【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
製造例1
プレポリマー溶液(A−1)の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(360.5部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(240.3部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](1.2部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(87.7部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(10.1部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(148.3部)テトラヒドロフラン(150部)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](1.8部)を投入し、90℃で6時間反応させプレポリマー溶液(A−1)を得た。(A−1)のNCO含量は、1.82%であった。
【0022】
製造例2
プレポリマー溶液(A−2)の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(408.6部)、Mnが2100のポリエチレンフタレート(108.8部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](3.2部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(15.5部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、ベンジルアルコール(6.3部)、1,4−クロロメチルベンゼン−2−エチレントリメリテート(7.0部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(131.2部)、イソホロンジイソシアネート(4.5部)、テトラヒドロフラン(300部)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](1.8部)を投入し、90℃で6時間反応させプレポリマー溶液(A−2)を得た。(A−2)のNCO含量は、1.42%であった。
【0023】
製造例3
プレポリマー溶液(A−3)の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(390.7部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(210.4部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](1.2部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(87.7部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.2部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(147.9部)テトラヒドロフラン(150部)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](1.8部)を投入し、90℃で6時間反応させプレポリマー溶液(A−3)を得た。(A−3)のNCO含量は、1.82%であった。
【0024】
製造例4
プレポリマー溶液(A−4)の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(555.5部)、Mnが2100のポリエチレンフタレート(138.9部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010](1.39部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(20.3部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、ベンジルアルコール(9.4部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(142.6部)、イソホロンジイソシアネート(4.8部)、テトラヒドロフラン(300部)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571](2.1部)を投入し、90℃で6時間反応させプレポリマー溶液(A−4)を得た。(A−4)のNCO含量は、1.77%であった。
【0025】
製造例5
ジアミンのMEKケチミン化物(K−1)の製造
ヘキサメチレンジアミンと過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してジアミンのMEKケチミン化物(K−1)を得た。
【0026】
製造例6
ジアミンのMEKケチミン化物(K−2)の製造
イソホロンジアミンと過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してジアミンのMEKケチミン化物(K−2)を得た。
【0027】
製造例7
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)の製造
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(A−1)(100部)と製造例5で得たMEKケチミン化合物(K−1)(4.7部)を投入し、そこにジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8)(1.3重量部)を溶解した水溶液315重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)を製造した。(B−1)のMnは2.1万、体積平均粒径は155μmであった。
【0028】
製造例8
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−2)の製造
製造例7で、プレポリマー溶液(A−1)(100部)、MEKケチミン化合物(K−1)(4.7部)をプレポリマー溶液(A−2)(100部)、MEKケチミン化合物(K−1)(3.5部)に変更する以外は、製造例7と同様の方法で、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−2)を製造した。(B−2)のMnは2.0万、体積平均粒径は165μmであった。
【0029】
製造例9
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−3)の製造
製造例7で、プレポリマー溶液(A−1)(100部)、MEKケチミン化合物(K−1)(4.7部)をプレポリマー溶液(A−3)(100部)、MEKケチミン化合物(K−1)(3.8部)、MEKケチミン化合物(K−2)(1.2部)に変更する以外は、製造例7と同様の方法で、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−3)を製造した。(B−3)のMnは2.3万、体積平均粒径は155μmであった。
【0030】
製造例10
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−4)の製造
製造例7で、プレポリマー溶液(A−1)(100部)、MEKケチミン化合物(K−1)(4.7部)をプレポリマー溶液(A−4)(100部)、MEKケチミン化合物(K−1)(4.5部)に変更する以外は、製造例7と同様の方法で、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−4)を製造した。(B−4)のMnは2.1万、体積平均粒径は160μmであった。
【0031】
製造例11
スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−1)の製造
100Lのナウタミキサー内に、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)(100部)、芳香族縮合リン酸エステル[大八化学(株)社製;CR−741](12.0部)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート [三洋化成工業(株)社製; DA600](4.0部)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN 765、チバ社製](0.27部)を投入し80℃で2時間混合した。次いでジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;ケイL45−1000](0.1部)、カルボキシル変性シリコン[信越化学工業(株)製;X−22−3710](0.1部)、を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。最後に、架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S](0.3部)を投入混合することでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−1)を得た。(P−1)の体積平均粒径は158μmであった。
【0032】
製造例12
スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−2)の製造
製造例11で、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)(100部)を、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−2)(100部)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−2)を製造した。(P−2)の体積平均粒径は168μmであった。
【0033】
製造例13
スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−3)の製造
製造例11で、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)(100部)を、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−3)(100部)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−3)を製造した。(P−3)の体積平均粒径は156μmであった。
【0034】
製造例14
スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−4)の製造
製造例11で、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−1)(100部)を、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B−4)(100部)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末パウダー(P−4)を製造した。(P−4)の体積平均粒径は162μmであった。
【0035】
実施例1
スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−1)10gを180℃、0.3MPaで1分間、加圧プレス成形を行い、板厚1mmの成形表皮(L1)を作成した。
次に、スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−2)10gを180℃、0.3MPaで1分間、加圧プレス成形を行い、板厚1mmの成形表皮(L2)を作成した。
次に、スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−3)10gを180℃、0.3MPaで1分間、加圧プレス成形を行い、板厚1mmの成形表皮(L3)を作成した。
次に、スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−4)10gを180℃、0.3MPaで1分間、加圧プレス成形を行い、板厚1mmの成形表皮(L4)を作成した。
次に、スラッシュ成形用ポリ塩化ビニル樹脂粉末パウダー(P−5)10gを180℃、0.3MPaで1分間、加圧プレス成形を行い、板厚1mmの成形表皮(L5)を作成した。
(P−5)として、トリメリテート系可塑剤を含む平均重合度1000以上の塩化ビニルの単独重合体を使用した。
次に、スラッシュ成形用ポリ変性塩化ビニル樹脂粉末パウダー(P−6)10gを180℃、0.3MPaで1分間、加圧プレス成形を行い、板厚1mmの成形表皮(L6)を作成した。
(P−6)として、トリメリテート系可塑剤を含む平均重合度1000以上の塩化ビニルとオレフィン類の共重合体(共重合体中、塩化ビニルの重量が50wt%以上)を使用した。
【0036】
次に、得られた成形表皮(L1)〜(L6)を用いて、動的粘弾性測定装置「RDS−2」(Rheometric Scientific社製)でそれぞれの成形表皮(L1)〜(L6)のズリ貯蔵弾性率の測定を行った。使用治具は、ズリ弾性測定用のパラレルプレートを用いた。得られた成形表皮を測定装置の治具にはみ出さないように切り取り、セットした後、180℃まで昇温して、180℃で1分間治具間に静置させることで溶融させた後、冷却し固化させることで治具に密着させた。その後、測定温度は130℃、周波数0.01Hzの条件でズリ動的粘弾性の測定を行い、測定60分後のズリ貯蔵弾性率を読み取った。
(L1)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x1)は0.11MPa、(L2)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x2)は0.25MPa、(L3)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x3)は0.02MPa、(L4)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x4)は0.06MPa、(L5)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x5)は0.08MPa、(L6)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x6)は0.07MPaであった。
【0037】
実施例2
実施例1において、測定温度を130℃から110℃に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、成形表皮(L1)〜(L6)のズリ貯蔵弾性率を測定した。
(L1)の110℃のズリ貯蔵弾性率(x1)は0.82MPa、(L2)の110℃のズリ貯蔵弾性率(x2)は2.20MPa、(L3)の110℃のズリ貯蔵弾性率(x3)は0.09MPa、(L4)の110℃のズリ貯蔵弾性率(x4)は0.45MPa、(L5)の110℃のズリ貯蔵弾性率(x5)は0.70MPa、(L6)の110℃のズリ貯蔵弾性率(x6)は0.50MPaであった。
【0038】
実施例3
実施例1において、測定温度を130℃から140℃に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、成形表皮(L1)〜(L6)のズリ貯蔵弾性率を測定した。
(L1)の140℃のズリ貯蔵弾性率(x1)は0.07MPa、(L2)の140℃のズリ貯蔵弾性率(x2)は0.11MPa、(L3)の140℃のズリ貯蔵弾性率(x3)は0.01MPa、(L4)の140℃のズリ貯蔵弾性率(x4)は0.02MPa、(L5)の140℃のズリ貯蔵弾性率(x5)は0.01MPa、(L6)の140℃のズリ貯蔵弾性率(x6)は0.01MPaであった。
【0039】
実施例4
実施例1において、周波数を0.01Hzから1.00Hzに変更する以外は、実施例1と同様の方法で、成形表皮(L1)〜(L6)のズリ貯蔵弾性率を測定した。
(L1)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x1)は0.25MPa、(L2)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x2)は0.40MPa、(L3)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x3)は0.05MPa、(L4)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x4)は0.08MPa、(L5)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x5)は0.08MPa、(L6)の130℃のズリ貯蔵弾性率(x6)は0.07MPaであった。
【0040】
比較例1
スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−1)を予め250℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に充填し、10秒後余分なポリウレタン樹脂粉末パウダーを排出した。60秒後水冷して厚さ1mmの表皮(L1’)を作成した。
スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−2)を予め230℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に充填し、10秒後余分なポリウレタン樹脂粉末パウダーを排出した。60秒後水冷して厚さ1mmの表皮(L2’)を作成した。
スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−3)を予め230℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に充填し、10秒後余分なポリウレタン樹脂粉末パウダーを排出した。60秒後水冷して厚さ1mmの表皮(L3’)を作成した。
スラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P−4)を予め240℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に充填し、10秒後余分なポリウレタン樹脂粉末パウダーを排出した。60秒後水冷して厚さ1mmの表皮(L4’)を作成した。
スラッシュ成形用ポリ塩化ビニル樹脂粉末パウダー(P−5)を予め250℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に充填し、10秒後余分なポリ塩化ビニル樹脂粉末パウダーを排出した。60秒後水冷して厚さ1mmの表皮(L5’)を作成した。
スラッシュ成形用ポリ変性塩化ビニル樹脂粉末パウダー(P−6)を予め250℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型に充填し、10秒後余分なポリ変性塩化ビニル樹脂粉末パウダーを排出した。60秒後水冷して厚さ1mmの表皮(L6’)を作成した。
【0041】
得られた成形表皮(L1’)〜(L6’)を用いて、縦40mm、横50mmの大きさに切り、シートの裏面に、カッター(刃の厚み0.3mm)で表面に対しておよそ直角に深さ0.4〜0.6mm、長さ50mmの切り目を入れた。成形表皮を離型紙に挟み離型紙の上から重量95〜100g、寸法(縦、横、高さ)が縦100mm×横100mm×厚み1.2mmの鉄板を離型紙が隠れるように乗せ、常圧下130℃で100時間静置した後、上記シートの融着していない部分の割合である100時間非熱融着比率を下記の式に従い、算出した。
(L1’)の100時間非熱融着比率(z1’)は100%、(L2’)の100時間非熱融着比率(z2’)は100%、(L3’)の100時間非熱融着比率(z3’)は10%、(L4’)の100時間非熱融着比率(z4’)は50%、(L5’)の100時間非熱融着比率(z5’)は60%、(L6’)の100時間非熱融着比率(z6’)は50%であった。
【0042】
【数1】
【0043】
比較例2
比較例1と同様の方法で得られた成形表皮(L1’)〜(L6’)を用いて、動的粘弾性測定装置「Reogel−E4000」(UBM社製)で貯蔵弾性率の測定を行った。使用治具は、引張弾性測定用の治具を用いた。得られた成形表皮(L1’)〜(L6’)をそれぞれ幅5mm、長さ約45mmの試験片に切り取り、治具にセットした後、測定温度は130℃、周波数0.1Hzの条件で引張動的粘弾性の測定を行い、測定60分後の引張貯蔵弾性率を読み取った。
(L1’)の130℃の引張貯蔵弾性率(x1’)は1.60MPa、(L2’)の130℃の引張貯蔵弾性率(x2’)は1.20MPa、(L3’)の130℃の引張貯蔵弾性率(x3’)は0.80MPa、(L4’)の130℃の引張貯蔵弾性率(x4’)は4.20MPa、(L5’)の130℃の引張貯蔵弾性率(x5’)は1.00MPa、(L6’)の130℃の引張貯蔵弾性率(x6’)は0.80MPaであった。
【0044】
比較例3
比較例1と同様の方法で得られた成形表皮(L1’)〜(L6’)を用いて、熱機械分析装置TMA/SS6100、データ処理装置EXSTAR6000[エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製]で熱軟化温度の測定を行った。測定条件は、測定温度範囲25〜250℃、昇温速度5℃/min、荷重5g、針直径0.5mmであり、測定後の解析方法として、TMAチャートにおいて、「JIS K7121−1987、P.5、
図3階段状変化」の方法に準じて、TMA曲線の接線の交点を求め、熱軟化温度とした。
(L1’)の熱軟化温度(y1’)は140℃、(L2’)の熱軟化温度(y2’)は131℃、(L3’)の熱軟化温度(y3’)は125℃、(L4’)の熱軟化温度(y4’)は138℃、(L5’)の熱軟化温度(y5’)は125℃、(L5’)の熱軟化温度(y5’)は122℃であった。
【0045】
実施例、比較例に対する参考例として、より実際に近い条件で試験を行う長期熱融着試験を行った。本長期熱融着試験で融着しない場合には、実際にも融着しないものと見なして、本長期熱融着試験で融着する場合には、実際にも同程度融着するものと見なして、実施例の測定値の評価を行った。
比較例1と同様の方法で得られた成形表皮(L1’)〜(L6’)を用いて、下記に示した長期熱融着試験を行った。得られた長期非熱融着比率(z1)〜(z6)は、実施例1〜4のズリ貯蔵弾性率(x1)〜(x6)、比較例1の100時間非熱融着比率(z1’)〜(z6’)、比較例2の引張貯蔵弾性率(x1’)〜(x6’)、比較例3の熱軟化温度(y1’)〜(y6’)と共に結果を表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
<表皮の作成方法>
プレス部位上下共に180℃に温調した加圧プレス機に、離型紙に挟んだスラッシュ成形用ポリウレタン樹脂粉末パウダー(P)10gをセットし、1分間0.3MPaの圧力でプレス成形した後に取り出し、冷却後離型紙から剥がすことで板厚1mmの成形表皮を得た。
【0048】
<長期非熱融着比率>
厚さ1mmの成形表皮を、縦40mm、横50mmの大きさに切り、シートの裏面に、コールドカッター(刃の厚み0.3mm)で表面に対しておよそ直角に深さ0.4〜0.6mm、長さ50mmの切り目を入れた。成形表皮を離型紙に挟み離型紙の上から重量95〜100g、寸法(縦、横、高さ)が縦100mm×横100mm×厚み1.2mmの鉄板を離型紙が隠れるように乗せ、表1にそれぞれ示した温度で空気中、常圧下で1000時間静置した後、上記シートの融着していない部分の割合である長期非熱融着比率(z)を下記の式に従い、算出した。
【0049】
【数2】
【0050】
実施例1〜4において、ズリ貯蔵弾性率が0.1MPa以上であれば、110〜140℃での長期非熱融着比率が100%であり、0.1MPa未満になるとズリ貯蔵弾性率が小さいほど、長期非熱融着比率が小さくなる傾向にある。この結果とズリ貯蔵弾性率の測定時間が60分であることから、ズリ貯蔵弾性率は正しく融着のしにくさを短時間で評価できていると言える。比較例1は、100時間非熱融着比率で長期非熱融着比率を評価できているが、評価に100時間かかる。また比較例2、3では、長期非熱融比率に傾向がみられないため、評価できない。