Eは上述の計算によって約12m/秒と算出される。算出されたEの値は10m/秒よりも大きいので具体例に係る膜ユニットの散気孔径Bmm及び散気孔個数Cは適切な仕様とされる。
【0036】
気泡群分割部材5は網目構造のようなものではなく気泡群を通過させない形態に形成される。気泡群分割部材5は散気部材4の径よりも大径である立体形状の障害部材からなる。気泡群分割部材5はその軸線が膜ユニット3と散気部材4との間にて散気部材4の軸線と平行となるように配置されている。気泡群分割部材5は散気部材4の散気孔42から噴出された気泡群401が気泡群分割部材5との衝突により当該部材5の軸線を中心線として左右均等に分割されるように配置される。これにより、膜ユニット3の下端に対して前記分割された気泡群402を均等に供給できる。気泡群分割部材5の材質は樹脂、金属、セラミックス等が例示されるが散気による激しい水流により変形しないものまたは変形しても障害部材としての機能を維持できるものであれば特に限定しない。
【0037】
気泡群分割部材5は少なくとも縦断面の下辺が下に凸の立体に形成されている。この態様により、散気部材4の散気孔42から供された気泡群401に対する抵抗を緩和させ、気液混合流速を低減させることなく当該気泡群を複数の気泡群402に分割できるようになっている。
【0038】
気泡群分割部材5の具体的な態様を
図3(a)〜
図3(e)に例示した。
図3(a)に例示された気泡群分割部材5はその縦断面の下辺が半円形を成している。
図3(b)に例示された気泡群分割部材5はその縦断面の上辺が鈍角三角形である一方で下辺が半円形を成している。
図3(c)に例示された気泡群分割部材5はその縦断面の上辺が鋭角三角形である一方で下辺が半円形を成している。
図3(d)に例示された気泡群分割部材5はその縦断面が円形を成している。
図3(e)に例示された気泡群分割部材5はその縦断面の上辺が釣鐘状である一方で下辺が半円形を成している。
【0039】
図3(a)〜
図3(e)に例示された気泡群分割部材5は、少なくともその下面が曲面に形成されているので、当該下面に衝突した気泡群を当該曲面上で乱流状態に維持させながら複数の気泡群に分割できる。特に、
図3(b)〜
図3(e)に例示された気泡群分割部材5は、その上面が上に凸の形状に形成されているので、活性汚泥を当該部材5の下方に効率良く案内でき、当該部材5上での活性汚泥の堆積を回避させることができる。また、
図3(d)、
図3(e)に例示された気泡群分割部材5は、その上面が曲面に形成されているので、当該部材5の下面の曲面に沿って上昇してくる気液混合流を当該部材5の上方において旋回させ、この旋回流を維持させることができる。これにより、気泡群分割部材5の上方において激しい気液混合流を継続させ、気泡群の分割を促進させることができる。そして、この分割迂回した激しい気液混合流を膜モジュール2の分離膜21間に供することができ、膜面洗浄効果を維持させることができる。
【0040】
散気部材4、気泡群分割部材5は
図1に示されたように膜ユニット3の下端に配置される筒体7に収納される。尚、散気部材4及び気泡群分割部材5の軸心と膜モジュール2に配置される分離膜21の膜面の方向との関係は
図1に例示された配置に限定されない。例えば、散気部材4及び気泡群分割部材5の軸心と膜モジュール2に配置される分離膜21の膜面の方向との角度が
図1に例示されたような0度ではなく90度となるような配置にしてもよい。
【0041】
(本実施形態の作用)
図1を参照しながら膜分離装置1の作用について説明する。ここでは、縦断面が円形を成す気泡群分割部材5を備えた膜分離装置1の作用について説明する。
【0042】
被処理水が供給される生物反応槽10内の液相は曝気用散気部材12によって常時曝気された状態となっている。前記液相中の活性汚泥はこの曝気によって供された酸素を利用して被処理水中の汚濁物質を生物学的に分解する。一方、生物反応槽10内の液相は前記曝気による水流によって筐体7の下端開口部と膜モジュール2間の空隙25とから膜分離装置1内に導入され固液分離処理に供される。
【0043】
膜分離装置1内においては散気部材4から気泡群401が常時放出されている。この気泡群401は気泡群分割部材5との衝突によって複数の気泡群402に分割される。気泡群分割部材5は縦断面が円形を成しているので、当該部材5の下面に衝突した気泡群401は当該部材5の外周面上で乱流状態となりながら、複数の気泡群402に分割される。また、気泡群分割部材5の縦断面の上半部は半円となっているので、膜ユニット3の下端付近に滞留する活性汚泥は当該部材5の周面に沿って下方に案内されることで、当該部材5の上面において活性汚泥の堆積が回避される。これにより前記汚濁物質の分解に寄与する前記活性汚泥の絶対量の低減が防止される。さらに、気泡群分割部材5の下面の曲面に沿って上昇してくる気液混合流は当該部材5の上方において旋回し、この旋回流が維持されるので気泡群分割部材5の上方において激しい気液混合流が継続し、気泡群の分割が促される。
【0044】
前記分割迂回した激しい気液混合流は膜ユニット3の各膜モジュール2の個々の分離膜21間に導入され、分離膜21の表面の洗浄に供される。この洗浄によって分離膜21の表面から剥離された夾雑物は、前記気液混合流に乗って膜ユニット3の最上位の膜モジュール2の上端開口部から排出されるか、または、生物反応槽10の底部付近に沈降する。前記剥離された夾雑物に含まれる活性汚泥は生物反応槽10内における汚濁物質の生物学的分解に再度供される。
【0045】
膜ユニット3内においては各膜モジュール2の各分離膜21の内部が図示省略された吸引ポンプによって負圧状態となっており、分離膜21内部の集水路内に透過した固液分離処理水は前記吸引ポンプによって生物反応槽10外に搬出される。
【0046】
膜ユニット3内においては曝気用散気部材12及び散気部材4によって上昇流が生じており膜モジュール2内に導入された液相が分離膜21によって固液分離処理されるので、膜ユニット3内を流通する液相の活性汚泥濃度は当該装置1の上部に至るにつれて高くなる。したがって、膜ユニット3における上位の膜モジュール2の分離膜21に対する汚泥負荷が増大し、膜閉塞の加速や消費エネルギーの増大が生じるおそれがある。膜ユニット3においては、膜モジュール2の水流ガイド23の下端と、当該膜モジュール2の下側に接続される他の膜モジュール2の水流ガイド23の上端との間の空隙25から膜モジュール2の外周に滞留する液相が上昇流に乗って膜モジュール2内に導入される。これにより膜ユニット3内部での活性汚泥濃度の上昇が抑制され、前記汚泥負荷の増大による弊害が回避される。
【0047】
また、気泡群402を含む気液混合流の流路は膜モジュール2の上端に近づくにつれて水流ガイド23によって狭くなっているので当該混合流は収束すると共にその速度も速くなるので気泡群402による分離膜21の洗浄効果が高まる。
【0048】
(本実施形態の効果)
膜分離装置1によれば生物反応槽10内の膜ユニット3に対して散気部材4から供された膜洗浄用の空気の気泡群401が気泡群分割部材5によって複数の気泡群402に分割される。そして、この分割された気泡群402が膜ユニット3の各膜モジュール2に対して均一に供されるので、膜モジュール3の膜面の洗浄むらが生じにくくなる。これにより、有効な膜面比率が高く維持され、効率の高い固液分離が可能となる。また、気泡群401の細分化が回避されることで、微細化された気泡に比べてその平均気泡径が大きく上昇浮力も高いので、気液混合流速を高く維持できる。以上のように散気部材やその散気点を増設させることなく膜面洗浄の不均一化を防止して膜モジュール3の分離膜の固液分離機能を維持できる。尚、上述の散気部材4は散気管タイプのものであるがノズルタイプのような散気孔が上方へ向いている態様のものが採用されてもこの散気部材4から供された気泡群を気泡群分割部材5によって分割できる。
【0049】
[実施形態2]
実施形態2の散気部材4は
図4(a)に示したように散気孔42が散気管41下側に散気孔を左右に振り分けるように形成されている。この態様によれば気泡群分割部材5との相乗効果により、気泡群の分割がより均一となる供給が期待できる。
【0050】
すなわち、本実施形態の散気部材4は隣接する散気孔42が散気管41の軸線Lに対して斜めに配置されている。隣接する散気孔42a,42bは一方の散気孔42aと散気管41の軸心Oとを通る直線L1と他方の散気孔42bと軸心Oとを通るL2とで成す角度が180度未満、好ましくは170度以下となるように形成されている。
図4(b)に示された具体的な態様においては、隣接する散気孔42a,42bは、散気孔42aと散気管41の軸心Oとを通る直線L1と、散気孔42bと軸心Oとを通る直線L2とで成す角度が90度となるように形成されている。
【0051】
本実施形態の散気部材4の散気孔42の径と個数の設定の具体例を説明する。設計処理量Qが0.6m
3/m
2・日(19.8m
3/日)、全散気風量Dm
3/分が6Qである場合の散気孔の径と個数の設定の事例について説明する。全散気風量6×Qm
3/分で、散気管全長225mm、孔径6mm、ピッチ75mmで2個の散気孔を形成させると、散気孔からの散気流速Eは実施形態1の説明で述べた計算法によると約12m/秒と算出される。算出されたEの値は10m/秒よりも大きいので具体例に係る膜ユニットの散気孔径Bmm及び散気孔個数Cは適切な仕様となっている。
【0052】
以上の本実施形態の散気部材4によれば当該部材4の軸線を中心線として左右均等に気泡群を噴出できるので
図4(c)に示された散気孔42が直線的に配置された実施形態1の散気部材4と比べてより一層均一に気泡群を膜ユニット3に対して供給できる。
【0053】
[実施形態3]
実施形態3の散気部材4は
図5(a)に示すように複数の散気孔42が散気管41の軸L方向に二列に配置されるように形成されている。図示された散気孔42a,42bは一方の列の散気孔42aと散気管41の軸心Oとを通る直線L1と前記散気孔42aと対向する他方の列の散気孔42bと軸心Oとを通る直線L2とで成す角度が180度未満、好ましくは170度以下となるように形成される。
図5(b)に示された具体的な態様においては、対向する散気孔42a,42bは、散気孔42aと散気管41の軸心Oとを通る直線L1と、散気孔42bと軸心Oとを通る直線L2とで成す角度が90度となるように形成されている。
【0054】
本実施形態の散気部材4の散気孔42の径と個数の設定の具体例を説明する。設計処理量Qが0.6m
3/m
2・日(19.8m
3/日)、全散気風量Dm
3/分が12Qである場合の散気孔の径と個数の設定の事例について説明する。全散気風量12×Qm
3/分で、散気管全長225mm、孔径5mm、ピッチ56mmで6個の散気孔を形成させると、散気孔からの散気流速Eは実施形態1の説明で述べた計算法によると約12m/秒と算出される。算出されたEの値は10m/秒よりも大きいので具体例に係る膜ユニットの散気孔径Bmm及び散気孔個数Cは適切な仕様となっている。
【0055】
以上の本実施形態の散気部材4によれば当該部材4の軸線を中心線として左右均等に気泡群を噴出できるので、実施形態1の散気部材4と比べて、より均一に気泡群を膜ユニット3に対して供給できる。また、複数の散気孔42が散気管41の軸方向に二列に配置されているので、実施形態2の散気部材4と比べて、高密度且つ均一に気泡群を供給できる。
【0056】
[実施形態4]
図6に示された実施形態4の散気部材4はその散気孔43が実施形態1の散気部材4の散気孔42よりも大径に形成される一方で散気孔43の数は散気孔42の数よりも少なく設定されている。
図6(a)、
図6(b)に示されたように散気孔43は散気部材4の下面にて形成されている。
【0057】
本実施形態の散気部材4の散気孔43の径と個数の設定の具体例を説明する。設計処理量Qが0.6m
3/m
2・日(19.8m
3/日)、全散気風量Dm
3/分が6Qである場合の散気孔の径と個数の設定の事例について説明する。全散気風量6×Qm
3/分で、散気管全長198mm、孔径6mm、ピッチ66mmで2個の散気孔を形成させると、散気孔からの散気流速Eは実施形態1の説明で述べた計算法によると約12m/秒と算出される。算出されたEの値は10m/秒よりも大きいので具体例に係る膜ユニットの散気孔径Bmm及び散気孔個数Cは適切な仕様となっている。
【0058】
以上の本実施形態の散気部材4は全散気風量6×Qm
3/分が実施形態1の散気部材4と同等となるが(散気流速E約12m/秒)、本実施形態の散気部材4は散気孔の数が 実施形態1の散気部材4のものよりも少ないので、単位散気孔当たりの散気風量(m
3/分)が散気部材4よりも大きくなる。これにより、少なくとも散気部材4よりも大きな気液混合流が形成される。散気部材4から供された気泡群401は前記気液混合流によって上昇して気泡群分割部材5との衝突によって複数の気泡群402に分割される。前記気液混合流は前記衝突によってそれほど減少しないので膜ユニット3の洗浄効果が維持される。以上のように本実施形態の散気部材4によれば膜ユニットの洗浄効果が向上及び維持される。
【0059】
[本発明の他の態様]
本発明に係る膜分離装置は、上記の実施形態1〜4のような活性汚泥を滞留させた生物反応槽への適用に限定されることなく、凝集剤が用いられる浄水設備、産業排水処理設備に例示される懸濁物質の固液分離が必要な一般的な水処理設備にも適用できる。