(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極及び負極の開回路電位である正極開回路電位及び負極開回路電位を参照極を用いて測定することができる非水電解質二次電池の、電気量と開回路電圧との関係を示すOCV特性を推定するOCV特性推定装置であって、
所定の第一状態での前記非水電解質二次電池の電気量である第一電気量と正極開回路電位との関係を示す第一正極OCP特性と、前記第一状態での前記第一電気量と負極開回路電位との関係を示す第一負極OCP特性とを取得するOCP特性取得部と、
所定の第二状態での所定の第一充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第一正極開回路電位及び第一負極開回路電位を測定により取得するとともに、前記第一充電時点から第二充電時点へ通電した場合の通電電気量と、前記第二充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位とを測定により取得する開回路電位取得部と、
前記OCP特性取得部が取得した前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性と、前記開回路電位取得部が取得した前記第一正極開回路電位、前記第一負極開回路電位、前記通電電気量、前記第二正極開回路電位及び前記第二負極開回路電位とを用いて、正極及び負極の劣化の度合いを示す正極劣化率及び負極劣化率を算出する劣化率算出部と、
前記第一正極開回路電位及び前記第一負極開回路電位、または前記第二正極開回路電位及び前記第二負極開回路電位と、算出された前記正極劣化率及び前記負極劣化率と、前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性とを用いて、前記第二状態での正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出するずれ量算出部と、
算出された前記ずれ量と、前記正極劣化率及び前記負極劣化率と、前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性とを用いて、前記第二状態でのOCV特性を算出するOCV特性算出部と
を備えるOCV特性推定装置。
コンピュータが、正極及び負極の開回路電位である正極開回路電位及び負極開回路電位を参照極を用いて測定することができる非水電解質二次電池の、電気量と開回路電圧との関係を示すOCV特性を推定するOCV特性推定方法であって、
所定の第一状態での前記非水電解質二次電池の電気量である第一電気量と正極開回路電位との関係を示す第一正極OCP特性と、前記第一状態での前記第一電気量と負極開回路電位との関係を示す第一負極OCP特性とを取得するOCP特性取得ステップと、
所定の第二状態での所定の第一充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第一正極開回路電位及び第一負極開回路電位を測定により取得するとともに、前記第一充電時点から第二充電時点へ通電した場合の通電電気量と、前記第二充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位とを測定により取得する開回路電位取得ステップと、
前記OCP特性取得ステップで取得された前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性と、前記開回路電位取得ステップで取得された前記第一正極開回路電位、前記第一負極開回路電位、前記通電電気量、前記第二正極開回路電位及び前記第二負極開回路電位とを用いて、正極及び負極の劣化の度合いを示す正極劣化率及び負極劣化率を算出する劣化率算出ステップと、
前記第一正極開回路電位及び前記第一負極開回路電位、または前記第二正極開回路電位及び前記第二負極開回路電位と、算出された前記正極劣化率及び前記負極劣化率と、前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性とを用いて、前記第二状態での正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出するずれ量算出ステップと、
算出された前記ずれ量と、前記正極劣化率及び前記負極劣化率と、前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性とを用いて、前記第二状態でのOCV特性を算出するOCV特性算出ステップと
を含むOCV特性推定方法。
正極及び負極の開回路電位である正極開回路電位及び負極開回路電位を参照極を用いて測定することができる非水電解質二次電池の、電気量と開回路電圧との関係を示すOCV特性を推定する集積回路であって、
所定の第一状態での前記非水電解質二次電池の電気量である第一電気量と正極開回路電位との関係を示す第一正極OCP特性と、前記第一状態での前記第一電気量と負極開回路電位との関係を示す第一負極OCP特性とを取得するOCP特性取得部と、
所定の第二状態での所定の第一充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第一正極開回路電位及び第一負極開回路電位を測定により取得するとともに、前記第一充電時点から第二充電時点へ通電した場合の通電電気量と、前記第二充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位とを測定により取得する開回路電位取得部と、
前記OCP特性取得部が取得した前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性と、前記開回路電位取得部が取得した前記第一正極開回路電位、前記第一負極開回路電位、前記通電電気量、前記第二正極開回路電位及び前記第二負極開回路電位とを用いて、正極及び負極の劣化の度合いを示す正極劣化率及び負極劣化率を算出する劣化率算出部と、
前記第一正極開回路電位及び前記第一負極開回路電位、または前記第二正極開回路電位及び前記第二負極開回路電位と、算出された前記正極劣化率及び前記負極劣化率と、前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性とを用いて、前記第二状態での正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出するずれ量算出部と、
算出された前記ずれ量と、前記正極劣化率及び前記負極劣化率と、前記第一正極OCP特性及び前記第一負極OCP特性とを用いて、前記第二状態でのOCV特性を算出するOCV特性算出部と
を備える集積回路。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置、及び当該OCV特性推定装置を備える組電池について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0031】
まず、組電池10の構成について、説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100を備える組電池10の外観斜視図である。
【0033】
同図に示すように、組電池10は、OCV特性推定装置100と、複数の二次電池200(同図では、二次電池201〜210の10個の二次電池)と、OCV特性推定装置100及び複数の二次電池200を収容する収容ケース300とを備えている。
【0034】
OCV特性推定装置100は、複数の二次電池200の上方に配置され、複数の二次電池200の電気量と開回路電圧との関係を示すOCV特性を推定する回路を搭載した回路基板である。具体的には、OCV特性推定装置100は、例えば二次電池203に接続されており、二次電池203からの情報を取得して、二次電池203のOCV特性を推定する。
【0035】
なお、二次電池200のOCV特性とは、二次電池200に通電される電気量と開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)との関係を示す特性である。また、開回路電圧とは、二次電池200の正極と負極との間の開回路電位(OCP:Open Circuit Potential)の電位差であり、二次電池200の正極開回路電位から負極開回路電位を差し引いた値である。
【0036】
また、正極開回路電位及び負極開回路電位とは、二次電池200が外部回路から電気的に切り離された(正極と負極との間に負荷をかけていない)状態が十分な時間経過した時点での、二次電池200の正極の電位及び負極の電位である。つまり、開回路電圧は、二次電池200に電流が流れていない状態が十分な時間経過したときの当該二次電池200の正極と負極との間の電圧を示している。
【0037】
ここで、OCV特性推定装置100が接続されている二次電池203は、電池表面温度が、複数の二次電池201〜210のうちの他の二次電池201、202、204〜210の電池表面温度の平均値よりも高いものとする。そして、OCV特性推定装置100は、推定した二次電池203のOCV特性を、複数の二次電池200全体のOCV特性と推定する。
【0038】
なお、ここでは、OCV特性推定装置100は複数の二次電池200の上方に配置されているが、OCV特性推定装置100はどこに配置されていてもよい。このOCV特性推定装置100の詳細な機能構成の説明については、後述する。
【0039】
また、同図では、10個の矩形状の二次電池200が配置されて組電池を構成している。なお、二次電池200の個数は10個に限定されず、他の複数個数または1個であってもよい。また二次電池200の形状も特に限定されない。
【0040】
次に、OCV特性推定装置100が接続されている二次電池203の構成について、説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係る二次電池203の外観斜視図である。なお、同図は、電池ケース内部を透視した図となっている。
【0042】
二次電池203は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池である。同図に示すように、二次電池203は、電池容器210と、正極端子220と、負極端子230とを備え、電池容器210は、上壁であるふた板211を備えている。また、電池容器210内方には、発電要素212と、正極集電部材213と、負極集電部材214と、参照極215とが配置されている。なお、二次電池203の電池容器210の内部には電解液などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。
【0043】
なお、
図1に示された二次電池203以外の二次電池201、202、204〜210についても、二次電池203と同様の構成を有するが、参照極215については備えられていなくともよい。
【0044】
電池容器210は、金属からなる矩形筒状で底を備える筐体本体と、当該筐体本体の開口を閉塞する金属製のふた板211とで構成されている。また、電池容器210は、発電要素212等を内部に収容後、ふた板211と筐体本体とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。
【0045】
発電要素212は、詳細な図示は省略するが、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムからなる長尺帯状の正極集電体シートの表面に正極活物質層が形成されたものである。負極は、銅からなる長尺帯状の負極集電体シートの表面に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。そして、発電要素212は、負極と正極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように巻き回されて形成されている。
【0046】
さらに詳しくは、上記正極と上記負極は、上記セパレータを介し、長尺帯状の幅方向に互いにずらして、当該幅方向に沿う回転軸を中心に長円形状に巻回されている。そして、上記正極及び上記負極は、それぞれのずらす方向の端縁部を活物質の非形成部とすることにより、巻回軸の一端部には、活物質が形成されていない正極集電体であるアルミニウム箔が露出し、巻回軸の他端部には、活物質が形成されていない負極集電体である銅箔が露出している。また、発電要素212の巻回軸方向の両端部には正極集電部材213及び負極集電部材214が上記巻回軸方向と垂直方向に延びて配置されている。
【0047】
ここで、正極活物質としては、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0048】
なお、本発明を適用するにあたり、検出の精度の観点から、電位特性が平坦でなく、傾きの変化が大きい正極材料が用いられることが好ましい。具体的には、正極活物質として、上記のリチウム遷移金属酸化物LiMO
2を用いたものであることが好ましい。
【0049】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−ケイ素、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
5O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0050】
正極端子220は、発電要素212の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子230は、発電要素212の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子220及び負極端子230は、発電要素212に蓄えられている電気を二次電池203の外部回路に導出し、また、二次電池203内部の発電要素212に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子220及び負極端子230は、発電要素212の上方に配置されたふた板211に取り付けられている。
【0051】
正極集電部材213は、発電要素212の正極集電体と電池容器210の側壁との間に配置され、正極端子220と発電要素212の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電部材213は、発電要素212の正極集電体と同様、アルミニウムで形成されている。
【0052】
負極集電部材214は、発電要素212の負極集電体と電池容器210の側壁との間に配置され、負極端子230と発電要素212の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電部材214は、発電要素212の負極集電体と同様、銅で形成されている。
【0053】
参照極215は、二次電池203の正極及び負極の電位を測定するための第3の電極であり、発電要素212と電池容器210との間に配置されている。具体的には、参照極215は、ステンレス製の参照極リードの先に金属リチウムを貼付し、金属リチウムだけが露出するように加工されている。
【0054】
ここで、参照極215としては、金属リチウム、リチウム−アルミニウム合金やリチウム−錫合金などのリチウム合金、Li
4Ti
5O
12やLiFePO
4などの電位平坦を有する活物質を適宜Liを挿入すること等によって電位平坦を示す状態にしたものなど、安定した電位を示すものであれば、どのようなものであってもよい。
【0055】
また、参照極215の配置位置は、電池容器210内において発電要素212と参照極215との間で液絡があれば、どのような位置に配置されていてもよい。
【0056】
例えば、参照極215にセパレータを巻きつける構成でもよい。この場合、液絡を保持する観点から、発電要素212に用いられるセパレータを発電要素212からはみ出すようにし、これを参照極215を包むセパレータとして用いることが望ましい。
【0057】
また、電池容器210と正極端子220及び負極端子230との間で電気的絶縁がなされている場合には、電池容器210を参照極215とすることができる。この場合、電池容器210の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルメッキ鋼板などの金属が挙げられる。また、電池容器210が鉄、ステンレス、ニッケルメッキ鋼板などの金属リチウムと反応しないものの場合には、参照極となる金属リチウム参照極を電気的に接続することもできる。
【0058】
次に、OCV特性推定装置100の詳細な機能構成について、説明する。
【0059】
図3は、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
【0060】
OCV特性推定装置100は、二次電池203に接続され、二次電池203の電気量と開回路電圧との関係を示すOCV特性を推定する装置である。同図に示すように、OCV特性推定装置100は、OCP特性取得部110、開回路電位取得部120、劣化率算出部130、ずれ量算出部140、OCV特性算出部150及び記憶部160を備えている。
【0061】
OCP特性取得部110は、所定の第一状態での二次電池203の電気量である第一電気量と正極開回路電位との関係を示す第一正極OCP特性と、当該第一状態での第一電気量と負極開回路電位との関係を示す第一負極OCP特性とを取得する。なお、正極開回路電位は、正極の開回路電位であり、負極開回路電位は、負極の開回路電位である。
【0062】
また、第一状態とは、二次電池203のOCV特性を推定する計算の基準となる状態である。ここで、当該第一状態はどのような状態でもよいが、例えば、二次電池203の工場出荷時や充放電を開始する時点での状態である。
【0063】
開回路電位取得部120は、所定の第二状態での所定の第一充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第一正極開回路電位及び第一負極開回路電位を取得する。また、開回路電位取得部120は、当該第一充電時点から第二充電時点へ通電した場合の通電電気量である差分電気量と、当該第二充電時点における正極開回路電位及び負極開回路電位である第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位とを取得する。
【0064】
ここで、開回路電位取得部120は、参照極215を用いて二次電池203の正極開回路電位及び負極開回路電位を測定することで、上記の第一正極開回路電位、第一負極開回路電位、第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位を取得することができる。
【0065】
なお、第二状態とは、第一状態から二次電池203が充放電を開始して所定の期間が経過した場合の状態であり、二次電池203のOCV特性を推定したい状態である。また、第一充電時点及び第二充電時点は、当該第二状態内の時点であればどのような時点であってもよく、分、時、日、月など、どのような単位で表現されてもかまわない。
【0066】
劣化率算出部130は、OCP特性取得部110が取得した第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性と、開回路電位取得部120が取得した第一正極開回路電位、第一負極開回路電位、差分電気量、第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位とを用いて、正極及び負極の劣化の度合いを示す正極劣化率及び負極劣化率を算出する。
【0067】
具体的には、劣化率算出部130は、第一正極OCP特性から得られる第一正極開回路電位及び第二正極開回路電位における電気量の差を正極差分電気量として算出し、第一負極OCP特性から得られる第一負極開回路電位及び第二負極開回路電位における電気量の差を負極差分電気量として算出する。そして、劣化率算出部130は、差分電気量を正極差分電気量で除した値を正極劣化率として算出し、差分電気量を負極差分電気量で除した値を負極劣化率として算出する。
【0068】
ずれ量算出部140は、劣化率算出部130が算出した正極劣化率及び負極劣化率と、OCP特性取得部110が取得した第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性とを用いて、第二状態での正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出する。
【0069】
具体的には、ずれ量算出部140は、第一正極OCP特性に正極劣化率を乗じた特性から得られる第一正極開回路電位または第二正極開回路電位における電気量を正極電気量として算出するとともに、第一負極OCP特性に負極劣化率を乗じた特性から得られる第一負極開回路電位または第二負極開回路電位における電気量を負極電気量として算出する。そして、ずれ量算出部140は、正極電気量と負極電気量との差分をずれ量として算出する。
【0070】
OCV特性算出部150は、ずれ量算出部140が算出したずれ量と、劣化率算出部130が算出した正極劣化率及び負極劣化率と、OCP特性取得部110が取得した第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性とを用いて、第二状態でのOCV特性を算出する。
【0071】
具体的には、OCV特性算出部150は、第一電気量にずれ量を加算した値を第二電気量として算出し、第一正極OCP特性における第一電気量を第二電気量に変更した場合の正極OCP特性に正極劣化率を乗じることで、第二状態での正極OCP特性である第二正極OCP特性を算出する。また、OCV特性算出部150は、第一負極OCP特性に負極劣化率を乗じることで、第二状態での負極OCP特性である第二負極OCP特性を算出する。そして、OCV特性算出部150は、算出した第二正極OCP特性から第二負極OCP特性を差し引いて、第二状態でのOCV特性を算出する。
【0072】
記憶部160は、二次電池203のOCV特性を推定するための情報を記憶しているメモリである。具体的には、記憶部160は、第一状態における情報である第一状態データ161と、第二状態における情報である第二状態データ162とを記憶している。
【0073】
図4Aは、本発明の実施の形態に係る第一状態データ161の一例を示す図である。
【0074】
第一状態データ161は、第一状態における情報を示すデータの集まりである。つまり、同図に示すように、第一状態データ161は、「第一正極OCP特性」及び「第一負極OCP特性」を含むデータテーブルである。
【0075】
本実施の形態では、この第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性は、事前に測定され、記憶部160に記憶されており、OCP特性取得部110は、記憶部160から第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を読み出すことで、第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を取得する。なお、OCV特性推定装置100が当該第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を測定し、記憶部160に記憶させる構成でもかまわない。
【0076】
図4Bは、本発明の実施の形態に係る第二状態データ162の一例を示す図である。
【0077】
第二状態データ162は、第二状態における情報を示すデータの集まりである。つまり、同図に示すように、第二状態データ162は、「第一正極開回路電位」、「第一負極開回路電位」、「差分電気量」、「第二正極開回路電位」及び「第二負極開回路電位」を含むデータテーブルである。
【0078】
つまり、開回路電位取得部120は、第一正極開回路電位、第一負極開回路電位、差分電気量、第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位を取得して、これらのデータを記憶部160に書き込むことで、第二状態データ162を更新する。
【0079】
また、劣化率算出部130、ずれ量算出部140及びOCV特性算出部150は、記憶部160に記憶されている第一状態データ161及び第二状態データ162から必要なデータを読み出して、それぞれ算出を行う。
【0080】
次に、二次電池203のOCV特性の経時変化について、説明する。
【0081】
図5及び
図6は、二次電池203のOCV特性の経時変化を説明するための図である。具体的には、
図5の(a)は、初期状態での二次電池203の正極開回路電位と負極開回路電位とを示すグラフであり、
図5の(b)は、負極SEI形成後の二次電池203の正極開回路電位と負極開回路電位とを示すグラフである。また、
図6は、
図5の(b)からさらに時間経過後の二次電池203の正極開回路電位と負極開回路電位とを示すグラフである。
【0082】
まず、負極へのSEI(Solid Electrolyte Interphase)形成などにより、負極におけるリチウムの吸蔵放出以外にリチウムイオン(電気量)が使用されると、
図5の(a)のグラフから
図5の(b)のグラフに移行する。つまり、負極SEI形成に使われて正極に返せないリチウム量(電気量)の分だけ、負極開回路電位のグラフが相対的に右側に移動する。
【0083】
そして、さらに二次電池203の充放電が行われて劣化が進むと、負極SEI形成がさらに進み、かつ、正極または負極の容量が低下する。ここで、負極SEI形成がさらに進むと、
図6の(a)のグラフから
図6の(b)のグラフに移行する。つまり、負極開回路電位のグラフがさらに右側に移動する。また、正極または負極の容量が低下すると、
図6の(a)のグラフから
図6の(c)のグラフに移行する。つまり、正極開回路電位または負極開回路電位のグラフが横方向に縮小される。
【0084】
このため、二次電池203の劣化が進むと、負極SEI形成がさらに進み、かつ、正極または負極の容量が低下するため、負極開回路電位のグラフが右側に移動するとともに、正極開回路電位または負極開回路電位のグラフが横方向に縮小される。
【0085】
このように、二次電池203の正極OCP特性及び負極OCP特性が経時的に変化するため、二次電池203のOCV特性も経時的に変化する。
【0086】
次に、OCV特性推定装置100が二次電池203のOCV特性を推定する処理について説明する。
【0087】
図7は、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100が二次電池203のOCV特性を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
【0088】
図8は、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100が二次電池203のOCV特性を推定する処理を説明するための図である。
【0089】
まず、
図7に示すように、OCP特性取得部110は、第一状態において、第一正極OCP特性と第一負極OCP特性とを取得する(S102)。
【0090】
なお、この第一正極OCP特性と第一負極OCP特性とは、例えば単極試験によって予め測定され、記憶部160に記憶されている。
【0091】
ここで、上記の単極試験としては、例えば、二次電池203に用いる正極及び負極と同じ材質で、1.5×2.0cm
2に加工したものを試験極とし、参照極および対極として金属リチウムを用いて試験を行うことができる。また、電位範囲は、例えば、正極については4.3〜2.75(V vs.Li
+/Li)とし、負極は0.02〜2.0(V vs.Li
+/Li)とする。
【0092】
そして、当該単極試験において、満充電まで充電した後、1/20CmAで1時間放電後、3時間放置し電位測定することを30回繰り返すことで、
図5の(a)に示したような正極OCP特性と負極OCP特性とを得ることができる。これにより、
図8に示す第一正極OCP特性f(q)及び第一負極OCP特性g(q)を、既知関数として得ることができる。
【0093】
このようにして、第一正極OCP特性f(q)及び第一負極OCP特性g(q)は、事前に測定され、記憶部160に記憶される。そして、OCP特性取得部110は、記憶部160の第一状態データ161から、当該第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を読み出すことで、
図8に示す第一正極OCP特性f(q)及び第一負極OCP特性g(q)を取得する。
【0094】
次に、
図7に戻り、開回路電位取得部120は、第二状態において、第一充電時点での第一正極開回路電位及び第一負極開回路電位を取得する(S104)。
【0095】
具体的には、開回路電位取得部120は、参照極215を用いて二次電池203の正極開回路電位及び負極開回路電位を測定することで、
図8に示す第一正極開回路電位P
A及び第一負極開回路電位N
Aを取得する。ここで、
図8に示すように、第一正極開回路電位P
Aは、第二状態における正極OCP特性f’(q)上の点であり、第一負極開回路電位N
Aは、第二状態における負極OCP特性g’(q)上の点である。
【0096】
そして、開回路電位取得部120は、取得した第一正極開回路電位P
A及び第一負極開回路電位N
Aを記憶部160に書き込むことで、第二状態データ162を更新する。
【0097】
次に、
図7に戻り、開回路電位取得部120は、第二状態において、第一充電時点から第二充電時点まで通電された場合、当該通電された電気量である差分電気量と、当該第二充電時点における第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位とを取得する(S106)。
【0098】
具体的には、開回路電位取得部120は、参照極215を用いて二次電池203の正極開回路電位及び負極開回路電位を測定することで、
図8に示す第二正極開回路電位P
B及び第二負極開回路電位N
Bを取得する。ここで、
図8に示すように、第二正極開回路電位P
Bは、第二状態における正極OCP特性f’(q)上の点であり、第二負極開回路電位N
Bは、第二状態における負極OCP特性g’(q)上の点である。
【0099】
また、開回路電位取得部120は、第一充電時点から第二充電時点まで通電された電気量を測定することで、
図8に示す差分電気量Q
ABを取得する。そして、開回路電位取得部120は、取得した差分電気量Q
ABと、第二正極開回路電位P
B及び第二負極開回路電位N
Bとを記憶部160に書き込むことで、第二状態データ162を更新する。
【0100】
なお、開回路電位取得部120は、第一正極開回路電位P
Aと第二正極開回路電位P
Bとの差分が所定の値よりも大きくなるように、第一正極開回路電位P
A及び第二正極開回路電位P
Bを取得するのが好ましい。
【0101】
ここで、上記所定の値とは、大きい値であればあるほど望ましいが、例えば、二次電池203の定格容量Q
0、電気量QにおいてDOD(Depth Of Discharge)をD=Q/Q
0とした場合のD≧0.1となる区間における変化量ΔDと、P
AとP
Bとの差分ΔEとの比率が、ΔE/ΔD>0.1Vとなるような値であるのが好ましい。また、さらに好ましくは、ΔE/ΔD>0.05Vとなるような値である。
【0102】
なお、二次電池の定格容量Q
0(Ah)は、十分に小さい電流値で放電させたときの放電容量を指すものとし、次のようにして測定されたものを用いることができる。
【0103】
(1)二次電池をあらかじめ1/20CAで放電カット電圧3.0Vまで放電する。
(2)二次電池を1/20CAで充電カット電圧4.2Vまで定電流充電したのち、4.2Vでの定電圧充電を総充電時間30時間となるまで継続して行う。
(3)二次電池を1/20CAで放電カット電圧3.0Vまで放電し、得られた放電容量をQ
0(Ah)とする。
【0104】
ただし、1CAの電流値は二次電池の公称容量を基準にするものであり、公称容量1Ahの二次電池においては、1CA=1Aである。
【0105】
また、開回路電位は、二次電池に参照極を設けた状態で上記工程(1)および(2)を実施したのち、以下に示す(3)’の工程を25回繰り返すことによって得ることができる。
【0106】
(3)’二次電池を1/20CAで1時間または放電カット電圧3.0Vとなるまで放電したのち、2時間開回路状態で放置し、得られた電位を開回路電位とする。
【0107】
なお、二次電池から負極を取り出して、別途3端子式セルを組み立てて、単極での開回路電位測定を行うこともできる。
【0108】
次に、
図7に戻り、劣化率算出部130は、第一正極OCP特性、第一負極OCP特性、第一正極開回路電位、第一負極開回路電位、差分電気量、第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位を用いて、正極劣化率及び負極劣化率を算出する(S108)。
【0109】
具体的には、劣化率算出部130は、記憶部160に記憶されている第一状態データ161から第一正極OCP特性f(q)及び第一負極OCP特性g(q)を読み出し、第二状態データ162から、第一正極開回路電位P
A、第一負極開回路電位N
A、差分電気量Q
AB、第二正極開回路電位P
B及び第二負極開回路電位N
Bを読み出して、正極劣化率及び負極劣化率を算出する。なお、この劣化率算出部130が正極劣化率及び負極劣化率を算出する処理の詳細な説明については、後述する。
【0110】
そして、ずれ量算出部140は、正極劣化率、負極劣化率、第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を用いて、第二状態での正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出する(S110)。
【0111】
具体的には、ずれ量算出部140は、記憶部160に記憶されている第一状態データ161から第一正極OCP特性f(q)及び第一負極OCP特性g(q)を読み出し、当該ずれ量を算出する。なお、このずれ量算出部140が当該ずれ量を算出する処理の詳細な説明については、後述する。
【0112】
そして、OCV特性算出部150は、ずれ量、正極劣化率、負極劣化率、第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を用いて、第二状態でのOCV特性を算出する(S112)。
【0113】
具体的には、OCV特性算出部150は、記憶部160に記憶されている第一状態データ161から第一正極OCP特性f(q)及び第一負極OCP特性g(q)を読み出し、第二状態でのOCV特性を算出する。なお、このOCV特性算出部150が第二状態でのOCV特性を算出する処理の詳細な説明については、後述する。
【0114】
以上のようにして、OCV特性推定装置100が二次電池203のOCV特性を推定する処理は、終了する。
【0115】
次に、劣化率算出部130が正極劣化率及び負極劣化率を算出する処理(
図7のS108)について、詳細に説明する。
【0116】
図9は、本発明の実施の形態に係る劣化率算出部130が正極劣化率及び負極劣化率を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0117】
図10は、本発明の実施の形態に係る劣化率算出部130が正極劣化率及び負極劣化率を算出する処理を説明するための図である。
【0118】
まず、
図9に示すように、劣化率算出部130は、第一正極OCP特性から得られる第一正極開回路電位及び第二正極開回路電位における電気量の差を正極差分電気量として算出する(S202)。また、劣化率算出部130は、第一負極OCP特性から得られる第一負極開回路電位及び第二負極開回路電位における電気量の差を負極差分電気量として算出する(S202)。
【0119】
具体的には、
図10に示すように、劣化率算出部130は、第一正極OCP特性f(q)から得られる第一正極開回路電位P
A及び第二正極開回路電位P
Bにおける電気量の差である正極差分電気量Q
Pを算出する。つまり、劣化率算出部130は、第一正極OCP特性f(q)に第二正極開回路電位P
Bを代入した場合の電気量から、第一正極OCP特性f(q)に第一正極開回路電位P
Aを代入した場合の電気量を差し引いた値を、正極差分電気量Q
Pとして算出する。
【0120】
また、同様に、劣化率算出部130は、第一負極OCP特性g(q)から得られる第一負極開回路電位N
A及び第二負極開回路電位N
Bにおける電気量の差である負極差分電気量Q
Nを算出する。つまり、劣化率算出部130は、第一負極OCP特性g(q)に第二負極開回路電位N
Bを代入した場合の電気量から、第一負極OCP特性g(q)に第一負極開回路電位N
Aを代入した場合の電気量を差し引いた値を、負極差分電気量Q
Nとして算出する。
【0121】
そして、
図9に戻り、劣化率算出部130は、差分電気量を正極差分電気量で除した値を正極劣化率として算出し、差分電気量を負極差分電気量で除した値を負極劣化率として算出する(S204)。
【0122】
具体的には、劣化率算出部130は、正極劣化率D
P及び負極劣化率D
Nを、以下の式1及び式2によって算出する。
【0123】
正極劣化率D
P=差分電気量Q
AB/正極差分電気量Q
P (式1)
負極劣化率D
N=差分電気量Q
AB/負極差分電気量Q
N (式2)
【0124】
以上のようにして、劣化率算出部130が正極劣化率及び負極劣化率を算出する処理(
図7のS108)は、終了する。
【0125】
次に、ずれ量算出部140が正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出する処理(
図7のS110)について、詳細に説明する。
【0126】
図11は、本発明の実施の形態に係るずれ量算出部140が正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0127】
図12は、本発明の実施の形態に係るずれ量算出部140が正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出する処理を説明するための図である。
【0128】
まず、
図11に示すように、ずれ量算出部140は、第一正極OCP特性に正極劣化率を乗じた特性から得られる第一正極開回路電位または第二正極開回路電位における電気量を正極電気量として算出する(S302)。また、ずれ量算出部140は、第一負極OCP特性に負極劣化率を乗じた特性から得られる第一負極開回路電位または第二負極開回路電位における電気量を負極電気量として算出する(S302)。
【0129】
具体的には、
図12に示すように、ずれ量算出部140は、第一正極OCP特性f(q)に正極劣化率D
Pを乗じた特性D
Pf(q)(=f’(q))から得られる第一正極開回路電位P
Aにおける電気量を正極電気量q
PAとして算出する。また、ずれ量算出部140は、第一負極OCP特性g(q)に負極劣化率D
Nを乗じた特性D
Ng(q)(=g’(q))から得られる第一負極開回路電位N
Aにおける電気量を負極電気量q
NAとして算出する。
【0130】
そして、
図11に戻り、ずれ量算出部140は、正極電気量と負極電気量との差分をずれ量として算出する(S304)。具体的には、
図12に示すように、ずれ量算出部140は、正極電気量q
PAと負極電気量q
NAとの差分Cをずれ量として算出する。
【0131】
なお、ステップS302において、ずれ量算出部140は、
図12に示すように、特性D
Pf(q)から得られる第二正極開回路電位P
Bにおける電気量を正極電気量q
PBとして算出し、特性D
Ng(q)から得られる第二負極開回路電位N
Bにおける電気量を負極電気量q
NBとして算出することにしてもよい。この場合、ステップS304においては、ずれ量算出部140は、正極電気量q
PBと負極電気量q
NBとの差分Cをずれ量として算出する。
【0132】
以上のようにして、ずれ量算出部140が正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出する処理(
図7のS110)は、終了する。
【0133】
次に、OCV特性算出部150が第二状態でのOCV特性を算出する処理(
図7のS112)について、詳細に説明する。
【0134】
図13は、本発明の実施の形態に係るOCV特性算出部150が第二状態でのOCV特性を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0135】
図14は、本発明の実施の形態に係るOCV特性算出部150が第二状態でのOCV特性を算出する処理を説明するための図である。
【0136】
まず、
図13に示すように、OCV特性算出部150は、第一電気量にずれ量を加算した値を第二電気量として算出し、第一正極OCP特性における第一電気量を第二電気量に変更した場合の正極OCP特性に正極劣化率を乗じることで、第二状態での正極OCP特性である第二正極OCP特性を算出する(S402)。また、OCV特性算出部150は、第一負極OCP特性に負極劣化率を乗じることで、第二状態での負極OCP特性である第二負極OCP特性を算出する(S402)。
【0137】
具体的には、
図14に示すように、OCV特性算出部150は、第一電気量qにずれ量Cを加算して、第二電気量(q+C)を算出する。そして、OCV特性算出部150は、第一正極OCP特性f(q)における第一電気量qを第二電気量(q+C)に変更した場合の正極OCP特性f(q+C)に正極劣化率D
Pを乗じることで、第二正極OCP特性D
Pf(q+C)(=E
P)を算出する。また、OCV特性算出部150は、第一負極OCP特性g(q)に負極劣化率D
Nを乗じることで、第二負極OCP特性D
Ng(q)(=E
N)を算出する。
【0138】
そして、
図13に戻り、OCV特性算出部150は、算出した第二正極OCP特性から第二負極OCP特性を差し引いて、第二状態でのOCV特性を算出する(S404)。具体的には、OCV特性算出部150は、第二状態でのOCV特性Eを、以下の式3によって算出する。
【0139】
E=E
P−E
N=D
Pf(q+C)−D
Ng(q) (式3)
【0140】
なお、上記により、Cは、以下の式4によって表される。
【0141】
C=D
P−1f
−1(E
P)−D
N−1g
−1(E
N) (式4)
【0142】
以上のようにして、OCV特性算出部150が第二状態でのOCV特性を算出する処理(
図7のS112)は、終了する。
【0143】
以上のように、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100によれば、第一正極OCP特性、第一負極OCP特性、第一正極開回路電位、第一負極開回路電位、差分電気量、第二正極開回路電位及び第二負極開回路電位を用いて、正極劣化率及び負極劣化率を算出し、正極劣化率、負極劣化率、第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を用いて、第二状態での正極OCP特性と負極OCP特性との電気量のずれ量を算出し、ずれ量、正極劣化率、負極劣化率、第一正極OCP特性及び第一負極OCP特性を用いて、第二状態でのOCV特性を算出する。つまり、OCV特性推定装置100は、当該正極劣化率、当該負極劣化率及び当該ずれ量を算出することで、第二状態でのOCV特性を算出する。ここで、本願発明者らは、鋭意研究の結果、当該正極劣化率、当該負極劣化率及び当該ずれ量を用いて、非水電解質二次電池のOCV特性を正確に推定することができることを見出した。また、OCV特性推定装置100は、当該正極劣化率、当該負極劣化率及び当該ずれ量を用いてOCV特性を算出するため、実際に充放電を行い測定するような必要がなく、迅速に当該OCV特性を推定することができる。このため、OCV特性推定装置100は、迅速に精度良く、非水電解質二次電池のOCV特性を推定することができる。
【0144】
また、OCV特性推定装置100は、正極差分電気量及び負極差分電気量を算出し、差分電気量を正極差分電気量で除した値を正極劣化率とし、差分電気量を負極差分電気量で除した値を負極劣化率として算出する。これにより、OCV特性推定装置100は、当該正極劣化率及び当該負極劣化率を容易に算出することができる。このため、OCV特性推定装置100は、容易に、迅速に精度良く、非水電解質二次電池のOCV特性を推定することができる。
【0145】
また、OCV特性推定装置100は、正極電気量及び負極電気量を算出し、正極電気量と負極電気量との差分を当該ずれ量として算出する。これにより、OCV特性推定装置100は、当該ずれ量を容易に算出することができる。このため、OCV特性推定装置100は、容易に、迅速に精度良く、非水電解質二次電池のOCV特性を推定することができる。
【0146】
また、OCV特性推定装置100は、第一正極OCP特性における電気量に当該ずれ量を加算した場合の正極OCP特性に正極劣化率を乗じた特性から、第一負極OCP特性に負極劣化率を乗じた特性を差し引いて、第二状態でのOCV特性を算出する。これにより、OCV特性推定装置100は、容易に第二状態でのOCV特性を算出することができる。このため、OCV特性推定装置100は、容易に、迅速に精度良く、非水電解質二次電池のOCV特性を推定することができる。
【0147】
また、第一正極開回路電位と第二正極開回路電位との差分は、所定の値よりも大きい。ここで、第一正極開回路電位と第二正極開回路電位との差分が大きいほど、正極OCP特性の傾きが大きくなるので、OCV特性推定装置100は、精度良くOCV特性を算出することができる。このため、OCV特性推定装置100は、さらに精度良く、非水電解質二次電池のOCV特性を推定することができる。
【0148】
また、本発明の実施の形態に係る組電池10によれば、参照極215を有する二次電池203を含む複数の二次電池200と、二次電池203のOCV特性推定装置100とを備えており、OCV特性推定装置100は、推定した二次電池203のOCV特性を、複数の二次電池200全体のOCV特性と推定する。これにより、組電池10は、二次電池203のOCV特性を迅速に精度良く推定することができるため、全ての二次電池200全体のOCV特性を迅速に精度良く推定することができる。
【0149】
また、組電池10は、電池表面温度が、他の二次電池の平均値よりも高い二次電池203について、OCV特性を推定する。ここで、二次電池は、電池表面温度が高いほど、劣化し易い傾向にある。このため、組電池10は、劣化し易い電池のOCV特性を推定することで、組電池としての寿命の把握を正確に行うことができる。
【0150】
以上、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100及び組電池10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0151】
つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0152】
例えば、本発明は、二次電池203と、二次電池203のOCV特性を推定するOCV特性推定装置100とを備える蓄電システムとして実現することもできる。
【0153】
また、本発明は、このようなOCV特性推定装置100として実現することができるだけでなく、OCV特性推定装置100が備える特徴的な処理部の処理をステップとするOCV特性推定方法としても実現することができる。
【0154】
また、本発明は、OCV特性推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0155】
また、本発明に係るOCV特性推定装置100が備える各処理部は、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。例えば、
図15に示すように、本発明は、OCP特性取得部110、開回路電位取得部120、劣化率算出部130、ずれ量算出部140及びOCV特性算出部150を備える集積回路170として実現することができる。
図15は、本発明の実施の形態に係るOCV特性推定装置100を集積回路で実現する構成を示すブロック図である。
【0156】
なお、集積回路170が備える各処理部は、個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。
【0157】
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0158】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
【0159】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。