特許第5823908号(P5823908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823908
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】ウエハー加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 1/00 20060101AFI20151105BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20151105BHJP
【FI】
   B24B1/00 C
   B24B37/04 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-91031(P2012-91031)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-215872(P2013-215872A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】川合 昇
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−209786(JP,A)
【文献】 特開2011−161560(JP,A)
【文献】 特開2011−189467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 1/00
B24B 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準辺を有する四角形からなる水晶ウエハーの前記基準辺を揃えて複数積層し、前記基準辺により構成される側面を基準面とする四角柱からなる積層体を形成する積層工程と、
前記四角柱の隣り合う側面の角部が装着治具の外表面から突出するように前記積層体を前記装着治具に装着する装着工程と、
突出する前記角部を研削除去する研削工程と、
前記基準面を残し前記積層体の外周に残る角部を面取りし、前記積層体を断面が疑似円形を有する円柱に加工する面取り工程と、を備えるウエハー加工方法。
【請求項2】
前記装着治具は各側面に開口窓を有するL字形状を有し、
前記装着工程は、前記開口窓から各前記角部を突出させて前記積層体を挟んで固定する工程である請求項1に記載のウエハー加工方法。
【請求項3】
前記装着治具は開口窓を有し、
前記装着工程は、前記開口窓から前記角部を突出させて前記積層体を前記装着治具に固定する工程である請求項1に記載のウエハー加工方法。
【請求項4】
前記研削工程は、前記四角柱の側面の4つの平面のうち、前記基準面の柱心軸周り方向の長さを他の平面の柱心軸周り方向の長さよりも長く形成する工程である請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハー加工方法。
【請求項5】
前記積層体を個々の水晶ウエハーに分離する分離工程と、
前記分離した水晶ウエハーをキャリアの円形開口に装着して両面研磨する研磨工程と、を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載のウエハー加工方法。
【請求項6】
前記水晶ウエハーはATカット水晶ウエハーである請求項1〜5のいずれか一項に記載のウエハー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶ウエハーのウエハー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子を用いた振動デバイスが普及している。水晶振動子を用いた振動デバイスは小型であり温度変化に対する周波数特性が安定し、携帯電話などの携帯情報端末、その他多くの電子デバイスのタイミング源として広く利用されている。水晶振動子の振動片としては、音叉型の振動片を用いるものや厚み滑り振動の振動片が用いられており、近年では、より一層の小型化、高周波数化、振動周期の安定化が求められている。
【0003】
厚み滑り振動を利用する振動片としてATカット水晶振動片が実用化されている。ATカット水晶振動片は、振動片の厚さt(m)と振動周波数f(Hz)との間に、t=1670/f、の関係がある。つまり、周波数を高くするには厚さを薄く形成する。また、振動特性の品質を向上させるためには振動片の厚さを均一に形成することが必要であり、厚さの許容ばらつきは周波数に反比例して小さくなる。例えば、振動周波数が16MHzでは厚さが104μmであり、このときの厚さの許容ばらつきをδdとすると、振動周波数が38MHzでは振動片の厚さが44μmとなり、このときの厚さの許容ばらつきはおおよそδd/2と小さく、振動周波数が50MHzでは振動片の厚さが33μmであり、このときの厚さの許容ばらつきはδd/3と更に小さくなる。
【0004】
特許文献1にはこの種の水晶ウエハーの加工方法及びウエハー加工装置111が記載されている。図7は特許文献1の図1に記載されるウエハー加工装置111を表し、四角柱のウエハー積層体Sを円柱のウエハー積層体に加工する装置である。ウエハー積層体Sはその積層方向の両端部が回転ユニット112と固定ユニット113により回転可能に支持される。回転ユニット112は、ウエハー積層体Sの一方の端部を支持する第一固定治具123と、第一固定治具123に回転を伝達する出力軸122と、出力軸122に回転を伝達するモータ121とを備える。固定ユニット113は、ウエハー積層体Sの他方の端部を支持する第二固定治具133と、第二固定治具133に当接して芯出しを行う芯出しセンター部135と軸部134から成る芯出し部132と、芯出し部132を固定する固定ベース131とを備える。従って、ウエハー積層体Sはモータ121の回転が伝達され、回転可能に支持される。そして、研削回転砥石114が紙面奥側から手前側に移動可能に設置され、更に、樋形状の樋部151を有する研磨手段115が上下に移動可能に設置される。
【0005】
まず、直方体の水晶原石から矩形板状の水晶ウエハーを切り出す。次に、切り出された多数の矩形板状の水晶ウエハーを積層・接着して、直方体のウエハー積層体Sを形成する。このウエハー積層体Sを固定ユニット113と回転ユニット112の間に装着し、モータ121によりウエハー積層体Sを回転させるとともに、研削回転砥石114を紙面奥側から手前側に移動させて、ウエハー積層体Sを研削する。更に研削回転砥石114をウエハー積層体Sの軸方向に往復させながらウエハー積層体Sを円柱に研削して加工する。次に、研削回転砥石114を紙面奥側に退避させる。次に、ウエハー積層体Sを円柱軸周りに回転させ、研磨手段115を上方に移動して樋部151の内表面をウエハー積層体Sの外周面に当接させ、外周面を鏡面研磨する。研磨の際には酸化セリウム等の研磨材を樋部151に供給する。
【0006】
次に、円柱形状のウエハー積層体Sをウエハー加工装置111から離脱し、接着剤を溶解して個々の水晶ウエハーに分離する。次に、両面研磨機のキャリアに水晶ウエハーを一枚ずつセットして必要な厚さまで研削した後に、鏡面研磨を行う。その後、スパッタリング法や蒸着法により水晶ウエハーの両面に駆動用の電極を形成し、フォトプロセス及びエッチング法により電極パターンを形成するとともに、水晶ウエハーをエッチングして個々の水晶振動片に分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−189467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水晶振動片を形成する際には水晶振動片の結晶方位を管理する必要がある。例えば、水晶ウエハーは結晶軸方向に応じてエッチングレートが異なる。そのため、1枚の水晶ウエハーから多数の水晶振動片を形成する際に、水晶振動片のレイアウトを水晶ウエハーの結晶方位を基準にして設定する必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1に記載のウエハー加工方法では四角柱のウエハー積層体Sを円柱に加工するので、加工後のウエハー積層体Sに結晶方位を表す基準面が残らない。そのため、ウエハー積層体Sを個々に分離した水晶ウエハーは結晶方位が不明となる。これを避ける方法として、水晶原石から切り出した水晶ウエハーの結晶方位を揃えてウエハー積層体Sを形成する。そして、ウエハー積層体Sの両端部のウエハー又はガラスに結晶方位を刻印しておき、円柱に加工後にその刻印に基づいてウエハー積層体Sの外周部に結晶方位を表すオリフラを形成する、或いは結晶方位を表す印を書き込む方法が考えられる。しかし、両端部のウエハー又はガラスの刻印と円柱の外周部に形成したオリフラ或いは印との間に誤差が生じ、個々の水晶ウエハーの結晶方位を厳密に表示することが困難である。
【0010】
そこで、ウエハー積層体Sをウエハー加工装置111によって円柱状に加工する際に、ウエハー積層体Sを角柱の中心軸から偏芯させて回転させ、研削後に特定の辺、例えば結晶軸を規定する基準辺が残るように円柱加工することが考えられる。しかし、ウエハー積層体Sの中心軸から偏芯させて回転させ、これを研削加工することは困難である。
【0011】
また、水晶原石を切り出した矩形板状の水晶ウエハーであればその矩形形状の一辺により結晶方位が特定される。そこで、特許文献1に記載されるような円形の水晶ウエハーに加工することなく水晶原石から切り出した矩形板状の水晶ウエハーを両面研磨機により研削、研磨することが考えられる。図8は、両面研磨機100の上研磨定盤を取り除いた部分平面模式図である。キャリア103には開口部104が形成され、各開口部104に矩形板状の水晶ウエハーUが装着される。各水晶ウエハーUは、例えばキャリア103の内側の辺を結晶方位が定まる基準辺とする。キャリア103は内側のサンギア101と外側のインターナルギア102との間を自転しながら公転する。
【0012】
しかし、キャリア103は自転しながら公転するので上下の研磨定盤に対するキャリア103の走行距離はキャリア103の中心側よりも外周側が長くなる。そのため、水晶ウエハーUはキャリア103の外周側の研削量が多く、中心側の研削量が少なく、均一に研削することができない。これに対して、水晶ウエハーUを円形に形成し、キャリア103の円形に形成した開口部104に水晶ウエハーUを装着すれば、開口部104内で水晶ウエハーUが回転し、水晶ウエハーUの面内の研削量は均一となる。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みて、水晶ウエハーの結晶方位が特定でき、かつ均一に研削することが可能なウエハー加工方法を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のウエハー加工方法は、基準辺を有する四角形からなる水晶ウエハーの前記基準辺を揃えて複数積層し、前記基準辺により構成される側面を基準面とする四角柱からなる積層体を形成する積層工程と、前記四角柱の隣り合う側面の角部が装着治具の外表面から突出するように前記積層体を前記装着治具に装着する装着工程と、突出する前記角部を研削除去する研削工程と、前記基準面を残し前記積層体の外周に残る角部を面取りし、前記積層体を断面が疑似円形を有する円柱に加工する面取り工程と、を備えることとした。
【0015】
また、前記装着治具は各側面に開口窓を有するL字形状を有し、前記装着工程は、前記開口窓から各前記角部を突出させて前記積層体を挟んで固定する工程であることとした。
【0016】
また、前記装着治具は開口窓を有し、前記装着工程は、前記開口窓から前記角部を突出させて前記積層体を前記装着治具に固定する工程であることとした。
【0017】
また、前記研削工程は、前記四角柱の側面の4つの平面のうち、前記基準面の柱心軸周り方向の長さを他の平面の柱心軸周り方向の長さよりも長く形成する工程であることとした。
【0018】
また、前記積層体を個々の水晶ウエハーに分離する分離工程と、前記分離した水晶ウエハーをキャリアの円形開口に装着して両面研磨する研磨工程と、を備えることとした。
【0019】
また、前記水晶ウエハーはATカット水晶ウエハーであることとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明のウエハー加工方法は、基準辺を有する四角形からなる水晶ウエハーの基準辺を揃えて複数積層し、基準辺により構成される側面を基準面とする四角柱からなる積層体を形成する積層工程と、四角柱の隣り合う側面の角部が装着治具の外表面から突出するように積層体を装着治具に装着する装着工程と、突出する角部を研削除去する研削工程と、基準面を残し積層体の外周に残る角部を面取りし、積層体を断面が疑似円形を有する円柱に加工する面取り工程と、を備える。これにより、水晶ウエハーの結晶方位の特定を可能とし、かつ、ウエハー面内の厚さを均一に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の基本構成に係るウエハー加工方法を表す工程図である。
図2】本発明の実施形態に係るウエハー加工方法を説明するための図である。
図3】本発明の実施形態に係るウエハー加工方法を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態に係るウエハー加工方法を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係るウエハー加工方法を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態に係るウエハー加工方法を説明するための図である。
図7】従来公知の水晶ウエハーのウエハー加工装置を表す。
図8】従来公知の両面研磨機の部分平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(基本構成)
図1は本発明の基本構成に係るウエハー加工方法を表す工程図である。まず、積層工程S1において、基準辺を有する四角形の水晶ウエハーの基準辺を揃えて複数積層し、基準辺により構成される側面を基準面とする四角柱からなる積層体を形成する。単結晶水晶の原石は結晶方位が特定されるので、原石から切り出す際に水晶ウエハーの基準辺を容易に特定することができる。次に、装着工程S2において、四角柱の隣り合う側面の角部が装着治具の外表面から突出するように積層体を装着治具に装着する。
【0023】
次に、研削工程S3において、装着治具の外表面から突出する角部を研削除去する。これをウエハー積層体の4つの側面により形成される4つの角部について行う。必要に応じて、更に8つの角部について行う。次に、面取り工程S4において、基準面を残し積層体の外周に残る角部を面取りし、積層体を断面が疑似円形を有する円柱に加工する。次に、分離工程S5において、断面が疑似円形からなる積層体を個々の水晶ウエハーに分離する。個々に分離された水晶ウエハーには積層体の基準面を構成した基準辺が残っており、この基準辺により結晶方位が定まる。次に、研磨工程S6において、水晶ウエハーを必要な厚さに研削し、表面を平坦化する。
【0024】
これにより、個々の水晶ウエハーには基準辺が残っているので結晶方位を容易に定めることができる。また、水晶ウエハーは擬似円形であるため、両面研磨機のキャリア開口部に水晶ウエハーを回転可能に装着することができる。このため、研磨工程S6において厚みむらを少なく研削及び研磨することができる。
【0025】
このように、本発明のウエハー加工方法によれば、個々の水晶ウエハーが擬似円形の形状を有するので両面研磨機で厚さを均一に研削及び研磨することができるとともに、水晶ウエハーに結晶方位を表す基準辺を残して正確な結晶方位を特定することを可能とする。以下、実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(実施形態)
図2から図6は本発明の実施形態に係るウエハー加工方法を説明するための図である。図2は積層工程S1の説明図である。図2(a)は単結晶の水晶原石から四角形の水晶ウエハー1に切り出した状態を表す。水晶原石をワイヤーソーによりATカットに切り出して水晶ウエハー1とする。水晶ウエハー1の基準辺KHは、水晶原石のx軸に垂直な+X面から形成される。水晶ウエハー1は、厚さが0.1mm〜0.5mmであり、一辺が25mm〜55mmの大きさを有する。図2(b)は水晶ウエハー1を積層して接着し積層体2を形成した状態を表す。積層体2は四角柱の形状を有し、各水晶ウエハー1の基準辺KHにより基準面KMが構成される。四角柱の両端にはダミーガラス7a、7bを接着し両端部の水晶ウエハー1の表面を保護する。
【0027】
図3は装着工程S2の説明図である。図3(a)は、各側面に開口窓8を有し、L字形状の2つの装着治具4a、4bにより積層体2を挟んだ状態を表す。2つの装着治具4a、4bの各開口窓8から各角部3を突出させて積層体2を挟んで固定する。図3(b)は、上記L字形状の装着治具4a、4bとは異なり、V字形状の溝の底部に開口窓8を有する装着治具4cに積層体2を装着した状態を表す。開口窓8から角部3を突出させて積層体2を装着治具4cに装着する。積層体2の外周の一側面は基準面KMであり、他の側面と区別するためにインク等により印をつけておく。
【0028】
図4及び図5は研削工程S3及び面取り工程S4の説明図である。図4を用いて第一の研削方法を説明する。図4(a)は積層体2の四角柱軸に直交する方向の断面を表す。積層体2の一側面は基準面KMをなす。図4(b)は積層体2を2つの装着治具4a、4bにより挟んで固定した状態を表す。積層体2の外表面の各角部3は装着治具4a、4bの各開口窓8から突出させる。つまり、四角柱の積層体2の隣り合う側面の各角部3を装着治具4a、4bの外表面から突出させる。図4(c)は、装着治具4a、4bの各開口窓8から突出する角部3を装着治具4a、4bの外表面まで研削し、削除した状態を表す。図4(d)は、積層体2を装着治具4a、4bから取り外した積層体2の断面を表す。積層体2は八角柱となり、そのうちの一側面は基準面KMをなす。
【0029】
図4(e)は八角柱からなる積層体2の隣り合う側面の各角部9を更に研削し、除去した断面を表す。図4(b)に示す場合と同様に、L字形状の装着治具4a、4bの開口窓8から積層体2の角部9を突出させ、この突出部を研削定盤に押し付けて研削、除去して積層体2を十六角柱に加工する。この場合に、基準面KMを所定長の長さとするために、基準面KMを挟む両角部の研削量を調整する。
【0030】
図4(f)は面取り工程S4後の積層体2の断面を表す。基準面KMの両角部を除いて積層体2の外周の角部を面取りし、断面を擬似円形とする。次に、分離工程S5において、接着剤を溶解して個々の水晶ウエハー1に分離する。各水晶ウエハーは外形が疑似円形を有し、外周に基準面KMの一部が残される。残された基準面KMの一部は一枚の水晶ウエハーにおいては基準辺KHの一部であり、これがオリフラとなる。従って、このオリフラにより各水晶ウエハーは結晶方位を正確に特定することができる。なお、四角形の積層体2を十六角柱まで研削しないで、八角柱の後に面取り工程S4を行ってもよい。また、本実施形態ではATカットの水晶ウエハーについて説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えばBTカットであってもよいし、その他のカットによって切り出された水晶ウエハーに適用することができることは言うまでもない。
【0031】
図5を用いて第二の研削方法を説明する。図5(a)は積層体2の断面を表す。四角形の一側面は基準面KMである。図5(b)は積層体2を2つの装着治具4a、4bにより挟んで固定した状態を表す。ここで、説明の便宜上、2つの装着治具4a、4bの各開口窓8を、下面側から反時計回りに開口窓8a、8b、8c、8dとする。装着治具4aは、開口窓8dを開口径が拡大するように上方に寄せて形成し、開口窓8aは開口窓8dよりも開口径が縮小するように左方に寄せて形成する。同様に、装着治具4bは、開口窓8cを開口径が拡大するように左方に寄せて形成し、開口窓8bは開口窓8cよりも開口径が縮小するように上方に寄せて形成する。これにより、積層体2は装着治具4a、4bの中心Pよりも−x方向に寄せて固定される。
【0032】
図5(c)は、開口窓8a〜8dから突出する各角部3を研削除去した状態を表す。装着治具4a、4bの中心Pに対して四角柱の積層体2を10時半方向(−x方向)に寄せて固定した。その結果、角部3を研削除去した八角柱の8つの側面のうち、八角柱の軸周り方向の長さは4時半方向(+x方向)に位置する基準面KMが最も長くなる。したがって、以降の研削工程S3や面取り工程S4において、基準面KMに付したインク等の目印が剥離した場合でも、基準面KMを容易に確認することができる。
【0033】
図5(d)は、積層体2を装着治具4a、4bから取り外した断面を表す。八角柱の軸周り方向の長さの最も長い側面が基準面KMとなる。図5(e)は八角柱の積層体2の各角部を更に研削して除去した断面を表す。図5(f)は面取り工程S4後の積層体2の断面を表す。基準面KMの両角部を除いて積層体2の外周の角部を面取りし、断面を擬似円形とする。
【0034】
次に、分離工程S5において、接着剤を溶解して個々の水晶ウエハー1に分離する。各水晶ウエハー1は外形が疑似円形を有し、外周に基準面KMの一部が残される。この残された基準面KMの一部は一枚の水晶ウエハーにおいては基準辺KHの一部であり、これが水晶ウエハーのオリフラとなる。このオリフラにより結晶方位を正確に特定することができる。
【0035】
図6は、研磨工程S6を説明するための図であり、上研磨定盤を取り除いた両面研磨機10の部分平面模式図である。キャリア13は内側のサンギア11と外側のインターナルギア12の間に噛み合わされる。キャリア13には複数の円形の開口部14を形成し、この開口部14に水晶ウエハー1を挿入する。水晶ウエハー1の外周にはオリフラ6が形成される。キャリア13は目的とする水晶ウエハー1の厚さよりも薄く形成する。キャリア13と水晶ウエハー1は図示しない上下の研磨定盤により挟まれ、サンギア11の周囲を自転しながら公転する。研磨定盤には研磨用の砥粒を供給し、所定の厚さに研磨する。水晶ウエハー1は開口部14内で回転するので、厚みのむらを小さく研磨することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 水晶ウエハー
2 積層体
3 角部
4、4a、4b、4c 装着治具
6 オリフラ
7a、7b ダミーガラス
8、8a、8b、8c、8d 開口窓
9 角部
10 両面研磨機
KH 基準辺
KM 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8