(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825228
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 69/00 20060101AFI20151112BHJP
F02M 61/18 20060101ALI20151112BHJP
F02M 69/04 20060101ALI20151112BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
F02M69/00 310V
F02M61/18 360G
F02M61/18 310B
F02M69/04 G
F02M51/06 K
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-189949(P2012-189949)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47665(P2014-47665A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100128565
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼林 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰夫
【審査官】
赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−247172(JP,A)
【文献】
特開2012−137053(JP,A)
【文献】
特開2004−316503(JP,A)
【文献】
特開2007−100643(JP,A)
【文献】
特開平11−182384(JP,A)
【文献】
特開平10−288130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00〜71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側にシート部を有するニードル弁と、
前記シート部が着座するシート面を有すると共に前記シート面の下流側にサック室を備え、前記サック室内に入口を有する噴孔を備えたノズルボディと、
前記ノズルボディ内に収容されるとともに、前記ニードル弁を摺動自在に収容するニードルガイドと、
前記シート部よりも上流側に設けられ、前記サック室内に導入される燃料を旋回させる旋回流生成部と、を備え、
前記ニードル弁は、内部に形成されたピストン収納室内に磁性ピストンを収納し、前記ピストン収納室の内周壁と前記磁性ピストンとで囲まれて形成される貯気室を備えるとともに、前記貯気室と前記サック室とを連通する連通路を備え、
前記ニードルガイドは、前記磁性ピストンの周囲に配置される磁性部を備えた燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関に関し、CO
2低減及びエミッション低減のため、過給リーン、大量EGRの研究が盛んに行われている。これらの研究によると、CO
2低減及びエミッション低減の効果を最大限に引き出すには、リーン状態が進行したり、EGRが大量に導入されたりして、燃焼限界により近づいた状態において安定した燃焼状態を得る必要がある。また、石油燃料の枯渇化が進む中、メタノールやバイオ燃料など多種の燃料でも安定して燃焼できるロバスト性が要求される。このような安定した燃焼を得るのに重要な点は混合気の着火ばらつきを低減することや膨張行程で燃料を燃やしきる速やかな燃焼を実現することである。
【0003】
また、直噴弁の採用が増加する中、噴霧燃料が液滴のまま燃焼室壁やポート壁面に衝突すると、オイル希釈が問題となり、PM(Particulate Matter)やスモークの発生、さらには、過渡応答性の悪化が懸念される。このため、これらの対策も必要となる。これらの対策としては、燃料が速やかに気化できるように噴霧燃料を微細化し、また、燃焼室壁やポート壁に燃料が衝突しないように低ペネトレーション化することが有効である。
【0004】
このような状況下、燃料の微粒化を図るべく、旋回流を形成する燃料噴射弁が種々提案されている。例えば、特許文献1には、燃料噴射弁が備える螺旋溝に燃料を導入して旋回流を形成し、その旋回流の中心付近の圧力が低下した領域に空気を導入して燃料中に微細気泡を作り出す燃料噴射装置が開示されている。この燃料噴射装置によれば、燃料に含まれた微細気泡が破裂することによって燃料の微粒化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−247172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された燃料噴射装置が備える燃料噴射弁では、開弁初期の段階における燃料の微粒化に関し、改善の余地があった。すなわち、開弁初期の段階では、シート部の前後差圧が小さく噴孔内の燃料の旋回速度も小さいため、旋回流の中心付近に生じる負圧も弱い。このため、この領域に導入される空気の量が少なく、燃料中に混入される気泡の量が少なくなる。また、気泡径が大きくなったり、旋回流の発生遅れ等、旋回流の状態によっては、気泡を含まない燃料が噴射されたりする可能性もある。この結果、燃料噴射初期には噴霧速度が低く、空気せん断による燃料の微粒化も期待できず、微細気泡の分裂による微粒化も不十分となる。さらに、その後の開弁により十分な旋回流が得られ、微細気泡やバブル噴霧の分裂で燃料の微粒化が図られても、噴霧燃料の一部に粗大液滴が混在してしまう可能がある。
【0007】
このように一部にでも粗大液滴が混在すると、これが、PM、スモーク、HC(Hydrocarbons)、CO(Carbon monoxide)等の発生要因となる。特に、燃料の噴射量が少ないアイドル時や軽負荷時、さらには、ディーゼル機関のパイロット噴射等、全燃料噴射量に対する粗大液滴の割合が大きくなると、その影響が大きくなると考えられる。
【0008】
そこで本明細書開示の燃料噴射弁は、燃料噴射弁の開弁初期から微細気泡を含んだ燃料を噴射することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本明細書開示の燃料噴射弁は、先端側にシート部を有するニードル弁と、前記シート部が着座するシート面を有すると共に前記シート面の下流側にサック室を備え、前記サック室内に入口を有する噴孔を備えたノズルボディと、前記ノズルボディ内に収容されるとともに、前記ニードル弁を摺動自在に収容するニードルガイドと、前記シート部よりも上流側に設けられ、前記サック室内に導入される燃料を旋回させる旋回流生成部と、を備え、前記ニードル弁は、内部に形成されたピストン収納室内に磁性ピストンを収納し、前記ピストン収納室の内周壁と前記磁性ピストンとで囲まれて形成される貯気室を備えるとともに、前記貯気室と前記サック室とを連通する連通路を備え、前記ニードルガイドは、前記磁性ピストンの周囲に配置される磁性部を備えている。
【0010】
磁性ピストンは、貯気室の容積を変化させることができる。磁性ピストンは、ニードル弁がリフトしても、ニードルガイドが備える磁性部との間の磁力によって、その場に留まる。この結果、磁性ピストンは、ピストン収納室内で相対的に移動し、貯気室の容積を縮小させる。貯気室の容積が縮小すると、貯気室内の空気が圧縮される。そして、圧縮された空気がサック室を通じて噴孔の中心部に噴射される。これにより、燃料噴射弁の開弁初期であっても噴孔内に気柱を発生させ、燃料内に微細気泡を発生させ、ボイド率を高めることができる。このように、本明細書開示の燃料噴射弁は、燃料噴射弁の開弁初期から微細気泡を含んだ燃料を噴射することができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示された燃料噴射弁によれば、燃料噴射弁の開弁初期から微細気泡を含んだ燃料を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は第1実施形態の燃料噴射弁の要部を断面として示す説明図である。
【
図2】
図2は第1実施形態の燃料噴射弁の要部を分解して示す説明図である。
【
図3】
図3(A)は閉弁状態の燃料噴射弁を示し、
図3(B)は開弁状態の燃料噴射弁を示す説明図である。
【
図4】
図4(A)は第2実施形態の燃料噴射弁が備えるニードル弁の先端部の断面を示し、
図4(B)はニードル弁を先端側からみた説明図である。
【
図5】
図5(A)は第3実施形態の燃料噴射弁が備えるニードル弁の先端部の断面を示し、
図5(B)はニードル弁を先端側からみた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されている場合もある。
【0014】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の燃料噴射弁1の要部を断面として示す説明図である。
図2は第1実施例の燃料噴射弁の要部を分解して示す説明図である。第1実施形態の燃料噴射弁1は、ノズルボディ10、先端部にシート部32aを有するニードルガイド20及びニードル弁30を備える。
【0015】
ノズルボディ10は、筒状の部材であり、内側にシート面11を有する。シート面11には、後述するニードル弁30が備えるシート部32aが着座する。シート面11の上流側には、圧力室12が形成される。また、ノズルボディ10は、シート面11の下流側にサック室13を備えている。さらに、ノズルボディ10は、噴孔14を備える。噴孔14の入口14aはサック室13内に設けられている。噴孔14の出口は、ノズルボディ10の先端部に設けられている。
【0016】
ニードルガイド20は、ノズルボディ10内に収容されている。ニードルガイド20は、筒状の部材であり、その内周壁面20aに摺接するように、ニードル弁30を摺動自在に収容する。ニードルガイド20の先端部には、螺旋溝22が設けられている。螺旋溝22は、ニードルガイド20内で摺動するニードル弁30の先端部に設けられたシート部32aよりも上流側に設けられ、サック室13内に導入される燃料を旋回させる旋回流生成部に相当する。すなわち、ノズルボディ10の内周壁と、ニードルガイド20の基端側外周面との間に形成された燃料流路を通じて一旦圧力室12に導入された燃料が螺旋溝32aへ導入される。これにより、燃料に旋回成分が付与され、旋回流が生成される。ニードルガイド20は、後述する磁性ピストン40の周囲に配置される磁石部23を備えている。磁石部23は、磁性部に相当し、ニードルガイド20の内周壁面と面一となるように配置されている。本実施形態における磁石部23は、筒状の磁石部材によって形成されているが、磁石部材は、筒状でなくてもよく、例えば、棒状の磁石部材が、間隔を空けて配置されていてもよい。要は、後述する磁性ピストン40をその磁力によりほぼ停止させることができればよい。
【0017】
ニードルガイド20は、外周面がノズルボディ10の内周に圧入固定されている。そして、磁石部23を設置し、さらに、ニードルガイドセットボルト21を閉めこむことによってニードルガイド20とノズルボディ10とは一体とされる。
【0018】
ニードル弁30は、ニードルガイド20の内周壁面20aに対し摺動自在に装着されている。ニードル弁30は、基端部31とその先端側に位置する弁部32とを組み合わせて形成されている。弁部32は、筒状の中空部材である。一方の基端部31は、中実の軸状部材であり、その先端部が弁部32の内部に挿入され、弁部32と一体となるように溶接により固定されている。弁部32の先端部には、テーパ状のシート部32aが形成されている。これにより、ニードル弁30は、先端側にシート部32aを有する。このシート部32aがシート面11に着座することにより、燃料噴射弁1は、閉弁状態となる。
【0019】
ニードル弁30は、中空部材である弁部32の基端側に基端部31が挿入されることにより、ニードル弁30の内部には、ピストン収納室33が形成されている。このピストン収納室33内には磁性ピストン40が収納されている。ピストン収納室33の内周壁と磁性ピストンとで囲まれた領域が貯気室34を形成している。貯気室34の容積は、磁性ピストン40のピストン収納室33内での位置に応じて変化する。ニードル弁30、より具体的には、弁部32は、貯気室34とサック室13とを連通する連通路35を備えている。連通路35は、ニードル弁30の摺動方向に沿って設けられている。貯気室34内の空気は、連通路35を通じてサック室13内に供給される。
【0020】
つぎに、磁性ピストン40について説明する。磁性ピストン40は、先端側に位置する磁性部41と、基端側に位置する緩衝部42を備える。磁性部41は、ニードルガイド20に設けられた磁石部23との間の磁力により磁性ピストン40の移動を規制することができるものであればよい。すなわち、ニードルガイド20側の磁性部と、磁性ピストン40側の磁性部との材質の組み合わせは、両者間で磁力を利用することができるものであれば、どのような組み合わせであってもよい。このため、磁性ピストン41が備える磁性部41を磁石とすることもできる。
【0021】
緩衝部42は、弾性材料によって形成されている。緩衝部42は、ピストン収納室33内で移動する磁性ピストン40がニードル弁30の基端部31に衝突する際の緩衝材となる。貯気室34内には高圧の燃焼圧が作用するため、磁性ピストン40は、ニードル弁30の基端側31に衝突する。また、燃料噴射の際にも基端側31に衝突する。この際、緩衝部42は、着座音の発生を抑制したり、磁性部41やニードル弁30の割れや摩耗といった損傷を抑制したりすることができる。
【0022】
燃料噴射弁1は、駆動機構を備えている。駆動機構はニードル弁30の摺動動作を制御する。駆動機構は、圧電素子、電磁石などを用いたアクチュエータやニードル弁30へ適切な圧力を付与する弾性部材など、ニードル弁30が動作するのに適する部品を備えた従来から知られる機構である。
【0023】
つぎに、以上のような燃料噴射弁1による、燃料噴射の様子について説明する。ニードル弁30がリフトし、シート部32aがシート面11から離座すると、燃料通路を通過した燃料は、一旦、圧力室12に導入され、その後、螺旋溝22へ流入する。これにより、燃料が旋回流となる。そして、旋回流は、シート面11に沿って、その旋回半径を縮小されることによって旋回速度を早めつつ噴孔14内に導かれる。噴孔14内で旋回する燃料は、噴孔14内で気柱を発生させ、微細な気泡を生成することができる。燃料噴射弁1は、このようにして生成された気泡を包含する気泡含有燃料を噴射する。
【0024】
ここで、燃料噴射弁1によって実現される噴霧の状態について説明する。燃料噴射弁1は、ニードルガイド20を備え、噴射される燃料に旋回流を付与する。旋回流を付与する目的として、燃料の良好な拡散や燃料の微粒化を挙げることができる。燃料の微粒化の原理は以下の如くである。燃料噴射弁1内で旋回速度の速い旋回流が形成され、その旋回流が噴孔に導入されると、その強い旋回流の旋回中心に負圧が発生する。負圧が発生すると燃料噴射弁1の外部の空気が噴孔14内に吸引される。これにより噴孔14内に気柱が発生する。こうして発生した気柱と燃料との界面において気泡が生成される。生成され気泡は気柱の周囲を流れる燃料に混入し、噴孔14の外周側を流れる燃料流とともに気泡含有燃料として噴射される。噴射された燃料は、中空コーン状に広がり、噴孔14から離れるにつれて液膜部分が薄くなる。そして、気泡同士が分離し、分離した気泡は、表面張力による自己加圧作用によって圧壊する。このように気泡が崩壊することにより、燃料の微粒化が達成される。
【0025】
ところが、ニードル弁30の初期には、シート部32a前後の圧力差が小さく、旋回流が弱い可能性がある。そこで、本実施形態の燃料噴射弁1は、貯気室34内から圧縮された空気を噴出し、噴孔14内に気柱を発生させている。以下、この気柱の発生について
図3を参照しつつ燃料噴射弁1の動作とともに説明する。
【0026】
図3(A)は閉弁状態の燃料噴射弁1を示し、
図3(B)は開弁状態の燃料噴射弁1を示す説明図である。
【0027】
図3(A)に示す状態からニードル弁30がリフトを開始し、
図3(B)に示す開弁状態へ移行すると、シート部32aがシート面11から離座して噴孔14に向かって燃料が移動をし始める。この開弁初期に噴孔14へ流入する燃料は、直前まで停止していた燃料であり、ほとんど旋回していない。
【0028】
ピストン収納室33内の磁性ピストン40は、ニードル弁30がリフトを開始した後であっても、磁石部23との位置は変わらない。このため、磁性ピストン40は、ピストン収納室33内で相対的に先端側に移動したことになる。この結果、貯気室34の容積が縮小される。具体的に、
ニードル弁30のリフト量×(磁性ピストン40の直径)
2×π/4
の分だけ貯気室34の容積が縮小する。
【0029】
これにより、圧縮された空気が貯気室34から噴射され、噴孔14内に供給される。この結果、噴孔14内に気柱を発生させることができ、気柱と燃料との界面において微細気泡が生成される。
【0030】
このように本実施形態の燃料噴射弁1によれば、燃料噴射弁の開弁初期から微細気泡を含んだ燃料を噴射することができる。これにより、開弁初期からボイド率を高め、バブル噴霧を噴射することができるため、粗大液滴の発生を防止し、PM、スモーク、HC、COの発生を抑制することができる。
【0031】
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態について
図4を参照しつつ説明する。
図4(A)は
図4(B)におけるA−A線断面図であり、
図4(B)はニードル弁50を先端側からみた説明図である。第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、ニードル弁に設けた連通路である。第2実施形態のニードル弁50は、4つの連通路52を備える。連通路52は、ニードル弁50の中心軸に対してオフセットされている。それぞれの連通路52の入口52aは、貯気室51内の外縁付近に設けられている。そして、出口52bは、ニードル弁50の中心付近に設けられている。すなわち、連通路52は、ニードル弁50の中心軸に対して斜めに延びている。4つの連通路52は、それぞれ同様に斜めに設けられており、連通路52を通過した空気は、旋回することができる。ここで、空気の旋回方向を旋回溝22を通過した燃料の旋回方向と一致させている。貯気室51内の空気はニードル弁50の中心軸回りに集まって噴射され、このような空気は、噴孔14に供給される。
【0032】
これにより、開弁初期のシート部前後の差圧が小さく、燃料の旋回速度が低い状態のときであっても、旋回流の旋回速度を増速することができる。また、デッド燃料のように旋回成分が発生していない燃料流に対しても旋回成分をふよすることができる。
【0033】
この結果、噴孔14内に気柱を生成し、微細気泡を発生させることができる。これにより、開弁初期からボイド率を高め、バブル噴霧を噴射することができるため、粗大液滴の発生を防止し、PM、スモーク、HC、COの発生を抑制することができる。なお、連通路は4つでなくてもよい。
【0034】
(第3実施形態)
つぎに、第3実施形態について
図5を参照しつつ説明する。
図5(A)は
図5(B)におけるB−B線断面図であり、
図5(B)はニードル弁70を先端側からみた説明図である。第3実施形態のニードル弁70は、第2実施形態のニードル弁50と同様にニードル弁70の中心軸に対してオフセットさせた4つの連通路72を備えている。連通路72から噴射される空気の旋回方向を旋回溝22を通過した燃料の旋回方向と一致させている点も第2実施形態と同様である。
【0035】
第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、第3実施形態がニードル弁70の先端部に旋回室73を備えた点である。旋回室73は、先端部開口が噴孔14と対向して設けられる。連通路72の入口72aは、第2実施形態と同様に貯気室71内の外縁付近に設けられているが、出口72bは、旋回室73内に設けられている。
【0036】
貯気室71から連通路72を通じて噴射される空気は、一旦旋回室73の内壁に沿って旋回するため、旋回状態が安定し、また、旋回速度を増速することができる。このように、旋回室73内で安定し、旋回速度が増した空気の旋回流が気柱の生成に寄与する。
【0037】
これにより、開弁初期のシート部前後の差圧が小さく、燃料の旋回速度が低い状態のときであっても、旋回流の旋回速度を増速することができる。また、デッド燃料のように旋回成分が発生していない燃料流に対しても旋回成分をふよすることができる。
【0038】
この結果、噴孔14内に気柱を生成し、微細気泡を発生させることができる。これにより、開弁初期からボイド率を高め、バブル噴霧を噴射することができるため、粗大液滴の発生を防止し、PM、スモーク、HC、COの発生を抑制することができる。なお、連通路は4つでなくてもよい。
【0039】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、50、70 燃料噴射弁
10 ノズルボディ
11 シート面
12 圧力室
13 サック室
14 噴孔
14a 入口
14b 出口
20 ニードルガイド
20a 内周壁面
21 ニードルガイドセットボルト
22 螺旋溝
23 磁石部
30、50、70 ニードル弁
31 基端部
32 弁部
32a シート部
33 ピストン収納室
34、51、71 貯気室
35、52、72 連通路
40 磁性ピストン
41 磁石部
42 緩衝部
73 旋回室