(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ローラと前記第2ローラでなるローラ対及び前記第1ローラと前記第3ローラでなるローラ対は、それぞれ各回転軸が所定角度を有するネルソンローラである、請求項1に記載の製膜装置。
前記基材を送出する基材送出ロールと、前記基材を巻き取る基材巻取ロールとをさらに備え、前記チャンバは、前記基材送出ロールと前記基材巻取ロールとの間に複数配置されている、請求項3に記載の製膜装置。
前記複数のチャンバのそれぞれに対応して、前記マスクを送出するマスク送出ロールと、前記マスクを巻き取るマスク巻取ロールとを備える、請求項4に記載の製膜装置。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールとして複数枚の短冊状の太陽電池セルを長辺側の縁部同士が重なるようにして直列に並べて接合したスラット構造(以下、スラット構造型という)が知られている。このような太陽電池モジュールに用いられる太陽電池セルは、金属材料からなる基材上に下部導電膜(Ag、ZnO等)、光電変換膜(アモルファスシリコン等)、及び上部導電層(ITO等)等の薄膜を積層したものが用いられる。下部導電膜、光電変換膜、上部導電膜は、それぞれ各チャンバ内に設けられた製膜処理部において、スパッタリングや蒸着、CVD(Cheminal Vapor Deposition)法等により形成される。
【0003】
スラット構造型の太陽電池モジュールに用いられる太陽電池セルは、比較的厚みが薄く幅の狭い短冊状である。したがって、この種の太陽電池セルの製造には、製膜処理部に基材を送出する送出ロールと、製膜処理での製膜処理が終了した後の製膜基材を巻き取る巻取ロールとを備えるロールツーロールタイプの製膜装置を用いることが有利である。
【0004】
例えば、送出ロールと巻取ロールとの間に、第1〜第3チャンバを設け、第1〜第3チャンバにそれぞれ下部導電膜、光電変換膜、上部導電膜を製膜するための製膜処理部を設けるものとする。
送出ロールには、導電性材料でなるテープ状の基材が巻回状態で収納されている。送出ロールから送出される基材は、第1チャンバに導入されて、スパッタリングにより表面に下部導電膜が形成される。
【0005】
表面に下部導電膜が形成された基材は、さらに、第2チャンバに導入されて、CVD法や蒸着により、下部導電膜上にアモルファスシリコンなどの光電変換膜が形成される。
表面に下部導電膜及び光電変換膜が形成された基材は、第3チャンバに導入されて、スパッタリングにより、表面に上部導電膜が形成される。
製膜処理後の基材は、巻取ロールによって巻き取られる。
【0006】
巻取ロールに巻き取られた製膜処理後の基材は、切断工程、接合工程を経て、スラット構造型の太陽電池モジュールとなる。
【0007】
以上に述べたロールツーロールタイプの製膜装置による製膜工程では、下記の問題が生じることが考えられる。
製膜工程において下部導電膜と上部導電膜とが短絡すると、太陽電池セルが正常に機能せずに不良品となる。特に、長尺状の基材を用いたロールツーロールタイプの製膜装置の場合、製膜のために供給される導電性材料が幅方向の両側部に回り込んで短絡を生じるおそれがある。したがって、上部導電膜を形成する際に、先に形成された下部導電膜との短絡を防止するために、幅方向両端部にマスクを設けることが好ましい。
【0008】
製膜処理部にマスクを配置して製膜処理を行うようにしたロールツーロールタイプの製膜装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
図14は、特許文献1に記載されている製膜装置Aの概要構成を示す説明図である。製膜装置Aは、基材Eを送出する送出ロールBと、製膜処理後の基材Eを巻き取る巻取ロールCと、送出ロールBと巻取ロールCとの間に配置された回転ドラムDとを備えている。送出ロールBから送出される基材Eは、回転ドラムDの周面に沿って走行して、巻取ロールCに巻き取られる。
製膜処理部Fには、回転ドラムD上に位置する基材Eの表面に密着するマスクGを備えており、マスクGによって覆われていない部位に所定の膜厚で製膜処理が実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したような製膜装置は、製膜源である供給材料がマスク表面に堆積し、その膜厚が厚くなるとマスク表面から剥離してパーティクルとなって製膜処理に悪影響を与えるおそれがある。
このため、供給材料によりマスク表面に堆積した膜が所定の膜厚になった場合、又は所定時間毎に、マスクを交換するか、あるいはチャンバ内の洗浄を行う必要がある。
マスクの交換やチャンバ内の洗浄を行うためには、チャンバを大気に開放して作業を行う必要がある。その場合、タクトタイムの短縮が困難になる。
【0011】
また、スパッタリングのように供給材料の回り込みが大きい製膜処理を行う場合には、マスクと基材との間の隙間を極力小さくする必要がある。このため、基材に対するマスクの位置調整を精密に行う必要がある。
このようにマスクを基材に対して密着させる場合、マスクを静止させた状態で基材を移動させると、基材表面に積層された膜がマスクに接触して損傷するおそれがある。
【0012】
本発明の課題は、ロールツーロールタイプの製膜装置において、製膜時におけるマスクの位置調整が容易であるとともに、処理済みの膜の損傷を防止し、連続的な製膜処理を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る製膜装置は、搬送中の薄板長尺状の基材に所定の処理を行って、基材の表面に薄膜を形成する製膜装置であって、第1ローラと、第2ローラと、第3ローラと、製膜材料供給部とを備える。
第1ローラは、軸回りに回転可能であり、外周面に沿って基材を走行させる。第2ローラは、第1ローラと所定距離離間しており、第1ローラとの間で基材が複数回巻回されることにより、第1ローラの外周面に位置する基材を所定の間隔で複数列整列させる。第3ローラは、第1ローラと所定距離離間しており、第1ローラとの間で薄板長尺状のマスクが複数回巻回されることにより、第1ローラの外周面に位置するマスクを、第1ローラの外周面に位置する複数列の基材上に少なくとも一部が重畳した状態で、所定の間隔で複数列整列させる。製膜材料供給部は、第1ローラの外周面上に位置する基材の表面に薄膜形成用の材料を供給する。
【0014】
ここで、第1ローラと第2ローラでなるローラ対及び第1ローラと第3ローラでなるローラ対は、それぞれ各回転軸が所定角度を有するネルソンローラとすることができる。
ネルソンローラは、高分子でなる合成繊維を延伸する際に、回転軸に角度を持たせた複数のローラに繊維を複数回巻き付けて、周回した繊維が同じ位置に重ならないようにする方式のローラ群である。ここでは、所定の幅を有する太陽電池セル用の導電性基材に所定の処理を行う際に、ネルソン方式のローラを適用することによって、第1ローラの外周面上において所定の間隔で基材を複数列整列させるように構成している。
【0015】
また、第1ローラ、第2ローラ、第3ローラ及び製膜材料供給部は、1つのチャンバ内に配置することができる。
さらに、基材を送出する送出ローラと、基材を巻き取る巻取ローラとをさらに備え、チャンバは、送出ローラと巻取ローラとの間に複数配置することもできる。
この場合、複数のチャンバのそれぞれに対応して、マスクを送出するマスク送出ローラと、マスクを巻き取るマスク巻取ローラとを設けることができる。
また、第1ローラには、基材及びマスクを位置決めするための案内溝を設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1ローラの回転に応じて基材を走行させながら、第1ローラの外周面上に配列される複数列の基材に対して、製膜材料供給部から供給される材料により所定の膜厚での製膜処理を行うことができる。このとき、必要に応じて基材表面を部分的あるいは全部と重畳するマスクを、基材と同一速度で走行させながら供給することができる。
マスクは、基材とともに走行させることができるため、チャンバ内を一度通過した後に回収することができる。つまり、チャンバを開放してマスクのメンテナンスを行う必要がなくなる。
また、第1ローラと第2ローラとの間に基材を巻回し、第1ローラと第3ローラとの間にマスクを巻回していることから、基材とマスクのテンションを個別に調整することが可能であり、その結果、マスクを基材に密着させることが容易である。
さらに、マスクは基材とともに同一速度で走行させることができることから、製膜処理後の基材表面がマスクと擦れ合うことを防止できる。その結果、製膜処理後の表面に損傷が生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の製膜装置の実施形態について、図に基づいて説明する。
(1)概要構成
図1は、本発明の製膜装置の全体構成を示す説明図である。
図2は、製膜処理部30の主要構成を示す説明図である。
製膜装置1は、基材送出ロール10と、基材巻取ロール20と、製膜処理部30とを備えている。
【0019】
基材送出ロール10には、太陽電池セルの基材となる導電性の薄板長尺状の基材2が巻回状態で収納されている。
基材送出ロール10から送出される基材2は、複数の製膜処理部30を通過することにより、基材2上に太陽電池セルを構成するための所定の処理が連続的に実行され、基材巻取ロール20に巻き取られる。基材巻取ロール20に巻き取られた基材2は、その表面に太陽電池セルに必要な薄膜が積層された太陽電池セル母材がロール状になったものである。
【0020】
以上に述べたように、基材送出ロール10から基材巻取ロール20に向けて基材2を搬送しながら、中間に位置する複数の製膜処理部30において基材2に対する所定の処理を実行する。したがって、以後、基材送出ロール10側を上流とし、基材巻取ロール20側を下流として説明する。
基材送出ロール10は、基材2を下流側に供給するためのものであり、この基材送出ロール10を制御装置(図示せず)によって回転制御することにより、基材2の送出量の調整を行う。例えば、基材2が下流側から引張力を受けた状態で基材送出ロール10を回転させることにより、基材2が下流側に送出される。また、基材送出ロール10に適宜ブレーキをかけることによって、基材2が撓むことなく一定速度で送出できる。
【0021】
基材2は、厚み0.01mm〜0.2mm、幅5mm〜50mmであり、ステンレス、銅などの導電性材料を薄板長尺状にしたものを用いることができる。ただし、厚さ、幅、材質については、ここに記載したものに限定されるものではない。
基材巻取ロール20は、制御装置(図示せず)により駆動制御されることにより、基材2の巻取量を増減することができるようになっている。例えば、送出された基材2が撓むのを抑えながら、逆に基材2に必要以上の張力がかからないように、巻き取られるように構成される。本実施形態では、基材送出ロール10から送出された基材2が一定速度で搬送され、基材巻取ロール20に巻き取られるように駆動制御されている。
【0022】
なお、これら基材送出ロール10と基材巻取ロール20は、それぞれ真空環境を形成するチャンバ11a、11b内に配置される。
【0023】
(2)製膜処理部30
製膜処理部30は、基材2上に太陽電池に必要な薄膜を形成するためのものである。本実施形態では、複数の製膜処理部30が設けられている。具体的には、基材送出ロール10と基材巻取ロール20との間に、複数の製膜処理部30が直線状に配置されている。基材送出ロール10から送出された基材2が各製膜処理部30を走行して通過する際に、基材2上に順次薄膜が形成される。
【0024】
図3は、製膜処理後の基材2の一例を模式的に示す説明図である。
図3に示すように、基材2の一方の面上に、下部導電膜4a、光電変換膜4b、上部導電膜4cの薄膜がこの順に製膜されて太陽電池セル母材が形成される。
製膜処理部30は、それぞれスパッタリング又はCVD法による製膜装置で構成されており、
図2に示すように、チャンバ3と、このチャンバ3内に収容されるローラ部5及び製膜材料供給部6とを備えている。
【0025】
チャンバ3は、その内部を真空環境に維持するものである。真空環境に維持されたチャンバ3内に製膜材料供給部6から特定の製膜材料が供給されることにより、基材2上に所定の薄膜が形成される。
チャンバ3には、上流側から搬送される基材2を受け入れるための基材導入口3aと、製膜処理後の基材2を下流側に送出するための基材導出口3bとが設けられている。
これら基材導入口3aと基材導出口3bとは、基材2が通過可能にシールされており、基材2が搬送により走行した場合でも、各チャンバ3内は薄膜を形成するために適切な真空度を維持するように構成される。
【0026】
ローラ部5は、第1ローラ51、第2ローラ52、第3ローラ53を備えている。
第1ローラ51は、軸回りに回転可能であって、外周面に沿って基材2を走行させる。第2ローラ52は、第1ローラ51と所定距離離間して配置されており、第1ローラ51との間で基材2が複数回巻回されることにより、第1ローラ51の外周面に位置する基材2を所定の間隔で複数列整列させる。
第1ローラ51と第2ローラ52とは、それぞれの回転軸が所定の角度で傾斜しているネルソンローラとすることができる。
【0027】
(3)ローラ部5
図4は、第1ローラ51と第2ローラ52とを外周面側方から見た説明図である。また、
図5は、第1ローラ51と第2ローラ52とを上方から見た説明図である。
第1ローラ51と第2ローラ52とは、ともに円筒形状で形成されており、それぞれ軸回りに回転可能に支持されている。第2ローラ52は、第1ローラ51に比して小径に形成されており、第1ローラ51に対して所定距離離間して配置されている。
また、第1ローラ51と第2ローラ52の回転軸はそれぞれ所定角度傾斜した状態で配置される。
図示した例では、第1ローラ51よりも第2ローラ52の径が小径のものを例示しているが、これに限定されるものではなく、第1ローラ51と第2ローラ52とが同径であってもよく、径の大小関係が逆であってもよい。
【0028】
第1ローラ51及び第2ローラ52の外周面には、上流側から供給された基材2が複数回巻回されることにより、複数列の基材2が軸方向に所定間隔で整列される。
図2に示すように、第1ローラ51の外周面のうち第2ローラ52の反対側に位置する外周面と対向して製膜材料供給部6が配置されている。第1ローラ51の外周面に複数列で整列した基材2に対して、製膜材料供給部6から製膜材料を供給することにより、基材2を走行状態で連続的に製膜処理を実行することができる。
【0029】
ここで、第1ローラ51及び第2ローラ52に基材2を巻回する回数を変更することによって、基材2が製膜材料供給部6と対向する位置を通過する回数及び時間を調整することが可能となる。それにより、形成される膜厚が調整される。
図2に示すように、製膜処理部30には、マスク送出ロール7と、マスク巻取ロール8とを備えている。マスク送出ロール7には、薄板長尺状のマスク9が巻回状態で収納されており、基材2に対する製膜処理時に、基材2の一部又は全部を覆うマスク9をチャンバ3内に送出する。
【0030】
チャンバ3には、マスク送出ロール7から送出されるマスク9を受け入れるためのマスク導入口3cと、製膜処理後のマスク9をマスク巻取ロール8に排出するためのマスク導出口3dとが設けられている。
【0031】
これらマスク導入口3cとマスク導出口3dとは、マスク9が通過可能にシールされており、マスク9が搬送により走行した場合でも、各チャンバ3内は薄膜を形成するために適切な真空度を維持するように構成される。
【0032】
ローラ部5に設けられた第3ローラ53は、第1ローラ51及び第2ローラ52と同様に円筒形状で形成されており、軸回りに回転可能に支持されている。第3ローラ53は、第1ローラ51に比して小径に形成されており、第1ローラ51に対して所定距離離間して配置されている。
図2に示すように、第3ローラ53は、第2ローラ52よりも第1ローラ51から離れて配置されており、第2ローラ52の径とほぼ同一の径とすることができる。
図示した例では、第3ローラ53が、第1ローラ51に比して小径であり、第2ローラ52とほぼ同一径であるものを例示しているが、これに限定されるものではなく、第3ローラ53が第1ローラ51及び第2ローラ52よりも大径である場合、第1ローラ51及び第2ローラ52が同径であって第3ローラ53が大径である場合、第1ローラ51と第3ローラ53が同径であって第2ローラ52が小径である場合、第1ローラ51が最も小径であり第3ローラ53が最も大径である場合など種々の構成とすることができる。
【0033】
また、第1ローラ51と第3ローラ53の回転軸はそれぞれ所定角度傾斜した状態で配置される。第1ローラ51の回転軸と第3ローラ53の回転軸とがなす傾斜角度は、第2ローラ52と第3ローラ53とが同径である場合には、第1ローラ51の回転軸と第2ローラ52の回転軸とがなす傾斜角度よりも小さくすることが好ましい。
【0034】
第1ローラ51及び第3ローラ53の外周面には、マスク送出ロール7から送出されるマスク9が複数回巻回されることにより、複数列のマスク9が軸方向に所定間隔で整列される。
第1ローラ51及び第3ローラ53に巻回されるマスク9は、第1ローラ51の外周面に位置する複数列の基材2上に少なくとも一部が重畳した状態で、所定の間隔で複数列整列される。
【0035】
(4)マスキング
図6は、第1ローラ51と第2ローラ52間に巻回された基材2上に部分的に重畳するマスク9を第1ローラ51と第3ローラ53間に巻回した場合におけるローラ部5を上方から見た説明図である。
図7は、マスク9により上部導電膜4cの一部が形成されないようにした製膜処理後の基材2を示す説明図である。
【0036】
図3に示すように、基材2の幅方向をX軸、長さ方向をY軸、厚み方向をZ軸とする時、製膜材料供給部6からの製膜材料は、Z軸に沿って
図3の上方から下方に向けて供給される。基材2はY軸方向に沿って長尺状であって、製膜材料供給部6に露出するY軸方向端部は存在しない。しかしながら、基材2のX方向端部の側面は露出した状態で、第1ローラ51の外周面を走行しており、そのため製膜材料供給部6が供給する製膜材料が基材2の側面に回り込むおそれがある。
特に、上部導電膜4cを形成する際に、製膜材料が下部導電膜4aの位置に回り込むと、下部導電膜4aと上部導電膜4cとが短絡することとなる。このようなことを防止するために、上部導電膜4cを形成する際に、基材2の長さ方向両側部に位置して基材2に重畳するマスク9を配置する。
【0037】
図6に示すように、第1ローラ51と第2ローラ52との間に複数回巻回された基材2の上に、第1ローラ51と第2ローラ53との間に複数回巻回されたマスク9を配置し、基材2の幅方向両側を所定の幅でマスク9によって覆う。
【0038】
マスク9は、第1ローラ51の外周面のうち、製膜材料供給部6に対向する位置において、基材2に密着していることが好ましい。このために、第1ローラ51、第2ローラ52及び第3ローラ53の位置及び回転軸の傾斜角度を適宜調整できることが好ましい。また、基材2及びマスク9の張力は、基材送出ロール10、基材巻取ロール20、マスク送出ロール7、マスク巻取ロール8の回転制御を行うことで調整が可能となっている。
【0039】
下部導電膜4a及び光電変換膜4bが形成された基材2の幅方向の両側部をマスク9によってマスキングし、上部導電膜4cの製膜を行った場合、
図7に示すように、基材2上の長さ方向両側に上部導電膜4cが製膜されていない領域4dができる。
【0040】
このため、上部導電膜4cを製膜する際の製膜材料が、基材2の幅方向両側に回り込むことがなくなり、下部導電膜4aと上部導電膜4cとの短絡を防止することができる。
マスク送出ロール7及びマスク巻取ロール8は、製膜処理部30に対して1対1で設けることができ、それぞれの製膜処理におけるパターニングに応じたマスクを各製膜処理部30に供給するように構成できる。
【0041】
(5)太陽電池モジュール
図8は、スラット構造の太陽電池モジュールの説明図である。
前述したような製膜装置1により、基材2上に下部導電膜4a、光電変換膜4b、上部導電膜4cが製膜された太陽電池セル母材は、切断工程において所定の長さの太陽電池セル21に切断される。所定の長さに切断された短冊状の太陽電池セル21は、2つの電極24、25の間に複数配列されて幅方向両側部が接合され、裏面側カバー部材22と受光面側カバー部材23の間に充填されるEVA26によって一体的に形成される。
【0042】
(6)実施形態の作用効果
製膜装置1(製膜装置の一例)は、第1ローラ51(第1ローラの一例)と、第2ローラ52(第2ローラの一例)と、第3ローラ53(第3ローラの一例)と、製膜材料供給部6(製膜材料供給部の一例)とを備えている。第1ローラ51は、軸回りに回転可能であり、外周面に沿って基材2(基材の一例)を走行させる。第2ローラ52は、第1ローラ51との間で基材2が複数回巻回されることにより、第1ローラ51の外周面に位置する基材2を所定の間隔で複数列整列させる。第3ローラ53は、第1ローラ51との間で薄板長尺状のマスク9(マスクの一例)が複数回巻回されることにより、第1ローラ51の外周面に位置するマスク9を、第1ローラ51の外周面に位置する複数列の基材2上に少なくとも一部が重畳した状態で、所定の間隔で複数列整列させる。製膜材料供給部6は、第1ローラ51の外周面上に位置する基材2の表面に薄膜形成用の材料を供給する。
【0043】
本実施形態によれば、第1ローラ51の回転に応じて基材2を走行させながら、第1ローラ51の外周面上に配列される複数列の基材2に対して、製膜材料供給部6から供給される材料により所定の膜厚での製膜処理を行うことができる。このとき、必要に応じて基材2の表面を部分的あるいは全部と重畳するマスク9を、基材2と同一速度で走行させながら供給することができる。
マスク9は、基材2とともに走行させることができるため、チャンバ内を一度通過した後に回収することができる。つまり、チャンバを開放してマスクのメンテナンスを行う必要がなくなる。
また、第1ローラ51と第2ローラ52との間に基材2を巻回し、第1ローラ51と第3ローラ53との間にマスク9を巻回していることから、基材2とマスク9のテンションを個別に調整することが可能であり、その結果、マスク9を基材2に密着させることが容易である。
さらに、マスク9は基材2とともに同一速度で走行させることができることから、製膜処理後の基材2の表面がマスク9と擦れ合うことを防止できる。その結果、製膜処理後の表面に損傷が生じにくい。
【0044】
(7)案内溝
前述した実施形態では、第1ローラ51と第2ローラ52とで構成されるローラ対、第1ローラ51と第3ローラ53とで構成されるローラ対が、それぞれネルソンローラを構成している。このため、第1ローラ51と第2ローラ52に複数回巻回された基材2が所定の間隔で整列され、第1ローラ51と第3ローラ53に複数回巻回されたマスク9が所定の間隔で整列される。
【0045】
基材2及びマスク9の位置決めを確実に行うためには、第1ローラ51〜第3ローラ53に位置決め用の案内溝を形成することが考えられる。特に、製膜処理が実行される第1ローラ51の外周面は、基材2及びマスク9の位置決めが正確になされることが好ましい。
【0046】
図9は、基材2及びマスク9の案内溝を形成した第1ローラ51の断面図である。
図9に示すように、第1ローラ51の外表面60には、複数列の基材2が整列され、さらに基材2上に一部が重畳するように複数列のマスク9が整列される。
第1ローラ51の外表面60には、基材2を案内するための第1案内溝61が形成されている。
【0047】
第1案内溝61は、基材2の幅とほぼ同一の幅を有し、基材2とマスク9の厚みを合計した深さで形成されている。
このことにより、第1ローラ51に巻回される基材2は、第1案内溝61の側壁によって長さ方向両側部が位置決めされて、所定の間隔で複数列配列されることになる。
【0048】
第1ローラ51の外表面60には、さらにマスク9を案内するための第2案内溝62が形成されている。
【0049】
第2案内溝62は、第1案内溝61の外周面側端部に連続して形成されており、マスク9の幅よりも所定長さだけ小さい幅で形成されている。この第2案内溝62の幅は、マスク9により基材2をマスキングする幅だけ、マスク9の幅より狭くなっている。また、第2案内溝62の深さは、マスク9の厚みとほぼ同一の深さで構成される。
【0050】
基材2の長さ方向の両側端部をマスキングする場合には、
図9に示すように、第1案内溝61の両側に連続する第2案内溝62が形成される。
このような第2案内溝62では、マスク9の長さ方向の両側端部のうち一方のみを位置決めすることができる。
【0051】
第1ローラ51に、基材2を案内する第1案内溝61及びマスク9を案内する第2案内溝62を形成することによって、基材2及びマスク9を位置決めすることが可能であり、基材2の製膜パターンを正確に形成することができる。
【0052】
図10は、第1ローラ51に形成される案内溝の他の例を示す説明図である。
図10に示す例では、基材2の一方の端部のみをマスキングする場合に、第1ローラ51に形成される案内溝を示している。
第1ローラ51の外表面60には、基材2を案内するための第1案内溝61が形成されている。
【0053】
第1案内溝61は、
図9に示される第1案内溝61と同様に、基材2の幅とほぼ同一の幅を有し、基材2とマスク9の厚みを合計した深さで形成されている。
また、第1ローラ51の外表面60には、さらにマスク9を案内するための第2案内溝62が形成されている。
【0054】
第2案内溝62は、第1案内溝61の外周面側端部に連続して形成されており、マスク9の幅よりも所定長さだけ小さい幅で形成されている。
この実施形態による第2案内溝62は、第1案内溝61の幅方向の両端のうち一方の端部にのみ形成される。
【0055】
この場合、前述した実施形態と同様に、基材2の長さ方向両端部は、第1案内溝61の側壁によって案内されて位置決めされる。また、マスク9の長さ方向の一方の端部が、第2案内溝62の側壁によって案内されて位置決めされる。
【0056】
したがって、製膜処理部30内において、基材2及びマスク9を正確に位置決めすることができ、基材2上に形成される積層膜を正確にパターニングできる。
図9及び
図10に示す実施形態において、基材2及びマスク9の間に厚み方向の間隙を有する構成であってもよい。基材2及びマスク9をほぼ同一の速度で搬送する場合であっても、マスク9により基材2の表面を損傷するおそれがある。このような場合には、基材2及びマスク9の間に厚み方向の間隙を有する構成にすることで、基材2の表面をより確実に保護できる。
【0057】
(8)スプロケット構造
図11は、第1ローラ51の変形例を示す断面図である。
図12は、第1ローラ51の変形例を用いた場合に適用されるマスク9の一例を示す説明図である。
図11に示すように、第1ローラ51の外表面60に歯車の歯となる複数の突起63を設けて、マスク9を案内するように構成することが可能である。
複数の突起63は、マスク9が第1ローラ51の回転軸方向に整列する位置の外表面60に設けられ、外表面60の回転軸周りに等間隔で配置される。
マスク9は、
図12に示すように、突起63が係合するための貫通孔91が等間隔で設けられたものを用いる。
【0058】
マスク9に設けられる貫通孔91は、第1ローラ51の外表面60に設けられる突起63の間隔と同一の間隔で設けることができる。
また、第1ローラ51の外表面60に設けられる突起63の間隔を、マスク9に設けられる貫通孔91の間隔の整数倍とすることも可能である。
さらに、マスク9が第1ローラ51の回転軸方向に整列する各位置において、それぞれ1つだけ突起63を設けることもできる。
このような構成とすることによって、マスク9の位置ずれを防止することができ、製膜処理におけるマスキングを確実に行うことができる。
【0059】
図13は、第1ローラ51の他の変形例を示す断面図である。
図13に示す第1ローラ51では、外表面60に設けた突起63の基部に段差部64を設けている。
複数の突起63は、前述した例と同様に、マスク9が第1ローラ51の回転軸方向に整列する位置の外表面60に設けられ、外表面60の回転軸周りに等間隔で配置される。
マスク9は、
図12に示すような、突起63が係合するための貫通孔91が等間隔で設けられたものを用いることができる。
【0060】
前述した例と同様に、マスク9に設けられる貫通孔91は、第1ローラ51の外表面60に設けられる突起63の間隔と同一の間隔で設けることができ、第1ローラ51の外表面60に設けられる突起63の間隔を、マスク9に設けられる貫通孔91の間隔の整数倍とすることもできる。
さらに、マスク9が第1ローラ51の回転軸方向に整列する各位置において、それぞれ1つだけ突起63を設けることもできる。
このような構成とする場合、マスク9の貫通孔91が第1ローラ51の突起63に係合することによって、位置ずれを起こすことを防止でき、製膜処理におけるマスキングを確実に行うことができる。
【0061】
また、第1ローラの突起63に係合して所定位置に案内されるマスク9が、段差部64に当接することにより、基材2との間に厚さ方向の間隙が生じる。このことによって、基材2の製膜面にマスク9が当接して製膜面を損傷することを軽減できる。
【0062】
(9)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
第2ローラ52に基材2を位置決めするための案内溝を形成することも可能である。
同様に、第3ローラ53にマスク9を位置決めするための案内溝を形成することも可能である。
また、マスク9は、基材2上に製膜するためのパターンが形成されたものを用いて完全に基材2と重複するように構成することができる。
上述した実施形態では、各チャンバのそれぞれに対応して、マスクの送出及び巻取を行う機構を独立して設けたものを開示しているが、複数のチャンバに共通のマスク送出ロール及びマスク巻取ロールを設けることも可能である。例えば、3つのチャンバを備える製膜装置の場合に、第1のチャンバにマスクを送出するマスク送出ロールを設け、第3のチャンバに排出されるマスクを巻き取るマスク巻取ロールを設けることができる。このように、所定数のチャンバ毎にマスクの送出及び巻取を行う機構を設けることが可能である。