特許第5825212号(P5825212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825212
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20151112BHJP
【FI】
   H01L33/00 432
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-156798(P2012-156798)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-22407(P2014-22407A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】古関 正賢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080793(JP,A)
【文献】 特開2010−100682(JP,A)
【文献】 特開2007−271834(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037355(WO,A1)
【文献】 特開2009−155415(JP,A)
【文献】 特開2009−32851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、当該樹脂と屈折率の異なるガラス繊維の原料を樹脂押出機に投入する工程と、
前記樹脂押出機において前記ガラス繊維を含む前記樹脂を加熱溶融し、スクリューを70rpm以上、75rpm以下の回転数にすることにより前記スクリューによって前記ガラス繊維を含む溶融樹脂にかかる圧力を制御し、それによって前記ガラス繊維の平均長が低下するのを抑えながら、前記樹脂押出機のノズルから前記ガラス繊維を含む前記溶融樹脂を押し出す工程と、
前記ガラス繊維を含む前記溶融樹脂を前記金型で成形して、肉厚が65μm〜105μmの側壁、及び底壁部を有し、前記底壁部上にリードフレームを有するケースを形成する工程と、
前記リードフレーム上にLEDチップを実装する工程を備え、
前記ガラス繊維を含む前記溶融樹脂を押し出す工程は、押し出し成形後の前記ガラス繊維の平均長が230μm以上、前記ケースの短手方向の幅以下になるように行う、
発光装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光装置として、ガラス繊維を含有する放熱性樹脂組成物からなるリフレクターを備えた発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、放熱性組成物を用いて得られた成形品に含まれるガラス繊維の残存平均繊維長が所定の範囲にあると、得られる成形品の剛性が一段と優れることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−100682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス繊維を含む樹脂からなる、光吸収性を抑えたケースを備えた、光取出効率に優れる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、樹脂と、当該樹脂と屈折率の異なるガラス繊維の原料を樹脂押出機に投入する工程と、前記樹脂押出機において前記ガラス繊維を含む前記樹脂を加熱溶融し、スクリューを70rpm以上、75rpm以下の回転数にすることにより前記スクリューによって前記ガラス繊維を含む溶融樹脂にかかる圧力を制御し、それによって前記ガラス繊維の平均長が低下するのを抑えながら、前記樹脂押出機のノズルから前記ガラス繊維を含む前記溶融樹脂を押し出す工程と、前記ガラス繊維を含む前記溶融樹脂を前記金型で成形して、肉厚が65μm〜105μmの側壁、及び底壁部を有し、前記底壁部上にリードフレームを有するケースを形成する工程と、前記リードフレーム上にLEDチップを実装する工程を備え、前記ガラス繊維を含む前記溶融樹脂を押し出す工程は、押し出し成形後の前記ガラス繊維の平均長が230μm以上、前記ケースの短手方向の幅以下になるように行う、発光装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス繊維を含む樹脂からなる、光吸収性を抑えたケースを備えた、光取出効率に優れる発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)、(b)は、それぞれ実施の形態に係る発光装置の上面図及び側面図である。また、図1(c)は、図1(a)の線分A−Aにおいて切断された実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図2図2は、ガラス繊維の平均長と発光装置の光束との関係を表すグラフである。
図3図3は、樹脂押出機のスクリューの回転数とガラス繊維の平均長の関係の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
(発光装置の構造)
図1(a)、(b)は、それぞれ実施の形態に係る発光装置の上面図及び側面図である。また、図1(c)は、図1(a)の線分A−Aにおいて切断された実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
【0012】
発光装置1は、リードフレーム3(3a、3b)に実装されたLEDチップ4と、LEDチップ4を封止する封止材6と、を有する。リードフレーム3、LEDチップ4、及び封止材6は、ケース2内に形成される。なお、図1(a)においては、封止材6の図示を省略する。
【0013】
ケース2は、LEDチップ4を囲んでLEDチップ4から放出された光を反射する側壁部2aと、リードフレーム3下の底壁部2bとを有する。また、ケース2のゲート部2cは、後述するように、射出成形に用いられる金型のゲートの跡である。ケース2は、ガラス繊維22を含む樹脂21を射出成形することにより得られ、側壁部2a、底壁部2b、及びゲート部2cは一体に成形される。
【0014】
ケース2を構成する樹脂21は、例えば、ポリフタルアミド樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer)、PCT(Polycyclohexylene Dimethylene Terephalate)等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂である。
【0015】
側壁部2aは、例えば、図1に示されるように、ケース2の成形時に金型から取り出しやすくするために、肉厚が底部から上部にかけて小さくなる形状を有する。図1においては、上部の最も薄い部分の肉厚がT1、底部の最も厚い部分の肉厚がT2として表される。T1は、例えば65μmであり、T2は、例えば105μmである。側壁部2aの肉厚が65μmよりも薄い場合は、強度が不足することにより破損するおそれがあり、105μmよりも厚い場合は、ケース2の短手方向の幅Wが、発光装置1を後述するようなサイドビュー型等の薄型の発光装置として用いることが困難な程の値になる場合がある。ただし、側壁部2aの形状はこれに限られず、例えば、均一な肉厚(T1=T2)を有してもよい。
【0016】
ケース2に含まれるガラス繊維22は、ケース2の補強剤として機能するだけでなく、光反射材として機能する。ガラス繊維22がLEDチップ4から発せられた光を反射し、樹脂による吸収を抑えることにより、発光装置1の光取出効率を向上させることができる。
【0017】
ガラス繊維22は、直径が6μm以上13μm以下の円柱形状を有する。ケース2中のガラス繊維22の含有量は、例えば、1質量%以上40質量%以下である。
【0018】
ガラス繊維22と樹脂21との界面で効率的に光を反射させるため、ガラス繊維22と樹脂21の屈折率は異なる。例えば、樹脂21がポリフタルアミド樹脂、LCP、PCT、シリコーン系樹脂、又はエポキシ系樹脂である場合は、樹脂21の屈折率は1.45以上であるため、ガラス繊維22の屈折率は1.45未満であることが好ましい。また、例えば、樹脂21がフッ素樹脂である場合は、樹脂21の屈折率が1.4以下であるため、ガラス繊維22の屈折率は1.4より大きいことが好ましい。
【0019】
ガラス繊維22の平均長は、側壁部2aの肉厚よりも大きい。すなわち、ガラス繊維22の平均長は、側壁部2aの最も厚い部分の肉厚T2よりも大きい。このため、側壁部2aの面方向に対して平行に近い角度でガラス繊維22が配置され、より効果的に光を反射することができる。
【0020】
また、LEDチップ4から発せられてケース2内に進入した光は、ガラス繊維22内を伝播して側壁部2aの内面から取り出されると考えられる。このため、ガラス繊維22が長い方が、ケース2内を光が伝播しやすく、側壁部2aの内面から取り出され易い。
【0021】
ガラス繊維22の平均長は230μm以上であることが好ましい。ガラス繊維22の平均長は230μm以上であれば、側壁部2aが65μm以上、105μm以下という比較的薄い肉厚を有する場合であっても、ケース2の光吸収性を十分に抑えることができる。
【0022】
特に、発光装置1がサイドビュー型のような薄型の発光装置である場合、ケース2の短手方向の幅Wが小さいことが求められる場合が多い。例えば、発光装置1がサイドビュー型であれば、ケース2の底壁部2bが発光装置1の取付面にほぼ垂直になるように取り付けられるため、ケース2の短手方向が発光装置1の厚さ方向になり、ケース2の短手方向の幅Wが小さいほど発光装置1の厚さが抑えられる。この様な場合、本実施の形態によれば、ケース2の光吸収性を十分に抑えつつ、側壁部2aの肉厚を薄くし、短手方向の幅Wを小さくすることができるため、光取出効率に優れ、かつ薄型の発光装置1を得ることができる。
【0023】
図2は、側壁部2aの肉厚が65μm以上、105μm以下、すなわち最も薄い部分の肉厚T1が65μmで最も厚い部分の肉厚T2が105μm、である場合の、ガラス繊維22の平均長と発光装置1の光束との関係を表すグラフである。図2の横軸はガラス繊維22の平均長(μm)を表し、縦軸はガラス繊維22の平均長が184μmのときの光束を100%としたときの光束比(%)を表す。
【0024】
図2は、側壁部2aの肉厚が65μm以上、105μm以下の場合に、ガラス繊維22の平均長が大きいほど、発光装置1の光束が大きい、すなわち発光装置1の光取出効率が高いことを示している。
【0025】
なお、ケース2にガラス繊維22が含まれない場合の発光装置1の光束比は約95%である。ガラス繊維22の平均長が230μm以上である場合、ケース2にガラス繊維22が含まれない場合と比較して光束を10%以上向上させることができるため、ガラス繊維22の平均長は230μm以上であることが好ましい。
【0026】
なお、この測定に用いたケース2の短手方向の幅Wは600μmであり、ガラス繊維22の長さの分布は0〜600μmであった。ケース2の短手方向の幅Wとガラス繊維22の最大長が一致している理由については後述する。
【0027】
(ケースの製造)
ケース2は、射出成形により製造される。まず、樹脂21とガラス繊維22の原料を樹脂押出機に投入し、シリンダーのヒーターの熱と、スクリューの回転の摩擦熱で樹脂を溶融する。その後、ガラス繊維22の原料を含む溶融した樹脂21の原料にスクリューにより圧力をかけ、樹脂押出機のノズルから金型に射出、注入する。
【0028】
樹脂押出機から金型に注入された溶融樹脂は、流路であるスプルーを通り、分岐路であるランナーを通り、キャビティとコアでつくられた空間へ充填され、成形される。ここで、キャビティとコアでつくられた空間への入り口はゲートと呼ばれ、ケース2のゲート部2cは、樹脂21のゲート内で固まった部分である。その後、成形されたガラス繊維22を含む樹脂21が金型から外され、ケース2が得られる。
【0029】
ガラス繊維22の原料を樹脂押出機に投入する際に、樹脂押出機の元込め位置ではなくサイドフィーダーから投入することにより、シリンダー内においてガラス繊維22の原料に加わる力を抑え、ガラス繊維22の平均長の低下を抑えることができる。これにより、平均長の長いガラス繊維22を形成することができる。
【0030】
例えば、原料を樹脂押出機の元込め位置に投入する場合に得られるガラス繊維22の平均長を100%とすると、原料をサイドフィーダーから投入した場合のガラス繊維22の平均長は235%になる。ガラス繊維22の原料として、例えば、カット長3〜6mm程度のチョップドストランドを用いることができる。
【0031】
また、樹脂押出機のスクリューの回転数を抑えることにより、ガラス繊維の原料に加わる力を抑え、平均長の低下を抑えることができる。図3は、スクリューの回転数とガラス繊維22の平均長の関係の一例を表すグラフである。図3の横軸はスクリューの回転数(rpm)を表し、縦軸はスクリューの回転数が220rpmであるときのガラス繊維22の平均長を100%としたときのガラス繊維22の平均長比(%)を表す。図3によれば、スクリューの回転数が70rpm、及び75rpm以下であるときのガラス繊維22の平均長比は129%になる。
【0032】
ただし、ガラス繊維22の平均長は、ケース2の短手方向の幅W以下である。これは、射出成形の過程で、幅W以上の長さを有するガラス繊維は金型のランナーやゲートを通過する際に折れたり、通過できずに留まったりする場合が多く、ガラス繊維22の最大長が幅Wとほぼ一致することによる。
【0033】
上記のように、ガラス繊維22の原料を樹脂押出機のサイドフィーダーから投入したり、スクリューの回転数を抑えたりすることにより、ガラス繊維22の平均長の低下を抑えることができる。例えば、短手方向の幅Wが600μm、側壁部2aの肉厚T1が65μm、T2が105μmであるケース2を形成する場合には、平均長が230μm以上のガラス繊維22をケース2内に形成することができる。
【0034】
また、樹脂21は、光反射材として機能する微粒子が分散した樹脂であることが好ましい。光反射材の微粒子は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、窒化ホウ素からなる。また、光反射材の微粒子は、例えば、直径が0.1μm以上0.3μm以下の略球形状を有し、ケース2中の含有量が10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。樹脂21が光反射材の微粒子を含む場合、ガラス繊維22により光を拡散反射し、微粒子により光を正反射することができる。
【0035】
リードフレーム3は、例えば、表面をAgでめっきしたCuからなる。
【0036】
LEDチップ4の図示しないn電極及びp電極は、ワイヤー5a、5bを介してリードフレーム3a、3bにそれぞれ接続される(ワイヤボンディング)。また、LEDチップ4は、ダイボンディングペーストによりリードフレーム3に固定される。
【0037】
なお、図1に示される発光装置1は、フェイスアップ型のLEDチップをLEDチップ4として用いたトップビュー型表面実装装置であるが、サイドビュー型、砲弾型、COB(Chip on Board)型等、他の構成を有してもよい。LEDチップ4も、フェイスアップ型に限られず、例えば、フリップチップ型であってもよい。
【0038】
封止材6は、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂からなる。封止材6は、蛍光体を含んでもよい。さらに、蛍光体を分散させる分散剤を含んでもよい。蛍光体は、分散状態で含有されてもよく、沈降状態で含有されてもよい。
【0039】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、ケースに含まれるガラス繊維の平均長と、ケースの側壁部の肉厚との関係を適切に設定することにより、LEDチップから発せられる光のケースによる吸収を効果的に抑制し、光損失を抑制することができる。そのため、発光装置の光取出効率を向上させることができる。
【0040】
また、ケースの側壁部の肉厚が薄い場合であっても、LEDチップから発せられる光のケースによる吸収を効果的に抑制することができるため、光取出効率に優れた薄型の発光装置を得ることができる。
【0041】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0042】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0043】
1 発光装置
2 ケース
2a 側壁部
4 LEDチップ
6 封止材
21 樹脂
22 ガラス繊維
図1
図2
図3