特許第5825242号(P5825242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825242
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】車車間通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/04 20090101AFI20151112BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20151112BHJP
【FI】
   H04W4/04 113
   H04W88/02 110
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-231623(P2012-231623)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-86750(P2014-86750A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】掛川 智央
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−178234(JP,A)
【文献】 特開2009−303029(JP,A)
【文献】 特開2009−139998(JP,A)
【文献】 特開2012−182698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両及び、前記自車両の後方を走行する他車両間の距離を取得する取得手段と、
前記自車両の周囲の外乱電波の強度微分が正であり、且つ、前記取得された距離と前記自車両が出力している電波の強度とから算出された前記自車両及び前記他車両間の通信の信号強度が、前記外乱電波の強度よりも弱い場合に、前記他車両に対して、外乱電波が存在することを通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする車車間通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載され、車両間での双方向通信に用いられる車車間通信装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、電波環境を測定し、該測定された電波環境が悪化している場合、例えば悪化している旨や位置情報の組み合わせ等である悪化情報を記憶し、該記憶された悪化情報が含まれたデータをブロードキャスト送信する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、相手車両との通信状況が悪化したと判定された場合に、車車間通信を行うことができる可能性を高めるために、相手車両に送信する車車間通信情報の送信周期を、通常送信周期よりも短くする装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−178234号公報
【特許文献2】特開2009−276845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、例えば市街地等、外乱電波が比較的多い場所では電波環境が悪化しやすく、頻繁に悪化情報を含むデータが送信される可能性があるという技術的問題点がある。また、上記特許文献2に記載の技術では、通信頻度が増加するのみなので、外乱電波により通信ができなくなったときには対応することが困難になるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電波環境が悪化した旨の報知回数を抑制しつつ、通信が困難になる旨を他車両に適切に伝えることができる車車間通信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車車間通信装置は、上記課題を解決するために、自車両及び、前記自車両の後方を走行する他車両間の距離を取得する取得手段と、前記自車両の周囲の外乱電波の強度微分が正であり、且つ、前記取得された距離と前記自車両が出力している電波の強度とから算出された前記自車両及び前記他車両間の通信の信号強度が、前記外乱電波の強度よりも弱い場合に、前記他車両に対して、外乱電波が存在することを通知する通知手段と、を備える。
【0008】
本発明の車車間通信装置によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる取得手段は、当該車車間通信装置が搭載される車両である自車両と、該自車両と通信可能な車両であって、自車両の後方を走行する他車両との間の距離を取得する。
【0010】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる通知手段は、自車両の周囲の外乱電波の強度微分が正であり、且つ、取得された距離と自車両が出力している電波の強度とから算出された自車両及び他車両間の通信の信号強度が、外乱電波の強度よりも弱い場合に、他車両に対して、外乱電波が存在することを通知する。尚、外乱電波の強度微分が負である場合、又は信号強度が外乱電波の強度よりも強い場合には、典型的には、他車両に対して外乱電波が存在することは通知されない。
【0011】
本発明では、自車両の周囲の外乱電波の強度微分が正であり、且つ、自車両及び他車両間の通信の信号強度が外乱電波よりも弱い場合に初めて、他車両に対して外乱電波が存在することが通知される。このため、外乱電波が存在することのみによって外乱電波が存在することが通知される場合に比べて、報知回数を抑制することができる。
【0012】
加えて、他車両に対して外乱電波が存在することが通知されるので、該他車両の運転者等が通信環境が悪化することを予め把握することができる。このため、仮に車車間通信が途絶えたとしても、他車両の運転者等が、例えば外乱電波により通信ができなくなったのか、故障により通信ができなくなったのか等を認識することができる。
【0013】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る車両の走行状況の一例を示す概念図である。
図2】第1実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る第1の動作処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る車両の走行状況の他の例を示す概念図である。
図5】第1実施形態に係る第2の動作処理を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図7】第2実施形態に係る動作処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の車車間通信装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
<第1実施形態>
本発明の車車間通信装置に係る第1実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、2台の車両(先行車10及び後続車20)が互いに車車間通信を行いながら走行しているものとする。図1は、第1実施形態に係る車両の走行状況の一例を示す概念図である。
【0018】
次に、先行車10及び後続車20の構成について、図2を参照して説明する。図2は、第1実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。尚、図2では、本発明と関連する構成のみを示し、他の部材等については図示を省略している。
【0019】
図2において、先行車10は、車車間通信用無線機11、判断ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)12及び表示器13を備えて構成されている。同様に、後続車20は、車車間通信用無線機21、判断ECU22及び表示器23を備えて構成されている。
【0020】
車車間通信用無線機11及び21には、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。表示器13及び23は、例えば車両のインストルメントパネル等に設置されている。
【0021】
上述の如く構成された先行車10及び後続車20が、図1に示すように、例えば市街地等の外乱電波が存在するエリアに向かって走行している際に実行される動作処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
図3において、後続車20は、先行車10に対して、車車間通信の電波強度Aを示す信号を、車車間通信用無線機21を介して、逐次送信する(ステップS111)。先行車10は、車車間通信用無線機11を介して、送信された電波強度Aを示す信号を受信する(ステップS121)。
【0023】
次に、先行車10の判断ECU12は、先行車10の周囲に外乱電波があるか否かを判定する(ステップS122)。外乱電波がないと判定された場合(ステップS122:No)、上記ステップS121の処理が実行される。他方、外乱電波があると判定された場合(ステップS122:Yes)、判断ECU12は、外乱電波の強度微分が正であるか否かを判定する(ステップS123)。
【0024】
外乱電波の強度微分が負である(即ち、外乱電波の発信源から遠ざかっている)と判定された場合(ステップS123:No)、判断ECU12は、ステップS122の処理を実行する。他方、外乱電波の強度微分が正である(即ち、外乱電波の発信源に近づいている)と判定された場合(ステップS123:Yes)、判断ECU12は、受信した信号により示される電波強度Aが外乱電波よりも弱いか否かを判定する(ステップS124)。
【0025】
電波強度Aが外乱電波よりも強いと判定された場合(ステップS124:No)、判断ECU12は、ステップS122の処理を実行する。他方、電波強度Aが外乱電波よりも弱いと判定された場合(ステップS124:Yes)、先行車10は、後続車20に対して、警報表示指示信号を、車車間通信用無線機11を介して送信する(ステップS125)。
【0026】
後続車20は、車車間通信用無線機21を介して、送信された警報表示指示信号を受信する(ステップS112)。続いて、判断ECU22は、受信した警報表示指示信号に従って、例えば「もうすぐ先行車との通信ができなくなります」等の警報を表示器23に表示する(ステップS113)。
【0027】
尚、外乱電波がない状態で先行車10が走行している際に、外乱電波があると判定される場合は、該先行車10が外乱電波の発信源に近づいている場合が多いので、上述したステップS123の処理は省略されてもよい。
【0028】
次に、先行車10及び後続車20が走行している際に、図4に示すように、外乱電波を発する車両30が後続車20に近づいてきた場合に実行される動作処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
図5において、先行車10は、後続車20に対して、車車間通信の電波強度Aを示す信号を、車車間通信用無線機11を介して、逐次送信する(ステップS211)。後続車20は、車車間通信用無線機21を介して、送信された電波強度Aを示す信号を受信する(ステップS221)。
【0030】
次に、後続車20の判断ECU22は、後続車20の周囲に外乱電波があるか否かを判定する(ステップS222)。外乱電波がないと判定された場合(ステップS222:No)、上記ステップS221の処理が実行される。他方、外乱電波があると判定された場合(ステップS222:Yes)、判断ECU22は、外乱電波の強度微分が正であるか否かを判定する(ステップS223)。
【0031】
外乱電波の強度微分が負であると判定された場合(ステップS223:No)、判断ECU22は、ステップS222の処理を実行する。他方、外乱電波の強度微分が正であると判定された場合(ステップS223:Yes)、判断ECU22は、受信した信号により示される電波強度Aが外乱電波よりも弱いか否かを判定する(ステップS224)。
【0032】
電波強度Aが外乱電波よりも強いと判定された場合(ステップS224:No)、判断ECU22は、ステップS222の処理を実行する。他方、電波強度Aが外乱電波よりも弱いと判定された場合(ステップS224:Yes)、後続車20は、先行車10に対して、警報表示指示信号を、車車間通信用無線機21を介して送信する(ステップS225)。
【0033】
先行車10は、車車間通信用無線機11を介して、送信された警報表示指示信号を受信する(ステップS212)。続いて、判断ECU12は、受信した警報表示指示信号に従って、例えば「もうすぐ後続車との通信ができなくなります」等の警報を表示器13に表示する(ステップS213)。
【0034】
このように、本実施形態によれば、電波強度Aが外乱電波より弱いと判定された場合に、警報表示指示信号が送信される。このため、外乱電波が存在することのみによって外乱電波が存在することが通知される場合に比べて、報知回数を抑制することができる。従って、運転者が、例えば外乱電波により通信ができなくなったのか、故障又は通信可能範囲外であることにより通信ができなくなったのか等を認識することができる。
【0035】
加えて、車車間通信を利用する、例えばC−ACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)を、通常のACCに変更する等のフェールセーフ的な処理を実施することもでき、実用上非常に有利である。
【0036】
尚、本実施形態に係る「車車間通信用無線機11及び21」は、本発明に係る「取得手段」及び「通知手段」の一例である。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の車車間通信装置に係る第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。尚、第2実施形態では、先行車10及び後続車20の構成が一部異なる以外は、第1実施形態と同様であるので、重複する説明を省略すると共に、図面上における同一箇所には同一の符号を付して示し、基本的に異なる部分について図6及び図7を参照して説明する。
【0038】
図6において、先行車10は、例えばミリ波レーダ等である測距器14を更に備えて構成されている。同様に、後続車20は、測距器24を更に備えて構成されている。図6は、図2と同趣旨の、第2実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【0039】
次に、上述の如く構成された先行車10及び後続車20が、外乱電波が存在するエリアに向かって走行している際(図1参照)に実行される動作処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
図7において、後続車20は、測距器24により測定された先行車10及び後続車20間の距離Cを逐次取得する。そして、後続車20は、先行車10に対して、取得された距離Cを示す信号を、車車間通信用無線機21を介して、逐次送信する(ステップS311)。
【0041】
先行車10は、車車間通信用無線機11を介して、送信された距離Cを示す信号を受信する(ステップS321)。続いて、先行車10は、距離Cと、先行車10が出力している車車間通信に係る電波の強度とから電波強度Aを演算する(ステップS322)。
【0042】
上記ステップS322の処理の後は、上述の第1実施形態において説明したステップS122の以降の処理が実行される。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車車間通信装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
10…先行車、11、21…車車間通信用無線機、12、22…判断ECU、13、23…表示器、14、24…測距器、20…後続車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7