(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車線変更制御は、乗員の乗り心地を悪化させないためにも、できるだけ緩やかに行われることが好ましい(言い換えれば、急激な加減速を行わずに済むように車線が変更されることが好ましい)。このため、車線変更制御に使用する時間は比較的長めに設定される傾向がある。なお、自車両の周辺を走行する他車両の存在により、設定された時間内に車線変更を完了できないと判定された場合には、車線変更制御は実施不可能であると判断される。
【0006】
ここで、上述した技術のように、車載カメラやレーダ等によって隣接車線の車両を検出する場合、自車両と同じ車線を走行する他車両(例えば、自車両の真後ろを走行する車両)の存在により、検出可能な範囲が狭まってしまう可能性がある。このような場合、通常時には検出可能であるはずの隣接車線の他車両の存在を検出することができなくなってしまう。このため、仮に車線変更制御に使用する時間が長めに設定されているとすると、他車両を確実に回避できるか否かが判定できず、車線変更制御は不可能であると判断せざるを得ない状況が多く生じ得る。即ち、車線変更制御時の乗り心地を優先させることで、車線変更の機会が減少してしまうという技術的問題点が生ずる。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、乗員の乗り心地及び車線変更の機会の両方を好適に確保することが可能な車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両制御装置は上記課題を解決するために、車両の車線変更操作を少なくとも部分的に自動で実行可能な車両制御装置であって、前記車両の車線変更先の車線を走行する他車両を認識する他車両認識手段と、前記他車両認識手段により前記他車両を認識することが可能である認識可能領域を検出する領域検出手段と、前記認識可能領域が大きい程、前記車両の車線変更に充てる車線変更時間を長く設定する車線変更時間設定手段と、前記車線変更時間で車線変更が完了するように前記車両の走行を制御する走行制御手段とを備える。
【0009】
本発明の車両制御装置によって制御される車両は、例えばミリ波レーダの監視に基づくスロットル制御及びブレーキ制御によって実現されるACC(Adaptive Cruise Control)制御や、車載カメラでの白線認識に基づくステアリング制御によって実現されるLKA(Lane Keeping Assist)制御等の各種自動実行制御を含む自動運転が可能である。なお、ここでの「自動運転」には、運転者による運転操作の全てが自動で実行される完全自動運転制御のみならず、運転操作の一部のみを自動で実行する(言い換えれば自動化されない一部の運転操作を運転者が継続して行う)半自動運転制御も含まれる。運転者は、例えば車内に設けられた自動運転作動スイッチの操作により、自動運転と通常運転とを相互に切替えることが可能とされる。
【0010】
また本発明の車両制御装置では特に、車両の車線変更制御についても自動的に実行可能とされている。例えば、自車両の前方を走行する先行車両の速度が自車両の設定速度よりも遅い場合には、先行車両との車間距離が所定値以下となった時点で、車線変更制御が実行される。これにより、自車両は先行車両を追い越し、設定速度を変更することなく走行を続けることが可能となる。
【0011】
車線変更制御を実行する際には、先ず例えばミリ波レーダや車載カメラ等を含んで構成される他車両認識手段によって、自車両の車線変更先となる車線を走行する他車両が認識される。なお、ここでの「認識」とは、他車両が存在していることの検出を意味するだけではなく、他車両に関する各種パラメータ(例えば、車速、加速度及び車間距離等の車線変更制御に影響を与え得るパラメータ)の検出を含む概念である。
【0012】
上述した他車両の認識に際して、領域検出手段では、他車両認識手段によって他車両を認識することが可能である認識可能領域が検出される。即ち、領域検出手段では、他車両認識手段の有効範囲の大きさが検出される。なお、認識可能領域は、障害物が存在しない場合には概ね一定であるが、例えば自車両の周辺を走行する他車両との車間距離が小さくなることで狭まることが想定される。具体的には、例えば自車両の真後ろを走行する他車両が他車両認識手段の障害となり、隣接車線を走行する他車両が検出され難くなってしまうような状況が想定される。
【0013】
認識可能領域の検出は、例えば車載カメラの撮像画像の解析やレーダによる測定結果に基づいて行われる。或いは、上述した他車両が障害となる場合を想定して、障害となる他車両との車間距離等に基づいて検出されても構わない。なお、認識可能領域の大きさは、領域の面積として検出されてもよいし、所定方向の長さ(例えば、進行方向の長さ)として検出されても構わない。
【0014】
そして本発明では特に、車線変更時間設定手段により、検出された認識可能領域が大きい程、自車両の車線変更に充てる車線変更時間が長く設定される。車線変更時間設定手段は、例えば認識可能領域の大きさと車線変更時間との関係を示すマップ等を記憶しており、検出された認識可能領域に応じた車線変更時間を選択する。或いは、所定の数式を記憶しており、認識可能領域の大きさに基づいて車線変更時間を算出してもよい。
【0015】
なお、車線変更時間には上限値及び下限値が設定されていてもよい。これにより、例えば危険なまでに急激な車線変更が実行されてしまったり、無駄に長い時間をかけた車線変更が実行されてしまうことを防止できる。また、認識可能領域の大きさと設定される車線変更時間との関係は、単純な比例関係でなくともよく、例えば段階的に増加するような関係、或いは増加量が逓増又は逓減するような関係であっても構わない。
【0016】
車線変更時間が設定されると、走行制御手段により、設定された車線変更時間で車線変更が完了するように自車両の走行が制御される。走行制御手段は、例えば設定された車線変更時間に基づいて自車両の走行軌跡や加速度等を演算し、自車両の操舵制御及び加減速制御を実行する。
【0017】
上述した車線変更制御では、例えば認識可能領域が比較的小さいことが検出された場合には、自車両との距離が近いにもかかわらず認識できない他車両が存在している可能性があると判断され、車線変更制御が短い時間で完了される。ここで仮に、車線変更時間が固定された値であったとすると、自車両の近くに認識できない他車両が存在し得ると想定すると、衝突を回避するためにも車線変更制御の実施が不可能であると判断せざるを得ない。しかるに本発明では、認識可能領域に応じて車線変更時間が短くされるため、自車両の近くに他車両が存在している場合であっても短時間で車線変更制御を完了できる。従って、車線変更の機会が減少してしまうことを防止できる。
【0018】
他方で、認識可能領域が比較的大きいことが検出された場合には、自車両から離れた位置の他車両であっても検出できるため、車線変更制御が長い時間をかけて実行される。このようにすれば、緩やかな加減速での車線変更が実現できるため、急な加減速によって乗り心地が悪化してしまうことを防止できる。
【0019】
以上説明したように、本発明の車両制御装置によれば、車線変更時の乗り心地及び車線変更の機会の両方を確保しつつ、好適に車両の走行を制御することが可能である。
【0020】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0023】
<装置構成>
先ず、本実施形態に係る車両制御装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る車両制御装置の全体構成を示すブロック図である。なお、
図1では、説明の便宜上、車両の制御を行うための各部材のうち本実施形態に関連の深い部材のみを図示しており、他の部材については図示を省略している。
【0024】
図1において、車両制御装置10は、主な構成要素として、ECU(Electronic Control Unit)100、前方カメラ110、後方カメラ115、ミリ波レーダ120、後方ミリ波レーダ125、自動運転スイッチ130、ディスプレイ140、電動アクセル210、電動ブレーキ220及び電動パワーステアリング230を備えて構成されている。
【0025】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、車両の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、車両における各種制を実行可能に構成されている。
【0026】
前方カメラ110は、主に車両1の前方の画像を撮像する。また後方カメラ115は、主に車両の後方の画像を撮像する。前方カメラ110及び後方カメラ115によって撮像された画像を示す信号は、それぞれECU100に送信される。
【0027】
ミリ波レーダ120は、車両前方にミリ波を出射すると共に、対象物(例えば、先行車等)により反射された電波を受信し、伝播時間やドップラー効果に起因して生じる周波数等を基に、対象物の位置や車両との相対速度を測定する。また後方ミリ波レーダは、車両後方に対してミリ波レーダ120と同様の動作を行う。ミリ波レーダ120及び後方ミリ波レーダ125における測定結果は、それぞれECU100に送信される。
【0028】
自動運転スイッチ130は、車内の運転者が操作可能な位置に設けられており、スイッチを操作することで、通常運転と自動運転とを相互に切替えることが可能とされている。
【0029】
ディスプレイ140は、例えば(Human Machine Interface)、HUD(Head Up Display)、カーナビゲーション等のディスプレイであり、運転者又は同乗者から視認可能な位置に設けられている。或いは、車両の運転者が所持する携帯端末(例えば、スマートフォン)等のディスプレイであってもよい。ディスプレイ140は、ECU100から伝達される各種信号に応じた表示を行えるように構成されている。
【0030】
電動アクセル210は、自動運転時において、車両の加速制御を実行可能に構成されている。また、電動ブレーキ220は、自動運転時において、車両の減速制御を実行可能に構成されている。電動アクセル210及び電動ブレーキ220によれば、例えば前方カメラ110やミリ波レーダ120から得られる先行車の情報に基づいて、ACC制御が実行可能となる。
【0031】
電動パワーステアリング230は、自動運転時において、車両のステアリング制御を実行可能に構成されている。電動パワーステアリング230によれば、例えば前方カメラ110やミリ波レーダ120から得られる白線の情報に基づいて、LKA制御が実行可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係るECU100は特に、他車両認識部101、認識領域検出部102、車線変更時間設定部103及び走行制御部104を備えている。
【0033】
後方車両認識部101は、本発明に係る「他車両認識手段」の一例であり、後方カメラ110の撮像画像や後方ミリ波レーダ125の測定結果に基づいて、隣接車線を走行する後方車両を認識する。また、後方車両認識部101は、単に後方車両の存在を検出するだけでなく、後方車両の加速度や自車両と後方車両との車間距離等、後述する車線変更制御に利用される各種パラメータを検出する。
【0034】
認識可能領域検出部102は、本発明に係る「領域検出手段」の一例であり、後方車両認識部101によって後方車両を認識することが可能な認識可能領域の大きさを検出する。認識可能領域検出部102は、例えば後方カメラ110の有効撮像範囲や、後方ミリ波レーダ125の測定可能範囲を認識可能領域として検出する。認識可能領域は、通常は後方カメラ110や後方ミリ波レーダ125の仕様により一定であるが、障害物の有無等に応じて変動し得る。認識可能領域検出部102は、このような認識可能領域の大きさの変動を検出可能に構成されている。
【0035】
車線変更時間設定部103は、本発明に係る「車線変更時間設定手段」の一例であり、認識可能領域検出部102で検出された認識可能領域の大きさに基づいて、自車両が車線変更制御にかける時間を設定する。車線変更時間の具体的な設定方法については、後に詳述する。
【0036】
走行制御部104は、本発明に係る「走行制御手段」の一例であり、車線変更時間設定部103で設定された車線変更時間で車線変更が完了するように車両の走行を制御する。具体的には、走行制御部104は、設定された車線変更時間に基づいて自車両の走行軌跡や加速度等を演算し、電動パワーステアリング230による自車両の操舵制御、並びに電動アクセル210及び電動ブレーキ220による加減速制御を実行する。
【0037】
<自動運転制御>
次に、先行車両が存在する場合の自動運転制御について、
図2から
図4を参照して説明する。ここに
図2は、車両の先行車認識領域及び白線認識領域を示す上面図である。また
図3は、先行車追従モードでの自動運転を示す概念図であり、
図4は、追い越しモードでの自動運転を示す概念図である。
【0038】
図2において、本実施形態に係る車両制御装置が搭載される自車両310の前方を先行車両320が走行しているとする。この場合、自車両310の自動運転が実行される際には、前方カメラ110によって車道の白線400が認識され、白線400内を走行するように電動パワーステアリング230が制御される(LKA制御)。また、ミリ波レーダ120によって先行車両320が認識され、先行車両320との車間距離等に基づいて電動アクセル210及び電動ブレーキ220が制御される(ACC制御)。
【0039】
図3において、自動運転時の自車両310は、例えば先行車両320との車間距離を一定に保って走行するように制御される。具体的には、自動運転が開始された時点での自車両310は、所定の設定車速を保って走行するよう制御される。そして、先行車両320の速度が自車両310の速度より速く、車間距離が徐々に大きくなるようであれば、電動アクセル210による加速制御が実行される(即ち、設定車速が一時的に大きくされる)。一方で、先行車両320の速度が自車両310の速度より遅く、車間距離が徐々に小さくなるようであれば、電動ブレーキ220(或いは、電動アクセル210を緩める制御)による減速制御が実行される(即ち、設定車速が一時的に小さくされる)。これにより、自車両310と先行車両320との車間距離は一定に保たれる。
【0040】
図4において、他方で、自車両310は、先行車両320との車間距離を一定に保つことより、設定車速を一定に保つことを優先して走行するように制御されてもよい。この場合、先行車両320の速度が自車両310の速度より遅く、車間距離が徐々に小さくなるようであれば、電動パワーステアリング230による追い越し車線への車線変更制御が実行され、自車両310は先行車両320を追い抜いて走行する。このようにすれば、自車両310と相対速度が異なる先行車両320が存在している場合であっても、設定車速を一定に保って走行することができる。
【0041】
<車線変更制御>
次に、上述した追い越し制御等の際に実行され得る車線変更制御について、
図5から
図7を参照して説明する。ここに
図5は、隣接車線を走行する他車両に対する認識可能領域を示す概念図である。また
図6は、後方車両が存在する場合の認識可能領域を示す概念図であり、
図7は、車線変更後における後方車両との車間距離を示す概念図である。
【0042】
図5において、自動運転時に車線変更制御が実行される場合には、安全な車線変更を行うために、隣接車線(言い換えれば、車線変更先の車線)を走行する他車両330の存在を認識しておくことが求められる。このため、本実施形態に係る車両制御装置10では、後方カメラ115や後方ミリ波レーダ125等を用いて、隣接車線における他車両330が認識される。図中では、破線で囲う領域によって、隣接車線の他車両330を認識することが可能な認識可能領域が示されている。ここでは、他車両330が認識可能領域内に収まっているため、自車両310は他車両330を認識することが可能である。
【0043】
図6において、上記
図5の例とは異なり、隣接車線の他車両330を認識しようとする場合に、自車両310の真後ろを後方車両340が走行しているとする。この場合、後方車両340が障害となるため、認識可能領域は通常より(例えば、
図5の場合と比べて)小さくなる。よって、
図6の例では、自車両310と隣接車線の他車両330との位置関係が
図5の例と同じであるにもかかわらず、他車両330が認識可能領域外となってしまう。よって、この場合には、自車両310は他車両330を認識することができない。
【0044】
自車両310が他車両330を認識できない場合、車線変更制御に関する様々な問題が生ずると考えられる。以下では、車線変更制御にかける時間がT
Lで固定された比較例において生じる問題点について考える。
【0045】
車線変更制御を実施するためには、自車両310が車線変更した後に、自車両310と他車両330との間に衝突余裕時間TTC(Time TO Collision)に相当する車間距離が存在することが条件とされる。
【0046】
図7において、自車両310の速度をV1、他車両330の速度をV2とすると、自車両310と他車両330との相対速度Vrは、以下の数式(1)で示される。
【0047】
Vr=V2−V1 ・・・(1)
そして、車線変更後の自車両310と他車両330との間に求められる車間距離deは、衝突余裕時間TTCをT
Tとすると、以下の数式(2)で示される。
【0048】
de=T
T×Vr ・・・(2)
また、車線変更制御の実行することによる自車両310と他車両330との車間距離の変化dvは、以下の数式(3)で示される。
【0049】
dv=T
L×Vr ・・・(3)
ここで、車線変更制御の可否判断時に自車両310と隣接車線の他車両330との間に求められる車間距離、言い換えれば車線変更制御を実行可能と判断し得る最低限の認識可能距離dsは、衝突余裕時間TTCに対応する車間距離deと車線変更制御による車間距離の変化dvとの和であると考えることができる。従って、車線変更可否判断時に求められる認識可能距離dsは、以下の数式(4)で示される。
【0050】
ds=T
T×Vr+T
L×Vr ・・・(4)
なお、自車両310と他車両330との相対速度Vrを20km/h(≒5.54m/s)、車線変更時間T
Lを6秒、衝突余裕時間T
Tを5秒と仮定すると、車線変更可否判断時に求められる認識可能距離dsは60.94mとなる。よって、上述した仮定の下での比較例に係る車両制御装置では、認識可能距離dsが60.94m未満である場合、隣接車線の他車両330が実際に存在しているか否かにかかわらず、車線変更制御は実行できない。よって、後方車両340の存在によって認識可能領域が狭まってしまうと、車線変更の機会が大きく制限されてしまう。
【0051】
<車線変更時間の変更制御>
次に、上述した比較例で生じる問題点を解決し得る本実施形態に係る車両制御装置の動作について、
図8及び
図9を参照して詳細に説明する。ここに
図8は、実施形態に係る車両制御装置による車線変更時の処理を示すフローチャートである。また
図9は、後方車両との車間距離、認識可能距離及び車線変更時間の関係を示す表である。
【0052】
なお、以下の説明では、レーンキープ走行をしている自車両310が、自車両310より速度の遅い先行車両320を追い越すために車線変更制御を実施する場合について説明する(例えば、
図4の例を参照)。
【0053】
図8において、本実施形態に係る車両制御装置の動作時には、先ず車線変更制御を実施すべき状態であるか否かが判定される(ステップS101)。具体的には、例えば先行車両320との車間距離が所定閾値以下となったか否かが判定される。なお、車線変更制御を実施すべきでないと判定された場合には(ステップS101:NO)、レーンキープ走行が維持される(ステップS110)。
【0054】
車線変更制御を実施すべきと判定されると(ステップS101:YES)、自車両310の周辺環境の認識が実行される(ステップS102)。なお、ここでの「周辺環境」とは、自車両310の車線変更制御に影響を与え得る他車両等における様々な情報を包括する概念であり、具体的には、後方カメラ115や後方ミリ波レーダ125等により、隣接車線を走行する他車両330との車間距離や他車両の加速度等として検出され、ECU100の他車両認識部101において認識される。
【0055】
また本実施形態では特に、上述した周辺環境として、認識可能領域検出部102により、隣接車線の他車両330を認識することが可能な認識可能領域の大きさが検出される。ここでは、認識可能領域の大きさが進行方向の長さ(即ち、
図6中に示す認識可能距離ds)として検出されるものとする。認識可能距離dsは、例えば後方カメラ115の画像解析結果や後方ミリ波レーダ125の測定結果から直接的に求められてもよいし、後方車両340(
図6参照)との車間距離に基づいて間接的に求められてもよい。
【0056】
周辺環境が認識されると、車線変更時間設定部103において、周辺環境に基づく車線変更時間の設定が実行される。車線変更時間設定部103は、隣接車線を走行する他車両330を認識できる場合には、他車両330との車間距離や他車両330の加速度等に基づいて、他車両を好適に回避しつつ車線変更を完了できるような車線変更時間を設定する。一方で、他車両330が認識できない場合(即ち、認識可能領域に他車両330が存在しない場合)には、安全を確保するために、認識可能領域のすぐ外に他車両330が存在するものと想定して車線変更時間を設定する。即ち、このような場合には、認識可能領域の大きさに基づいて車線変更時間が設定されることになる。
【0057】
ここで、認識可能領域のすぐ外に他車両330が存在していた場合であっても、車線変更後に衝突余裕時間TTCを確保するための車線変更時間T
Lは、上述した数式(4)を変形した以下の数式(5)で示される。
【0058】
T
L=(ds/Vr)−T
T ・・・(5)
このように、車線変更時間T
Lは、認識可能距離ds、自車両310と他車両330との相対速度Vr(推定値)、及び衝突余裕時間T
Tを用いて求めることができる。数式(5)を見ても分かるように、車線変更時間T
Lは、認識可能距離dsが大きい程、長い時間として設定される。
【0059】
図9において、仮に自車両310及び他車両330の車幅が共に1.7mであり、車線幅が3.5mであると仮定すると、検出される自車両310と他車両330との車間距離から、認識可能距離dsを推定することができる。具体的には、車間距離が2mの時には認識可能距離dsは12.35mと推定できる。車間距離が5mの時には認識可能距離dsは30.85mと推定できる。車間距離が10mの時には認識可能距離dsは61.7mと推定できる。車間距離が15mの時には認識可能距離dsは92.55mと推定できる。
【0060】
そして、自車両310と他車両330との相対速度Vrを20km/h、衝突余裕時間T
Tを5秒と仮定すると、上記数式(5)の関係を用いて、車線変更時間T
Lを算出できる。具体的には、認識可能距離dsが12.35mの場合(即ち、車間距離が2mの場合)には、適切な車線変更時間T
Lが−2.7秒であると算出できる。認識可能距離dsが30.85mの場合(即ち、車間距離が5mの場合)には、適切な車線変更時間T
Lが0.553秒であると算出できる。認識可能距離dsが61.7mの場合(即ち、車間距離が10mの場合)には、適切な車線変更時間T
Lが6.106秒であると算出できる。認識可能距離dsが92.55mの場合(即ち、車間距離が15mの場合)には、適切な車線変更時間T
Lが11.659秒であると算出できる。なお、上記例の認識可能距離dsが12.35mである場合のように、車線変更時間T
Lがマイナスとなってしまう場合には、車線変更制御は不可能であると判定すればよい。
【0061】
図8に戻り、車線変更時間T
Lが算出されると、走行制御部104により、算出された車線変更時間T
Lで車線変更制御を完了できるような車線変更目標軌跡が設定される(ステップS104)。そして、走行制御部104により、車線変更目標軌跡に沿うように自車両310の走行が制御される(ステップS105)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る車両制御装置によれば、認識可能距離dsに基づいて車線変更時間T
Lが算出されるため、状況に応じた車線変更制御が実現できる。具体的には、後方車両340の存在により認識可能距離dsが狭まっている場合であっても、車線変更時間T
Lを短くすることで確実に車線変更制御を実施することができる。よって、上述した比較例のように車線変更の機会が減少してしまうことを低減することができる。また、認識可能距離dsが狭まっていない場合には、車線変更時間T
Lを長くすることで乗り心地のよい(即ち、急な加減速のない)車線変更制御を実施することができる。従って、車線変更時の乗り心地及び車線変更の機会の両方を確保しつつ、好適に車両の走行を制御することが可能である。
【0063】
なお、車線変更時の乗り心地の更に向上させるために、車線変更時間車線変更時間T
Lに下限値を設定してもよい。例えば車線変更時間T
Lの下限値を2秒とすれば、
図9における認識可能距離dsが30.85mである場合のように、車線変更時間T
Lが0.553秒と極めて短い時間として算出されてしまうような際には、車線変更時間T
Lがマイナスでなくとも、車線変更制御は不可能であると判定される。これにより、急激な加減速が行われ乗り心地が悪化してしまうことを防止できる。
【0064】
また、車線変更時間T
Lには、上限値が設定されてもよい。例えば車線変更時間T
Lの下限値を10秒とすれば、
図9における認識可能距離dsが92.55mである場合のように、車線変更時間T
Lが11.659秒と比較的長い時間として算出されてしまうような際には、車線変更時間T
Lが上限値の10秒値であるとして車線変更制御が実行される。これにより、車線変更制御が無駄に長い時間をかけて実行されてしまうことを防止できる。
【0065】
以上、本実施形態では、本発明と関連の深い構成及び制御を中心に説明したが、車両には、その他の自動運転に関する構成が備えられていてもよいし、その他の自動運転に関する制御が実行されても構わない。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。