(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の燃料吸引口を個別に取り囲むように燃料タンク本体の底面に沿って複数備えられ、それぞれ袋状に形成されて内部への燃料透過時に燃料中の異物の通過を制限する燃料フィルタ、
を有する請求項1又は請求項2に記載の燃料供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、本発明の第1実施形態の燃料供給装置12の概略構成が示されている。この燃料供給装置12は、燃料が収容される燃料タンク本体14を有している。本実施形態の燃料タンク本体14は中空の箱状に形成されているが、底面14Sの中央部分からは上方に向けて膨出する山部14Mが形成されており、内部が主室14A及び副室14Bに区画された構造(いわゆる鞍型タンク)となっている。
【0024】
燃料タンク本体14における主室14A側の上面14Uの角部近傍には、インレット配管26が接続されている。インレット配管26を通じて、燃料を燃料タンク本体14内(主に主室14A)に給油できる。
【0025】
インレット配管26の下端近傍からは、導入配管28が延出されている。導入配管28の先端は副室14B内で開口しており、インレット配管26を流下した燃料の一部を副室14Bに導くことができる。導入配管28には、側面視にて、途中に上方あるいは下方に突出する部分が存在することなく略直線状とされていることが、燃料をスムーズに副室14B側に送る観点からは好ましい。
【0026】
燃料タンク本体14の内部には、主室14A及び副室14Bのそれぞれに対応して、燃料タンク本体14の底面14Sに沿って配置された複数のサブタンク15が備えられている。本実施形態では、サブタンク15の数を、主室14A及び副室14Bのそれぞれに1つずつ、合計で2つとしている。以下において、2つのサブタンク15を区別する場合は、主室14A側のサブタンク15を第1サブタンク15A、副室14B側のサブタンク15を第2サブタンク15Bとする。
【0027】
第1サブタンク15Aには、燃料ポンプモジュール32が備えられており、この点で、燃料ポンプモジュール32が備えられていない第2サブタンク15Bと異なっているが、サブタンクとしての基本的構成は、燃料ポンプモジュール32の有無以外は同一とされているため、
図2を用いて、サブタンク15の構成を説明する。
【0028】
サブタンク15のそれぞれは、燃料フィルタ16と、この燃料フィルタ16の上方に配置された貯留部材18とを有している。
【0029】
燃料フィルタ16は、上下に配置された2枚の濾布(上側濾布16Uと下側濾布16L)を有している、本実施形態では、上側濾布16Uと下側濾布16Lとは、2枚の略同形状(たとえば四角形状等の多角形状であっても良いし、円形や楕円形などでも良い)に形成されている。上側濾布16Uと下側濾布16Lにおいて、それぞれの外周部分を、溶着や接着等により接合することで、全体として偏平な直方体形状の燃料フィルタ16を構成している。
【0030】
そして、上側濾布16Uと下側濾布16Lとの間に間隔維持部材52が配置されることで、上側濾布16Uと下側濾布16Lとの間に、燃料を収容するための空間が構成された、偏平な袋状(閉曲面状)の燃料フィルタ16となっている。
【0031】
上側濾布16Uと下側濾布16Lとは、袋状とされた燃料フィルタ16の外側から内側へと燃料を通過させるが、その際に燃料中の異物を除去し、燃料フィルタ16の内部には異物が流入しないようにする作用を有する材料(たとえば織布、不織布、多孔質性樹脂、メッシュ状の部材等など)で構成されている。
【0032】
燃料フィルタ16は、このように上側濾布16Uあるいは下側濾布16Lを通過した燃料GSを、その内部に貯留させることができる。さらに、
図4にも示したように、燃料フィルタ16の少なくとも一部が燃料タンク本体14内の燃料GSに浸漬されている状態では、燃料フィルタ16の表面に燃料による油膜LMが形成されて維持されるようになっている。
【0033】
燃料フィルタ16(特に下側濾布16L)は、燃料タンク本体14の底面14Sに沿って略平行になるように配置されており、底面14Sとの隙間を通じて燃料を燃料フィルタ16内に流入させることができる。
【0034】
図2から分かるように、上側濾布16Uと下側濾布16Lとは異なる材質とされており、特に、上側濾布16Uの圧力損失が下側濾布16Lの圧力損失よりも大きくなるように、これら濾布の材質が選択されている。ここでいう「圧力損失」は、上側濾布16Uあるいは下側濾布16Lを燃料が通過するとき(たとえば後述する燃料ポンプ本体42の駆動時)の、通過前後の圧力差である。したがって、下側濾布16Lは上側濾布16Uよりも相対的に燃料を通過させ易くなっている。本実施形態では、このように圧力損失に差を設けるために、上側濾布16Uは、下側濾布16Lよりも不織布の空隙の総面積が小さい構造とされている。
【0035】
間隔維持部材52は、上側濾布16Uと下側濾布16Lとの間において、水平方向に配置された互いに平行な複数の横骨片56Aと、これら横骨片56Aと直交するように水平方向に配置された互いに平行な複数の縦骨片56Bとを有する形状とされている。そして、これらの骨片が上側濾布16Uと下側濾布16Lとの間の間に位置することで、上側濾布16Uと下側濾布16Lとが、骨片が存在する部分では上下方向に非接触となり、燃料を収容するための上記した空間が構成されるようになっている。
【0036】
サブタンク15は、燃料フィルタ16の上側に位置するサブタンク上側部材15Uと、燃料フィルタ16の下側に位置するサブタンク下側部材15Lとを有している。サブタンク上側部材15Uと、サブタンク下側部材15Lは、それぞれの外周部分で、上側濾布16U及び下側濾布16Lの外周部分を上下方向に挟み込んでおり、燃料フィルタ16の形状を維持すると共に、強度を確保している。また、燃料タンク本体14内において、所定位置(底面14Sに沿った位置)に安定的に配置できるようになる。
【0037】
サブタンク上側部材15Uは、平面視(
図3矢印A方向視)にて、燃料フィルタ16の周囲に位置する縦壁部20を有している。縦壁部20は、たとえば扁平な筒状に形成されている。縦壁部20の上端からは、平面視にて中心に向かう方向に、蓋板部22が延出されている。
【0038】
本実施形態では、縦壁部20、蓋板部22、及び燃料フィルタ16の上側濾布16Uによって、貯留部材18が構成されている。換言すれば、貯留部材18の底部の少なくとも一部(本実施形態では全部)が、上側濾布16Uによって構成されていることになる。貯留部材18内には、燃料フィルタ16の上方において燃料を貯留することが可能とされる。
【0039】
蓋板部22の略中央には、蓋板部22を厚み方向に貫通する流入孔24が形成されている。流入孔24を通じて、貯留部材18内に燃料を流入させることができる。
【0040】
サブタンク下側部材15Lは、下側濾布16Lよりも下方に位置する底板部46を有している。底板部46は略格子状に形成されており、厚み方向に貫通する複数の挿通孔48が形成されている。この挿通孔48を通じて、燃料タンク本体14内の燃料GSを、燃料フィルタ16の内部に流入させることができる。
【0041】
図1に示すように、第1サブタンク15Aの燃料フィルタ16内と、第2サブタンク15Bの燃料フィルタ16内とは、移送配管34で連通されている。移送配管34の両端部はそれぞれ燃料吸引口34A、34Bとされている。これら燃料吸引口34A、34Bの近傍部分は、流入孔24に挿通されている。
【0042】
流入孔24の内寸は、移送配管34の外径よりも大きくされている。このため、流入孔24の孔縁と移送配管34とは非接触で隙間が構成されており、流入孔24を通じて燃料タンク本体14内の燃料が貯留部材18の内部に流入可能となっている。流入孔24は、移送配管34を挿通するための挿通孔を兼ねているので、このような挿通孔をあらためて形成する必要がなく、構造の簡素化が図られている。
【0043】
移送配管34の燃料吸引口34A、34Bは、間隔維持部材52の横骨片56Aに設けられた連通筒部56Cを介して、燃料フィルタ16内に開口している。燃料吸引口34A、34Bから吸引した燃料を、移送配管34を通じて移送することができる。
【0044】
特に本実施形態では、燃料タンク本体14の形状に合わせて、移送配管34の中央部分が上方に向けて略山状に湾曲されており、頂部34Tが構成されている。
【0045】
図1及び
図2に示すように、第1サブタンク15Aにおける貯留部材18の上方には燃料ポンプモジュール32が備えられている。燃料ポンプモジュール32は、燃料ポンプ本体42を有している。本実施形態では、燃料ポンプ本体42は、ブラケット42Bにより、第1サブタンク15Aの上方に支持されている。
【0046】
燃料ポンプ本体42の一方の側面からは燃料吸引配管44Aが延出されている。燃料ポンプ本体42の他方の側面からは、上方に向かう燃料吐出配管44B(
図1参照)が、燃料タンク本体14の外部に延出されている。
【0047】
燃料吸引配管44Aは、接続部44Cにおいて移送配管34に接続されている。したがって、燃料ポンプ本体42の駆動により、第1サブタンク15Aの燃料フィルタ16内及び第2サブタンク15Bの燃料フィルタ16内から燃料を吸引し、燃料吐出配管44Bから、図示しないエンジンに供給できる。
【0048】
燃料タンク本体14の上面14Uには、ブリーザパイプ38が貫通している。ブリーザパイプ38の下端は燃料タンク本体14内に開口し、ブリーザパイプ38の上端は燃料タンク本体14の外部に開口している。ブリーザパイプ38の内部は、たとえば、燃料タンク本体14への給油時等には、燃料タンク本体14内の気体を燃料タンク本体14の外部に排出させるための気体流路となっている。
【0049】
なお、ブリーザパイプ38の上端は、たとえば、インレット配管26の上端近傍に接続されており、給油時にインレット配管26内を流下する燃料(液体)と共に、
ブリーザパイプ38内の気体を燃料タンク本体14内に戻す構成とされる。
【0050】
図3(A)に詳細に示すように、ブリーザパイプ38の中間部分には、内径を局所的に縮径した縮径部40が形成されている。ブリーザパイプ38内を気体が流れるとき、縮径部40では流路の断面積が小さくなっているため流速が速くなり、負圧が発生する。縮径部40は、本発明の負圧発生手段の一例となっている。
【0051】
ブリーザパイプ38の縮径部40が形成された部分と、移送配管34の頂部34Tとの間は、
図3(B)にも示すように、連通配管36で連通されている。これにより、移送配管34内の気体が、連通配管36を通ってブリーザパイプ38へ移動可能となっている。また、縮径部40で生じた負圧が、連通配管36から、移送配管34に作用する。
【0052】
なお、連通配管36と、ブリーザパイプ38及び移送配管34との接続構造は特に限定されないが、連通配管36とブリーザパイプ38との接続構造として、
図3(A)に示す例では、ブリーザパイプ38と連通配管36とを一体的に成形している。また、連通配管36と移送配管34との接続構造として、
図3(B)に示す例では、連通配管36の下部を、略逆T字状に形成している。そして、移送配管34を、連通配管36との接続部分で分割し、連通配管36に設けられた挿入部36Sを、移送配管34にそれぞれ挿入することで、連通配管36を移送配管34に接続している。挿入部36Sには、移送配管34を抜け止めするための、断面略鋸歯状の係止凸部36Kが形成されている。
【0053】
連通配管36の内部(長手方向の中間部分でも端部でもよい)には、油膜フィルタ50が設けられている。油膜フィルタ50は、燃料フィルタ16を構成する上側濾布16Uや下側濾布16Lと同様の材料(たとえば織布、不織布、多孔質性樹脂、メッシュ状の部材等など)で構成されている。油膜フィルタ50の表面に燃料が付着していない状態では油膜が形成されず、油膜フィルタ50を気体が通過可能である。これに対し、油膜フィルタ50の表面に燃料による油膜が形成されていると、気体の通過は阻止される。
【0054】
次に、本実施形態の燃料供給装置12の作用を説明する。
【0055】
燃料タンク本体14への給油時には、インレット配管26を通じて燃料が流下し、主室14Aに燃料GSが貯留される。燃料の一部は導入配管28を通じて副室14Bにも送られる。すなわち、インレット配管26の上端から燃料を給油するだけで、主室14A及び副室14Bの双方に給油できる。
【0056】
燃料タンク本体14内において、第1サブタンク15A及び第2サブタンク15Bのいずれであっても、貯留部材18の流入孔24よりも高い液位で燃料GSが存在している状態では、流入孔24を通じて流入した燃料が貯留部材18内に貯留されている。また、この状態で、燃料フィルタ16内にも燃料が存在している。
【0057】
ここで、燃料ポンプモジュール32が駆動されると、第1サブタンク15Aの燃料フィルタ16内の燃料GSが移送配管34の一部(燃料吸引口34Aから接続部44Cまでの部分)と燃料吸引配管44Aを通じて吸引され、燃料吐出配管44Bを通じて外部(機関等)に送出される。また、第2サブタンク15Bの燃料フィルタ内の燃料GSも移送配管34の一部(燃料吸引口34Bから接続部44Cまでの部分)と燃料吸引配管44Aを通じて吸引され、燃料吐出配管44Bを通じて外部(機関等)に送出される。
【0058】
このように、主室14A及び副室14Bの双方(第1サブタンク15Aと第2サブタンク15Bの双方)において燃料吸引口34A、34Bの近傍に燃料GSが存在しているため、一方の燃料吸引口にのみ燃料が存在している場合よりも、確実に燃料GSを移送配管34に導入することが可能である。
【0059】
第1サブタンク15A及び第2サブタンク15Bにおいて、の燃料フィルタ16内には、上側濾布16U及び下側濾布16Lを通過して燃料GSが流入可能である。また、貯留部材18内には、流入孔24を通じて燃料タンク本体14内の燃料GSが流入する。
【0060】
そして、燃料タンク本体14内の燃料量が少なくなった状態においても、第1サブタンク15Aと第2サブタンク15Bの少なくとも一方の燃料フィルタ16の一部が燃料GSに浸漬されていれば、燃料フィルタ16の表面に、燃料GSによる油膜LMが形成され維持されている。本実施形態では、燃料フィルタ16を燃料タンク本体14の底面14Sに沿って配置しているので、燃料タンク本体14内の燃料が燃料フィルタ16(下側濾布16L)に接触した状態を、より確実に維持可能となっている。
【0061】
ここで、本実施形態において、燃料タンク本体14内に燃料GSが全くない状態を想定する。たとえば、自動車を製造工場において製造した直後に、このように燃料タンク本体14内に燃料GSが無い状態になる。この状態における燃料タンク本体14への給油を、以下では「初期給油」という。
【0062】
初期給油時には、インレット配管26から燃料タンク本体14に流入した燃料GSの液面は、主室14A及び副室14Bのそれぞれにおいて、燃料タンク本体14の底面14Sと平行な状態を維持しつつ上昇する。そして、第1サブタンク15Aの燃料フィルタ16内、及び、第2サブタンク15Bの燃料フィルタ16内に入る。
【0063】
さらに燃料GSは、燃料フィルタ16内から、移送配管34に流入する。ただし、移送配管34内の燃料液位は、主室14A及び副室14Bの燃料液位と同程度である。したがって、本実施形態と異なり移送配管34に負圧を作用させない構成では、移送配管34の頂部34T及びその近傍には、初期給油前の気体が残留する。
【0064】
特に、本実施形態の燃料供給装置12では、燃料導入配管28により、副室14Bにも給油時に燃料を導入するようにしているが、燃料導入配管28の内径などによっては、主室14Aよりも導入される燃料の量が少なくなることがある。これにより、副室14Bの燃料液位が、主室14Aの燃料液位よりも低くなると、移送配管34において、副室14B側には気体が残留しやすい。
【0065】
これに対し、本実施形態の燃料供給装置12では、ブリーザパイプ38に縮径部40が設けられると共に、ブリーザパイプ38と移送配管34とが連通配管36で連通されている。初期給油時には、
図4に示すように燃料タンク本体14内の気体がブリーザパイプ38を通じて燃料タンク本体14の外部に排出される(矢印AF1参照)が、このとき、縮径部40では、ブリーザパイプ38から排出される気体の流速が速められることで、負圧が発生している。そしてこの負圧は、連通配管36を通じて、移送配管34の頂部34Tに作用する。したがって、移送配管34には、燃料吸引口34A、34Bから燃料が吸引(導入)されやすくなると共に(矢印LF1参照)、移送配管34に残留した気体が、連通配管36からブリーザパイプ38を経て、燃料タンク本体14の外部に排出される(矢印AF2参照)。本実施形態では、
図5に示すように、移送配管34内の燃料は上昇し、油膜フィルタ50に達する。そして、油膜フィルタ50には油膜LMが形成される。
【0066】
このように、移送配管34では残留していた気体が少なくなる(存在しなくなる)ので、エンジン始動時に、エンジンに送られる気体の量も少なくなり、エンジンの始動性が向上する(短時間でスムーズにエンジンを始動させることができる)。
【0067】
しかも、本実施形態の燃料供給装置12では、移送配管34から気体を排出するための負圧を発生させるために、ブリーザパイプ38を流れる気体を利用しているため、ポンプ等が不要であり、低コストとなる。
【0068】
また、本実施形態の燃料供給装置12では、連通配管36に油膜フィルタ50を設けている。移送配管34の燃料が負圧により上昇して油膜フィルタ50に達すると、油膜フィルタ50には油膜が形成される。このため、ブリーザパイプ38から気体が不用意に油膜フィルタ50を通過して移送配管34に流入してしまうことが抑制され、移送配管34から気体を排出した状態を確実に維持できる。なお、油膜フィルタ50に一旦油膜が形成されると、油膜フィルタ50に燃料が接触していれば油膜は維持される。
【0069】
図6には、本発明の第2実施形態の燃料供給装置82が部分的に拡大して示されている。第2実施形態の燃料供給装置82の全体的構成は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一なので説明を省略する。
【0070】
第2実施形態の燃料供給装置82では、導入配管28の先端は、副室14B側において、第2サブタンク15Bの貯留部材18内で開口している。
【0071】
したがって、第2実施形態の燃料供給装置82では、第1実施形態の燃料供給装置12と略同様の作用効果を奏するが、特に、給油時には、給油された燃料GSを早期に第2サブタンク15Bの燃料フィルタ16に接触させて、油膜LMを早い段階で形成することが可能である。
【0072】
図7には、本発明の第3実施形態の燃料供給装置112が示されている。第3実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0073】
第3実施形態の燃料供給装置112では、燃料吐出配管44Bの途中にプレッシャレギュレータ114が設けられている。プレッシャレギュレータ114は、燃料吐出配管44Bを流れる燃料GSの圧力が一定範囲になるように調整すると共に、余剰の燃料(リターン燃料)を、リターン配管116を通じて燃料タンク本体14内(本実施形態では副室14B内)に戻す作用を有している。なお、このプレッシャレギュレータ114は、他の実施形態の燃料供給装置においても、図示は省略しているが、必要に応じて設けられている。
【0074】
リターン配管116は、その途中において、連通配管36と連通している。この連通部分には、リターン配管116を流れるリターン燃料の流速を上げて負圧を生じさせるための縮径部(第1実施形態で示した
図3(A)の縮径部40を参照)が形成されている。そして、連通配管36において、移送配管34とリターン配管116の間に位置する部分に、油膜フィルタ50が設けられている。
【0075】
第3実施形態の燃料供給装置112においても、第1実施形態の燃料供給装置12と略同様の作用効果を奏するが、特に、プレッシャレギュレータ114の駆動時に発生した負圧を、移送配管34の頂部34Tに作用させて、移送配管34内の気体を排出することが可能である。なお、この気体は、リターン燃料と共に副室14Bに送られてもよいが、連通配管36は第1実施形態と同様にブリーザパイプ38に接続されているので、ブリーザパイプ38を経由して燃料タンク本体14の外部に排出されてもよい。
【0076】
図8には、本発明の第4実施形態の燃料供給装置122が示されている。第4実施形態においても、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0077】
第4実施形態の燃料供給装置122では、主室14A及び副室14Bに、それぞれ第1サブタンク15A及び第2サブタンク15Bは設けられていない。そして、移送配管34の燃料吸引口34A、34Bが、主室14A及び副室14Bのそれぞれにおいて、燃料タンク本体14の底面14Sの近傍で開口している。なお、燃料吸引口34A、34Bまたはその近傍(移送配管34の内部)に燃料フィルタが必要に応じて設けられており、燃料を吸引する際に燃料中の異物を除去し、移送配管34の内部には異物が流入しないようにしている。
【0078】
このように、第1サブタンク15A及び第2サブタンク15Bを有さない構成であっても、給油時には、主室14A及び副室14Bに燃料を導いて燃料を貯留することが可能である。また、燃料ポンプ本体42の駆動により、主室14A及び副室14Bから燃料GSを外部に送出できる。
【0079】
初期給油時には、縮径部40で発生した負圧が連通配管36を通じて、移送配管34の頂部34Tに作用するので、移送配管34に、燃料吸引口34A、34Bから燃料が吸引(導入)されやすくなると共に、移送配管34に残留した気体が、連通配管36からブリーザパイプ38を経て、燃料タンク本体14の外部に排出され、移送配管34内の燃料は上昇し、油膜フィルタ50に達する。
【0080】
このように、第4実施形態においても、移送配管34では残留していた気体が少なくなる(好ましくは存在しなくなる)ので、エンジンの始動性が向上する。
【0081】
図9には、本発明の第5実施形態の燃料供給装置132が示されている。第5実施形態においても、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0082】
第5実施形態の燃料供給装置132の燃料タンク本体134は、第1実施形態と異なり、山部14Mを有さない(鞍型タンクではない)構造とされている。すなわち、燃料タンク本体134内は、主室14A及び副室14Bに区画されていない。また、インレット配管26から分岐する導入配管28(
図1参照)も不要とされているが、これ以外は、第1実施形態の燃料供給装置12と同一の構成とされている。
【0083】
したがって、第5実施形態の燃料供給装置132において、燃料タンク本体134内で燃料GSが偏在した場合でも、第1サブタンク15Aの燃料フィルタ16と、第2サブタンク15Bの燃料フィルタ16の少なくとも一方に燃料GSが接触が接触している可能性が高い。そして、燃料が接触している燃料フィルタ16では、表面の油膜LMが維持される。
【0084】
初期給油時には、第1実施形態の燃料供給装置12と同様に、縮径部40で発生した負圧が連通配管36を通じて、移送配管34に作用するので、移送配管34に、燃料吸引口34A、34Bから燃料が吸引(導入)されやすくなると共に、移送配管34に残留した気体が、連通配管36からブリーザパイプ38を経て、燃料タンク本体134の外部に排出され、移送配管34内の燃料は上昇し、油膜フィルタ50に達する。
【0085】
このように、第5実施形態においても、移送配管34では残留していた気体が少なくなる(好ましくは存在しなくなる)ので、エンジンの始動性が向上する。
【0086】
図10には、本発明の第6実施形態の燃料供給装置142が示されている。第6実施形態においても、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0087】
第6実施形態では、山部14Mを有さない燃料タンク本体134が用いられており、さらに、第1サブタンク15A及び第2サブタンク15Bも設けられていない。そして、移送配管34の燃料吸引口34A、34Bが、燃料タンク本体14の底面14Sの近傍において、異なる位置で開口している。なお、第4実施形態と同様に、燃料吸引口34A、34Bまたはその近傍(移送配管34の内部)に燃料フィルタが必要に応じて設けられ移送配管34の内部には異物が流入しないようにしている。
【0088】
したがって、第6実施形態の燃料供給装置142においても、燃料タンク本体134内で燃料GSが偏在した場合でも、燃料吸引口34A、34Bのすくなくとも一方が燃料GSに浸漬されていれば、燃料GSを外部に送出できる。
【0089】
初期給油時には、第1実施形態の燃料供給装置12と同様に、縮径部40で発生した負圧が連通配管36を通じて、移送配管34に作用するので、移送配管34に、燃料吸引口34A、34Bから燃料が吸引(導入)されやすくなると共に、移送配管34に残留した気体が、連通配管36からブリーザパイプ38を経て、燃料タンク本体134の外部に排出され、移送配管34内の燃料は上昇し、油膜フィルタ50に達する。
【0090】
このように、第6実施形態においても、移送配管34では残留していた気体が少なくなる(好ましくは存在しなくなる)ので、エンジンの始動性が向上する。
【0091】
なお、本発明の仕切部としては、上記の山部14Mに限定されず、たとえば、燃料タンク本体14の底面14Sから立設された板状の部材であってもよい。また、燃料タンク本体14が、複数の燃料貯留室に完全に分離されている構成でもよい。
【0092】
本発明の気体流入抑制手段として、上記では油膜フィルタ50を挙げているが、要するに、移送配管34からブリーザパイプ38への気体移動は許容し、逆方向の気体移動は抑制する(好ましくは阻止する)部材であればよい。たとえば、逆止弁等を用いることも可能である。
【0093】
本発明の負圧発生手段としては、上記の縮径部40等に限定されず、たとえば、負圧ポンプを設けてもよい。ただし、縮径部40を設けると、簡単な構造で容易に且つ確実に負圧を発生させることが可能である。ポンプ駆動のための駆動力(電力等)やポンプ取付構造も不要となる。