特許第5823897号(P5823897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5823897圧力測定器、圧力測定器の製造方法、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823897
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】圧力測定器、圧力測定器の製造方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20151105BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20151105BHJP
【FI】
   G01L9/00 303E
   H01L29/84 A
   H01L29/84 B
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-56091(P2012-56091)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-190285(P2013-190285A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】米田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長崎 昇治
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−084465(JP,A)
【文献】 特開平01−046924(JP,A)
【文献】 特開2007−273588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00
H01L 29/84
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に酸化膜を形成することと、
前記酸化膜に凹部を設けることと、
前記凹部の底面に残っている前記酸化膜を介して、不純物イオンを前記半導体基板に選択的に注入し、前記半導体基板に歪み抵抗ゲージを形成することと、
前記半導体基板の表面から前記酸化膜を除去することと、
を含む、圧力測定器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定技術に係り、圧力測定器、圧力測定器の製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体のピエゾ抵抗効果を利用した圧力測定器が、小型、軽量、及び高感度であることから、プラント等で広く利用されている。このような圧力測定器においては、半導体からなるダイアフラムに、歪ゲージが設けられている。ダイアフラムに加わる圧力によって歪ゲージが変形すると、ピエゾ抵抗効果によって歪ゲージの抵抗値が変化する。したがって、歪ゲージの抵抗値を測定することにより、圧力を測定することが可能となる。歪ゲージは、例えば、ダイアフラムとなる半導体基板に不純物イオンを注入することにより製造される(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−97423号公報
【特許文献2】特開2001−308346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力測定器において応力ひずみが生じると、歪みゲージで圧力を正確に測定することが困難となる。そこで、本発明は、応力ひずみの発生を防止し、正確に圧力を測定可能な圧力測定器、圧力測定器の製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、(イ)圧力を受ける可撓膜と、(ロ)可撓膜に設けられた歪み抵抗ゲージと、を備え、(ハ)可撓膜の表面と、歪み抵抗ゲージの表面と、の高さが一致し、平滑である、圧力測定器であることを要旨とする。本発明の態様に係る圧力測定器によれば、可撓膜の表面と、歪み抵抗ゲージの表面と、の高さが一致し、平滑であるため、可撓膜の歪み抵抗ゲージが設けられた部分に応力ひずみが生じにくくなる。
【0006】
本発明の他の態様は、(イ)半導体基板の表面に酸化膜を形成することと、(ロ)酸化膜に凹部を設けることと、(ハ)凹部の底面に残っている酸化膜を介して、不純物イオンを半導体基板に選択的に注入し、半導体基板に歪み抵抗ゲージを形成することと、(ニ)半導体基板の表面から酸化膜を除去することと、を含む、圧力測定器の製造方法であることを要旨とする。本発明の態様に係る圧力測定器の製造方法によれば、半導体基板の表面と、歪み抵抗ゲージの表面と、の高さが一致し、平滑になる。そのため、半導体基板の歪み抵抗ゲージが設けられた部分に応力ひずみが生じにくくなる。
【0007】
本発明のさらに他の態様は、(イ)半導体基板の表面に酸化膜を形成することと、(ロ)酸化膜に凹部を設けることと、(ハ)凹部の底面に残っている酸化膜を介して、不純物イオンを半導体基板に選択的に注入することと、(ニ)半導体基板の表面から酸化膜を除去することと、を含む、半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正確に圧力を測定可能な圧力測定器、圧力測定器の製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る第1のシリコン基板の底面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る第2のシリコン基板の上面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るガラス基板の上面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る可撓膜の上面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第1の工程断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第2の工程断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第3の工程断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第4の工程断面図である。
図10】本発明の比較例に係る圧力測定器の第1の工程断面図である。
図11】本発明の比較例に係る圧力測定器の第2の工程断面図である。
図12】本発明の比較例に係る圧力測定器の第3の工程断面図である。
図13】本発明の比較例に係る圧力測定器の第4の工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
実施の形態に係る圧力測定器は、図1に示すように、圧力を受ける可撓膜1と、可撓膜1を保持する台座2と、台座2の底面に接合された保持部材3と、を備える。可撓膜1は、例えばシリコン等の半導体からなり、(100)面を主面とする。また、可撓膜1は、凹部23が設けられたシリコン基板21と、凹部24が設けられたシリコン基板22に挟まれて配置されている。シリコン基板22は、台座2上に配置されている。そのため、可撓膜1は、シリコン基板22を介して、台座2に保持されている。
【0012】
図2に示すように、シリコン基板21の可撓膜1に接する底面には、凹部23を取り囲むように環状の溝25が設けられている。さらに、シリコン基板21には、凹部23の中心から上面に貫通する貫通孔27が設けられている。なお、溝25はシリコン基板21内に形成された図示されていない連通路を介して貫通孔27と連通している。また、図3に示すように、シリコン基板22の可撓膜1に接する上面には、凹部24を取り囲むように環状の溝26が設けられている。さらに、シリコン基板22には、凹部24の中心から底面に貫通する貫通孔28が設けられている。なお、溝26はシリコン基板22内に形成された図示されていない連通路を介して貫通孔28と連通している。
【0013】
例えば、図2に示す凹部23の外周と、図3に示す凹部24の外周と、は合同である。また、図2に示す溝25の外形と、図3に示す溝26の外形と、は合同である。図1に示すように、シリコン基板21とシリコン基板22とは、凹部23の外周と、凹部24の外周と、の横方向の位置が一致し、溝25の外周と、溝26の外周と、の横方向の位置が一致するように配置されている。
【0014】
シリコン基板21上には、ガラス基板31が配置されてもよい。図4に示すように、ガラス基板31には、シリコン基板21の貫通孔27に連通する貫通孔33が設けられている。図1に示すシリコン基板22の底面に配置された台座2は、ガラス等からなる。台座2には、シリコン基板22の貫通孔28に連通する貫通孔13が設けられている。台座2の底面に接するように配置された保持部材3は、ステンレス鋼等からなる。保持部材3には、台座2の貫通孔13に連通する貫通孔14が設けられている。保持部材3は、例えば可撓膜1等を囲むパッケージであり、板状に限定されない。
【0015】
可撓膜1の凹部23及び凹部24を覆う図5に示す円形の部分101は、上面に加わる圧力と、底面に加わる圧力と、の差圧を測定するためのダイアフラムとして機能する。差圧を測定するためのダイアフラムとして機能する可撓膜1の円形の部分101には、90°間隔で<110>方向に4つの歪み抵抗ゲージ51,52,53,54が設けられている。差圧により可撓膜1が撓むことにより、歪み抵抗ゲージ51,52,53,54の電気抵抗値が変化する。したがって、歪み抵抗ゲージ51,52,53,54の電気抵抗値を計測することにより、差圧の測定が可能となる。
【0016】
図1に示す可撓膜1の溝25及び溝26を覆う図5に示す環状の部分102は、静圧を測定するためのダイアフラムとして機能する。静圧を測定するためのダイアフラムとして機能する可撓膜1の環状の部分102には、90°間隔で<110>方向に4つの歪み抵抗ゲージ61,62,63,64が設けられている。図1に示す溝25及び溝26の内部で生じた圧力は、図5に示す可撓膜1の環状の部分102を圧縮する。可撓膜1の環状の部分102が圧縮されることにより、歪み抵抗ゲージ61,62,63,64の電気抵抗値が変化する。したがって、歪み抵抗ゲージ61,62,63,64の電気抵抗値を計測することにより、静圧の測定が可能となる。
【0017】
次に、歪み抵抗ゲージ51の形成方法について説明する。まず、図6に示すように、n型のシリコン等からなる半導体基板10を加熱し、半導体基板10上に酸化珪素等からなる酸化膜71を形成する。次に、図7に示すように、フォトリソグラフィ法及びエッチング法等により、酸化膜71を選択的に除去し、酸化膜71に凹部72を形成する。なお、凹部72は、半導体基板10に到達しないように形成される。そのため、凹部72の底面において、薄膜化された酸化膜71が、半導体基板10上に残っている。
【0018】
次に、図8に示すように、凹部72が設けられた酸化膜71をマスクにして、ボロン(B+)等のp型不純物イオンを半導体基板10に選択的に注入する。ここで、p型不純物イオンは、酸化膜71の凹部72が形成された部分は透過するが、酸化膜71の凹部72が形成されていない部分は透過することができない。そのため、p型不純物イオンは、酸化膜71の凹部72の下方に、選択的に注入される。その後、注入されたp型不純物イオンを熱処理することにより、半導体基板10に、p型である歪み抵抗ゲージ51が形成される。なお、凹部72の底面の酸化膜71を介してイオン注入することにより、チャネリングや、半導体基板10表面のダメージを防止することが可能となる。
【0019】
次に、図9に示すように、歪み抵抗ゲージ51が形成された半導体基板10の表面から、酸化膜71を、ウェットエッチング等により除去する。なお、図5に示す歪み抵抗ゲージ52,53,54,61,62,63,64についても、歪み抵抗ゲージ51と同時に、同様の方法によって、図9に示す半導体基板10に形成される。歪み抵抗ゲージ52,53,54,61,62,63,64が形成された半導体基板10は、図5に示す可撓膜1として使用される。図9に示す半導体基板10の表面と、歪み抵抗ゲージ51の表面と、の高さは一致し、平滑である。そのため、歪み抵抗ゲージ51が形成された部分に、応力ひずみが生じにくい。歪み抵抗ゲージ52,53,54,61,62,63,64が形成された部分についても、同様である。
【0020】
ここで、本発明の比較例に係る歪み抵抗ゲージの形成方法について説明する。まず、図10に示すように、n型のシリコン等からなる半導体基板501を加熱し、半導体基板501上に酸化珪素等からなる酸化膜571を形成する。次に、フォトリソグラフィ法及びエッチング法等により、酸化膜571を選択的に除去し、酸化膜571に開口部572を形成する。なお、開口部572は、半導体基板501に到達するように形成される。そのため、半導体基板501は、開口部572において露出する。
【0021】
次に、図11に示すように、熱処理により、開口部572から露出する半導体基板501の表面に、酸化膜571より薄い熱酸化膜573を形成する。この際、熱酸化膜573は、半導体基板501内部に食い込んで形成される。次に、図12に示すように、開口部572が設けられた酸化膜571をマスクにして、p型不純物イオンを半導体基板501に、熱酸化膜573を介して選択的に注入する。その後、注入されたp型不純物イオンを熱処理することにより、半導体基板501に、p型である歪み抵抗ゲージ551が形成される。なお、熱酸化膜573を介してイオン注入することにより、チャネリングや、半導体基板501表面のダメージを防止することが可能となる。
【0022】
次に、図13に示すように、歪み抵抗ゲージ551が形成された半導体基板501の表面から、酸化膜571及び熱酸化膜573を除去する。ここで、図12に示したように、熱酸化膜573は、半導体基板501内部に食い込んで形成されるため、図13に示す歪み抵抗ゲージ551の表面と、半導体基板501の表面と、に段差が生じる。当該段差の部分には、応力ひずみが発生し、歪み抵抗ゲージ551の温度特性の悪化をもたらす。したがって、本発明の比較例に係る方法で形成された歪み抵抗ゲージ551を有する半導体基板501を用いて圧力測定器を製造すると、圧力を精度よく測定することができない。また、段差をなくすために半導体基板501の表面を平滑化する工程を設けると、圧力測定器の製造コストが増えるという問題がある。
【0023】
これに対し、図6乃至図9に示す本発明の実施の形態に係る圧力測定器の製造方法で製造された圧力測定器は、図1に示す可撓膜1に応力ひずみが生じにくい。そのため、圧力を高い精度で測定することが可能となる。また、図11に示すように、酸化膜を2回形成する必要がないので、本発明の実施の形態に係る圧力測定器は、低いコストで製造することが可能である。
【0024】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図8において、n型のシリコンからなる半導体基板10に、p型不純物イオンを注入する例を説明した。これに対し、半導体基板10がp型のシリコンからなる場合は、燐(P+)等のn型不純物イオンを注入してもよいことはもちろんである。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0025】
1 可撓膜
2 台座
3 保持部材
10 半導体基板
13,14、27,28,33 貫通孔
21,22 シリコン基板
23,24 凹部
25,26 溝
31 ガラス基板
51,52,53,54,61,62,63,64 抵抗ゲージ
71 酸化膜
72 凹部
101 可撓膜の円形の部分
102 可撓膜の環状の部分
501 半導体基板
551 抵抗ゲージ
571 酸化膜
572 開口部
573 熱酸化膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13