特許第5824530号(P5824530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5824530
(24)【登録日】2015年10月16日
(45)【発行日】2015年11月25日
(54)【発明の名称】ローラねじ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20151105BHJP
【FI】
   F16H25/22 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-549004(P2013-549004)
(86)(22)【出願日】2011年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2011078943
(87)【国際公開番号】WO2013088532
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 功
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−069449(JP,A)
【文献】 実開平04−129957(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、該ねじ軸のフランク面上を転動する複数のローラと、該複数のローラを自転可能に収納したケージとを備えるローラねじにおいて、
前記ねじ軸における1リード分の螺旋溝に沿って同一のフランク面に接触しながら均等間隔で配置された複数のローラから成る複数のローラ群を備え、
前記複数のローラ群は、前記ねじ軸の軸方向に間隔を介して配置されており、
前記ねじ軸は前記フランク面として、右フランク面及び左フランク面を有し、
前記複数のローラ群に含まれる全てのローラは、前記右フランク面及び前記左フランク面のうち一方のフランク面に接触しているが、他方のフランク面には接触しておらず、
前記ねじ軸又は前記ケージに作用する荷重の方向は、前記複数のローラ群に含まれる全てのローラを前記一方のフランク面に接触させる方向に限定されていることを特徴とするローラねじ。
【請求項2】
請求項1に記載のローラねじにおいて、
前記複数のローラ群に含まれるローラの直径は、前記ねじ軸のピッチよりも大きいことを特徴とするローラねじ。
【請求項3】
請求項2に記載のローラねじにおいて、
前記各ローラ群におけるローラの個数は、それぞれ等しいことを特徴とするローラねじ。
【請求項4】
請求項3に記載のローラねじにおいて、
前記複数のローラ群における一のローラ群と、当該一のローラ群に隣接する他のローラ群とを、前記ねじ軸の軸方向からみたとき、両者における複数のローラの配置位置は異なっていることを特徴とするローラねじ。
【請求項5】
請求項4に記載のローラねじにおいて、
前記一のローラ群及び他のローラ群におけるローラの数をそれぞれNとするとき、
前記一のローラ群と前記他のローラ群を前記ねじ軸の軸方向からみたとき、両者における複数のローラの配置位置はπ/Nだけずれていることを特徴とするローラねじ。
【請求項6】
請求項4に記載のローラねじにおいて、
前記ねじ軸と同じ中心軸を有し、前記複数のローラと前記フランク面の接触部と交差する円筒面を有する円筒を仮想的に設定したとき、
前記一のローラ群内の隣接する2つのローラと前記仮想円筒が交差する2点から、前記ねじ軸の軸方向から前記他のローラ群をみたときに前記隣接する2つのローラの間に位置するローラと前記仮想円筒の交点までの距離はそれぞれ等しいことを特徴とするローラねじ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のローラねじにおいて、
前記各ローラ群におけるローラの個数は、4個以上であることを特徴とするローラねじ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のローラねじにおいて、
前記各ローラ群におけるローラの個数は、前記ねじ軸の1リード分の螺旋溝に前記複数のローラを配置可能な最大個数であることを特徴とするローラねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ねじ軸と、複数のローラを介して当該ねじ軸に螺合されたナットとを備えるローラねじに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の送り駆動機構にはボールねじが多く用いられているが、射出成形機の型締め等の高荷重を受ける送り駆動機構には、油圧駆動系が用いられることが多い。さらに近年は、後者の場合において、消費電力削減やメンテナンス性向上などの観点から油圧から電動に置き換わる動きが加速しており、電動式の直線送り装置に搭載されるボールねじなどの回転直動変換機構にも耐高負荷性能の向上が求められている。
【0003】
このような背景の中、特開2010−169205号公報に記載されたようなローラねじが開発されている。これは、ねじ軸上の転動体をボールからローラに変更することにより、ねじ軸と転動体(ローラ)との接触面積を増やし且つローラ転動面の曲率を小さく(径を大きく)して、ローラとねじ軸間の接触応力の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−169205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献のローラねじではローラ数を3つとしている。これは、ローラねじの生産容易性を優先させた結果であり、4つ以上のローラを設けた場合と比較して構成部品に多少の寸法誤差が存在しても全てのローラとねじ軸が確実に接触させることができる。
【0006】
これ対して、極めて高い負荷が作用する環境で利用が想定されるローラねじでは、生産容易性よりも耐高負荷性を優先させ、ローラの数を4つ以上(例えば、数十個)にすることが必要になることもある。しかし、その場合には、複数のローラを支持するナット部について、ねじ軸の軸方向におけるサイズが必要以上に増大したり、ねじ軸と複数のローラとの接触部がねじ軸の周方向で偏って配置され、複数のローラにおける負荷分布の不均一性が増大したりすることが懸念されるため、複数のローラの適切な幾何学的配置を考慮する必要が生じる。
【0007】
本発明の目的は、ねじ軸に接触する複数のローラを支持するナット部に関して、ねじ軸の軸方向におけるサイズの肥大化を抑制でき、複数のローラにおける負荷分布の均一性に優れたローラねじを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、ねじ軸と、該ねじ軸のフランク面上を転動する複数のローラと、該複数のローラを自転可能に収納したケージとを備えるローラねじにおいて、前記ねじ軸における1リード分の螺旋溝に沿って同一のフランク面に接触しながら均等間隔で配置された複数のローラから成るローラ群を複数備え、前記複数のローラ群は、前記ねじ軸の軸方向に間隔を介して配置されており、前記ねじ軸は前記フランク面として、右フランク面及び左フランク面を有し、前記複数のローラ群に含まれる全てのローラは、前記右フランク面及び前記左フランク面のうち一方のフランク面に接触しているが、他方のフランク面には接触しておらず、前記ねじ軸又は前記ケージに作用する荷重の方向は、前記複数のローラ群に含まれる全てのローラを前記一方のフランク面に接触させる方向に限定されているものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ねじ軸の軸方向におけるナット部のサイズの肥大化が抑制でき、複数のローラにおける負荷分布の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るローラねじの斜視図。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るローラねじの側面図。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るローラねじの側断面図。
図4図3中のローラ4a付近の拡大図。
図5】本発明の第1の実施の形態に係るねじ軸、ローラ及び軸受の側面図。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るねじ軸、ローラ及び軸受の正面図。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るねじ軸及びローラの展開図。
図8】本発明の第2の実施の形態に係るねじ軸及びローラの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付している。また、以下では、同一の構成要素が複数ある場合において、各構成要素の区別が必要な場合には共通する数字の符号に異なるアルファベットの小文字を付して区別するものとし、区別が不要な場合は当該アルファベットの小文字を適宜省略することがある。
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るローラねじの斜視図であり、図2図1に示したローラねじの側面図であり、図3図2におけるA-A断面図であり、図4図3中のローラ4a付近の拡大図である。
【0013】
これらの図に示すローラねじ1は、ねじ軸2と、ねじ軸2の軸方向に所定の間隔を介して配置された複数のローラ群40(40a,40b,40c,40d)と、各ローラ群40に含まれる複数のローラ4をそれぞれ回転可能に支持する複数のローラ軸受5と、複数のローラ軸受5が固定され、ねじ軸2と相対回転するナットケージ3を備えている。
【0014】
ねじ軸2は一条ねじであり、ねじ軸2の外周には螺旋状に形成されたねじ山20(螺旋溝)(図4参照)が設けられている。ねじ山20(螺旋溝)は、図4に示すように、異なる方向に傾斜した2つのフランク面21(21a,21b)で形成されている。以下において適宜、図2〜4上で各ねじ山20における右側に位置するフランク面を右フランク面21aとし、左側のフランク面を左フランク面21bとする。
【0015】
各ローラ群40a,40b,40c,40dは、ねじ軸2における1リード分の螺旋溝20に沿って均等間隔で配置された複数のローラ4から構成されている。複数のローラ群40a,40b,40c,40dは、ねじ軸2の軸方向に間隔を介して配置されている。各ローラ群40a,40b,40c,40dに含まれる全てのローラ4(すなわち、ローラねじ1に含まれる全てのローラ4a〜4t)は、ねじ軸2における同一のフランク面(右フランク面21a)に接触している。所定のローラ群40に含まれるローラ4の個数をNとし、当該ローラ群40をねじ軸2の軸方向から見たとき、当該ローラ群40において隣り合うローラ4同士は、2π/N[rad]ずつずれて配置されている。本実施の形態に係るローラねじ1は、5個のローラ4から成る4つのローラ群40a,40b,40c,40dを備えており、合計20個のローラ4a〜4tがナットケージ3に収納されている。各ローラ群40a〜40dをねじ軸2の軸方向から見ると、各ローラ群40a〜40dで隣り合うローラ4同士はねじ軸2の周方向に72度ずつずれて配置されている(後述する図6参照)。
【0016】
図4に示すように、ローラ群40に含まれる各ローラ4は、転動部41と軸部42を有している。転動部41は、円錐から頂点部分を取り除いた部分円錐状に形成されており、円錐の頂点側がねじ軸2側に位置するように支持されている。軸部42は、円錐状の転動部41の底面側から突出し、転動部41と共通の中心軸(回転軸)を有する円筒状の部分である。転動部41は円錐側面を介して右フランク面21aと線状に接触している。このように転動部41と右フランク面21aを線状に接触させると、ヘルツ応力が低減してフレーキングに対する耐久性を改善することができる。ねじ軸2又はナットケージ3を回転させると、ローラ4は転動部41を介してねじ軸2の右フランク面21a上を転動する。軸部42の外周にはローラ軸受5に収納された複数のコロが配置されており、軸部42はローラ軸受5によって回転可能に支持されている。なお、ローラねじ1に含まれるローラ4の個数に特に限定は無いが、耐高負荷性を向上する観点からは4個以上が好ましく、既述の通り本実施の形態では20個のローラ4a〜4sがナットケージ3に支持されている。
【0017】
ところで、図4には、ねじ軸2と同じ中心軸を有し、各ローラ4が右フランク面21aに接触する部分(接触部)と交差する円筒面を有する円筒Cが仮想的に設定されており、当該接触部と仮想円筒Cが交差する点をIとしている。交点Iの添字はローラ4の添字に対応しており、例えば、図4中の交点Iaは、ローラ4aと仮想円筒Cの交点を示す。
【0018】
また、図4等から明らかであるが、本実施の形態に係る転動部41におけるねじ軸2側の直径は、ねじ軸2のピッチP(図4参照)よりも大きく設定されている。転動部41の直径を大きくすると、転動部41と右フランク面21aの間に生じるヘルツ応力を低減できる。また、転動部41のねじ軸2側の端面には、すり鉢状の凹部45(図4参照)が形成されている。本実施の形態のように転動部41の直径をねじ軸2のピッチよりも大きくすると、転動部41とねじ山20が干渉する可能性が高くなるが、本実施の形態のように転動部41に凹部45を設けると、凹部45内にねじ山20を収納できるので、両者の干渉を防止できる。また、凹部45を形成すると、ローラ4の自転軸をねじ山20側に傾斜させる量が小さくても、隣りのピッチのねじ山20に転動部41が干渉することが避けられる。このように自転軸の傾斜量を小さくすると、転動部41の径が同じであってもナットケージ3の外径を抑制できる。
【0019】
ナットケージ3は、ねじ軸2を挿入するための中空部を内部に有する略円筒状の部材である。ナットケージ3には、ローラ軸受5を収納するための孔30がローラ4と同じ数だけ形成されている。各孔30の内周には止め輪6を取り付けるための環状の溝31(図4参照)が設けられている。孔30の内部にローラ4及びローラ軸受5を挿入した状態で溝31に止め輪6を取り付けると、ナットケージ3に対してローラ軸受5が固定される。ナットケージ3とねじ軸2は、ローラ4の転動部41を介して接触しており、他の部分では非接触状態となっている。
【0020】
ナットケージ3に固定された各ローラ軸受5は、ローラ4を回転可能に支持している。すなわち、ローラ4はナットケージ3に対して回転対偶になっている。なお、図に示した例では、ローラ軸受5として、ローラ4から作用するアキシャル荷重とラジアル荷重を1つの軸受で受けることができる円錐ころ軸受を利用したが、他の種類の軸受を利用しても良い。
【0021】
上記のように構成されるローラねじ1において、ねじ山20(右フランク面21a)上を各ローラ4が転動すると、ナットケージ3がねじ軸2に対して相対的に回転する。これによりねじ軸2とナットケージ3の間に相対的な直動運動が生成される。
【0022】
なお、図に示した止め輪6は、溝31に嵌る部分を傾斜状に形成したベベル形止め輪であるが、他の種類の止め輪(例えば、C形止め輪等)を利用しても良い。ただし、本実施の形態のように、アキシャル荷重とラジアル荷重を1つの軸受で受けることができるローラ軸受(円錐ころ軸受)5をベベル形止め輪6で固定すると、止め輪6を介してナットケージ3からローラ軸受5に常に予圧をかけることができるので、ローラ軸受5の軸方向(ローラ4の回転軸方向)に隙間を生じさせることなくナットケージ3にローラ軸受5を固定できる。
【0023】
次に、図面を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係るローラねじにおけるローラ配置について説明する。図5は本発明の第1の実施の形態に係るローラねじにおいてねじ軸、ローラ及びローラ軸受のみを示した側面図であり、図6図5中の矢印VIの方向からねじ軸、ローラ及び軸受を見た正面図であり、図7は本発明の第1の実施の形態に係るローラねじにおけるねじ軸及びローラの展開図である。なお、図7における点Ia〜Itは、ローラ4a〜4tが右フランク面21aに接触した部分と円筒C(図4参照)との交点であり、図7では、ねじ軸2に係る螺旋溝の1リード分を1本の斜線で簡易的に示すとともに、ローラ4を円で簡易的に示している。
【0024】
既述のとおり、本実施の形態に係るローラねじ1は、合計20個のローラ4a〜4tで構成されており、ローラ4a,4b,4c,4d,4eは第1ローラ群40aを構成し、ローラ4f,4g,4h,4i,4jは第2ローラ群40bを構成し、ローラ4k,4l,4m,4n,4oは第3ローラ群40cを構成し、ローラ4p,4q,4r,4s,4tは第4ローラ群40dを構成している。
【0025】
これらの図に示すように、4つのローラ群40のうちねじ軸2の軸方向において隣り合うローラ群40は、ねじ軸2の1リード分の長さより大きい間隔を介してねじ軸2の軸方向に配置されている。これはローラ4及びローラ軸受5の外径がねじ軸2の1リード分よりも大きいからである。本実施の形態では、ねじ軸2の軸方向で隣り合う2つのローラ群40(例えば、ローラ群40aとローラ群40b)は3リード分の間隔を介して配置されている。
【0026】
また、4つのローラ群40における一のローラ群と、当該一のローラ群に隣接する他のローラ群とを、ねじ軸2の軸方向からみたとき、両ローラ群における複数のローラ4の配置位置(又は各ローラ4と仮想円筒Cの交点Iの位置)は異なっている(図6,7参照)。そして、ねじ軸2の軸方向からみたとき、当該一のローラ群内の各ローラ4の間に、当該他のローラ群内の各ローラ4が位置するように配置されている(図5,7参照)。すなわち、図7に示すように、第1ローラ群40aと第2ローラ群40bにおける複数のローラ4のねじ軸2の周方向における配置位置は互いに異なっている。このように配置することにより、第1ローラ群40a内の各ローラ4の間に第2ローラ群40b内の各ローラ4が配置されることとなる(例えば、ローラ4aとローラ4bの間にローラ4fが配置される)。
【0027】
なお、図7に示すように、本実施の形態では、各ローラ群40に含まれるN個のローラ4は、2π/N[rad]ずつずらしてねじ軸2の周囲に配置されており、隣り合うローラ群40に含まれる複数のローラ4とはその半分のπ/N[rad]だけずれるように配置している。すなわち、第1ローラ群40aにおけるローラ4a,4b,4c,4d,4eと、第2ローラ群40bにおけるローラ4f,4g,4h,4i,4gは、ねじ軸2の軸方向からみたとき互いにπ/5[rad](すなわち36度)だけずれて配置されている。
【0028】
ところで、各ローラ群40に含むことができるローラ4の最大個数、すなわち1リード分の螺旋溝(右フランク面21a)に配置可能なローラ4の最大個数は、ねじ軸2の外径、ローラ4の形状及びローラ軸受5の外径等によって決まる。ここでいう「配置可能」とは、ローラ群40内において隣り合うローラ軸受5同士が干渉せず、かつナットケージ3にローラ軸受5を挿入するための孔30をナットケージ3に設けてもナットケージ3が充分な強度を持つことである。ここで、1リード分の螺旋溝に配置可能なローラ4の最大個数をNmaxとすると、本実施の形態に係るローラねじ1ではNmax=5となる。そのため、各ローラ群40a〜40dでは、それぞれ5個のローラ4が1リード分の螺旋溝20に均等間隔で配置されている。
【0029】
なお、Nmaxはねじ軸2の外径とローラ軸受5の外径からおおよそ決めることができ、ねじ軸2の外径に対して軸受5の外径が約2.1倍以上の場合はNmax=2、約1.3倍から2.1倍の間の場合はNmax=3、約1.0倍から1.3倍の間の場合はNmax=4、約0.8倍から1.0倍の間の場合はNmax=5というように、ねじ軸2の外径に対して軸受5の外径が小さくなるほどNmaxが大きくなり、1リード分の螺旋溝に多くのローラ4が配置可能となる。
【0030】
上記のように構成したローラねじ1によれば、まず、ねじ軸2の軸方向からみた各ローラ群40におけるローラ4の位置を一致させる場合に比べて、ナットケージ3の軸方向長さを短くすることが可能である。ローラねじ1に含まれる全ローラ4の配置をねじ軸2の螺旋溝20に沿ってみたとき、本実施の形態では、各ローラ群40内におけるローラ4の間隔X(例えば、ローラ4aとローラ4bの間隔)はそれぞれ均等であるが、一のローラ群40内で最後に位置するローラ4と当該一のローラ群40に隣接する他のローラ群40内で最初に位置するローラ4との間隔Y(例えば、ローラ4eとローラ4fの間隔)は間隔Xより大きい(例えば、数リード分)。そのため、ねじ軸2の螺旋溝20を1本の線として展開した場合ローラ4の配置間隔には、密な部分(間隔Xの部分)と疎な部分(間隔Yの部分)ができることとなる。このような疎密配置をすることにより、ナットケージ3のサイズを短くすることが可能となる。特に本実施の形態では、ねじ軸2の軸方向からみたとき、当該一のローラ群40内の各ローラ4の間に、当該他のローラ群40内の各ローラ4が位置するように配置することで、ねじ軸2の軸方向における各ローラ群40同士の間隔の極小化を図っている。
【0031】
次に、本実施の形態に係るローラねじ1によれば、複数のローラ4における負荷分布の不均一性の増大を抑制することができる。例えば、ねじ軸の周方向にローラが偏って配置されていると、ねじ軸の周方向における負荷分布の不均一性が増大することはもちろんのこと、ねじ軸とナットケージとの間に不要なモーメント(ねじ軸回転軸回りのモーメント以外の、ねじ軸回転軸に直交する軸回りのモーメント)が発生することで、ねじ軸の軸方向の負荷分布の不均一性も増大するおそれがある。これに対して、本実施の形態によれば、図6等に示すとおり各ローラ群40内では2π[rad]中に均等にねじ軸2とローラ4の接触部を配置することができるとともに、図7に示すとおり複数のローラ群40間ではπ/N[rad]ずつずらして当該接触部を配置することができる。これにより、ねじ軸2の周方向に偏りが生じず、ねじ軸の周方向及び軸方向の負荷分布の不均一性の増大を防ぐことが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態に係るローラねじ1によれば、ねじ軸2の軸方向におけるナットケージ3の曲げ剛性の低下を抑えることができる。もし、隣り合うローラ群40に含まれる複数のローラ4が互いにπ/Nずつずれて配置されておらず、ねじ軸2の軸方向に一直線に並んで配置されていたとすると、ナットケージ3の周方向に同じ位置に設けられた複数の孔30がねじ軸2の軸方向に沿ってローラ群40の数だけ配列されることになる。すなわち、複数の孔30が同軸上に配置されることになる。同軸上に配置された孔30の数が多ければ多いほど、その部分の曲げ剛性は低くなり、ローラねじ1の強度や位置決め精度に影響を及ぼすこととなる。
【0033】
しかし、本実施の形態では、ねじ軸2の軸方向からみたとき、隣り合うローラ群40に含まれる複数のローラ4が互いにずれて配置されており、同軸上に配置された孔30の数を抑制できるので、ナットケージ3の曲げ剛性の低下を防止できる。具体的には、本実施の形態では、隣り合うローラ群40に含まれる複数のローラ4が互いにπ/Nずつずれて配置されているので、軸方向にはローラ群40の総数の半分(ローラ群40が奇数個配置される場合はローラ群40の総数+1の半分)の孔30だけが配列される。
【0034】
ところで、各ローラ群40におけるローラ4の配置は、上記に示したもの以外にも次のようなものがある。図8は本発明の第2の実施の形態に係るローラねじにおけるねじ軸及びローラの展開図であり、図7と同様に、ねじ軸2の螺旋溝20の1リード分を1本の斜線で簡易的に示すとともに、ローラ4を円で簡易的に示している。
【0035】
第2の実施の形態におけるローラねじは、第1の実施の形態のものと同様に、ねじ軸2、ナットケージ3、ローラ4、ローラ軸受5、止め輪6を構成要素として備え、それぞれの関係も同様であるため、全体構成の図は省略し、展開図のみ示す。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なるのはローラ4の配置についてである。1リード分の螺旋溝20にN個のローラ4を配置してローラ群40を構成する点は同様であるが、軸方向において隣り合うローラ群40におけるローラ4の配置が異なる。
【0036】
図8に示すように、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、一のローラ群40に含まれるローラ4に係る交点I(例えば、第1ローラ群40aに係る交点Ia,Ib,Ic,Id,Ie)と、当該一のローラ群40に隣接する他のローラ群40に含まれるローラ4に係る交点I(例えば、第2ローラ群40bに係る交点If,Ig,Ih,Ii,Ij)のねじ軸2における周方向の位置は互いに異なっている。しかし、本実施の形態では、当該一のローラ群40内で隣接する2つのローラ4に係る2つの交点Iから、当該他のローラ群40をねじ軸2の軸方向からみたときに当該隣接する2つのローラ4の間に位置する1つのローラに係る交点Iまでの距離はそれぞれ等しくなっている。すなわち、例えば、図8の例では、第1ローラ群40aに係る2つの交点Ia、Ibから、第2ローラ群40bに係る1つの交点Ifまでの距離はそれぞれ等しくなっている。このようにローラねじを構成することにより、ナットケージ3における孔30の間隔の更なる均一化を図ることができ、ナットケージ3の強度低下を防止することが可能となる。
【0037】
なお、以上の説明では、ローラ4を20個配置する場合について示したが、これは本発明が適用可能なローラねじのローラの個数を特に限定するものではない。また、全てのローラ4が右フランク面21aに接触している場合についてのみ説明したが、ローラねじに作用する荷重の方向によっては、全てのローラ4が左フランク面21bに接触するようにローラねじを構成しても良い。さらに、上記では、負荷分布の均一化を促進するために、各ローラ群40のローラ4の個数が等しい場合を例に挙げて説明したが、各ローラ群40のローラ4の個数は異なっていても良い。
【0038】
また、上記の各実施の形態では、ねじ軸2又はナットケージ3に作用する荷重が一方向だけの場合(すなわち、ローラ4と右フランク面21aが接触する方向だけの場合)を想定し、全てのローラ4が右フランク面21aに接触するローラねじを構成した
【符号の説明】
【0039】
1…ローラねじ、2…ねじ軸、3…ナットケージ(ナット)、4…ローラ、5…ローラ軸受、6…止め輪、20…ねじ山(螺旋溝)、21…フランク面、21a 右フランク面、21b…左フランク面、30…孔、31…止め輪溝、40…ローラ群、41…転動部、42…軸部、45…凹部、C…仮想円筒、I…交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8