(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、次のように各種技術が展開されている。酸素ガスに数千ppm以上の窒素ガスを添加した原料ガスをオゾン発生器に供給し、高濃度オゾンガスを生成し、この高濃度オゾンガスを用いて、半導体製造分野で、オゾン酸化絶縁膜形成やオゾン洗浄等のオゾン処理工程に多く用いられている。この半導体製造分野等においては、複数のオゾン処理装置より構成される多オゾン処理装置に対してオゾンガスを供給する場合、複数のオゾン処理装置に対応して、各々がオゾン発生器、オゾン電源、流量コントローラ(MFC)等を含む複数のオゾン発生機構(手段)を設け、各オゾン発生機構が独立して対応するオゾン処理装置に対してオゾンガス供給するオゾンガス供給システム(ユニット)を構築することが一般的に考えられる。
【0003】
図9に示すように、従来、オゾン電源72から電源供給を受け、電極71a,71b、誘電体71c等により構成されるオゾン発生器71によるオゾンガスの生成効率をアップさせるために、一般の酸素ガスにおいては、約50〜数千ppmの窒素ガスが含まれており、また、窒素含有率が少ない(50ppm未満)の高純度酸素ガスでは、オゾン発生器中に高純度酸素ガスと共に微量(500ppm以上)のN
2ガスを添加している。
【0004】
そのため、原料酸素ガスに500ppm以上のN
2ガスが含まれると、
図10に示す放電反応によって生成される微量のNO
2の触媒反応で、高濃度のオゾンが生成されていた。特に、窒素ガスを500〜20000ppm添加すれば、放電によって生成される微量の二酸化窒素量の触媒反応で効率良くオゾンが生成される。結果として最も高濃度のオゾンが生成され、窒素添加量500〜20000ppm範囲の原料ガスがオゾン発生性能において最適条件であることが実験で検証されている。
【0005】
以下、
図10で示す放電反応は以下の(1)〜(3)に示すように、原料酸素O
2に、光電気放電光と微量のNO
2の触媒ガスを利用して、高濃度オゾン発生を実現している。
【0006】
(1) 放電による微量のNO
2ガス生成反応
・窒素分子のイオン化反応
N
2+e⇒2N
+
・NO
2の生成反応
2N
++O
2+M⇒NO
2
(数ppm〜数十ppmのNO
2ガス生成)
(2) NO
2の放電光による触媒効果での酸素原子Oの生成
・NO
2の光解離反応
NO
2+hν⇒NO+O
・NOの酸化反応
NO+O
2(原料酸素)⇒NO
2+O
*上記2つの反応でNO
2が触媒になって酸素原子が生成
(2)の反応で生成した多量の酸素原子Oと酸素ガス分子O
2との反応でオゾンO
3が生成される。
【0007】
(3) オゾンO
3の生成(三体衝突)
R2;O+O
2+M→O
3+M
上記(1)〜(3)によって、高濃度なオゾンを発生させている。
【0008】
しかし、原料の酸素ガスにN
2ガスが多く含むことにより、オゾン発生器内で無声放電によってオゾンガス以外にN
2O
5,N
2O等のNO
X副生ガスや硝酸も生成される。具体的なNO
X副生ガスや硝酸も生成の化学式は以下の通りである。
【0009】
N
2+e⇒N
2*+e⇒N
2+hν(310,316,337,358nm)
N
2*;窒素の励起
窒素ガスによる紫外光
H
2O+e⇒H+OH+e (水蒸気の電離)
N
2+e⇒2N
-+e (窒素分子の電離)
NO
2+hν(295〜400nm)⇒NO+O(
3P)
H+O
2+M⇒HO
2+M
HO
2+NO⇒OH+NO
2
N
2O
5+H
2O⇒2HNO
3
OH+NO
2+M⇒HNO
3+M
このように、オゾンガス以外にNO
X副生ガスや硝酸も生成される。
【0010】
また、多量のNO
X副生物が生成されると、NO
Xガス成分と原料ガス中に含まれる水分との反応により硝酸(HNO
3)クラスタ(蒸気)が生成され、酸素、オゾンガスとともに微量のNO
Xガス,硝酸クラスタが混合した状態でオゾン化ガスが取り出される。この微量の硝酸クラスタ量が数百ppm以上含まれると、オゾンガス出口配管であるステンレス配管の内面に硝酸によって酸化クロム等の錆が析出され、クリーンオゾンガスに金属不純物が混入し、半導体製造装置用反応ガスとして金属不純物が半導体の製造に悪影響を及ぼすとともに、生成した微量の硝酸クラスタが半導体製造装置の「オゾンによるシリコン酸化膜のエッチング処理」や「ウェハ等のオゾン水洗浄」に反応毒として悪影響をもたらす間題点があった。
【0011】
また、オゾン発生器、オゾン電源等を搭載したオゾンガス供給システムは、オゾン発生器、オゾン電源、オゾンガスもしくは原料ガス流量をコントロールするMFC等の流量調整手段を介してオゾン発生器に供給する原料ガス配管系統、オゾン発生器内のガス雰囲気圧力をコントロールするAPC等の圧力調整する手段を有して、オゾン発生器から出力されるオゾンガスに対し濃度を検知するオゾン濃度検知器、オゾン流量計を有した出力ガス配管系統等を、多オゾン処理装置の系統数分、設けることが一般的に考えられる。
【0012】
しかしながら、多量のNO
X副生物が非常に少ない高濃度のオゾン化酸素を供給できなく、その上、このような多オゾン処理装置に対応するオゾン発生システムを構築するのに非常に大きなスペースを要し、さらに、多オゾン処理装置に対し統合的な制御を行って、オゾンガスを供給するシステムを構築する場合、さらに大きなシステム構成となり、コスト面や配置スペース等の問題点があり実用上不利な点が多々あった。
【0013】
そこで、従来のオゾン発生器中に窒素ガスを含めないで、高純度酸素ガスのみでオゾン発生を試みたが、発生したオゾンは極わずかしか得られなかった。これは次のように考えられる。原料ガスである酸素分子は、紫外光245nm以下の波長で連続スペクトルの光吸収スペクトル(紫外線波長130〜200nm)をもっており、酸素分子が紫外光245nm以下のエキシマ光を吸収することで酸素原子に解離し、この解離した酸素原子と酸素分子と第三物質との三体衝突でオゾンが生成されることは、紫外線を出すエキシマランプ等で知られている。しかし、オゾン発生器のような、酸素ガスを主体にした1気圧以上の高気圧中の無声放電では紫外光245nm以下のエキシマ光の発光は全くない。そのため、無声放電光による酸素原子の解離およびオゾン生成の反応過程の反応定数は非常に小さく、数%以上の高濃度オゾンガス生成できる反応とは考えられない。
【0014】
そのため、従来は、多オゾン処理装置へのオゾン供給方式としては、例えば、特許文献1に開示されているように、原料酸素ガスに数千ppm以上の窒素ガスを含んだ原料ガスもしくは、原料酸素ガスに強制的に窒素ガスを数千ppm以上添加した原料ガスをオゾン発生器に供給し、高濃度オゾンを発生させ、しかも、複数のオゾン処理装置にオゾンガスを供給するために、1式のオゾン発生器の容量を大きくして、オゾンガスを出力する配管系統を複数配管に分離させ、多オゾン処理装置へそれぞれへの所定流量、濃度のオゾンガスをステップ的に出力させる方式のオゾンガス供給システムが採用されて来ていた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<窒素添加レス・オゾン発生器>
この発明の実施の形態で述べるオゾンガス供給システムで用いる窒素添加レス・オゾン発生器を
図1ないし
図4について説明する。
図1は窒素添加レス・オゾン発生器を中心としたガス系統の構成を示すブロック図である。
【0024】
なお、狭義では窒素添加量が10ppm以上1000ppm以下の高純度酸素原料ガスを用いたオゾン発生器を「窒素添加抑制・オゾン発生器」と呼び、窒素添加量が10ppm未満の高純度酸素原料ガスを用いたオゾン発生器を「窒素添加レス・オゾン発生器」と呼ぶ。本明細書では広義の意味として、上述した「窒素添加抑制・オゾン発生器」を含めて、1000ppm以下の高純度酸素原料ガスを用いたオゾン発生器を総称して「窒素添加レス・オゾン発生器」と呼ぶ。
【0025】
図2は
図1で示した窒素添加レス・オゾン発生器1によるオゾン濃度特性を示す特性図である。
図3は酸素分子と光触媒とによる酸素分子の酸素原子への解離メカニズムを説明する模式図である。
【0026】
図4は窒素添加レス・オゾン発生器1によって生じる酸素原子と酸素分子との三体衝突によるオゾンの生成メカニズムを説明する模式図である。なお、明細書中で各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0027】
この発明での窒素添加レス・オゾン発生器は、200g/m
3以上の高濃度オゾンガス、半導体製造装置や洗浄装置等のクリーンなオゾンガス、NO
XやOHラジカル物質等の副生物を無くした高品質の窒素レスオゾンガス,又はオゾン生成効率のよい装置を必要とするところに有効である。
【0028】
図1において、純度99.99%以上の酸素(原料ガス)を供給する原料供給系99は、高純度酸素ボンベ991,減圧弁992,及び開閉弁993で構成され、酸素ガス994を外部に供給する。そして、酸素ガス994がMFC3を介して原料ガス995として窒素添加レス・オゾン発生器1に供給される。窒素添加レス・オゾン発生器1は内部に電極1a,1b、誘電体1c及び光触媒(層)1dを有している。2枚の電極1a、1bは互いに対向し、電極1aの電極1bとの対向面(放電面)上に誘電体1cが設けられる。そして、誘電体1c及び電極1b間の対向面にそれぞれ光触媒1dを塗布した構成になっている。
【0029】
図1では、付記されていないが、ボンベから供給される高純度酸素に含まれる水分量を0.1ppm以下まで下げる水分除去ガスフィルターを設け、窒素、水分量を極力抑えた窒素、水分レス原料ガスのガス量を調整する流量調整器(MFC)3を介して、酸素ガス994が原料ガス995として窒素添加レス・オゾン発生器1に供給される。
【0030】
なお、酸素ガスとして、純度99.99%以上の酸素を用いても、具体的には、99.995%高純度酸素を用いても、N
2が151×10
2ppb(即ち15ppm)含まれるように、避けられないN
2が混入するが、高純度のオゾンガスを得るためには、N
2の混入がより少ない原料酸素ガスを使用することが望まれる。
【0031】
図3は、無声放電中での光触媒の固体電子論(バンドギャップ理論)の固体中の電子配位構造と酸素分子の解離メカニズムを模式的に示したものである。光触媒物質と放電光による光触媒反応機能の動作と作用について説明する。無声放電空間中の電極等の壁面に光触媒を塗布すると、光触媒のバンドギャップの電子配位構造は
図3に示すように、バンドギャップ以上のエネルギーを有する無声放電光を光吸収する。そうすると、光触媒は価電子帯から電子が飛び出し伝導帯へ移動(ポンピング)する。
【0032】
電子が移動した価電子帯では正孔(ホール)が形成される。伝導帯に移動した電子は周囲に移動するか、放電領域に電子放出をするかで寿命が終る。つまり、伝導帯に移動した電子は非常に寿命が短く数十psecである。価電子帯の正孔は伝導帯に移動した電子が再結合で戻ってこない限り、存在し続けるため、正孔の寿命は200〜300nsecと長い。この正孔が存在する励起状態の光触媒と酸素分子が量子的に接触すると、酸素分子の共有電子を奪いとり、酸素分子を物理的に解離する(光触媒による酸素の吸着解離現象[酸化反応])。
【0033】
一方、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒では光吸収波長は428nm〜620nmの可視光であり、窒素を含まない酸素の場合でも又は酸素とアルゴンガスの場合でも、無声放電はこの可視光領域の光波長を発光する能力(放電)を有している。そのため、オゾン発生器の電極面(壁面)にバンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒を塗布すると、窒素を含まない酸素の場合でも又は酸素とアルゴンガスでも、その無声放電で発光した放電光を、前記光触媒が吸収して、光触媒が励起され、励起された光触媒と酸素ガスの吸着解離作用で酸素が解離できることが判明した。さらに、
図4の模式図で示したように、解離した酸素原子と供給される酸素分子(原料酸素ガス)と第三物質との三体衝突で結合作用が、光触媒1d(壁M)上で促進される働きでオゾンが生成できる。
【0034】
他方、オゾン発生器中の窒素ガスによる無声放電では、紫外領域(413nm〜344nmの紫外光)の光波長を発光(放電)する能力を有する。
【0035】
そのため、本願の光触媒物質を放電面に塗布した窒素添加レス・オゾン発生器1では、窒素を含んだ無声放電において、バンドギャップ3.0eV〜3.6eVの光触媒は、光励起でき、励起したこの光触媒は、酸素分子を解離する能力によって高品質なオゾンガスが生成でできる。
【0036】
さらに、窒素を含んだ無声放電においては、バンドギャップ3.0eV〜3.6eVの光触媒は、光励起でき、酸素による無声放電においては、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒は、光励起でき、結果として、酸素に微量の窒素(抑制した窒素量)を添加することで、放電領域の誘電体又は電極に設けられた光触媒の許容バンドギャップ範囲は、2.0eV〜3.6eVまで可能になり、酸素のみならず窒素の放電光(紫外光)を利用してオゾン生成反応を促進させることができる。つまり、N
2ガスが含まれると、本願の発明効果によるオゾン発生機能が高められる。
【0037】
オゾン発生器の放電面に塗布する光触媒物質は、半導体の一種に位置付けられ、半導体特有のバンドギャップを有した物質であり、通常の半導体物質のバンドギャップよりも大きい値を示している。また、光触媒物質は、通常金属と酸素原子が結合した酸化金属物質であって、その酸化金属物質の結晶において金属原子と酸素原子との完全結合ではなく、酸素欠損を有した結晶構造を有する酸化金属物質が半導体効果や光触媒効果を有する物質と言われている。
【0038】
例えば、光触媒物質である酸化鉄(Fe
2O
3)や酸化タングステン(WO
3)に関し、正確には、光触媒物質である酸化鉄や酸化タングステンはFe
2O
X 、WO
Xであり、酸素の結合数Xの値が3未満(X<3)の酸化鉄が光触媒物質となる結晶構造である。つまり2個の鉄原子と酸素原子との結合では、3個の酸素原子までは、結合できるが、光触媒物質であるためには、酸素結合において酸素欠損した部分を残した結晶構造になっている。
【0039】
窒素添加レス・オゾン発生ユニットで用いる窒素添加レス・オゾン発生器では、放電面に光触媒物質を塗布し、光触媒効果を能力アップして高濃度オゾンを生成させるため、放電している酸素ガスの通過する放電面に、塗布した光触媒物質の表面積を大幅に増やす工夫がされている。
【0040】
<実施の形態>
図5はこの発明の実施の形態である窒素添加レス・オゾン発生ユニット及びその周辺の構成を示す説明図である。なお、同図において、
図1で示した構成と同様な構成は同一符号を付して説明を適宜省略し特徴部分を中心に説明する。
【0041】
同図に示すように、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生ユニット7は、オゾンガスを発生する手段を有した窒素添加レス・オゾン発生器1、オゾンガスに所定の電力を供給する手段を有したオゾン電源2、窒素添加レス・オゾン発生器1内に供給する原料ガス流量Qを一定値に制御する手段を有するMFC3、及び窒素添加レス・オゾン発生器1内の圧力値を一定値に制御する手段を有するAPC4を有している。
【0042】
そして、窒素添加レス・オゾン発生器1は、オゾン電源2からの高電圧HVを、オゾン発生器外枠1x内に導く高電圧用端子収納部20がオゾン発生器外枠1xの外部に有している。窒素添加レス・オゾン発生器
外枠1xは窒素添加レス・オゾン発生器1の収納部となる筐体であり、高圧電極1a、接地電極1b、誘電体1c及び光触媒1d、連結ブロック498(
図5では図示せず)、高圧冷却板45(
図5では図示せず)を内部に収納している。
【0043】
さらに、オゾン発生器外枠1x内への低温の冷却水33(冷却媒体)の供給・排出を行う断熱冷却水配管31(断熱冷却水入力用配管31I,断熱冷却水出力用配管31O)をオゾン発生器外枠1xの外部に設けている。そして、高電圧用端子収納部20内の高電圧用端子PHと接地用端子PLとがオゾン発生器外枠1xを貫通して設けられる。
【0044】
さらに、窒素添加レス・オゾン発生器1は、MFC3を介して得られる原料ガス995を内部に供給するための原料入口38、生成したオゾンガス996を外部のAPC4に出力するオゾンガス出口39をオゾン発生器外枠1xに設けている。窒素添加レス・オゾン発生器1は、さらに、断熱冷却水入力用配管31Iからの低温冷却水33(冷却媒体)の入力用及び断熱冷却水出力用配管31Oへの低温冷却水33の出力用の冷却水出入口34をオゾン発生器外枠1xに設けている。
【0045】
窒素添加レス・オゾン発生ユニット7は、
図5に示すように、上述した窒素添加レス・オゾン発生器1(高電圧用端子収納部20を含む)、オゾン電源2、MFC3、APC4、及び断熱冷却水配管31(31I+31O)等の複数個の機能手段を集約し1単位のパッケージユニットとして構成している。
【0046】
断熱層8は絶縁物等の断熱材で構成され、オゾン発生器外枠1xの略全面を覆って形成されている。すなわち、冷却水出入口34、原料入口38、及びオゾンガス出口39への流通経路を確保しつつ、オゾン発生器外枠1xの外周を覆って形成される。ただし、高電圧用端子収納部20の外周には断熱層8は形成されない。なお、断熱冷却水入力用配管31I及断熱冷却水出力用配管31Oの外周も断熱層で覆う方が、低温冷却水33に対してより断熱効果を高めるため望ましい。
【0047】
また、オゾン電源2より高電圧HVが高電圧用端子収納部20内の高電圧用端子PHを介して高圧電極1aに付与され、接地電圧LVが接地用端子PLを介して接地電極1bに付与される。
【0048】
高電圧用端子収納部20は高電圧用端子PHを空気絶縁可能な所定の空間内に配置した状態で収納し、後述するパージガス入力管を介してパージガス系21よりパージガス23を供給可能に構成されている。
【0049】
断熱冷却水入力用配管31Iは冷却水系30より得られる低温冷却水33を窒素添加レス・オゾン発生器1内に入力するために設けられ、断熱冷却水出力用配管31Oは窒素添加レス・オゾン発生器1から排出される低温冷却水33を冷却水系30に戻すために設けられる。なお、冷却水系30は低温の冷却水33の温度を15℃以下に設定する。
【0050】
(効果)
図5に示すように、窒素添加レス・オゾン発生ユニット7として、窒素添加レス・オゾン発生器1(高電圧用端子収納部20を含む)、オゾン電源2及び制御機器(MFC3、APC4等)とが集約してユニット化されている。このような窒素添加レス・オゾン発生ユニット7に対し、低温冷却水33によって窒素添加レス・オゾン発生器1を低温に冷やすと、窒素添加レス・オゾン発生器1のオゾン発生器外枠1xの表面が大気との温度差で結露して、結露した水滴が、オゾン電源2やMFC3,APC4等の制御機器に付着することにより、電気絶縁性が悪くなり、オゾン電源2及び上記制御機器の故障原因になる。
【0051】
しかし、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生ユニット7は、窒素添加レス・オゾン発生器1の外周の略全面を覆って、水分を通さずかつ熱伝導率の低い断熱材からなる断熱層8を形成しているため、窒素添加レス・オゾン発生器1のオゾン発生器外枠1xの表面が大気と直接接触することはなく、オゾン発生器外枠1xの表面への結露発生を確実に回避することができる。
【0052】
窒素添加レス・オゾン発生器1は、低温に冷やすほど、オゾン発生効率が上昇することや、発生したオゾンを分解させる効果が少なくなり、取り出すオゾン量を増す効果がある。このため、窒素添加レス・オゾン発生器1自身を低温に冷やす手段(低温冷却水系30及び断熱冷却水配管31等)を有している。しかし、窒素添加レス・オゾン発生器1を冷却する温度と大気温度の差が大きく、大気温度の方が高い場合、窒素添加レス・オゾン発生器1を冷やしても、低温冷媒(冷却水33)で冷やしている冷熱が大気側へ奪われ、窒素添加レス・オゾン発生器1の高圧電極1a及び接地電極1bより構成される放電電極セル自身を十分に冷却できなくなる。その結果、オゾン発生効率を低下させ、オゾン性能低下を招く。
【0053】
しかし、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生ユニット7は、窒素添加レス・オゾン発生器1の外周の略全面を覆って、熱伝導率の低い断熱材からなる断熱層8を形成しているため、窒素添加レス・オゾン発生器1内の冷熱が大気側へ奪われる現象を確実に防止することができる。
【0054】
その結果、大気温度のよって窒素添加レス・オゾン発生器1の冷却効果を妨げることがなくなるため、窒素添加レス・オゾン発生器1(オゾン発生器外枠1x)内を十分に冷却することにより、オゾン発生効率を十分高くすることができる効果を奏する。
【0055】
さらに、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生ユニット7において、断熱層8は収納部であるオゾン発生器外枠1xの外周部の略全面を覆って形成されるため、窒素添加レス・オゾン発生器1の外部に存在するオゾン電源2、制御手段(MFC3,APC4)に結露した水分が浸入することによる不具合を確実に回避することができる。
【0056】
(冷却媒体について)
本実施の形態では、低温の冷却媒体として冷却水33を用いたが、冷却水33に代えて以下の冷却媒体を用いても良い。例えば、冷媒温度−20℃〜65℃のエチレングリコール水溶液(PRTR)や冷媒温度−40℃〜60℃のハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)等が考えられる。
【0057】
(冷却水33の温度について)
本実施の形態では冷却水33の窒素添加レス・オゾン発生器1への供給時の温度を5℃以下に設定した。この理由について説明する。従来は、水温20℃の水を窒素添加レス・オゾン発生器1内に流して冷却してオゾンを発生させるのが一般的であった。
【0058】
しかしながら、大気温度とほぼ同じ温度である20℃の水を用いて窒素添加レス・オゾン発生器1内を冷却して、放電セルを放電させオゾンを発生させた場合、窒素添加レス・オゾン発生器1の下流での冷却水の温度は、30℃程度まで上昇し、平均ガス温度は35℃(ΔTav=5deg)になる。そして、誘電体バリア放電の微小放電空間の瞬時な微小放電ガス温度も、平均ガス温度に対し数℃のガス温度上昇があり、37℃(ΔTd=2deg)程度になってしまうと推測される。
【0059】
一方、低温冷却水33の供給時の水温を5℃にして窒素添加レス・オゾン発生器1内を冷却してオゾンを発生させると、窒素添加レス・オゾン発生器1の下流での低温冷却水33の温度は、15℃程度までしか温度上昇せず、平均ガス温度は20℃(ΔTav =5deg)となり、誘電体バリア放電の微小放電空間の瞬時な微小放電ガス温度は、22℃ (ΔTd=2℃)にまで低下させることができる。
【0060】
したがって、冷媒温度である低温冷却水33の設定温度を5℃以下にすることにより、従来の放電投入電力時に比べた場合、誘電体バリア放電の微小放電空間の瞬時な微小放電ガス温度を37℃から22℃以下に低下させることができる。
【0061】
その結果、誘電体バリア放電の微小放電空間の瞬時な微小放電ガス温度の低減に比例して、誘電体バリア放電の維持電圧V*(火花電圧)が高くなるため、放電空間の電界Eが高くなり、誘電体バリア放電の発する放電光の波長の短い光の強度が大幅に高くなる。
【0062】
放電光の波長の短い光の強度が高まると、電極1a,1b面に塗布した光触媒(物質)1dの光触媒効果が大幅に増し、酸素ガスを酸素原子に解離する能力がより促進され、解離した酸素原子と酸素分子との三体衝突で、必然的に生成されるオゾン濃度を高めることができる。また、オゾン生成を高める効果とともに、平均ガス温度が低いと若干ではあるが、ガス温度によるオゾン分解量も少なくなり、出力できるオゾン濃度も高められる効果がある。
【0063】
したがって、種々の構成のオゾン発生器の中でも特に窒素添加レス・オゾン発生器1に対して、5℃以下の低温冷却水33で冷却することによる効果が顕著になると考えられる。
【0064】
図6は原料ガス995の流量である原料ガス流量Qに対するオゾンガス濃度のオゾン濃度特性を示すグラフである。
【0065】
同図において、オゾン濃度特性LAは冷却水33の設定温度が20℃で、かつ断熱層8も設けない従来構成の場合、オゾン濃度特性LBは冷却水33の設定温度が20℃であるが
図5で示すように断熱層8を設けた場合、オゾン濃度特性LCは冷却水33の
設定温度が5℃で、かつ断熱層8を設けた場合におけるオゾン濃度特性をそれぞれ示している。
【0066】
同図に示すように、オゾン濃度特性LA、オゾン濃度特性LB及びオゾン濃度特性LCの順でオゾン濃度特性が向上していることがわかる。すなわち、
図6から、冷却水33の温度を5℃以下にすること、断熱層8を設けることは共に、窒素添加レス・オゾン発生器1により発生するオゾンに関するオゾン濃度特性を向上させる効果があることがわかる。
【0067】
このように、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生ユニット7において、低温冷却媒体となる冷却水33は窒素添加レス・オゾン発生器1内への供給時の温度を5℃以下に設定しているため、光触媒(層)1dにおける光触媒効果をより高めることにより、生成されるオゾン濃度のさらなる向上を図ることができる効果を奏する。
【0068】
(断熱層8に用いる断熱材)
断熱層8に用いる断熱材としては、水や湿気を通さず、金属に比べ、熱伝導が非常に小さいものが有効である。例えば、耐熱性無機繊維である炭素繊維やセラミック繊維やテフロン(登録商標)繊維等がある。断熱材がボード状に整形された硬質ウレタン等を素材にした断熱ボードを断熱層8として用いても良い。
【0069】
(高電圧用端子収納部20による効果)
図7は高電圧用端子収納部20の詳細を示す説明図である。同図に示すように、高電圧用端子収納部20内に設けられる高電圧用端子PHは、高電圧碍子24、電極棒25、ナット26(26a,26b)から構成される。
【0070】
絶縁材よりなる高電圧碍子24はオゾン発生器外枠1xを貫通して窒素添加レス・オゾン発生器1内から高電圧用端子収納部20の筐体22内にかけて設けられる。すなわち、窒素添加レス・オゾン発生器1の内外を分離するオゾン発生器外枠1xを貫通して高電圧用端子P
Hを構成する高電圧碍子24が形成される。
【0071】
そして、高電圧用端子PHを構成する高電圧碍子24内の電極棒25、電線27a,27bを介して放電電極セルの高圧電極1aに高電圧HVを印加している。高電圧碍子24が大気に触れ、かつ、窒素添加レス・オゾン発生器1を大気温度以下の温度に冷却すると、高電圧碍子24も低温になることから、高電圧碍子24の表面が結露して、高電圧碍子24の絶縁性が悪化することが懸念される。
【0072】
しかし、本実施の形態では、高電圧用端子収納部20内に高電圧用端子PHの高電圧碍子24を配置し、パージガス入力管28からパージガス系21より生成されるパージガス23(窒素、不活性ガス等の乾燥したガス、すなわち、露点が低いガス)を供給可能に構成しているため、パージガス23によって、高電圧碍子24の表面が低温により結露することを確実に防止することができる。その結果、本実施の形態において、オゾン発生器を低温にすることで、窒素添加レス・オゾン発生器1内の高電圧碍子24が低温になっても、高電圧碍子24の面が結露することはなく、高電圧碍子24は良好な絶縁性を保持することができる効果を奏する。
【0073】
本実施の形態では、乾燥したガスで
あるパージガス23を筐体22内の所定の空間に常時供給することにより、高電圧碍子24の周りにパージガス23が存在するようにして、高電圧碍子24の表面における結露を防止している。この方法以外にも、パージガス23を常時供給することなくパージガス23等の乾燥ガスを高電圧碍子24の周りに封じ切ることや、間欠的に供給することにより、
高電圧碍子24の表面における結露を防ぐことも可能である。
【0074】
このように、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生ユニット7では、パージガス入力管28からパージガス系21からのパージガス23が筐体22内の所定の空間に供給可能な高電圧用端子収納部20を有することにより、露点が比較的低い結露防止用のパージガス23を高電圧碍子24の周りに存在させることができる。このため、高電圧用端子PHによる高電圧HVの付与能力を劣化させることなく、高電圧碍子24の表面における結露発生を確実に回避することができる。
【0075】
(他の態様)
図8は窒素添加レス・オゾン発生器1の構成の詳細を示す説明図である。同図に示すように、2つの高圧電極1aが一つの接地電極1bを共有する態様で、一対の高圧電極1a、接地電極1bよりなる電極セルが複数個積層して形成される。
【0076】
複数の高圧電極1aそれぞれにおいて、その両面に誘電体1cが形成され、両面に形成された2つの誘電体1cのうち接地電極1b側の誘電体1cの表面(放電面)に光触媒(層)1dが塗布され、接地電極1bと反対側の誘電体1cの表面に冷却経路部となる高圧冷却板45が設けられる。なお、オゾン発生器外枠1x、高圧冷却板45及び後述する連結ブロック49は金属材料で構成されている。
【0077】
各接地電極1bは両面に光触媒(層)1dが塗布されており、高圧電極1aの誘電体1c上に塗布された光触媒1dと、接地電極1bの光触媒1dとの間の空間が放電空間46となる。したがって、MFC3からオゾン発生器外枠1xに設けられた原料入口38を介して供給される原料ガス995を用いて、この放電空間46における上述した光触媒1dによる光触媒効果によってオゾンガス996が発生する。
【0078】
複数の高圧冷却板45及び接地電極1bにおいて、互いに隣接する高圧冷却板45,接地電極1b間は連結ブロック49を介在させることによって接合されている。連結ブロック49は高圧冷却板45及び接地電極1bそれぞれの端部領域を連結するように設けられる。
【0079】
これら連結ブロック49、高圧冷却板45及び接地電極1bにはそれぞれ内部に低温冷却水33が内部を流通可能な冷却水流路が設けられているため、窒素添加レス・オゾン発生器1の外部から得られる低温冷却水33を、オゾン発生器外枠1xに設けられた冷却水出入口34(冷却媒体入出口)を介して、冷却経路部を構成する連結ブロック49及び高圧冷却板45並びに接地電極1bの冷却水流路内に流通させることができる。その結果、高圧冷却板45近傍に存在する高圧電極1aと接地電極1b自体とをそれぞれ効果的に冷却することができる。
【0080】
図8に示すように、本実施の形態の窒素添加レス・オゾン発生器1では、オゾン発生器外枠1xの上面部1xu(所定の構成面)に冷却水出入口34、原料入口38、オゾンガス出口39及び高電圧用端子収納部20(高電圧用端子PH)を集約して設けている。
【0081】
このような構成の場合、
図5に示すように、オゾン発生器外枠1xの略全面を覆って断熱層8を形成する態様でなく、上面部1xuのみを覆った
図8に示す断熱層形成領域48のみ選択的に断熱層を形成する他の態様を採用しても良い。
【0082】
このような他の態様でも、低温冷却水系30より供給される冷却水の出入口となる冷却水出入口34及びその近傍領域に対して効果的に断熱作用を発揮させてオゾン発生器外枠1x内を低温維持することにより、多くのオゾンを発生させることができる効果を奏する。
【0083】
加えて、オゾン発生器外枠1xの内外における温度差が他の部分より大きく結露が生じやすい冷却水出入口34、原料入口38、オゾンガス出口39及び高電圧用端子収納部20(高電圧用端子PH)並びにその近傍領域に対して効果的に断熱作用を発揮させて結露防止を図ることができる。
【0084】
その結果、本実施の形態の他の態様は、断熱層8形成体積を必要最小限に抑えながら、結露を発生させることなく、多くのオゾンを発生させることができる効果を奏する。
【0085】
(半導体技術分野への適用)
また、半導体分野では、窒素を含まない酸素とオゾンガスのみの高純度なオゾンガスを用いて、半導体の高品質な酸化膜を形成した絶縁成膜をすることが特に望まれている。そのため、窒素レスとしたオゾン発生装置は必須の条件であって、かつ、オゾン発生器から供給される窒素レスオゾンガスは、より高濃度化されたオゾンガスが求められており、酸化絶縁成膜の成膜速度をより高めることや成膜厚みを増すことで、絶縁性能アップさせることが望まれている。
【0086】
したがって、本実施の形態(他の態様も含む)による窒素添加レス・オゾン発生ユニット7を半導体製造技術に活用することにより、高品質な酸化絶縁成膜を比較的短時間で形成することができる。
【0087】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。