特許第5823930号(P5823930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5823930X線CT(ComputedTomography)を用いた光導波路コア立体構造抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5823930
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】X線CT(ComputedTomography)を用いた光導波路コア立体構造抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20151105BHJP
【FI】
   G01N23/04 320
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-160705(P2012-160705)
(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-20964(P2014-20964A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 真司
(72)【発明者】
【氏名】柳 秀一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢哉
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−053151(JP,A)
【文献】 特開平08−152378(JP,A)
【文献】 特開2002−286582(JP,A)
【文献】 特開2001−311701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
G01B 15/00−15/08
G01M 11/00−11/08
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路の融着接続部の構造を観測する方法であって、コンピュータが、
前記光導波路のコア部のドーパントの吸収端上の入射X線エネルギーでのX線CTを用いて、融着接続部における、光導波路のコア部由来のLACヒストグラムG(LAC)および光導波路のクラッド部由来のLACヒストグラムF(LAC)の合成ヒストグラムM(LAC)を観測するステップと、
前記コア部由来のLACヒストグラムG(LAC)および前記クラッド部由来のLACヒストグラムF(LAC)を確率分布であると仮定して最良近似数値解析を行うステップと、
前記コア部に相当する確率分布における平均値を導出するステップと、
当該平均値を閾値として前記光導波路全体のCT像からコア構造を抽出するステップと
を含み、
前記導出するステップは、
前記コア部の前記G(LAC)の平均値(μcore)をもって光導波路コア部代表値とし、この値をもって、コア部を抽出するための最低LAC閾値(μth)と決定するステップと、
光導波路全体像から前記最低LAC閾値(μth)以上の線吸収係数を有するボクセルを選定するステップとを含み、
前記抽出するステップは、
選定された前記ボクセルから、クラスターラベリング法によって、ボクセル集合体であるクラスターのサイズ分類と、サイズ順に番号付与後、
ファイバを構成するコア数分に合致するクラスター番号までをコアとして、0より大きい画素値を与え、それ以外のクラスターを画素値として0を与えるステップと、
画素値を与えることによって、ポリゴン3次元光導波路コア立体構造を計算するステップとを含むことを特徴とするX線CTを用いた光導波路コア立体構造抽出方法。
【請求項2】
前記クラスターラベリング法によりボクセル集合体であるクラスターのサイズ分類を行い、クラスターサイズ順に番号付与後、光導波路を構成するコア数分に加えて、不純物サイズを有するクラスターまでを0より大きい画素値を与える、またはそれ以外のクラスターを画素値として0を与えるステップによって、ポリゴン3次元光導波路コア立体構造と不純物のポリゴン立体構造を計算することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリゴン3次元光導波路コア立体構造の内、光導波路長手方向に対して垂直各断面のスライス像における抽出面積から、円形近似によって抽出コア半径を計量することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出コア半径が、所望の平均半径と異なる場合、
前記最低LAC閾値を変更し、前記ポリゴン3次元光導波路コア立体構造を計算するステップと、
前記抽出コア半径を計量するステップと
を前記抽出コア半径が前記所望の平均半径になるまで繰り返すことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記光導波路コアのポリゴン3次元立体構成像の光導波路長手方向垂直各断面スライス像において、光導波路コアの重心点座標を得ることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記重心点座標を抽出する方法を用いることによって、光導波路コアの3次元構造軌跡を数値化することを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の融着接続部の構造を観測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光導波路の融着技術として、CO2レーザ照射による光ファイバ融着接続の技術の1つが開発されている。
【0003】
図1は我々の提案してきている光ファイバ座屈を応用したCO2レーザ照射による光ファイバ融着接続を説明する図である(非特許文献1参照)。同図は、CO2レーザ発振装置1、ガルバノミラー装置2、融着される光ファイバI(4)、同じく融着される光ファイバII(5)、光ファイバ整列部材6、光ファイバIの押さえクランプ7、および光ファイバIIの押さえクランプ8から構成される。
【0004】
融着にあたり、光ファイバ整列部材6に収容された光ファイバI(4)と光ファイバII(5)は微動機構により両ファイバ同士が突合するように設定された後、光ファイバII(5)のみを微小量δだけ前進させる。これによって、光ファイバII(5)側に撓みが生じることになり、同時に光ファイバI(4)と光ファイバII(5)間で押圧力Pが生じることになる。
【0005】
この状態下で、CO2レーザを光ファイバ接合部に向けて照射を行う。特に、ガルバノミラー2で融着部でレーザ照射が光ファイバの一部分に集中することが無いように、融着ファイバ上で走査を行い、ファイバの均一なレーザ加熱が行えるようにしている。
【0006】
図2には上記融着技術で被試験試料として用いられている単一モード光ファイバの接続損失要因分析を、非特許文献2を参考に記載したものである。
【0007】
同図に、光ファイバIのコア9−a,9−b,9−c、光ファイバIIのコア10−a,10−b,10−cの構成が示される。9−aと10−aとは融着時でのファイバコア幾何学的変形構造を示し、9−bと10−bとはモードフィールド半径が異なるコアの異種ファイバの接続を示しており、9−cと10−cとは熱履歴の結果、コアドーパントの拡散にともなって、変形したコア構造を示している。
【0008】
光ファイバ接続の融着接続損失は三要因に分類することができることが知られる(非特許文献2参照)。まず図2(a)に示すような、融着などの熱加工により生じた光ファイバコアの幾何学的な変形構造、図2(b)に示すような、異種ファイバ接続によるモードフィールド半径差、図2(c)に示すような熱拡散によるドーパントの不均一分布である。(同種ファイバについて考えた場合には要因は図2(a)と図2(c)に限定して考えることができる。)特に、図2(a)に示す幾何学的なコア変形構造は損失の支配要因を成すものの、これまで2次元的な構造分析であることが多く、3次元的なファイバコア構造の屈曲などの観測例はみられていない状況であった。
【0009】
融着接続では、押圧力P(提案手法では図1に示す座屈によって生じる押圧力、一般的には“Hot−push”(非特許文献2参照))、ガラス粘性および表面張力から、立体的な光ファイバ外形とコア構造が決定されることになる。一方、我々はこれまでにSPring−8 CT(Computed Tomography)技術によって、レーザ融着した光ファイバ外形周辺部にファイバ整列部材であるジルコニウム含有物の内包を観測した(非特許文献3参照)。このファイバ周辺部における不純物の内包によって、本来持っているガラス表面張力によるファイバ間自己整列性を損ない、上述の3パラメータに不均衡がもたらされた結果、非軸対称なファイバ外形とコア構造を与える。そこで、融着品質の向上を図るため、不純物低減の種々クリーニング方法を試み、その評価を行うために、ジルコニア含有不純物が及ぼす、これら構造相関について精密観測する必要があった。
【0010】
図3図4を用いて従来技術として、X線CT技術で使用される2エネルギー測定を基本とした画像減算処理(サブトラクション)法(非特許文献4参照)による一般的な観測方法を説明する。特に、上述のレーザ融着手法で発生した融着ファイバ周辺部への不純物内包のコア部構造への影響を観測する際に生じた問題点ついて説明を行う。
【0011】
図3には二酸化ゲルマニウムとシリカの入射X線エネルギーとそれぞれのLAC(Linear Attenuation Coefficient: 線吸収係数)分布の依存性を模式的に示しており、特に二酸化ゲルマニウムについては、分布曲線中にK−吸収端を示している。吸収端(例えば通常のシングルモード光ファイバではゲルマニウムもしくはゲルマニア酸化物吸収端)はゲルマニウムのK殻電子を弾き飛ばすに至った入射X線エネルギーを得たとき、その構成物質の入射X線エネルギーのLACがステップ状に上昇する現象を示すもので、物質に固有の値を示すことになる。本図には光ファイバの構成物質のシリカのLAC分布も記載しており、二酸化ゲルマニウム吸収端付近のX線入射エネルギーにおいては、シリカ材のLAC値は漸減するのみであることを確認できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】S. Koike, S. Asakawa, M. Kobayashi, and R. Nagase, "A simple optical fiber splicing technique using CO2 laser irradiation for board-level optical interconnections," in Intn'l Conf. Electron. Packag. (ICEP), 2008, pp.421-426.
【非特許文献2】A. D. Yablon, "Optical Fiber Fusion Splicing," (Springer, Berlin), 4.2 The Optics of Single-Mode Fiber Fusion Splices Fig. 4.7. p.109, (2005).
【非特許文献3】S. Koike et al., "SPring-8 X-ray Micro-Tomography Observations of Zirconium Inclusions in CO2 laser Fusion Splice for Single Mode Optical Fibers," IEEE Transactions on Components, Packaging, and Manufacturing Technology, vol.1 no.1 pp.100-110, (2011).
【非特許文献4】Tatsumi Hirano, Shuuji Eguchi and Katsuhisa Usami, "Study of Qualitative Elemental Analysis of Monochromatic X-Ray CT Using Synchrotron Radiation," Japanese Journal of Applied Physics, vol.28, no.1, January, 1989, pp. 135-139.
【非特許文献5】David L. Davies and Donald W. Bouldin, "A Cluster Separation Measure," IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, vol. PAM-1, No. 2, April, pp. 224-227, (1979) .
【非特許文献6】A. D. Yablon, "Optical Fiber Fusion Splicing," (Springer, Berlin), 4.2 The Optics of Single-Mode Fiber Fusion Splices, Eq.(4.44), p.112, (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図4(a),(b)には二酸化ゲルマニウムのK吸収端より下のエネルギー(例えば、11.09 keV)と、上のエネルギー(例えば、11.19 keV)とでCT測定を行った時の光ファイバの断面CT像を模式的に示す。図4(c),(d)には、図4(a),(b)で示したK-吸収端下・上で測定した光ファイバ断面CT像をもとに、画像間で位置ずれが全くなく減算処理ができた場合の結果と、位置ずれが生じた状態で画像間で減算処理を行った場合の結果とをそれぞれで示している。なお、本図は光ファイバコア9もしくは光ファイバコア10と、光ファイバクラッド11とオフセットアーチファクト12から構成される。
【0014】
図4(a)に示すように二酸化ゲルマニウムを主ドーパントとする光ファイバコア9もしくは光ファイバコア10が吸収端下の入射X線エネルギーでは観測できていないのに対して、図4(b)に示すように吸収端上の入射X線エネルギーでは観測できている。このように図4(a)の入射X線エネルギーでは、光ファイバコア9もしくは光ファイバコア10が、クラッド(11)と見極めがつかない状態となるため、図4(a)、図4(b)それぞれの入射X線エネルギーで取得した画像間で減算処理(サブトラクション)を行った場合には同一LAC値を示す物質の画像が消え、図4(c)に示すように結果としてコアのみ抽出が可能と推測される。
【0015】
しかしながら、一般的なシングルモード光ファイバのコア直径約10μmのCT画像は装置所定仕様のスライス間隔とピクセル間隔(例えば0.5μm)で画像取得が行われるため、その精度で再現性よく画像取得を行うことは困難となる。特に熱加工によってファイバ外形にわずかな曲面状の構造変化が生じる融着ファイバの場合には、両エネルギーで取得した画像間でファイバ断面の一致を見ることは、同一スライス位置(ファイバ長手方向)であっても困難となる。その結果、図4(d)に示すような画像間のオフセットアーチファクト12 がファイバ周縁部で生じる問題があった(図4(d))。
【0016】
さらには、図3での説明のように、二酸化ゲルマニウムのK-吸収端上・下での入射X線エネルギーで測定したCT像間のサブトラクション法によっては、コア材質以外で構成される内包物の場合にはクラッド材シリカと同様に入射X線の吸収端エネルギー上・下でほぼ同一のLAC値をもつため、サブトラクション処理によって減算され、その存在がバックグラウンドにうもれる結果となる。
【0017】
従って、ジルコニアセラミックス等の二酸化ゲルマニウムと異なる物質のファイバ周辺部への内包(非特許文献3参照)が及ぼすコア幾何学変形構造を本手法によって観測を行った場合、ジルコニア含有物の画像が消失することになる。また、ゲルマニウム化合物がコア以外に内包物として見られた場合でも、周辺部にある場合には、オフセットによるアーチファクト出現によって不純物の内包観測が困難となり、周辺含有物がもたらす光ファイバコア構造変形への影響について明らかにすることは困難であるという課題があった。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は、融着接続時の光ファイバのコア構造の接続部観測において、融着部周辺に内包されるコア材と異なる不純物が及ぼす光ファイバコア構造への影響を把握するために、コアの幾何学的変形構造を3次元的に観測することに加えて、融着光ファイバコア間のオフセット値を求めるX線CTを用いた光導波路コア立体構造抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光導波路の融着接続部の構造を観測する方法であって、コンピュータが、前記光導波路のコア部のドーパントの吸収端上の入射X線エネルギーでのX線CTを用いて、融着接続部における、光導波路のコア部由来のLACヒストグラムG(LAC)および光導波路のクラッド部由来のLACヒストグラムF(LAC)の合成ヒストグラムM(LAC)を観測するステップと、前記コア部由来のLACヒストグラムG(LAC)および前記クラッド部由来のLACヒストグラムF(LAC)を確率分布であると仮定して最良近似数値解析を行うステップと、前記コア部に相当する確率分布における平均値を導出するステップと、当該平均値を閾値として前記光導波路全体のCT像からコア構造を抽出するステップとを含み、前記導出するステップは、前記コア部の前記G(LAC)の平均値(μcore)をもって光導波路コア部代表値とし、この値をもって、コア部を抽出するための最低LAC閾値(μth)と決定するステップと、光導波路全体像から前記最低LAC閾値(μth)以上の線吸収係数を有するボクセルを選定するステップとを含み、前記抽出するステップは、選定された前記ボクセルから、クラスターラベリング法によって、ボクセル集合体であるクラスターのサイズ分類と、サイズ順に番号付与後、ファイバを構成するコア数分に合致するクラスター番号までをコアとして、0より大きい画素値を与え、それ以外のクラスターを画素値として0を与えるステップと、画素値を与えることによって、ポリゴン3次元光導波路コア立体構造を計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の方法であって、前記クラスターラベリング法によりボクセル集合体であるクラスターのサイズ分類を行い、クラスターサイズ順に番号付与後、光導波路を構成するコア数分に加えて、不純物サイズを有するクラスターまでを0より大きい画素値を与える、またはそれ以外のクラスターを画素値として0を与えるステップによって、ポリゴン3次元光導波路コア立体構造と不純物のポリゴン立体構造を計算することを特徴とする。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の方法であって、前記ポリゴン3次元光導波路コア立体構造の内、光導波路長手方向に対して垂直各断面のスライス像における抽出面積から、円形近似によって抽出コア半径を計量することを特徴とする。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の方法であって、前記抽出コア半径が、所望の平均半径と異なる場合、前記最低LAC閾値を変更し、前記ポリゴン3次元光導波路コア立体構造を計算するステップと、前記抽出コア半径を計量するステップとを前記抽出コア半径が前記所望の平均半径になるまで繰り返すことを特徴とする。
【0024】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の方法であって、前記光導波路コアのポリゴン3次元立体構成像の光導波路長手方向垂直各断面スライス像において、光導波路コアの重心点座標を得ることを特徴とする。
【0025】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の方法であって、前記重心点座標を抽出する方法を用いることによって、光導波路コアの3次元構造軌跡を数値化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
ファイバを始めとする導波路部品間融着接続部で検出される接続周辺部に含有される不純物の内包と融着部の外形変形構造とが及ぼす、コアの3次元幾何学的変形構造への影響について非破壊X線CT測定により、効率的かつ定量的に観測可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】光ファイバ座屈を応用したCO2レーザ照射による光ファイバ融着方法を示す図である。
図2】融着光ファイバの損失要因を説明する図であり、図2(a)は、幾何学的コア構造変形を示す図であり、図2(b)は、モードフィールド径が異なる異種ファイバ接続を示す図であり、図2(c)は、ドープ材熱拡散によるコア構造変化を表す図である。
図3】二酸化ゲルマニウムとシリカの二酸化ゲルマニウムのK-吸収端付近での入射X線エネルギーとLAC分布の説明する模式図である。
図4】従来技術であるサブトラクション法を用いてX線CT像からコア部を抽出した場合の問題点(オフセットアーチファクト)を説明する図であり、図4(a)は、入射X線エネルギー吸収端下の場合を示す図であり、図4(b)は、入射X線エネルギー吸収端上の場合を示す図であり、図4(c)は、サブストラクション処理オフセットなしの場合を示す図であり、図4(d)は、サブストラクション処理オフセットありの場合を示す図である。
図5】本発明による第1の実施形態のコア部抽出のための二酸化ゲルマニウム吸収端上・下で観測したコア部でのLAC分布変化の説明する図であり、図5(a)は、二酸化ゲルマニウム吸収端下でのX線エネルギーでの光ファイバ断面CT像の模式図であり、図5(b)は、二酸化ゲルマニウム吸収端上でのX線エネルギーでの光ファイバ断面CT像の模式図であり、図5(c)は、コア付近で取得したLAC出現頻度ヒストグラムを示す図であり、図5(d)は、コア付近で取得したLAC出現頻度ヒストグラムを示す図である。
図6】第1の実施形態の光ファイバの3次元ポリゴン鳥瞰図であり、図6(a)は、光ファイバ外形を表す図であり、図6(b)は、光ファイバコアと融着界面周辺部での含有不純物抽出画像を表す図であり、図6(c)は、光ファイバコアのみの抽出画像を表す図である。
図7図7(a)は、図6(c)で抽出したコア像を基にしたコア重心位置のファイバ長手方向(z 軸)分布図z-xm分布図であり、図7(b)は、z-ym分布図である。
図8】第2の実施形態における、線吸収係数閾値μth変更による融着ファイバの3次元ポリゴン光ファイバ抽出コアの鳥瞰図であり、図8(a)は、μth= 34cm-1の場合を表す図であり、図8(b)は、μth= 35cm-1の場合を表す図である。
図9】第2の実施形態における融着ファイバの抽出コア半径のファイバ長手方向(z軸方向)分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
図5(a),(b) に、ゲルマニウム酸化物のK-吸収端下・上の入射X線エネルギーで測定された光ファイバ断面CT観測結果を模式的に示す。図中には光ファイバクラッド部(11)と光ファイバコア部9,10の断面CT像を示している。また、図5(c),(d)には、CT像中に示した光ファイバのコアを中心として直径50μmの円内で得られたLAC出現頻度ヒストグラム分布の観測結果を示している。
【0029】
図5(a)の光ファイバCT画像で明らかなように、吸収端下のX線エネルギーでは光ファイバコアは描像できていない。図5(c)のLAC出現頻度ヒストグラム分布に示すように、光ファイバのクラッドに相当するLAC分布(ここではF(LAC)のクラッド出現頻度関数)を示すのみである。一方、図5(b)での吸収端上でのX線エネルギーでのCT画像測定結果では、光ファイバコアの存在が明らかであり、図5(d)に示す吸収端上のLAC出現頻度ヒストグラム分布では、図5(c)に示すLAC分布ヒストグラムで観測された単峰の曲線分布ではなく、高いLAC値を示す新たな分布が複合されている様子が観測された。
【0030】
このヒストグラムの変化は二酸化ゲルマニウム吸収端上のX線エネルギーにより検出されたことから、光ファイバコアの出現によるものと考えることができ、吸収端上で測定されたヒストグラム分布は光ファイバクラッドに対応するLAC出現頻度分布F(LAC)とコアに対応するLAC出現頻度分布G(LAC)とで合成されてなる分布M(LAC)と考えることができる。
【0031】
本実施例においては、F(LAC),G(LAC)のそれぞれがガウス型分布(確率分布)を示すと仮定して、ルンゲ・クッタ法によって最良近似数値解析を行うことによって、ガウス型分布のパラメータを特徴づけた。その結果として、光ファイバコアに相当するガウス型分布における平均値μcore(ここではμcore= 35cm-1)を閾値μthとして、光ファイバ全体CT像から光ファイバコア構造の抽出を試みた。特に、光ファイバコア・クラッドのLAC分布G(LAC)とF(LAC)分布では、図5(d)のLAC出現頻度分布で図示するように、G(LAC)の平均値μcoreにおいて、クラッド部の分布F(LAC)とコア部の分布G(LAC)の重なりが見られるため、閾値設定のみの抽出ではクラッドの抽出が雑音として抽出されることになる。そこで、クラスター法(非特許文献5参照)によって、光ファイバのクラッドから光ファイバのコア部分と含有不純物の弁別抽出を試みた。光ファイバコア分布平均値μcore以上のLACを持つボクセル(LACを付与された単位長を持つ立方体:ここでは単位長として0.5μm)を抽出物質として設定した後に、ボクセル集合体であるクラスターをサイズ順に番号付け(ラべリング)する。これにより、ファイバを構成するコア数分に合致するクラスター番号までをコアとして、0より大きい画素値を与え、それ以外のクラスターを画素値として0を与える方法によって、ポリゴン3次元光導波路コア立体構造を得る(コンピュータが計算する)。本実施例では光ファイバコア数は1つであるが、含有不純物の抽出のため、最大3番目までのクラスターを物質として認識させた。その画像処理による3次元ポリゴン像による表示結果を図6に示した。
【0032】
図6(a)に、光ファイバの融着部外形の3次元構造のポリゴン鳥瞰図の図6(a)とクラスターナンバリング法によって、抽出した光ファイバコアを示し、図6(b)に融着界面における光ファイバ不純物の3次元ポリゴン鳥瞰図を示し、光ファイバ不純物の3次元ポリゴン像を削除して、光ファイバコアのみを抽出した3次元ポリゴン鳥瞰図を示す。図6(b)に示すように不純物内包物のサイズは極めて微量であるものの、光ファイバの外形構造を示す図6(a)と比較することによって、「融着界面」に含有不純物が存在することが明らかとなった。次に、クラスターナンバリング法で最大のボクセル数を有するクラスターである光ファイバのコアのみを表示した図6(c)を観測すると、光ファイバコアは、光ファイバの外形の長手方向(図6(a))とほぼ平行に直線状であり、融着界面において特に変化が本結果のみでは十分に見られない。
【0033】
図7(a)、(b)には図6(c)のコアの3次元ポリゴン像を構成するx-y面のコア断面画像から重心抽出によって光ファイバコア重心位置(xm,ym)の軌跡をz-xm重心位置座標とz-ym重心位置座標とを示す。図7(a)に示すz-xm重心位置座標ではファイバ長手方向であるz軸方向とともに、重心位置xmは直線状に変化しており、融着界面位置(z= 380μm位置)においても顕著な変化が見られない。一方、図7(b)に示すz-ym重心位置座標では融着界面位置(z= 380μm位置)において変化が観測される。特に、z= 400-500μmで屈曲が観測され、光ファイバコアの角度ずれ(約0.3度)が生じていることが明らかとなった。さらに、この角度ずれにともない、融着界面において、光ファイバ断面方向について光ファイバ間でy軸方向に約0.85μmの偏差が生じていることも明らかとなった。これらの結果をもとに、代表的な光ファイバの損失推定式(非特許文献6参照)に代入することにより、0.17dBと推定損失値が得られ、実験損失値 0.19dBとほぼ同一の結果が得られることが明らかとなった。
【0034】
なお、本実施例の説明においてクラスターラべリング法によるコア部抽出によって、コア部重心点座標を求める方法について述べたが、コア部抽出方法として、コア部のLAC分布関数G(LAC)がクラッド部のLAC分布関数F(LAC)に比べて十分高い出現頻度を示すLAC値を閾値(μth)として、それ以上をコア部と認識させてコア部の抽出を行い、コア部の重心点座標(xm,ym)を求める手法を含めることは言うまでもない。
【0035】
また、上記で確率分布として示したガウス型分布は、ローレンツ分布、χ二乗分布等であっても良いことは言うまでもない。
【0036】
(第2の実施形態)
ここで最低閾LAC値(μth)について検討する。
【0037】
図8(a)に閾値μth= 35cm-1の場合のコア鳥瞰図を示し、図8(b)にμth= 34cm-1の場合のコア鳥瞰図を示す。図8(a)、(b)のコア鳥瞰図は、第1の実施形態で述べた手法によって抽出したポリゴンコア鳥瞰図である。図8(b)に示す抽出されたコアの鳥瞰図は、最低閾LAC値μthを低減することによってコア半径が太くなり、図8(a)より光ファイバコアの中心からクラッド周辺に向けての描像が行われている。また、図5(b)のLAC出現頻度分布中でμth= 34cm-1の位置も示しているが、このLAC値を設定した場合にはクラッド対応のLAC値を持つボクセルの分散がμth= 35cm-1の場合よりもコア部以外で多く発生して、ノイズとして見られる。しかし、図8(b)に示すように、クラスター法をとることによって、コア部のみの立体構造が抽出できる。
【0038】
図9に、図8の光ファイバ長手方向(z軸)に対する垂直方向(x-y断面)のコア断面像をもとに、抽出コア面積を円として近似することによって、z軸方向の抽出半径分布を解析した結果を示す。
【0039】
図中には、LAC閾値μth= 34cm-1, 35cm-1とした場合の、結果を示している。本図に示すように、両者ともに、ほぼ均一な光ファイバコア抽出半径分布が光ファイバ長手方向(z軸)で得られており、測定領域全体の平均値として、μth= 34cm-1と35cm-1において、コア抽出半径5.05μm, 4.50μmとの結果がそれぞれ得られた。 1.31μmを伝搬光とした場合のシングルモード光ファイバのモードフィールド半径は4.75-μmであり、これらのμthのほぼ中間で、モードフィールド半径とほぼ同一半径が光ファイバコアとして抽出できることが明らかとなり、モードフィールド半径抽出のために、最低閾値としてμth= 34.5cm-1とした。一方、図9に示すように、ファイバ長手方向(z軸)にわたる抽出半径の変化を観測すると、閾値μthの低減によっても、抽出半径の変化の様子は同一であり、ゲルマニウム酸化物のクラッドへの拡散は、線吸収係数μth= 35cm-1と同様の傾向を示すことが推定される。(閾値μthの低減によって得られる抽出半径はより濃度のうすい拡散ドーパントの分布状態を示すことと同義であると仮定している。)
次に、その抽出半径値の変動指標として標準偏差σを見ると、μth= 35cm-1において観測したファイバ長手方向全体では標準偏差σ= 0.27μmである。しかしながら、融着界面位置(z= 380μm)を境として、光ファイバIとIIにて分けて平均コア抽出半径を求めた場合には、4.38+/- 0.26μm、4.60+/-0.21μmとの結果が得られ、両ファイバ抽出コア半径間で差異がみられており、融着時の座屈力の負荷の影響など推定される結果が得られた。
【0040】
以上、実施例とともに詳しく説明したように、二酸化ゲルマニウムK吸収端をもちいたX線CTによる光ファイバ構造観測において、光ファイバ中の光信号伝送線路として重要なコアの3次元立体構造抽出方法について述べた。本方法により、融着界面で見られる含有不純物が及ぼす光ファイバコアの幾何学的変形構造への影響を定量的に観測することが可能となる。また、光学顕微鏡的手法による観測によってはファイバ融着部のクラッド部表面構造欠陥や不純物内包の結果により、コア構造観測が困難であったが、本手法では上記状態でも観測を行うことができる。
【0041】
本願では光導波路のひとつとしての光ファイバを説明しただけであって、請求項に記載の光導波路は、光ファイバに限定されない。
【0042】
また、光ファイバ接続を中心に述べたが、光導波路間接続においても本質的に同様であり、光ファイバ-光導波路間融着接続を始めとする集積型光導波路デバイスの接続部の観測において本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【0043】
さらに、マルチコアファイバなど複数のコアをファイバ内に有した場合には、光学顕微鏡的手法でコア同士が光学的に干渉した結果、融着などで生じるファイバとコアの構造変形の観測が困難であったが、本発明の手法により、効率良く複数コアの3次元立体構造を観測可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 CO2レーザ発振装置
2 ガルバノミラー装置
4 光ファイバI
5 光ファイバII
6 光ファイバ整列部材
7,8 押さえクランプ
9,9−a,9−b,9−c 光ファイバIのコア
10,10−a,10−b,10−c 光ファイバIIのコア
11 光ファイバクラッド
12 オフセットアーチファクト
13 融着光ファイバ含有不純物
図1
図2
図3
図4
図5
図9
図6
図7
図8