(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823654
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】ロール装置
(51)【国際特許分類】
B21B 31/07 20060101AFI20151105BHJP
【FI】
B21B31/07 E
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-516567(P2015-516567)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公表番号】特表2015-519207(P2015-519207A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013061822
(87)【国際公開番号】WO2013186142
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】102012209831.3
(32)【優先日】2012年6月12日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ケラー・カール
(72)【発明者】
【氏名】アルケン・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】レーイング・コンラート
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−523069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 31/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのロール胴(11)と2つのロールネック(10)を有するロールと、半径方向遊びを有することなくロールネック(10)の一方を回転不能に収容するための少なくとも1つのネックブッシュ(20)とを備える、冶金技術において使用するためのロール装置(100)において、
無負荷状態で、少なくとも1つの部分領域内に、回転対称の環状の中空空間(12)が、ネックブッシュ(20)とロールネック(10)の間に形成されていること、及び、中空空間(12)が、ロールネック(10)の外周面(13)及び/又はネックブッシュ(20)の内周面(21)の、回転対称でロール装置(100)の長手方向軸に沿った縦断面で見て凹の成形部によって拡大されていること、を特徴とするロール装置。
【請求項2】
ロールネック(10)の外周面及び/又はネックブッシュ(20)の内周面(21)は、ロール装置(100)の長手方向軸に沿った縦断面で見て凹のその成形部の領域内が、少なくとも部分的に直線、サインカーブ、n次の多角カーブ(R(x))又はこれらの組合せの形態で輪郭付けされていること、を特徴とする請求項1に記載のロール装置。
【請求項3】
ロールネック(10)の外周面のプロフィル(40)及び/又はネックブッシュ(20)の内周面(21)のプロフィルは、ロール装置(100)の長手方向軸に沿った縦断面で見て凹のその成形部の領域内が、隣接する2つの部分の間の移行領域において連続的で細分化可能であること、を特徴とする請求項2に記載のロール装置。
【請求項4】
中空空間(12)の容積は、ネックブッシュ(20)の変形が弾性領域に留まっている間は、負荷状態での最大軸受負荷が大きくなるほど、大きくなるように形成されていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロール装置。
【請求項5】
ロールネック(10)の外周面(13)とネックブッシュ(20)の内周面(21)が、切頭円錐形に形成されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のロール装置。
【請求項6】
ロールネック(10)の外周面(13)とネックブッシュ(20)の内周面(21)が、シリンダ状に形成されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のロール装置。
【請求項7】
ロールが、ロールスタンドで使用するためのバックアップロール又は中間ロール又はワークロールであること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のロール装置。
【請求項8】
ロール装置が、更に、軸受ブッシュ(51)を有する少なくとも1つのチョック(50)を備え、軸受ブッシュ内に、ネックブッシュ(20)が、ロールネック(10)もしくはロールと共に、軸受ブッシュとネックブッシュ(20)の間の支持油膜(30)を使用して滑動するように支承されていること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のロール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのロール胴と2つのロールネックを有するロールと、半径方向遊びを有することなくロールネックの一方を回転不能に収容するための少なくとも1つのネックブッシュとを備える、冶金技術において使用するためのロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、ロールネックがシリンダ状又は円錐形のネックブッシュ内に収容されたロール装置が公知である。
【0003】
例えば、圧延機における油膜軸受は、圧下シリンダからの圧延荷重を中継し、この圧延荷重をワークロールに伝達するバックアップロールを支承するために使用される。これは、高負荷を受ける滑り軸受のことであり、これら滑り軸受は、大抵は高いゾンマーフェルト数領域において、即ち比較的低い回転数及び比較的高い負荷の時に作動する。負荷ゾーン内に形成される部分的に1500bar以上までになる非常に高い圧力の場合、圧力負荷を受ける面の弾性変形もしくは扁平化が行なわれる。弾性領域内でのこの扁平化により、例えば圧下シリンダによって加えられる外力の作用方向とは反対に大きい加圧有効面が生じる。従って、軸受は、大きい負荷を支持することができる。この効果は、“弾性流体(EHD)負荷能力向上”と呼ばれる。この効果を更に強化するため、いわゆるMogoil−KLM(登録商標)軸受が使用されるが、これら軸受は、円錐形に形成された薄肉のネックブッシュを滑り面として備える(米国特許第6,468,194号明細書又は欧州特許第1 213 061号明細書参照)。
【0004】
欧州特許第1 651 876号明細書
、米国特許第2,955,002号明細書及び仏国特許第2 405 761号明細書には、ロールネックに装着されたそのネックブッシュが、チョック内に配置された軸受ブッシュによって包囲された、ロールネックのための油膜軸受が記載されている。
【0005】
欧州特許第1 651 876号明細書には、ロールネックに装着されたそのネックブッシュが、チョック内に配置された軸受ブッシュによって包囲された、ロールネックのための油膜軸受が記載されている。
【0006】
独国特許出願公告第603 03 052号明細書から、ロールネックのネック面を回転可能に支持するためのシリンダ状のブッシュを有し、ブッシュが、潤滑剤を収容するために凹部を備えている、圧延機において使用するための油膜軸受が公知である。
【0007】
独国特許出願公告第38 76 663号明細書には、流体潤滑膜上に回転する軸受を支持するためのシリンダ状のブッシュが記載されている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,468,194号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 213 061号明細書
【特許文献3】欧州特許第1 651 876号明細書
【特許文献4】独国特許出願公告第603 03 052号明細書
【特許文献5】独国特許出願公告第38 76 663号明細書
【特許文献6】米国特許第2,955,002号明細書
【特許文献7】仏国特許第2 405 761号明細書
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,468,194号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 213 061号明細書
【特許文献3】欧州特許第1 651 876号明細書
【特許文献4】独国特許出願公告第603 03 052号明細書
【特許文献5】独国特許出願公告第38 76 663号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Newsletter 01/2009,SMS Group,第16年度刊第1号、2009年4月、50〜51ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の根底にある課題は、ロール装置の構造サイズもしくは組込みサイズを拡大することなく、ロール装置の負荷能力を更に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、本発明によれば請求項1の特徴によって解決される。本発明は、1つのロール胴と2つのロールネックを有するロールと、半径方向遊びを有することなくロールネックの一方を回転不能に収容するための少なくとも1つのネックブッシュを備える、冶金技術において使用するためのロール装置を説明する。このロール装置は、特に、無負荷状態で、環状の中空空間が、ネックブッシュとロールネックの間に形成されていることを特徴とする。
【0013】
中空空間は、最大軸受荷重に依存して正確に予め寸法設定されている。環状の中空空間は、環状の中空プロフィルの意味の回転対称のリング間隙の形態で、ロール装置の長手方向軸に対して垂直な平面内に形成されている。
【0014】
第1の実施例によれば、中空空間が、ロールネックの外周面及び/又はネックブッシュの内周面における、回転対称の凹の
成形部によって
拡大されている。
【0015】
本発明の別の形成では、ロールネックの外周面及び/又はネックブッシュの内周面は、ロール装置の
長手方向軸に沿った縦断面で見て凹のその
成形部の領域内が、少なくとも部分的に直線、サインカーブ、n次の多角カーブR(x)又はこれらの組合せの形態で輪郭付けされている。半径方向遊びを有しないロールネック上のネックブッシュのための安定した軸受座を保証するため、ネックブッシュとロールネックは、軸方向に中空空間に隣接して、互いに隣接する支持面を備える。
【0016】
更に、ロールネックの外周面の輪郭又はネックブッシュの内周面の輪郭は、ロール装置の
長手方向軸に沿った縦断面で見て凹のその
成形部の領域内が、隣接する2つのプロフィル部分の間の移行領域において連続的で細分化可能である。これにより有利には、特に負荷を受けた場合、互いに向かって作用するネックブッシュとロールネックの周面における窪み箇所、例えば溝の形成を回避するために、プロフィルの個々のプロフィル部分の間に、エッジのないスムーズな移行部が得られる。これにより有利には、生じ得るノッチ作用の欠点に反作用が加えられる。
【0017】
更に、ロールネックの外周面の輪郭又はネックブッシュの内周面の輪郭は、ロール装置の
長手方向軸に沿った縦断面で見て凹のその
成形部の領域が、軸方向の軸受荷重の分布と相関しているので、負荷下で局所的にネックブッシュのその弾性領域内でのできるだけ大きい扁平化が得られ、この扁平化は、構造サイズが変更されない時のロール装置の負荷能力を拡大する。
【0018】
更に、ロールネックの外周面の輪郭又はネックブッシュの内周面の輪郭は、ロール装置の縦断面で見て凹のそのキャビティの領域が、軸方向の軸受荷重の分布と相関しているので、負荷下で局所的にネックブッシュのその弾性領域内でのできるだけ大きい扁平化が得られ、この扁平化は、構造サイズが変更されない時のロール装置の負荷能力を拡大する。
【0019】
更に、本発明では、ロールネックの外周面とネックブッシュの内周面が、相補的に切頭円錐形に形成されている。有利には、ネックブッシュは、円錐を介して容易にロールネックに取り付けることもしくは再び取り外すことができる。
【0020】
本発明による装置の好ましい選択的な実施形態の場合は、ロールネックの外周面がシリンダ状に形成され、ネックブッシュの内周面が、相補的にシリンダ状に形成されている。この場合有利には、半径方向遊びを有しない摩擦係合式の結合部を形成するために焼嵌めされる。
【0021】
更に、本発明では、ロールが、ロールスタンドで使用するためのバックアップロール又は中間ロール又はワークロールである。
【0022】
別の実施例によれば、ロール装置が、軸受ブッシュを有する少なくとも1つのチョックを備え、軸受ブッシュ内に、ネックブッシュが、ロールネックもしくはロールと共に、軸受ブッシュとネックブッシュの間の支持油膜を使用して滑動するように支承されている。
【0023】
全体として、本発明によるロール装置によって、既存の組込みスペースを変更する必要なしに支承部の負荷能力向上もしくは能力向上を得るために、例えば圧延装置内の既存のロール装置を本発明によるロール装置によって置換もしくは交換する単純かつ安価な可能性が得られる。本発明によるロール装置は、簡単に取り付けることができる。修理時には、単純かつ迅速な交換が可能である。
【0024】
本発明の別の利点及び詳細は、従属請求項及び図に図示した本発明の実施形態を詳細に説明する後続の説明からわかる。この場合、前で述べた特徴の組合せ以外に、単独の特徴又は他の組合せの特徴も本発明にとって重要である。
【0025】
本発明を以下で
図1〜4に関係させて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ロールとプロフィル形成されたシリンダ状のネックブッシュ
【
図2】ロールとプロフィル形成された円錐形のネックブッシュ
【
図3】ロールネックの外周面及び/又はネックブッシュの内周面のための異なったプロフィル経過(3a〜3c)
【
図4】ネックブッシュの弾性変形を図示する、最大の中空空間の領域の断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
ネックブッシュ20の内周面21及び/又はロールネックの外周面は、例えば旋盤加工又は研削盤加工によって形成された以下ではプロフィル40とも呼ばれる凹の輪郭を備えている。プロフィル40は、ネックブッシュ20の縦断面で見て凹のその
成形部の領域が、少なくとも部分的に直線、サインカーブ、n次の多角カーブR(x)又はこれらの組合せの形態で輪郭付けされている。しかしながらまた、プロフィル40は、放物線状のカーブの形態を描くことができる。
【0028】
凹のカーブ経過もしくは
成形部により、ネックブッシュ20又はロールネック10に凹部が構成され、これら凹部は、ロールネック10上にネックブッシュ20が装着された時に、無負荷状態で、半径方向に囲繞する回転対称の中空空間12を、ネックブッシュ20とロールネック10の間に形成する。中空空間12は、回転対称の環状の中空プロフィルの意味のリング間隙の形態で形成されている。ネックブッシュ20の外周面22とロールネック10の外周面13は、示した
図1による図において模範的にシリンダ状に形成されている。
【0029】
凹のカーブ経過もしくはキャビティにより、ネックブッシュ20又はロールネック10に凹部が構成され、これら凹部は、ロールネック10上にネックブッシュ20が装着された時に、無負荷状態で、半径方向に囲繞する回転対称の中空空間12を、ネックブッシュ20とロールネック10の間に形成する。中空空間12は、回転対称の環状の中空プロフィルの意味のリング間隙の形態で形成されている。ネックブッシュ20の外周面22とロールネック10の外周面13は、示した
図1による図において模範的にシリンダ状に形成されている。
【0030】
前で説明したプロフィル40をロールネック10の外周面に配置し、ネックブッシュ20の内周面21をシリンダ状に形成することを行なうことができる。前記プロフィル40は、同時にネックブッシュの内周面とロールネックの外周面とに、特に向い合せに形成することもできる。
【0031】
ロールネック10上に装着する時のネックブッシュ20の装着位置を制限するために、ロール胴11の端面とネックブッシュ20の間に、ストッパ25を有するスペーサリング28が配置されている。選択的に、ロール胴11は、端面側に、ロール胴と一体的に形成された、ストッパ25としての突起(図示してない)を備えることもできる。ネックブッシュ20は、ロールネック10上に装着した後、ロールネック10を支承するために選択的に配置されたスラスト軸受を介した加圧ショルダリング17とナット18とによって軸方向xにスペーサリング25に対して締め付けられ、軸方向に移動しないように固定され、ロールネックは、その端部に加圧ショルダリング17を収容するためにハブ突起26を備え、これに続き、ナット18を収容するためのネジ付ピン27を備えている。
図1及び2には、概略的にだけ、加圧ショルダリング17とナット18の間のスラスト軸受−インナリング16が図示されている。ナット18は、付加的に回転防止装置19、例えばロックナットによって解離しないように固定することができる。
【0032】
シリンダ状のネックブッシュの肉厚dは、更に以下で説明する選択的な回転対称の凹の
成形部を考慮せずに、10mm〜75mmである。
【0033】
シリンダ状のネックブッシュの肉厚dは、更に以下で説明する選択的な回転対称の凹のキャビティを考慮せずに、10mm〜75mmである。
【0034】
加えて、ロールネック10と共にネックブッシュ20を収容するための軸受ブッシュ51を有する少なくとも1つのチョック50を設けることができ、チョック50の軸受ブッシュ51とネックブッシュ20の外周面22の間に支持油膜30が設けられている。この装置は、油膜軸受部とも呼ばれる。好ましい形成では、軸受ブッシュ51の内周面が、軸受メタルライニング、例えばホワイトメタルでコーティングされている。
【0035】
図2の図による他の形成では、ロールネック10が、切頭円錐形に形成されている。ネックブッシュ20の内周面21は、切頭円錐形のロールネック10の(プロフィルを有しない)理想線に対して相補的に形成されている。この場合、前で説明したように、ネックブッシュの内周面21及び/又はロールネックの外周面13におけるプロフィル40が設けられている。
【0036】
このバリエーションの場合、ネックブッシュ20は、ネックブッシュ20とロールネック10の間の半径方向の遊びが除去されるまで、ロールネック10に装着されている。引き続き、ネックブッシュ20は、前で
図1に対して説明したように、予荷重を与えられ、移動しないように固定されている。
【0037】
半径方向遊びを有しないロールネック10上のネックブッシュ20のための安定した軸受座を保証するため、ネックブッシュ20とロールネック10は、軸方向に隣接して中空空間に対する両側に、互いに隣接する支持面14を備える。
【0038】
円錐形のネックブッシュ20の肉厚dは、その薄い端部において10mm〜75mmである。
【0039】
ネックブッシュ20とロールネック10の間には、マイクロ摩擦によるマイクロ冷間圧接を回避するために、付加的に潤滑膜31が配置されている。ロールネック10又はネックブッシュ20におけるプロフィル40は、この円錐形の実施形態の場合、前で
図1に対して説明したように形成されている。
【0040】
図3a及び3bは、ロールを有するロール装置100と、ロールネック10の一方を遊びなく回転不能に収容するための少なくとも1つのネックブッシュ20とを原理的に説明する。この場合、ロールネック10の外周面13とネックブッシュ20の内周面21は、シリンダ状又は切頭円錐形に形成することができ、それぞれの周面13,21は、互いに相補的に形成され、半径方向遊びを有することなく互いに隣接する。
【0041】
図3cの図によるネックブッシュ20の内周面21及び/又はロールネック10の外周面13のプロフィル40は、模範的に、n次の数学関数R(x)の異なった可能性を説明するが、これらは、負荷の場合に応じて他のプロフィルと組み合わせても使用可することができる。プロフィル部分を互いに組み合わせた時の均等なエッジなしの移行部を保証するため、プロフィル40は、隣接する2つのプロフィル部分の間の移行領域が、連続的で細分化可能に形成されている。
図3cに図示したカーブ経過が、実際に実行可能なプロフィルを説明するものではないことを述べておく。図示した多数のカーブ部分もしくはプロフィル部分は、異なった可能なプロフィルバリエーションを概略的に図示するために使用されるに過ぎない。
・機能方式
本発明の機能方式を、以下で
図4に関係させて詳細に説明する。
【0042】
プロフィル40から生じる、ネックブッシュ20とロールネック10の間の本発明による回転対称の中空空間12により、ネックブッシュ20とロールネックの間に拡大された自由空間が生じ、この自由空間内へ、ネックブッシュ20は、力作用の場所で膨張することができる。
【0043】
具体的には、ロールスタンドでの圧延モードで、少なくとも実質的に垂直方向上方へ向いた圧延荷重F
Wが、上の(バックアップ)ロールに加えられ、これに対して同時に少なくとも実質的に垂直方向下方へ向いた圧延荷重F
Wが、下の(バックアップ)ロールに加えられる。これら圧延荷重は、ロール胴からそれぞれ半分だけロールネックに伝達され、これにより、上のチョック内のロールネックが上方へ、下のチョック内のロールネックが下方へ押し付けられる。
【0044】
圧延荷重は、作用連鎖に従いロールネックから更にネックブッシュ、ネックブッシュと軸受ブッシュの間の支持油膜及び軸受ブッシュを介してチョックに伝達される。チョックから、圧延荷重は、更にチョックを支承するロールスタンド内へ導出される。
【0045】
チョック及びチョック内に支承された軸受ブッシュは、理想化して圧延荷重に対して非可撓性及び非圧縮性であると見なすべきである。即ち、チョック及び軸受ブッシュは、これらがそれぞれ値的には同じであるが反対向きの軸受荷重F
L(リアクション)を対向させることによって、これらに作用するそれぞれ半分の圧延荷重F
W/2を(アクション)を完全に受け止める。
【0046】
既に僅かな圧延荷重F
Wによる圧延モード中のロールネックへの作用が、ロールネック10をネックブッシュ20と共に圧延荷重F
Wの方向に支持油膜30に押し付け、支持油膜を軸受けブッシュ51及びチョックに押し付けることを生じさせる(
図2)。しかしながらこの場合、ネックブッシュ20は、非圧縮性の支持油膜30に衝突し、この支持油膜自身は、非可撓性の軸受ブッシュ51及び非可撓性のチョック50によって、圧延荷重の方向への回避を阻止される。従ってその結果、ネックブッシュは、対立する軸受荷重F
Lによって、圧延荷重の方向への回避を阻止されている。
【0047】
ネックブッシュ20自身は、本発明による中空空間12と関係して、ロールネック10へ向かって、前で示した(圧延)荷重の作用連鎖における最弱の成分である。
【0048】
ネックブッシュ20が圧延荷重を回避することができないので、圧延モード中に負荷を受けた場合は、ネックブッシュ20を弾性変形させる。ネックブッシュ20は、圧延荷重F
W/2もしくは反対向きの軸受荷重F
Lによって−当初の−中空空間12内へ変形され、この場合扁平化される。扁平化は、最大で、ネックブッシュ20がロールネック10に押し付けられ、このロールネックによって支持されるまで行なわれる。ネックブッシュ20は、局所的に、弾性的にロールネックのプロフィル40に適合し、除荷後再び当初の状態に変形する。扁平化により、ネックブッシュ20と軸受ブッシュ51の間の加圧有効面が拡大される。ネックブッシュ20と軸受ブッシュ51の間に、支持油膜30が配置され、この支持油膜は、いわゆる流体油膜軸受部を構成する。本発明によるロール装置は、加圧有効面の拡大に基づいて、ネックブッシュと軸受ブッシュの間の流体油膜軸受部の負荷能力を向上させる。
【0049】
現実では、圧延荷重もしくは軸受荷重は、点状又は線状ではなく、山状荷重の形態で作用する。山状荷重は、周方向及び軸方向に面状の広がりを有する。ネックブッシュの扁平化とこれに結び付いた加圧有効面の拡大により、面状に広がりを有する山状荷重のためのロール装置の明らかな負荷能力の向上が得られる。
【0050】
本発明によるロール装置は、また、ネックブッシュが無負荷状態で既に例えば収縮による予荷重により摩擦係合式にロールネックと結合されたロール装置に対して明らかに多く負荷を受け得る。ネックブッシュの弾性的な扁平化のために必要な力の作用は、本発明による中空空間に基づいて、軸受ブッシュとネックの間に予荷重付与部を有する構造の場合よりも少ない。予荷重を受ける構造の場合、同じネックブッシュの変形を実現するために、より大きい力が必要である。
【0051】
換言すれば以下のようである:
ネックブッシュ20の比較的薄い肉厚のために、ネックブッシュ20の内周面21における負荷下の変形は、変わりなく、即ち同じ方向に、ネックブッシュ20の外周面22において生じ、これにより、力の作用とは反対のネックブッシュ20と軸受ブッシュ51の間の加圧面の拡大/拡幅を生じさせる。これが更にまた、潤滑膜圧力の均等な分布を生じさせるので、より大きい力が受け止められ、より広く分布させることができ、支持油膜30内でのピーク圧力が、軸受ブッシュのもしくは軸受ブッシュの軸受メタルライニングの材料の限界値を上回ることはない。従って、本発明による装置は、ネックブッシュ20と軸受ブッシュ51の間の流体潤滑膜もしくは油膜軸受部の負荷能力を向上させる。
【符号の説明】
【0052】
100 ロール装置
10 ロールネック
11 ロール胴
12 中空空間
13 ロールネックの外周面
14 平坦な支持面
15 中心軸
16 スラスト軸受−インナリング
17 加圧ショルダリング
18 ナット
19 ロックナット
20 ネックブッシュ
21 ネックブッシュの内周面
22 ネックブッシュの外周面
23 ドグ要素
25 ストッパ
26 ハブ突起
27 ネジ付ピン
28 スペーサリング
30 支持油膜
31 潤滑膜
40 プロフィル
44 圧力分布−従来技術
46 最適化された圧力分布
50 チョック
51 軸受ブッシュ
R(x) 数学関数としてのプロフィル
x 軸方向の座標
F
W 圧延荷重
F
L 軸受荷重
t プロフィルの深さ
d ネックブッシュの肉厚