(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を記録する装置として、インクジェット方式による画像記録装置が広く普及している。特に、記録媒体が長尺ウェブ状である場合には、無端ベルトを有するベルト搬送装置を使用し、記録媒体を無端ベルト上に密着させて搬送することが行われている。
【0003】
その際、記録媒体のミスフィードやいわゆる縁なし印刷、インクの裏抜け等のために、記録ヘッドから吐出されたインクが無端ベルトに付着する場合があり、無端ベルトに付着したインクが無端ベルト上に新たに供給されてきた記録媒体に転移して記録媒体を汚してしまう等のトラブルが生じる。
【0004】
また、記録媒体は、その種類によって紙粉や糸くず、前処理剤等の汚染物質を無端ベルト上に付着させる場合があり、これらが無端ベルト上のインクと混合して異物として付着してしまう場合がある。
【0005】
無端ベルトに付着した異物を放置した場合、これが新たに供給される記録媒体の裏面に付着して製品品質を低下させたり、無端ベルトと記録媒体との間の摩擦に影響を与えて記録媒体の搬送を不安定化させたりする問題が生じる。
【0006】
そのため、通常、このようなベルト搬送装置及び画像記録装置には、無端ベルトの表面に付着した異物をクリーニングするためのベルトクリーニング装置が設けられている。
【0007】
従来、無端ベルトの表面をクリーニングする技術として、無端ベルトの表面に当接して摺擦するブラシローラと、このブラシローラに対して清掃液を直接噴射させる噴射筒とを備えるものが知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無端ベルトの表面をクリーニングする一次清掃手段として、散水パイプから無端ベルト表面に清掃液を直接噴射させるものがある。これは、印字が終了して記録媒体が剥離した無端ベルト上に、無端ベルトの幅方向に配列された複数の散水ノズルからそれぞれ清掃液を直接噴射するものである。各散水ノズルから噴射された清掃液は、無端ベルト表面に衝突して広がり、隣接する散水ノズルからの清掃液同士が繋がることで、無端ベルトの幅方向に亘って連続する水膜を形成する。これにより、インクと紙粉、前処理剤、糸くず等とが混合した異物の濃度を低下させて、その後段に設けられるブラシローラ等の二次清掃手段による異物の除去を容易にすることが目的である。
【0010】
ところで、清掃液によって無端ベルトの洗浄を行う場合は、無端ベルトが次の新たな記録媒体と接する前に無端ベルト表面に付着した清掃液の乾燥を完了させる必要がある。特に近年、記録速度の更なる高速化が求められており、これらの要請から、無端ベルトに清掃液を付着させて洗浄を行う際、記録後の記録媒体が無端ベルトから剥離して排出される剥離位置の直ぐ下流側にクリーニング装置を配置し、記録後の記録媒体が無端ベルトから排出された直後に洗浄を開始させ、洗浄後の無端ベルトが新たな記録媒体と接するまでの移動距離を長くし、それだけ乾燥距離を確保できるようにしている。
【0011】
図6は、このような画像記録装置の一例を示している。図中、100は無端ベルト、101は無端ベルト100が架け渡される複数のローラのうちの排出側のローラ、102は記録ヘッド、103は清掃液Wを無端ベルト100の表面に付着させて洗浄するための散水パイプ、104は無端ベルト100の表面から滴下する清掃液Wを収容する水受け桶である。また、Pは記録媒体であり、排出側のローラ101上において、無端ベルト100の表面から剥離するように構成されている。
【0012】
この画像記録装置では、無端ベルト100上に載置された記録媒体Pが図中A方向に搬送されるようになっており、この記録媒体Pが無端ベルト100上から剥離して排出される剥離位置Paよりも無端ベルト100の直ぐ下流側に、ローラ101に架け渡されている部分の無端ベルト100の表面に向けて洗浄液Wを噴射するように散水パイプ103が配置されている。
【0013】
本発明者は、このような従来の画像記録装置において、以下に説明する清掃液の飛び散りの問題が生じることを見出した。
【0014】
図7は、清掃液Wの飛び散り発生メカニズムを説明する要部拡大図である。
【0015】
図7(a)は、無端ベルト100の表面に清掃液Wの水膜Waが形成された状態を示している。
図7(b)は、水膜Wa上に新たな清掃液Wが連続的に噴射される際に、無端ベルト100の移動に伴って水膜Waが矢印V方向に移動した状態を示している。このとき、新たな清掃液Wは、その直前に噴射された清掃液によって形成された水膜Waと衝突し、これを横断することになるため、清掃液Wと水膜Waとの衝突が激しいものとなる。
【0016】
この結果、特に無端ベルト100の駆動時においては、無端ベルト100の表面において異物を含んだ清掃液Wが、下方に配された不図示の水受け桶に収容されず、ベルト移動方向上流側(記録媒体P方向)に飛び散ることになる。飛び散った清掃液Wは、特に記録媒体Pの排出側における装置周辺の床等に付着して汚染を生じ、更には、無端ベルト100から剥離された画像記録済みの記録媒体Pの裏地に付着してしまうことにより、記録媒体Pを汚染し、記録済みの画像を溶解して致命的な損傷を与えてしまう問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、清掃液の飛び散りによる汚染の発生を防止できると共に、無端ベルトの洗浄後の乾燥距離を長く確保することのできるベルト搬送装置を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、清掃液の飛び散りによる汚染の発生を防止できると共に、無端ベルトの洗浄後の乾燥距離を長く確保することのできる画像記録装置を提供することを課題とする。
【0019】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0021】
1.複数のローラに張架され、インクにより画像が記録される記録媒体を載置して搬送する無端ベルトと、
前記記録媒体が排出される排出側のローラに架け渡されている部分の前記無端ベルトの表面に水膜を形成するように散水穴から清掃液を噴射して、前記無端ベルトの表面に付着したインクを洗浄するための散水パイプを有するベルト搬送装置であって、
前記散水パイプにおける前記散水穴からの散水方向は、
前記排出側のローラに架け渡されている部分の前記無端ベルトの表面に水膜を形成するように前記散水穴から清掃液を噴 射可能な範囲で、前記散水穴と前記排出側のローラの回転中心とを結ぶ直線Lよりも角度α(α>0度)だけベルト移動方向下流側に配向されていることを特徴とするベルト搬送装置。
2.前記角度αは、1度以上45度以下の範囲であることを特徴とする上記1記載のベルト搬送装置。
3.前記角度αは、10度以上45度以下の範囲であることを特徴とする上記1記載のベルト搬送装置。
4.複数のローラに張架され、インクにより画像が記録される記録媒体を載置して搬送する無端ベルトと、
前記記録媒体が排出される排出側のローラに架け渡されている部分の前記無端ベルトの表面に水膜を形成するように散水穴から清掃液を噴射して、前記無端ベルトの表面に付着したインクを洗浄するための散水パイプを有するベルト搬送装置であって、
前記散水パイプにおける前記散水穴からの散水方向は、前記散水穴と前記排出側のローラの回転中心とを結ぶ直線Lに一致する方向又は
前記排出側のローラに架け渡されている部分の前記無端ベルトの表面に水膜を形成するように前記散水穴から清掃液を噴射可能な範囲で直線Lよりもベルト移動方向上流側に配向されており、
前記散水パイプの下方に、該散水パイプから散水されて前記無端ベルト表面から滴下した清掃液を収容する水受け桶が配されると共に、前記散水パイプの前記排出側に、前記水膜から飛び散った清掃液を受け止める遮水板が配され、
前記遮水板の下端は水受け桶内に配置され、前記遮水板が受け止めた清掃液が前記水受け桶に滴下されるように構成されてなることを特徴とするベルト搬送装置。
5.前記遮水板は、前記水受け桶から前記無端ベルトの表面にかけて設けられていることを特徴とする上記4に記載のベルト搬送装置。
6.前記散水パイプへの前記清掃液の送液量を可変とする送液量可変手段を有し、
前記送液量可変手段は、前記無端ベルトの駆動時の前記清掃液の送液量を前記無端ベルトの非駆動時の前記清掃液の送液量よりも少なくすることを特徴とする上記1〜5の何れかに記載のベルト搬送装置。
7.前記散水パイプへの前記清掃液の送液量を可変とする送液量可変手段を有し、
前記送液量可変手段は、前記無端ベルトの駆動時の駆動速度が大きいほど前記清掃液の送液量を減少させることを特徴とする上記1〜6の何れかに記載のベルト搬送装置。
8.前記散水パイプは、散水穴から前記無端ベルトの表面のみに向けて清掃液を噴射することを特徴とする上記1〜7の何れかに記載のベルト搬送装置。
9.上記1〜8の何れかに記載のベルト搬送装置と、
前記記録媒体上に画像データに基づいてインクを吐出して記録を行う記録手段と、を備えることを特徴とする画像記録装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、清掃液の飛び散りによる汚染の発生を防止できると共に、無端ベルトの洗浄後の乾燥距離を長く確保することのできるベルト搬送装置を提供できる。
【0023】
また、本発明によれば、清掃液の飛び散りによる汚染の発生を防止できると共に、無端ベルトの洗浄後の乾燥距離を長く確保することのできる画像記録装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図であり、図中、1は画像記録装置であり、この画像記録装置1は、ベルト搬送装置2、記録ヘッド3、ベルトクリーニング装置4を備えている。
【0027】
ベルト搬送装置2は、所定の間隔をおいて平行に配置された複数(図示の例では2つ)のローラ21、22に亘って所定幅の無端ベルト23が張架されている。これらローラ21、22間に架け渡された無端ベルト23の上面は、被搬送物である記録媒体Pを密着させて載置する載置面とされている。
【0028】
一方のローラ21は図示しない副走査モータに対して駆動力を伝達可能に接続された駆動ローラ、他方のローラ22は従動ローラであり、駆動ローラ21が副走査モータの回転駆動によって、
図1において反時計回りに所定の速度で回転することにより、従動ローラ22との間に架け渡された無端ベルト23を回転移動させ、その上面に載置される記録媒体Pを副走査方向である図中のA方向に向けて搬送するようになっている。
【0029】
記録媒体Pには、例えば、紙、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板等、インクジェット記録に通常使用される記録媒体を使用することができる。記録媒体Pは所定サイズに裁断されたシート状であってもよいし、ロール状に巻回された元巻きから連続して繰り出される長尺状であってもよい。特に、布帛は、インクが裏抜けし易いため、無端ベルト23の表面にインクが付着するおそれが高く、後述するベルトクリーニング装置4を備えることによって特に顕著な効果が得られるために好ましい。
【0030】
記録ヘッド3は、無端ベルト23上の記録媒体Pが載置される面の上方に所定の間隔をおいて配設されており、その下面に設けられた多数のノズルからインク滴を吐出することにより、記録媒体P上に所望の画像を記録するインクジェットヘッドである。この記録ヘッド3は、図示しないキャリッジに搭載されて、画像記録時に記録媒体Pの搬送方向と直交する主走査方向に往復移動するシャトル型の記録ヘッドであってもよいし、無端ベルト23の幅方向に亘って固定状に架け渡され、連続的に搬送される記録媒体P上にインク滴を吐出することによって画像を記録するライン型の記録ヘッドであってもよい。
【0031】
ベルトクリーニング装置4は、本発明において駆動ローラ21の近傍に配置されており、無端ベルト23の移動方向に沿って順に配設される散水パイプ40、ブラシローラ41を有している。
【0032】
このうち散水パイプ40は、一次清掃手段であり、その下方に配置される水受け桶42に貯留された清掃液を供給ポンプ43の駆動によって無端ベルト23の表面に向けて噴射することにより、該無端ベルト23の表面に付着した異物を洗浄する。この散水パイプ40の詳細については更に後述する。
【0033】
ブラシローラ41は、二次清掃手段であり、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡された回転軸の周囲にブラシ毛が植毛されてローラ状に形成されている。ブラシ毛の先端は、散水パイプ40による散水位置よりも無端ベルト23の移動方向下流側において無端ベルト23の表面に常時接触状態にあり、不図示の駆動モータによって無端ベルト23の移動方向と逆方向(図中反時計回り)に回転することにより、該無端ベルト23の表面を摺擦し、上流側の散水パイプ40による清掃液の散水によって洗浄された異物を除去する。
【0034】
ブラシローラ41の下部は、水受け桶42内の清掃液に一部浸漬しており、回転時に清掃液を掻き上げることにより、異物の除去効果を高めている。
【0035】
図2は、第1発明に係るベルト搬送装置2における散水パイプ40が配設された部分の詳細を示す側面図である。
【0036】
散水パイプ40は、駆動ローラ21に架け渡された部分の無端ベルト23の幅方向に亘って清掃液を直接噴射するように、該無端ベルト23の全幅に亘る長さを有している。散水パイプ40の無端ベルト23の表面に対向する部分には、その長さ方向に亘って多数の散水穴40aが配列されている。これらの散水穴40aから無端ベルト23の表面に噴射された清掃液は、無端ベルト23表面に衝突して上下左右に広がり、隣接する散水ノズルからの清掃液同士が繋がることで、無端ベルト23の幅方向に亘って連続する水膜Waを形成し、無端ベルト23の表面を洗浄することにより、インクを含む異物の濃度を低下させる。
【0037】
散水パイプ40から噴射される清掃液Wは、水受け桶42から散水チューブ44aを介して供給ポンプ43まで導入され、供給ポンプ43の駆動によって散水チューブ44bを介して供給される。散水パイプ40から無端ベルト23表面に噴射された清掃液は、その下方の水受け桶42内に滴下し、再利用されるようになっている。
【0038】
なお、
図2において、45は散水チューブ44aに導入される清掃液中のゴミ等の不純物を取り除くフィルタ、46は不図示の清掃液供給装置から水受け桶42内に清掃液を供給する清掃液供給パイプ、47は水受け桶42内の所定量を越える清掃液を排水するためのオーバーフロー管である。
【0039】
第1発明において、散水穴40aからの清掃液Wの散水方向は、散水穴40aと駆動ローラの中心Oとを結ぶ直線Lよりも角度α(α>0度)だけベルト移動方向下流側に配向されている。
【0040】
この構成の技術的意義について、
図3を参照して説明する。
【0041】
図3は、清掃液Wの飛び散り防止メカニズムを説明する要部拡大図である。
【0042】
図3(a)は、無端ベルト23の表面に清掃液Wの水膜Waが形成された状態を示している。
図3(b)は、水膜Wa上に新たな清掃液Wが連続的に噴射される際に、無端ベルト23の移動に伴って水膜Waが矢印V方向に移動した状態を示している。このとき、新たな清掃液Wは、その直前に噴射された清掃液によって形成された水膜Wa中を横断することになるが、移動する水膜Waを追従するような角度で導入されるため、清掃液Wと水膜Waとの衝突が緩和されて飛び散りが抑制されると共に、飛び散り方向がベルト移動方向下流側に配向される。
【0043】
これにより、水膜Waにおける清掃液の飛び散りが防止され、汚染の発生を防止できる効果を奏する。特に無端ベルト23の移動方向上流側に向かう飛び散りが顕著に防止されるため、記録媒体Pの汚染が防止される効果を奏する。また、これにより、作業スペースとクリーニング装置4の内部を遮断するような遮水板(後に詳述する)を設ける必要がなくなるため、クリーニング装置4のメンテナンス等を容易に行うことができる効果も得られる。
【0044】
第1発明において、汚染の発生を更に防止する上で、角度αは、好ましくは1度以上45度以下の範囲、より好ましくは、10度以上45度以下の範囲であることである。散水角度αが45度を超えるようになると、無端ベルト23の表面に幅方向に連続する水膜Waを形成し難くなり、洗浄が不十分となる場合がある。
【0045】
また、第1発明において、無端ベルト23の移動速度(搬送速度)は、500mm/sec以下であることが好ましい。
【0046】
さらにまた、供給ポンプ43による散水パイプ40への送液量は、20L/min以下であることが好ましい。
【0047】
散水パイプ40の各々の散水穴40aの配置位置は、排出側のローラ21の中心から水平方向に対して0度以上90度以下の範囲だけ下方に配されることが好ましい。また、各々の散水穴40aは、無端ベルト23表面からの距離が15mm以上50mm以下の範囲となるように配置されることが好ましい。
【0048】
ところで、清掃液の飛び散りは、無端ベルト23の駆動時において特に増加することは上述した。
【0049】
そこで、洗浄効率を維持すると共に、駆動時における清掃液の飛び散りを更に防止するために、無端ベルト23の駆動時には、清掃液を相対的に弱く噴射し、非駆動時(停止時)においては相対的に強く噴射するように、散水穴40aへの清掃液の送液量を可変とする送液量可変手段を有することが好ましい。
【0050】
このように送液量を可変とするには、流量調整弁を用いてもよく、あるいは、供給ポンプ43の駆動量を制御することによっても送液量は変更可能である。
【0051】
本発明において、送液量可変手段による清掃液の送液量の変更は、以下に説明するように、無端ベルト23の駆動を制御する制御信号に応じて自動的に行われる。
【0052】
図4は、この構成を実現するための画像記録装置1の制御構成の概略を示すブロック図である。
【0053】
例えばシャトル型の画像記録装置は、記録ヘッド3の主走査方向への往復と、記録媒体Pの副走査方向への搬送を交互に行いながら、記録媒体P上に1つの画像を形成するため、無端ベルト23は間欠的に移動する。以下、このようなシャトル型の記録ヘッドを備えた画像記録装置の場合について、供給ポンプ43の駆動量を変更することによって送液量を変化させる自動制御の一例を説明する。
【0054】
制御部10に記録媒体Pに印字される画像データが入力されると、制御部10は、記録ヘッド3を主走査方向へ往復させるための情報、及び、記録媒体Pを副走査方向へ搬送するための情報を生成する。生成された各情報は、それぞれ、記録ヘッド3を主走査方向へ往復させる主走査モータ、及び、無端ベルト23を副走査方向へ移動させる副走査モータへ出力される。
【0055】
無端ベルト23を副走査方向へ移動するための情報には、無端ベルトの駆動又は非駆動を決定する信号Aが含まれている。制御部10は、この信号Aを副走査モータへ出力すると同時に、供給ポンプ43に出力して、無端ベルト23の駆動時には清掃液を相対的に弱く噴射し、非駆動時(停止時)には相対的に強く噴射するように、散水穴40aへの清掃液の送液量を制御する。これにより、送液量を自動で変更することが可能となる。
【0056】
以上のようにして、洗浄効率を維持すると共に、駆動時における清掃液の飛び散りを更に防止する効果が得られる。
【0057】
ライン型の記録ヘッドを備えた画像記録装置であっても、無端ベルトの駆動又は非駆動が発生する場合は、その駆動又は非駆動を決定する信号に応じて、散水パイプからの送液量の減少又は増加を自動で制御するように構成することができる。
【0058】
また、上記の制御例では、無端ベルト23の駆動又は非駆動に応じて送液量を制御したが、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、画像記録装置1における無端ベルト23の駆動速度は、高速印刷時又は低速(高画質)印刷時によって大幅に異なる。そこで、無端ベルト23の駆動速度に応じて、駆動速度が大きいほど送液量を減少し、駆動速度が小さいほど送液量を増加するように、清掃液の送液量を制御するように構成することも好ましいことである。駆動速度が大きいほど飛び散りは増加するため、このような構成により好適に飛び散りを防止できる。
【0060】
ところで、画像記録装置においては、散水穴40aからの散水方向を、上述の直線Lよりもベルト移動方向下流側に配向できない場合がある。例えば、作業員の作業スペースを確保するために、記録媒体Pの排出側に出来るだけ装置を突出させないようにする場合等である。
【0061】
このような場合、以下に説明する第2発明によって、清掃液の飛び散りによる汚染の発生を防止できる。
【0062】
図5は、第2発明に係るベルト搬送装置2における散水パイプ40が配設された部分の詳細を示す側面図である。
【0063】
図5の例においては、散水パイプ40が、駆動ローラ21よりも記録媒体Pの排出側に突出しないように駆動ローラ21の下方に押し込まれた状態で配置されている。このようにして、記録媒体Pの排出側への装置の突出を回避している。
【0064】
しかし、散水パイプ40を、駆動ローラ21の下方に押し込むと、散水パイプ40とブラシローラ41との距離を確保することが困難となる。これは、クリーニング装置による洗浄後の無端ベルト23が新たな記録媒体と接するまでの移動距離を長くして、乾燥距離を確保するために、ブラシローラ41は出来るだけベルト移動方向上流側に設けられるためである。
【0065】
このように散水パイプ40とブラシローラ41とが近接すると、ブラシローラ41の回転に伴ってブラシから弾かれた清掃液が散水パイプ40による水膜形成を妨害したり、あるいは、水膜Wa形成後の清掃液がブラシローラ41に滴下してブラシローラ41による洗浄効率を低下したりする問題を生じる恐れがある。そのため、これらを回避するために、水膜Waを、ブラシローラ41よりも出来るだけ離れた位置に形成させるようにしている。
【0066】
その結果、図示の通り、散水穴40aと駆動ローラの中心Oとを結ぶ直線Lに対して、散水穴40aからの清掃液Wの散水方向がベルト移動方向上流側に配向することになる。これにより、水膜Waにおける清掃液の記録媒体P方向への飛び散りが発生することになる。
【0067】
これに対して、第2発明に係る画像記録装置においては、図示の通り、散水パイプ40の配設位置よりも記録媒体Pの排出側に、水受け桶42から無端ベルト23の表面にかけての範囲を仕切るように遮水板48が設けられている。遮水板48の下端は水受け桶42内に配置されている。これにより、遮水板48が、水膜Waから飛び散った清掃液を受け止めると共に、受け止めた清掃液を水受け桶42内に滴下させるようになっている。
【0068】
その結果、清掃液の飛び散りによる汚染の発生を防止できるようになる効果を奏する。
【0069】
第2発明におけるその他の構成については、第1発明においてした説明が援用される。
【0070】
以上説明した態様では、ブラシローラ41が一部浸漬している水受け桶42内の清掃液を使用するようにしたが、散水パイプから噴射する清掃液は独立した水受け桶から供給されるようにしてもよい。
【0071】
更に、散水パイプへの清掃液の供給は、水受け桶内の清掃液を再利用せず、常に新しい清掃液が散水パイプから噴射されるようにしてもよい。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0073】
(実施例1)
図1に示したものと同様の画像記録装置1において、無端ベルト23による記録媒体Pの搬送速度を50mm/secに設定して、記録媒体Pに画像記録を行うと共に、記録媒体P剥離後の排出側のローラ21に架け渡されている部分の無端ベルト23の表面に水膜を形成するように、散水パイプ40が備える散水穴40aから清掃液を噴射して、無端ベルト23の表面に付着したインクを洗浄した。
【0074】
散水パイプ40は、散水穴径が2mm±0.1mmの散水穴40aを長手方向に73個備えるものを用いた。また、この散水パイプ40に、最高揚程が9.3mの供給ポンプ43を用いて10L/minの送液量で清掃液を供給して、清掃液の噴射を行うようにした。
【0075】
散水パイプ40の各々の散水穴40aは、排出側のローラ21の中心から水平方向に対して45度下方に、無端ベルト23表面からの距離が35mmとなるように配置した。
【0076】
なお、用いた画像記録装置1には、遮水板48は設けられていない。
【0077】
<評価方法>
散水角度αを変化させながら、無端ベルト23表面からの清掃液の飛び散り状態を以下の基準で評価した。なお、散水方向が、ベルト移動方向上流側に配向される場合は、角度αを負の値で示した。結果を表1に示す。×:飛び散った清掃液が記録媒体Pに付着した。○:飛び散りを生じたが水受け桶42内に収容された。◎:飛び散りを生じることなく水受け桶42に滴下した。
【0078】
(実施例2)
実施例1において、搬送速度を200mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例3)
実施例1において、搬送速度を350mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例4)
実施例1において、搬送速度を500mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例1において、送液量を15L/minとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例1において、送液量を15L/minとし、搬送速度を200mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
実施例1において、送液量を15L/minとし、搬送速度を350mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例8)
実施例1において、送液量を15L/minとし、搬送速度を500mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例9)
実施例1において、送液量を19.5L/minとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例10)
実施例1において、送液量を19.5L/minとし、搬送速度を200mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例11)
実施例1において、送液量を19.5L/minとし、搬送速度を350mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例12)
実施例1において、送液量を19.5L/minとし、搬送速度を500mm/secとした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
<評価>
実施例1〜12の結果より、散水角度αが0度を超える場合は、飛び散りが実用上問題ないレベルまで防止されることがわかる。
【0091】
なお、本発明者は、追加実験により、画像記録装置1に遮水板48を設けることにより、実施例1〜12の何れの散水角度αの場合においても、飛び散りによる汚染が防止されることを確認している。