特許第5824892号(P5824892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5824892圧電センサー装置、超音波センサー、および圧電センサー装置における圧電体の分極方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5824892
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】圧電センサー装置、超音波センサー、および圧電センサー装置における圧電体の分極方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/257 20130101AFI20151112BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   H01L41/257
   H01L41/113
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-132885(P2011-132885)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-4645(P2013-4645A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】小野木 智英
【審査官】 上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−196926(JP,A)
【文献】 特開2004−230033(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/001044(WO,A1)
【文献】 特開2010−071758(JP,A)
【文献】 特開2010−252839(JP,A)
【文献】 特開平10−193601(JP,A)
【文献】 特開平05−167124(JP,A)
【文献】 特開2010−071753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/257,41/113,
H04R 3/00,31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体、及び前記圧電体を挟む位置に形成された二つの電極を有し、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力する圧電素子と、
前記圧電素子と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成され、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、
前記圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理部と、
前記分極処理部の分極タイミングを制御する制御部と、
前記圧電素子から出力された検出信号を検出する信号処理部と、
前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧電体の分極量に関係した特性値を取得する特性値取得部と、
前記特性値に基づいて、前記圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記圧電体の分極特性が前記不安定状態であると判定された場合に、前記分極処理部により前記圧電素子に分極用電圧を印加して前記圧電体を分極処理させる分極制御部と、を備え、
前記特性値取得部は、前記信号処理部により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出部により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出する差分値算出部を備え、
前記判定部は、前記差分値算出部により算出される前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定する
とを特徴とする圧電センサー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電センサー装置において、
前記特性値取得部は、前記分極処理部による分極処理の実施タイミングからの経過時間を前記特性値として取得する計時部を備え、
前記判定部は、
前記経過時間が、前記圧電体の分極特性が安定する時間である第一時間から第二時間までの間である場合、前記安定状態と判定し、
前記経過時間が前記第二時間より大きい場合、前記不安定状態と判定する
ことを特徴とする圧電センサー装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電センサー装置において、
前記圧電素子から出力された検出信号を検出する検出処理、および前記圧電素子へ駆動信号を入力して駆動させる駆動処理の少なくともいずれかの信号処理を実施する信号処理部を備え、
前記制御部は、
前記経過時間が前記第一時間より小さい場合、前記分極処理部による前記圧電体の分極処理及び前記信号処理部による前記信号処理を停止する
ことを特徴とする圧電センサー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電センサー装置において、
前記圧電素子から超音波の送信及び受信の少なくともいずれか一方の信号処理を実施可能な信号処理モードと、前記圧電素子を分極処理する校正モードとを切り替えるモード切替部を備え、
前記分極制御部は、前記信号処理モードにおいて、前記分極処理部により前記基準圧電素子を分極処理させる
ことを特徴とする圧電センサー装置。
【請求項5】
圧電体、及び前記圧電体を挟む位置に形成された二つの電極を有し、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力する圧電素子と、
前記圧電素子と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成され、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、
前記圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理部と、
前記分極処理部の分極タイミングを制御する制御部と、
前記圧電素子から出力された検出信号を検出する検出処理、および前記圧電素子へ駆動信号を入力して駆動させる駆動処理の少なくともいずれかの信号処理を実施する信号処理部と、
前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧電体の分極量に関係した特性値を取得する特性値取得部と、
前記特性値に基づいて、前記圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記圧電体の分極特性が前記不安定状態であると判定された場合に、前記分極処理部により前記圧電素子に分極用電圧を印加して前記圧電体を分極処理させる分極制御部と、
を備え、
前記圧電素子は、超音波の受信および送信が可能に構成され、
前記信号処理部は、前記検出処理として超音波による受信信号の検出処理、および前記駆動処理として超音波を送信する駆動処理の少なくともいずれかの信号処理を行い、
前記特性値取得部は、前記信号処理部により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出部により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出する差分値算出部を備え、
前記判定部は、前記差分値算出部により算出される前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項6】
圧電体、及び前記圧電体を挟む位置に形成された二つの電極を有し、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力する圧電素子と、前記圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理部と、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、を備えた圧電センサー装置における前記圧電体の分極方法であって、
前記圧電素子から出力された検出信号を検出する信号検出工程と、
前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出工程と、
前記圧電体の分極量に関係した特性値を取得する特性値取得工程と、
前記特性値に基づいて、前記圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に基づいて、前記圧電体の分極特性が前記不安定状態であると判定された場合に、前記分極処理部により前記圧電体を分極処理させる分極制御工程と、を備え、
前記特性値取得工程では、前記信号検出工程により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出工程により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出し、
前記判定工程では、前記特性値取得工程により取得された前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定する
とを特徴とする圧電センサー装置における圧電体の分極方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電センサー装置、超音波センサー、および圧電センサー装置における圧電体の分極方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電体を備えた圧電センサー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の超音波探触子(圧電センサー装置)は、送信用圧電層、電極層、及び受信用圧電層が順に積層された構造を有している。このような超音波探触子は、送信用圧電層上に電極層を形成し、当該送信用圧電層を分極処理する。この後、電極層上に受信用圧電層を積層し、さらに受信用圧電層上に剥離可能な誘電体層を積層して、受信用圧電層を分極処理し、当該受信用圧電層の分極処理後に誘電体層を剥離させて、超音波探触子が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/018278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の超音波探触子では、製造時にのみ圧電体(送信用圧電層および受信用圧電層)の分極処理を行い、その後、分極処理用の誘電体層を剥離している。
しかしながら、圧電体は、振動の蓄積等による残留応力、静電気等の影響を受けることで圧電特性が経年劣化してしまう。つまり、圧電体は、分極処理後、一定時間が経過すると、分極方向が時間経過とともにほぼ変化しない安定状態となる。しかしながら、この安定状態になった後、所定時間が経過すると、分極方向のバラつきが生じ不安定な状態となる。したがって、例えば、圧電センサー装置により超音波を受信する場合、前記安定状態である場合には、良好な受信感度を維持できるが、前記不安定状態では、受信感度が著しく悪化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、圧電体の経年劣化を抑制できる圧電センサー装置、超音波センサー、および圧電センサー装置における圧電体の分極方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧電センサー装置は、圧電体、及び前記圧電体を挟む位置に形成された二つの電極を有し、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力する圧電素子と、前記圧電素子と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成され、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、前記圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理部と、前記分極処理部の分極タイミングを制御する制御部と、前記圧電素子から出力された検出信号を検出する信号処理部と、前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出部と、を備え、前記制御部は、前記圧電体の分極量に関係した特性値を取得する特性値取得部と、前記特性値に基づいて、前記圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記圧電体の分極特性が前記不安定状態であると判定された場合に、前記分極処理部により前記圧電素子に分極用電圧を印加して前記圧電体を分極処理させる分極制御部と、を備え、前記特性値取得部は、前記信号処理部により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出部により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出する差分値算出部を備え、前記判定部は、前記差分値算出部により算出される前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定することを特徴とする。
また、本発明の超音波センサーは、圧電体、及び前記圧電体を挟む位置に形成された二つの電極を有し、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力する圧電素子と、前記圧電素子と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成され、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、前記圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理部と、前記分極処理部の分極タイミングを制御する制御部と、前記圧電素子から出力された検出信号を検出する検出処理、および前記圧電素子へ駆動信号を入力して駆動させる駆動処理の少なくともいずれかの信号処理を実施する信号処理部と、前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出部と、を備え、前記制御部は、前記圧電体の分極量に関係した特性値を取得する特性値取得部と、前記特性値に基づいて、前記圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記圧電体の分極特性が前記不安定状態であると判定された場合に、前記分極処理部により前記圧電素子に分極用電圧を印加して前記圧電体を分極処理させる分極制御部と、を備え、前記圧電素子は、超音波の受信および送信が可能に構成され、前記信号処理部は、前記検出処理として超音波による受信信号の検出処理、および前記駆動処理として超音波を送信する駆動処理の少なくともいずれかの信号処理を行い、前記特性値取得部は、前記信号処理部により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出部により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出する差分値算出部を備え、前記判定部は、前記差分値算出部により算出される前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、制御部を構成する特性値取得部、判定部及び分極制御部によって、圧電素子が有する圧電体に分極処理を実施する分極タイミングが以下のように制御される。すなわち、判定部は、特性値取得部が取得した圧電体の分極量に応じた特性値に基づいて、圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する。そして、分極制御部は、この判定部の判定結果に基づいて、圧電体の分極特性が不安定状態であると判定された場合に、分極処理部により圧電体を分極処理させる。このため、残留応力や静電気等の影響により圧電体の分極特性が経年劣化し、圧電体の分極特性が不安定状態となった場合でも、圧電体が分極処理されるため、圧電体の分極特性を劣化前の状態に戻すことができ、圧電センサー装置の性能低下を防止することができる。
また、例えば、圧電体の分極特性が安定状態であると判定された場合には、圧電体を分極処理しないようにすることで、圧電体の分極特性の安定状態を維持しつつ、不要な分極処理を減らして消費電力の低減を図ることができる。
【0008】
本発明の圧電センサー装置では、前記特性値取得部は、前記分極処理部による分極処理の実施タイミングからの経過時間を前記特性値として取得する計時部を備え、前記判定部は、前記経過時間が、前記圧電体の分極特性が安定する時間である第一時間から第二時間までの間である場合、前記安定状態と判定し、前記経過時間が前記第二時間より大きい場合、前記不安定状態と判定することが好ましい。
本発明によれば、分極処理の実施タイミングからの経過時間を特性値とし、経過時間が圧電体の分極特性が安定する時間である第一時間から第二時間までの間である場合に安定状態であると判定し、経過時間が第二時間より大きい場合、不安定状態と判定する。
つまり、圧電体は、分極処理が実施された後、所定の第一時間までは、分極方向の変化が起こり、不安定な状態となる。また、第一時間から第二時間の間は、分極方向の変化が緩やかであり、比較的安定した分極状態が保たれる。そして、この第二時間以降は、分極方向が急激に乱れ、分極状態が不安定となる。
これに対し、本発明では、上述のように、安定状態である期間を経過し、圧電体の分極特性が劣化したタイミングで圧電体を分極処理することができるので、効率的に圧電体を分極処理することができる。また、分極処理の実施タイミングからの経過時間を特性値とするため、安定状態であるか、不安定状態であるかを容易に判定することができる。
【0009】
本発明の圧電センサー装置では、前記圧電素子から出力された検出信号を検出する検出処理、および前記圧電素子へ駆動信号を入力して駆動させる駆動処理の少なくともいずれかの信号処理を実施する信号処理部を備え、前記制御部は、前記経過時間が前記第一時間より小さい場合、前記分極処理部による前記圧電体の分極処理、及び前記信号処理部による前記信号処理を停止することが好ましい。
上述のように、分極処理が実施された後、所定の第一時間が経過するまでの間は、圧電体の分極方向の変化が大きく、不安定な状態となる。この不安定状態において、信号処理部により信号処理を実施すると、例えば、信号処理として圧電素子を駆動させる駆動処理を行った場合では、駆動タイミングによって、圧電素子の駆動量が変化する、また、信号処理として、圧電素子の変位量を検出する検出処理を行った場合、受信感度が変動するため、正確な圧電素子の変位量の検出が実施できない。
これに対して、本発明によれば、経過時間が第一時間より小さい場合に、信号処理部により信号処理を停止させ、信号処理を実施しない。これにより、圧電素子の受信動作の変動による信号処理精度の低下を抑えることができる。
また、分極処理が実施された後、第一時間までの不安定状態において、分極処理を実施すると、この分極処理を実施したタイミングから第一時間が経過するまで、再び圧電体の分極状態が不安定となってしまう。これに対して、本発明では、分極処理が実施された後、第一時間までの間での、分極処理部による圧電体の分極処理を停止、すなわち分極処理を実施しないことで、圧電体を早期に安定状態にすることができる。
【0010】
本発明の圧電センサー装置では、前記圧電素子は、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力し、当該圧電センサー装置は、前記圧電素子から出力された検出信号を検出する信号処理部と、前記圧電素子と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成され、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出部と、を備え、前記特性値取得部は、前記信号処理部により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出部により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出する差分値算出部を備え、前記判定部は、前記差分値算出部により算出される前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定することを特徴とする
【0011】
本発明によれば、信号処理部は、圧電素子が出力する超音波に応じた検出信号を検出する。また、基準信号検出部は、当該圧電素子と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成された基準圧電素子が出力する超音波に応じた基準信号を検出する。そして、特性値取得部は、この検出信号と基準信号との差分値を特性値として算出し、判定部は、この算出した差分値が所定の閾値以内である場合に安定状態と判定し、差分値が閾値より大きくなる場合に不安定状態と判定する。
ここで、基準圧電素子は、圧電素子が安定状態であるか不安定状態であるかを判定するために用いられる素子であり、通常の信号処理時には、駆動が停止され、分極状態が常に安定状態に保たれている。したがって、このような基準圧電素子と圧電素子との受信信号の強度を比較することで、圧電素子の劣化状態を判断することができ、正確な判定を行うことができる。
【0012】
本発明の圧電センサー装置では、前記圧電素子から超音波の送信及び受信の少なくともいずれか一方の信号処理を実施可能な信号処理モードと、前記圧電素子を分極処理する校正モードとを切り替えるモード切替部を備え、前記分極制御部は、前記信号処理モードにおいて、前記分極処理部により前記基準圧電素子を分極処理させることが好ましい。
ここで、基準圧電素子の分極処理は、信号処理モードの間であれば、いかなるタイミングで実施されてもよく、例えば、当該圧電センサー装置に電力が投入されたタイミングや、信号処理部による検出信号の検出処理が所定時間以上実施されずに待機時間に移行するタイミング、利用者の設定入力による任意タイミング等が挙げられる。
本発明によれば、基準圧電素子は、モード切替部により信号処理モードに設定されている際に、分極処理部により分極処理される。したがって、モード切替部により校正モードに切り替えられ、圧電素子の分極状態が安定状態であるか否かを判定する際に、分極処理により安定な分極状態に設定された基準圧電素子から出力された正確な基準信号と、圧電素子の検出信号とを比較することができ、圧電素子の分極状態を正確に判定することができる。
【0013】
本発明の圧電センサー装置における圧電体の分極方法は、圧電体、及び前記圧電体を挟む位置に形成された二つの電極を有し、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた検出信号を出力する圧電素子と、前記圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理部と、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準圧電素子と、を備えた圧電センサー装置における前記圧電体の分極方法であって、前記圧電素子から出力された検出信号を検出する信号検出工程と、前記基準圧電素子から出力された前記基準信号を検出する基準信号検出工程と、前記圧電体の分極量に関係した特性値を取得する特性値取得工程と、前記特性値に基づいて、前記圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定工程と、前記判定工程の判定結果に基づいて、前記圧電体の分極特性が前記不安定状態であると判定された場合に、前記分極処理部により前記圧電体を分極処理させる分極制御工程と、を備え、前記特性値取得工程では、前記信号検出工程により検出される前記検出信号と、前記基準信号検出工程により検出される前記基準信号との差分値を前記特性値として算出し、前記判定工程では、前記特性値取得工程により取得された前記差分値が、所定の閾値以内である場合に前記安定状態と判定し、前記差分値が前記閾値より大きくなる場合に前記不安定状態と判定することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、特性値取得工程、判定工程及び分極制御工程によって、圧電素子が有する圧電体に分極処理を実施する分極タイミングが以下のように制御される。すなわち、判定工程は、特性値取得工程で取得した圧電体の分極量に応じた特性値に基づいて、圧電体の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する。そして、分極制御工程は、この判定工程の判定結果に基づいて、圧電体の分極特性が不安定状態であると判定された場合に、分極処理部により圧電体を分極処理させる。このため、残留応力や静電気等の影響により圧電体の分極特性が経年劣化し、圧電体の分極特性が不安定状態となった場合でも、圧電体が分極処理されるため、圧電体の分極特性を劣化前の状態に戻すことができ、圧電センサー装置の性能低下を防止することができる。
また、例えば、圧電体の分極特性が安定状態であると判定された場合には、圧電体を分極処理しないようにすることで、圧電体の分極特性の安定状態を維持しつつ、不要な分極処理を減らして消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサーの構成を示す図。
図2】第1実施形態における受信素子の構成を示す図。
図3】第1実施形態における超音波センサーの受信感度を示すグラフ。
図4】第1実施形態における超音波センサーの動作を示すフローチャート。
図5】第1実施形態における分極処理のフローチャート。
図6】本発明の第2実施形態に係る超音波センサーの構成を示す図。
図7】第2実施形態における超音波センサーの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
[超音波センサーの概略構成]
図1は、圧電センサー装置としての超音波センサー1の構成を示す図である。この超音波センサー1は、被検出体に対して送信され、被検出体で反射された超音波を受信することで、超音波センサー1と被検出体との距離、被検出体の状態を検出するセンサーである。このような超音波センサー1は、超音波の送受信により、例えば生体内の血管位置や、血流速度、血圧等を計測するための生体検査装置や、当該超音波センサー1の表面に設けられた弾性膜の動きを超音波により検出することで、弾性膜に作用する押圧力、剪断力を測定する応力測定装置、超音波により対象物との距離を測定し、測定された距離に応じた音圧で当該対象物を洗浄する超音波洗浄装置など、超音波の送信、または受信する様々な装置に適用することができる。
この超音波センサー1は、図1に示すように、複数の受信素子10(圧電素子)と、受信素子10から出力された検出信号を検出する検出回路20(信号処理部)と、分極処理回路30(分極処理部)と、接続切替回路40(接続切替部)と、操作部60と、制御部70と、を備えている。
【0017】
〔受信素子の構成〕
図2は、受信素子10の概略構成を示す図である。具体的に、図2(A)は、受信素子10の断面図であり、図2(B)は、受信素子10の平面図である。
受信素子10は、超音波を受信して検出信号に変換する素子である。
この受信素子10は、支持部11の上に、互いに直交するX軸及びY軸のそれぞれの軸方向に沿って、等間隔で複数配置されており、これらの複数の受信素子10によりアレイ構造の受信素子群100が構成されている。
【0018】
各受信素子10は、図2に示すように、開口部12が形成された支持部11と、支持部11上を覆い、開口部12を閉塞する支持膜13と、支持膜13上に形成される積層体14とを備えている。
支持部11に形成される開口部12は、例えば、図2(B)に示すように平面視で円形状に形成されている。これにより、開口部12の内側の支持膜13であるダイアフラム131において、ダイアフラム131の撓みに対する応力を均一にすることができる。
【0019】
支持膜13は、支持部11上で、開口部12を閉塞する状態に成膜されている。この支持膜13は、例えばSiO層とZrO層との2層構造により構成される。ここで、SiO層は、支持部11がSi基板である場合、基板表面を熱酸化処理することで成膜することができる。また、ZrO層は、SiO層上に例えばスパッタリングなどの手法により成膜される。ここで、ZrO層は、後述する圧電膜142として例えばPZTを用いる場合に、PZTを構成するPbがSiO層に拡散することを防止するための層である。また、ZrO層は、圧電膜142の歪みに対する撓み効率を向上させるなどの効果もある。
【0020】
積層体14は、支持膜13の上層に積層される下部電極141と、下部電極141上に形成される圧電体としての圧電膜142と、圧電膜142上に形成される上部電極143とを備えている。つまり、積層体14は、二つの電極(下部電極141及び上部電極143)によって圧電膜142が挟まれた構成を有している。
また、下部電極141には、図2に示すように、支持膜13に沿って下部電極線144が引き出されている。また、上部電極143には、支持膜13に沿って下部電極線144の引出方向とは反対側に向かって、上部電極線145が引き出されている。そして、下部電極線144は、隣に配置されている受信素子10の上部電極線145と平面視で重なっている。このように、各受信素子10の下部電極線144と上部電極線145とが重なって接続されることで、各受信素子10は、図1に示すように直列に接続されている。
【0021】
このような受信素子群100では、複数の受信素子10が直列に接続されていることで、各受信素子10から出力される検出信号が足し合わされるため、信号値の大きい検出信号を検出回路20に出力することができる。
また、詳しい図示は省略するが、本実施形態では、複数の受信素子10のうち、X軸方向に配列された素子群のみが直列に接続されて受信素子群100を構成し、このような受信素子群100がY軸に沿って並設されて各受信素子群100が個別に検出回路20に接続されるセンサー構成を例示するが、これに限らない。例えば、X軸方向の端部に配列された受信素子10が、Y軸方向に隣り合う受信素子10と直列接続されることで、X軸方向およびY軸方向に配列された受信素子10が直列接続される構成などとしてもよい。
【0022】
圧電膜142は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、圧電膜142としてPZTを用いるが、電圧を印加することで、面内方向に収縮することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)などを用いてもよい。
【0023】
このような受信素子10では、超音波をダイアフラム131で受信することでダイアフラム131が膜厚方向(図2(A)におけるZ軸方向)に振動する。これにより、圧電膜142の下部電極141側の面と上部電極143側の面とで電位差が発生し、上部電極143および下部電極141から圧電膜142の変位量に応じた検出信号(電流)が出力される。
【0024】
〔検出回路の構成〕
図1に示す検出回路20は、各受信素子10から出力される検出信号を検出(取得)する検出処理を実施する回路であり、接続切替回路40を介して前述した受信素子群100に接続されている。詳述すると、検出回路20は、受信素子群100の一端に配置された受信素子10(受信素子10A)の下部電極線144と、受信素子群100の他端に配置された受信素子10(受信素子10B)の上部電極線145に接続されている。そして、この検出回路20は、受信素子群100から入力された検出信号の電圧値を増幅して、制御部70に出力する。
【0025】
〔分極処理回路の構成〕
分極処理回路30は、前述した圧電膜142に対して分極処理を行うための分極用電圧を出力可能な電圧源を備え、接続切替回路40を介して受信素子群100に接続されている。この分極処理回路30は、分極用電圧を受信素子群100に印加することで、各受信素子10の圧電膜142に対して当該分極用電圧の分圧が印加される。これにより、圧電膜142の分極子の方向が一方向に揃えられる分極処理が実施される。なお、印加する電圧および時間は、例えば、圧電膜142の特性等によって予め設定された値で実行される。
【0026】
〔接続切替回路の構成〕
接続切替回路40は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子で構成され、受信素子群100および検出回路20間に設けられる第一スイッチ部40Aと、受信素子群100および分極処理回路30間に設けられる第二スイッチ部40Bを備えている。そして、第一スイッチ部40Aは、制御部70の制御により、受信素子群100と検出回路20との接続状態を切り替える。また、第二スイッチ部40Bは、制御部70の制御により、受信素子群100と分極処理回路30との接続状態を切り替える。
ここで、第一スイッチ部40Aにより、受信素子群100及び検出回路20が接続され、第二スイッチ部40Bにより受信素子群100及び分極処理回路30が切断される状態が本発明の第1接続状態となる。また、第一スイッチ部40Aにより、受信素子群100及び検出回路20が切断され、第二スイッチ部40Bにより受信素子群100及び分極処理回路30が接続される状態が、本発明の第2接続状態となる。また、第一スイッチ部40A及び第二スイッチ部40Bの双方が切断される状態、つまり受信素子群100及び検出回路20が切断され、かつ、受信素子群100及び分極処理回路30が切断される状態を第3接続状態とする。
【0027】
〔操作部の構成〕
操作部60は、超音波センサー1の図示しない外装部に設けられ、利用者により操作されることで、入力信号が入力される部分である。この操作部60としては、例えば、図示を省略するが、電極供給部からの電力により超音波センサー1を起動させる電源スイッチや、超音波の受信処理(送受信処理)を実施させる処理開始ボタン等が含まれる。
【0028】
〔制御部の構成〕
制御部70は、前述の検出回路20、分極処理回路30、接続切替回路40、及び操作部60に接続されており、分極処理回路30による分極処理を実施するタイミング(分極タイミング)を制御する。
この制御部70は、例えばIC(Integrated Circuit)等の集積回路等で構成され、超音波センサー1全体を制御する。具体的には、制御部70は、図1に示すように、モード切替部71、信号取得部72、特性値取得部73、判定部74、分極制御部75、検出制御部76、及び処理制限部77等を備えて構成されている。
【0029】
モード切替部71は、超音波センサー1の動作モードを切り替えて設定する。具体的には、モード切替部71は、検出回路20により、受信素子群100からの検出信号を検出可能な信号処理モードと、分極処理回路30により受信素子群100の分極処理を実施する校正モードと、検出回路20による検出処理、分極処理回路30による分極処理の双方の処理を制限する安定移行モードと、を切り替える。
モード切替部71による超音波センサー1の動作モードの切り替えは、後述する判定部74による圧電膜142の分極状態の判定に基づいて実施される。
【0030】
信号取得部72は、操作部60から入力された入力信号を取得する。この入力信号としては、上述したように、電源スイッチがオン状態に切り替えられたことを示す入力信号や、受信素子群100による超音波の検出処理を開始させる旨の入力信号等が含まれる。
特性値取得部73は、タイマー(図示略)を用いて分極処理回路30による分極処理の実施タイミングから経過した時間を計時する計時部731を備えている。
そして、この特性値取得部73は、計時部731によって計時された経過時間[t]を、圧電膜142の分極量に応じた特性値として取得する。
判定部74は、特性値取得部73により取得された経過時間[t]に応じて圧電膜142の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する。
ここで、この経過時間[t]と圧電膜142の分極状態との関係について説明する。
【0031】
図3は、超音波センサー1の受信感度を示すグラフである。図3において、横軸は、経過時間[t]を示し、縦軸は、受信素子10の受信感度[mV]を示している。
圧電膜142に分極処理を施すと、分極処理直後(t=0)では、各ドメインにおける分極方向を一方向に配向させることできる。しかしながら、この状態は、不安定であり、各ドメインの分極方向が変化しやすく、所定時間(第一時間:t=t1)が経過した後、分極方向の変化が小さい安定状態となる。そして、この安定状態が所定の第二時間(t=t2)まで持続した後、圧電膜142は、再び分極方向が変化しやすい不安定状態となる。なお、この第一時間及び第二時間は、圧電膜142の構成物質や結晶構造等により変化する値であり、例えば受信素子10の成形時に予め測定することで、把握することができる。
【0032】
このため、受信素子10では、図3に示すように、分極処理後から第一時間(0≦t<t1)までは、受信感度は高いが、受信感度の変化量も大きくなる。したがって、この期間において、検出処理を実施した場合、同じ音圧の超音波を受信した場合でも検出タイミングの違いにより、検出信号の大きさが変化してしまう。
一方、第一時間から第二時間の間(t1≦t≦t2)の安定状態では、圧電膜142の分極方向の変化が小さいため、図3に示すように、受信素子10は、一定の受信感度を維持できる。したがって、同じ音圧の超音波を受信した場合、検出タイミングが異なったとしても、ほぼ同じ信号値の検出信号が取得される。
そして、第二時間が経過した後(t>t2)は、上記のように、圧電膜142の分極方向が急激に変化するため、この期間に検出処理を実施した場合、同じ音圧の超音波を受信した場合でも検出タイミングの違いにより、検出信号の大きさが変化してしまう。また、分極方向が一様でないため、圧電膜142から出力される検出信号の信号値も小さくなり、図3に示すように、受信素子10の受信感度も低下する。
【0033】
判定部74は、特性値取得部73により取得された経過時間[t]が、圧電膜142の分極特性が安定する時間である第一時間から第二時間までの間である場合、圧電膜142の分極特性が安定状態であると判定する。また、判定部74は、経過時間[t]が第二時間よりも大きい場合、圧電膜142の分極特性が不安定状態であると判定する。さらに、判定部74は、経過時間[t]が、分極処理直後から第一時間までの間である場合、安定移行状態であると判定する。
【0034】
分極制御部75は、この判定部74の判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が不安定状態であると判定され、モード切替部71により、超音波センサー1の動作モードが校正モードに切り替えられた場合に、接続切替回路40に制御信号を出力して、接続切替回路40の接続状態を第2接続状態に切り替え、分極処理回路30により圧電膜142を分極処理させる。
【0035】
検出制御部76は、判定部74の判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が安定状態であると判定され、モード切替部71により、超音波センサー1の動作モードが信号処理モードに切り替えられた場合に、接続切替回路40に制御信号を出力して、第1接続状態に切り替える。そして、受信素子群100から出力された検出信号を検出回路20で検出させる。また、検出制御部76は、更に、検出された検出信号に基づいて、超音波センサー1から被検出体までの距離等を算出してもよく、検出された検出信号を、例えば図示しない外部端子部から外部機器に出力してもよい。
【0036】
処理制限部77は、判定部74の判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が安定移行状態であると判定され、モード切替部71により、超音波センサー1の動作モードが安定移行モードに切り替えられた場合に、接続切替回路40に制御信号を出力して、第3接続状態に切り替える。これにより、受信素子群100が、検出回路20及び分極処理回路30から切断された状態となり、検出回路20による検出処理及び分極処理回路30による分極処理が制限、すなわち停止される状態となる。
【0037】
[超音波センサーの動作]
図4は、超音波センサー1の動作を示すフローチャートである。
超音波センサー1の電源スイッチがオン状態にされると、特性値取得部73の計時部731は、制御部70の内部タイマーにより前回分極処理が実施されたタイミングから現在に至るまでの経過時間[t]を取得する(ステップS1)。
次に、制御部70の判定部74は、ステップS1で取得された経過時間[t]に基づいて、圧電膜142の分極状態が不安定状態であるか否かを判断する(ステップS2)。すなわち、判定部74は、経過時間[t]が第二時間t2より大きいか否かを判断する。
【0038】
このステップS2において、判定部74により、不安定状態であると判定された場合、モード切替部71は、超音波センサー1の動作モードを校正モードに切り替え、受信素子群100の各受信素子10の圧電膜142を分極する分極処理(ステップS3)を実施する。
【0039】
図5は、分極処理のフローチャートである。
ステップS3の分極処理では、分極制御部75は、接続切替回路40の接続状態を第2接続状態に切り替える(ステップS11)。そして、分極制御部75は、分極処理回路30から各受信素子10の圧電膜142に分極用電圧を印加させ、各圧電膜142の分極処理を実施する(ステップS12)。
次に、分極制御部75は、圧電膜142の分極処理が終了したかを判定する(ステップS13)。この判定は、例えば、タイマーで処理時間を計時することで行われる。
ステップS13で分極処理が終了していないと判定した場合には、分極制御部75は、第2接続状態を維持するとともに、分極処理回路30による分極用電圧の印加を継続させ、各圧電膜142の分極処理が終了するまで分極処理を実施する。
ステップS13で分極処理が終了したと判定した場合には、特性値取得部73は、計時部731で計測される経過時間[t]をリセット(t=0を設定)する(ステップS14)。以上により、ステップS3の分極処理が終了する。
このステップS3による分極処理が終了すると、ステップS1の処理に戻される。
【0040】
一方、前述したステップS2の処理において、判定部74は、不安定状態ではないと判定した場合、更に、経過時間[t]が0≦t<t1である安定移行状態であるか否かを判定する(ステップS4)。
このステップS4において、判定部74により、安定移行状態であると判定された場合、モード切替部71は、超音波センサー1の動作モードを安定移行モードに切り替える。例えば、ステップS3による分極処理が実施された直後では、安定移行状態と判定される。
そして、モード切替部71により動作モードが安定移行モードに切り替えられると、処理制限部77は、接続切替回路40の接続状態を第3接続状態に切り替える(ステップS5)。
このステップS5では、処理制限部77は、特性値取得部73の計時部731により計測される経過時間[t]が、t≧t1となるまで、接続切替回路40の接続状態を第3接続状態に維持し、受信素子群100への信号の入出力を制限する。すなわち、分極処理回路30による分極処理、検出回路20による検出処理が停止される状態となる。これにより、受信素子10の分極特性が変化しやすい不安定な状態での検出信号の検出が防止される。分極処理回路30による分極処理が停止されることで、受信素子10の分極特性の安定状態へスムーズに移行させることが可能となる。
【0041】
そして、判定部74は、計時部731により計測される経過時間[t]が、t1≦t≦t2となったか否か、すなわち、判定部74は、受信素子群200の分極状態が安定状態であるか否かを判定する(ステップS6)。ここで、経過時間[t]がt<t1である場合、前述したように、ステップS5の処理を継続する。一方、ステップS6において、判定部74により経過時間[t]がt1≦t≦t2であると判定された場合、及びステップS4において、判定部74により、安定移行状態ではないと判定された場合、モード切替部71は、超音波センサー1の動作モードを信号処理モードに切り替える(ステップS7)。
【0042】
そして、モード切替部71により、超音波センサー1の動作モードが信号処理モードに設定されると、検出制御部76は、接続切替回路40の接続状態を第1接続状態に切り替える(ステップS8)。すなわち、受信素子群100により、超音波を受信可能な状態に設定する。
【0043】
このステップS8では、図示しない超音波送信素子から超音波を発信させ、被検出体で反射された超音波が各受信素子10で受信されると、受信素子群100から検出信号が検出回路20へ出力される。検出回路20は、この検出信号を増幅して、制御部70へ出力する。
そして、検出制御部76は、検出回路20から出力された検出信号に基づいて、例えば超音波センサー1から被検出体まで距離等を算出し、測定結果として出力装置(図示略)等に出力する。
そして、制御部70は、検出処理を継続するか否かを判定し(ステップS9)、継続する場合には、処理をステップS1に戻す。
一方、電源スイッチがオフされることなどにより検出処理が終了した場合には、動作を終了する。
【0044】
上述した第1実施形態による超音波センサー1によれば、以下の効果を奏する。
超音波センサー1は、圧電膜142に分極用電圧を印加して分極処理を実施する分極処理回路30と、分極処理回路30の分極タイミングを制御する制御部70と、を備える。そして、制御部70は、圧電膜142の分極量に応じた特性値を取得する特性値取得部73と、当該特性値に基づいて、圧電膜142の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する判定部74と、判定部74の判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が不安定状態であると判定された場合に、分極処理回路30により圧電膜142を分極処理させる分極制御部75、とを備える。
これにより、制御部70を構成する特性値取得部73、判定部74及び分極制御部75によって、各受信素子10が有する圧電膜142に分極処理を実施する分極タイミングが以下のように制御される。すなわち、判定部74は、特性値取得部73が取得した圧電膜142の分極量に応じた特性値に基づいて、圧電膜142の分極特性が安定状態であるか、不安定状態であるかを判定する。そして、分極制御部75は、この判定部74の判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が不安定状態であると判定された場合に、分極処理回路30により圧電膜142を分極処理させる。このため、残留応力や静電気等の影響により圧電膜142の分極特性が経年劣化し、圧電膜142の分極特性が不安定状態となった場合でも、圧電膜142が分極処理されるため、圧電膜142の分極特性を劣化前の状態に戻すことができ、超音波センサー1の性能低下を防止することができる。
また、圧電膜142の分極特性が安定状態であると判定された場合には、圧電膜142を分極処理しないようにすることで、圧電膜142の分極特性の安定状態を維持しつつ、不要な分極処理を減らして消費電力の低減を図ることができる。
【0045】
また、特性値取得部73は、分極処理の実施タイミングからの経過時間[t]を特性値とし、経過時間[t]が圧電膜142の分極特性が安定する時間である第一時間から第二時間までの間(t1≦t≦t2)である場合に安定状態であると判定し、経過時間[t]が第二時間より大きい(t>t2)場合、不安定状態と判定する。これにより、安定状態である期間を経過し、圧電膜142の分極特性が劣化したタイミングで圧電膜142を分極処理することができるので、効率的に圧電膜142を分極処理することができる。また、分極処理の実施タイミングからの経過時間[t]を特性値とするため、安定状態であるか、不安定状態であるかを容易に判定することができる。
【0046】
更に、超音波センサー1では、圧電膜142から出力された検出信号を検出する検出回路20を備え、制御部70は、経過時間[t]が第一時間より小さい(0≦t<t1)場合、分極処理回路30による圧電膜142の分極処理及び検出回路20による信号処理(検出処理)を停止する。
ここで、分極処理が実施された後、所定の第一時間が経過するまでの間は、圧電膜142の分極方向の変化が大きく、不安定な状態となる。この不安定状態において、検出回路20により信号処理(検出処理)を実施すると、受信感度が変動するため、正確な圧電膜142の変位量の検出が実施できない。
これに対して、本実施形態では、経過時間[t]が第一時間より小さい場合に、検出回路20による検出処理を停止させ、検出処理を実施しない。これにより、受信素子10の受信感度の変動による信号処理精度の低下を抑えることができる。
また、分極処理が実施された後、第一時間までの期間を安定移行状態として判定し、不安定状態とは判定しない。つまり、判定部74により不安定状態として判定され、分極処理回路30により分極処理が実施されると、この分極処理を実施したタイミングからさらに第一時間が経過するまで、再び圧電膜142の分極状態が不安定となってしまう。これに対して、本実施形態では、上記のように、分極処理が実施された後、第一時間までの間を安定移行状態と判定して、分極処理回路30による圧電膜142の分極処理、及び検出回路20による検出処理を制限、すなわち停止させることで、圧電膜142の分極状態を早期に安定状態にすることができる。
【0047】
ここで、単素子(一つの受信素子)で構成される超音波センサーと比較して、複数の受信素子を直列に接続した構成を備える超音波センサーは、受信感度が小さくなる傾向がある。しかしながら、本実施形態の超音波センサー1では、複数の受信素子10を直列に接続する構成を備えていても、圧電膜142を分極処理し分極状態が揃うことで、受信感度が小さくなることを防止できる。
さらに、受信素子10の積層体14を、薄膜状の圧電膜142と下部電極141および上部電極143とで構成しているため、バルク状の圧電素子を分極処理する場合と比較して、低い電圧の印加により分極処理を行うことができる。
【0048】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
前述した第1実施形態では、圧電膜142の圧電特性が安定状態であるか否かを、圧電膜142の分極処理後の経過時間を計時することで判定したが、本実施形態では、さらに、受信信号を利用して判定する点で第1実施形態とは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6は、本実施形態における超音波センサー1Aの構成を示す模式図である。
本実施形態の超音波センサー1Aは、図6に示すように、受信素子群100、検出回路20、分極処理回路30、接続切替回路40、操作部60、送信素子群300、送信駆動回路320、基準受信素子群200、基準接続切替回路80(基準接続切替部)、基準信号検出回路90(基準信号検出部)、及び制御部70Aを備えている。
この超音波センサー1Aでは、通常の検出処理を実施する信号処理モードにおいて、送信素子群300から被検出体に向けて超音波を発信し、被検出体により反射された超音波を、受信素子群100で受信することで、超音波センサー1Aと被検出体との距離、被検出体の状態を検出する。また、受信素子群100の分極状態が安定状態であるか否かを判定する校正モードにおいて、送信素子群300から基準検出体に向けて超音波を発信し、基準検出体により反射された超音波を、受信素子群100及び基準受信素子群200により受信する。そして、受信素子群100及び基準受信素子群200からそれぞれ出力された信号を比較することで、受信素子群100の分極状態が安定状態か否かを判定し、不安定であると判定した場合に、分極処理を実施する。
【0050】
送信素子群300は、受信素子10と同様の構成を有する送信素子310をアレイ状に配列することで形成される。この送信素子群300は、送信駆動回路320に接続され、送信駆動回路320から入力された駆動信号(パルス電圧)により駆動されることで、超音波を出力する。ここで、送信素子群300は、受信素子群100の受信素子10と異なり、複数の送信素子310が並列に接続された構成としてもよい。また、例えばX軸に沿って送信素子310が直列に接続された素子列を、Y軸に沿って複数配置し、これらの素子列をそれぞれ個別に送信駆動回路320に接続される構成としてもよい。さらには、個々の送信素子310がそれぞれ個別に送信駆動回路320に接続される構成としてもよい。
【0051】
基準受信素子群200は、複数の基準受信素子210(基準圧電素子)で構成されている。この基準受信素子210は、受信素子10が安定状態であるか不安定状態であるかを判定するために用いられる素子である。
この基準受信素子210は、受信素子10と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成されたものである。なお、基準受信素子群200は、この基準受信素子210を、受信素子群100における受信素子10と同一の配置及び同一の接続状態で配置されていてもよい。また、基準受信素子210は、受信素子10と素子数が違っていてもよい。
この基準受信素子群200は、基準信号検出回路90、及び分極処理回路30に基準接続切替回路80を介して接続されている。
【0052】
基準接続切替回路80は、基準受信素子群200および基準信号検出回路90間に設けられる第一基準スイッチ部80Aと、基準受信素子群200および分極処理回路30間に設けられる第二基準スイッチ部80Bを備えている。そして、第一基準スイッチ部80Aは、制御部70Aの制御により、基準受信素子群200と基準信号検出回路90との接続状態を切り替える。また、第二基準スイッチ部80Bは、制御部70Aの制御により、基準受信素子群200と分極処理回路30との接続状態を切り替える。
基準信号検出回路90は、検出回路20と同様に、各基準受信素子210から出力された基準信号を検出する。
【0053】
制御部70Aは、モード切替部71、信号取得部72、特性値取得部73A、判定部74A、分極制御部75A、検出制御部76A及び処理制限部77Aを備える。
特性値取得部73Aは、前述した計時部731に加えて、さらに差分値算出部732を備える。
この差分値算出部732は、検出回路20により検出される検出信号の信号値から、基準信号検出回路90により検出される基準信号の信号値を引いた信号差分値を特性値として算出する。なお、受信素子10と基準受信素子210の素子数が異なる場合には、受信素子群100で検出した検出信号の信号値を受信素子10の素子数で除した値から、基準受信素子群200で検出した基準信号の信号値を基準受信素子210の素子数で除した値を引いた差分値を特性値とすることができる。
【0054】
判定部74Aは、計時部731により取得された経過時間[t]が、分極処理直後から第一時間までの間である場合、安定移行状態であると判定する。また、判定部74Aは、この経過時間[t]が、第二時間よりも大きい場合、差分値算出部732により算出される信号差分値が、所定の閾値以内であるか否かを判定し、閾値以内である場合には安定状態と判定し、閾値より大きくなる場合には不安定状態と判定する。例えば、この閾値としては、基準検出信号に対する検出信号の誤差が±10%となる値を設定することができ、この場合、判定部74Aは、差分値算出部732により算出された特性値が誤差範囲内に収まっている場合に、安定状態であると判定する。
【0055】
分極制御部75Aは、判定部74Aの判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が不安定状態であると判定され、モード切替部71により、超音波センサー1の動作モードが校正モードに切り替えられた場合に、接続切替回路40に制御信号を出力して、接続切替回路40の接続状態を第2接続状態に切り替え、分極処理回路30により圧電膜142を分極処理させる。
さらに、この分極制御部75Aは、信号処理モードの所定のタイミングで分極処理回路30により基準受信素子210を分極処理させる。なお、この基準受信素子210の分極処理は、信号処理モードの間であれば、いかなるタイミングで実施されてもよい。例えば、超音波センサー1Aの電源スイッチが操作されて電力が供給されるタイミングにおいて、モード切替部71が超音波センサー1Aの初期動作モードとして信号処理モードを設定する場合、この電源スイッチが操作された直後のタイミングで、基準受信素子210を分極処理してもよい。また、検出回路20による検出処理が実施された後に、所定の待機移行時間の間、入力手段から検出処理を実施する旨の入力信号が入力されなかった場合に、基準受信素子210の分極処理を実施してもよい。また、電源スイッチがオフ状態に操作され、一連の検出処理の終了動作を実施する際に、基準受信素子210の分極処理を実施してもよい。更には、利用者の設定入力により、任意のタイミングで基準受信素子210の分極処理を実施してもよい。
分極制御部75Aによる基準受信素子群200の分極処理では、当該分極制御部75Aは、基準接続切替回路80に制御信号を出力して、第一基準スイッチ部80Aにおいて、基準受信素子群200と基準信号検出回路90と切断させ、第二基準スイッチ部80Bにおいて、基準受信素子群200と分極処理回路30とを接続する接続状態に切り替える。
【0056】
検出制御部76Aは、判定部74Aの判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が安定状態であると判定され、モード切替部71により、超音波センサー1Aの動作モードが信号処理モードに切り替えられた場合に、接続切替回路40に制御信号を出力して、第1接続状態に切り替える。そして、受信素子群100から出力された検出信号を検出回路20で検出させる。また、検出制御部76Aは、更に、検出された検出信号に基づいて、超音波センサー1Aから被検出体までの距離等を算出してもよく、検出された検出信号を、例えば図示しない外部端子部から外部機器に出力してもよい。
そして、検出制御部76Aは、判定部74Aにより、計時部731により取得された経過時間[t]が、第二時間よりも大きいと判定された場合に、接続切替回路40及び基準信号検出回路90を制御して、一時的に、受信素子群100からの検出信号及び基準受信素子群200からの基準信号を、検出回路20及び基準信号検出回路90により検出可能な状態に切り替える。
【0057】
処理制限部77Aは、判定部74Aの判定結果に基づいて、圧電膜142の分極特性が安定移行状態であると判定され、モード切替部71により、超音波センサー1Aの動作モードが安定移行モードに切り替えられた場合に、接続切替回路40に制御信号を出力して、第3接続状態に切り替える。そして、受信素子群100が、検出回路20及び分極処理回路30から切断された状態となる。
【0058】
[超音波センサーの動作]
図7は、超音波センサー1Aの動作を示すフローチャートである。
本実施形態の超音波センサー1Aでは、前述した第1実施形態のステップS2の処理後、制御部70Aの判定部74Aは、経過時間[t]が第二時間t2より大きいか否かを判定する(ステップS21)。
ステップS21で経過時間[t]が第二時間t2以下であると判定した場合には、前述したステップS4以降の処理を行う。すなわち、制御部70Aは、判定部74Aにより、受信素子群100の各圧電膜142の分極状態が、安定移行状態であるか、安定状態であるかを判定する。そして、判定部74Aにより、安定移行状態であると判定された場合には、制御部70Aは、モード切替部71により安定移行モードに切り替えさせ、処理制限部77Aにより所定時間の検出回路20及び分極処理回路30の双方の処理を制限させる。また、判定部74Aにより、安定状態であると判定された場合には、制御部70Aは、モード切替部71により信号処理モードに切り替えさせ、検出回路20による検出処理を実施可能な状態にする。
【0059】
一方、ステップS21で経過時間[t]が第二時間t2より大きいと判定した場合には、特性値取得部73Aの差分値算出部732は、前述した差分値を取得して、取得した差分値が閾値以内であるか否かを判定する(ステップS22)。
具体的には、このステップS22では、検出制御部76Aは、接続切替回路40を第1接続状態に切り替え、基準接続切替回路80を基準受信素子群200及び基準信号検出回路90を接続する第1基準接続状態に切り替える。また、制御部70Aは、送信駆動回路320を制御して、送信素子群300から超音波を発信させ、例えば被検出体により反射された超音波を、受信素子群100及び基準受信素子群200に受信させる。これにより、検出回路20により検出信号が検出され、基準信号検出回路90により基準信号が検出される。
この後、差分値算出部732は、取得された受信信号と、基準信号との差分値(信号差分値)を算出して、この信号差分値が閾値以内であるか否かを判定する。
【0060】
ステップS22で閾値以内であると判定した場合には、前述したステップS7以降の処理を行う。すなわち、制御部70Aは、モード切替部71により、超音波センサー1Aの動作モードを信号処理モードに切り替えさせ、検出回路20による検出処理を実施可能な状態にする。
一方、ステップS22で、閾値よりも大きいと判定した場合には、判定部74Aは、不安定状態であると判定して、前述したステップS3の分極処理を実施し、分極処理後、ステップS1に戻る。
【0061】
上述した第2実施形態による超音波センサー1Aによれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
超音波センサー1Aは、受信素子10から出力された検出信号を検出する検出回路20と、受信素子10と同一構成物により構成され、かつ同一の形状及び寸法に形成され、超音波を受信することで、受信した超音波に応じた基準信号を出力する基準受信素子210と、基準受信素子210から出力された基準信号を検出する基準信号検出回路90と、を備える。そして、制御部70Aの特性値取得部73Aは、この検出信号と基準信号との差分値を特性値として算出し、判定部74Aは、この算出した差分値が所定の閾値以内である場合に安定状態と判定し、差分値が閾値より大きくなる場合に不安定状態と判定する。
【0062】
このため、基準受信素子210からの基準信号及び受信素子10からの検出信号に基づいて、受信素子10の受信感度の低下量を定量的に判断できる。したがって、受信素子10の分極状態をより正確に判断することができるため、より最適なタイミングで各受信素子10の圧電膜142を分極処理することができる。
【0063】
また、本実施形態の超音波センサー1Aでは、分極制御部75Aは、信号処理モードにおいて、分極処理回路30により基準受信素子210を分極処理させる。このため、基準受信素子210は、校正モードでは、各圧電膜142の分極方向が揃った状態となっており、正確に受信素子10の分極状態を判定することができる。
【0064】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記第2実施形態では、信号差分値により経過時間[t]が第二時間t2より大きい場合について不安定状態であるか否かについて判定したが、これに限らない。例えば、信号差分値によって、t≦t2においても、安定移行状態であるか否か、不安定状態であるか否かを判定してもよい。具体的には、経過時間[t]が、0≦t≦t1の期間において、信号差分値が安定上限値を超える場合に、安定移行状態として判定し、信号差分値が安定上限値から安定下限値までの閾値範囲内であれば安定状態として判定し、動作モードを信号処理モードに切り替える処理をしてもよい。この場合、圧電膜142の分極状態が、通常よりも早く安定状態となった場合に、これに対応してより迅速に信号処理モードに切り替えることができ、検出作業を迅速に実施することができる。また、t1≦t≦t2においても、例えば定期的に基準受信素子群200と受信素子群100との信号を比較する処理をして、信号差分値が安定上限値から安定下限値の間でない場合は、安定移行状態、または不安定状態を判定してもよい。つまり、圧電膜142の分極状態が不揃いとなり、受信感度が低下しても、迅速に圧電膜142の分極状態を判定することができ、早期に分極処理を実施することで性能の回復を図ることができ、検出精度の低下を防止することができる。
【0065】
前記各実施形態では、分極処理を行う圧電素子として超音波を受信する受信素子10を例示したが、これに限らず、超音波を送信する送信素子について分極処理する構成であってもよく、また、受信素子10および送信素子の双方について分極処理を行う構成であってもよい。送信素子について分極処理を行う構成とした場合には、超音波を発信する送信素子、当該素子を駆動する駆動処理を行う駆動回路を備える構成とすればよい。
なお、第2実施形態において送信素子を分極処理する構成を採用する場合には、基準音圧の超音波を発信する基準送信素子、当該素子を駆動する基準送信駆動回路を設け、基準送信素子から出力された超音波と、送信素子から出力された超音波を、1つの受信素子で受信させる。そして、基準送信素子に基づいた超音波の受信信号値と、送信素子に基づいた超音波の受信信号値とを比較して、その誤差が閾値範囲外であれば、送信素子を分極処理する。これにより、送信素子を常に適切に分極処理された状態に維持することができる。
【0066】
前記各実施形態では、複数の受信素子10を直列に接続した構成について例示したが、受信素子10の数は単数(単素子)であってもよいし、複数の受信素子10を並列に接続した構成としてもよい。
前記各実施形態では、圧電素子として、薄膜状の圧電膜142と下部電極141および上部電極143とで構成された積層体14を備える受信素子10について説明したが、圧電素子は、バルク状のものであってもよい。
前記各実施形態では、圧電膜142の圧電特性が安定状態でなくなったと判定された場合に、圧電膜142の分極処理を行い、分極処理後に検出回路20による検出を行う構成について例示したが、分極処理後に、当該検出回路20の検出結果等に基づいて、圧電膜142の使用可能状態を判定し、判定結果に応じた処理を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A…超音波センサー(圧電センサー装置)、10…受信素子(圧電素子)、20…検出回路(信号処理部)、30…分極処理回路(分極処理部)、40…接続切替回路(接続切替部)、70,70A…制御部、71…モード切替部、73,73A…特性値取得部、74,74A…判定部、75,75A…分極制御部、90…基準信号検出回路(基準信号検出部)、142…圧電膜(圧電体)、210…基準受信素子(基準圧電素子)、731…計時部、732…差分値算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7