【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
実施例中に示した物性値の測定方法、共重合体の調製方法は以下の通りである。
【0046】
<重量平均分子量(Mw)測定>
試料を溶媒に溶解し(濃度0.5質量%)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量(Mw)を求めた。装置はWaters製 GPCシステム、カラムはSHODEX製 LF−G、LF−804、検出はRIでWaters製2414を用いた。溶媒はクロロホルム、標準物質はポリスチレンを用い、流速1.0ml/分で測定を行った。
【0047】
<示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移点温度(Tg)測定>
装置は島津製作所製DSC−60を用い、4〜5mg程度の試料について、昇温速度10℃/分で20℃〜250℃の温度範囲にて測定を行ない、ガラス転移点温度(Tg)を求めた。
【0048】
<引張強度測定>
プレスフィルムを三化ダンベル型に打ち抜き、23℃、20mm/minの引張速度条件で測定した。
【0049】
<調製例1:リンゴ酸−乳酸共重合体>
撹拌装置、脱気口を備えた500mlサイズのガラス製反応器に、和光純薬製D,L−リンゴ酸13.4g(0.1モル)、Purac製90%L−乳酸100.2g(1.0モル)及び和光純薬製チタンテトライソプロポキシド18.5mg(0.0016モル)を装入した。この場合、仕込みのリンゴ酸と乳酸とのモル比は1:10になる。反応器をオイルバスに漬け、135℃、10mmHgで窒素を流通させながら30時間撹拌した。反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液をステンレスバット上に取り出して冷却固化させた。得られた無色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマー65gを得た。ポリマーのMwは3,300であった。
【0050】
<調製例2:リンゴ酸−乳酸共重合体>
D,L−リンゴ酸の量を6.7g(0.05モル)に変更したこと以外は、調製例1と同様にして各成分を反応器に装入し、反応させて、粉末状ポリマー62gを得た。この場合、仕込みのリンゴ酸と乳酸とのモル比は1:20になる。ポリマーのMwは3,900であった。
【0051】
<調製例3:リンゴ酸−乳酸共重合体>
D,L−リンゴ酸の量を2.68g(0.02モル)に変更したこと以外は、調製例1と同様にして各成分を反応器に装入し、反応させて、粉末状ポリマー60gを得た。この場合、仕込みのリンゴ酸と乳酸とのモル比は1:50になる。ポリマーのMwは5,000であった。
【0052】
<調製例4:クエン酸−乳酸共重合体>
D,L−リンゴ酸の代わりに、和光純薬製クエン酸1水和物21.0g(0.1モル)を使用したこと以外は、調製例1と同様にして各成分を反応器に装入し、反応させて(但し反応温度は160℃)、粉末状ポリマー69gを得た。この場合、仕込みのクエン酸と乳酸とのモル比は1:10になる。ポリマーのMwは2,600であった。
【0053】
<比較調製例1:アスパラギン酸−乳酸共重合体>
実施例1と同じガラス製反応器に、和光純薬製L−アスパラギン酸13.3g(0.1モル)、Purac製90%L−乳酸50.1g(0.5モル)及び和光純薬製チタンテトライソプロポキシド18.5mg(0.0016モル)を装入した。この場合、仕込みのアスパラギン酸と乳酸とのモル比は1:5になる。反応器をオイルバスに漬け、160℃で窒素を流通させながら30時間撹拌した。30分〜1時間程度で粉末は次第に消滅し、反応液は黄色の着色が見られた。反応器をオイルバスから取り出し、反応溶液をステンレスバット上に取り出して冷却固化させた。得られた薄黄褐色透明の固体を粉砕し、粉末状ポリマー32gを得た。ポリマーのMwは6,200であった。
【0054】
[実施例1]
Mwが24.0万のポリ乳酸(三井化学社製LACEA H−400)54gに、調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体(リンゴ酸と乳酸とのモル比1:10)を6g添加し、東洋精機製ラボプラストミル20C200を用い、温度180℃、回転数50rpmの条件で10分間混練を行った。
【0055】
得られたポリ乳酸樹脂組成物を、2MPa、180℃、5分間の条件で、熱プレス機でプレスし、150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは18.5万、DSCによるガラス転移点温度(Tg)は55.4℃、引張強度は61.1MPaで、無色透明で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。コニカミノルタ製色彩色差計CR−300を用い、フィルムのYI値を測定したところ、YI値は4.0であった。
【0056】
上記のフィルムを蒸留水に浸漬し、恒温槽中で50℃に保持した。所定期間ごとにフィルムを取り出して乾燥し、分子量を測定した。浸漬後、フィルムにはすぐに白化が見られた。浸漬1.5日後、3日後、5日後のフィルムのMw保持率とフィルムの引張強度保持率をそれぞれ表1及び表2に示す。5日経過時にはフィルムの引張強度が0になった。
【0057】
また、上記のフィルムを、蒸留水に浸漬し、恒温槽中で60℃に保持した。所定期間ごとにフィルムを取り出して乾燥し、分子量を測定した。浸漬後、フィルムにはすぐに白化が見られた。浸漬14時間後、19時間後、24時間後のフィルムのMw保持率とフィルムの引張強度保持率をそれぞれ表3及び表4に示す。19時間経過時にはフィルムの引張強度が0になった。
【0058】
[実施例2]
調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体の代わりに調製例4で得たクエン酸−乳酸共重合体6gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは17.8万、Tgは55.0℃、引張強度は61.2MPaで、無色透明で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。YI値は4.0であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。50℃の条件、及び60℃の条件のいずれも、蒸留水に浸漬後、フィルムにはすぐに白化が見られた。また50℃の条件では5日経過時、60℃の条件では19時間経過時にはフィルムの引張強度が0になった。評価結果を表1〜表4に示す。
【0059】
[実施例3]
ポリ乳酸の量を59.4g、調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体の量を0.6gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは21.0万、Tgは59.8℃、引張強度は62.3MPaで、無色透明で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。YI値は4.0であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。評価結果を表1〜表4に示す。
【0060】
[実施例4]
ポリ乳酸の量を48g、調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体の量を12gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは9.9万、Tgは50.9℃、引張強度は59.1MPaで、無色透明で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。YI値は4.0であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。50℃の条件、及び60℃の条件のいずれも、蒸留水に浸漬後、フィルムにはすぐに白化が見られた。また50℃の条件では1.5日経過時、60℃の条件では14時間経過時にはフィルムの引張強度が0になった。評価結果を表1〜表4に示す。
【0061】
[実施例5]
調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体(リンゴ酸と乳酸とのモル比1:10)の代わりに調製例2で得たリンゴ酸−乳酸共重合体(リンゴ酸と乳酸とのモル比1:20)6gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは18.8万、Tgは56.1℃、引張強度は62.5MPaで、無色透明で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。YI値は3.9であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。50℃の条件、及び60℃の条件のいずれも、蒸留水に浸漬後、フィルムにはすぐに白化が見られた。評価結果を表1〜表4に示す。
【0062】
[実施例6]
ポリ乳酸の量を48gに変更し、また調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体(リンゴ酸と乳酸とのモル比1:10)の代わりに調製例3で得たリンゴ酸−乳酸共重合体(リンゴ酸と乳酸とのモル比1:50)12gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは14.5万、Tgは51.1℃、引張強度は60.6MPaで、無色透明で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。YI値は4.1であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。50℃の条件、及び60℃の条件のいずれも、蒸留水に浸漬後、フィルムにはすぐに白化が見られた。また50℃の条件では5日経過時、60℃の条件では19時間経過時にはフィルムの引張強度が0になった。評価結果を表1〜表4に示す。
【0063】
[実施例7]
ポリ乳酸の代わりにMwが15.0万のポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子社製ビオノーレ 3010)54gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは12.3万で、白色で柔軟かつ強度の高いフィルムであった。このフィルムに対して、実施例1と同様にしてMw保持率の測定による分解性の評価を行った。評価結果を表1及び表3に示す。
【0064】
[比較例1]
調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは23.1万、Tgは59.8℃、引張強度は67.0MPaで、無色透明のフィルムであった。YI値は3.9であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。何れの温度条件でもフィルムの外観は無色透明のままであった。評価結果を表1〜表4に示す。
【0065】
[比較例2]
調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体の代わりに比較調製例1で得たアスパラギン酸−乳酸共重合体6gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは21.7万、Tgは59.8℃、引張強度は63.2MPaで、黄褐色透明のフィルムであった。YI値は18.9であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。評価結果を表1〜表4に示す。
【0066】
[比較例3]
調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体を使用しなかったこと以外は、実施例7と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは14.8万で、白色のフィルムであった。このフィルムに対して、実施例1と同様にしてMw保持率の測定による分解性の評価を行った。評価結果を表1及び表3に示す。
【0067】
[比較例4]
ポリ乳酸の量を59.4gに変更し、また調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体の代わりに東京化成製O−アセチルクエン酸トリエチル0.6gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは23.2万、Tgは58.2℃、引張強度は62.3MPaで、無色透明のフィルムであった。YI値は3.9であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。評価結果を表1〜表4に示す。
【0068】
[比較例5]
調製例1で得たリンゴ酸−乳酸共重合体の代わりに東京化成製O−アセチルクエン酸トリエチル6gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして150μm厚のフィルムを作製した。フィルムのMwは22.9万、Tgは44.1℃、引張強度は28.5MPaで、無色透明のフィルムであった。YI値は4.0であった。このフィルムに対して、実施例1と同様にして分解性の評価を行った。評価結果を表1〜表4に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
表1〜4に示すように、ポリ乳酸に共重合体(A)を配合した実施例1〜6のフィルムは、ポリ乳酸に何も配合しなかった比較例1のフィルムやポリ乳酸にO−アセチルクエン酸トリエチルを配合した比較例4及び5のフィルムよりも分解性が優れていた。
【0073】
ポリ乳酸に共重合体(A)を6g配合した実施例1、2及び5のフィルムは、ポリ乳酸にアスパラギン酸−乳酸共重合体を6g配合した比較例2のフィルムよりも分解性が優れていた。また、先に述べた通り比較例2のフィルムは着色した黄褐色透明だが、実施例1〜6のフィルムは無色透明であった。
【0074】
実施例7ではポリブチレンサクシネートアジペートに共重合体(A)を配合したので、ポリブチレンサクシネートアジペートに何も配合しなかった比較例3よりも分解性が優れていた。
【0075】
[実施例8]
実施例1で得たフィルムについて、島津製作所製UV−3100PCを用いて、波長200〜800nmの光に対する透過率を1nm毎に測定した。結果を
図1に示す。
【0076】
[比較例6]
比較例2で得たフィルムについて、実施例8と同様にして、波長200〜800nmの光に対する透過率を1nm毎に測定した。結果を
図1に示す。
【0077】
図1に示すように、実施例8[ポリ乳酸に共重合体(A)を6g配合した実施例1のフィルム]は、比較例6[ポリ乳酸にアスパラギン酸−乳酸共重合体を6g配合した比較例2のフィルム]よりも波長200〜800nmの光に対する透過率に優れていた。
【0078】
[実施例9]
実施例1で得たフィルムを23±2℃、50±5%RH環境下で放置した。放置後14日後、23日後、52日後、107日後、253日後、368日後のフィルムのMw保持率とフィルムの引張強度保持率をそれぞれ表5及び表6に示す。
【0079】
[比較例7]
比較例1で得たフィルムについて、実施例9と同様にして保存安定性の評価を行った。評価結果を表5及び表6に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
表5及び表6に示すように、実施例9[ポリ乳酸に共重合体(A)を配合した実施例1フィルム]は、通常の保存環境(23℃、50%RH)下では、比較例7[ポリ乳酸に何も配合しなかった比較例1のフィルム]とほぼ同等の保存安定性を示し、特に引張強度については殆ど低下しなかった。