特許第5825287号(P5825287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000002
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000003
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000004
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000005
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000006
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000007
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000008
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000009
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000010
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000011
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000012
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000013
  • 特許5825287-ハイブリッド車両 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5825287
(24)【登録日】2015年10月23日
(45)【発行日】2015年12月2日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20151112BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20151112BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20151112BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20151112BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20151112BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20151112BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20151112BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20151112BHJP
【FI】
   B60K6/20 320
   B60K6/445ZHV
   B60K6/20 330
   B60K6/20 310
   B60L11/18 A
   B60L11/14
   F02D29/06 L
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-80416(P2013-80416)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-201249(P2014-201249A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 一真
(72)【発明者】
【氏名】鉾井 耕司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 弘樹
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−093335(JP,A)
【文献】 特開2003−235108(JP,A)
【文献】 特開2008−168860(JP,A)
【文献】 特開2012−224215(JP,A)
【文献】 特開2010−023715(JP,A)
【文献】 特開2012−222930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/00
B60L 1/00 − 15/42
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
内燃機関と、
前記内燃機関の出力を用いて前記蓄電装置の充電電力を生成可能な発電装置と、
前記蓄電装置の蓄電量の増加を利用者が要求するための入力装置と、
前記入力装置によって前記蓄電量の増加が要求されると、前記蓄電装置の充電が促進されるように前記発電装置による前記蓄電装置の充電を制御する制御装置とを備え、
前記入力装置によって前記蓄電量の増加が要求された状態において、前記制御装置は、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて前記蓄電装置の充電を抑制し、
前記制御装置は、
前記入力装置によって前記蓄電量の増加が要求されると、前記蓄電装置の充電が促進されるように前記発電装置による前記蓄電装置の充電を制御する充電促進制御部と、
前記充電促進制御部による充電制御の実行時、前記蓄電量を早期に増加させる強充電モードと、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて前記発電装置による前記蓄電装置の充電を抑制する弱充電モードとの切替を制御するモード制御部とを含み、
前記モード制御部により前記弱充電モードが選択されているとき、前記充電促進制御部は、前記蓄電装置の充電状態を示す状態量の目標を、前記弱充電モードの選択後からの前記状態量の最大値とする、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御装置は、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて前記発電装置が停止した状態を増加させることによって、前記蓄電装置の充電を抑制する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記モード制御部により前記強充電モードが選択されているとき、前記充電促進制御部は、前記状態量が前記目標から乖離するように前記目標を高める、請求項1または2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記モード制御部により前記弱充電モードが選択されているとき、前記充電促進制御部は、前記蓄電量に拘わらず、前記発電装置による前記蓄電装置の充電量を一定とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記内燃機関は、前記走行負荷が増加すると始動するとともに前記走行負荷が低下すると停止し、
前記モード制御部により前記弱充電モードが選択されているとき、前記充電促進制御部は、前記走行負荷に応じた前記内燃機関の作動時に、前記発電装置による前記蓄電装置の充電を実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記モード制御部は、前記入力装置からの入力に基づいて前記強充電モードと前記弱充電モードとの切替を行なう、請求項1から5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記入力装置によって前記蓄電量の増加が要求されると、前記蓄電装置の充電状態を高めるように、前記発電装置による前記蓄電装置の充電を制御する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記入力装置によって前記蓄電量の増加が要求されると、前記蓄電装置の充電レートを高めるように、前記発電装置による前記蓄電装置の充電を制御する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両に関し、特に、内燃機関の出力を用いて蓄電装置を充電可能な発電装置を備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011−93335号公報(特許文献1)は、内燃機関の出力を用いて蓄電装置の充電電力を発生可能な発電機を搭載したハイブリッド車両を開示する。このハイブリッド車両においては、蓄電装置の蓄電量を増加させるためのユーザからの充電要求が検知されると、蓄電装置の充電が促進されるように、充電要求の非検知時と比較して内燃機関の出力を増加させる。
【0003】
このハイブリッド車両によれば、蓄電装置の蓄電量を目標に維持する従来の充放電制御に加えて、EV走行(内燃機関を停止して電動機のみを用いた走行)やパワーモードの選択に備えて蓄電量を予め増加させるような、ユーザ意思に対応した蓄電装置の充放電管理を実現することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−93335号公報
【特許文献2】特開2012−46121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置の蓄電量を増加させる場合、できる限り速やかに蓄電量を増加させたい場合もあれば、できる限り効率的に蓄電量を増加させたい場合もある。また、発電のための内燃機関の作動時に内燃機関が発生する音や振動が懸念される場合もあり得る(NV(Noise and Vibration)特性の悪化)。上記の特許文献では、このような観点の検討は行なわれていない。
【0006】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、利用者の要求に応じて蓄電装置の蓄電量を増加させる場合の効率やNV特性にも配慮可能なハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、ハイブリッド車両は、蓄電装置と、内燃機関と、発電装置と、入力装置と、制御装置とを備える。発電装置は、内燃機関の出力を用いて蓄電装置の充電電力を生成可能に構成される。入力装置は、蓄電装置の蓄電量の増加を利用者が要求するためのものである。制御装置は、入力装置によって蓄電量の増加が要求されると、蓄電装置の充電が促進されるように発電装置による蓄電装置の充電を制御する。そして、入力装置によって蓄電量の増加が要求された状態において、制御装置は、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて蓄電装置の充電を抑制する。
【0008】
好ましくは、制御装置は、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて発電装置が停止した状態を増加させることによって、蓄電装置の充電を抑制する。
【0009】
好ましくは、制御装置は、充電促進制御部と、モード制御部とを含む。充電促進制御部は、入力装置によって蓄電量の増加が要求されると、蓄電装置の充電が促進されるように発電装置による蓄電装置の充電を制御する。モード制御部は、充電促進制御部による充電制御の実行時、蓄電量を早期に増加させる強充電モードと、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて発電装置による蓄電装置の充電を抑制する弱充電モードとの切替を制御する。
【0010】
好ましくは、蓄電装置の充電状態を示す状態量が状態量の目標よりも低い方向に目標から乖離すると、発電装置による蓄電装置の充電が強制的に実施される。そして、モード制御部により弱充電モードが選択されているとき、充電促進制御部は、上記状態量が目標から乖離しないように、発電装置による蓄電装置の充電時に目標を状態量に追従させる。
【0011】
好ましくは、モード制御部により弱充電モードが選択されているとき、充電促進制御部は、上記状態量の最大値に目標を追従させる。
【0012】
好ましくは、モード制御部により強充電モードが選択されているとき、充電促進制御部は、上記状態量が目標から乖離するように目標を高める。
【0013】
好ましくは、モード制御部により弱充電モードが選択されているとき、充電促進制御部は、蓄電量に拘わらず、発電装置による蓄電装置の充電量を一定とする。
【0014】
好ましくは、内燃機関は、走行負荷が増加すると始動するとともに走行負荷が低下すると停止する。モード制御部により弱充電モードが選択されているとき、充電促進制御部は、走行負荷に応じた内燃機関の作動時に、発電装置による蓄電装置の充電を実行する。
【0015】
好ましくは、モード制御部は、入力装置からの入力に基づいて強充電モードと弱充電モードとの切替を行なう。
【0016】
好ましくは、制御装置は、入力装置によって蓄電量の増加が要求されると、蓄電装置の充電状態を高めるように、発電装置による蓄電装置の充電を制御する。
【0017】
また、好ましくは、制御装置は、入力装置によって蓄電量の増加が要求されると、蓄電装置の充電レートを高めるように、発電装置による蓄電装置の充電を制御する。
【発明の効果】
【0018】
この発明においては、蓄電装置の蓄電量の増加を利用者が要求するための入力装置が設けられる。入力装置によって蓄電量の増加が要求されると、蓄電装置の充電が促進されるように発電装置による蓄電装置の充電が行なわれる(充電促進制御)。充電促進制御では、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて蓄電装置の充電が抑制される。これにより、走行負荷が小さいときに内燃機関の出力も制限されるので、低効率かつNV特性が悪化する低負荷での内燃機関の作動が抑制される。したがって、この発明によれば、利用者の要求に応じて蓄電装置の蓄電量を増加させる場合の効率やNV特性にも配慮可能なハイブリッド車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の実施の形態によるハイブリッド車両の全体ブロック図である。
図2】SOC回復スイッチの外形の一例を示した図である。
図3】SOC回復スイッチを操作したときのモード遷移を示した図である。
図4】強充電モード時の充電動作を示すタイミングチャートである。
図5】弱充電モード時の充電動作を示すタイミングチャートである。
図6図1に示すECUの構成を機能的に示すブロック図である。
図7】強充電モードが選択されたときのSOCおよびその制御目標の動きの一例を示したタイミングチャートである。
図8】弱充電モードが選択されたときのSOCおよびその制御目標の動きの一例を示したタイミングチャートである。
図9】ECUにおけるSOCの制御目標の設定手順を説明するためのフローチャートである。
図10】通常時の蓄電装置の充放電要求量を示した図である。
図11】弱充電モードの選択時における蓄電装置の充放電要求量を示した図である。
図12】実施の形態3におけるECUの構成を機能的に示すブロック図である。
図13】ECUにおけるエンジン始動判定の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態によるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド車両100は、エンジン2と、動力分割装置4と、モータジェネレータ6,10と、伝達ギヤ8と、駆動軸12と、車輪14とを備える。また、ハイブリッド車両100は、蓄電装置16と、電力変換器18,20と、ECU(Electronic Control Unit)26と、SOC回復スイッチ28とをさらに備える。
【0022】
動力分割装置4は、エンジン2、モータジェネレータ6および伝達ギヤ8に結合されてこれらの間で動力を分配する。たとえば、サンギヤ、プラネタリキャリヤおよびリングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車が動力分割装置4として用いられ、前記3つの回転軸がモータジェネレータ6、エンジン2および伝達ギヤ8の回転軸にそれぞれ接続される。モータジェネレータ10の回転軸は、伝達ギヤ8の回転軸に連結される。すなわち、モータジェネレータ10と伝達ギヤ8とは、同一の回転軸を有し、その回転軸が動力分割装置4のリングギヤに接続される。
【0023】
エンジン2が発生する運動エネルギーは、動力分割装置4によってモータジェネレータ6と伝達ギヤ8とに分配される。エンジン2は、駆動軸12に動力を伝達する伝達ギヤ8を駆動するとともにモータジェネレータ6を駆動する動力源としてハイブリッド車両100に組込まれる。モータジェネレータ6は、エンジン2によって駆動される発電機として動作し、かつ、エンジン2の始動を行ない得る電動機として動作するものとしてハイブリッド車両100に組込まれる。また、モータジェネレータ10は、駆動軸12に動力を伝達する伝達ギヤ8を駆動する動力源としてハイブリッド車両100に組込まれる。
【0024】
蓄電装置16は、再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池によって構成される。蓄電装置16は、電力変換器18,20へ電力を供給する。また、蓄電装置16は、モータジェネレータ6および/または10の発電時に発電電力を受けて充電される。なお、蓄電装置16として、大容量のキャパシタも採用可能であり、モータジェネレータ6,10による発電電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をモータジェネレータ6,10へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。なお、蓄電装置16の電圧は、たとえば200V程度である。
【0025】
また、蓄電装置16は、蓄電電圧および入出力電流に基づいて蓄電装置16の充電状態(以下「SOC(State Of Charge)」と称する。)を算出し、その算出されたSOCをECU26へ出力する。SOCは、蓄電装置16の満充電状態に対する蓄電量を0〜100%で表わしたものであり、蓄電装置16の残存容量を示す。蓄電装置16の電圧および入出力電流は、それぞれ図示されない電圧センサおよび電流センサによって検出される。なお、蓄電装置16の電圧および入出力電流の検出値を蓄電装置16からECU26へ出力し、ECU26においてSOCを算出してもよい。
【0026】
電力変換器18は、ECU26から受ける制御信号に基づいて、モータジェネレータ6により発電された電力を直流電力に変換して蓄電装置16へ出力する。電力変換器20は、ECU26から受ける制御信号に基づいて、蓄電装置16から供給される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ10へ出力する。
【0027】
なお、電力変換器18は、エンジン2の始動時、蓄電装置16から供給される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ6へ出力する。また、電力変換器20は、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時、モータジェネレータ10により発電された電力を直流電力に変換して蓄電装置16へ出力する。電力変換器18,20は、インバータによって構成される。なお、蓄電装置16と電力変換器18,20との間に、電力変換器18,20の入力電圧を蓄電装置16の電圧以上に昇圧するコンバータを設けてもよい。
【0028】
モータジェネレータ6,10は、交流電動機であり、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機によって構成される。モータジェネレータ6は、エンジン2により生成された運動エネルギーを電気エネルギーに変換して電力変換器18へ出力する。また、モータジェネレータ6は、電力変換器18から受ける三相交流電力によって駆動力を発生し、エンジン2の始動を行なう。
【0029】
モータジェネレータ10は、電力変換器20から受ける三相交流電力によって車両の駆動トルクを発生する。また、モータジェネレータ10は、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時、運動エネルギーや位置エネルギーとして車両に蓄えられた力学的エネルギーを電気エネルギーに変換して電力変換器20へ出力する。
【0030】
エンジン2は、燃料の燃焼による熱エネルギーをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギーに変換し、その変換された運動エネルギーを動力分割装置4へ出力する。たとえば、運動子がピストンであり、その運動が往復運動であれば、いわゆるクランク機構を介して往復運動が回転運動に変換され、ピストンの運動エネルギーが動力分割装置4に伝達される。
【0031】
ECU26は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、SOC回復スイッチ28や蓄電装置16等からの各種信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、ハイブリッド車両100における各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0032】
ECU26は、停車時や低速走行時のように走行負荷が小さくエンジン2の効率が低下するときは、エンジン2を停止させてモータジェネレータ10のみで走行(EV走行)するように電力変換器20を制御する。走行負荷が上昇しエンジン2を効率よく運転できるときは、ECU26は、エンジン2を始動してエンジン2およびモータジェネレータ10を用いて走行(HV走行)するようにエンジン2および電力変換器18,20を制御する。
【0033】
また、ECU26は、蓄電装置16から受けるSOCが所定の目標よりも低下すると、エンジン2の出力を用いてモータジェネレータ6が発電することによって蓄電装置16を充電するようにエンジン2および電力変換器18を制御する。さらに、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、ECU26は、モータジェネレータ10による回生発電が行なわれるように電力変換器20を制御する。
【0034】
ECU26は、SOC回復スイッチ28(後述)から要求信号Rsocを受けると、蓄電装置16の充電が促進されるように、エンジン2およびモータジェネレータ6を用いた充電制御(充電促進制御)を実行する。この充電促進制御は、SOCの制御目標を通常時(充電促進制御の非実行時)よりも高めたり、あるいは蓄電装置16の充電レート(単位時間当たりの充電量)を通常時よりも高めたりする制御であり、HV走行時にSOCを固定的な制御目標に維持する通常の充電制御とは異なるものである。
【0035】
SOC回復スイッチ28は、蓄電装置16の蓄電量の増加をユーザが要求するための入力装置である。別途設けられるEV走行要求スイッチ(図示せず)を操作することによるEV走行や、別途設けられるパワーモードスイッチ(図示せず)を操作することによるパワー走行(アクセルペダル操作に対する車両加速性を向上させる走行モード)の選択に備えて、ユーザは、SOC回復スイッチ28を操作することにより蓄電装置16の蓄電量の増加を車両に対して要求することができる。ユーザによりSOC回復スイッチ28が操作されると、SOC回復スイッチ28からECU26へ要求信号Rsocが出力される。なお、SOC回復スイッチ28に代えて、音声入力手段等を用いて、蓄電量の増加をユーザが要求可能としてもよい。
【0036】
ユーザは、SOC回復スイッチ28を操作することによって、2つの充電モードを選択することができる。一方は、SOCを早期に増加させる「強充電モード」である。SOC回復スイッチ28により強充電モードが選択されると、ECU26は、エンジン2を直ちに始動させ、モータジェネレータ6を作動させて蓄電装置16を強制的に充電するように、エンジン2および電力変換器18を制御する。
【0037】
他方は、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて蓄電装置16の充電を抑制する「弱充電モード」である。SOC回復スイッチ28により弱充電モードが選択されると、ECU26は、走行負荷に応じてエンジン2が作動しているときにSOCを増加させるように、エンジン2および電力変換器18を制御する。なお、この弱充電モードもSOCの増加を目的とするものであり、弱充電モードの選択時は、SOCの増加要求のない通常のSOC制御に対して、SOCの制御目標が高められ、あるいは蓄電装置16の充電レートが高められる。
【0038】
図2は、SOC回復スイッチ28の外形の一例を示した図である。また、図3は、SOC回復スイッチ28を操作したときのモード遷移を示した図である。図2,3を参照して、SOC回復スイッチ28は、操作部72と、表示部74,76とを含む。ユーザが操作部72を操作する毎に、強充電モード、弱充電モード、およびオフ状態(蓄電量増加の非要求状態)が順次切替わる。強充電モードと弱充電モードとの順番は入れ替えてもよい。
【0039】
強充電モード、弱充電モードおよびオフ状態のいずれが選択されているかは、ECU26からSOC回復スイッチ28へ通知される。そして、強充電モードの選択時に表示部74が点灯し、弱充電モードの選択時に表示部76が点灯する。
【0040】
再び図1を参照して、ECU26は、強充電モードが選択されているときは、車両の走行負荷に拘わらずエンジン2を作動させ、エンジン2およびモータジェネレータ6を用いて蓄電装置16を充電することにより蓄電装置16の充電を促進する充電促進制御を実行する。これにより、蓄電装置16の蓄電量を早期に回復させることができる。
【0041】
また、ECU26は、弱充電モードが選択されているときは、走行負荷に応じたエンジン2の作動時に、エンジン2およびモータジェネレータ6を用いて蓄電装置16を充電することにより蓄電装置16の充電を促進する充電促進制御を実行する。すなわち、弱充電モードが選択されているけれども走行負荷が小さいときは、ECU26は、エンジン2を停止してモータジェネレータ10のみを用いてEV走行するように電力変換器20を制御する。走行負荷が増加し、エンジン2が始動すると、ECU26は、エンジン2およびモータジェネレータ6を用いて上記の充電促進制御を実行する。
【0042】
なお、上記では、統合された1つのECU26によって各種制御を実行するものとしているが、エンジンを制御するためのECUや、モータジェネレータ6,10(電力変換器18,20)を制御するためのECU、蓄電装置16を監視するECU等のように別構成としてもよい。
【0043】
図4は、強充電モード時の充電動作を示すタイミングチャートである。図4を参照して、時刻t1において、SOC回復スイッチ28がオン操作されることにより強充電モードが選択されると、エンジン2が始動する。そして、エンジン2の出力を用いてモータジェネレータ6が発電し、蓄電装置16の充電が促進されるように、所定の充電量をもって蓄電装置16が充電される。
【0044】
図5は、弱充電モード時の充電動作を示すタイミングチャートである。図5を参照して、時刻t1において、SOC回復スイッチ28がオン操作されることにより弱充電モードが選択されたものとする。この時点での走行負荷は小さく、エンジン2は停止しており、また、このタイミングでエンジン2が直ちに始動することもない。
【0045】
時刻t2において、走行負荷の上昇によってエンジン2が始動すると、エンジン2の出力を用いてモータジェネレータ6が発電し、蓄電装置16の充電が促進されるように、所定の充電量をもって蓄電装置16が充電される。
【0046】
なお、SOC回復スイッチ28がオフ(強充電モード/弱充電モードの非選択時)の場合においても、SOCを維持するためにエンジン2およびモータジェネレータ6を用いた蓄電装置16の充電は行なわれるところ、弱充電モードの選択時は、SOCの制御目標が通常時よりも高められ、あるいは蓄電装置16の充電レートが通常時よりも高められる。
【0047】
時刻t3において、走行負荷の低下によってエンジン2が停止すると、蓄電装置16の充電も中止される。このように、弱充電モードでは、強充電モードのようにエンジン2を継続的に作動させて強制的に蓄電装置16の充電を行なうのではなく、走行負荷の低下に伴なうエンジン2の停止時は、蓄電装置16の充電が停止する。これにより、強充電モードと比較してSOCの回復は遅いけれども、エンジン2の効率が低い動作点で充電を行なうことによる効率低下を回避し、また、低走行負荷下でエンジン2が作動することによるNV悪化を回避することができる。
【0048】
図6は、図1に示したECU26の構成を機能的に示すブロック図である。図6を参照して、ECU26は、要求パワー算出部52と、エンジン始動判定部54と、モード制御部56と、充電促進制御部58と、HV制御部60と、エンジン制御部62と、MG1制御部64と、MG2制御部66とを含む。
【0049】
要求パワー算出部52は、アクセルペダル操作量および車速等に基づいて、ドライバーが要求する駆動力を得るのに必要な車両要求パワー(以下、単に「要求パワー」とも称する。)を算出する。
【0050】
エンジン始動判定部54は、要求パワー算出部52によって算出される要求パワーと、蓄電装置16の充放電要求量とに基づいて、エンジン2を始動するか否かを判定する。具体的には、エンジン始動判定部54は、要求パワーに蓄電装置16の充放電要求量(充電側を正値とする。)を加えた値が所定のエンジン始動しきい値以上になると、エンジン2の始動を指示する指令をHV制御部60へ出力する。なお、蓄電装置16の充放電要求量は、SOCによって決定され、たとえば、SOCが低いときは充電要求量が大きくなり、SOCが高いときは放電要求量が大きくなる。
【0051】
モード制御部56は、SOC回復スイッチ28から受ける要求信号Rsocに基づいて充電モード(強充電モード/弱充電モード/オフ状態)を制御する。具体的には、モード制御部56は、図3に示したように、ユーザによるSOC回復スイッチ28の操作に応じてSOC回復スイッチ28から要求信号Rsocを受ける毎に、強充電モード、弱充電モード、オフ状態を順次切替える。そして、モード制御部56は、充電モードの状態(オフ状態も含む)を示すモード信号MDを生成して充電促進制御部58へ出力するとともに、SOC回復スイッチ28へも表示用にモードの状態を出力する。
【0052】
充電促進制御部58は、モード制御部56からのモード信号MDが強充電モードを示しているときは、エンジン始動判定部54の判定結果に拘わらず、エンジン2を始動してモータジェネレータ6を用いた蓄電装置16の強制的な充電を指示する指令をHV制御部60へ出力する。また、充電促進制御部58は、モード制御部56からのモード信号MDが弱充電モードを示しているときは、エンジン始動判定部54によりエンジン2の始動が指示されているときにモータジェネレータ6を用いた蓄電装置16の充電の促進を指示する指令をHV制御部60へ出力する。
【0053】
HV制御部60は、エンジン始動判定部54または充電促進制御部58からの指令によりエンジン2の始動が指示されると、エンジン2の作動を指示する指令をエンジン制御部62へ出力する。また、HV制御部60は、エンジン2の始動時、エンジン2をクランキングするためのモータジェネレータ6の力行駆動を指示する指令をMG1制御部64へ出力する。そして、エンジン2が始動すると、HV制御部60は、モータジェネレータ6の回生駆動を指示する指令をMG1制御部64へ出力する。さらに、HV制御部60は、モータジェネレータ10の駆動を指示する指令をMG2制御部66へ出力する。
【0054】
エンジン制御部62は、エンジン2の作動を指示する指令をHV制御部60から受けると、エンジン2を作動させるための制御信号を生成してエンジン2へ出力する。MG1制御部64は、モータジェネレータ6の駆動を指示する指令をHV制御部60から受けると、電力変換器18を駆動するための制御信号を生成して電力変換器18へ出力する。MG2制御部66は、モータジェネレータ10の駆動を指示する指令をHV制御部60から受けると、電力変換器20を駆動するための制御信号を生成して電力変換器20へ出力する。
【0055】
以上のように、この実施の形態1においては、蓄電装置16の蓄電量の増加をユーザが要求するためのSOC回復スイッチ28が設けられる。SOC回復スイッチ28によって蓄電量の増加が要求されると、蓄電装置16の充電が促進されるように、エンジン2およびモータジェネレータ6による蓄電装置16の充電が行なわれる(充電促進制御)。充電促進制御については、蓄電量を早期に増加させる強充電モードと、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて蓄電装置16の充電を抑制する弱充電モードとが設けられる。弱充電モードでは、走行負荷が小さいときにエンジン2の出力も制限されるので、低効率かつNV特性が悪化する低負荷でのエンジン2の作動が抑制される。したがって、この実施の形態1によれば、ユーザの要求に応じて蓄電装置16の蓄電量を増加させる場合の効率やNV特性にも配慮可能なハイブリッド車両を提供することができる。
【0056】
[実施の形態2]
蓄電装置16のSOCには制御目標(範囲をもってもよい。)が設定され、SOCが制御目標よりも低い方向に制御目標から乖離すると、エンジン2が始動してモータジェネレータ6によって蓄電装置16が強制的に充電される(強制充電)。
【0057】
この実施の形態2では、強充電モードが選択されると、SOCの制御目標(範囲をもってもよい。)が引き上げられる。これにより、SOCが制御目標から乖離する状態が作り出され、その結果、エンジン2が始動してモータジェネレータ6によって蓄電装置16が強制的に充電される。
【0058】
弱充電モードも、蓄電装置16の蓄電量の増加が要求されるものである。しかしながら、強充電モードの場合と同様に弱充電モードの選択に伴なってSOCの制御目標を急激に引き上げると、走行負荷に拘わらずエンジン2が始動して強制充電が実施されてしまい、エンジン2の効率が低い運転状態での充電も実施されてしまう。そこで、この実施の形態2では、弱充電モード時は、SOCが制御目標から乖離しないように制御目標をSOCに追従させる。これにより、上記の強制充電が作動しないようにし、走行負荷の上昇によってエンジン2が作動しているときに蓄電装置16の充電が実施される。
【0059】
図7は、強充電モードが選択されたときのSOCおよびその制御目標の動きの一例を示したタイミングチャートである。図7を参照して、時刻t11において、ユーザによりSOC回復スイッチ28が操作され、強充電モードが選択されたものとする。強充電モードでは、このタイミングでSOCの制御目標SCが通常時のS0からSupへ引き上げられる。これにより、SOCが制御目標SCと乖離する状態が作り出され、それに応じてエンジン2が始動してモータジェネレータ6により蓄電装置16が充電される。時刻t12において、SOCが制御目標SCに近づくと、エンジン2が停止し、蓄電装置16の充電が停止する。
【0060】
図8は、弱充電モードが選択されたときのSOCおよびその制御目標の動きの一例を示したタイミングチャートである。図8を参照して、時刻t21において、ユーザによりSOC回復スイッチ28が操作され、弱充電モードが選択されたものとする。弱充電モードでは、このタイミングでSOCの制御目標SCが引き上げられることはない。そして、時刻t21の時点でエンジン2は停止しており、このタイミングで直ちにエンジン2が始動して蓄電装置16の充電が実施されることはない。
【0061】
時刻t22において、走行負荷が上昇することによりエンジン2が始動すると、蓄電装置16の充電を促進する充電促進制御が実施される。そして、弱充電モードでは、この充電促進制御による蓄電装置16の充電中、制御目標SCをSOCに追従させる。制御目標SCは、SOCと同値であってもよいし、SOCに所定量のマージンを加えた値であってもよい。
【0062】
好ましくは、制御目標SCは、SOC回復スイッチ28がオン(弱充電モード選択)されてからのSOCの最大値に追従させる。すなわち、時刻t23において、走行負荷が低下することによりエンジン2が停止すると、モータジェネレータ6による蓄電装置16の充電も停止する。その後、走行に応じてSOCは低下傾向となるところ、SOCの低下時は制御目標SCをSOCに追従させない。そして、時刻t24において、走行負荷が上昇することによりエンジン2が再び始動し、時刻t25においてSOCが制御目標SCに達すると、その後のSOCの上昇に合わせて制御目標SCをSOCに追従させる。これにより、エンジン停止中のSOC低下に伴ない制御目標SCが低下するのを防止することができる。
【0063】
この実施の形態2によるハイブリッド車両の全体構成は、図1に示した実施の形態1によるハイブリッド車両100と同じである。
【0064】
再び図6を参照して、実施の形態2におけるECU26Aは、実施の形態1におけるECU26の構成において、充電促進制御部58に代えて充電促進制御部58Aを含む。充電促進制御部58Aは、モード制御部56からモード信号MDを受け、さらに蓄電装置16からSOCを受ける。そして、強充電モードおよび弱充電モードの非選択(充電促進制御オフ)をモード信号MDが示しているとき、充電促進制御部58Aは、SOCの制御目標SCを通常値であるS0とする。
【0065】
モード信号MDが強充電モードを示しているとき、充電促進制御部58Aは、SOCの制御目標SCを通常値S0からSupに引き上げる(図7参照)。一方、モード信号MDが弱充電モードを示しているときは、充電促進制御部58Aは、弱充電モードの選択後からのSOCの最大値に制御目標SCを追従させる(図8参照)。
【0066】
そして、SOCが制御目標SCよりも低い方向に制御目標SCからSOCが乖離しているとき、充電促進制御部58Aは、エンジン2を始動してモータジェネレータ6を用いた蓄電装置16の強制的な充電を指示する指令をHV制御部60へ出力する。また、モード信号MDが弱充電モードを示しているときは、充電促進制御部58Aは、エンジン始動判定部54によりエンジン2の始動が指示されているときにモータジェネレータ6を用いた蓄電装置16の充電の促進を指示する指令をHV制御部60へ出力する。
【0067】
なお、ECU26Aのその他の構成は、実施の形態1におけるECU26と同じである。
【0068】
図9は、ECU26AにおけるSOCの制御目標SCの設定手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートについては、予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出されて実行されることにより実現される。あるいは、全部または一部のステップについて、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0069】
図9を参照して、ECU26Aは、SOC回復スイッチ28が操作されたか否かを判定する(ステップS10)。SOC回復スイッチ28が操作されたものと判定されると(ステップS10においてYES)、ECU26Aは、SOC回復スイッチ28の操作により弱充電モードが選択されたか否かを判定する(ステップS20)。
【0070】
充電モードが弱充電モードであると判定されると(ステップS20においてYES)、ECU26Aは、SOCがワーク値Swよりも大きいか否かを判定する(ステップS30)。なお、ワーク値Swは、弱充電モードが選択されてからのSOCの最大値を保持するための一時記憶データである。ステップS30において、SOCがワーク値Swよりも大きいと判定されると(ステップS30においてYES)、ECU26Aは、そのときに蓄電装置16から受けるSOCでワーク値Swを更新する(ステップS40)。そして、ECU26Aは、SOCの制御目標SCにワーク値Swを代入する(ステップS50)。
【0071】
ステップS30において、SOCはワーク値Sw以下であると判定されると(ステップS30においてNO)、ECU26Aは、ステップS40の処理を実行せずにステップS50へ処理を移行する。このステップS30からS50の処理によって、SOCの制御目標SCをSOCの最大値に追従させることができる(図8参照)。
【0072】
一方、ステップS20において、充電モードが弱充電モードではない、すなわち充電モードは強充電モードであると判定されると(ステップS20においてNO)、ECU26Aは、SOCの制御目標SCを通常時(強充電モード/弱充電モードの非選択時)のS0からSupに引き上げる(ステップS60)。
【0073】
なお、上記においては、弱充電モード時に、SOCにその制御目標SCを追従させるものとしたが、SOCに代えて蓄電装置16の電圧を用いてもよい。すなわち、SOCは蓄電装置16の充電電圧と相関があるので、蓄電装置16の電圧を制御目標に制御するものとし、弱充電モード時に、蓄電装置16の電圧にその制御目標を追従させてもよい。
【0074】
また、上記においては、強充電モード/弱充電モードの選択時にSOCの制御目標を高めるものとしたが、SOCの制御目標を高める代わりに、あるいはSOCの制御目標を高めるとともに、充電モードの非選択時に比べて蓄電装置16の充電レートを高めるようにしてもよい。
【0075】
以上のように、この実施の形態2においては、弱充電モードの選択時は、SOCが制御目標SCから乖離しないように制御目標SCをSOCに追従させる。これにより、弱充電モード時は、SOCが制御目標SCから乖離することによる強制充電は作動せず、走行負荷の上昇によってエンジン2が作動しているときに蓄電装置16の充電が実施される。したがって、この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、簡易な構成で弱充電モードを実現することができる。
【0076】
[実施の形態3]
上述のように、車両の要求パワーに蓄電装置16の充放電要求量を加えた値が所定のエンジン始動しきい値以上になると、エンジン2が始動する。
【0077】
蓄電装置16の充放電要求量については、通常は、SOCとその制御目標SCとの差ΔSOC(=SOC−制御目標SC)に基づいて決定されるところ、この実施の形態3では、弱充電モードの選択時は、SOCに拘わらず上記の充放電要求量が一定の充電量に設定される。
【0078】
図10は、通常時の蓄電装置16の充放電要求量を示した図である。なお、ここで言う通常時とは、図11に説明する弱充電モードの選択時以外を意味する。図10を参照して、横軸はSOCとその制御目標SCとの差ΔSOC(=SOC−制御目標SC)を示し、縦軸は充放電要求量を示す(充電要求量を正値とする。)。充電側について代表的に説明すると、ΔSOCの大きさが小さい範囲では、充電要求量はΔSOCの大きさに比例し、ΔSOCの大きさが所定値よりも大きくなると、充電要求量は一定(最大値)となる。
【0079】
図11は、弱充電モードの選択時における蓄電装置16の充放電要求量を示した図である。図11を参照して、弱充電モードの選択時は、SOCに拘わらず充放電要求量が一定の充電量とされる。弱充電モード時は、エンジン2の作動時に充電促進制御が実施されるところ、図10に示されるようにSOCに応じて充放電要求量を変化させると、SOCによって充放電要求量がばらつくためにエンジン2の作動時に所望の充電が実施されない可能性がある。そこで、この実施の形態3では、弱充電モード時は、SOCに拘わらず蓄電装置16の充放電要求量を一定の充電量とすることにより、走行負荷に応じたエンジン2の始動タイミングを安定化させることで、弱充電モード下での充電促進が安定して実施されるようにしたものである。
【0080】
図12は、実施の形態3におけるECU26Bの構成を機能的に示すブロック図である。図12を参照して、ECU26Bは、図6に示した実施の形態1におけるECU26において、エンジン始動判定部54に代えてエンジン始動判定部54Aを含む。
【0081】
エンジン始動判定部54Aは、モード制御部56からモード信号MDを受ける。モード信号MDが弱充電モード以外のモードを示しているとき、エンジン始動判定部54Aは、図10に示される充放電要求量のマップ(関数式でもよい。)から求められる充放電要求量を用いてエンジン2の始動判定を実施する。一方、モード信号MDが弱充電モードを示しているときは、エンジン始動判定部54Aは、SOCに拘わらず一定の充電量から成る充放電要求量を用いてエンジン2の始動判定を実施する。
【0082】
なお、ECU26Bのその他の構成は、実施の形態1におけるECU26と同じである。
【0083】
図13は、ECU26Bにおけるエンジン始動判定の処理手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートについても、予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出されて実行されることにより実現される。あるいは、全部または一部のステップについて、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0084】
図13を参照して、ECU26Bは、SOC回復スイッチ28が操作されたか否かを判定する(ステップS110)。SOC回復スイッチ28が操作されたものと判定されると(ステップS110においてYES)、ECU26Bは、SOC回復スイッチ28の操作により弱充電モードが選択されたか否かを判定する(ステップS120)。
【0085】
充電モードが弱充電モードであると判定されると(ステップS120においてYES)、ECU26Bは、蓄電装置16の充放電要求量を一定の充電量とする(ステップS130)。ステップS120において、充電モードは弱充電モードではないと判定されると(ステップS120においてNO)、ECU26Bは、図10に示されるマップ(通常用マップ)を用いて充放電要求量を算出する(ステップS140)。
【0086】
次いで、ECU26Bは、ステップS130またはS140において決定された充放電要求量を要求パワーに加えた値が所定のエンジン始動しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS150)。そして、要求パワーに充放電要求量を加えた値がエンジン始動しきい値以上であると判定されると(ステップS150においてYES)、ECU26Bはエンジン2を始動させる(ステップS160)。要求パワーに充放電要求量を加えた値がエンジン始動しきい値よりも小さいと判定されると(ステップS150においてNO)、ECU26Bは、ステップS160の処理を実行せずにステップS170へ処理を移行する。
【0087】
以上のように、この実施の形態3では、弱充電モード時は、SOCに拘わらず蓄電装置16の充放電要求量を一定の充電量とすることにより、走行負荷に応じたエンジン2の始動タイミングを安定化させる。したがって、この実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、弱充電モード時の蓄電装置16の充電促進が安定して実施される。
【0088】
なお、上記の各実施の形態においては、SOC回復スイッチ28を操作することによって2つの充電モード(強充電モード/弱充電モード)を選択可能としたが、強充電モードの機能を設けない構成としてもよい。すなわち、SOC回復スイッチ28がオン操作されると、蓄電装置16の充電を促進する充電促進制御が実行されるところ、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べて蓄電装置16の充電を抑制するようにしてもよい。一例として、上記の弱充電モードの選択時のように、走行負荷に応じてエンジン2が作動しているときにSOCを増加させるように、エンジン2および電力変換器18が制御される。すなわち、走行負荷が小さいときは走行負荷が大きいときに比べてエンジン2が停止した状態が増加するところ、走行負荷に応じてエンジン2が作動しているときに充電促進制御が実行される。このような構成であっても、低効率かつNV特性が悪化する低負荷でのエンジン2の作動が抑制されるので、ユーザの要求に応じて蓄電装置16の蓄電量を増加させる場合の効率やNV特性にも配慮可能なハイブリッド車両を提供することができる。
【0089】
また、上記の各実施の形態においては、ハイブリッド車両100は、動力分割装置4によりエンジン2の動力を分割して駆動軸12とモータジェネレータ6とに伝達可能なシリーズ/パラレル型の車両としたが、この発明は、その他の形式のハイブリッド車両にも適用可能である。たとえば、モータジェネレータ6を駆動するためにのみエンジン2を用い、モータジェネレータ10でのみ車両の駆動力を発生する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド車両や、エンジンが生成した運動エネルギーのうち回生エネルギーのみが電気エネルギーとして回収されるハイブリッド車両、エンジンを主動力として必要に応じてモータがアシストするモータアシスト型のハイブリッド車両等にもこの発明は適用可能である。
【0090】
なお、上記において、エンジン2は、この発明における「内燃機関」の一実施例に対応し、モータジェネレータ6は、この発明における「発電装置」の一実施例に対応する。また、ECU26,26A,26Bは、この発明における「制御装置」の一実施例に対応し、SOC回復スイッチ28は、この発明における「入力装置」の一実施例に対応する。
【0091】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
2 エンジン、4 動力分割装置、6,10 モータジェネレータ、8 伝達ギヤ、12 駆動軸、14 車輪、16 蓄電装置、18,20 電力変換器、26,26A,26B ECU、28 SOC回復スイッチ、72 操作部、74,76 表示部、52 要求パワー算出部、54,54A エンジン始動判定部、56 モード制御部、58,58A 充電促進制御部、60 HV制御部、62 エンジン制御部、64 MG1制御部、66 MG2制御部、100 ハイブリッド車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13