特許第5825198号(P5825198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825198
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】収納装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/06 20060101AFI20151112BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   B60R7/06 G
   B60R7/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-115174(P2012-115174)
(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-241079(P2013-241079A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】小倉 光雄
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−149567(JP,A)
【文献】 特開2011−027209(JP,A)
【文献】 特開2009−161094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/06
B60R 7/04
B65D 43/16
B62D 43/20
B60N 3/10
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するボックス本体と、
前記ボックス本体の前記開口を挟んで対向する一側部及び他側部に揺動自在に枢支され揺動により前記開口を開閉するリッドと、
前記ボックス本体の前記一側部と前記リッドとの間にのみ介在され、該リッドを前記開口に向けて押し込む動作に連動して、該リッドが該開口を閉鎖した状態でロックされるロック状態と該ロックが解除されたロック解除状態とを交互に切り替え可能なプッシュロックオープン機構と、
前記リッドの前記ボックス本体に対向する位置又は該ボックス本体の該リッドに対向する位置の前記一側部側及び前記他側部側に取り付けられ、該リッドの前記ロック状態において、該ボックス本体と該リッドとの間に挟圧された一対のクッション部材と、を備え、
前記リッドの前記ロック状態において、前記一対のクッション部材は、前記一側部側のクッション部材の初期反力RL0が前記他側部側のクッション部材の初期反力RR0よりも大きくなっている収納装置。
【請求項2】
前記クッション部材の圧縮変形量の増加に伴う反力特性は、該圧縮変形量の増加に伴って該反力が漸増する反力漸増領域と、該反力漸増領域に続いて該圧縮変形量の増加によらず該反力が略一定の反力一定領域と、該反力一定領域に続いて該圧縮変形量の増加に伴って該反力が急増する反力急増領域と、を有している請求項1に記載の収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブボックス、コンソールボックス、カップホルダなど、開口を有するボックス本体の開口を開閉するリッドを備えた収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のグラブボックス、コンソールボックス、カップホルダなどの収納装置には、収納装置内に収納された物品の飛散を防止するために、もしくは、不使用時の外観を向上させるために、ボックス本体の開口を開閉できるリッドが設けられている。例えば、特許文献1には、自動車のセンタクラスタに配置された収納装置が開示されている。図16に特許文献1に開示されている収納装置の断面図を示す。図16に示す収納装置Szの外観は、図1及び2に示す本発明の第一実施形態に係る収納装置Sの外観とほぼ同様であるため、図1及び2における符号S、2を符号Sz、2zに、符号25L、25Rを符号25zに、符号26L、26Rを符号26zにそれぞれ置き換えた上で、図1及び2を参照しつつ収納装置Szの説明を行う。
【0003】
収納装置Szは、開口10を有するボックス本体1と、ボックス本体1に揺動自在に枢支され揺動によりボックス本体1の開口10を開閉するリッド2zと、ボックス本体1とリッド2zとの間に介在されたプッシュロックオープン機構と、リッド2zのボックス本体1に対向する位置に取り付けられた左右一対のクッション部材26zと、を備えている。リッド2zは、左右両端に前方へ突出する左腕部20と右腕部21とを備えており、左腕部20と右腕部21とは、それぞれ枢支軸22を介してボックス本体1に揺動自在に枢支されている。枢支軸22の外周にはコイルスプリング4が介挿されている。コイルスプリング4は、一端がボックス本体1に係止され、他端が左腕部20に係止されることで、リッド2zを上方へ揺動させる方向に付勢している。
【0004】
収納装置Szのプッシュロックオープン機構は、リテーナ部3と、ロックピン23とを備えている。ボックス本体1の左側壁1Lには、ハートカムを有するリテーナ部3が揺動自在に保持されている。このリテーナ部3には、左腕部20の先端からボックス本体1の左側壁1Lに向かって突出するロックピン23が係合可能となっている。また、図16に示すように、リッド2zの下部裏面の左右両端には、リング状のリブ25zが形成されており、リブ25zの内部にはそれぞれゴムからなるクッション部材26zが保持されている。左右一対のクッション部材26zは、リッド2zがボックス本体1の開口10を閉じた閉位置にあるときに、開口10の左右両側に形成された受け面12と僅かな間隔を隔てて対向している(図16参照)。
【0005】
収納装置Szのプッシュロックオープン機構を作動させるためにリッド2zをボックス本体1の開口10に向けて押し込むと、クッション部材26zの先端がボックス本体1の受け面12に当接する。そして、さらにリッド2zを押圧することによりクッション部材26zは潰れるように弾性変形する。収納装置Szにおいては、クッション部材26zにより、ボックス本体1とリッド2zとが直接衝突することがないため、ボックス本体1とリッド2zとの衝突音の発生を防止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−149567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車室内に装備されるリッドを備えた収納装置は、自動車衝突時においても収納装置内に収納された物品が自動車室内に飛散しないように設計されている。例えば、収納装置Szにおいては、自動車衝突時にリッド2zに作用する加速度(水平前方又は鉛直下方への加速度)によりリッド2zがボックス本体1の開口10に向けて押し込まれる場合があるが、このとき、プッシュロックオープン機構が誤作動してリッド2zのロックが外れることがないように設計されている。設計に用いる加速度としては、例えば、米国法規「FMVSS 201 車室内衝撃に対する乗員保護」においては、水平方向に±30G(Gは重力加速度)、鉛直方向に±10Gを考慮するように定められている。
【0008】
収納装置Szのコイルスプリング4の付勢力は、リッド開位置においては、リッド2zの位置が保持できるモーメントを有し、リッド閉位置においては、要求される加速度に対してプッシュロックオープン機構が誤作動しないようにリッド2zを保持できるモーメントを有するように設定されている。この場合、リッド2zが閉位置に近づくにつれて、リッド2zを開口10に向けて押し込む操作荷重が大きくなり、操作する感覚としてはあまり好ましくない。願わくは、プッシュロックオープン機構が作動する瞬間までは極力小さい操作荷重でリッド2zを操作できることが望まれる。
【0009】
このような要望を満足するための手段として、リッド2zを上方へ揺動させる方向に付勢するコイルスプリング4(第一のバネ)とは別に、リッド2zが閉位置になったときのみにリッド2zに付勢力を付与してリッド2zが開口10に向けて容易に押し込まれないように保持する第二のバネを配備する方法がある。例えば、特許第4200166号及び特開平11−245733号公報には、第一のバネであるコイルスプリングに加えて、第二のバネとして板バネを配備することが開示されている。しかし、このような方法では、第二のバネを追加している分、収納装置のコストアップにつながることが明白である。したがって、リッドの操作感覚の低下を許容して、第一のバネの付勢力のみによって自動車衝突時の加速度に対応できるように収納装置が製品化されているのが実情である。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、リッドの操作荷重の増加に伴う操作感覚の低下を招くことがなく、自動車衝突時の加速度に対して、プッシュロックオープン機構が誤作動することのない安価な収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、必要に応じて作用効果等を付記しつつ説明する。
【0012】
(1)本発明の収納装置は、開口を有するボックス本体と、前記ボックス本体の前記開口を挟んで対向する一側部及び他側部に揺動自在に枢支され揺動により前記開口を開閉するリッドと、前記ボックス本体の前記一側部と前記リッドとの間にのみ介在され、該リッドを前記開口に向けて押し込む動作に連動して、該リッドが該開口を閉鎖した状態でロックされるロック状態と該ロックが解除されたロック解除状態とを交互に切り替え可能なプッシュロックオープン機構と、前記リッドの前記ボックス本体に対向する位置又は該ボックス本体の該リッドに対向する位置の前記一側部側及び前記他側部側に取り付けられ、該リッドの前記ロック状態において、該ボックス本体と該リッドとの間に挟圧された一対のクッション部材と、を備え、前記リッドの前記ロック状態において、前記一対のクッション部材は、前記一側部側のクッション部材の初期反力RL0が前記他側部側のクッション部材の初期反力RR0よりも大きくなっている
【0013】
このような構成によると、プッシュロックオープン機構によりリッドがロックされている状態において、リッドのボックス本体に対向する位置又はボックス本体のリッドに対向する位置の一側部側及び他側部側に取り付けられている一対のクッション部材が、ボックス本体とリッドとの間に挟圧されている。この種のクッション部材は、ボックス本体とリッドとの衝突音の発生を防止するために従来の収納装置においても備わっている部品であるため、部品点数の増加を招くことがない。
【0014】
また、挟圧されることにより圧縮変形したクッション部材は弾性反力を発現する。したがって、クッション部材が発現する反力を自動車衝突時の加速度によってリッドに作用する慣性力に抗するように設定することが可能である。また、クッション部材は、リッドが閉位置にあるときにのみ弾性反力を発現するため、リッドを揺動させるときの操作感覚にクッション部材が影響を及ぼすことはほとんどない。よって、本発明によれば、リッドの操作荷重の増加に伴う操作感覚の低下を招くことがなく、自動車衝突時の加速度に対して、プッシュロックオープン機構が誤作動することのない安価な収納装置を提供することができる。
【0015】
また、このような構成によると、ボックス本体の一側部とリッドとの間にプッシュロックオープン機構が介在しており、リッドをロック状態からロック解除状態に切り替えるときに、他側部側のクッション部材は、一側部側のクッション部材よりも大きく圧縮変形可能とされている。ここで、クッション部材の圧縮変形可能な量とは、クッション部材の弾性反力が大きくなり手動では容易にクッション部材を圧縮変形させることができなくなった状態(以下、この状態を底つきと呼ぶ)までの圧縮変形量のことを言う。
【0016】
リッドをロック状態からロック解除状態に切り替えるときに、リッドの一側部側を押圧したときには、押圧位置がプッシュロックオープン機構に近いことから、リッドの押し込みがダイレクトにプッシュロックオープン機構に伝達され、押圧位置の最小の押し込み量でリッドをロック解除状態に切り替えることができる。しかし、押圧位置がプッシュロックオープン機構から離れているリッドの他側部側を押圧したときには、リッドの剛性が不十分であると、リッドが変形することにより他側部側の押し込み量が一側部側に正確に伝達されない。この結果、リッドの一側部側の押し込み量不足となりプッシュロックオープン機構が作動不良となる場合がある。
【0017】
したがって、リッドの他側部側を押圧することによりリッドをロック解除状態に切り替えるためには、リッドの一側部側を押圧するときの押圧位置の押し込み量よりも余分にリッドの他側部側の押圧位置を押し込む必要がある。本発明によれば、他側部側のクッション部材が、一側部側のクッション部材よりも大きく圧縮変形可能とされているため、リッドの他側部側を余分に押し込むことが可能である。したがって、剛性がある程度小さいリッドにおいて、リッドの他側部側を押圧する場合であっても、一側部側に配置されたプッシュロックオープン機構が作動不良となるリスクを小さくすることができる。
【0018】
(2)前記(1)で述べた本発明の収納装置において、好ましくは、前記クッション部材の圧縮変形量の増加に伴う反力特性は、該圧縮変形量の増加に伴って該反力が漸増する反力漸増領域と、該反力漸増領域に続いて該圧縮変形量の増加によらず該反力が略一定の反力一定領域と、該反力一定領域に続いて該圧縮変形量の増加に伴って該反力が急増する反力急増領域と、を有している。
【0019】
このような構成によると、クッション部材の反力特性に反力一定領域が含まれているため、クッション部材の反力が急増する底つきの状態となるまでに略一定の反力でクッション部材を圧縮変形させることができる。また、このような反力特性を有するクッション部材は、通常、クッション部材が底つきの状態となるまでの圧縮変形量が大きい。したがって、リッドを押圧することによりリッドをロック状態からロック解除状態に切り替えるときに、小さい操作荷重でリッドを押圧することが可能であると共に、クッション部材が底つきになりにくい。また、リッドの他側部側を押圧することによりロック解除状態に切り替えるときに、一側部側のクッション部材の弾性反力が増加しにくいため、リッドの変形が起こりにくく、一側部側及び他側部側の両クッション部材の各圧縮変形量に差が発生しにくい。よって、本発明によれば、リッドをロック状態からロック解除状態に切り替えるときの操作感覚が良好である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リッドの操作荷重の増加に伴う操作感覚の低下を招くことがなく、自動車衝突時の加速度に対して、プッシュロックオープン機構が誤作動することのない安価な収納装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一実施形態に係る収納装置のリッド閉位置における斜視図である。
図2】第一実施形態に係る収納装置のリッド開位置における斜視図である。
図3】第一実施形態に係る収納装置のリッド閉位置における断面図であって、図1におけるA−A線で切断した状態を示している。
図4】第一実施形態に係る収納装置の動作を説明する断面図である。
図5】第一実施形態に係る収納装置のリッド開位置における断面図である。
図6】第一実施形態に係る収納装置に備わるリテーナ部及びロックピンの動作を説明する説明図である。
図7】第一実施形態に係る収納装置に備わるクッション部材の斜視図である。
図8】第一実施形態に係る収納装置に備わるクッション部材の反力特性を説明するグラフである。
図9】第一実施形態に係る収納装置のリッド閉位置における断面図であって、図1におけるB−B線で切断した状態を示している。
図10図9における要部を拡大した断面図であって、左側のクッション部材及びその周辺状況と、右側のクッション部材及びその周辺状況とを示している。
図11】第一実施形態に係る収納装置に備わるリッドを開口に向けて押し込んだときのクッション部材の圧縮変形状況を説明する模式図であって、リッドの左端を押し込んだ状況を示している。
図12】第一実施形態に係る収納装置に備わるリッドを開口に向けて押し込んだときのクッション部材の圧縮変形状況を説明する模式図であって、リッドの中央を押し込んだ状況を示している。
図13】第一実施形態に係る収納装置に備わるリッドを開口に向けて押し込んだときのクッション部材の圧縮変形状況を説明する模式図であって、リッドの右端を押し込んだ状況を示している。
図14】第二実施形態に係る収納装置のリッド閉位置における要部を拡大した断面図である。
図15】第三実施形態に係る収納装置のリッド閉位置における要部を拡大した断面図である。
図16】従来の収納装置のリッド閉位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
図1〜13に基づき、本発明の一実施形態による収納装置について説明する。なお、説明中における上、下、左、右、前、後とは、図1及び2に示す上、下、左、右、前、後のことであり、収納装置に対面した使用者から見た上、下、左、右、前、後を指している。なお、図1及び2における上下方向は紙面平行方向、前方向及び右方向は紙面奥方向、後方向及び左方向は紙面手前方向に向いている。
【0023】
本実施形態の収納装置Sは、自動車のセンタクラスタに配置されている。収納装置Sは、開口10を有するボックス本体1と、ボックス本体1に揺動自在に枢支され揺動によりボックス本体1の開口10を開閉するリッド2と、ボックス本体1とリッド2との間に介在されたプッシュロックオープン機構と、リッド2のボックス本体1に対向する位置に取り付けられた左右一対のクッション部材26L、26Rと、を備えている。
【0024】
ボックス本体1は合成樹脂製であり、矩形の有底箱形を呈している。ボックス本体1は、後方に開口した矩形の開口10を有している。リッド2は合成樹脂製であり、図3〜5及び9に示すように中空構造よりなる。リッド2は、左右両端に前方へ突出する左腕部20と右腕部21とを備えており、左腕部20と右腕部21とは、それぞれ枢支軸22を介してボックス本体1の左側壁1L(一側部)及び右側壁1R(他側部)の双方に揺動自在に枢支されている。枢支軸22は上下方向の中間部に形成されており、左側の枢支軸22の外周にはコイルスプリング4が介挿されている(図3〜5参照)。コイルスプリング4は、一端がボックス本体1に係止され、他端が左腕部20に係止されることで、リッド2を上方へ揺動させる方向に付勢している。
【0025】
図2〜5及び9に示すように、リッド2の下部裏面の左右両端には、リッド2の閉状態において前方に突出している中空の凸部25L、25Rが形成されている。凸部25L、25Rは円柱状に近い円錐台状を呈しており、先端面の中心に丸穴が形成されている。左側の凸部25Lの突出量は、右側の凸部25Rの突出量よりも0.5mm程度大きい(図10参照)。凸部25L、25Rの各先端面のそれぞれには、ゴムからなるクッション部材26L、26Rが保持されている。左右一対のクッション部材26L、26Rは互いに同一の材質及び形状寸法の部材であり、リッド2がボックス本体1の開口10を閉じた閉位置にあるときに、開口10の左右両側に形成された受け面12に挟圧状態で当接している(図3及び9参照)。
【0026】
図7に示すように、クッション部材26L、26Rは、円錐台状を呈する弾性変形部26aと、弾性変形部26aよりも小径のくびれ部26cと、くびれ部26cよりも大径の係止部を有するひも状の摘み部26dとを備えている。弾性変形部26aには、径方向に貫通する貫通穴26bが形成されている。凸部25L、25Rにクッション部材26L、26Rを保持させるには、凸部25L、25Rの各先端面に形成された丸穴に前方から摘み部26dを挿通させた後、摘み部26dを後方に引っ張ればよい。これにより、クッション部材26L、26Rの各くびれ部26cが凸部25L、25Rに形成された各丸穴に嵌って、クッション部材26L、26Rが凸部25L、25Rの各先端面に保持される。
【0027】
クッション部材26L、26Rの各弾性変形部26aには、貫通穴26bが形成されているため、貫通穴26bが形成されていないクッション部材と比べて圧縮変形しやすい。クッション部材26L、26Rの圧縮変形量δの増加に伴う反力特性は図8に示すとおりである。図8に示すように、クッション部材26L、26Rの反力特性曲線は、圧縮変形量δ=0、反力R=0の点oを始点として、圧縮変形量δがδとなる点pまでの区間が、圧縮変形量δの増加に伴って反力Rが漸増する反力漸増領域となっている。また、反力漸増領域に続いて点pから点qまでの区間が、圧縮変形量δの増加によらず反力Rが略一定の反力一定領域となっている。また、反力一定領域に続いて点q以降は、圧縮変形量δの増加に伴って反力Rが急増する反力急増領域となっている。
【0028】
クッション部材26L、26Rの上記のような反力特性は、貫通穴26bが形成された弾性変形部26aの形状に起因している。すなわち、弾性変形部26aに作用する圧縮荷重が一定値に達するまでの間は、貫通穴26bを形成している壁面が座屈することなく圧縮荷重に抗するため圧縮変形量δの増加に伴って反力Rが漸増する。そして、弾性変形部26aに一定値以上の圧縮荷重が作用したときに、貫通穴26bを形成している壁面が座屈して壁面が径外方向にはらみ出し貫通穴26bの扁平が大きくなる。貫通穴26bの扁平が増加している間は、圧縮変形量δの増加によらず反力Rが略一定に保たれる。そして、貫通穴26bが完全に押し潰されると、ソリッドなゴムとなるため圧縮変形量δの増加に伴って反力Rが急増する。
【0029】
図10は、図9における要部を拡大した断面図であって、リッド2の閉状態における左側のクッション部材26L及びその周辺状況と、右側のクッション部材26R及びその周辺状況とを示している。図10における点線は、クッション部材26L、26Rに圧縮荷重が作用していないときの弾性変形部26aの輪郭線を示しており、リッド2の閉状態において、クッション部材26L、26Rは、それぞれリッド2とボックス本体1との間に挟圧されている。リッド2の左側の凸部25Lの突出量が、右側の凸部25Rの突出量よりも0.5mm程度大きいことにより、左側のクッション部材26Lの弾性変形部26aの初期圧縮変形量δL0は、右側のクッション部材26Rの弾性変形部26aの初期圧縮変形量δR0よりも0.5mm程度大きい(図8参照)。
【0030】
クッション部材26L、26Rの弾性反力Rが大きくなり手動では容易にクッション部材26L、26Rを圧縮変形させることができなくなった底つきの状態とは、図8に示す点q又は点qよりも僅かに圧縮変形量δが大きくなった点の状態を言う。よって、図8において、左側のクッション部材26Lの圧縮変形可能量は、δ−δL0又はこれよりも僅かに大きく、右側のクッション部材26Rの圧縮変形可能量は、δ−δR0又はこれよりも僅かに大きい。すなわち、右側のクッション部材26Rの圧縮変形可能量は、左側のクッション部材26Lの圧縮変形可能量よりも大きく設定されている。左側のクッション部材26Lの初期圧縮変形量δL0に対応した初期反力RL0は、右側のクッション部材26Rの初期圧縮変形量δR0に対応した初期反力RR0よりも大きく設定されている。また、初期反力RL0、RR0は、自動車衝突時の加速度によってリッド2に作用する慣性力に抗するように設定されている。
【0031】
収納装置Sのプッシュロックオープン機構は、ハートカム式ロック装置であり、リッド2を開口10に向けて押し込む動作に連動して、リッド2が開口10を閉鎖した状態でロックされるロック状態とロックが解除されたロック解除状態とを交互に切り替えるように動作する。図2に示すように、プッシュロックオープン機構は、リテーナ部3と、ロックピン23とを備えている。ボックス本体1の左側壁1Lには、ハートカム32を有するリテーナ部3が揺動自在に保持されている。このリテーナ部3には、左腕部20の先端からボックス本体1の左側壁1Lに向かって突出するロックピン23が係合可能となっている。また右腕部21の先端にはギヤ部24が形成され、ギヤ部24はボックス本体1に固定されたダンパ11と係合している。
【0032】
リテーナ部3の板状を呈するリテーナ本体30は、枢支軸31を介してボックス本体1の左側壁1Lに揺動自在に枢支されている。リテーナ本体30の表面には、図6に拡大して示すように、ハート形状のハートカム32と、ハートカム32に対向する島部33と、第一及び第二外周案内部34及び35と、がリブ状に突出形成されている。ハートカム32には、ロックピン23が係止される係止凹部32aと、ロック時にロックピン23を係止凹部32aへ向かって案内する第一テーパ部32bと、が形成されている。
【0033】
島部33と第一外周案内部34との間には、第一収容溝36が形成されている。島部33と第二外周案内部35との間には、第二収容溝37が形成されている。ハートカム32の係止凹部32aに対向する島部33の表面には、ロックピン23を第一収容溝36へ案内する第二テーパ部33aが形成されている。
【0034】
上記のように構成された本実施形態の収納装置Sのプッシュロックオープン機構の動作について、図3〜6及び10〜13を参照しつつ説明する。図3に示すように、リッド2がボックス本体1の開口10を閉じた閉位置にある状態では、コイルスプリング4には、リッド2が枢支軸22を中心にして図3における時計回りに揺動することにより付勢力が蓄えられている。また、図10に示すように、リッド2とボックス本体1との間に挟圧されることにより圧縮変形したクッション部材26L及び26Rは、それぞれ初期反力RL0及びRR0を発現している。ロックピン23がハートカム32の係止凹部32aに係止された図6の位置(a)にあることによりリッド2はロック状態で閉状態を維持している。
【0035】
コイルスプリング4の付勢力、及びクッション部材26L、26Rの弾性反力Rに抗してリッド2の下端部をボックス本体1の受け面12に向かって押圧すると、ロックピン23は上方へ揺動し、図6に示すように、ロックピン23は係止凹部32aから外れて島部33の第二テーパ部33aに当接した位置(b)に移動する。図4に示すように、リッド2がさらに押圧されると、リテーナ部3がボックス本体1の左側壁1Lに対して揺動することで、ロックピン23は第二テーパ部33aに案内され、図6に示すように、第一収容溝36の上端位置(c)まで移動する。このとき、クッション部材26L、26Rは、図7に示した弾性変形部26aの貫通穴26bがほぼ完全又は完全に押し潰されるまで弾性変形している。
【0036】
この状態でリッド2の押圧を開放すると、押圧の開放直後には、コイルスプリング4の付勢力、及びクッション部材26L、26Rの弾性反力Rによって、リッド2は枢支軸22を中心に図4における反時計回りに揺動する。リッド2の揺動が大きくなりクッション部材26L、26Rが受け面12から離れると、コイルスプリング4の付勢力によって、リッド2は図5に示す開位置まで揺動する。リッド2の揺動時には、ロックピン23は第一外周案内部34に案内されて図6の位置(c)から位置(d)を通過してリテーナ部3から外れる。
【0037】
リッド2を閉じる場合には、リッド2の下端部を押圧して、枢支軸22を中心に図5の時計回りにリッド2を揺動させる。するとロックピン23はリテーナ部3と係合し、図6の位置(e)及び位置(f)などから第一及び第二外周案内部34及び35に案内されて、図6の位置(g)で図3に示すリッド2の閉位置となる。このとき、リッド2はロック状態とはなっていない。クッション部材26L、26Rの先端が受け面12に挟圧状態で当接した後もさらにリッド2を押圧することで、クッション部材26L、26Rは潰れるように弾性変形する。そして、図4に示すように、リッド2が最も押し込まれた状態で、ロックピン23が第二収容溝37の上端位置(h)まで移動する。
【0038】
この状態でリッド2の押圧を開放すると、コイルスプリング4の付勢力、及びクッション部材26L、26Rの弾性反力Rによって、リッド2は枢支軸22を中心に図4における反時計回りに揺動する。このとき、ロックピン23は第二収容溝37を下降して、図6の位置(a)において、ロックピン23がハートカム32の係止凹部32aに係止され、これにより、リッド2がロック状態となる。
【0039】
リッド2が閉位置でロックされている図3に示す状態から、リッド2が最も押し込まれた図4に示す状態まで、リッド2が時計回りに揺動するとき、リッド2の下端部を押圧したときのクッション部材26L、26Rの圧縮変形状況は、図11〜13に示すように、押圧位置毎に異なる。図11〜13は、クッション部材26L、26Rの圧縮変形状況及びリッド2の変位状況を説明するための模式図であって、縮尺及び配置等を誇張して描いたものである。図11はリッド2の左端を押し込んだ状況、図12はリッド2の中央を押し込んだ状況、図13はリッド2の右端を押し込んだ状況を示している。また、図11〜13中の点線は、リッド2が閉位置でロックされている状態におけるリッド2の初期位置、左側のクッション部材26Lの初期反力RL0、及び右側のクッション部材26Rの初期反力RR0を模式的に示している。
【0040】
図11に示すように、リッド2の下端部の左側の点Pを押圧したときには、押圧位置がプッシュロックオープン機構に近いことから、リッド2の押し込みがダイレクトにプッシュロックオープン機構に伝達され、押圧位置の最小の押し込み量でリッド2をロック解除状態に切り替えることができる。このとき、リッド2の左端及び右端は、ほぼ均等な押し込み量でボックス本体1に向けて押し込まれ、すなわち、両クッション部材26L、26Rは、ほぼ均等に圧縮されて、左側のクッション部材26Lが反力RL1、右側のクッション部材26Rが反力RR1を発現する。このとき、反力RL1は反力RR1よりも大きい。
【0041】
図12に示すように、リッド2の下端部の中央の点Pを押圧したときには、図11に示した状態よりも押圧位置がプッシュロックオープン機構から遠くなる。このとき、リッド2の剛性がある程度小さいことによりリッド2が変形するため、押圧位置において、図11に示した押し込み量よりも大きくリッド2を押圧する必要が生じる。プッシュロックオープン機構を作動させるために、リッド2の左端を図11に示した押し込み量と同等に押し込むためには、リッド2の右端を、リッド2の左端よりもさらに大きくボックス本体1に向けて押し込む必要がある。すなわち、右側のクッション部材26Rは、左側のクッション部材26Lよりも大きく圧縮されて、左側のクッション部材26Lが反力RL1、右側のクッション部材26Rが反力RR2を発現する。このとき、クッション部材26Rの反力RR2は上述した反力RR1よりも大きい。
【0042】
図13に示すように、リッド2の下端部の右側の点Pを押圧したときには、押圧位置がプッシュロックオープン機構から最も遠くなる。このとき、リッド2の剛性がある程度小さいことによりリッド2が変形するため、押圧位置において、図12に示した押し込み量よりもさらに大きくリッド2を押圧する必要が生じる。プッシュロックオープン機構を作動させるために、リッド2の左端を図11に示した押し込み量と同等に押し込むためには、リッド2の右端を、図12に示したリッド2の右端の押し込み量よりもさらに大きくボックス本体1に向けて押し込む必要がある。これにより、左側のクッション部材26Lが反力RL1、右側のクッション部材26Rが反力RR3を発現する。このとき、クッション部材26Rの反力RR3は上述した反力RR2よりも大きい。
【0043】
このような本実施形態の構成によると、プッシュロックオープン機構によりリッド2がロックされている状態において、リッド2の下部裏面の左右両端に取り付けられている一対のクッション部材26L、26Rが、ボックス本体1とリッド2との間に挟圧されている。このクッション部材26L、26Rは、図16に示した従来の収納装置Szにおいてボックス本体1とリッド2zとの衝突音の発生を防止するために備わっているクッション部材26zの変更部品であるため、部品点数の増加を招くことがない。
【0044】
また、リッド2とボックス本体1との間に挟圧されることにより圧縮変形したクッション部材26L及び26Rは、それぞれ初期反力RL0及びRR0を発現している。初期反力RL0、RR0は、自動車衝突時の加速度によってリッド2に作用する慣性力に抗するように設定されている。また、クッション部材26L、26Rは、リッド2が閉位置にあるときにのみ弾性反力Rを発現するため、リッド2を揺動させるときの操作感覚にクッション部材26L、26Rが影響を及ぼすことはほとんどない。よって、本実施形態によれば、リッド2の操作荷重の増加に伴う操作感覚の低下を招くことがなく、自動車衝突時の加速度に対して、プッシュロックオープン機構が誤作動することのない安価な収納装置Sを提供することができる。
【0045】
また、本実施形態の構成によると、ボックス本体1の左側壁1Lとリッド2との間にプッシュロックオープン機構が介在しており、リッド2をロック状態からロック解除状態に切り替えるときに、右側のクッション部材26Rは、左側のクッション部材26Lよりも大きく圧縮変形可能とされている。したがって、リッド2の右端を押圧することによりリッド2をロック解除状態に切り替えるときには、リッド2の右端をリッド2の左端よりも余分に押し込むことが可能である。したがって、剛性がある程度小さいリッド2において、プッシュロックオープン機構が設けられていないリッド2の右側を押圧する場合であっても、プッシュロックオープン機構が作動不良となるリスクを小さくすることができる。
【0046】
また、本実施形態の構成によると、クッション部材26L、26Rの反力特性に反力一定領域が含まれているため、クッション部材26L、26Rの反力Rが急増する底つきの状態となるまでに略一定の反力でクッション部材26L、26Rを圧縮変形させることができる。また、このような反力特性を有するクッション部材26L、26Rは、クッション部材26L、26Rが底つきの状態となるまでの圧縮変形量δが大きい。したがって、リッド2を押圧することによりリッド2をロック状態からロック解除状態に切り替えるときに、小さい操作荷重でリッド2を押圧することが可能であると共に、クッション部材26L、26Rが底つきになりにくい。
【0047】
また、プッシュロックオープン機構が設けられていないリッド2の右側を押圧することによりリッド2をロック解除状態に切り替えるときに、プッシュロックオープン機構が設けられているリッド2の左側のクッション部材26Lの弾性反力Rが増加しにくいため、リッド2の変形が起こりにくく、左側及び右側の両クッション部材26L、26Rの各圧縮変形量δに差が発生しにくい。よって、本実施形態によれば、リッド2をロック状態からロック解除状態に切り替えるときの操作感覚が良好である。
【0048】
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態における両クッション部材26L、26Rの取付構造及びその周辺構造を変更した実施形態である。本実施形態におけるプッシュロックオープン機構の動作及び本実施形態における効果については、第一実施形態における収納装置Sと同様であるため説明を省略する。
【0049】
図14は、本実施形態のリッド2aの閉状態における左側のクッション部材26L及びその周辺状況と、右側のクッション部材26R及びその周辺状況とを示している。第一実施形態において説明した図10と同様に、図14における点線は、クッション部材26L、26Rに圧縮荷重が作用していないときの弾性変形部26aの輪郭線を示しており、リッド2aの閉状態において、クッション部材26L、26Rは、それぞれリッド2aとボックス本体1aとの間に挟圧されている。
【0050】
リッド2aの下部裏面の左右両端には、リッド2aの閉状態において前方に突出している中空の凸部25a、25aが形成されている。両凸部25aは、第一実施形態においてリッド2に形成されていた凸部25L、25Rの突出量を小さくしたものである。両凸部25aの突出量は互いに等しく、両凸部25aの各先端面の中心には、クッション部材26L、26Rを取り付けるための丸穴が形成されている。なお、本実施形態におけるクッション部材26L、26Rは、第一実施形態におけるクッション部材26L、26Rと同一の部品である。
【0051】
図14に示すように、ボックス本体1aのクッション部材26Lに対向した位置には、クッション部材26Lに向けて突出した受け面12Lが形成されている。また、ボックス本体1aのクッション部材26Rに対向した位置には、クッション部材26Rに向けて突出した受け面12Rが形成されている。左側の受け面12Lの突出量は、右側の受け面12Rの突出量よりも0.5mm程度大きい。したがって、本実施形態においても、第一実施形態と同様に、左側のクッション部材26Lの弾性変形部26aの初期圧縮変形量δL0は、右側のクッション部材26Rの弾性変形部26aの初期圧縮変形量δR0よりも0.5mm程度大きい(図8参照)。この状態でクッション部材26L、26Rに発現する初期反力RL0、RR0は、自動車衝突時の加速度によってリッド2に作用する慣性力に抗するように設定されている。
【0052】
<第三実施形態>
本実施形態は、第一実施形態における両クッション部材26L、26Rの取付構造及びその周辺構造を変更した実施形態である。本実施形態におけるプッシュロックオープン機構の動作及び本実施形態における効果については、第一実施形態における収納装置Sと同様であるため説明を省略する。
【0053】
図15は、本実施形態のリッド2bの閉状態における左側のクッション部材26L及びその周辺状況と、右側のクッション部材26R及びその周辺状況とを示している。第一実施形態において説明した図10と同様に、図15における点線は、クッション部材26L、26Rに圧縮荷重が作用していないときの弾性変形部26aの輪郭線を示しており、リッド2bの閉状態において、クッション部材26L、26Rは、それぞれリッド2bとボックス本体1bとの間に挟圧されている。
【0054】
リッド2bの下部裏面の左右両端には、平坦な受け面25bが形成されている。本実施形態においては、クッション部材26L、26Rがリッド2bではなくボックス本体1bに取り付けられている点で第一及び第二実施形態と異なる。
【0055】
図15に示すように、ボックス本体1bのクッション部材26Lが取り付けられる位置には、リッド2bの閉状態においてリッド2bに向けて突出した凸部13Lが形成されている。また、ボックス本体1bのクッション部材26Rが取り付けられる位置には、リッド2bの閉状態においてリッド2bに向けて突出した凸部13Rが形成されている。左側の凸部13Lの突出量は、右側の凸部13Rの突出量よりも0.5mm程度大きい。凸部13L、13Rの各先端面には、クッション部材26L、26Rを取り付けるための丸穴が形成されている。なお、本実施形態におけるクッション部材26L、26Rは、第一実施形態におけるクッション部材26L、26Rと同一の部品である。
【0056】
したがって、本実施形態においても、第一実施形態と同様に、左側のクッション部材26Lの弾性変形部26aの初期圧縮変形量δL0は、右側のクッション部材26Rの弾性変形部26aの初期圧縮変形量δR0よりも0.5mm程度大きい(図8参照)。この状態でクッション部材26L、26Rに発現する初期反力RL0、RR0は、自動車衝突時の加速度によってリッド2に作用する慣性力に抗するように設定されている。
【0057】
<その他の実施形態>
本発明の収納装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0058】
例えば、第一実施形態における収納装置Sの向きは、ボックス本体1の開口10が後方に開口した向きとされているが、収納装置Sの向きは限定されない。収納装置Sを様々な向きに回転させて配置することが可能である。例えば、ボックス本体1の開口10が上方、下方あるいは前方に開口した向きに収納装置Sを配置することが可能である。
【0059】
また、第一実施形態においては、プッシュロックオープン機構として、ハートカム32を有する揺動自在なリテーナ部3と、リテーナ部3に係合可能なロックピン23とを有するハートカム式ロック装置を用いている。しかし、ハートカム式ロック装置の構成は、これに限定されず、リテーナ部を固定してロックピンを揺動自在に配置してもよい。また、プッシュロックオープン機構として、ハートカム式ロック装置以外の機構を用いることも可能である。
【0060】
また、第一〜第三実施形態においては、クッション部材26L、26Rがゴム製であるが、ゴムに限らずクッション性が確保できる弾性体であれば他の材料でも構わない。例えば、クッション部材として熱可塑性エラストマ、発泡ウレタンなどを用いることができる。底つきなくプッシュロックオープン機構によるリッド2のロックを解除可能であると共に、自動車衝突時の加速度によってリッド2に作用する慣性力に抗する初期反力を発現し得るクッション部材であれば、クッション部材の材質及び形状寸法は限定されない。
【0061】
また、第一〜第三実施形態においては、左側のクッション部材26Lの初期圧縮変形量δL0を、右側のクッション部材26Rの初期圧縮変形量δR0よりも大き設定している。これにより、左右同一の材質及び形状寸法のクッション部材26L、26Rを用いながらも、右側のクッション部材26Rの圧縮変形可能量を、左側のクッション部材26Lの圧縮変形可能量よりも大きく設定することが可能となっている。しかし、左右に配置されるクッション部材の材質及び形状寸法を互いに異ならせることによって、プッシュロックオープン機構が設けられていない側のクッション部材が、プッシュロックオープン機構が設けられている側のクッション部材よりも大きく圧縮変形可能な構成とすることもできる。
【0062】
また、第一〜第三実施形態においては、凸部25L、25R、25a、13L及び13Rの各先端面にクッション部材26L、26Rを取り付けるための丸穴が形成されている。しかし、丸穴を形成することなく、クッション部材を凸部の先端面に両面テープや接着剤などで接合してもよい。また、クッション部材をリッドあるいはボックス本体と一体成形することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b ……… ボックス本体
1L ……… 左側壁(一側部)
1R ……… 右側壁(他側部)
10 ……… 開口
2、2a、2b ………リッド
23 ……… ロックピン(プッシュロックオープン機構)
26L、26R ……… クッション部材
3 ……… リテーナ部(プッシュロックオープン機構)
R ……… 反力
S ……… 収納装置
δ ……… 圧縮変形量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16