(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、光の照射によって硬化する液体を前記媒体に吐出するノズルと、前記媒体に着弾した前記液体に前記光を照射する照射部と、前記照射部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記媒体に形成された画像の測色を行う測色器であって、基準を読み取ることによってキャリブレーションを行う測色器と、を備え、前記照射部は、前記測色器が前記キャリブレーションを実行する時に前記光を照射することを特徴とする液体吐出装置。
このような液体吐出装置によれは、測色器による測色の精度を向上させることができる。
【0009】
かかる液体吐出装置であって、前記ノズル及び前記照射部は、前記搬送方向と交差する移動方向に移動可能なキャリッジに設けられており、前記キャリッジを印刷領域に移動させた状態で、前記照射部が前記光を照射し、前記測色器が前記キャリブレーションを行うことが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、印刷時と同じ状況でキャリブレーションを行うことができる。
【0010】
かかる液体吐出装置であって、前記照射部が前記光を照射するとき、前記印刷領域上には前記搬送機構によって前記媒体が搬送されていることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、光の反射などの条件をさらに印刷時と同じにすることができる。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記搬送機構は、前記照射部と前記測色器との間に、前記媒体を媒体面の法線方向に屈曲させる屈曲部を有し、前記測色器は、前記照射部の前記光の照射位置と、前記屈曲部とを結ぶ直線よりも前記媒体に近い位置に光の受光部を有することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、測色を行う際に光の照射の影響を受け難くすることができる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記測色器によって測色を行う場合には、測色を行わない場合よりも、前記媒体への画像の印刷速度を遅くし、且つ、前記照射部の照射強度を低くすることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ドットへの光の照射量を確保しつつ、測色する際の光の照射による影響を小さくできる。
【0013】
以下の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンター(以下、プリンター10ともいう)を例に挙げて説明する。
【0014】
===第1実施形態===
以下、本実施形態のプリンター10について説明する。なお、本実施形態のプリンター10は、サイズの大きな媒体(例えばJIS規格のA2以上のサイズの用紙)に印刷を行うためのプリンターである。また、本実施形態のプリンター10は、液体の一例として、光の一種である紫外線(以下、UV)の照射を受けると硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、媒体に画像を印刷する。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、CMYKの4色のUVインクを用いて画像を印刷する。以下の説明において、下方側とは、プリンター10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、用紙Pが供給される側を供給側(後端側)、用紙Pが排出される側を排紙側(先端側)として説明する。
【0015】
<プリンターの構成について>
図1は、本実施形態にかかるプリンター10の外観の構成例を示す図である。
図2は、プリンター10の構成を示すブロック図である。
図3は、プリンター10における駆動系と制御系の関係を示す図である。
図4は、搬送経路における構成を横から見た概略図である。
【0016】
本実施形態のプリンター10は、
図1に示すように、一対の脚部11と、当該脚部11に支持される本体部20を有している。脚部11には、支柱12が設けられていると共に、回転自在なキャスタ13がキャスタ支持部14に取り付けられている。
【0017】
本体部20は、不図示のシャーシに支持される状態で、内部の各種機器が搭載されており、それらが外部ケース21によって覆われている。また、
図2に示すように、プリンター10の本体部20には、ロール駆動ユニット30、搬送ユニット40、キャリッジユニット50、ヘッドユニット60、照射ユニット70、検出器群80、及び、コントローラー90が設けられている。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター10は、コントローラー90によって各ユニット(ロール駆動ユニット30、搬送ユニット40、キャリッジユニット50、ヘッドユニット60、照射ユニット70)を制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター10内の状況は検出器群80によって監視されており、検出器群80は、検出結果をコントローラー90に出力する。コントローラー90は、検出器群80から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0018】
ロール駆動ユニット30は、ロール体RPを回転させるためのものであり、本体部20のロール搭載部22に設けられている。ロール搭載部22は、
図1に示すように、本体部20のうち、背面側かつ上方側に設けられていて、上述の外部ケース21を構成する一要素である開閉蓋23を開くことにより、その内部にロール体RPを搭載し、ロール駆動ユニット30によってロール体RPを回転駆動させることが可能となっている。
また、ロール駆動ユニット30は、
図3及び
図5に示すように、回転ホルダ31と、ギヤ輪列32と、ロールモーター33とを有している。なお、
図5は、回転ホルダ31と、ロールモーター33の外観の構成例を示す図である。
回転ホルダ31は、ロール体RPに設けられている中空孔RP1の両端側から挿入されるものであり、ロール体RPを両端側から支持すべく、一対設けられている。
ロールモーター33は、一対の回転ホルダ31のうち、一端側に位置する回転ホルダ31aに対して、ギヤ輪列32を介して駆動力(回転力)を与えるものである。
【0019】
搬送ユニット40は、媒体(例えば、紙)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。搬送ユニット40は、
図3及び
図4等に示すように、搬送ローラー対41と、ギヤ輪列42と、PFモーター43とを有している。
搬送ローラー対41は、搬送ローラー41aと、従動ローラー41bとを有していて、これらの間で、ロール体RPから引き出される用紙P(ロール紙)を挟持可能となっている。
PFモーター43は、搬送ローラー41aに対して、ギヤ輪列42を介して駆動力(回転力)を与えるものである。
また、
図4に示すように、搬送ローラー対41よりも下流側(排紙側)には、プラテン45が設けられていて、用紙Pは当該プラテン45上をガイドさせられる。また、プラテン45には、ヘッド61が対向するように配設されている。このプラテン45には、吸引孔45aが形成されている。一方、吸引孔45aは、吸引ファン46に連通可能に設けられていて、吸引ファン46が作動することによって、ヘッド61側から吸引孔45aを介して空気が吸引される。それにより、プラテン45上に用紙Pが存在する場合には、当該用紙Pを吸引保持することが可能となっている。
【0020】
キャリッジユニット50は、ヘッド61を搬送方向と交差する方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。本実施形態のキャリッジユニット50は、キャリッジ51と、キャリッジ軸52と、その他不図示のキャリッジモーター、ベルト等を有している。
【0021】
キャリッジ51は、各色のインク(UVインク)を貯留するためのインクタンク53を有していて、このインクタンク53には、図示しないチューブを介して、本体部20の前面側に固定的に設けられているインクカートリッジ(図示省略)からインクが供給可能となっている。また、
図3、
図4に示すように、キャリッジ51の下面には、インク滴を吐出可能なヘッド61が設けられている。
【0022】
ヘッドユニット60は、媒体にインク(本実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット60は、複数のノズルを有するヘッド61を備える。ヘッド61の各ノズルには、不図示のピエゾ素子が対応して配置されている。このピエゾ素子の作動により、ノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、ヘッド61の構成の詳細は後述する。
【0023】
ヘッド61はキャリッジ51に設けられているため、キャリッジ51が移動方向に移動すると、ヘッド61も移動方向に移動する。そして、移動方向に移動中のヘッド61がUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体に形成される。
【0024】
照射ユニット70は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット70からのUVの照射を受けることによって硬化する。本実施形態の照射ユニット70は、2つの照射部(照射部72a、72b)を備えている。照射部72a、72bは、共にキャリッジ51に設けられているため、キャリッジ51が移動方向に移動すると、照射部72a、72bも移動方向に移動する。そして、この移動の際に照射部72a、72bは、UVを照射する。なお、照射部72a、72bの詳細については後述する。
【0025】
検出器群80は、回転検出部81、回転検出部82、及び測色器83を有している。
回転検出部81は、ロールモーター33の回転状態を検出し、回転検出部82は、PFモーター43の回転状態を検出する。この回転検出部81及び回転検出部82は、それぞれ、ロータリーエンコーダーを用いている。例えば、回転検出部81は、円盤状スケール81aと、ロータリーセンサー81bとを有している。円盤状スケール81aは、その周方向に沿って一定の間隔毎に、光を透過させる透光部と、光の透過を遮断する遮光部とを有している。また、ロータリーセンサー81bは、不図示の発光素子と、同じく不図示の受光素子と、同じく不図示の信号処理回路を主要な構成要素としている。
【0026】
図6Aは、ロールモーター33が正転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。
図6Bは、ロールモーター33が逆転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。本実施形態では、ロータリーセンサー81bからの出力により、
図6A、
図6Bに示すような、互いに位相が90度異なるパルス信号(A相のENC信号,B相のENC信号)がコントローラー90に入力される。このパルス信号から、ロールモーター33が正転状態にあるのか、又は逆転状態にあるのかを、位相の進み/遅れによって検出可能となっている。
【0027】
また、回転検出部82は、円盤状スケール82aと、ロータリーセンサー82bとを有している。この回転検出部82の各構成要素、及び、回転検出部82によるPFモーター43の回転検出の動作は回転検出部81と同様であるので説明を省略する。
【0028】
測色器83は、測色用パターンなど用紙Pに形成された画像の測色を行うためのものであり、
図3、
図4に示すように、測色器83は、キャリッジ51、及び、キャリッジ51のヘッド61、照射部72a、72bよりも搬送方向の下流側に設けられている。言い換えると、測色器83は、プリンター10における印刷領域よりも搬送方向の下流側に設けられている。そして、測色器83は、用紙Pに形成された画像の測色を行い、得られた測色値(測色結果)をコントローラー90に出力する。なお、測色器の詳細については後述する。
【0029】
また、検出器群80は、不図示であるがリニア式エンコーダー、紙検出センサー、および光学センサー等を有している。リニア式エンコーダーは、キャリッジ51の移動方向の位置を検出する。紙検出センサーは、給紙中の用紙Pの先端の位置を検出する。光学センサーは、キャリッジ51に取付けられている発光部と受光部により、用紙Pの有無を検出する。また、光学センサーは、キャリッジ51によって移動しながら用紙Pの端部の位置を検出し、用紙Pの幅を検出することができる。
【0030】
コントローラー90は、プリンター10の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー90は、
図2に示すように、インターフェイス部91と、CPU92と、メモリー93と、ユニット制御回路94とを有する。インターフェイス部91は、外部装置であるコンピューター110とプリンター10との間でデータの送受信を行う。CPU92は、プリンター10全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー93は、CPU92のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU92は、メモリー93に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路94を介して各ユニットを制御する。
【0031】
印刷を行うとき、コントローラー90は、後述するように移動方向に移動中のヘッド61からUVインクを吐出させるドット形成動作と、搬送方向に紙を搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像を紙に印刷する。なお、このドット形成動作のことを「パス」ともいう。なお、パスの際には、後述するように各照射部からUVを照射することによるドット(UVインク)の硬化も行なわれる。
【0032】
<ヘッド周辺の構成について>
図7は、プリンター10のヘッド周辺の概略図である。
図7に示すように、照射部72a、72bは、ヘッド61を挟むようにして、キャリッジ51の移動方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。また、照射部72a、72bの搬送方向の長さは、ヘッド61のノズル列の長さとほぼ同じになっている。言い換えると、照射部72a、72bは、ヘッド61のノズル列と移動方向に並ぶ位置に設けられている。そして、照射部72a、72bは、ヘッド61とともに移動して、ヘッド61のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射する。本実施形態の照射部72a、72bは、UV照射の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を備えている。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。なお、UV照射の光源としてはLEDには限られず、例えばランプなどを用いてもよい。
【0033】
図8は、ヘッド61の構成の一例の説明図である。ヘッド61の下面には、
図8に示すように、ブラックインクノズル群Kと、シアンインクノズル列Cと、マゼンダインクノズル列Mと、イエローインクノズル列Yとが形成されている。各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では180個)備えている。
【0034】
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、媒体に形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)である場合、k=4である。
【0035】
各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、媒体に着弾してドットを形成する。
【0036】
<印刷手順について>
コントローラー90は、コンピューター110から受信した印刷データを印刷する際、プリンター10の各ユニットに以下の処理を行わせる。なお、以下の処理において、ロール体RPはロール搭載部22に装着されており、ロール体RPから少なくとも用紙Pの先端が搬送ローラー対41の位置まで送り出されていることとする。
【0037】
コントローラー90は、PFモーター43を正転駆動させることによって搬送ローラー41aを回転させる。搬送ローラー41aが所定の回転量にて回転すると、用紙Pは所定の搬送量にて搬送方向に搬送される。なお、このとき、ロール体RPと搬送ローラー対41との間の用紙Pのテンション(張力)を調整するために、ロールモーター33の駆動を制御するようにしてもよい。例えば、ロールモーター33を逆転させると、ロール体RPと搬送ローラー対41との間の用紙Pの弛みを除去できる。また、ロールモーター33を正転させると、搬送ローラー41aが用紙Pを搬送しやすくなる。これは以下の動作の際においても同様である。
【0038】
用紙Pがヘッド61の下部(印刷領域)まで搬送されると、コントローラー90は、用紙Pの搬送を停止し、キャリッジモーター(不図示)を回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ51が移動方向に移動する。また、キャリッジ51が移動することによって、キャリッジ51に設けられたヘッド61及び照射部72a、72bも同時に移動方向に移動する。そして、コントローラー90は、ヘッド61が移動方向に移動している間にヘッド61から断続的にインク滴を吐出させる。このインク滴が、用紙Pにインク滴が着弾することによって、移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。
【0039】
また、コントローラー90は、ヘッド61が移動している間に、移動方向の下流側の照射部(照射部72a又は照射部72b)からUV照射を行なわせる。このUV照射を受けることによって、用紙P上に形成されたドットが硬化する。
【0040】
また、コントローラー90は、ヘッド61が往復移動する合間にPFモーター43を駆動させる。PFモーター43は、コントローラー90からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。そして、PFモーター43は、この駆動力を用いて搬送ローラー41aを回転させる。搬送ローラー41aが所定の回転量にて回転すると、用紙Pは所定の搬送量にて搬送される。つまり、用紙Pの搬送量は、搬送ローラー41aの回転量に応じて定まることになる。
【0041】
このように、コントローラー90は、ヘッド61の往復移動によるドット形成動作(及びUV照射)と用紙Pを搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返して行い、用紙Pの各画素にドットを形成していく。なお、後述するように、コントローラー90は、ドット形成動作(パス)の際に、既に用紙Pに形成済みの画像の測色を測色器83に行わせる。
【0042】
<測色器について>
本実施形態の測色器83は、
図3、
図4に示すように、測色器キャリッジ84、測色ヘッド85、レール86、バッキング87を備えている。
測色器キャリッジ84は、不図示のモーターを備えており、レール86上を移動し、主走査方向(移動方向)に測色ヘッド85を移動させる。
測色ヘッド85は、用紙Pと対向する面に不図示の発光部と受光部を有しており、用紙Pに形成された画像に対して発光部から光を照射し、用紙Pで反射した光を受光部で受光する。これに基づいて、測色器83は、色情報を測定し、色校正用の補正値等を得る。
レール86は、測色器キャリッジ84を移動方向(主走査方向ともいう)に移動させるためのものである。
バッキング87は、測色器83のキャリブレーションに用いるものであり、白色の板状部材で形成されている。なお、用紙Pに形成された画像を測色する時には、測色ヘッド85がバッキング87上の用紙P上を走査して測色を行うことになる。
【0043】
<キャリブレーションについて>
測色器83で画像の色情報を読み取る際に、環境(プリンター10の周囲の明るさなど)によって測色値がずれることがある。そこで、測色器83で基準(本実施形態では、バッキング87の白色)を読み取り、その値が適正であるかどうかを確認するようにしている。そして、ずれている場合には、基準の値が出力されるように調整してから、画像の読み取り作業に入るようにしている。この作業のことをキャリブレーションという。本実施形態では、用紙Pに印刷を行う前(すなわち、測色を行う前)に、キャリブレーションを行なうこととする。
【0044】
<測色時のUV照射の影響について>
本実施形態のプリンター10では、キャリッジ51と、測色器83が搬送方向に並んで設けられている。このため、用紙Pへのドットの形成動作(パス)と、既に媒体に形成された画像の測色を同時に行なうことが可能になっている。なお、前述したように測色器83は、発光部から光を照射し、用紙Pで反射した光を受光部で受光することによって測色を行っている。ところが、照射部72a、72bが照射するUVは光の一種であるので、各照射部のUVの照射が測色器83の測色に悪影響を与える恐れがある。
具体的には、印刷時(パスの際)に照射部72a(又は72b)から照射されるUVが、用紙Pの表面等で反射して、測色ヘッド85の受光部に入射するおそれがある。この場合、測色器83による測色の精度が低下し、正確な測色値が得られなくなってしまう。
【0045】
<測色の動作について>
図9は、測色の動作についてのフロー図である。なお、
図9は、測色用パターン(以下、「カラーパッチCP」ともいう)を用いて補正値を設定する時のフローを示している。
【0046】
まず、コントローラー90は、用紙Pをバッキング87の手前まで搬送させて停止した後、キャリッジ51を印刷領域に移動させる(S101)。なお、このとき用紙Pの先端は、プラテン45上(すなわち印刷領域上)に搬送されていることが望ましい。これは、実際の印刷時とUVの条件(反射条件など)を同等にするためである。
【0047】
次に、コントローラー90は、キャリッジ51の照射部72a(又は72b)からUVを照射させつつ、測色器83の測色ヘッド85にバッキング87の白基準を読み取らせ測色器83のキャリブレーションを実行する(S102)。つまり、照射部72a(72b)からUVを照射している状態で、測色器83のキャリブレーションを行う。
【0048】
キャリブレーションが終了すると、コントローラー90は、キャリッジ51をホームポジション(HP)に移動させる(S103)。その後、コントローラー90は、前述した印刷手順を実行し、用紙Pに画像(ここではカラーパッチCP)の形成を行う(S104)。また、コントローラー90は、既に印刷済みのカラーパッチCPの測色を測色器83に行わせる(S105)。そして、得られた測色値に基づいてプリンター10の補正値を設定する(S106)。
【0049】
このように、本実施形態では、照射部72a(72b)からUVを照射しつつ測色器83のキャリブレーションを行っているので、UV照射によって測色値の精度が低下することを防止できる。
【0050】
なお、通常の印刷時においても、測色を行う場合には、コントローラー90は、印刷領域においてキャリッジ51を移動方向に移動させて画像の形成(ドットの形成及びUV照射)を実行しつつ、印刷領域よりも搬送方向の下流側の測色器83にて用紙Pに形成された画像の測色を行なわせる。このように、本実施形態では、ヘッド61からUVインクを吐出することによる画像の印刷と、既に印刷済みの画像の測色を同時に行うことができる。これにより、画像の印刷と測色を効率的に行うことができる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態では、測色器83のキャリブレーションを行う際にキャリッジ51を印刷領域上に移動させて、印刷の時と同様に照射部72a(72b)からUVを照射するようにしている。これにより、印刷時と同じ状況で測色器83のキャリブレーションを行うことができ、UV照射による測色値への影響を、補正値などに反映することができる。よって、測色器83による測色の精度の向上を図ることができる。
【0052】
===第2実施形態===
第2実施形態では、測色を行う際にUV照射の影響をさらに受け難くすることで、測色の精度の向上を図っている。なお、第2実施形態においても第1実施形態と同様にキャリブレーション時にはUV照射を行うこととする。また、第2実施形態において第1実施形態と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
図10は、第2実施形態における用紙Pの搬送の様子を示す説明図である。図に示すように第2実施形態のプリンター10は、屈曲用ローラー46と、排紙ローラー対47を有している。
【0053】
屈曲用ローラー46は、用紙Pをプラテン45の法線方向(図の点線で示す方向)に屈曲させるローラーである。この屈曲用ローラー46によって、用紙Pの搬送方向の向きが変化する。
図10に示すように屈曲用ローラー46は、搬送経路上においてプラテン45(すなわち印刷領域)と、測色器83(測色ヘッド85)の間に設けられている。
【0054】
排紙ローラー対47は、排紙ローラー47aと、排紙ローラー47aに従動して回転する従動ローラー47bを有している。排紙ローラー対47は、測色器83(測色ヘッド85)よりも搬送方向の下流側に設けられている。また、排紙ローラー対47は、図の点線方向(法線方向)における照射部72a(72b)との距離が、屈曲ローラー46と照射部72a(72b)との距離よりも大きくなるように(すなわち図の下側に)配置されている。これにより、屈曲用ローラー46において用紙Pが法線方向(点線の方向)に屈曲し、用紙Pの搬送方向が変わることとなる。なお、排紙ローラー47aは、搬送ローラー41aと同期して回転するようにコントローラー90によって制御されている。
【0055】
また、第2実施形態では、図のように屈曲用ローラー46と排紙ローラー対47の間の用紙Pは搬送方向が変わって(斜めに)搬送されるので、測色器83を構成する各部(測色ヘッド85、バッキング87など)も、それに対応するように(斜めに)配置されている。
【0056】
図11は、第2実施形態における照射部72aと測色器83の位置関係を示す概略図である。なお、
図11は
図10の一部を拡大したものである。
図において、点Aは照射部72a(72b)のUVの光源の位置(照射位置)を示し、点Bは測色ヘッド85の受光部の位置を示している。また、点Cは、点Aから屈曲用ローラー46の周面の用紙Pに接線を引いたときの接点を示している。
【0057】
本実施形態では、測色ヘッド85の受光部(点B)の位置が、前述した接線(点Aと点Cとを結ぶ直線)よりも用紙P側になるようにしている。図からわかるように、こうすることにより、照射部72a(72b)から照射されたUVが、測色ヘッド85の受光部に入射されにくくなる。つまり、第2実施形態では、点A、点B、点Cが図のような関係になるように、照射部72a(72b)と測色器83を配置しているので、測色器83が測色を行う際に、照射部72a(72b)からのUV照射の影響をさらに受け難くすることができる。このように、第2実施形態では、さらに測色の精度の向上を図ることができる。
【0058】
===第3実施形態===
前述した実施形態では、測色器83による測色の実行の有無に関わらず、印刷条件(印刷速度及びUVの照射条件)は同じであったが、第3実施形態では、照射部72a(72b)のUVの照射強度、及び、印刷速度を変えている。なお、第3実施形態においても、キャリブレーションの際には第1実施形態と同様に、照射部72a(72b)からUV照射をしつつ行なうこととする。
【0059】
例えば、測色器83で測色を行う場合は、(測色を行わない場合よりも)印刷時のキャリッジ51の移動速度を遅くする。こうすることで、照射部72a(72b)からのUVの照射強度を低く設定することができる。なお、この場合、UVの照射強度は低くなるが、キャリッジ51の移動速度を遅くしていることによりドットへのUVの照射時間が長くなる。UVの照射量(mJ/cm2)は、UVの照射強度(mW/cm2)と照射時間(sec)との積で求められるので、UV照射強度を低くしても、照射時間を長くすることで、媒体に形成されたドットへのUVの照射量を確保できる。また、この場合、UVの照射強度を下げているので、測色器83の測色に与えるUVの影響を小さくできる。このように、印刷速度を遅くし、且つ、UVの照射強度を低くすることで、さらに測色の精度の向上を図ることができる。
【0060】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0061】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、液体吐出装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0062】
また前述した実施形態のプリンター10は、ヘッド61が移動方向に移動しつつインクを吐出するドット形成動作(パス)と、用紙を搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であった。しかし、プリンターの種類は、これに限られるものではない。例えば、紙幅分の長さのヘッドを備え、ヘッドと対向させて用紙を搬送させながらヘッドからインクを吐出させて印刷を行うプリンター(いわゆるラインプリンター)であっても良い。なお、ラインプリンターの場合、ヘッド、UVの照射部、測色器が、この順で搬送方向に並ぶことになる。このようなラインプリンターにおいて、第3実施形態のように印刷速度を変える場合、媒体の搬送速度を変えればよい。すなわち、搬送速度を遅くし、UVの照射強度を低くすることで、ドットに照射されるUVの照射エネルギーを確保でき、また、UVの照射強度を低くしているので測色器による測色の精度の低下を防止することができる。
【0063】
<インクの吐出方式について>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、インクを吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0064】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(UVインク)をノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の光(例えば可視光線など)の照射を受けることによって硬化する液体をノズルから吐出しても良い。この場合、各照射部から、その液体を硬化させるための光(可視光線など)を照射するようにすればよい。
【0065】
<UV照射部について>
前述の実施形態では、キャリッジ51の移動方向の両端にそれぞれUVの照射部(72a、72b)が設けられていたが、これには限られない。例えば、照射部72a、又は、照射部72bの何れか一方がキャリッジ51に設けられていてもよい。
【0066】
<キャリブレーションについて>
前述の実施形態では、バッキング87の白色を読み取ることによって測色器83のキャリブレーションを行っていたが、基準となる色は白色以外であってもよい。例えば黒色であってもよい。