特許第5823680号(P5823680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許5823680-踏切障害物検知装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823680
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】踏切障害物検知装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/00 20060101AFI20151105BHJP
【FI】
   B61L29/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-250947(P2010-250947)
(22)【出願日】2010年11月9日
(65)【公開番号】特開2012-101644(P2012-101644A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(74)【代理人】
【識別番号】100170678
【弁理士】
【氏名又は名称】江頭 達哉
(72)【発明者】
【氏名】須永 雅之
(72)【発明者】
【氏名】笠井 貴之
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−006158(JP,A)
【文献】 特開2010−085368(JP,A)
【文献】 特開2010−095192(JP,A)
【文献】 米国特許第05774045(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された監視領域内に電波を送信し、その反射波を受信する送受信器と、
前記電波を前記送受信器に向けて反射する反射板と、
前記監視領域内の背景パターン情報を記憶し、前記背景パターンの反射波を前記背景パターン情報により相殺し、前記監視領域内の障害物を検知する信号処理部と、を備え、
前記監視領域を前記反射板の内部に設定することで、反射板からの反射波を信号処理部の処理対象外とし、前記背景パターン情報には、前記反射板の情報は記憶されない、踏切障害物検知装置。
【請求項2】
請求項に記載された踏切障害物検知装置であって、前記信号処理部は、処理対象外である前記反射板からの反射波を検知対象とすることで、前記送受信器が故障状態であるか否かを判定する、踏切障害物検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切道内に取り残された障害物をミリ波などの電波により検知する踏切障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波によって踏切道内に取り残された障害物を検知する踏切障害物検知装置が開発されている。このミリ波式踏切障害物検知装置は、例えば特許文献1に開示されており、天候などの外部条件に影響されにくいという優れた特性を有する。
【0003】
ミリ波式踏切障害物検知装置の優れた特性は、他にもある。従来の光式踏切障害物検知装置は、障害物がセンサ装置の光を遮断することにより障害物を検知するから、光軸同士の間隔に入り込める人間や車椅子などの小さい障害物を検知しにくいという問題があった。
【0004】
これに対して、ミリ波式踏切障害物検知装置は、ミリ波を監視領域に送出し、障害物からの反射波により検知を行うから、小さい障害物でも確実に検知することができる。もちろん、自動車のような大きな障害物も、同様に検知することができる。しかも、ミリ波式踏切障害物検知装置においては、踏切道の全領域を覆うようにミリ波を送出し、監視領域を最大限まで拡張できるので、従来の光式またはループ式の踏切障害物検知装置と異なって、監視領域に死角を生じることがない。
【0005】
このように、ミリ波式踏切障害物検知装置は、優れた特性を有するのであるが、その優れた特性のために、監視領域内外に存在する建築物をも検知してしまう。このため、ミリ波式踏切障害物検知装置の設置に当たっては、従来は、監視領域内外に存在し、誤検知の原因となることが予想される既設の建築物を移設したり、或いは、新規建築物の設置を制限するなどの対策を採らざるを得なかった。
【特許文献1】特開2005−234813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、監視領域内に存在する建築物による誤検知を生じることなく、障害物を検知し得る踏切障害物検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、設定された監視領域内に電波を送信し、その反射波を受信する送受信器と、前記電波を前記送受信器に向けて反射する反射板と、前記監視領域内の背景パターン情報を記憶し、前記背景パターンの反射波を前記背景パターン情報により相殺し、前記監視領域内の障害物を検知する信号処理部と、を備え、前記監視領域を前記反射板の内部に設定することで、反射板からの反射波を信号処理部の処理対象外とし、前記背景パターン情報には、前記反射板の情報は記憶されない
【0008】
記信号処理部は、前記送受信器を基準にして、前記反射板より手前の位置に設定された監視領域内の背景パターン情報を記憶しており、前記背景パターンの反射波に属する電気信号を、前記記憶された背景パターン情報によって相殺する。
【0009】
また、踏切障害物検知装置は、背景パターン情報には反射板の情報は記憶しないことが好ましい。これにより、障害物検知動作において、背景パターンの反射波に属する電気信号を、予め記憶された背景パターン情報の信号によって相殺することができるから、監視領域内外に属する建築物による誤検知を生じることなく、障害物を検知し得る。したがって、監視領域内に存在する既設の建築物を移設する必要もなくなるし、また、新規建築物の設置に関する制限も緩和される。
【0010】
さらに、踏切障害物検知装置は、信号処理部が処理対象外である反射板からの反射波を検知対象とすることで、送受信器が故障状態であるか否かを判定することが好ましい。これにより、信号処理部は、監視領域内の障害物からの反射波に基づいて障害物を検知するのであるから、監視領域の外部にある反射板の反射波は、検知対象となっていない。したがって、障害物の検知動作においては、反射板からの反射波は無視され、除外されるから、障害物検知動作における信号処理が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明によれば、監視領域内外に属する建築物による誤検知を生じることなく、障害物を検知し得る踏切障害物検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る踏切障害物検知装置の一実施形態を概要的に示す図である。
図2】本発明に係る踏切障害物検知装置における背景処理を示す図である。
図3図2に示した背景処理の後の処理を説明する図である。
図4図3に示した背景処理の後の処理を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明による踏切障害物検知装置の実施形態を示す構成概要図である。図示の踏切障害物検知装置は、踏切道4に入った障害物10の有無を検知するもので、送受信器1、2と、反射板11〜13、21〜23と、信号処理部3とを備える。踏切道4は、列車61の走行する線路51(上り方向)及び列車62の走行する線路52(下り方向)と、同一平面上で交差しており、その出入り口に当たる両側に、遮断機71、81によって昇降駆動される遮断棹72、82が設けられている。図示の線路51、52の線形は、一例であって、これに限定されるものではない。障害物10には、人、車椅子、自転車又は自動車等が含まれる。
【0014】
送受信器1、2は、遮断機71、81の遮断棹72、82の内側で、且、踏切道4の外側にあって、踏切道4を挟んで、対角位置に配置されている。送受信器1、2には、それぞれ担当する放射領域(S11〜S13)、(S21〜S23)が割り当てられており、これら放射領域(S11〜S13)、(S21〜S23)に対して、電波を送信し、踏切道4内の障害物10からの反射波を受信する。電波は、好ましくは、ミリ波帯の電波を用いる。ミリ波は、周知のように、周波数が30〜300GHz(波長10〜1mm)の電波であり、極めて狭い指向性を持つ。
【0015】
送受信器1は、遮断機71のある側の隅部近傍に配置してある。送受信器1の担当する放射領域(S11〜S13)は、遮断機71の内側から、送受信器2の放射領域(S21〜S23)と隣接するまでの領域である。送受信器1の担当する放射領域(S11〜S13)は、空間的な空白領域が生じないように連続させる。
【0016】
送受信器2は、遮断機81のある側の隅部近傍に配置してある。送受信器2の担当する放射領域(S21〜S23)は、放射領域(S11〜S13)と隣接する領域から、遮断機81の内側までの領域である。送受信器2の担当する放射領域(S21〜S23)も、空間的な空白領域が生じないように連続させる。
【0017】
反射板11〜13は、踏切道4を挟んで送受信器1と対向するように設けられる。これらの反射板11〜13は、送受信器1から放射された電波を、送受信器1に向けて反射するものである。もう一組の反射板21〜23は、踏切道4を挟んで送受信器2と対向するように設けられる。この反射板21〜23は、送受信器2から放射された電波を、送受信器2に向けて反射する。反射板11〜13、21〜23からの反射波が検知されないとき、送受信器1、2が故障状態であると判定する。この判定は、信号処理部3によって行われる。
【0018】
信号処理部3は、送受信器1、2に接続され、外部から供給される動作条件信号S1に基づき、送受信器1、2の動作を制御すると共に、送受信器1、2において受信した反射波の電気信号を用いて、監視領域SAの内部における障害物10の有無を判定する。また、反射板11〜13、21〜23で反射された反射波の受信情報に基づいて、送受信器1、2の診断を行う自己診断機能を備える。この信号処理部3は、送受信器1、2の近傍又は所定の電気機器室等に設けられる。信号処理部3は、CPU又はマイクロプロセッサ(MPU)によって構成することができる。信号処理部3から出力される障害物の有無判定結果及び自己診断結果の検知信号S2は、例えば鉄道交通システムの運行制御を行う図示しない地上制御装置へ送出され、踏切道の遮断機の開閉や列車の運行停止等の制御に用いられる。
【0019】
反射板11〜13、21〜23は、送信部1、2の故障検知に供されるものであって、障害物10の検知動作そのものには直接には関与しない。そこで、障害物10の検知処理においては、反射板11〜13、21〜23で反射された反射波の処理を、処理対象から除外した方が、合理的である。一方、踏切道4の内部又はそれに隣接して、鉄道用建築物が存在することがある。したがって、障害物10の検知処理に当たっては、建築物からの反射波をも除外するのが合理的である。
【0020】
その手段として、まず、送受信器1、2を基準にして、反射板11〜13、21〜23より手前に、監視領域SAを設定する。この実施の形態に示す監視領域SAは、ほぼ、踏切道4の幅に相当する監視範囲LA1、LA2(=LA1)と、踏切道4の長さとによって定まる平面積を持つ4辺形状である。監視範囲LA1は、送受信器1の設置位置P10から距離L10を隔てた踏切道4の一側位置P11と、踏切道4の他側位置P12との間の距離であり、監視範囲LA2は、送受信器2の設置位置P20から、距離L20を隔てた踏切道4の一側位置P21と、踏切道4の他側位置P22との間の距離である。もっとも、監視範囲LA1、LA2は、踏切道4の幅員の外側まで伸びていてもよい。
【0021】
信号処理部3は、送受信器1、2を基準にして、反射板(11〜13)、(21〜23)より手前の位置に設定された監視領域SA内の背景パターン情報を記憶しており、送受信器1、2から供給される電気信号を解析し、背景パターンの反射波に属する電気信号を、記憶された背景パターン情報の信号によって相殺し、監視領域SA内の障害物10からの反射波に基づいて障害物10を検知する。したがって、既設の建築物を移設したり、或いは、新規建築物の設置を制限するなどの対策を採る必要がなくなる。
【0022】
しかも、監視領域SAは、反射板(11〜13)、(21〜23)より手前の位置に設定されている。つまり、反射板(11〜13)、(21〜23)は、監視領域SAの外部にある。信号処理部3は、監視領域SA内の障害物10からの反射波に基づいて障害物10を検知するのであるから、監視領域SAの外部にある反射板(11〜13)、(21〜23)の反射波は、検知対象となっていない。したがって、障害物10の検知動作においては、反射板(11〜13)、(21〜23)からの反射波は無視され、検知対象から除外される。このような処理は、信号処理部3に設定された監視領域SAの距離情報に基づいて、実行される。次に、図2図4を参照し、本発明に係る踏切障害物検知装置の動作を更に具体的に説明する。
【0023】
まず、図2を参照すると、送受信器1の設置位置P10から距離L10を隔てた踏切道4の一側位置P11と、踏切道4の他側位置P12との間の監視範囲LA1の内部に、反射レベルの高い建築物反射信号Sbが現れ、監視範囲LA1の外部に反射板11〜13の何れかによるレベルの高い反射板反射信号Srが現れる。建築物反射信号Sbは、背景パターン情報である。建築物反射信号Sb及び反射板反射信号Srは、踏切障害物検知装置を予め動作させ、それを信号処理部3のメモリなどに記憶しておく。
【0024】
次に、踏切道4に障害物10が侵入すると、図3に図示するように、監視範囲LA1内に障害物反射信号Ssが現れる。信号処理部3は、送受信器1、2を基準にして、反射板(11〜13)より手前の位置に設定された監視領域SA内の背景パターン情報を記憶しており、送受信器1、2から供給される電気信号を解析し、背景パターンの反射波に属する電気信号を、記憶された背景パターン情報の信号によって相殺する。
【0025】
これにより、図4に示すように、監視領域SAの内部には、障害物10からの反射信号Ssだけとなる。信号処理部3は、この監視領域SA内の障害物10からの反射波に基づいて障害物10を検知することになる。
【0026】
信号処理部3は、監視領域SA内の障害物10からの反射波に基づいて障害物10を検知するのであって、監視領域SAの外部にある反射板(11〜13)の反射波は、検知対象としていない。したがって、監視領域内外に属する建築物による誤検知を生じることなく、障害物10を検知し得ることになり、この結果、監視領域内に存在する既設の建築物を移設する必要もなくなるし、また、新規建築物の設置に関する制限も緩和されることになる。
【0027】
説明は省略するが、上述した動作は、送受信器2、反射板(21〜23)、障害物10及び信号処理部3でも同様に行われる。なお、送受信器1、2による測距機能や、信号処理部3の信号処理方式は、特許文献1などで既に知られている技術をそのまま適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1、2 送受信器
11〜13、21〜23 反射板
3 信号処理部
10 障害物
図1
図2
図3
図4