特許第5825269号(P5825269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000002
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000003
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000004
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000005
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000006
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000007
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000008
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000009
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000010
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000011
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000012
  • 特許5825269-車両用電源装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825269
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20151112BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   B60R16/033 B
   B60R16/02 645D
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-10930(P2013-10930)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141177(P2014-141177A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年4月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 高弘
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−319204(JP,A)
【文献】 実開昭63−117239(JP,U)
【文献】 特開2002−305843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の直流電圧で動作する電気負荷が接続される第1ポートと、
第1蓄電装置が接続される第2ポートと、
第2蓄電装置が接続される第3ポートと、
前記所定の直流電圧を出力する発電装置が接続される第4ポートと、
前記第1ポートと前記第2ポートとの間に配置される第1スイッチと、
前記第2ポートと前記第4ポートとの間に配置される第2スイッチと、
前記第1ポートと前記第3ポートとの間に配置される第3スイッチと、
前記第3ポートと前記第4ポートとの間に配置される第4スイッチと、
前記第1スイッチを導通し、前記第2スイッチを遮断し、前記第3スイッチを遮断し、且つ、前記第4スイッチを導通する第1状態と、前記第1スイッチを遮断し、前記第2スイッチを導通し、前記第3スイッチを導通し、且つ、前記第4スイッチを遮断する第2状態とを切り換える状態切換部と、
を備え
前記第1スイッチ及び前記第3スイッチは、ディプレッション型電界効果トランジスタで構成され、ゲート電圧を徐々にゼロに近づけることによってドレイン電流を徐々に増大させ、或いは、エンハンスメント型電界効果トランジスタで構成され、ゲート電圧を徐々にゼロから遠ざけることによってドレイン電流を徐々に増大させる、
車両用電源装置。
【請求項2】
電気負荷が接続される第1ポートと、
第1蓄電装置が接続される第2ポートと、
第2蓄電装置が接続される第3ポートと、
発電装置が接続される第4ポートと、
前記第1ポートと前記第2ポートとの間に配置される第1スイッチと、
前記第2ポートと前記第4ポートとの間に配置される第2スイッチと、
前記第1ポートと前記第3ポートとの間に配置される第3スイッチと、
前記第3ポートと前記第4ポートとの間に配置される第4スイッチと、
前記第1スイッチを導通し、前記第2スイッチを遮断し、前記第3スイッチを遮断し、且つ、前記第4スイッチを導通する第1状態と、前記第1スイッチを遮断し、前記第2スイッチを導通し、前記第3スイッチを導通し、且つ、前記第4スイッチを遮断する第2状態とを切り換える状態切換部と、を備え、
前記第1スイッチ及び前記第3スイッチは、導通状態を制御可能なスイッチング素子で構成され、
前記第1スイッチは、前記電気負荷と前記第1蓄電装置との間を徐々に導通させるよう構成され、
前記第3スイッチは、前記電気負荷と前記第2蓄電装置との間を徐々に導通させるよう構成される、
車両用電源装置。
【請求項3】
前記第1スイッチ及び前記第3スイッチは、ディプレッション型電界効果トランジスタで構成され、ゲート電圧を徐々にゼロに近づけることによってドレイン電流を徐々に増大させ、或いは、エンハンスメント型電界効果トランジスタで構成され、ゲート電圧を徐々にゼロから遠ざけることによってドレイン電流を徐々に増大させる、
請求項に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記状態切換部は、前記第1状態において、前記発電装置と切り離した状態で前記第1蓄電装置から前記電気負荷に給電させ、且つ、前記発電装置により前記第2蓄電装置を充電させる、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記状態切換部は、前記第2状態において、前記発電装置と切り離した状態で前記第2蓄電装置から前記電気負荷に給電させ、且つ、前記発電装置により前記第1蓄電装置を充電させる、
請求項1乃至の何れか一項に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置の充放電状態を判定する充放電状態判定部を備え、
前記状態切換部は、前記第1蓄電装置の充放電状態又は前記第2蓄電装置の充放電状態が所定状態となった場合に、前記第1状態と前記第2状態とを切り換える、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記所定状態は、蓄電電圧に基づいて定められる、
請求項6に記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうちの少なくとも1つの異常を検出する蓄電装置異常検出部を備える、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、及び前記第4スイッチのうちの少なくとも1つの異常を検出するスイッチ異常検出部を備える、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気負荷、発電装置、及び蓄電装置に接続される車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧系電源と低圧系電源とを備える車両用二電源システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車両用二電源システムは、エンジンの回転出力を利用して発電する低圧系電源としての発電機と、低圧系電源よりも高い電圧を供給する高圧系電源としてのバッテリとをDC−DCコンバータを介して接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−307931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用二電源システムは、DC−DCコンバータを用いるため、製造コストが高い。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、製造コストがより低い車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る車両用電源装置は、電気負荷が接続される第1ポートと、第1蓄電装置が接続される第2ポートと、第2蓄電装置が接続される第3ポートと、発電装置が接続される第4ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとの間に配置される第1スイッチと、前記第2ポートと前記第4ポートとの間に配置される第2スイッチと、前記第1ポートと前記第3ポートとの間に配置される第3スイッチと、前記第3ポートと前記第4ポートとの間に配置される第4スイッチと、前記第1スイッチを導通し、前記第2スイッチを遮断し、前記第3スイッチを遮断し、且つ、前記第4スイッチを導通する第1状態と、前記第1スイッチを遮断し、前記第2スイッチを導通し、前記第3スイッチを導通し、且つ、前記第4スイッチを遮断する第2状態とを切り換える状態切換部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上述の手段により、本発明は、製造コストがより低い車両用電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係るマルチポート電源供給ユニットの構成例を示す機能ブロック図である。
図2図1のマルチポート電源供給ユニットを含む電源システムの概略回路図である。
図3】第1状態切換処理の流れを示すフローチャートである。
図4図1のマルチポート電源供給ユニットにおける入出力ポートの電圧の推移を示すグラフである。
図5】本発明の実施例に係るマルチポート電源供給ユニットの別の構成例を示す機能ブロック図である。
図6図5のマルチポート電源供給ユニットを含む電源システムの概略回路図である。
図7】第2状態切換処理の流れを示すフローチャートである。
図8図5のマルチポート電源供給ユニットにおける入出力ポートの電圧の推移を示すグラフである。
図9】本発明の実施例に係るマルチポート電源供給ユニットのさらに別の構成例を示す機能ブロック図である。
図10】蓄電装置異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
図11】本発明の実施例に係るマルチポート電源供給ユニットのさらに別の構成例を示す機能ブロック図である。
図12】スイッチ異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る車両用電源装置としてのマルチポート電源供給ユニット100の構成例を示す機能ブロック図である。また、図2は、図1のマルチポート電源供給ユニット100を含む電源システムの構成例を示す概略回路図である。
【0012】
マルチポート電源供給ユニット100は、エンジン、電動モータ等を駆動源とする車両に搭載される車載装置である。本実施例では、マルチポート電源供給ユニット100は、制御装置1、第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、及び第4スイッチ8を主な構成要素として含む。また、マルチポート電源供給ユニット100は、4つの入出力ポートP1、P2、P3、及びP4を有する。本実施例では、入出力ポートP1には電気負荷20が接続され、入出力ポートP2には第1蓄電装置21が接続され、入出力ポートP3には第2蓄電装置22が接続され、入出力ポートP4には発電装置23及び始動装置24が接続される。
【0013】
電気負荷20は、第1蓄電装置21又は第2蓄電装置22が供給する電力で動作可能な電気負荷である。本実施例では、電気負荷20は、12V系の電圧で動作可能な電気負荷であり、各種ECU(Electric Control Unit)を含む。
【0014】
第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22は、充放電が可能な車載装置である。本実施例では、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22は、発電装置23が発電した電力を充電可能で、且つ、電気負荷20及び始動装置24に電力を供給可能な12V系の補器用バッテリである。また、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22のそれぞれの容量は、通常の補機用バッテリの半分の容量であってもよい。第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22のそれぞれの容量の合計で通常の補機用バッテリの容量を置き換えることができるためである。
【0015】
発電装置23は、エンジン、電動モータ等の駆動源によって駆動される発電装置である。本実施例では、発電装置23は、エンジンによって駆動されるオルタネータであり、12V系の電圧を出力する。
【0016】
始動装置24は、車両の駆動源を始動させる装置である。本実施例では、始動装置24は、エンジンを始動させるためのスタータモータである。
【0017】
制御装置1は、マルチポート電源供給ユニット100の動作を制御する装置である。本実施例では、制御装置1は、CPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。そして、制御装置1は、充放電状態判定部10及び状態切換部11等の各種機能要素に対応するプログラムをROM又はRAMから読み出し、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。具体的には、制御装置1は、第1電圧センサ2及び第2電圧センサ3等の出力を受けて各種機能要素に対応する演算を実行し、その演算結果に基づいて第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、第4スイッチ8等を制御する。
【0018】
第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、及び第4スイッチ8は、電気回路の導通/遮断を切り換える装置である。本実施例では、第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、及び第4スイッチ8は、導通状態と遮断状態とを切換可能な有接点リレー又は無接点リレーで構成される。
【0019】
第1スイッチ5は、入出力ポートP1と入出力ポートP2とを接続する電力線上に配置される。第2スイッチ6は、入出力ポートP2と入出力ポートP4とを接続する電力線上に配置される。第3スイッチ7は、入出力ポートP1と入出力ポートP3とを接続する電力線上に配置される。第4スイッチ8は、入出力ポートP3と入出力ポートP4とを接続する電力線上に配置される。
【0020】
第1電圧センサ2及び第2電圧センサ3は、マルチポート電源供給ユニット100の動作に必要な電圧を検出する装置である。本実施例では、第1電圧センサ2は、入出力ポートP2の電圧すなわち第1蓄電装置21の電圧を検出するために取り付けられ、入出力ポートP2の電圧を所定周期で繰り返し検出し、検出した電圧値を制御装置1に対して出力する。また、第2電圧センサ3は、入出力ポートP3の電圧すなわち第2蓄電装置22の電圧を検出するために取り付けられ、入出力ポートP3の電圧を所定周期で繰り返し検出し、検出した電圧値を制御装置1に対して出力する。
【0021】
充放電状態判定部10は、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22の充放電状態を判定するための機能要素である。本実施例では、充放電状態判定部10は、第1電圧センサ2が出力する入出力ポートP2の電圧値、及び第2電圧センサ3が出力する入出力ポートP3の電圧値を取得する。そして、充放電状態判定部10は、取得した電圧値に基づいて第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22の充放電状態が所定状態にあるか否かを判定する。具体的には、充放電状態判定部10は、取得した電圧値のそれぞれが所定値α(例えば13Vである。)以下で且つ所定値β(例えば12Vである。)以上の範囲内であれば蓄電装置が充放電切換不要状態にあると判定する。なお、充放電切換不要状態は、充電中の蓄電装置を放電させる必要が無い状態、又は、放電中の蓄電装置を充電させる必要が無い状態を意味する。或いは、充放電状態判定部10は、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22のうちの充電中の蓄電装置の電圧が所定値α以下であれば、所定値βとの比較を行うことなく、その充電中の蓄電装置が充放電切換不要状態にあると判定してもよい。また、充放電状態判定部10は、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22のうちの放電中の蓄電装置の電圧が所定値β以上であれば、所定値αとの比較を行うことなく、その放電中の蓄電装置が充放電切換不要状態にあると判定してもよい。この場合、充放電状態判定部10は、例えば、第1スイッチ5〜第4スイッチ8の導通/遮断状態に基づいて、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22のうちの何れが充電中であり何れが放電中であるかを判断する。なお、充放電状態判定部10は、充電中の蓄電装置の電圧が所定値αを上回った場合、その充電中の蓄電装置が放電を必要とする状態(以下、「要放電状態」とする。)にあると判定する。また、充放電状態判定部10は、放電中の蓄電装置の電圧が所定値βを下回った場合、その放電中の蓄電装置が充電を必要とする状態(以下、「要充電状態」とする。)にあると判定する。
【0022】
状態切換部11は、マルチポート電源供給ユニット100の動作状態を切り換える機能要素である。本実施例では、状態切換部11は、充放電状態判定部10の判定結果に基づいてマルチポート電源供給ユニット100の動作状態を切り換える。
【0023】
具体的には、状態切換部11は、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22の少なくとも一方が充放電切換不要状態にないと充放電状態判定部10が判定した場合、マルチポート電源供給ユニット100の動作状態を切り換える。より具体的には、状態切換部11は、第1スイッチ5〜第4スイッチ8のうち、導通状態にあったスイッチを遮断状態にし、遮断状態にあったスイッチを導通状態にする。
【0024】
例えば、第1スイッチ5及び第4スイッチ8が導通状態にあり、第2スイッチ6及び第3スイッチ7が遮断状態にあり、第1蓄電装置21が放電中すなわち第1蓄電装置21が電気負荷20に電力を供給中であり、且つ、第2蓄電装置22が充電中すなわち発電装置23が第2蓄電装置22に電力を供給中である場合を想定する。
【0025】
この場合において、状態切換部11は、充電中の第2蓄電装置22の電圧が所定値αを上回ると、第2蓄電装置22が要放電状態にあると判定する。そして、状態切換部11は、第1スイッチ5及び第4スイッチ8を遮断状態にし、且つ、第2スイッチ6及び第3スイッチ7を導通状態にする。第2蓄電装置22の充電を中止して第2蓄電装置22の放電を開始させるためである。また、第1蓄電装置21の放電を中止して第1蓄電装置21の充電を開始させるためである。また、状態切換部11は、放電中の第1蓄電装置21の電圧が所定値βを下回ると、第1蓄電装置21が要充電状態にあると判定する。そして、状態切換部11は、第1スイッチ5及び第4スイッチ8を遮断状態にし、且つ、第2スイッチ6及び第3スイッチ7を導通状態にする。第1蓄電装置21の放電を中止して第1蓄電装置21の充電を開始させるためである。また、第2蓄電装置22の充電を中止して第2蓄電装置22の放電を開始させるためである。なお、何れの場合においても、電気負荷20は、第1蓄電装置21からの電力供給と第2蓄電装置22からの電力供給とが瞬時に切り換わるため、継続的に電力の供給を受けることができる。
【0026】
同様に、第1スイッチ5及び第4スイッチ8が遮断状態にあり、第2スイッチ6及び第3スイッチ7が導通状態にあり、第2蓄電装置22が放電中すなわち第2蓄電装置22が電気負荷20に電力を供給中であり、且つ、第1蓄電装置21が充電中すなわち発電装置23が第1蓄電装置21に電力を供給中である場合を想定する。
【0027】
この場合において、状態切換部11は、充電中の第1蓄電装置21の電圧が所定値αを上回ると、第1蓄電装置21が要放電状態にあると判定する。そして、状態切換部11は、第1スイッチ5及び第4スイッチ8を導通状態にし、且つ、第2スイッチ6及び第3スイッチ7を遮断状態にする。第1蓄電装置21の充電を中止して第1蓄電装置21の放電を開始させるためである。また、第2蓄電装置22の放電を中止して第2蓄電装置22の充電を開始させるためである。また、状態切換部11は、放電中の第2蓄電装置22の電圧が所定値βを下回ると、第2蓄電装置22が要充電状態にあると判定する。そして、状態切換部11は、第1スイッチ5及び第4スイッチ8を導通状態にし、且つ、第2スイッチ6及び第3スイッチ7を遮断状態にする。第2蓄電装置22の放電を中止して第2蓄電装置22の充電を開始させるためである。また、第1蓄電装置21の充電を中止して第1蓄電装置21の放電を開始させるためである。なお、何れの場合においても、電気負荷20は、第2蓄電装置22からの電力供給と第1蓄電装置21からの電力供給とが瞬時に切り換わるため、継続的に電力の供給を受けることができる。
【0028】
ここで、図3を参照しながら、状態切換部11がマルチポート電源供給ユニット100の動作状態を切り換える処理(以下、「第1状態切換処理」とする。)について説明する。なお、図3は、第1状態切換処理の流れを示すフローチャートである。制御装置1は、所定周期で繰り返しこの第1状態切換処理を実行する。
【0029】
最初に、制御装置1は、発電装置23が発電する電力を充電するように接続されている充電用蓄電装置の充電を開始し、電気負荷20に電力を供給するように接続されている放電用蓄電装置の放電を開始し、且つ、カウンタによる計時を開始する(ステップS1)。この場合、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であり、放電用蓄電装置が第2蓄電装置22であるとすると、第1スイッチ5及び第4スイッチ8は遮断状態にあり、第2スイッチ6及び第3スイッチ7は導通状態にある。或いは、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であり、放電用蓄電装置が第1蓄電装置21であるとすると、第1スイッチ5及び第4スイッチ8は導通状態にあり、第2スイッチ6及び第3スイッチ7は遮断状態にある。
【0030】
その後、制御装置1は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS2)。所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS2のNO)、制御装置1は、所定時間が経過するまでカウンタによる計時を継続する。
【0031】
所定時間が経過したと判定した場合(ステップS2のYES)、制御装置1は、カウンタをリセットし(ステップS3)、充電用蓄電装置の充電を中断する(ステップS4)。充電用蓄電装置の電圧を正確に検出できるようにするためである。具体的には、制御装置1は、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第2スイッチ6を遮断状態にして第1蓄電装置21の充電を中断する。第1電圧センサ2が第1蓄電装置21の電圧を正確に検出できるようにするためである。或いは、制御装置1は、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第4スイッチ8を遮断状態にして第2蓄電装置22の充電を中断する。第2電圧センサ3が第2蓄電装置22の電圧を正確に検出できるようにするためである。
【0032】
その後、制御装置1の充放電状態判定部10は、充電用蓄電装置の電圧が所定値αを上回るか、或いは、放電用蓄電装置の電圧が所定値βを下回るかを判定する(ステップS5)。すなわち、充放電状態判定部10は、充電用蓄電装置が要放電状態にあるか、又は、放電用蓄電装置が要充電状態にあるかを判定する。
【0033】
充電用蓄電装置の電圧が所定値α以下であり、且つ、放電用蓄電装置の電圧が所定値β以上であると判定した場合(ステップS5のNO)、制御装置1は、充電用蓄電装置の充電を再開する(ステップS6)。具体的には、制御装置1は、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第2スイッチ6を導通状態に戻して第1蓄電装置21の充電を再開する。或いは、制御装置1は、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第4スイッチ8を導通状態にして第2蓄電装置22の充電を再開する。その後、制御装置1は、ステップS2以降の処理を実行する。
【0034】
一方、充電用蓄電装置の電圧が所定値αを上回る、或いは、放電用蓄電装置の電圧が所定値βを下回ると判定した場合(ステップS5のYES)、制御装置1の状態切換部11は、第1スイッチ5〜第4スイッチ8のうち、導通状態にあったスイッチを遮断状態に切り換え、遮断状態にあったスイッチを導通状態に切り換える(ステップS7)。具体的には、状態切換部11は、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第1スイッチ5及び第4スイッチ8を導通状態にし、第2スイッチ6及び第3スイッチ7を遮断状態にする。或いは、状態切換部11は、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第1スイッチ5及び第4スイッチ8を遮断状態にし、第2スイッチ6及び第3スイッチ7を導通状態にする。充電用蓄電装置であった蓄電装置を放電用蓄電装置に切り換えるためである。また、放電用蓄電装置であった蓄電装置を充電用蓄電装置に切り換えるためである。その後、制御装置1は、今回の第1状態切換処理を終了させる。
【0035】
次に、図4を参照して、第1状態切換処理が行われる際の入出力ポートP1における電圧すなわち電気負荷20にかかる電圧の推移について説明する。なお、図4は、入出力ポートP1、P2、及びP3における電圧の推移を示すグラフであり、横軸に時間を配し、縦軸に電圧を配する。また、図4において、黒色の実線で示す推移は入出力ポートP1における電圧の推移を示し、白色の破線で示す推移は入出力ポートP2における電圧の推移を示し、白色の一点鎖線で示す推移は入出力ポートP3における電圧の推移を示す。また、点SP1は、入出力ポートP1における電圧が所定値αを上回り、充電用蓄電装置としての第1蓄電装置21が要放電状態となる切換点を示す。点SP2は、入出力ポートP3における電圧が所定値αを上回り、充電用蓄電装置としての第2蓄電装置22が要放電状態となる切換点を示す。点SP3は、入出力ポートP3における電圧が所定値βを下回り、放電用蓄電装置としての第2蓄電装置22が要充電状態となる切換点を示す。
【0036】
図4に示すように、マルチポート電源供給ユニット100は、充電用蓄電装置が要放電状態となった場合、或いは、放電用蓄電装置が要充電状態となった場合に、充電用蓄電装置が放電用蓄電装置に、放電用蓄電装置が充電用蓄電装置になるように切り換える。具体的には、マルチポート電源供給ユニット100は、第1スイッチ5及び第4スイッチ8の組み合わせの導通/遮断状態と、第2スイッチ6及び第3スイッチ7の組み合わせの遮断/導通状態とを交互に切り換える。その結果、マルチポート電源供給ユニット100は、入出力ポートP1における電圧を所定値α以下で且つ所定値β以上の範囲の電圧に維持できる。
【0037】
以上の構成により、マルチポート電源供給ユニット100は、DC−DCコンバータを用いることなく、低コストで、発電装置23が第1蓄電装置21又は第2蓄電装置22を充電するための充電回路と、第2蓄電装置22又は第1蓄電装置21が電気負荷20へ電力を供給するための電力供給回路とを電気的に分離できる。そのため、マルチポート電源供給ユニット100は、電気負荷20が充電電圧の影響を受けるのを防止できる。これは、例えば、電気負荷20がランプを含む場合、電圧の変動に起因するランプの明滅を抑制できることを意味する。
【0038】
また、マルチポート電源供給ユニット100は、充電回路と電力供給回路とを電気的に分離するため、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22のそれぞれを所望の電圧で充電できる。そのため、マルチポート電源供給ユニット100は、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22の長寿命化を実現できる。また、マルチポート電源供給ユニット100は、車両の状態に応じて発電電圧を変化させエンジン負荷を調節しながら第1蓄電装置21又は第2蓄電装置22の充電を行う充電制御の際に利用可能な発電電圧(充電電圧)の範囲を拡大できる。
【0039】
また、マルチポート電源供給ユニット100は、第1蓄電装置21又は第2蓄電装置22が始動装置24へ電力を供給するための回路と、第2蓄電装置22又は第1蓄電装置21が電気負荷20へ電力を供給するための回路とを電気的に分離するため、始動装置24によるクランキング時の電圧の落ち込みの影響を電気負荷20が受けるのを防止できる。そのため、マルチポート電源供給ユニット100は、頻繁な始動を伴うアイドリングストップ機能を有する車両にも搭載可能である。
【0040】
また、マルチポート電源供給ユニット100は、第1蓄電装置21又は第2蓄電装置22が始動装置24へ電力を供給するための回路と、第2蓄電装置22又は第1蓄電装置21が電気負荷20へ電力を供給するための回路とを電気的に分離するため、電気負荷20への暗電流に起因するバッテリ上がりを防止できる。また、マルチポート電源供給ユニット100は、そのバッテリ上がりによって始動装置24による始動が不能になるのを防止できる。
【0041】
次に、図5〜8を参照しながら、本発明の別の実施例に係るマルチポート電源供給ユニット100Aについて説明する。図5は、マルチポート電源供給ユニット100Aの構成例を示す機能ブロック図である。また、図6は、図5のマルチポート電源供給ユニット100Aを含む電源システムの構成例を示す概略回路図である。
【0042】
マルチポート電源供給ユニット100Aは、エンジン、電動モータ等を駆動源とする車両に搭載される車載装置である。本実施例では、マルチポート電源供給ユニット100Aは、制御装置1、第1スイッチ5A、第2スイッチ6A、第3スイッチ7A、及び第4スイッチ8Aを主な構成要素として含む。
【0043】
4つの入出力ポートP1〜P4、第1電圧センサ2、第2電圧センサ3、充放電状態判定部10、電気負荷20、第1蓄電装置21、第2蓄電装置22、発電装置23、及び始動装置24の構成は、マルチポート電源供給ユニット100における構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0044】
制御装置1Aは、マルチポート電源供給ユニット100Aの動作を制御する装置である。本実施例では、制御装置1Aは、CPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。そして、制御装置1Aは、充放電状態判定部10及び状態切換部11A等の各種機能要素に対応するプログラムをROM又はRAMから読み出し、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。具体的には、制御装置1Aは、第1電圧センサ2、第2電圧センサ3、第3電圧センサ4等の出力を受けて、各種機能要素に対応する演算を実行し、その演算結果に基づいて第1スイッチ5A、第2スイッチ6A、第3スイッチ7A、第4スイッチ8A等を制御する。
【0045】
第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aは、電気回路の導通/遮断を切り換える装置である。具体的には、第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aは、導通状態と遮断状態とを切換可能で、且つ、導通状態のときに流れる電流を制御可能なスイッチング素子で構成される。より具体的には、第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aは、例えば、サイリスタ、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、電界効果トランジスタ(FET:Field-Effect Transistor)等を含む。また、スイッチング素子は、ディプレッション型及びエンハンスメント型の何れが用いられてもよい。本実施例では、第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aとしてディプレッション型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いる。なお、第2スイッチ6A及び第4スイッチ8Aは、導通状態のときに流れる電流を制御しないリレーで構成されてもよい。
【0046】
第1スイッチ5AとしてのMOSFETは、入出力ポートP1の電圧をゲート駆動電源として用い、第2スイッチ6AとしてのMOSFETは、入出力ポートP2の電圧をゲート駆動電源として用い、第3スイッチ7AとしてのMOSFETは、入出力ポートP1の電圧をゲート駆動電源として用い、第4スイッチ8AとしてのMOSFETは、入出力ポートP3の電圧をゲート駆動電源として用いる。また、第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aのそれぞれのゲート電圧の値は、ゲート制御回路としての制御装置1Aによって、0[V]からゲート駆動電源の電圧値までの間で制御される。本実施例では、ディプレッション型MOSFETを用いるため、ゲート電圧の値が小さいほど導通電流(ドレイン電流)が増大する。
【0047】
第3電圧センサ4は、第1電圧センサ2及び第2電圧センサ3と同様、マルチポート電源供給ユニット100Aの動作に必要な電圧を検出する装置である。本実施例では、第3電圧センサ4は、入出力ポートP1の電圧を検出するために取り付けられ、入出力ポートP1の電圧を所定周期で繰り返し検出し、検出した電圧値を制御装置1に対して出力する。
【0048】
状態切換部11Aは、マルチポート電源供給ユニット100Aの動作状態を切り換える機能要素である。本実施例では、状態切換部11Aは、充放電状態判定部10の判定結果に基づいてマルチポート電源供給ユニット100Aの動作状態を切り換える。
【0049】
具体的には、状態切換部11Aは、充放電状態判定部10が第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22の少なくとも一方が充放電切換不要状態にないと判定した場合、マルチポート電源供給ユニット100Aの動作状態を切り換える。より具体的には、状態切換部11Aは、第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aのうち、導通状態にあった充電に関するスイッチを遮断状態にする。また、状態切換部11Aは、第1スイッチ5A〜第4スイッチ8Aのうち、遮断状態にあった放電に関するスイッチを徐々に導通状態にして所定の導通状態としたときに、導通状態にあった放電に関するスイッチを遮断状態にし、且つ、遮断状態にあった充電に関するスイッチを導通状態にする。
【0050】
例えば、第1スイッチ5A及び第4スイッチ8Aが導通状態にあり、第2スイッチ6A及び第3スイッチ7Aが遮断状態にあり、第1蓄電装置21が放電中すなわち第1蓄電装置21が電気負荷20に電力を供給中であり、且つ、第2蓄電装置22が充電中すなわち発電装置23が第2蓄電装置22に電力を供給中である場合を想定する。
【0051】
この場合において、状態切換部11Aは、充電中の第2蓄電装置22の電圧が所定値αを上回ると、第2蓄電装置22が要放電状態にあると判定する。そして、状態切換部11Aは、第1スイッチ5Aを導通状態に維持したまま第4スイッチ8Aを遮断状態にする。そして、状態切換部11Aは、入出力ポートP1における電圧値となっている第3スイッチ7Aのゲート電圧を0[V]まで所定幅ΔVずつ徐々に低減させ、第3スイッチ7Aのドレイン電流を徐々に増大させる。第2蓄電装置22の充電を中止して放電を開始させるためである。そして、状態切換部11Aは、第3スイッチ7Aのドレイン電流の増大により、入出力ポートP1における電圧が上昇に転じた場合に、第1スイッチ5Aを遮断状態にし、第2スイッチ6Aを導通状態にする。第1蓄電装置21の放電を中止して充電を開始させるためである。なお、入出力ポートP1における電圧の上昇は、第3電圧センサ4によって検出される。
【0052】
また、状態切換部11Aは、放電中の第1蓄電装置21の電圧が所定値βを下回ると、第1蓄電装置21が要充電状態にあると判定する。そして、状態切換部11Aは、上述のように第2蓄電装置22が要放電状態にあると判定した場合と同じ処理を実行する。第1蓄電装置21の放電を中止して充電を開始させるためである。また、第2蓄電装置22の充電を中止して放電を開始させるためである。
【0053】
なお、何れの場合においても、電気負荷20は、第1蓄電装置21からの電力供給と第2蓄電装置22からの電力供給とが暫時の重複期間を経て切り換わるため、継続的に電力の供給を受けることができる。
【0054】
ここで、図7を参照しながら、状態切換部11Aがマルチポート電源供給ユニット100Aの動作状態を切り換える処理(以下、「第2状態切換処理」とする。)について説明する。なお、図7は、第2状態切換処理の流れを示すフローチャートである。制御装置1Aは、所定周期で繰り返しこの第2状態切換処理を実行する。また、図7のステップS11〜ステップS16は、図3のステップS1〜ステップS6と同様である。そのため、ステップS11〜ステップS16の説明を省略し、ステップS17以降を詳細に説明する。
【0055】
ステップS17において、すなわち、充電用蓄電装置が要放電状態にある、或いは、放電用蓄電装置が要充電状態にあると判定した場合、制御装置1Aの状態切換部11Aは、充電用蓄電装置の充電を中止する。具体的には、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第2スイッチ6Aを遮断状態にして第1蓄電装置21の充電を中止する。発電装置23における電圧変動が第2スイッチ6A及び第1スイッチ5Aを介して電気負荷20に及ぶのを防止するためである。なお、この場合、第4スイッチ8Aは遮断状態にある。
【0056】
或いは、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第4スイッチ8Aを遮断状態にして第2蓄電装置22の充電を中止する。発電装置23における電圧変動が第4スイッチ8A及び第3スイッチ7Aを介して電気負荷20に及ぶのを防止するためである。なお、この場合、第2スイッチ6Aは遮断状態にある。
【0057】
その後、制御装置1Aは、遮断状態にあった放電側スイッチ(第1スイッチ5A又は第3スイッチ7A)のゲート電圧を所定幅ΔVだけ低減させる(ステップS18)。具体的には、制御装置1Aは、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、遮断状態にあった放電側スイッチである第1スイッチ5Aのゲート電圧をΔVだけ低減させる。第1スイッチ5Aを流れるドレイン電流を増大させるためである。或いは、制御装置1Aは、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、遮断状態にあった放電側スイッチである第3スイッチ7Aのゲート電圧をΔVだけ低減させる。第2スイッチ7Aを流れるドレイン電流を増大させるためである。
【0058】
その後、制御装置1Aは、第3電圧センサ4の出力に基づいて、入出力ポートP1における電圧が増大したか否かを判定する(ステップS19)。入出力ポートP1における電圧が増大していないと判定した場合(ステップS19のNO)、制御装置1Aは、処理をステップS18に戻して遮断状態にあった放電側スイッチのゲート電圧をさらにΔVだけ低減させる。制御装置1Aは、入出力ポートP1における電圧が増大したと判定するまでステップS18及びステップS19の処理を繰り返す。
【0059】
入出力ポートP1における電圧が増大したと判定した場合(ステップS19のYES)、状態切換部11Aは、導通状態にあった放電側スイッチを遮断状態に切り換える(ステップS20)。具体的には、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、導通状態にあった放電側スイッチである第3スイッチ7Aを遮断状態に切り換える。放電用蓄電装置であった第2蓄電装置22を電気負荷20から切り離し、第2蓄電装置22を充電できるようにするためである。或いは、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、導通状態にあった放電側スイッチである第1スイッチ5Aを遮断状態に切り換える。放電用蓄電装置であった第1蓄電装置21を電気負荷20から切り離し、第1蓄電装置21を充電できるようにするためである。
【0060】
その後、状態切換部11Aは、放電用蓄電装置であった蓄電装置の充電を開始する(ステップS21)。具体的には、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第4スイッチ8Aを導通状態にして、放電用蓄電装置であった第2蓄電装置22の充電を開始する。或いは、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第2スイッチ6Aを導通状態にして、放電用蓄電装置であった第1蓄電装置21の充電を開始する。
【0061】
その後、制御装置1Aは、第3電圧センサ4の出力に基づいて、遮断状態にあった放電側スイッチのゲート電圧が導通電圧(例えば0[V]である。)に達したか否かを判定する(ステップS22)。具体的には、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、遮断状態にあった放電側スイッチである第1スイッチ5Aのゲート電圧が導通電圧に達したか否かを判定する。或いは、状態切換部11Aは、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、遮断状態にあった放電側スイッチである第3スイッチ7Aのゲート電圧が導通電圧に達したか否かを判定する。なお、導通電圧は、ドレイン電流が最大となるときのゲート電圧である。
【0062】
遮断状態にあった放電側スイッチのゲート電圧が導通電圧に達していないと判定すると(ステップS22のNO)、制御装置1Aは、遮断状態にあった放電側スイッチのゲート電圧を所定幅ΔVだけさらに低減させる(ステップS23)。そして、制御装置1Aは、遮断状態にあった放電側スイッチのゲート電圧が導通電圧に達するまでステップS22及びステップS23の処理を繰り返す。
【0063】
なお、遮断状態にあった放電側スイッチのゲート電圧が導通電圧に達したと判定すると(ステップS22のYES)、制御装置1Aは、今回の第2状態切換処理を終了させる。
【0064】
次に、図8を参照して、第2状態切換処理が行われる際の入出力ポートP1における電圧すなわち電気負荷20にかかる電圧の推移について説明する。なお、図8の上図及下図はそれぞれ、入出力ポートP1、P2、及びP3における電圧の推移を示すグラフであり、横軸に時間を配し、縦軸に電圧を配する。また、図8上図は、図4と同じグラフであり、図8下図との比較のため、第1状態切換処理が行われる際の入出力ポートP1、P2、及びP3における電圧の推移を示す。また、図8の上図及び下図において、黒色の実線で示す推移は入出力ポートP1における電圧の推移を示し、白色の破線で示す推移は入出力ポートP2における電圧の推移を示し、白色の一点鎖線で示す推移は入出力ポートP3における電圧の推移を示す。また、点SP1は、入出力ポートP1における電圧が所定値αを上回り、充電用蓄電装置としての第1蓄電装置21が要放電状態となる切換点を示す。点SP2は、入出力ポートP3における電圧が所定値αを上回り、充電用蓄電装置としての第2蓄電装置22が要放電状態となる切換点を示す。点SP3は、入出力ポートP3における電圧が所定値βを下回り、放電用蓄電装置としての第2蓄電装置22が要充電状態となる切換点を示す。
【0065】
図8下図に示すように、マルチポート電源供給ユニット100Aは、充電用蓄電装置が要放電状態となった場合、或いは、放電用蓄電装置が要充電状態となった場合に、充電用蓄電装置が放電用蓄電装置に、放電用蓄電装置が充電用蓄電装置になるように切り換える。具体的には、マルチポート電源供給ユニット100は、第1スイッチ5A及び第4スイッチ8Aの組み合わせの導通/遮断状態と、第2スイッチ6A及び第3スイッチ7Aの組み合わせの遮断/導通状態とを交互に切り換える。その結果、マルチポート電源供給ユニット100Aは、入出力ポートP1における電圧を所定値α以下で且つ所定値β以上の範囲の電圧に維持できる。
【0066】
また、図8下図に示すように、マルチポート電源供給ユニット100Aによる入出力ポートP1における切り換え時の電圧変化は、図8上図に示すマルチポート電源供給ユニット100による電圧変化に比べ緩やかになる。導通状態のときに流れる電流を制御可能なスイッチング素子により、充電用蓄電装置であった蓄電装置から電気負荷20に流れる電流を徐々に増大させることができるためである。このように、マルチポート電源供給ユニット100Aは、充放電の切り換えの際の入出力ポートP1における急激な電圧変化を抑えることができる。
【0067】
以上の構成により、マルチポート電源供給ユニット100Aは、マルチポート電源供給ユニット100による上述の効果に加え、充放電の切り換えの際の電気負荷20にかかる電圧の急激な変化を抑制できるという効果をもたらす。そのため、マルチポート電源供給ユニット100Aは、例えば、電気負荷20がランプを含む場合、充放電の切り換えの際の電圧変化に起因するランプの明滅をさらに抑えることができる。
【0068】
また、状態切換部11Aは、ディプレッション型のMOSFETのゲート電圧を所定幅ΔVずつ徐々に低減させてドレイン電流を徐々に増大させる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。状態切換部11Aは、エンハンスメント型のMOSFETのゲート電圧を所定幅ΔVずつ徐々に増大させてドレイン電流を徐々に増大させてもよい。
【0069】
また、上述の実施例において、マルチポート電源供給ユニット100、100Aは、2つの蓄電装置のうちの一方を充電しながら他方を放電させることによって電気負荷20に継続的に電力を供給する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。マルチポート電源供給ユニット100、100Aは、3つ以上の蓄電装置のうちの1つ又は複数の蓄電装置を充電しながら別の蓄電装置を放電させることによって電気負荷20に継続的に電力を供給してもよい。
【0070】
次に、図9を参照しながら、本発明の別の実施例に係るマルチポート電源供給ユニット100Bについて説明する。なお、図9は、マルチポート電源供給ユニット100Bの構成例を示す機能ブロック図である。
【0071】
マルチポート電源供給ユニット100Bは、エンジン、電動モータ等を駆動源とする車両に搭載される車載装置である。出力装置9及び蓄電装置異常検出部12以外の構成は、マルチポート電源供給ユニット100における構成と同じであるため、その説明を省略する。また、図9のマルチポート電源供給ユニット100Bを含む電源システムは、制御装置1Bと発電装置23とが信号線によって接続される点を除き、図2の電源システムと同じであるため、その概略回路図の図示を省略する。
【0072】
制御装置1Bは、マルチポート電源供給ユニット100Bの動作を制御する装置である。本実施例では、制御装置1Bは、CPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。そして、制御装置1Bは、充放電状態判定部10、状態切換部11、蓄電装置異常検出部12等の各種機能要素に対応するプログラムをROM又はRAMから読み出し、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。具体的には、制御装置1Bは、第1電圧センサ2、第2電圧センサ3等の出力を受けて、各種機能要素に対応する演算を実行し、その演算結果に基づいて第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、第4スイッチ8、出力装置9等を制御する。
【0073】
出力装置9は、各種情報を出力するための装置であり、例えば、車載スピーカ、ブザー等の音声出力装置、車載ディスプレイ、LEDランプ等の表示装置、シートバイブレータ、ハンドルバイブレータ等の振動装置を含む。本実施例では、出力装置9は、車載ディスプレイであり、制御装置1Bが出力する制御信号に応じて各種情報を表示する。
【0074】
蓄電装置異常検出部12は、マルチポート電源供給ユニット100Bを構成する蓄電装置の異常を検出する機能要素である。本実施例では、蓄電装置異常検出部12は、第1蓄電装置21及び第2蓄電装置22の異常を検出する。
【0075】
具体的には、蓄電装置異常検出部12は、異常検出の対象となる蓄電装置を発電装置23から切り離した上でその蓄電装置の電圧を取得し、取得した電圧に基づいて蓄電装置の異常を検出する。なお、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置を所定期間に亘って充電した後で、その蓄電装置の電圧を取得するようにしてもよい。蓄電装置の充電を試みたにもかかわらず蓄電装置の電圧が変化しないこと、すなわち蓄電装置が充電されないことを検知することによってその蓄電装置の異常を検出し易くするためである。
【0076】
より具体的には、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置の電圧が所定値γ未満であれば、その蓄電装置が異常であると判定する。なお、所定値γは、上述の所定値β以下の値であり、蓄電装置の種類に応じて異なる値であってもよい。
【0077】
蓄電装置が異常であると判定した場合、蓄電装置異常検出部12は、異常が検出されない別の蓄電装置と電気負荷20と発電装置23とを導通させるようにスイッチを切り換える。その異常が検出されない別の蓄電装置又は発電装置23から電気負荷20に継続的に電力を供給できるようにしながらもその異常が検出されない別の蓄電装置を充電できるようにするためである。また、蓄電装置異常検出部12は、発電装置23に対して制御信号を出力し、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように発電装置23を制御する。なお、所定範囲は、例えば、所定値α(例えば13Vである。)以下で、且つ、所定値β(例えば12Vである。)以上の範囲である。過度の高電圧が電気負荷20に印加されないようにするためである。
【0078】
ここで、図10を参照しながら、蓄電装置異常検出部12が蓄電装置の異常を検出する処理(以下、「蓄電装置異常検出処理」とする。)について説明する。なお、図10は、蓄電装置異常検出処理の流れを示すフローチャートである。制御装置1Bは、所定周期で繰り返しこの蓄電装置異常検出処理を実行する。なお、制御装置1Bは、例えば、異常検出対象の蓄電装置に対する充電が所定期間に亘って行われた後等の所定のタイミングでこの蓄電装置異常検出処理を実行してもよい。
【0079】
最初に、制御装置1Bの蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置と発電装置23とを電気的に切り離す(ステップS21)。
【0080】
具体的には、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第2スイッチ6を遮断状態にして第1蓄電装置21と発電装置23とを電気的に切り離す。発電装置23の発電電圧の影響を受けることなく第1蓄電装置21の電圧を検出できるようにするためである。なお、この場合、第1スイッチ5及び第4スイッチ8は遮断状態にあり、第3スイッチ7は導通状態にある。電気負荷20と第1蓄電装置21とを電気的に切り離すためであり、また、第2蓄電装置22から電気負荷20へ継続的に電力を供給できるようにするためである。
【0081】
或いは、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第4スイッチ8を遮断状態にして第2蓄電装置22と発電装置23とを電気的に切り離す。発電装置23の発電電圧の影響を受けることなく第2蓄電装置22の電圧を検出できるようにするためである。なお、この場合、第1スイッチ5は導通状態にあり、第2スイッチ6及び第3スイッチ7は遮断状態にある。電気負荷20と第2蓄電装置22とを電気的に切り離すためであり、また、第1蓄電装置21から電気負荷20へ継続的に電力を供給できるようにするためである。
【0082】
その後、蓄電装置異常検出部12は、第1電圧センサ2又は第2電圧センサ3の出力に基づいて異常検出対象の蓄電装置の電圧が所定値γ未満であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0083】
具体的には、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、第1電圧センサ2の出力に基づいて第1蓄電装置21の電圧が所定値γ未満であるか否かを判定する。
【0084】
或いは、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、第2電圧センサ3の出力に基づいて第2蓄電装置22の電圧が所定値γ未満であるか否かを判定する。
【0085】
異常検出対象の蓄電装置の電圧が所定値γ未満であると判定した場合(ステップS22のYES)、蓄電装置異常検出部12は、出力装置9に対して制御信号を出力し、異常検出対象の蓄電装置の異常を検出した旨を車載ディスプレイ上に表示させる(ステップS23)。
【0086】
一方、異常検出対象の蓄電装置の電圧が所定値γ以上であると判定した場合(ステップS22のNO)、蓄電装置異常検出部12は、出力装置9に対して制御信号を出力することなく、ステップS24を実行する。
【0087】
その後、蓄電装置異常検出部12は、全ての蓄電装置の異常検出を試みたか否かを判定する(ステップS24)。全ての蓄電装置の異常検出を未だ試みていないと判定した場合(ステップS24のNO)、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置を別の蓄電装置に切り換えた上で(ステップS25)、ステップS21以降の処理を実行する。全ての蓄電装置の異常検出を試みたと判定した場合(ステップS24のYES)、蓄電装置異常検出部12は、蓄電装置の何れかにおける異常を検出したか否かを判定する(ステップS26)。
【0088】
蓄電装置の何れかで異常を検出したと判定した場合(ステップS26のYES)、蓄電装置異常検出部12は、電気負荷20と正常な蓄電装置と発電装置23とを導通させ、且つ、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように制御する(ステップS27)。
【0089】
具体的には、蓄電装置異常検出部12は、第1蓄電装置21のみで異常を検出したと判定した場合、第1スイッチ5及び第2スイッチ6を遮断状態にし、且つ第3スイッチ7及び第4スイッチ8を導通状態にする。これにより、蓄電装置異常検出部12は、電気負荷20と第2蓄電装置22と発電装置23とを導通させる。異常が検出されていない第2蓄電装置22又は発電装置23から電気負荷20に継続的に電力を供給できるようにしながら発電装置23の発電電圧で第2蓄電装置22を充電できるようにするためである。また、蓄電装置異常検出部12は、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように制御する。過度の高電圧が電気負荷20に印加されないようにするためである。
【0090】
或いは、蓄電装置異常検出部12は、第2蓄電装置22のみで異常を検出したと判定した場合、第1スイッチ5及び第2スイッチ6を導通状態にし、且つ第3スイッチ7及び第4スイッチ8を遮断状態にする。これにより、蓄電装置異常検出部12は、電気負荷20と第1蓄電装置21と発電装置23とを導通させる。異常が検出されていない第1蓄電装置21又は発電装置23から電気負荷20に継続的に電力を供給できるようにしながら発電装置23の発電電圧で第1蓄電装置21を充電できるようにするためである。また、蓄電装置異常検出部12は、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように制御する。過度の高電圧が電気負荷20に印加されないようにするためである。
【0091】
なお、1又は複数の蓄電装置で異常を検出した場合であっても、正常な蓄電装置が複数存在する場合には、蓄電装置異常検出部12は、電気負荷20に接続された正常な蓄電装置に発電装置23を接続する必要はない。複数の正常な蓄電装置を順番に充電用蓄電装置又は放電用蓄電装置として利用しながら、状態切換部11によるマルチポート電源供給ユニット100Bの動作状態の切り換えを継続させることができるためである。
【0092】
また、蓄電装置異常検出部12は、1つの蓄電装置の異常を検出した場合に、残りの全ての蓄電装置の異常検出を試みることなく、電気負荷20と別の蓄電装置と発電装置23とを導通させ、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように制御してもよい。
【0093】
このように、蓄電装置異常検出部12は、異常検出対象の蓄電装置を発電装置23から切り離した上でその蓄電装置の電圧に基づいてその蓄電装置の異常の有無を判断する。そのため、蓄電装置異常検出部12は、蓄電装置の異常の有無を正確に判断できる。
【0094】
また、蓄電装置異常検出部12は、蓄電装置が正常であれば実現されるはずの蓄電装置の電圧状態の存否に基づいてその蓄電装置の異常の有無を判断する。そのため、蓄電装置異常検出部12は、蓄電装置の異常の有無を正確に判断できる。
【0095】
また、蓄電装置異常検出部12は、1又は複数の蓄電装置で異常を検出した場合であっても、少なくとも1つの蓄電装置が正常であれば、マルチポート電源供給ユニット100Bの動作を継続させることができる。すなわち、正常な蓄電装置から電気負荷20に継続的に電力を供給できる。
【0096】
次に、図11を参照しながら、本発明のさらに別の実施例に係るマルチポート電源供給ユニット100Cについて説明する。なお、図11は、マルチポート電源供給ユニット100Cの構成例を示す機能ブロック図である。
【0097】
マルチポート電源供給ユニット100Cは、エンジン、電動モータ等を駆動源とする車両に搭載される車載装置である。第3電圧センサ4、第4電圧センサ40、及びスイッチ異常検出部13以外の構成は、マルチポート電源供給ユニット100Bにおける構成と同じであるため、その説明を省略する。また、図11のマルチポート電源供給ユニット100Cを含む電源システムは、マルチポート電源供給ユニット100Bを含む電源システムと同じであるため、その概略回路図の図示を省略する。
【0098】
制御装置1Cは、マルチポート電源供給ユニット100Cの動作を制御する装置である。本実施例では、制御装置1Cは、CPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。そして、制御装置1Cは、充放電状態判定部10、状態切換部11、蓄電装置異常検出部12、スイッチ異常検出部13等の各種機能要素に対応するプログラムをROM又はRAMから読み出し、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。具体的には、制御装置1Cは、第1電圧センサ2、第2電圧センサ3、第3電圧センサ4、第4電圧センサ40等の出力を受けて、各種機能要素に対応する演算を実行し、その演算結果に基づいて第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、第4スイッチ8、出力装置9等を制御する。
【0099】
第3電圧センサ4、第4電圧センサ40は、第1電圧センサ2及び第2電圧センサ3と同様、マルチポート電源供給ユニット100Cの動作に必要な電圧を検出する装置である。本実施例では、第3電圧センサ4は、入出力ポートP1の電圧を検出するために取り付けられ、入出力ポートP1の電圧を所定周期で繰り返し検出し、検出した電圧値を制御装置1Cに対して出力する。また、第4電圧センサ40は、入出力ポートP4の電圧を検出するために取り付けられ、入出力ポートP4の電圧を所定周期で繰り返し検出し、検出した電圧値を制御装置1Cに対して出力する。
【0100】
スイッチ異常検出部13は、マルチポート電源供給ユニット100Cを構成するスイッチの異常を検出する機能要素である。本実施例では、スイッチ異常検出部13は、第1スイッチ5、第2スイッチ6、第3スイッチ7、及び第4スイッチ8のうちの少なくとも1つにおける異常を検出する。
【0101】
具体的には、スイッチ異常検出部13は、発電装置23の発電電圧を、何れの蓄電装置の電圧よりも高い値に設定する。
【0102】
その上で、スイッチ異常検出部13は、電気負荷20が接続される入出力ポートP1の電圧、充電用蓄電装置が接続される入出力ポートの電圧(以下、「充電用蓄電装置電圧」とする。)、放電用蓄電装置が接続される入出力ポートの電圧(以下、「放電用蓄電装置電圧」とする。)、及び、発電装置23が接続される入出力ポートP4の電圧を取得し、取得した電圧に基づいてスイッチの異常を検出する。
【0103】
より具体的には、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP1の電圧と充電用蓄電装置電圧とが等しく、且つ、放電用蓄電装置電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しく、且つ、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なる場合に、スイッチに異常がないと判断する。すなわち、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP1の電圧と充電用蓄電装置電圧とが異なる場合、或いは、放電用蓄電装置電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なる場合、或いは、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しい場合に、スイッチに異常があると判断する。
【0104】
マルチポート電源供給ユニット100Cでは、入出力ポートP1と充電用蓄電装置が接続される入出力ポートとの間のスイッチが正常であれば、入出力ポートP1の電圧と充電用蓄電装置電圧とが等しくなるためである。
【0105】
また、マルチポート電源供給ユニット100Cでは、放電用蓄電装置が接続される入出力ポートと入出力ポートP4との間のスイッチが正常であれば、放電用蓄電装置電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しくなるためである。
【0106】
また、マルチポート電源供給ユニット100Cでは、全てのスイッチが正常であれば、充電回路と電力供給回路とが電気的に分離されるので、発電装置23の発電電圧が何れの蓄電装置の電圧よりも高く設定されている限り、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しくなることはないためである。
【0107】
その後、少なくとも1つのスイッチが異常であると判定した場合、スイッチ異常検出部13は、全てのスイッチを導通状態に切り換える。異常のあるスイッチが1つでもあれば、状態切換部11による制御ではマルチポート電源供給ユニット100Cを期待通りに動作させることができないためである。また、次善の動作状態でマルチポート電源供給ユニット100Cの動作を継続させるためである。また、スイッチ異常検出部13は、発電装置23に対して制御信号を出力し、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように発電装置23を制御する。なお、所定範囲は、例えば、所定値α(例えば13Vである。)以下で、且つ、所定値β(例えば12Vである。)以上の範囲である。過度の高電圧が電気負荷20に印加されないようにするためである。
【0108】
ここで、図12を参照しながら、スイッチ異常検出部13がスイッチの異常を検出する処理(以下、「スイッチ異常検出処理」とする。)について説明する。なお、図12は、スイッチ異常検出処理の流れを示すフローチャートである。制御装置1Cは、所定周期で繰り返しこのスイッチ異常検出処理を実行する。なお、制御装置1Cは、例えば、車両始動時等の所定のタイミングでこのスイッチ異常検出処理を実行してもよい。
【0109】
最初に、制御装置1Cのスイッチ異常検出部13は、発電装置23が発電中であれば、発電装置23の発電を中止させる(ステップS31)。蓄電装置の電圧を取得する際に、発電装置23の発電電圧が蓄電装置の電圧に影響しないようにするためである。なお、この場合、放電用蓄電装置は、入出力ポートP1を介して電気負荷20に接続され、充電用蓄電装置は、入出力ポートP4を介して発電装置23に接続されている。
【0110】
その後、スイッチ異常検出部13は、マルチポート電源供給ユニット100Cを構成する複数の蓄電装置のそれぞれの電圧を取得し、それらの電圧のうちで最も高い電圧を基準電圧RVとして導き出す(ステップS32)。
【0111】
その後、スイッチ異常検出部13は、基準電圧RVに所定値ΔRVを加えた値を発電装置23の発電電圧として設定する(ステップS33)。スイッチに異常が無ければ入出力ポートP4の電圧が何れの蓄電装置の電圧よりも高くなる状況を作り出すためである。
【0112】
その後、スイッチ異常検出部13は、発電装置23による発電を開始させる(ステップS34)。スイッチの異常を検出可能な状況を作り出すためである。
【0113】
その後、スイッチ異常検出部13は、所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS35)。本実施例では、所定条件は、入出力ポートP1の電圧と充電用蓄電装置電圧とが等しく、且つ、放電用蓄電装置電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しく、且つ、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なるという条件である。
【0114】
具体的には、スイッチ異常検出部13は、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP3の電圧とが等しく、且つ、入出力ポートP2の電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しく、且つ、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なるという条件を満たすか否かを判定する。
【0115】
或いは、スイッチ異常検出部13は、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP2の電圧とが等しく、且つ、入出力ポートP3の電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しく、且つ、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なるという条件を満たすか否かを判定する。
【0116】
所定条件を満たさないと判定した場合(ステップS35のNO)、スイッチ異常検出部13は、出力装置9に対して制御信号を出力し、スイッチの異常を検出した旨を車載ディスプレイ上に表示させる(ステップS36)。
【0117】
具体的には、スイッチ異常検出部13は、充電用蓄電装置が第1蓄電装置21であったならば、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP3の電圧とが異なると判断した場合に、第3スイッチ7が異常である旨を車載ディスプレイ上に表示させる。また、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP2の電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なると判断した場合に、第2スイッチ6が異常である旨を車載ディスプレイ上に表示させる。また、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しいと判断した場合に、第1スイッチ5及び第4スイッチ8の少なくとも一方が異常である旨を車載ディスプレイ上に表示させる。
【0118】
或いは、スイッチ異常検出部13は、充電用蓄電装置が第2蓄電装置22であったならば、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP2の電圧とが異なると判断した場合に、第1スイッチ5が異常である旨を車載ディスプレイ上に表示させる。また、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP3の電圧と入出力ポートP4の電圧とが異なると判断した場合に、第4スイッチ8が異常である旨を車載ディスプレイ上に表示させる。また、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP1の電圧と入出力ポートP4の電圧とが等しいと判断した場合に、第2スイッチ6及び第3スイッチ7の少なくとも一方が異常である旨を車載ディスプレイ上に表示させる。
【0119】
一方、所定条件を満たすと判定した場合(ステップS35のYES)、スイッチ異常検出部13は、出力装置9に対して制御信号を出力することなく、ステップS37を実行する。
【0120】
その後、スイッチ異常検出部13は、マルチポート電源供給ユニット100Cの全ての動作状態におけるスイッチ異常の検出を試みたか否かを判定する(ステップS37)。本実施例では、第1の動作状態及び第2の動作状態のそれぞれにおけるスイッチ異常の検出を試みたか否かを判定する。なお、第1の動作状態は、第1蓄電装置21を放電用蓄電装置とし第2蓄電装置22を充電用蓄電装置とする動作状態であり、第2の動作状態は、第2蓄電装置22を放電用蓄電装置とし第1蓄電装置21を充電用蓄電装置とする動作状態である。
【0121】
全ての動作状態におけるスイッチ異常の検出を未だ試みていないと判定した場合(ステップS37のNO)、スイッチ異常検出部13は、マルチポート電源供給ユニット100Cの動作状態を別の動作状態に切り換えた上で(ステップS38)、ステップS31以降の処理を実行する。全ての動作状態におけるスイッチ異常の検出を試みたと判定した場合(ステップS37のYES)、スイッチ異常検出部13は、スイッチの何れかにおける異常を検出したか否かを判定する(ステップS39)。
【0122】
スイッチの何れかで異常を検出したと判定した場合(ステップS39のYES)、スイッチ異常検出部13は、全てのスイッチを導通状態に切り換え、且つ、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように制御する(ステップS40)。
【0123】
具体的には、スイッチ異常検出部13は、第1スイッチ5〜第4スイッチ8の全てを導通状態にする。これにより、スイッチ異常検出部13は、第1スイッチ5又は第2スイッチ6に異常が検出された場合であっても、第3スイッチ6及び第4スイッチ7を通じて発電装置23から電気負荷20に電力を供給できる。また、スイッチ異常検出部13は、第3スイッチ7又は第4スイッチ8に異常が検出された場合であっても、第1スイッチ5及び第2スイッチ6を通じて発電装置23から電気負荷20に電力を供給できる。
【0124】
また、スイッチ異常検出部13は、発電装置23の発電電圧が所定範囲内となるように制御する。過度の高電圧が電気負荷20に印加されないようにするためである。
【0125】
また、スイッチ異常検出部13は、何れのスイッチで異常を検出した場合であっても全てのスイッチを導通状態に切り換える。そのため、スイッチ異常検出部13は、何れか1つのスイッチで異常を検出した時点で、マルチポート電源供給ユニット100Cが実現し得る動作状態のうちの全てにおけるスイッチ異常の検出を試みることなく、全てのスイッチを導通状態に切り換えてもよい。
【0126】
なお、スイッチ異常検出部13は、蓄電装置が接続される入出力ポートを経由して入出力ポートP1と入出力ポートP4とを結ぶ経路が2本以上正常に機能する場合には、全てのスイッチを導通状態に切り換えなくてもよい。例えば、スイッチ異常検出部13は、特定の蓄電装置と発電装置23との間のスイッチが遮断(オフ)固着したと判断した場合には、その特定の蓄電装置が接続される入出力ポートを経由する経路のみを切り離す。その上で、スイッチ異常検出部13は、状態切換部11によるマルチポート電源供給ユニット100Cの動作状態の切り換えを継続させてもよい。
【0127】
このように、スイッチ異常検出部13は、スイッチが正常であれば実現されるはずの入出力ポートP1〜P4のそれぞれにおける電圧の大小関係に基づいてスイッチの異常の有無を判断する。そのため、スイッチ異常検出部13は、スイッチの異常の有無を正確に判断できる。
【0128】
また、スイッチ異常検出部13は、何れか1つのスイッチで異常を検出した場合に全てのスイッチを導通状態に切り換える。そのため、スイッチ異常検出部13は、入出力ポートP1と入出力ポートP4とを結ぶ経路の全てが同時に遮断状態とならない限り、マルチポート電源供給ユニット100Cの動作を継続させることができる。すなわち、発電装置23から電気負荷20に電力を供給できる。
【0129】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0130】
例えば、上述の実施例において、マルチポート電源供給ユニット100Aは、蓄電装置異常検出部12及びスイッチ異常検出部13の少なくとも一方を備えるようにしてもよい。また、マルチポート電源供給ユニット100Bは、蓄電装置異常検出部12の代わりにスイッチ異常検出部13を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1、1A・・・制御装置 2・・・第1電圧センサ 3・・・第2電圧センサ 4・・・第3電圧センサ 5、5A、6、6A、7、7A、8、8A・・・スイッチ 10・・・充放電状態判定部 11、11A・・・状態切換部12・・・蓄電装置異常検出部13・・・スイッチ異常検出部 20・・・電気負荷 21・・・第1蓄電装置 22・・・第2蓄電装置 23・・・発電装置 24・・・始動装置 40・・・第4電圧センサ 100、100A・・・マルチポート電源供給ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12