(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
N、M、F、Dを整数としたときに、ビット数Nの入力映像信号データを逆ガンマ補正および直線補間を行ってNより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換するルックアップテーブル部と、
前記ルックアップテーブル部で処理された(M+F+D)ビットのデータを誤差拡散処理により(M+F)ビットのデータに変換する誤差拡散部と、
前記誤差拡散部で処理された(M+F)ビットのデータをフレームレートコントロールテーブルにより特定された下位Fビットが“0”か“1”の値を上位Mビットのデータに加算して、Mビットのデータに変換するフレームレートコントロール部と、
前記フレームレートコントロール部で処理されたMビットのデータを用いるとともに、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき任意のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前または後に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ変換部と、
を備え、
隣り合った画素間で駆動状態である画素からブランキング状態の画素への電界方向を定義した場合、前記フレームレートコントロールテーブルは、Fビット分のフレームにおいて平均された場合にすべての画素間で前記電界方向が打ち消し合う
ことを特徴とする液晶表示素子の駆動装置。
N、M、F、Dを整数としたときに、ビット数Nの入力映像信号データを逆ガンマ補正および直線補間を行ってNより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換する第1のステップと、
前記第1のステップで処理された(M+F+D)ビットのデータを誤差拡散処理により(M+F)ビットのデータに変換する第2のステップと、
前記第2のステップで処理された(M+F)ビットのデータをフレームレートコントロールテーブルにより特定された下位Fビットが“0”か“1”の値を上位Mビットのデータに加算して、隣り合った画素間で駆動状態である画素からブランキング状態の画素への電界方向を定義した場合、前記フレームレートコントロールテーブルは、Fビット分のフレームにおいて平均された場合にすべての画素間で前記電界方向が打ち消し合うようにMビットのデータに変換する第3のステップと、
上記第3のステップで処理されたMビットのデータを用いるとともに、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき任意のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前または後に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成する第4のステップと、
を含むことを特徴とする液晶表示素子の駆動方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像表示装置及びその駆動方法について、添付図面を参照して説明する。本発明は、複数の画素がマトリクス状に配列された表示パネルを備えるLCD,PDP,DLPの如くのパネル型画像表示装置に適用できるものであるが、以下では表示パネルとしてアクティブマトリクス型の反射型液晶表示素子を備えた投射型表示装置を例にして説明する。まず、投射型表示装置および反射型液晶表示素子の概略構成について説明する。
【0016】
図1は、反射型液晶表示素子を用いた液晶表示装置を示す概略構成図である。液晶表示装置は、概略、反射型液晶表示素子6、偏光ビームスプリッタ5(以下、PBSという)、投射レンズ
11を含んで構成される。反射型液晶表示素子6は、対向電極(透明電極ともいう)10と、画素電極8との間に液晶9が封止された構造を有する。
【0017】
照明光学系1から射出したS偏光3とP偏光4を含む光2はPBS5に入射する。PBS5にて偏光分離される。S偏光3はPBS5の偏光分離面で反射され、反射型液晶表示素子6側に進行する。P偏光はPBSの偏光分離面を透過する。反射型液晶表示素子6の液晶9は、画素回路7によって画素電極8と対向電極10の間に印加される電圧に応じて入射したS偏光を変調する。対向電極10に入射したS偏光は、画素電極8で反射して対向電極10から射出するまでの過程で変調を受け、P偏光とS偏光からなる光として対向電極10から射出される。対向電極10から射出された光は変調された光であるP偏光成分のみがPBS5を通過し、S偏光成分はPBS5で反射される。PBS5を通過したP偏光は投射レンズ11によって射出され、射出光12はスクリーン13上に投射されて画像が表示される。なお、後述する出力光の強度とは、スクリーン13上で測定した出力光の照度をいう。
【0018】
図2はデジタル駆動の反射型液晶表示素子6における各画素の駆動回路構成を示す図である。反射型液晶表示素子6の個々の画素は画素電極8と対向電極10の間に液晶9がはさまれた構造になっている。破線で示した画素回路7は、サンプルホールド部16と電圧選択回路17からなる。サンプルホールド部16はSRAM構造のフリップフロップよりなる。サンプルホールド部16は列データ線Dと行選択線Wとに接続されている。サンプルホールド部16の出力は電圧選択回路17へと接続されている。電圧選択回路17はブランキング電圧線V0、駆動電圧線V1に接続されている。電圧選択回路17は画素電極8へと接続され、画素電極8に所定の電圧を与える。対向電極10の電圧の値は共通電圧Vcomと呼ばれている。
【0019】
図3は以下の各の実施形態における反射型液晶表示素子6の入力電圧と出力光の強度との関係を示す図である。
図3において、横軸は入力電圧であり、画素電極8と対向電極10との間の電位差、すなわち液晶9の駆動電圧を示す。縦軸は、液晶9から射出される出力光の強度を示す。液晶9から射出される出力光の強度が大きくなり始める電圧が
閾値電圧Vthである。電圧が0(たとえば、画素電極8と対向電極がともにGND)のときは、出力光の強度が少なく、黒状態(ブランキング電圧)であり、出力光が飽和し始める電圧が飽和電圧Vw(白レベルである。)である。
【0020】
<第1の実施形態>
図4は本発明の第1の実施形態に係る駆動回路(駆動装置)を示すブロック図である。
図5は第1の実施形態における階調表現を説明するための図である。
図5は入力された映像信号データのビット数を8ビットとした場合における各プロセス部における階調表現の例を示している。
図6は第1の実施形態における駆動パターンを示す図である。
図7は第1の実施形態における駆動階調テーブルを示す図である。
図8は第1の実施形態における誤差拡散フローを示す図である。
図9は第1の実施形態における誤差拡散図を示す図である。
図10は第1の実施形態におけるフレームレートコントロールフローを示す図である。
図11は第1の実施形態におけるフレームレートコントロールテーブルを示す図である。
【0021】
図4において、Nビットの入力された映像信号データは、ルックアップテーブル部21にて、Nより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換される。ここで、Mはサブフレーム数を2進数で表したときのビット数、Dは誤差拡散処理部23により補間されるビット数、Fはフレームレートコントロール部24により補間されるビット数を表している。なおN、M、F、Dは整数である。
【0022】
図5の例では、入力された映像信号データのビット数は8ビット(N=8)、誤差拡散処理部23にて補間されるビット数は4ビット(D=4)、フレームレートコントロール部24にて補間されるビット数は2ビット(F=2)としている。サブフレーム数を2進数で表した場合のビット数は4ビット(M=4)、駆動階調は12個(黒を含まない)としている。
【0023】
ここでルックアップテーブル部21の動作を説明する。一般的に映像信号はガンマ補正がかけられている。画像表示装置側ではガンマ補正がかけられた映像信号に対し逆ガンマ補正処理を施してリニアな階調に戻すことが必要である。逆ガンマ補正とは入力Xに対して出力がXの2.2乗となるような補正である。この場合、出力特性は「ガンマ2.2」であると以下表現する。ルックアップテーブル部21は反射型液晶表示素子6の入出力特性を変換してガンマ2.2の出力特性を有する液晶表示装置を実現する機能を担っている。ルックアップテーブルは、10ビットの出力が、任意の出力特性(例えばガンマ2.2)となるようにあらかじめ調整されている。例えば、第1の実施形態では
図7に示す12個の駆動階調(黒を含まない)のそれぞれの駆動による画像を
図1に示す液晶表示装置で投影し、スクリーン13上の照度を照度計等でそれぞれ測定しておく。それぞれの駆動階調間の照度を6ビット(M+D=6)(64階調)で直線補間することによって、0〜768の階調毎の照度データが予測される。それらの照度データから任意の出力特性(例えばガンマ2.2)となるような256個のデータを選び、あらかじめルックアップテーブルとして保持されているものとする。
【0024】
ルックアップテーブル部21は、256x10ビット(すなわち、「2の8乗」階調x(4+2+4)ビット)のルックアップテーブルを有している。ここで、「2の8乗」階調x(4+2+4)ビットとは、「2のN乗」階調x(M+F+D)ビットに対してN=8、M=4、F=2、D=4の値を代入したものに相当する。ルックアップテーブル部21は、入力された8ビットの画像データを、10ビットのデータに変換して出力する。
【0025】
図4に戻り、ルックアップテーブル部21にて(M+F+D)ビットに変換された映像信号データは、誤差拡散部23により下位Dビットの情報を周辺画素に拡散することによって、(M+F)ビットのデータに変換される。
図5の例では、変換された10ビットのデータは、誤差拡散部23にて、下位4ビットの情報を周辺画素に拡散し上位6ビットのデータに量子化して出力される。
【0026】
誤差拡散法とは、表示すべき映像信号と実表示値との誤差(表示誤差)を周辺の画素に拡散することで階調不足を補う方法である。第1の実施形態においては、表示すべき映像信号の下位4ビットを表示誤差とし、
図8のように右隣の画素に表示誤差の7/16を、左下の画素に表示誤差の3/16を、直下の画素に表示誤差の5/16を、右下の画素に表示誤差の1/16を加える。
【0027】
誤差拡散部23の動作を
図9でより詳しく説明する。ある座標の映像信号は上述のように誤差を拡散するとともに、以前の映像が拡散した誤差が加算される。入力された10ビットのデータは、まず、以前の映像が拡散した誤差が誤差バッファにより加算される。入力映像信号データは誤差バッファの値が加算された後、上位の6ビットと下位の4ビットに分割される。
【0028】
分割された下位の4ビットの値を以下に示す。右側の値は表示誤差である。
下位4ビット 表示誤差
0000 0
0001 +1
0010 +2
0011 +3
0100 +4
0101 +5
0110 +6
0111 +7
1000 −7
1001 −6
1010 −5
1011 −4
1100 −3
1101 −2
1110 −1
1111 0
【0029】
分割された下位の4ビットの値に対応する表示誤差は、
図9のように誤差バッファへと加算され保持される。また、分割された下位の4ビットの値に対してスレッショルド比較を行ない、値が1000
以上の場合(上記の左部の値が1000である行以降の行)、上位6ビットの値に1が加算される。そして、上位の6ビットのデータが誤差拡散部から出力される。
【0030】
図4に戻り、誤差拡散部23にて(M+F)ビットに変換された映像信号データは、フレームレートコントロール部24に入力される。フレームレートコントロール部24はフレームレートコントロールテーブルを備えている。フレームレートコントロール部24では、下位Fビットの値と、画素の位置情報及びフレームのカウント情報から、フレームレートコントロールテーブル内の位置を特定し、その値(1または0の値、以下0/1と記載する。)が上位Mビットに加えられ、Mビットのデータに変換される。ここで、フレームレートコントロール方式とは、表示素子の1画素の表示に対してm(m:m≧2、自然数)フレームを1周期として、その周期のn(n:n>0、m>n、自然数)フレームではオン表示を行ない、残りの(m−n)フレームではオフ表示を行うことにより疑似的に階調を表示させる方式である。
【0031】
図5の例では、誤差拡散部23により出力された6ビットのデータは、フレームレートコントロール部24に入力される。フレームレートコントロール部24は、下位2ビットの情報と、表示エリアでの位置情報およびフレームカウンタ情報より、フレームレートコントロールテーブルから0/1の値を導き、入力された6ビットから分離された上位4ビットの値に加算する。
【0032】
フレームレートコントロール部24の動作を
図10で具体的に説明する。入力された6ビットのデータは、上位の4ビットと下位の2ビットに分割される。入力された6ビットデータの下位2ビットと、画素の表示エリアでの位置情報(すなわち、座標データであるX座標の下位ビットおよびY座標の下位2ビット)と、フレームカウンタの下位2ビットとの合計8ビットの値を用いて、
図11のフレームレートコントロールテーブルで示される“0”か“1”の値を特定する。特定された“0”か“1”の値は上位4ビットのデータに加算して、4ビットデータとして出力される。
【0033】
図5に戻り、フレームレートコントロール部24から出力された4ビットデータは
図4で示されているリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12に制限された後、サブフレームデータ変換部26にて、反射型液晶表示素子6へ転送されるべき12ビットのデータに変換される。12ビットのデータへの変換は駆動階調テーブル27を使用する。
【0034】
図4に戻り、サブフレームデータ変換部26から出力された12ビットのデータは、メモリ制御部28にて、サブフレーム毎に分割されたフレームバッファ29に格納される。フレームバッファ29はダブルバッファの構造になっており、フレームバッファ0にデータを格納中は、フレームバッファ1のデータがデータ転送部を経由して反射型液晶表示素子6に転送されることになり、次のフレームでは、前フレーム期間中に格納されたフレームバッファ0のデータがデータ転送部30を経由して液晶表示素子6に転送され、フレームバッファ1には入力された映像信号データのサブフレームデータ変換部26からの出力データが格納される。
【0035】
駆動制御部31は、サブフレーム毎の処理のタイミング等を制御しており、データ転送部30への転送指示およびゲートドライバ34の制御を行う。データ転送部30は、駆動制御部31からの指示に従い、メモリ制御部28に指示を行ない、指定したサブフレームのデータをメモリ制御部28から受け取りソースドライバ33へと転送する。ソースドライバ33は、1ライン分のデータをデータ転送部30より受け取る毎に、反射型液晶表示素子6の対応する画素回路7へ列データ線D0−Dnを用いて同時に転送する。この時、ゲートドライバ34では、駆動制御部31からの垂直スタート信号(VST)/垂直シフトクロック信号(VCK)により指定された行の行選択線Wyをアクティブにし、指定された行yの全ての列の画素へとデータが転送される。
【0036】
図6を用いて第1の実施形態における駆動パターンについて説明する。
図6は、映像信号が1秒あたり60フレーム、サブフレーム数が12個の場合について示している。WCは液晶表示素子内の全ての画素にサブフレーム毎のデータを転送するデータ転送期間(WC期間)を表している。DCは、液晶を駆動する際の駆動期間(DC期間)を表している。WC期間は694[μs]、DC期間を694[μs]としている。1フレームにおいて、WC期間とDC期間が交互に12回連続する。時間的に先頭からSF1、SF2、…、SF11、SF12の順番でそれぞれのサブフレームに割り当てられた0または1のデータがWC期間にて転送され、DC期間に全ての画素の液晶が駆動される。画素内にサンプルホールドされたデータが0の場合は、その画素はブランキング状態となり、1の場合は駆動状態となる。
【0037】
次に、
図7に示す第1の実施形態における駆動階調テーブルについて説明する。
図6と同様、映像信号は1秒あたり60フレーム、サブフレーム数が12個、データ転送期間(WC期間)は694[μs]、駆動期間(DC期間)を694[μs]としている。
図7は駆動階調に対するサブフレーム毎のDC期間の状態を示している。
図7の縦の欄の階調とは、フレームレートコントロール部24で得た4ビットのデータであってリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12で制限されたものである。SF1−SF12は1フレーム内のサブフレームの順番を表している。DC期間の欄が1の場合は駆動状態であることを示す。DC期間の欄が0の場合はブランク状態であることを示す。
図7の縦の欄に示す階調が1の場合、第1のサブフィールドであるSF1のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF1とSF2だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える高くなる毎に駆動状態となるサブフレームが増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。言い換えると、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが時間的に後方に増えていく。
【0038】
図6、
図7での特徴は、動画擬似輪郭の原因となるバイナリビットパルスを用いず、すべて同じ幅のステップビットパルスを用いている点である。バイナリビットパルスとは各サブフィールドに対して重みが2n (n=0、1、2、3…)で表されるいわゆる“バイナリの重み付け”を行うものである。パルス幅の比が1、2、4、8、16のパルスがあるような場合、パルス幅の比が[2、16]のパルスを駆動状態とし、[1、4、8]のパルスをブランキング状態とすることにより、輝度“18”を表現することができる。この例では、5個のパルスで、31レベルの輝度を表現でき、少ないパルス数でも、多くの階調を表現することが可能である。一方、ステップビットパルスとは、1、2、4、8、16のバイナリビットパルスがある場合、32、32、32、32、32、32、32のような同じ重み付けのパルスのことをいう。すべてバイナリビットパルスにする場合と比較して、ステップビットパルスを併用することで動画擬似輪郭を軽減する効果がある。
【0039】
ところで第1の実施形態においては、表示素子としてアクティブマトリクス型の反射型液晶表示素子6を備えた投射型表示装置を例にして説明している。ここで、
図7の階調駆動テーブルで液晶を駆動する場合の特徴を説明する。
図7において、階調がKであるとする。するとSF1からSFKまでが1(駆動状態)となる。SF1からSFKまでの1は、ほぼ連続したオン状態とみなされる結果、K(階調数)と出力光の関係はほぼ
図3に示す反射型液晶表示素子6の入力電圧と出力光の強度との関係に近いカーブを描く。これは、ルックアップテーブル部21の動作に有利に作用する。すなわち、反射型液晶表示素子6の入力電圧と出力光の強度との関係はルックアップテーブル部21が目標としているガンマ2.2のカーブに比較的近いため、ルックアップテーブル部21にてガンマ2.2のカーブに変換する負担が少なくなる。以上の特徴は、透過型液晶素子においても同様である。
【0040】
図12は、従来のデジタル駆動での動画擬似輪郭の発生を説明するための図である。1フレームあたりのサブフレーム数は12である。従来のデジタル駆動の場合、階調を多く表現するために、バイナリビットパルスを用いる必要がある。動画擬似輪郭とは、隣り合った画素の似たような階調において、片方の画素でのバイナリビットパルスの多くが駆動状態であり、もう片方の画素でのバイナリビットパルスの多くがブランキング状態である場合、視線を動かした時や、顔のアップ等が動いたときに、意図しない輝度が眼で知覚されることをいう。
【0041】
図12にあるように、例えば隣り合った輝度が近い階調の画素が隣り合っているような場合、視線を動かした時に、意図しない輝度が知覚されてしまうことがある。
図12の例では、輝度“127”の画素と輝度“128”の画素とが隣り合っている場合、視線がAやBの場合(視線移動がない場合)は意図した輝度が知覚される。しかしながら、CやFのように視線が動いた場合、Cでは輝度“159”とし知覚され、Fでは輝度“96”として知覚されてしまう。この現象を動画擬似輪郭と呼ぶ。この現象は、特に、人物の顔が動いたときのような場合に、顔の輪郭に沿って等高線のような線が浮かび上がってしまい、画質劣化の原因であった。
【0042】
図13は第1の実施形態の液晶表示装置における動画擬似輪郭を説明するための図である。視線の方向は、
図11の従来例での視線方向と同じにしてある。視線方向を動かした場合でも、輝度が著しく変化しないため、動画擬似輪郭はほとんど知覚されない。
【0043】
図14は第1の実施形態における信号処理を示す図である。
図15は第1の実施形態における反射型液晶表示素子6の極性反転駆動を示す図である。
【0044】
以下
図2、
図4、
図6を参照しつつ、
図14において信号処理を説明する。
図14において、時刻T0にて垂直同期信号Vsyncがアクティブになり、最初に、時刻T0−T1の期間にてサブフレーム1(SF1)のデータを反射型液晶表示素子6に転送する。この期間(T0−T1)が転送期間WCとなる。転送期間WCの間、反射型液晶表示素子6は画素内のサンプルホールドされた値に関わらず、ブランキング状態とする必要があり、V0/V1/Vcomは同じ電圧(ここではGND)を設定する。ここで、V0はブランキング電圧、V1は駆動電圧、Vcom(共通電圧)は液晶の対向電極10の電圧である。時刻T1にて転送が終わり、次の期間(T1−T3)は駆動期間DCとなる。時刻T2は期間(T1−T3)のちょうど中間となり、期間(T1−T2)と期間(T2−T3)は同じ時間となる。期間(T1−T2)ではV1がVw、V0/VcomがGNDとなるように、また、期間(T2−T3)では期間(T1−T2)とは反対に、V1がGND、V0/VcomがVwとなるように電圧制御部32にて制御される。
【0045】
画素回路7内のサンプルホールドの値が“0”の場合、画素回路7内の電圧選択回路17にてV0が画素電極8に印加される。期間T1−T2では、画素電極電圧Vpeと対向電極電圧VcomはともにGNDとなる。液晶9にかかる電圧は0[v]となり、液晶の駆動状態はブランキング状態となる。
【0046】
画素内のサンプルホールドの値が“1”の場合、画素回路7内の電圧選択回路17にてV1が画素電極8に印加される。期間T1−T2では、画素電極電圧VpeはVw、対向電極電圧VcomはGNDとなる。液晶9にかかる電圧は+Vw(対向電極基準)となり、液晶は駆動状態となる。期間T2−T3では、画素電極電圧VpeはGND、対向電極電圧VcomはVwとなり、液晶9にかかる電圧は−Vw(対向電極基準)となり、駆動状態となる。
【0047】
液晶に同じ電圧で方向の異なる電圧(+Vw/−Vw)を同じ期間印加することにより、長時間平均して液晶に印加する電圧を+Vw+(−Vw)=0[v]とすることにより、焼き付きを防止している。SF2−SF12もSF1の期間T0−T3と同様な電圧制御を行う。
図15において、期間(T1−T2)に相当する状態、すなわち、V1がVw、V0/VcomがGNDとなるような状態をDCバランス+と表している。また、期間(T2−T3)に相当する状態、すなわち、V1がGND、V0/VcomがVwとなるような状態をDCバランス−と表している。
【0048】
次に、反射型液晶表示素子を用いた液晶表示装置の駆動回路にフレームレートコントロール部をもうけたことによる効果を説明する。
図16は、反射型液晶素子における横方向電界の発生メカニズムを説明する図である。
図16に示されるように反射型液晶素子の画素電極8A、8Bはシリコン基板43の上に形成されている。
【0049】
デジタル駆動の場合、隣り合った画素間で駆動状態(駆動/ブランキング)が異なることが頻繁に起こる。例えば、あるフレームにおいて隣り合った画素の階調がそれぞれ“5”(画素PA)と“6”(画素PB)の場合を仮定する。またDCバランス+で、対向電極10がV0の場合を考える。すなわち、
図15においてDCバランス+であるから、V0=Vcom=0(V)、V1=Vwである。サブフレーム6の時刻では、隣り合った画素の駆動状態が異なる。
図7からわかるように、画素PAはブランキング状態なので、画素電極8AにはV0の電圧がかかり、画素PBは駆動状態なので、画素電極8BにはV1の電圧がかかっている。
【0050】
画素電極8AにはV0の電圧がかかり、画素電極8BにはV1の電圧がかかっているときの液晶層の電界41の状態を
図16は示している。画素PBの画素電極8B(電位:Vw)と対向電極10(電位:0(V))間には電位差が生じ、液晶は所定量の回転をさせられる。このとき、画素PAの画素電極8A(電位:0(V))と画素PBの画素電極8B(電位:Vw)間にも電位差が生じ、横方向に電界が生じてしまう。このような、横方向電界42は、画素間の液晶の動きに意図しない混乱を発生させる。上記の現象は、画質劣化の一因であった。
【0051】
フレームレートコントロールを用いることで上記の不具合を解消することができる。
図17はフレームレートコントロールにより、横方向電界が均等に分散されることを説明する図である。
【0052】
図17では、フレームレートコントロール部への入力データ((M+F)ビット)の下位Fビットの値が“01”である場合が例示されている。フレーム毎に4個のテーブル(フレーム0〜3)が用いられる。それぞれのフレームにおいて、隣り合った画素間で駆動状態(駆動またはブランキング)が異なる場合、駆動状態が「1」(駆動状態)である画素から駆動状態が「0」(ブランキング状態)である画素の方向に横方向の電界が生じる。画素間の横方向電界の方向は
図17において矢印で表されている。4個のフレームでの横方向電界の状態を重ね合わせたのが、一番右の状態である。すなわち、4フレームの平均では、すべての画素間での横方向電界は打ち消しあっている。以上のように、フレームレートコントロールを用いることにより、画質劣化の一因である横方向電界を打ち消すことが可能となった。
【0053】
<第2の実施形態>
図18は第2の実施形態における駆動階調テーブルを示す図である。第2の実施形態においては、階調駆動テーブルが異なる以外は、第1の実施形態と同じである。
【0054】
図18は
図7同様に、駆動階調に対するサブフレーム毎のDC期間の状態を示している。
図7と同様、1秒あたり60フレームの映像信号で、サブフレーム数が12個の場合について説明する。データ転送期間(WC期間)は694[μs]、駆動期間(DC期間)を694[μs]とする。すなわち、
図18の縦の欄の階調とは、フレームレートコントロール部24で得た4ビットのデータであってリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12で制限されたものである。SF1−SF12は1フレーム内のサブフレームの順番を表している。DC期間の欄が1の場合は駆動状態であることを示す。DC期間の欄が0の場合はブランク状態であることを示す。
図18の縦の欄に示す階調が1の場合、最後のサブフレームでああるSF12のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF11とSF12だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える高くなる毎に駆動状態となるサブフレームが増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。言い換えると、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが時間的に前方に増えていく。
【0055】
第2の実施形態において、動画疑似輪郭が抑制される効果、ルックアップテーブル部21にてガンマ2.2のカーブに変換する負担が少なくなるという効果、フレームレートコントロールを用いることにより画質劣化の一因である横方向電界を打ち消すことが可能となったという効果は、第1の実施形態と同等である。
【0056】
第2の実施形態においては、新たな効果が得られる。
図19は第1の実施形態と第2の実施形態において、映像信号において高い階調と低い階調が交互に続くような場合を示す。
図19においてF1はある時点の映像のフレームを示し、F2はF1の次のフレームを示す。H、Fはそれぞれ高い階調の映像信号、低い階調の映像信号が
図7の階調駆動テーブルにしたがって表示されている様子を模式的に示している。第1の実施形態の場合(
図19のAの場合)、高い階調の長い駆動期間(H)の後のブランキング期間(PA)が短いため、液晶表示素子の液晶応答の関係で表示される輝度が黒レベルまで落ちきらず、次フレームの低い階調の駆動期間(L)で表示される輝度を表示されるべき輝度よりも押し上げてしまう。これは、画質劣化の原因となった。第2の実施形態の場合(
図19のBの場合)、高い階調の長い駆動期間(H)の後のブランキング期間(PB)が長いため、第1の実施形態のような画質劣化の原因となるような状態が起こり難いという効果が得られる。
【0057】
<第3の実施形態>
図20は第3の実施形態における駆動階調テーブルを示す図である。
図21は第3の実施形態における駆動階調テーブルを示す他の図の例である。第3の実施形態においては、階調駆動テーブルが異なる以外は、第1の実施形態と同じである。
【0058】
図20、
図21は
図7同様に、駆動階調に対するサブフレーム毎のDC期間の状態を示している。
図7と同様、1秒あたり60フレームの映像信号で、サブフレーム数が12個の場合について説明する。データ転送期間(WC期間)は694[μs]、駆動期間(DC期間)を694[μs]である。すなわち、
図20、
図21の縦の欄の階調とは、フレームレートコントロール部24で得た4ビットのデータであってリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12で制限されたものである。SF1−SF12は1フレーム内のサブフレームの順番を表している。DC期間の欄が1の場合は駆動状態であることを示す。DC期間の欄が0の場合はブランク状態であることを示す。
図20において、SF6が「1/0」、SF7が「0/1」と記載されているのは、SF6が駆動状態でありSF7がブランキング状態であるかまたはSF6がブランキング状態でありSF7がブランキング状態であることを示している。
【0059】
図20の縦の欄に示す階調が1の場合、中央のSF6(あるいはSF7)のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF6とSF7だけが駆動状態となる。階調が3の場合、SF5とSF6とSF7(あるいはSF6とSF7とSF8)だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える毎に駆動状態となるサブフレームが前後方向に増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。言い換えると、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが中央部の階調から順次、時間的に前方または後方に増えていく。
【0060】
図21の縦の欄に示す階調が1の場合、SF3のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF2とSF3、またはSF3とSF4だけが駆動状態となる。階調が3の場合、SF2とSF3とSF4だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える毎に駆動状態となるサブフレームが前後方向に増えていく。階調が5の場合、SF1が駆動状態になっているので、駆動状態となるサブフレームを前に増やすことはできない。そこで階調が6以上のときは、階調が5で駆動状態であったSF5の後のフレームであるSF6が駆動状態となる。以下、階調の数が増える毎に駆動状態となるサブフレームが後方向に増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。
【0061】
図21では縦の欄に示す階調が1の場合、SF3のみが駆動状態となったが、SF3以外の他のサブフレームが最初に駆動状態になってもよい。ある階調でSF1またはSF12が駆動状態になった場合、駆動状態となるサブフレームを前または後に増やすことはできない。そのときは、ある階調で駆動状態になっているサブフレームの後または前のサブフレームが次の上の階調において駆動状態となる。言い換えると、階調が1のときに任意のサブフレームが駆動状態となり、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが順次、時間的に前方または後方に増えていく。
【0062】
第3の実施形態の場合、
図19で説明した効果に関しては、第1の実施形態と第2の実施形態との間の程度の効果を有する。それ以外の効果については第1の実施形態と同等の効果を有する。
【0063】
<第4の実施形態>
図22は本発明の第4の実施形態に係る駆動回路を示すブロック図である。本実施形態に係る駆動回路では、
図4に示す第1の実施形態の駆動回路と比較すると、ルックアップテーブル部21が、信号変換部22に変更されている点が異なっている。誤差拡散部23以降の構成は第1の実施形態の駆動回路と同じである。
【0064】
図23は、第4の実施の形態における駆動パターンの1例を示す図である。本実施形態の駆動パターンは、第1の実施形態の駆動パターンと同様、映像信号が1秒あたり60フレーム、サブフレーム数が12個、データ転送期間(WC期間)が694[μs]である。一方、第1の実施形態の場合、全サブフレームの駆動期間が同じ時間であったのに対し、
図23での各サブフレーム毎の駆動期間(DC期間)の時間は異なっている。
【0065】
図24は第4の実施の形態における各サブフレーム毎の駆動期間(DC期間)が第1の実施の形態に対して変更されていることを説明した図である。
図23、
図24では、駆動階調の設定は第1の実施形態に従っている。すなわち、第1の実施形態における
図7の縦の欄に示す階調が1の場合、第1のサブフレームであるSF1のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF1とSF2だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える高くなる毎に駆動状態となるサブフレームが増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。言い換えると、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが時間的に後方に増えていく。
【0066】
図24において各サブフレーム毎の期間が第1の実施の形態に対して変更されている点について以下に説明する。
図4のルックアップテーブル部21は反射型液晶表示素子6の入出力特性を変換してガンマ2.2の入出力特性を有する液晶表示装置を実現する機能を担っている。第4の実施形態においては、入出力特性の変換機能を「各サブフレーム毎の駆動期間(DC期間)の時間を異ならせる」ことで果たしている。以下、具体的に説明する。
図25は第4の実施の形態において、各サブフレーム期間を調節して、駆動階調毎の輝度がガンマ2.2の線上にあることを表している図である。第4の実施形態では、例えば駆動階調毎の輝度特性が
図25のようなガンマ2.2の線上になるように、あらかじめ、各サブフレーム毎のDC期間を
図24のように設定してある。
【0067】
上記の結果、ルックアップテーブル部に対して逆ガンマ補正の機能を省くことができる。その結果、ルックアップテーブルを用いるルックアップテーブル部21からルックアップテーブルを使用しない信号変換部22に変更することができる。ルックアップテーブル部21を信号変換部22に変更することは、コスト削減の効果を有する。
【0068】
以下、信号変換部22を説明する。第4の実施形態においては、補間駆動階調自体にガンマ2.2の輝度特性があるため、
入力階調X:補間駆動階調Y=255(最大入力階調):768(最大補間駆動階調)
の関係式から、下記に示す演算式を用いることが可能となっている。信号変換部22は下記演算式を用いて入力される映像信号データを演算する。
出力データY:(M+F+D)ビット=入力データX × 768 / 255
ここで、768:最大補間駆動階調(すなわち、1100000000)
255:最大駆動階調
ここで、駆動階調とは、
図6、7、18、20、21に表される、素子単体での階調を表している。また、補間駆動階調とは、誤差拡散部およびフレームレートコントロール部にて補間される擬似階調を含む階調を表している。
【0069】
なお、第4の実施形態において、駆動階調の設定は第2、第3の実施形態のような設定も可能である。すなわち、第2の実施形態(
図18)のように、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが時間的に前方に増えていく設定、および第3の実施形態(
図20、
図21)のように、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが中央部または任意のサブフレームから順次、時間的に前方および後方に増えていく設定である。その場合、各サブフレームのDC期間は以下のように変更する。
【0070】
たとえば、第2の実施形態(
図18)に相当する設定の場合、各サブフレーム毎のDC期間は
図20の右の図において数値の並びを上下逆にした順番とする。すなわち、SF12が833[μs]、SF11が763[μs]、……SF2が798[μs]、SF1が868[μs]となるようにしておく。
【0071】
また、たとえば第3の実施形態における
図20に相当する設定の場合、中央のサブフレームから順に
図24の上の方の数値を配分する。具体的には、
図20において、中央のSF6(あるいはSF7)の駆動時間を833[μs]とし、SF7(あるいはSF6)の駆動時間を763[μs]、SF5(またはSF8)の駆動時間を694[μs]とする。最後に、SF1(あるいはSF12)の駆動期間を798[μs]、SF12(あるいはSF1)の駆動期間を868[μs]とする。
【0072】
また、第4の実施形態においても、第1の実施形態での効果は同等に有している。第4の実施形態において、駆動階調の設定を第2の実施形態のように設定した場合、
図19で説明した効果が得られる。駆動階調の設定を第3の実施形態のように設定した場合
図19で説明した効果に関しては、第1の実施形態と第2の実施形態との中間程度の効果を有する。
【0073】
<第5の実施形態>
図26は本実施形態の、デジタル駆動の反射型液晶表示素子6における各画素の駆動回路構成を示す図である。
図2で説明した回路構成に対し、サンプルホールド部が2つになっており、転送用スイッチ部と転送用線が追加されている。反射型液晶表示素子6の個々の画素は画素電極8と対向電極10の間に液晶9がはさまれた構造になっている。破線で示した画素回路7は、サブサンプルホールド部16、電圧選択回路17、転送用スイッチ部18、メインサンプルホールド部19とからなる。サブサンプルホールド部16とメインサンプルホールド部19はSRAM構造のフリップフロップよりなる。サブサンプルホールド部16は列データ線Dと行選択線Wとに接続されている。サブサンプルホールド部16の出力は転送用スイッチ部18へと接続されている。
【0074】
転送用スイッチ部18はトランジスタからなり、サブサンプルホールド部16の出力は転送用スイッチ部18のソース側に接続され、転送用スイッチ部18のドレイン側はメインサンプルホールド部19へと接続される。転送用スイッチ部18のゲート側は転送用線Tに接続されており、転送用線Tがハイになることにより、サブサンプルホールド部16に保持されている情報がメインサンプルホールド部19に転送される。メインサンプルホールド部19の出力は電圧選択回路17へと接続されている。電圧選択回路17はブランキング電圧線V0、駆動電圧線V1に接続されている。電圧選択回路17は画素電極8へと接続され、画素電極8に所定の電圧を与える。メインサンプルホールド部に保持されてる2値の情報により、例えば、メインサンプルホールド部に保持されている情報が“0”である場合は、ブランキング電圧線V0が選択され、“1”の場合は、駆動電圧線V1が選択され、画素電極へと接続される。対向電極10の電圧の値は共通電圧Vcomと呼ばれている。
【0075】
図27は本実施形態に係る駆動回路(駆動装置)を示すブロック図である。
図4で説明した駆動回路の構成に対し、転送用線Tが追加された以外は同じ構成となっている。
【0076】
図28を用いて本実施形態における駆動パターンについて説明する。
図28は、映像信号が1秒あたり60フレーム、サブフレーム数が12個の場合について示している。WCは液晶表示素子内の全ての画素にサブフレーム毎のデータを転送するデータ転送期間(WC期間)を表している。DCは、液晶を駆動する際の駆動期間(DC期間)を表している。WC期間を1282[μs]、DC期間を1282[μs]としている。1フレームにおいて、最初にSF1のデータ転送(WC期間)が行われ、画素回路内のサブサンプルホールド部に保持される。すべての画素へのデータ転送が終了した後、転送用信号Tがハイとなり、すべての画素のサブサンプルホールド部に保持されているデータがメインサンプルホールド部に転送される。その後、SF2のデータ転送(WC期間)行われ、同時にSF1の駆動(DC期間)がWC期間と同じ期間行われる。
【0077】
このように、WC期間とDC期間が並列にWC期間(DC期間)分だけシフトして12回連続する。時間的に先頭からSF1、SF2、…、SF11、SF12の順番でそれぞれのサブフレームに割り当てられた0または1のデータがWC期間にて転送され、DC期間に全ての画素の液晶が駆動される。画素内にサンプルホールドされたデータが0の場合は、その画素はブランキング状態となり、データが1の場合は駆動状態となる。
【0078】
図29は第5の実施形態における信号処理を示す図である。反射型液晶表示素子6は第1の実施形態と同様に、
図15に示す極性反転駆動を行なう。
【0079】
以下
図26、
図27、
図28を参照しつつ、
図29において信号処理を説明する。
図29において、時刻T0にて垂直同期信号Vsyncがアクティブになり、最初に、時刻T0−T2の期間にてサブフレーム1(SF1)のデータを反射型液晶表示素子6に転送する。この期間(T0−T2)が転送期間WCとなる。時刻T1にてある画素(x,y)にデータが転送され、サブサンプルホールド部に保持される。時刻T2にて転送用信号Tがハイとなり、すべての画素内において、サブサンプルホールド部に保持されているデータがメインサンプルホールド部に転送される。時刻T2−T4の期間では、次のサブフレーム2(SF2)のデータが転送される。同時に、時刻T2−T4の期間はサブフレーム1(SF1)の駆動期間DCとなり、期間(T2−T3)では、DCバランス+駆動が、期間(T3−T4)ではDCバランス−駆動が行われ、期間(T2−T3)では、V0/VcomがGNDに、V1がVwとなるように、また、期間(T3−T4)では、V1がGNDに、V0/VcomがVwとなるように電圧制御部にて制御される。
【0080】
上記の結果、データ転送期間をブランキング期間とする必要がなくなるので、高輝度な液晶表示装置を提供することができる。
【0081】
なお、第5の実施形態において、駆動階調の設定は第1の実施形態の設定に限定されず、第2、第3の実施形態のような設定が可能であることは言うまでもない。また、第4の実施形態のようにルックアップテーブル部の代わりに信号変換部を備え、各サブフィールドの駆動期間の時間を異ならせることにより逆ガンマ補正を行う構成にも対応することができる。この場合、実施形態4で示した各サブフィールド同士の駆動期間の長さの比率は変更せず、各サブフィールドの駆動期間を一定の割合で長く設定する、例えば2倍とすることで、逆ガンマ補正の効果を保った状態で更に高輝度化を行うことができる。
【0082】
第1〜第5の実施形態において、入力された映像信号データのビット数をN、表示素子の駆動可能な階調数を2進数で表したときのビット数をM、誤差拡散処理により誤差として拡散されるビット数をD、フレームレートコントロールにより擬似的な階調として表現されるビット数をFとしたとき、N=8、M=4、 D=4、F=2である場合について説明した。しかし、N、M、D、Fの値は上記の値に限定されず、種々の値を用いて実施することができる。そのなかでも、N=8〜12、M=4〜6、D=4〜8、F=2〜3であることがより好ましい。